南極に迫る気候危機

毎年4月25日は世界ペンギンデーです!
ペンギンたちも住む南極は、地球上でもっとも手つかずの自然が残るといわれてきました。しかし、資源乱獲や気候変動によって大きな打撃を受けています。

この3月には南極で平年の記録を30℃以上も上回るような記録的な高温を記録しています。温暖化とこの高温の因果関係について専門家の意見は慎重で、明確な関係性はまだ立証されていませんが、例えば、コンコルディア基地の3月の最高気温の平均は-49℃のところ、37℃も上回る-12.2℃まで上がりました

3月には南極の海氷の大きさが過去最少になっていると報告されました。この海氷の減少については、自然の変動によるものと指摘されていますが、温暖化による影響の可能性も同時に指摘されており、さらなる研究が待たれます(Nature, 2022)。温暖化による南極の植生変化も指摘されています。

気候変動以外に、南極の自然に対する脅威となっているのは、資源乱獲や違法漁業があります。

かつてアザラシやクジラ、コオリウオ科の魚などが乱獲されたり、たくさんの海鳥が漁網にかかって死んでしまったことがありました。その後は対策が進み、こうした被害は減りましたが、最近ではメロ漁やオキアミ漁の拡大が問題となっています。日本はアメリカとならんで世界最大のメロ輸入国で、私たちの食卓にも並ぶ身近な食材です。

FoE Japanは、国際的な南極保護のネットワーク(ASOC)に加盟しており、南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)の会合にオブザーバーとして参加して南極における海洋保護区(MPAs)設定のための提言活動をするなど、南極保全に関する政策提言活動を行っています。しかし、海洋保護区設定や違法漁業の取り締まりに関してはまだまだ結果が出ていないのが現状です。

CCAMLRが南極海における海洋保護区システムに取りかかって10年以上になりますが、これまでに海洋保護区に指定されたのはロス海とサウスオークニー諸島の二つです。東南極、ウェッデル海、南極半島の三海域の保護区指定に向けて、今後も提言活動を続けていきます。

【横須賀石炭訴訟報告 vol.12】「安心して生きたい。ただそれだけのことなのに」建設地付近に暮らす原告の証言

本日、横須賀石炭火力訴訟の第12回期日が行われました。

本裁判は、石炭火力発電所を建設するにあたって、環境影響評価手続きが適切にされていないことを指摘し、本建設に係る環境影響評価の確定通知の取り消しを求める裁判です。

 (裁判についてのより詳しい説明はこちら:横須賀石炭火力、提訴へ!日本4件目の気候変動訴訟。その背景とは?

今回は、最後の原告尋問でした。建設地の北岸地域である長瀬にお住まいの橋本かほるさんが原告として、原告弁護人の浅岡弁護士の質問に答えながら、近年感じる変化や気象災害の状況について、証言されました。

豪雨で久々に感じた恐怖―橋本さんの証言

横須賀で育ち、一旦仕事のために地元を離れたものの、子育てを機に再び横須賀に戻ってきたという橋本さん。ご自身の子供の頃と気候の変化を感じるとともに、近年の豪雨により、恐怖を感じるようになったと言います。

浅岡弁護士から、地元に戻ってきて以来、変わったことはあるのかとの質問に対し、以下のように答えました。

「14年くらい前から、夏でも暑さを感じるようになりました。そして、3-4年くらい前から雨が激しくなって、音がものすごい。屋根が壊れそうでした。まさに豪雨で、恐怖を感じました。日常生活にも不安なことはよくあります。けれど、恐怖を感じることはほどんどなかったんです。個人的な話になるけれど、娘が5歳の時に事故に遭いました。その時に感じた恐怖と同じ恐さで、あの事故以来感じたことのない感情でした。」

そして、最近の雨は、雨量も多く、雨粒も大きいそうです。橋本さんのご自宅は、特別警戒区域に指定されるような急傾斜地に位置しており、先日雨がふった時には、家の裏山に降った雨は側溝を通じて麓に流れたものの、側溝からも溢れたとのことでした。

また最近、横須賀市内で豪雨による土砂崩れ(*)が多発していることも、そのような恐怖感のきっかけになっているそうです。

「このまま豪雨が続いたら、自分の家も危ないと思うようになりました。最近は、家の裏山の地盤が緩んで家の方に土砂が来るのではと思うと、恐怖を感じます」

* 2014年6月「住民「危険感じてた」横須賀ハイランドで再び崩落事故」https://www.kanaloco.jp/news/social/entry-48199.html

*2021年7月「「ドドーン」突然目の前に土砂…神奈川で崖崩れ52か所」https://www.yomiuri.co.jp/national/20210704-OYT1T50133/

実際、2021年には、5年に一度行われる神奈川県による土砂災害危険区域に関する調査が行われました。その結果によると、長瀬さんのお住まいの地域は、特別警戒区域に指定されました。その他にも、横須賀市内には土砂災害の警戒区域に指定された箇所が多く、その結果を見た橋本さんは、「警戒しなくてはいけない区域がこんなに多いとは。以前よりも危険な場所が増えて、怖いと思います。豪雨は自然災害だけれど、温暖化の影響によるもの。これ以上温暖化を進めないことが大事」と、ご自身の気持ちを表されました。

出典:横須賀石炭訴訟 甲第232-2号証:https://yokosukaclimatecase.jp/wp/wp-content/uploads/2021/12/%E7%94%B2223-2.pdf

浅岡弁護士の最後の質問は、石炭火力発電事業の存在を知ってどのように感じたかというものでした。この質問に対して、

「石炭火力が近くにできると知って、信じられない。世界はどんどん石炭から撤退している中、日本で、しかも家の目の前で建つなんて、言葉を失う。自分の家からも建設が見えるけれど、私は平和に暮らしたいだけ。この石炭火力(は問題であると)のことは、切実に訴えていきたい」

と締めくくりました。

「安心して生きたい。ただそれだけのことなのに」

裁判後の報告会でも、原告として話した中で、改めて、橋本さんからメッセージをいただきました。

「自宅から、日々背の高いクレーンが伸びて着々と建設が進んでいるのを目のあたりにするなかで、夏がきて、台風がきて、また豪雨が来るのだと思う。別に特別なことを望んでいるわけじゃないと思う。普通に、穏やかに暮らしたいというだけのこと。それが許されないというか、大事になれば命の危険がある中に、自分だけでなくて多くの人が晒されている。温暖化を止めない限り、幸せには生きていけない、安心して生きていけないということをいろんな形で感じていらっしゃると思うので、どうしても、あの石炭火力の建設を中止に追い込んでいかないといけないと、改めて思っている。」

今回の橋本さんのお話を聞いて、気候変動は命の問題そのものであると実感しました。橋本さんが証言されたように、大きな雨音の中で感じる恐怖を想像すると、苦しささえ感じます。ただただ穏やかに暮らしたいという、素朴で当たり前の願望が脅かされていること、そしてそのように恐怖を感じている人々が潜在的に多くいることは、見過ごしてはならないはずです。

