福島県県民健康調査委員会 甲状腺がん多発と被ばくとの因果関係で紛糾

写真上:「県民健康調査」検討委員会開催風景

7月8日、福島県「県民健康調査」検討委員会が開催され、その中で、甲状腺検査2巡目の結果、甲状腺がんやその疑いとされた71人について、「被ばくとの関連は認められない」とする甲状腺検査評価部会(部会長は鈴木元氏)の「まとめ」が報告されました。
NHKなどの報道では、「概ね了承」とされていますが、これは事実ではありません。甲状腺がんの発生率が地域がん登録で把握されている甲状腺がんの有病率に比べて「数十倍高い」としているのにもかかわらず、また、明らかに地域差がみられるにもかかわらず、それに関する評価が行われていないことに、「納得できない」「腑に落ちない」とする成井委員・富田委員らの強い発言もあり、委員会は紛糾しました。

「数十倍高い」

甲状腺検査評価部会まとめは、こちらです。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/336455.pdf
「先行検査における甲状腺がん発見率は、わが国の地域がん登録で把握されている甲状腺がんの罹患統計などから推計される有病率に比べて、数十倍高かった。本格検査(検査 2回目)における甲状腺がん発見率は、先行検査よりもやや低いものの、依然として数十倍高かった」とし、甲状腺がんの多発については認めています。 (←報道には乗らないのですが、結構重要なポイントではないかと思います)

また、地域別の悪性ないし悪性疑いの発見率については、「単純に比較した場合に、避難区域等13市町村、中通り、浜通り、会津地方の順に高かった」としています。

しかし、性・検査時年齢、検査実施年などのさまざまな要因が上記の地域差に影響を及ぼしているとし、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)で公表された年齢別・市町村別の内部被ばくを考慮した推計甲状腺吸収線量を用いて試算した結果、「線量の増加に応じて発見率が上昇するといった一貫した関係は認められない」として、放射線被ばくとの間の関連は見られない、としています。ちなみにこの分析は、実数データが付されていないため、外部専門家が検証できない状況となっています。また、県民健康調査で集計からもれている11人については分析の対象とされていません。

「4地域の間で明らかな差」

これに対して、成井委員(ハートフルハート未来を育む会理事長、福島県臨床心理士会推薦)は以下のように反論。
・(実際に執刀した)鈴木眞一教授は、過剰診断ではないと言っている。
・避難区域等13市町村、中通り、浜通り、会津、という地域区分は、当初の線量からしても妥当ではないか。この4地域の間で甲状腺がんの発見率に相当の差が生じている。確かに検査間隔や検査年度などのいろいろな要因が入ってくるが、それを排除した分析をやるべき。それなくして「因果関係がない」とは言えない。
・先行検査(1巡目)では、地域ごとに明確に差がでなかったのに、本格調査(2巡目)では、明確な差がでた。それはなぜなのか、検討してくださいと鈴木元先生にはお願いしてきた。地域区分をやめてUNSCEARのデータを使ったということだが、先行検査の手法は地域差の分析であった。なぜ同じ手法を継続しないのか

以下委員の主たる発言です。
鈴木元部会長:4地域比較ができない理由は、同じ年度に測った年度で違う線量を比較して解析しているため
成井委員:UNSCEARだって同じ。自治体の中でも様々な線量が含まれている。推定値に過ぎない。
鈴木元部会長:UNSCEARの線量評価の一番の問題は食べ物からのものを一律にしている点。今回使っているのはそれを差し引いたもの。
高野委員:先ほどの成井委員の発言で、鈴木眞一先生は「過剰診断でない」とはおっしゃっているというが、過剰診断は病理で発見できるものではないので、鈴木眞一氏は過剰診断の定義をご存知ないということ。(満田注:その時点での甲状腺がんが一生涯どのような挙動をするのか、手術時点ではわからない、一生涯、健康に影響を及ぼさないがんである可能性もあるはず、という意味だとおもいます・・・)
富田委員:因果関係がないという結論になるのは、腑に落ちない。「(甲状腺がんが)数十倍高い」「避難区域13市町村、中通り、浜通り、会津地方の順に高い」ということからは、事故との関係があるという結論になりそうだ。他の要因があるにしろ、「事故との関係がない」と言い切ることは強引。
稲葉委員:たいへん低い被ばく線量の中で分析をしている(だから統計的に有意な結果を得られにくい)、ということを明確にすべき。
春日委員:低い被ばく線量の中で分析をしていること、あくまで第2回目の検査を対象としたものであることを明確にする文章とすべき。
清水一雄委員:「関連はみとめられない」と言い切るのは早い。

星座長は、「座長預かりにしてくれないか」とまとめようとしましたが、春日委員がそれに反対。結論としては、座長が修文案を示し、委員がそれを確認する、というようなことになりました。