次回期日のご案内

次回の裁判は、6月6日(月)10:30〜、東京地方裁判所で執り行われます。

6月の口頭弁論が、本行政訴訟の結審となる可能性が高いと裁判長も言及しており、2019年5月から約3年続いている裁判が、そろそろ終わりを迎えます。

次回の裁判に向け、小島弁護団長は、

「過去3回の裁判では、この環境アセスメントのおかしさ、国内外の海の被害の深刻さ、そして、気象災害の恐怖を、原告から直接話してもらった。石炭火力の建設という、人々の被害を拡大させるような方向でいいのかということを問うていきたい。世界の裁判所は気候変動に対して積極的に動いている。そのような中、日本の裁判所は今のままで良いのか問われている。最後の弁論ではそのようなことを話していきたい。」

と述べました。

裁判は終盤に差し掛かっていますが、横須賀市では、石炭火力の建設中止を求める動きが大きくなっています。

先週末の4月10日に開催された、「グレタひとりぼっちの挑戦」横須賀映画上映会では、目標を大きく上回り、1011人が来場しました。

今月末の4月24日(日)にも、横須賀市内で気候危機への具体的なアクションを求めよう、そして横須賀の石炭火力中止の声を盛り上げようと、気候マーチを予定しています。ぜひご参加ください。

本裁判が、日本の気候訴訟の転換点となるよう、そして、日本の脱石炭につながるよう、FoE Japanは引き続き、横須賀石炭火力訴訟に関わる原告や発電所建設の中止を求める地元住民、市民とともに活動していきます。

(髙橋英恵)

【横須賀石炭訴訟報告 vol.11】海水温をもとに戻して〜原告漁業者の証言

先月末に引き続き、本日、横須賀石炭火力訴訟の第11回期日が行われました。

本裁判は、石炭火力発電所を建設するにあたって、環境影響評価手続きが適切にされていないことを指摘し、本建設に係る環境影響評価の確定通知の取り消しを求める裁判です。

 (裁判についてのより詳しい説明はこちら:横須賀石炭火力、提訴へ!日本4件目の気候変動訴訟。その背景とは?

今回も前回同様、原告尋問でした。当初2名の原告尋問の予定でしたが、原告の都合により、1名となりました。今回、原告尋問を受けたのは、横須賀で漁業を営む小松原哲也さん(79)です。小松原さんは14歳の時から、父の手伝いをしながら、横須賀や東京湾海域で潜水漁業や底引網漁などに携わってきたそうです。横須賀で漁業を営む身として、この数十年間に渡って直面している変化について、小島弁護士に質問されながら証言しました。

気候変動の影響を直に受ける漁業の実態〜小松原さんの証言

小松原さんは長い漁師生活の中で、様々な漁法を営んでこられました。種類としては、潜水漁業、底引網漁が主なものですが、かつては海藻の採取やサヨリ網漁、アナゴの土管漁、アワビやサザエの採取も行っていたそうです。今も小松原さんの息子さんと一緒に、漁を営んでいるとのことでした。

潜水漁業では、エアホースのついたヘルメットを被って海に潜り、ミル貝(通年)、タイラ貝(5月〜11月)、なまこ(3月10日〜4月10日)を採取する漁法で、今は横須賀市内では小松原さんしか実施していないそうです。小松原さんは、猿島から追浜までの安浦漁港近くでこの潜水漁業をしていますが、近年は、タイラ貝の漁獲量はほぼ無に等しく、ミル貝も全盛期の120kg/日から50kg/日にまで減少、なまこもかつては1000kg/日取れたものが、75kg/日の範囲でとるまで激減してしまったと言います。大きく漁獲量が減ってしまった原因を小島弁護士が尋ねたところ、小松原さんは「一番の原因は、海水温が上がったから。貝は冷たい水を好む」と回答しました。

また、底引網漁についても、昔と今では漁れる魚の種類が変化し、漁獲高が大きく変化したと言います。昭和期には、江戸前高級魚のイシガレイやマコガレイが一日500kg(約2000枚)ほどとれたようですが、2000年代になって減り始め、今はイシガレイやマコガレイがとれることはほとんどなく、代わりに漁れるのはトビウオやタイ、イシモチだそうです。エボダイもとれるが、身が小さく売り物にならないと言います。

ワカメの採取も、かつては3月頃におこなっていたそうです。小松原さんが採取していたのは、田戸ワカメという、皇室への献上品にもなるようなワカメで、生計に大きく影響していたのですが、ミル貝やタイラ貝同様、海水温の上昇により今はもう取れなくなっていると証言しました。ワカメの他にも、テングサやヒジキ、アラメも採取していたが、今はほぼ取れなくなっているそうです。また、アラメやワカメを餌とするアワビやサザエも、久里浜沖にもぐれば50~60kg/日と、漁協組合で決める上限量まで簡単にとれるくらいたくさんいたそうですが、アラメやワカメが育たなくなる磯やけによって、今は漁れる量が大きく減ってしまったと証言しました。

そのほか、2隻の船の間に網をはり、海の表層を好む魚をとるサヨリ網漁も、猿島や金田漁港、そして横須賀火力発電所のある久里浜付近でおこなっていたと言います。サヨリも高級品で、かつては一晩に1000kgくらいとれ、大きな収入源になっていたそうですが、10年ほど前からほどんど取れなくなり、そして燃料費の高騰もあり、今は実施していないとお話ししました。サヨリがいなくなった理由として、科学者とともに調査した結果、サヨリの餌となる虫が育つために必要な海藻が海水温の上昇によって育たなくなってしまったことがわかったそうです。

このように、かつて売上の大半を占めていたミル貝、タイラ貝、ナマコ、カレイなどがとれなくなってしまったことにより、収入がかつての5分の1にまで大幅に減少してしまったと、生計に大きな影響があることを最後に証言され、「気候変動の影響は大きい。海水温をもとに戻してほしい」と締めくくりました。

「海は戻ってこない」

今回の小松原さんの証言を聞き、気候危機による生計への影響の大きさを改めて実感しました。また、閉廷後に開催された報告会では、傍聴者から「発電所の稼働により温排水がでていた時期と、稼働が止まって出なくなった時期の違いはあるか?」との質問がありました。その質問に対する小松原さんからの回答は、次のようなものでした。

「久里浜の発電所ができる前は(久里浜沖では)アワビがたくさん取れた。稼働したら、磯やけでできなくなった。稼働が止まっても、海は戻ってこなかった。」

発電所からの温排水という直接的な影響はすでにあり、その影響は不可逆的です。そのような中、現在建設中の石炭火力発電所が稼働開始したら、海の生態系やそれに依存する周辺漁業者に更なる影響を及ぼします。

報告会の最後に、小松原さんは、「できれば、被告が親身に受け止めて、久里浜の発電所を動かさないでほしい」と今回の尋問にあたっての心境をお話されました。

次回期日のご案内

今後の裁判の予定は、下記の通りです。

第12回期日 4月13日(水)14:00〜 東京地方裁判所(原告尋問の予定)
第13回期日 6月6日(月)10:30〜 東京地方裁判所

被告からの反論が特になければ、6月の期日で結審となると予想されています。2019年5月から約3年続いている裁判も、そろそろ終わりを迎えます。本裁判が、日本の気候訴訟の転換点となるよう、FoE Japanは引き続き、横須賀石炭火力訴訟に関わる原告や発電所建設の中止を求める地元住民、市民とともに、日本の脱石炭を求め活動していきます。

また、横須賀では、気候変動への関心を高めたいと、地域住民が映画上映会も企画しています。ぜひ、こちらの上映会にもご参加ください。(上映会の詳細:https://nocoal-tokyobay.net/2022/02/07/greta_movie_20220410/

(髙橋英恵)

IPCCが第6次報告書第二作業部会のレポートを公開「気候危機は、これまで予測されていたよりも早いスピードで進行」

昨日、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が、第6次報告書第二作業部会のレポートを公開しました。

IPCCは気候変動に関する科学を評価する国連の機関で、現在、第6次報告書の作成期間にあります。先月2月14日から27日にかけ、政策決定者向けサマリー(Summary for Policy Makers, SPM)に関する交渉がオンラインで行われました。

第二作業部会は、気候変動の影響・脆弱性・適応に焦点を当てており、本体は3600ページ以上に及びます。新しいレポートは、気候危機がさらに加速していることを示した一方、いくつかの論点で大きな議論があり、本レポートをまとめる過程で、先進国は損失と被害や、途上国における適応策への資金支援に関する言及を弱めようとしました。

本レポートの公表を受け、FoE インターナショナルがプレスリリースを発出しました。詳しくは以下をご覧ください。
(プレスリリース原文はこちら


アムステルダム, 2022/2/28 – アメリカ等の先進国が、気候資金に関する言及をIPCCの第二作業部会報告書から取り除こうとする試み、世界中の専門家や活動家から責任逃れであると非難されています。政治に左右されず、科学に基づくべきであるIPCC報告書の作成過程で、先進国は損失と被害といった重要な概念に関する情報を削除しようとしたり、適応策に向けた資金に関する言及を弱めようとしていました。今回のレポートは、気候危機はより早く進行しており、これまで予測されていたよりも早くに、より悪い影響が生じること、そして途上国での気候変動に対応するための気候資金の増額が急務であることを指摘しています。

FoEインターナショナルの活動家や専門家は、今回のIPCC報告書に対し、次のようにコメントしています。

数十年もの間、先進国が決断を先送りにしたために、今回のIPCCの報告書で書かれているような悲惨な気候危機をもたらすことになってしまったことは恥ずべきことです。特にアメリカは、途上国が今まさに経験している気候危機を生み出してきた国としての責任を受け入れるべきです。
損失と被害という概念や、資金に関する記述をIPCCの報告書から取り除こうとする先進国の試みは阻止されました。しかし、私たちは、気候変動を引き起こしてきた最も責任ある国々を非難します。責任から逃れようとすることは、とても恥知らずな行為です。
気候変動による取り返しのつかない被害を最小限に抑えたり、気候変動に適応するために、先進国から途上国へのより多くの資金提供の必要性を科学者たちは認めています。この資金は、人々のウェルビーイングと経済をまもるために必要です。もしこの資金がなければ、私たちの公正、平等、正義の実現に向けた苦難多い取り組みが無駄になってしまいます。

Meena Raman、FoEマレーシア

気候変動による影響はすでに世界の至るところで、予測されていたよりもよりも早い段階でより深刻な形で起きています。私たちはすでに、2100年までは起こらないだろうと予測されていた異常気象を目撃しています。COP26以降において、この報告書は現実を知らしめるものです。気候危機はすぐ目の前に迫っています。システム・チェンジを今こそ起こさなければなりません。見せかけではない温室効果ガスの削減、本物の解決策、早急な対応が必要です。

Hemantha Withanage、FoEインターナショナルの議長

このIPCCによる新たなレポートは、いくつかの被害からはすでに回復不可能であり、もし1.5℃を超えてしまったら、多くの国にとって適応することすら不可能だと指摘しています。私たちは、今世紀中に数億人もの人々が住み慣れた土地から離れざるをえず、農地も作物が育てられない状態となる可能性に直面しています。私たちは、脆弱な人々を助けるために、適応策や損失と被害のための資金を緊急に求めます。

Amos Nkpeebo、FoEガーナ

気候危機への脆弱性は、植民地主義によって形作られ、ジェンダー、先住民族のアイデンティティ、健康、貧困、紛争、そして教育とも関わっていると、今回の報告書は指摘します。科学は、最も脆弱で周辺化された人々の権利こそ、気候変動対策の実施において優先しなければならないと繰り返しています。

33〜36億人もの人々が気候変動への脆弱性が高い国々に住んでおり、その多くはグローバルサウスの国々です[1]。しかし、これは真新しいことではありません。気候危機の最前線にいる人々は、今までもずっと声をあげてきました。アフリカは気候変動による深刻な影響に直面しており、最も暑い地域はすでに耐えられなくなっています。私たちは、私たちの生活、土地、文化が、悪意ある政治やグローバルエリートたちの短期的な利益の犠牲となることを許しません。

Anabela Lemos、FoE モザンビーク

今回のレポートによれば、グローバルサウスの地域は、異常気象による食料生産への影響に対する適応に苦しむことが指摘されています。科学者は報告書の政策決定者向け要約の中で、気候危機が、アフリカや南アジア、島嶼国でのSDG目標2「飢餓をなくす」の達成を妨げるだろうと警告しています。
また、先住民族の権利と知恵が気候変動に立ち向かうために必要不可欠であることも強調しています。生物多様性の80%が先住民族の土地にあり[FoE Japan補足1]、生態系の変化は先住民族や地域コミュニティに大きな影響を与えています。

私たちは、気候変動による最初の絶滅を目撃しています。いくつかの森林、草原、泥炭地はすでに炭素の貯留地から排出源へと変わってしまいました。ゆたかな生態系は一度は私たちを助けてくれたものの、今は危機へと加速しており、過去数千年にわたって前例のない形で大きく変化しています。化石燃料や環境破壊や人権侵害を伴うエネルギーの使用を完全にやめることのみが、危機をさらに加速させるティッピングポイントに到達することを防ぎます。

Ricardo Navarro、FoEエルサルバドル

また、今回のレポートは、太陽放射を変化させる技術(Solar radiation management, SRM)や大規模バイオマスエネルギー、炭素回収技術(Carbon Captute and Strage, CCS)など、いくつかのジオエンジニアリング技術の実施についても警告しています[2]。

このレポートは、先進国や多国籍企業が、化石燃料からの早急な脱却を避けるために頼ろうとしている技術のリスクに対して警鐘を鳴らしています。

Sara Show、FoEインターナショナル 気候正義とエネルギープログラムコーディネーター

このレポートで科学は、昨年11月のCOP26期間中にグラスゴーや世界中で市民が求めてきたような、政府による決定的で抜本的な改革の必要性を繰り返しています。決定的で抜本的な改革とは、化石燃料への補助金の廃止、先進国から途上国への気候資金の供与、そして全ての人々のための公正で早急な再生可能エネルギーへの移行を意味します。

[1] IPCC, 2022: Summary for Policymakers, In: Climate Change 2022 Impacts, Adaptation & Vulnerability, Contribution of Working Group II to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change B.2 (page 12) 

[2] IPCC, 2022: Summary for Policymakers, In: Climate Change 2022 Impacts, Adaptation & Vulnerability, Contribution of Working Group II to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change B.5.4 and B.5.5 (Page 20, 21)

[FoE Japan補足1] National Geographic, “Indigenous peoples defend Earth’s biodiversity—but they’re in danger”: https://www.nationalgeographic.com/environment/article/can-indigenous-land-stewardship-protect-biodiversity-, 最終閲覧日2022/3/1