そのあとの記者会見で、成井委員は「座長あずかりにしたつもりはない」、富田委員は、「少数意見として意見を併記させていただくことになるかもしれない」と述べました。
「なぜ、ここまで急ぐのか」という記者の質問に対して、星座長は、「自分の任期中に結論を出したい」との一点張りでした。

UNSCEARの線量との関係の分析などについては、以下の資料にあります。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/336454.pdf
FFTVでこれに関し、OurPlanet-TVの白石草さんに解説してもらいました。
https://www.youtube.com/watch?v=C0EuWCpHSUs

本件に関しては、「あじさいの会」のメンバーや当事者が、福島県庁に要望書を提出しています。
甲状腺がん患者が福島県へ要望書?県民の意見の反映求め
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2406

甲状腺がん・疑い、218人に

今回は3巡目検査、4巡目検査の状況について報告がありました。
<3巡目>
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/336451.pdf
2次検査対象者 1,490 人のうち 1,081 人(72.6%)が受診した段階です。
悪性・悪性うたがい:24人(うち、手術実施は18人。すべて乳頭がん)
男9:女15
腫瘍の大きさは 5.6mm から 33.0mm
24人の前回検査の結果は、A判定が16人、B判定が5人
<4巡目>
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/336452.pdf
一次検査は対象者の35.4%、二次検査は対象者の52.6%が受診した段階です。
悪性・悪性うたがい:5人(うち、手術実施は1人、乳頭がん)
男2、女2
前回A判定は4人、B判定が1人。

これにより、1~4巡目および25歳節目検診の検査の悪性・悪性疑いは218人(うち良性1人)となりました。
全体像をみる上で以下のまとめが便利です。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/336460.pdf

甲状腺検査のお知らせ文

甲状腺検査のお知らせに記載すべきメリット・デメリットに関しても議論となりました。 資料はこちら。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/336456.pdf
ご覧の通り、メリット、デメリットについてがっつりかかれ、デメリットについては、それに対する取り組みが書かれています。
それでも、前回の甲状腺評価部会のときの文案からは少しやわらげられているかもしれません。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/330654.pdf
このときは、デメリットの最初の項目に以下のように書かれていました。
「将来的に症状やがんによる死亡を引き起こさないがんを診断してしまう可能性があります。
若い方の甲状腺がんは、一般的に重症になることが少ないとされています。自覚症状等で発見される前に、超音波検査によって、甲状腺がんを発見することにより、がんによる死亡率を低減できるかどうかは、これまで科学的に明らかにされていません。」

この件についても、委員からさまざまな意見が出されました。たとえば、ある委員からは、国際的にも甲状腺の一斉検査を行うべきでないことになっていることを明記すべきと発言。星座長もそうすべきと言っていました。
以下の富田委員の意見が、ことの本質を表しているのではないかと思いました。

富田委員:このお知らせをみて、「(デメリットが大きいから)やはり検査を受けるのをやめておこう」となり、そのあとで甲状腺がんになり、「あのとき検査を受けておけば」ということになり、福島県が訴えられるような場合があるかもしれない。自己責任と言ってしまってよいのか。 もし自己責任ということであれば、その旨明記すべきではないか。

こころの健康度などについて

平成29年度の「こころの健康度・生活習慣に関する調査」の結果が報告されました。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/336444.pdf
p.13にある、気分の落ち込みや不安に関して支援が必要な人の割合など、心の健康に関する状況は改善しているようですが、県内にくらべ県外の人たち(避難者など)の要支援割合が高いという結果になっています。
心の健康は、生活の基盤の安定性と密接な関係にあるでしょうから、避難者への相次ぐ支援の打ち切りをしておいて、心の健康だけを支援(?)しようというのは、問題だと思いました。
ちなみに、p.17の放射線の健康影響の認識については、放射線のもたらす長期的な影響(後年影響)に関する認識についてきいています。
「可能性は高い」「可能性は非常に高い」とする人の割合は事故当初の平成23年から減少しているものの、平成26年以降は一定割合(32~33%)を保っているとのこと。福島県や国による放射能安全PRは、それほど功をそうしていないのかもしれません。(満田夏花)

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G20大阪サミット- 気候危機への緊急性に欠けた幕切れ

先週28、29日に大阪でG20サミットが開催されました。気候変動問題も主要議題の一つでしたが、残念ながら前進はなく、むしろ後退したと言っても過言ではありません。

FoE Japanを含む環境団体は、28日、議長国である日本の安倍首相に対し、脱石炭を求めるアクションを大阪市内で敢行。安倍首相に似せたマスクを被ったメンバーが、石炭に依存する姿を演じました。