IPCCは今後、4月に気候変動の緩和策に関する第三作業部会報告書、9月に第一作業部会から第三作業部会の報告をまとめた統合報告書の採択を予定しています。

今回の第二作業部会のレポートでは、これまでの予測より早く気候危機が進行しており、人々の命や生物多様性への影響の深刻さが強調されました。気候危機はすぐ目の前に迫っており、温室効果ガスを削減する緩和策だけでなく、損失と被害への対応や適応策の早急な強化の必要性が強調されています。

IPCC のレポートは現実を知らしめるものです。日本を含む先進国は、気候変動への歴史的責任を認め、フェアシェアに基づいた行動が求められています。

FoE Japanは引き続き、日本政府に対し、歴史的責任に基づいた気候変動対策の強化を訴えていきます。

(髙橋英恵、深草亜悠美)

*参考

・IPCC, “Climate Change 2022: Impacts, Adaptation and Vulnerability”: https://www.ipcc.ch/report/sixth-assessment-report-working-group-ii/, 最終閲覧日2022/3/1

・環境省、AR6 WG2 政策決定者向け要約: http://www.env.go.jp/press/files/jp/117548.pdf、最終閲覧日2022/3/1

【横須賀石炭訴訟報告 vol.10】本訴訟初の原告尋問。訴訟の根底にある原告の思い

昨日、横須賀石炭火力訴訟の第10回期日が行われました。

本裁判は、石炭火力発電所を建設するにあたって、環境影響評価手続きが適切にされていないことを指摘し、本建設に係る環境影響評価の確定通知の取り消しを求める裁判です。
(裁判についてのより詳しい説明はこちら:横須賀石炭火力、提訴へ!日本4件目の気候変動訴訟。その背景とは?

今回の裁判は今までとは異なり、原告への尋問を中心に執り行われました。今回、原告として尋問を受けたのは原告団代表の鈴木陸郎さんとプロダイバー兼環境活動家の武本匡弘さんです。両者40分程度、鈴木さんは発電所建設計画を知った経緯、計画を知ってからの活動内容、提訴に至った経緯を、千葉弁護士(原告の弁護団弁護士)に質問されながら証言し、武本さんはこの20年間の国内外の海の変化について、半田弁護士(原告の弁護団弁護士)の尋問の下、証言しました。

今回は、原告の主張の内容と、今回の裁判を初めて傍聴した大学生である著者の感想を紹介したいと思います。

環境アセスメント制度をより良いものにする責任〜鈴木陸郎さん

鈴木さんが横須賀の火力発電所建設について知ったのは、2016年7月でした。発電所ができると知って、いろいろ調べていく中で、「世界でも脱石炭火力発電へと動いているのになぜ今さら火力発電所を建設する必要があるのか?」と疑問を持ったそうです。

以来、仲間とともに発電所建設について調べる、アンケートを行うといった活動をおこないました。調べているうちに、不当なアセスの簡略化の理由となる「環境が良くなる」という説明が、いつと比べているのかについて不記載であるといった問題に気づくこととなりました。

鈴木さんは、環境アセスメントの方法書の説明会に参加し、上記の疑問について質問をしました。しかし、事業者にいくら質問しても回答なく、事業者の態度が不誠実であると感じ、鈴木さんの国に対する[高橋1] 不信感が高まったそうです。「環境が良くなる」という説明がいつと比べているのかについては、同じ説明会に居合わせた他の参加者も何度も質問したそうです。その結果、事業者は18年前との比較であると回答し、参加者もびっくりしたそうです。鈴木さんも「そんな昔と比べてよくなると言われても納得できない」と感じたそうです。また、2017年に実施したアンケート結果に関しては、約3分の1の人が発電所建設について知らず、1割の人が建設に賛成、4割の人は反対しているとのことでした。

そして、鈴木さんが訴訟を起こすことを決意したのは、主に3つの理由があるとのことでした。1つは、このまま温暖化が進んだら人間が生活できない環境になってしまう可能性があり、温暖化を止めるために温室効果ガスの削減が求められる中、石炭火力の新設は到底許されないと考えたからだそうです。2つ目の理由は、人間の活動によって地球の回復能力がオーバーしている中、これ以上の悪化を防ぐための制度である環境アセスメントを簡略化することは、アセス制度の破壊につながる行為と考えたためです。そして最後の理由が、気候変動を悪化させたのは自分たちの世代でもあるが、将来世代により良い世界を残すためには、環境アセスメントをより良いものにしていく責任があると感じたためだとして、尋問の最後の質問を締めくくりました。

プロダイバーが感じてきた気候変動の影響〜武本さん

武本さんは、約40年間、プロダイバーとして活動されてきました。活動のフィールドは、拠点の葉山を中心に三浦半島周辺、沖縄、北海道など日本全国、そして中部太平洋に及びます。その40年のうち、後半の20年間、海がどんどんひどくなっていく様子を目の当たりにしてきたと証言しました。1998年から、プロダイバーの仕事と並行して環境活動を始めたそうで、そのきっかけはサンゴの白化であるそうです。

サンゴの白化とは、水温が30度以上の水温が続くと起きる現象で、サンゴの体内に住みサンゴの呼吸の役割を担っている褐虫藻がサンゴから放出され、サンゴが死んでしまうことを指します。人間も体内にたくさんの細菌を宿していて、それら最近がいなければ生きていけないのと同じことだと、武本さんは説明しました。そして、一度白化したサンゴは、二度と元に戻ることはないそうです。

武本さんは、マーシャル諸島沖付近、沖縄、江ノ島、葉山でのそれぞれ2013年と2021年の海中写真を比較しながら、海がどのように変化しているのかを証言されました(尋問で使用した写真資料はこちら)。マーシャル諸島沖付近、沖縄の写真の比較では、サンゴ礁が白化によって崩れてしまっており、江ノ島、葉山の写真の比較では、海藻が繁茂していた場所に全く海藻がなくなってしまった様子がわかりました。

海藻が繁茂するには、水温が12度以下である必要があるそうですが、近年は水温の上昇によって、本来冬眠しているはずの魚が海藻の芽を食べてしまい、海藻が十分に育つ前になくなってしまうそうです。海藻は、海の生き物の隠れ家になったり産卵の場所になったりと、海の生物多様性を育むのに重要な役割を果たしています。海藻がなくなる「磯焼け」は、海の生物多様性の損失のほか、その恩恵に預かる漁業者にも大きな打撃を与え得ていると証言しました。

サンゴの白化も磯焼けも、水温の上昇が原因で起こり、水温上昇は主にCO2排出による影響であるそうです。また、風の変化も、海の環境を整える役割を担っていましたが、本来吹くべき風が吹かなくなったこと、台風の発生地や経路が変わったことも、磯焼けやサンゴの原因であると話しました。そして最後に、海水温の上昇や風向きの変化などをもたらす気候変動の影響によって、漁業者やダイバーの仕事が奪われていることを再度強調しました。だからこそ、CO2を多く排出する火力発電所建設には反対しているそうです。

弁護団からのメッセージ

今回は裁判後に報告会を開催しました。報告会での、弁護団からのメッセージを紹介します。

小島弁護団長は、

「オランダやドイツ、フランスで市民側勝訴の案件が増えている。日本の裁判所は世界の裁判の動向になかなか影響されないけれども、一つ一つ積み上げていくことが大事。」

今回新しく原告弁護団に入った長井弁護士は、

「気候危機は我々の生命を脅かすものになってきている。弁護士としてそれに取り組み、食い止めたい。」

今回の尋問で武本さんに質問をした半田弁護士は、

「武本さんの生の声をいかに伝えるかで考えてきた。裁判官も手元の写真を見ながら反応し、武本さんも傍聴者に聞こえるように大きな声で話してくれた。環境訴訟を見ていると、若い弁護士があまりいないが、これからも頑張っていきたい。」

神戸での石炭訴訟も担当されている浅岡弁護士は、

「裁判官はよく聞いてくれた。原告の気持ち、なぜ裁判を起こしたのかというのがよく伝わったと思う。気候変動は今よりもっと悪くなる。世界の裁判所は気候変動が人権侵害をもたらすことを理解している。この4年の間、世界の裁判所の認識はおそろしく変わった。世論を動かしてしっかり反映させていきたい。」

今回の尋問で鈴木さんに質問をした千葉弁護士は、

「この発電所の計画が地元の人に知られていった過程、鈴木さんが初めからアセスの問題点に注目していたことが伝わったと思う。裁判官に、このままではいけないんだという気持ちにさせていきたい。」

今回の裁判を聞いて

筆者は、まず第一に武本さんがおっしゃるような海中の変化が起こっていることを知らなかったため、とても驚きました。こういったことを私の周りの若者が知っているとは到底思えないので、こういった変化を正確に広めることがとても重要であると思いました。また、環境を犠牲にする経済成長は許されるべきではないと思うので、今回の裁判を勝訴し、環境保全のための裁判の良い前例となることを願っています。また、環境アセスメントの簡略化などについて、国側の誠実な対応を求めます。

(祐谷直樹)

次回期日のご案内

次回も今回同様、原告2名の尋問が行われます。
2022年3月7日(月)10:30〜@東京地方裁判所第103号法廷です。ぜひ、傍聴にいらしてください。

また、閉廷後、日比谷図書文化館大ホールで報告会(オンライン中継あり)を行います。傍聴への参加が難しい場合でも、ぜひこちらもご参加ください。

*傍聴と報告会の詳細は、後日こちらに掲載されます。

https://yokosukaclimatecase.jp/

FoE Japanは引き続き、横須賀石炭火力訴訟に関わる原告や発電所建設の中止を求める地元住民、市民とともに、日本の脱石炭を求め活動していきます。

(髙橋英恵)

EUタクソノミーと原発をめぐる議論

EU域内における2050年カーボンニュートラル達成のための資金を動員するため、ファイナンスに関係するさまざまな取り組みも進めています。その一つのEUタクソノミーをめぐり、年末に一つの重大ニュースが飛び込んできました。タクソノミーに、原発と化石燃料ガス(天然ガス)を含めるというものです。タクソノミーでの原発の扱いはこれまで加盟国内で激しい議論がありましたが、どういうことなのでしょうか。

タクソノミーとはもともと分類法を意味し、環境的に持続可能な投資を促進するために、グリーンな活動を分類する仕組みです。EUタクソノミーでは6つの環境分野に貢献する活動を明確にし(分類し)、いくつかの主要な条件を設けています。

6つの分野:

  1. 気候変動の緩和
  2. 気候変動への適応
  3. 水と海洋資源の持続可能な利用と保全
  4. サーキュラーエコノミーへの移行
  5. 環境汚染の防止と抑制
  6. 生物多様性と生態系の保全と回復

これら6つの分野のどれかもしくは複数に貢献することが条件で、いずれの目標に対しても「著しい害を及ぼさない(Do No Significant Harm、DNSH)」こと、ビジネスと人権に関する指導原則など「最低限のセーフガード」を満たしていること、またEUのサステナブルファイナンスに関する技術専門グループ(TEG)が示す「技術的スクリーニング基準(TSC)」を満たしていることが求められています。

2021年末、欧州委員会がこのタクソノミーに原発と化石燃料ガス(天然ガス)を含める方向性であることがリーク記事により明らかになりました。

2022年1月1日には欧州委員会がプレスリリースを発出し、再生可能エネルギー中心の社会への移行に天然ガスと原発には役割があること、一定の条件(注1)のもとで両エネルギーを認めることを提案し、これら両エネルギーに関する委託法令(注2)のドラフトに関する協議を開始したことを発表しました。委員会は加盟国の専門家グループ等との協議結果を踏まえ、1月中にも採択するとしています。

注1)新規のガス火力について、2030年までに建設許可が出ている事業に関しては、より高排出の施設をリプレースする目的で建設する、排出上限270gCO2e/kWhとすること等が条件。新規の原発については2045年までに建設許可が発行され、放射性廃棄物の管理計画がしっかりと整備されていること等が条件になる。

注2)Delegated Act。欧州委員会が議会から委任をうける形で採択するもので法的拘束力がある。

原発の扱いに関してはEU加盟国内でも意見の対立が続いていました。フランスやフィンランド、東欧諸国などは原発を推進しており、フランスとフィンランドは現在も自国内で新規原発を建設中です。一方、脱原発を決定しているドイツや、オーストリアなどの国はタクソノミーに原発を含めることに反対していました。

オーストリアの環境団体Global2000(FoEオーストリア)はこの動きを批判し、「これまでの議論で、すでに原発は除外されていた。特に今回示された原発に関するスクリーニング基準はこれまで一度も公開で議論されたことがない上に、既存の法令や規制をリストにしただけにすぎない」と批判。またドラフトテキストの中で、原発が「ベースロード電源」とされていることに関しても批判しています。

オーストリアの環境エネルギー大臣も、一連の動きを「グリーンウォッシングである」と批判し、タクソノミーで原発を認めることになれば訴訟も辞さないとしています。

また技術専門家グループ(TEG)のメンバーのDawn Slevin氏は、原発を認めることに対する反対署名を2021年12月21日に開始。この署名にはTEGのメンバーやその他の専門家が賛同しています。

Slevin氏らは、技術専門家グループ (TEG)が原発はEUタクソノミーに含めないことを勧告したのにもかかわらず、原子力技術を促進したいごく少数の国々が政治的な理由から原発に科学的というお墨付きを与えようとしていると批判し、核廃棄物やウラン採掘による環境影響の観点から原発はDNSH原則に反すること、事故のリスクは拭い去れないこと、気候変動による影響が原発を脆弱にさせる(熱波により取水できない、洪水のリスクがあるなど)ことなどを指摘し、原発をタクソノミーに含めることに反対しています。

欧州の原発をめぐっては、前述のようにフランスとフィンランドで原発の建設が進んでいます。また、EUから脱退した英国でも建設が進んでいます。(その他東欧諸国にも原発建設計画あり

フランスのフラマンヴィル3号機(EPR(欧州加圧水型炉)、1600MW)は2007年に建設が開始されました。2012年に完成、2013年に運転開始予定でしたが、技術的問題に見舞われ、運転(送電)開始は10年遅れの2023年とされています。またコストも増加し、当初33億ユーロとされていたものが、約4倍の124億ユーロに膨れ上がっています