またサミット開催を前にアジア各国でも日本に対し石炭火力や化石燃料プロジェクトからの撤退を求めるアクションが相次いで行われました。

日本国内でも、現在、石炭火力発電所の建設計画が進められている横須賀や神戸で住民と環境団体による脱石炭アクションが行われました。

フィリピンでのアクション

今回のG20首脳宣言では、アメリカを除く各国が国別貢献(NDCs、各国が定める気候変動対策)を維持またはアップデートすることが確認されました。しかし各国が定めるNDCではパリ協定の1.5℃目標どころか、2℃目標も達成できないことはすでに明白であり、各国のNDC強化に対するより強いコミットメントが求められていたなか、そこまで踏み込んだ文言が盛り込まれなかったことは非常に残念な結果と言わざるを得ません。

さらに米国のパリ協定離脱が、「米国の労働者と納税者に対し不利になる」という理由の下、首脳宣言の中で、改めて確認されました。温室効果ガスの大量排出国であり、歴史的責任の大きい米国がパリ協定から脱退し、気候変動政策を遅らせることは、すでに気候変動の影響を受ける多くの途上国にも大きな影響が生じかねません。

また再生可能エネルギーへの言及がほとんどなく、二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)などを強調している点も問題です。

さらにG20諸国は2009年から化石燃料補助金の撤廃をかかげてきましたが、今回の首脳宣言でも「化石燃料補助金を中期的に合理化し、段階的に廃止する共同のコミットメントを再確認する」という文言にとどまりました。

日々深刻になる気候変動の影響に立ち向かい、これ以上の危機を食い止めるためには、一刻もはやい脱炭素化が必要です。また日本の石炭火力発電所の輸出は気候変動を悪化させるだけでなく、発電所建設現場での人権侵害や土地収奪、住民の生計手段の喪失にも繋がっています

FoE Japanでは今後もアクションや提言を通じ、脱石炭や海外支援のあり方の改善を求めていきます。

(深草亜悠美)

リニア工事の実態~大鹿村釜沢集落

長野県大鹿村釜沢。標高1000mにある鎌倉時代から続く自然と共生する美しい集落です。畑の脇を人一人通るのがやっとの細い急な坂道を息を切らしながら家にたどり着くと、昔ながらの古民家が出迎えてくれます。自分で手直ししながら大切に使う家、近くの森で取れる薪、斜面の小さな野菜畑。住民達がこの土地を愛し、ここでの暮らしを大切にして生きていることがうかがい知れます。利便性や利益の追求からは得られない豊かさを求め、この集落では県外などから移り住んで来た人々が少なくありません。

静寂と自然の音、人々の丁寧な暮らしから育まれる音のみが存在してきた釜沢集落に、2008年からリニア中央新幹線のトンネル工事のためのボーリング調査が始まり、その後の24時間ボーリング工事の騒音被害を受けて集落を離れて行く人々も出てきました。2017年末にはダイナマイトの発破が始まり、「ドーン」という住民が地震か、雷かと思うほどの振動と騒音が起こりました。これが昼夜を問わず続く中、元々脆弱な地盤の集落内では、落石や石垣の崩壊、コンクリートのひび割れ、雨漏りなどが生じました。しかしリニア工事との因果関係は認めらませんでした。「村の他の集落の人からは、そんなところに住んでいるやつが悪いと言われることもあります。でも、そんなところで発破作業すること自体がどうなのか」と、釜沢集落の前自治会長の谷口昇さんは憤ります。

現在、釜沢にはまた別の音が生じています。トンネル工事から排出される残土を積み重ねる鎮圧する音が響きます。かつて人工物がほとんど見えることのなかった集落の景色の中に、積み重ねられる残土の山、工事現場が見えます。JR東海は南信の自治体各地で発生土置き場受け入れの交渉をしていますが、現在までに長野県内のリニアトンネル工事から発生する970万立米の残土の行き場はほとんど決まってなく、行き場のない土は釜沢にも仮置きされています。田畑が残土で埋め尽くされていく中、いつまで「仮置き」されるのか住民の不安は募ります。住民の内田ボブさんは、以前は上空を飛んでいた「クマタカやイヌワシが見えなくなった」と心配します。谷間に発破音や工事音が響くここ2年ほどの間に生態系も変わってしまった可能性があります。

大鹿村では、リニア工事の影響は釜沢集落の問題だけではありません。2017年には、トンネル掘削の発破が原因で土砂崩落が起こり、大鹿村と村外をつなぐ重要な生活道路が寸断されました。大鹿村にはコンビニもスーパーもないことから、多くの住民は日々の買い物や医療機関受診、通勤等のために村外に通っています。代替ルートとされたのは、両側を崖に挟まれた離合の難しい細い道路。道路が凍結する時期でもあり、高齢者や運転に自信のない方は実質的に陸の孤島に閉じ込められた形になりました。

リニア工事の影響は物理的な影響だけではありません。JR東海が一方的に定めたルールによって、住民説明会から村のリニア対策委員である住民の同席を拒否したり、住民に十分な説明もせず、住民が納得していないまま「理解が得られた」ことになって進められていたりと住民の意思を尊重する姿勢は見られません。リニア工事による道路改良や道の駅の建設等の懐柔策とも取れる事業が持ち込まれることで、地域内に対立や分断も生じています。