フィンランドで建設中のオルキルオト原発3号機(EPR、1600MW)も、当初の完成予定が2009年でしたが、現在も営業運転を開始していません。

英国ではヒンクリーポイントC原発(EPR、1600MW×2基)の建設が進んでいますが、こちらも大幅な遅延とコスト増加に見舞われています。

英国といえば、やや脇道にそれますが、日立製作所が英国ウェールズへの原発輸出を試みましたが頓挫したことはみなさんの記憶にも新しいかもしれません。英国では1995年にサイズウェルB原発が稼働したのを最後に、原発の新設がありませんでした。2010年、英国政府は原発新設の8つの適地を発表しましたが、現在建設が進んでいるのはこのうちヒンクリーポイントCのみです。その他サイズウェルC原発も計画中ですが、それ以外についてはほとんど進んでいません。(なお、英国の国家インフラ委員会は昨年9月、原発が低炭素電源とは認めた上で、建設に時間がかかりすぎることなどからこれ以上大型原発の建設は必要ないとする助言も発出しています。)

現状、欧州での原発建設には10年の歳月がかかっており、コストも大幅に増加しています。

冒頭で説明したようにタクソノミーの目的は、環境的に持続可能な投資(environmentally sustainable investment)を促進することで、掲げられた6つの分野に対して「著しい害を及ぼさない(Do No Significant Harm、DNSH)」ことが求められています。

気候変動対策の観点からいえば、英国の国会インフラ委員会も指摘するように、原発は時間がかかりすぎて、2030年までに排出半減、2050年にはネットゼロを求める気候変動対策に間に合いません。原発にかける資金があれば別の低炭素電源の開発や省エネ技術に回すべきでしょう。

また原発は気候変動に適応できないことも指摘されています。これまでも、温暖化による冷却水不足で原発の出力制限が行われるケースが実際に発生しています。昨年発表された研究によれば、台風やハリケーンによる影響も今後より受けることが指摘されています。気候災害に備えた設備の強化も行い得ますが、さらに追加のコストがかかります。

そしてウラン採掘から稼働まで、被爆による健康被害や放射性廃棄物を生み出します。環境汚染の抑制と防止もできないのです。

事故がおきれば、その影響は甚大です。東電福島原発事故の影響は今でも続いています。なによりチェルノブイリ原発事故の影響もまだ続いています。

今月中にも欧州委員会はこのガス・原発を認める委託法令を採択するとみられていますが、ドイツやオーストリアなどは今も強い反対の姿勢を示しており、行方が注目されます。

★1月27日のオンラインセミナーにもぜひご参加ください。

オンラインセミナー:1/27 原発は気候変動対策?最新の議論を追う

(深草亜悠美)

日本の官民が関わるカナダのガス開発事業で深刻な人権侵害と環境破壊

日本の民間銀行(三井住友銀行、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友信託銀行)が融資するパイプライン事業で、深刻な人権侵害が起きています。カナダのブリテッシュ・コロンビア州で建設が進むコースタル・ガスリンク・パイプラインは先住民族の土地を通りますが、先住民族Wet’suwet’enは、建設に同意していません。さらに、警察が非暴力の反対運動を続ける先住民族を相次いで逮捕する事態も発生しています。気候変動の観点からも問題です。

Photo: Michael Toledano

事業の問題

先住民族が事業に合意していない。

先住民族Wet’suwet’enは、彼らが伝統的に利用してきた土地や水源を守るため、事業に対し反対の声を上げ続けています。先住民族の権利はカナダの最高裁判所でも認められており、Wet’suwet’enの伝統的酋長らがその土地に対し権利を持つと認められています(Delgamuukwケース)。しかし、パイプラインを建設するコースタル・ガスリンク・パイプライン社(CGL社)は先住民族の「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(free, prior and informed consent)」(FPIC)を取得せず、パイプライン建設を続けています。

融資に参加している日本の民間銀行は、それぞれ「エクエーター原則」の採択銀⾏であり、エクエーター原則採択銀行には、「先住⺠族が伝統的に領有、または、慣習的に使⽤している⼟地と⾃然資源に対する影響があるプロジェクト」について、FPICの取得を要件としている国際⾦融公社(IFC)パフォーマンススタンダードの規定を踏まえた融資判断をすることが求められています。

FPICに関しては、国連人種差別撤廃委員会(Committee on the Elimination of Racial Discrimination)が、2019年12月13日付けで、Wet’suwet’enのFPICが得られるまで、コースタル・ガスリンク・パイプライン事業の建設を即時停止すること、(カナダ王立騎馬警察(RCMP)やその他警察がWet’suwet’enの伝統的土地から退去すること、また殺傷能力のある武器の使用を禁止し、Wet’suwet’enに対するいかなる武力も行使しないことを保証することをカナダ連邦政府に求める決議を発表しています。にもかかわらず、11月にも30名近くの抗議者や先住民族がRCMPによって逮捕されています。また記者も逮捕されました。

気候変動を加速させ、環境を破壊する

この事業は人権を脅かすだけではなく、気候変動を加速させ、現地の環境を破壊します。国際エネルギー機関(IEA)は、パリ協定の1.5℃目標を達成するならば、新規の石油・ガス開発事業への投資はやめるべきとしています。ガスも化石燃料です。燃やせば温室効果ガスを排出します。ガスの採掘や運搬の際などに温室効果ガスであるメタンが漏れだすことも問題です。

ガスは石炭火力に比べれば温室効果ガスを排出しないので、再生可能エネルギーが普及するまでの「つなぎのエネルギー」とよく言われます。しかし、新たなガス田の開発や採掘、ガス関連施設を建設することは、新たな温室効果ガスの排出を長期にわたり固定(「ロックイン」)することに繋がり、パリ協定の目標とも合致しません。

パイプラインを通じて運搬されたガスは、液化施設(LNGカナダ)で処理され、アジア市場に輸出されます。この液化ターミナル施設は、2024年度中から40年稼働が計画されており、計画通り進めば2050年を超えて運転することになります。

さらに、現地の環境当局は、パイプラインを建設する事業者が廃棄物処理や生態系保全等の点で問題があることをこれまでも何度も指摘し、改善を求めています。

経済的なリスクも大きい

これまで、気候変動対策に伴う規制の強化や、国際的な「ダイベストメント運動」の高まりなどから、これ以上石炭火力発電所が動かせなくなり利益を生み出せなくなる「座礁資産化」が指摘されてきましたが、ガス事業についても同様の理由から「座礁資産化」のリスクが指摘されています。また、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響や、先住民族の反対運動などによってパイプラインの建設作業が遅れており、LNGカナダとCGL社との間で追加のコストをめぐって対立も生まれています。さらに、米国のシンクタンク・エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)が、LNGカナダ事業を分析し、上流でのガスの生産が鈍化していることや市場の変化、ブリティッシュ・コロンビア州の政策変更などが、今後事業の経済性に深刻な影響を与えうることを指摘しています。

私たちにできること

現地の先住民族や、NGOがアクションを呼びかけています。
彼らの投稿をシェアする、事業に関わる銀行や企業に対し事業から撤退するよう求める声を届ける、動画をシェアするなどにぜひご協力ください!

  1. 事業についてさらに詳しく知る→LNGカナダ事業概要10月2日ウェビナー(Wet’suwet’enの方をゲストに事業の問題点やカナダの先住民族をめぐる状況にについて解説したウェビナーです。ぜひご覧ください)
  2. 現地の先住民族の声を聞く→Gidimt’en Checkpoint
  3. 動画の上映会をする(日本語字幕もあります)→Invasion

東電による汚染水「放射線影響評価」から読み取れること、読み取れないこと~放出される64の放射性物質の総量は?

東京電力は福島第一原発の「ALPS処理水の海洋放出に係る放射線影響評価報告書」を公開し、国内外からの意見を募集しています(12月17日23:59まで)。

東電は放射性物質の海洋拡散シミュレーションを行い、3つのタンク群と、仮想のALPS 処理水の核種組成(炭素14、銀110m、カドミウム113mなど人への被ばく影響が大きい9つの核種を選定)の 4つのケースについて人への影響を評価し、「すべてのケースで一般公衆の線量限度および国内の原子力発電所に対する線量目標値のいずれも下回った」としています。また、海洋生物への影響評価も行い、問題のないレベルと結論づけています。

ところがこの「放射線影響評価」は問題だらけ。たとえば…

  • 放出は30年以上続くはずであるが、それについての記述がありません。
  • 海洋拡散シミュレーションをしているが、いつの時点での評価なのか、放出を開始して1年後なのか、10年後なのか、30年後なのか不明です。
  • 年間および 10km×10km の「平均濃度」により評価を行っています。季節ごと、また場所によって放射性物質の濃度が高い部分が生じたとしても、「平均」をとることによって薄めてしまうことになります。
  • 外部被ばくも、内部被ばくも、年単位での被ばく評価となっています。つまり、累積的な影響が評価されていないのです。

一方、この評価報告書から読み取れることもあります。
私が注目したのはp.50以降の、実際に64核種について測定を終えている3つのタンク群の水を、計画どおりトリチウムが年間22兆べくれる1年間放出し続けたとした場合の64核種の年間放出総量です(東電報告書p.50以降)。

たとえばK4タンク群の水を1年間流す場合の、いくつかの放射性物質の年間放出総量は

ストロンチウム90 2500万ベクレル
カドミウム113m 210万ベクレル
ヨウ素129 2億4,000万ベクレル
セシウム137 4,900万ベクレル
プルトニウム238 7万3000ベクレル
プルトニウム239 7万3000ベクレル
プルトニウム240 7万3000ベクレル
プルトニウム241 320万ベクレル

となります(トリチウムが年間22兆ベクレルになるように放出するという前提です)。告示濃度比総和1以下(つまり全体として規制基準以下)とはいえ、なにせ放出量が多いので、膨大です。いくら薄めても、総量は変わらないのです。つまり濃度でのみ規制をかけることの限界といえます。

プルトニウムに着目しましょう。同じくそれぞれのタンク群の水を、トリチウム年間22兆ベクレルとなるような放出を行うという前提です。

年間放出量(ベクレル)
K4タンク群 J1-C タンク群 J1-G タンク群
Pu-238 73,000 890,000 2,300,000
Pu-239 73,000 890,000 2,300,000
Pu-240 73,000 890,000 2,300,000
Pu-241 3,200,000 32,000,000 81,000,000

K4タンク群の水を1年間放出すると、プルトニウム238、239、240、241の合計で341万9,000ベクレル、J1-Cタンク群の水の場合、プルトニウム238、239、240、241の合計で3,467万ベクレル放出、J1-Gタンクの水の場合、年間8,790万ベクレル放出ということになります。

まだ、すべてのタンク群の核種ごとの濃度や容量が公開されていないため、不明なところがありますが、この3つのタンク群が特殊なものでない限り、このレベルの放出が30年以上続くことになります。

しかし、このような数字も、限定的なものに過ぎません。いままで東電は、放射性物質の濃度のみを公開してきており、放出の総量については示してきていませんでした。私たちは、いったい何が、どれくらい放出されるのかわからないままにいるのです。さらに、東電が測定・公開の対象としている64核種というのは、ALPSで処理の対象となっている62の放射性物質とトリチウム、ALPSの対象ではないがあとから存在することがわかった炭素14のみです。

技術者や研究者も含む、原子力市民委員会のメンバーが、パブコメを公開しています。

http://www.ccnejapan.com/wp-content/20211215CCNE.pdf

領域海洋モデルの再現性に関しての批判、有機トリチウムによる内部被ばくが過小評価されている件など、かなり具体的な指摘がならんでいます。
また、原子力市民委員会では、12月16日に開催したオンラインセミナーの「“東京電力「ALPS処理水の海洋放出に係る放射線影響評価報告書」の問題点”」の資料および録画をYouTubeにアップしています。(冒頭の私のところはイントロなので飛ばしてください)

ご参考にしていただければ幸いです。(満田夏花)

【横須賀石炭訴訟報告 vol.9】環境省も指摘していた!?環境アセスメントの不備

本日、横須賀石炭火力訴訟の第9回期日が行われました。

本裁判は、石炭火力発電所を建設するにあたって、環境影響評価手続きが適切にされていないことを指摘し、本建設に係る環境影響評価の確定通知の取り消しを求める裁判です。

(裁判についてのより詳しい説明はこちら:横須賀石炭火力、提訴へ!日本4件目の気候変動訴訟。その背景とは?

原告含め約40名の傍聴者が参加した今回は、千葉弁護士から、環境省の文書から判明した経済産業省との本件アセス(横須賀石炭火力行政訴訟の対象となっている石炭火力発電所の建設に係る環境アセスメント)に関するやりとりについての意見陳述があり、その後、小島弁護士から本訴訟全体の要点に関する陳述が行われました。

環境省も指摘していた!?環境アセスメントの不備

千葉弁護士から、環境省の文書から判明したこと(原告準備書面16)に関する意見陳述がありました。

火力発電所の建設に係る環境アセスメントには、配慮書、方法書、準備書、評価書の4つのステップがありますが、環境大臣は配慮書と準備書の段階で経済産業省に意見を提出することができます。

出典:https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/pdf/015_10_00.pdf

横須賀石炭火力行政訴訟の対象となっている石炭火力発電所の建設に係る環境アセスメントの期間中、環境省が経済産業省に対し100項目以上もの質問をしていたことがわかりました。

環境省の質問の例として、

「天然ガス火力などの燃料の複数案が考えられるが、最終的に石炭火力としたのはなぜか?」

「重大な環境影響がないと判断するに至った過程を示してほしい」

「リプレースというが、改善どころか悪化するのでは?環境アセスメントに記載されている”現状”の意味をしっかり明記せよ」

など、まさに、現在行われている裁判で原告代理人が指摘していることを、環境省も環境アセスメントが行われているときに指摘していたことが判明しました。

これらの環境省の質問や意見に対し、経済産業省からの回答は事業者の利益を守るような回答が多く見受けられました。(詳細は、後日、横須賀石炭火力行政訴訟のHPに掲載される迅美書面16をご覧ください。)

繰り返し指摘される気候変動の深刻さ

小島弁護士からは、改めてこの環境アセスメントの問題点や石炭火力発電所がもたらす影響についての陳述がありました。本訴訟全体の要点として、

  1. 原告らの生命、健康、住居などの財産等への危機が差し迫っていること
  2. 発電所の稼働は多大な温室効果ガスの排出をもたらし、原告らの生命、健康、住居などの財産、食料の危機など、深刻な危険を増大させ、より切迫させること
  3. CCSやアンモニア発電は稼働させる理由にならないこと
  4. 石炭火力を発電させなくても、電力不足にはならないこと
  5. 本件アセスメントの手続きは多くの重大な瑕疵があり、その手続きの不適切さが著しいこと