これから本格的に工事が始まる青木地区。残土運搬や青木川の水量への影響が懸念されています。青木地区に実家のある紺野 香糸さんは、「山梨を見に行ったとき、本当にこんな風になっちゃうんだって思ったけれど、やっぱり実際自分の村もこんな風になってきちゃったんだって思う」と話します。「始まってしまったから諦めるしかないというのは違う。本当に長いものが始まってしまったから、それに向けて住民がどう感じていたり、どういう影響を受けるのか、私たちは知っておかなければならない。」

明日、6月30日(日)、大鹿村のリニア工事の実態について、都内でリニアの走る大田区で報告会を開催します。ぜひ住民の生の声を聞いてください。沿線では未だ工事が始まっていない場所も、土地収用が進んでいない場所も少なくありません。すでに工事が始まっている地域で何が起きているかを知ることで、今後の開発を止めることも可能かもしれません。

http://www.foejapan.org/aid/doc/evt_190630.html

日本国内外での脱石炭を!横須賀、アジア各国と共に発信

昨日6月26日、横須賀市久里浜にある横須賀石炭火力発電所建設計画地に隣接する緑地で、日本政府に対して実質的な気候変動対策の推進、そして、早期の脱石炭への舵切りを求める市民アクションを実施しました。

このアクションは、28日から大阪で開催されるG20の議長である安倍晋三首相に対し、大阪G20サミットを機に、日本もパリ協定に基づく1.5℃目標達成に向け、脱石炭への舵きり、そして、G20議長としてのリーダーシップをとるよう求めるものです。

アクションには、地元の横須賀市民だけでなく、応援に駆けつけた蘇我の会を中心とした東京湾の会のメンバー、FridaysforFutureTokyo、そして、脱石炭への想いを強く持つ市民約100人が参加。

旧横須賀火力発電所の解体作業の現場をバックに、石炭を手に満面の笑みを浮かべる安倍首相を形どったパネルが登場し、横須賀の石炭火力発電所の中止を求めるバナーなどをかかげての写真撮影、各団体から石炭火力発電中止を求めるメッセージが発信されました。

参加者の皆と。
横須賀行政訴訟原告団!

この日は、日本が石炭技術輸出を進めている国々や、石炭事業で関連のある国であるフィリピン、インドネシア、インド、パキスタン、バングラディッシュでも、脱石炭などのメッセージを掲げたアクションが、日本に脱石炭を求める『NO COAL JAPAN』キャンペーンの下で行われました。

フィリピンでアクションを起こしているメンバーの一人のメッセージを、紹介します。

「石炭や化石燃料を燃やすこと、容赦ない自然破壊、増え続ける化石燃料の採掘、利益のための生産。これらは全て、大気中の温室効果ガスが増える原因であり、そして、これが、climate crisis, 気候危機をもたらしている。

日本は、G20ホスト国として気候変動対策に貢献するといいつつ、石炭や化石燃料のプロジェクトを継続したり、また、新規に開拓したいりするための公的資金の最大の提供国です。

私たちは、石炭と化石燃料の資金の最大の供給源としての日本に、スポットライトを当てたい。

そして、私たちは、日本政府が石炭火力をやめるよう、要求します。

石炭プロジェクトの拡大は、私たちを危険にさらし続けます。

私たちは、家族の生存と安全を脅かす脅威に直面し続けていくことはできません。

このような石炭プロジェクトの拡大はできるだけ早くやめなければならないはずです。

We demand that they say goodbye to coal.  Sayonara Coal!” 」

石炭廃止を求める想いは、世界において共通です。

6月26日のみにとどまらず、横須賀、神戸等国内で進む石炭火力計画に反対する人々、そして日本の石炭融資に苦しむアジアの国々とともに訴えます。

また、この日、横須賀行政訴訟についての特設サイトが開設されました。

裁判の期日は、こちらに掲載される予定です。たくさんの方が傍聴すれば、それだけ市民の関心が高いことを裁判官に示すことにつながります。

ぜひお誘い合わせの上、傍聴にお越しください。

横須賀石炭訴訟 日本語サイトはこちら   英語サイトはこちら

横須賀訴訟のポイントについてはこちら

横須賀石炭火力、提訴へ!日本4件目の気候変動訴訟。その背景とは?