の5つにまとめられました。

気候変動の影響は、気候危機と呼ばれるほどに深刻化しています。人間への影響として、日本でも今年すでに多くの方が豪雨災害の被害をうけ、8000人の方が熱中症で救急搬送されています。また、インフラへの影響も深刻で、本行政訴訟の対象となる石炭火力発電所が建設される横須賀市でも、2021年11月9日に豪雨により道路が冠水し、3年前にも市内で道路の冠水が起きています。国外でも、気候変動の影響は深刻です。オランダの最高裁判所やフランスの行政最高裁判所などでは、気候危機を危機として受け止めた判決が出てきており、ドイツの連邦裁判所については、「気候危機は壊滅的で終末的な規模の環境破壊である」と、気候危機は深刻な問題であるとの認識を示しているそうです。

CCSやアンモニア混焼技術を用いたとしても、上述のように気候変動による影響がすでにある中、気候変動の原因であるCO2を追加的に排出させることは許されないこと、エネルギー消費量の削減など適切な政策措置が取られれば石炭火力を稼働させなくても再生可能エネルギー100%の実現は可能であること、そして何より、この石炭火力発電所に係る環境アセスメントの手続きが不適切であることを強調されました。

迫力のある意見陳述が2名の原告代理人からありました。

しかし、第9回期日も、冒頭では被告からも陳述を行うことが確認されたものの、原告代理人の陳述のみで終わり、もどかしさの残る裁判でした。

次回期日のご案内

本日の裁判の報告会は、12月21日(火)18:30〜19:30にオンラインにて開催されます。

申し込みはこちらです。

▼第9回期日 オンライン報告会(12月21日)

https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_KQqcIZ-SRyWBG1TAAPWJqQ

次回は、代理人だけでなく、原告の意見陳述及び尋問があります。ぜひ、原告の生の声を聞きにいらしてください。

▼次回の期日日程はこちら(傍聴前に、こちらで確認の上、お越しください)

2022年2月21日(月)13:30〜@東京地方裁判所第103号法廷

*2022年3月7日(月)10:30〜@東京地方裁判所第103号法廷(2/21に意見陳述の都合がつかなかった原告の意見陳述が予定されています。)

COP26でも、石炭火力の段階的削減が合意されました。日本は先進国として、石炭火力から脱却することが求められています。

FoE Japanは引き続き、横須賀石炭火力訴訟に関わる原告や発電所建設の中止を求める地元住民、市民とともに、日本の脱石炭を求め活動していきます。

(髙橋英恵)

【COP26 vol.10】グラスゴー会議閉幕 – バランスを欠く合意に途上国は失望

交渉2週目の最終日。気候正義を求める市民たち

10月31日より開催されてきた第26回国連気候変動枠組条約締結国会議(COP26)は、1日の延期を経て、11月13日夜に閉幕しました。

閉会式では、議長Alok Sharma氏や国連気候枠組条約事務局長Patricia Espinoza氏が、COP24からの宿題となっていたパリ協定第6条、第4条、第13条の議論をまとめられたことを理由に「COP26は成功した」と発言する一方、後発開発国やアフリカ、島嶼国は、緩和目標強化の作業計画がグラスゴーでの合意(Glasgow Climate Pact) に盛り込まれたことは歓迎するものの、今回強く求めていた適応や損失と被害に対応するための資金提供を先進国がほぼ拒絶し、バランスを欠く合意であるとして失望の意も示しました。

また、決定文書に記載された石炭火力の段階的廃止に関する文言(para20)についても、インド等の反対があり、閉会式前のCOP決定文書案は、“Phase out(段階的廃止)”が”Phase down(段階的削減)”へと、文言が弱められた形となりました。パリ協定の1.5℃目標達成のためには先進国は2030年までに、その他の国も2040年には石炭火力発電を全廃する必要がありますが、ただでさえ弱かった文言がさらに弱くなったことは残念です。しかし、気候変動枠組条約の決定で、化石燃料対策が直接取り上げたことはかつてなく、文言が弱められたからと言って廃止の必要性が国際的に理解され、実際に各国が脱石炭に向けて動き出していることには変わりません。先進国が率先して石炭火力発電を廃止し、途上国のジャスト・トランジションを支援する必要があります。またその他の化石燃料に関しても、公平性に配慮した形でフェーズアウトを進めていく必要があります。

FoE Internationalの気候正義・エネルギープログラムのSara Shawは、今回の結果について、下記のように述べています

“今回の結果は、気候正義を求める市民団体が望んだ結果とは程遠く、炭素市場取引という形で、途上国の土地をオフセットのために使うことで、先進国に継続的な排出を許すものなりました。英国政府とその同盟国は、交渉をまとめあげた自分たちを褒め称えていますが、炭素市場については、合意が全くない方がましでした。

これはスキャンダルに他なりません。具体的な行動策を伴わずに、ただ単に1.5℃目標を言っているだけでは無意味です。COP26は、すでに気候危機にありながら、エネルギーシステムの変革や気候変動への適応策の実行、また、すでに起きている損失と被害に対応するための資金の乏しいグローバルサウスを裏切ったものとして記憶されるでしょう。これが最終的に炭素市場での取引が強制された瞬間であったことは今更驚くことではありません。炭素市場は、排出量の削減に消極的な先進国のためのものです。

多くのグローバルサウスの国々は、今回の会合に参加したり彼らの声を届けたりするうえで困難を伴った一方、化石燃料企業の存在感は大きいものでした。

今回の交渉結果は、世界全体の温室効果ガスの排出量を増加させてしまうことに加え、今世紀半ばまでに温室効果ガスを”ネットゼロ”にするといった弱いコミットメントや、途上国の土地での大規模植林をもたらす聞こえのよい自然に基づく解決策は、実際には先進国自らの排出を相殺するためであり、途上国や先住民族の土地収奪を加速させてしまいます。

気候正義の実現を求め、COP26期間中に開催された気候マーチに参加した15万人以上の市民は、何が本当の気候変動への解決策か知っています。化石燃料に依存しない社会への公正な移行、そして先進国から途上国への気候変動対策のための資金を供与することです。

残念なことに、豊かな国々は「逃亡条項」を選択してしまったものといえます。”

今回の決定文書には、”Climate Jusitce(気候正義)”という言葉が記載されました。気候変動への影響をより深刻に受ける国々や人々への配慮が会議期間中の首脳サミットやイベントでのスピーチに散りばめられていましたが、いずれも中身のない言葉に過ぎず、会議場内での交渉では先進国が団結して、すでに厳しい気候変動の影響を受けている開発途上国の声を断固として拒絶し続けました。決定文書の内容は、公平性の原則やシステムチェンジからは程遠く、歴史的累積排出量の責任を負う先進国の大量排出を今後も許し、途上国に排出責任の肩代わりを求め、かつ彼らが必要とする支援を拒み続けるものです。

議長国英国の下で、先進国は気候植民地主義的な枠組みを推進し、既存の権益と世界での優位の維持を優先しています。決定文書に盛り込まれた言葉とは裏腹に、パリ協定の1.5℃目標の実現を危うくするものでもあります。ですが、早急で野心的な行動の必要性は変わらないのです。FoEグループは引き続き、Climate Justiceの真の実現に向けて活動していきます。

(小野寺ゆうり、高橋英恵、深草亜悠美)