(高橋 英恵)

フランス学生最大イベント! Youth For Climate現地報告

初めまして。6月19日から約6週間、FoE Japanでインターンをすることになったカミーユ・パラです。南仏出身の大学四年生で、エクサンプロヴァンス政治学院で国際法、国際関係と国際経営学を専攻しています。環境に関わる問題とその解決法や、特に沖縄に興味があり、FoEでインターンシップをしたいと思いました。6週間という短い期間ですが、色々経験できたら嬉しいです。趣味は競技かるた、チーズケーキ喫茶店めぐり、旅行とカラオケです。絵を書いたり、外国語で小説を読んだりするのが好きです。最近韓国語の勉強にはまっています。宜しくおねがいします。

今回は、私がフランスで経験してきた、Youth For Climate運動について、紹介したいと思います。

3月15日(金)、フランス全国の中学生、高校生と学生が一斉にYouth For Climateに参加しました。授業に行かずに、運動に加わる学生や、それを支援するする社会人の姿もあり、フランス中を震わせた大イベントです。

フランスで起きているYouth For Climate運動というのは、その名の通り、若者が環境のために訴える運動のことです。その中心のテーマになっているのが気候変動、生物多様性、社会正義であると同時に、人と人が関わって絆が生まれるような運動でもあります。

同じ日にフランス各都市に開かれて何万人も参加したそうです[1]。その中でも、南仏とエクサンプロヴァンス(Aix-en-Provence)で起きた運動が盛大でした。最大学生数を誇る大学の一つであるエクスマルセイユ大学、エクス政治学院の学生や、各地方高校と中学校の生徒たちが肩を並べて、勢いよくミラボー通りを歩きました。その数2000人を上回りました[2]。エクスの人口の約7分の1にもなる規模でした。看板には「まだ間に合う!」や「次の世代を大事にしよう」、「馬鹿な真似はよせ、化石燃料に手を出すな!」など、強いメッセージが込められていました。その点、温和な日本とは違って、フランスのストライキのアグレッシブさが確認できました。

出典:http://sur.laprovence.com/WIm-a?fbclid=IwAR1wTyGuq6rQfvjNY48_BZcMScrEQSO6I1Aw8BHbid4fProfS5SSk2q9y08
出典:Youth For Climate Aix-en-Provence FB page : https://www.facebook.com/yfcaix/photos/rpp.322037085083986/336983690255992/?type=3&theater
出典:https://www.facebook.com/yfcaix/photos/rpp.322037085083986/336983630255998/?type=3&theater

また、Youth For Climate運動者たちに混じって「ストップマクロン!」の看板も目に入りました。このようなメッセージを発していたのは、gilets jaunes(ジレ・ジョーヌ。「イエローベスト運動」「黄色のベスト運動」と日本では報道されている。)。ジレ・ジョーヌは昨年秋から始まった、燃料税の値上げに反対する運動で、今では燃料税の値上げだけでなく、他にも国に対する様々な不満を表明しています。その名は、団員の着ているジャッケットの色から来ています。警官との対決のせいで怪我人が出ているほどの激しいストライキは、フランス革命とも思わせる大事件です。

「燃料税の値上げに反対」という、一見Youth for Climateの主張とは反対の訴えを掲げているますが、彼らの主張の根本には、社会正義の実現があります。多様な主張を巻き込んだフランスのYouth For Climate運動は、とても賑やかで、人と人の絆が生まれるような雰囲気でした。

(インターン・カミーユ)


[1] https://www.notre-planete.info/actualites/2097-marche-climat-France-mars-2019

[2] https://www.notre-planete.info/actualites/2097-marche-climat-France-mars-2019

危機に瀕す「環境と民主主義」にどう立ち向かう?~若者たちからのメッセージ

6月1日、文京区区民会議室にて、トークイベント「危機に瀕する『環境と民主主義』」~次世代の私たちがつくる未来」およびFoE Japan総会を開催しました。

トークイベントの登壇者は全員20代の若者。沖縄、フィリピン、インドネシアなど、各地で繰り広げられる環境や人権、民主主義を守るためのたたかいと自らの想いを語りました。

まず、「辺野古」県民投票の会の元山仁士郎さんが登壇。辺野古米軍基地建設を問う沖縄県民投票を呼びかけたいと思った目的や、いくつかの自治体で投票を行わないという方針を発表したとき、全県実施をハンガーストライキによって訴えた想い、圧倒的な「辺野古米軍基地建設ノー」の結果を受け、本土の私たちが問われていることについて、迫力のあるお話しをいただきました。「とにかく沖縄の基地のことを、話せる“空気”をつくりだしたかった」「自分も宜野湾市民で、投票できないかもしれなかった。“投票する権利”を守るため、自分ひとりでもできる行動をと思った。体をはって訴えることによって状況を打破したかった」という言葉が印象的でした。

続いて、FoE Japanの新スタッフ3人、松本光、杉浦成人、高橋英恵が、それぞれの活動を踏まえて報告。松本からは、日本に輸入されるバナナの一大拠点であるフィリピンの日系企業スミフルフィリピンが経営する農園・梱包工場で、労働者への深刻な人権侵害(殺傷を含む銃撃、放火等を含む)について報告しました。

杉浦からは、インドネシアで日本のODAにより進められているインドラマユ火力発電所で、土地やくらしを守るため、事業に反対を続けている農民が、「国旗侮辱罪」の冤罪をきせられ、投獄された状況を報告しました。高橋からは「クライメート・ジャスティス」という言葉にあらわされるように、気候変動の本質は格差であること、一部の先進国や富裕層の責任で、発展途上国や貧困層が最も被害をうけていること、世界中の若者たちが未来のためにたちあがったFridays for Futureやグローバル・マーチの取り組みなどについて報告しました。

4人の話はテーマこそ違え、国家や大企業といった強い「力」によって、人々が守ろうとしている土地や環境が奪われようとしている実態、それに立ち向かう人々の勇気と理不尽な弾圧など共通点がありました。

私たちにできることはある

「肝心なのは、あきらめないこと」

若者たちが発した力強いメッセージに心動かされた一日となりました。

FoE Japanは3人の新スタッフを迎え、環境や民主主義の危機を乗り越えるため、微力ですが、活動を継続していきたいと思います。(満田夏花)

FoE Japan総会後、参加者と。

横須賀石炭火力、提訴へ!日本4件目の気候変動訴訟。その背景とは?

今週月曜日の5月27日、東京電力と中部電力の合弁会社である株式会社JERA(以下、JERA)が、現在建設を進めている横須賀石炭火力発電所新1・2号機130万kW(65万kW☓2基)について、発電所の周辺住民等45人が経済産業省に対し、2018年11 月30日に発行した環境影響評価書の確定通知の取り消しを求め、東京地方裁判所に提訴しました(以下、横須賀石炭火力行政訴訟)。

日本における気候変動訴訟は、2017年9月の仙台PS差止裁判、神戸石炭火力発電所計画における2018年9月の民事訴訟および同年11月の行政訴訟に続く、3地域4件目になります。

本記事では、横須賀石炭火力行政訴訟の背景や訴状の内容を、解説します。

5月27日昼過ぎ、提訴のために東京地方裁判所へ。
日差しの強い中、横須賀、千葉から原告が集まりました。

どんな訴訟?

世界では、地球温暖化対策や大気汚染の防止の観点から、パリ協定のもとで石炭火力発電からの脱却が求められ、産業界を含め脱石炭火力発電の動きが続いています。

しかし、JERAは、このような世界の流れに逆行して、横須賀市久里浜に石炭火力発電所を新設する計画を進めています。

新設発電所を建設する場合、電気事業法と環境影響評価法等に基づく環境影響評価手続(以下、環境アセスメント)において適正な環境影響評価をし、経済産業省からの承認を得なければなりません。しかし経済産業省は、JERAが適正な環境アセスメントを実施せず、環境の保全について適正な配慮も十分に検討されていないにもかかわらず、環境影響評価書の変更を要しないとして、環境アセスメントの結果である環境影響評価書の確定通知を発し、環境アセスメント手続を終了させました。

この新設発電所が稼働した場合、発電所の近隣住民は二酸化炭素(以下、CO2)や大気汚染物質等の排出に伴う被害を受けるおそれがあります。そこで、この新設発電所による健康被害等を危惧する原告らが、経済産業大臣が発した環境影響評価書の確定通知を取り消すことを求めて起こしたのが、今回の行政訴訟です。

訴訟における争点は?

訴訟における争点は、

  1. 新設発電所は環境アセスメントの簡略化が許される案件でないにも関わらず、事業者JERAは簡略化した環境アセスメントにて手続きを終え、この状況に対し経済産業省が変更を命じなかった点。かつ、アセスメントの簡略化に伴い、以下の通り環境影響評価法等を十分に満たしていない点。
    • 新設発電所のCO2削減対策内容とその評価の誤り、燃料種の検討の欠如。
    • SOx、NOx、PM2.5、水銀等の石炭火力における環境汚染にかかる検討が不十分。
    • 温排水の影響の検討が不十分。
  2. CO2の排出量が大きく、国際的な枠組みであるパリ協定に反する。

という点です。

今回の環境アセスメントで何が問題だったのか?

東日本大震災での福島第一原発事故後の電力需給の逼迫を契機に、環境省は2012年3月、「火力発電所リプレースに係る環境影響評価手法の合理化に関するガイドライン」(以下、合理化ガイドライン)を取りまとめました。合理化ガイドラインとは、既設発電所の老朽化に伴い施設を更新(以下、リプレース)する際、温室効果ガスや大気汚染物質による環境負荷の低減が図られる事例が多いことを理由に、一定の条件を満たす場合には環境アセスメント手法を簡略化することを認めるものです。

この合理化ガイドラインについて、環境省と経済産業省は、2012年9月に環境アセスメントの迅速化を検討する「発電所設置の際の環境アセスメント迅速化等に関する連絡会議」を設置し、同年11月、以下の2点に該当する案件を合理化ガイドラインの適用対象として定めました。

  • リプレース後に発電所からの温室効果ガス排出量、大気汚染物質排出量等の低減が図られる。
  • 対象事業実施区域が既存の発電所の敷地内または隣接地である。

そのほか、2013年3月、環境省は合理化ガイドラインの適用対象案件は、環境アセスメント完了前に旧発電所の撤去を行うことができると改定しました。

今回の横須賀の発電所新設計画は、この合理化ガイドラインが適用されるとして環境アセスメントが実施されました。横須賀の発電所新設計画は、本当にこの合理化ガイドラインの適用対象であったのか、という点が最大の争点です。では、横須賀火力発電所の適正について考えてみたいと思います。

横須賀新設計画は合理化ガイドラインの適用対象案件?

今回の訴訟の契機となった横須賀石炭火力発電所計画。

新設発電所の建設予定地は、1960年以来、火力発電所(以下、旧横須賀火力発電所)がありました。

具体的には、1960年に1号機、1962年に2号機と、2つの石炭専焼火力発電所が設置されました。その後、1970年までに重油/原油混焼の3~8号の6機が順次設置、1972年には1号機・2号機いずれも重油火力に転換され、計8機の火力発電所が稼動していました。また、1971年には動力をガスタービンとする石油火力発電機が設置・稼動されました。

 しかし、1、2、5、6号機は2000年末に稼働停止、7、8号機及び2号ガスタービンも2001年末で稼働停止し、新潟中越地震などの臨時の稼働しかしない長期計画停止の状態でした。そして、2004年12月20日に1号機が廃止、2号機も2006年3月27日に廃止され、2010年4月には、すべての発電所が稼働停止(長期計画停止)となりました。  その後、東日本大震災による福島第一原発事故により、供給電力が不足した影響で稼働が図られましたが、3号機、4号機、2号ガスタービン以外は稼働できず、2014年以降は再びすべての発電所が稼動停止の状態にありました。つまり、旧横須賀火力発電所の温室効果ガスや大気汚染物質の排出量は2014年以降、既にゼロと評価されるべき状態であるわけです。

建設予定地近くの公園、くりはま花の国から。計画では遠くに見える海を隠すように、発電所が建設される予定となっている。(2018年11月筆者撮影)

合理化ガイドラインは、稼働中もしくは稼働可能な火力発電所のリプレースの場合のみ適用されるべきものです。稼働停止が長く続き、稼働可能とはみなし得ない旧横須賀火力発電所には、この合理化ガイドラインは適用されないものであると言えます。また、アセスメントの簡略化に伴い、

  • 新設発電所のCO2削減対策内容とその評価の誤り、燃料種の検討の欠如。
  • SOx、NOx、PM2.5、水銀等の石炭火力における環境汚染にかかる検討が不十分。
  • 温排水の影響の検討が不十分。

等、環境影響評価法等を十分に満たしていないとの問題点も指摘されています。

国際的な気候変動対策の枠組みにも逆行する横須賀計画

2015年12月、パリ協定が採択されました。日本も2016年11月8日に、パリ協定を批准しました。

パリ協定は、世界の平均気温の上昇を産業革命前から2℃を十分に下回る水準、できる限り1.5℃まで抑制することを目的とした国際条約です。締約国は、今世紀後半の早い時期に世界全体で温室効果ガスの排出を実質ゼロとする長期目標を定め(第4条第1項)、各国に削減目標と政策措置を立案し条約事務局に提出、措置を実施することが義務付けられています(第4条第2項)。また、国内法である環境基本法第5条においても、国際協調のもとで地球環境の保全に積極的に推進すべきとされています。

そこで、気候変動の防止について重要な鍵を握るのは石炭火力発電からの早期の脱却です。 火力発電所は、燃料の燃焼に伴い、大量のCO2や大気汚染物質を排出します。燃料によって含有する成分が異なるため、石炭、石油、天然ガスのそれぞれの排出量は大きく異なりますが、石炭火力発電はたとえ高効率設備であっても、発電電力1単位当たりの石炭火力発電からのCO2排出量は、天然ガス火力発電の約2倍にあたります。そのため、CO2排出を実質ゼロとしていくためには、石炭火力からの早期の脱却が不可欠です。

Don’t Go Back to the 石炭HP(https://sekitan.jp)より

実際、世界の流れを見てみると、フランスは2021年、イギリスとイタリアは2025年、カナダは2030年に石炭火力発電をゼロとすることを宣言して、ドイツも2038年までに石炭火力発電から脱却する方針を明らかにしています。

脱石炭の潮流の背景には、再生可能エネルギーを普及させていく上での戦略も関係しています。太陽光や風力発電等の再生可能エネルギーは出力変動が大きいため、火力発電の出力調整によって供給量をコントロールする必要があります。一方、石炭火力発電所は、一旦石炭を燃焼させると石炭自体が燃焼し続けるという性質上、短時間での負荷変動に対応した出力調整運転が他の燃料に比べて難しい発電方法です。 したがって、再生可能エネルギーを主力電源化するうえで、機敏な供給量の調整に向かない石炭火力は有用性を欠くとして、先進諸国においては新設を止める方向に向かっており、2020年代には既設発電所についても順次廃止の流れにあります。

国として脱石炭の舵きりを!

東京湾岸では、東日本大震災以降、福島第一原発事故後の電力需給の逼迫を契機に、市原市、千葉市、袖ヶ浦市、横須賀市で計画されました。しかし、ダイベストメントの動きや地元住民の粘り強い活動もあり、2018年12月末には千葉市の計画、翌月の2019年1月末には袖ヶ浦市の計画が中止となりました。

日本国内でも脱石炭の流れが確立しつつある状況にも関わらず、国は不十分な環境アセスメントを確定し、8月1日には新設工事を着工しようとしています。横須賀の新設発電所の建設がこのまま進行した場合、2023年に一号機が、2014年に2号機が稼働する予定となっています。 この新規発電所が稼働した場合、年間排出量は726万t-CO2/年が排出されるとされており、2016年度における日本のエネルギー起源CO2排出量(約11.3億t-CO2)の0.64%、一般家庭150万世帯分にあたります。横須賀市内には15.6万世帯が住んでおり、この新規発電所が運転するだけで、横須賀市民の10倍ものCO2排出がなされることになります。

世界的に石炭火力からの脱却が進められ、日本にも同様の対策が求められている中、その流れに逆行するのが今回の横須賀石炭火力建設です。今回の行政訴訟のように、国民が司法の力を借り、国に対して訴えるまでになってきています。国は国民からのメッセージを真摯に受け止め、脱石炭へと舵きりをしなければならないはずです。

石炭火力を考える東京湾の会は、同訴訟を支援するサポーターを募集します。

(高橋英恵)

<訴訟サポーター募集のお知らせ>

石炭火力を考える東京湾の会は、同訴訟を支援するサポーターを募集します。詳細は追ってご連絡します。

なお、最初の口頭弁論は8月中旬頃と見込まれています。詳細の日程につきましては、確定次第お知らせします。ぜひ初回の口頭弁論の傍聴にいらしてください。

<参考>

・訴状:https://nocoal-tokyobay.net/wp-content/uploads/2019/05/press_release_20190527_yokosuka_coa_lawsuit_.pdf

・神奈川新聞「横須賀石炭火力計画「アセス不備」 住民が行政訴訟提訴」(2019年5月27日):https://www.kanaloco.jp/article/entry-170552.html

・産経「『アセス不備』国提訴へ 横須賀の住民ら、石炭火力発電所めぐり」(2019年5月25日):https://www.sankei.com/region/news/190525/rgn1905250008-n1.html

・FoE Japan横須賀インタビュー:http://www.foejapan.org/climate/nocoal/yokosuka.html

《台湾の脱原発情勢》来年も国民投票? 原発推進の揺り戻しと脱原発の秘策とは?

4月18~21日、台湾を訪問しました。台湾の環境団体「緑色公民行動連盟」のお招きです。台北と高雄にて、「8年後の福島の今と日本のエネルギー政策」という題で、とくに原発事故被害が「見えない化」されている現状についてお話しをさせていただきました。

さて、台湾の脱原発の状況です。台湾では第1~第3原発までそれぞれ2基、合計6基の原発がありますが、第一原発1号機は昨年12月に40年の期限を迎えました。残る原子炉も2025年までに40年の期限を迎えます。総発電量に占める原発の割合は11%。

2017年、脱原発政策をかかげる民進党の蔡英文政権のもとで、いったん2025年までの脱原発が電気事業法に書き込まれました。

しかし、2018年11月、この条文削除を問う国民投票で賛成が多数を占め、削除が決まりました。なぜ、このような揺り戻しが起こったのでしょうか。また、来年再度、国民投票が行われるというのですが、その争点は?

脱原発運動を引っ張る「緑色公民行動連盟」の事務局長の崔愫欣(ツイ・スーシン)さんや、高雄での講演会をホストしてくださった「地球公民基金会」の理事の邱花妹(チウ・ファメイ)さんや研究員の陳威志(ダン・ウィジ)さんにお話しをうかがいました。

台北での講演会の後、緑色公民行動連盟のみなさんと。前列、左から2番目の方が、崔さん。

来年の国民投票の争点は?

台湾では、来年1月に総統選挙が予定されており、原発推進派が、以下の3つの議題での国民投票を提案しているそうです。

①第四原発の工事再開
②2030年までに電力供給に占める原発の割合を火力よりも大きくする
③原子力規制機関の審査に合格できたら、既存原子炉の20年の延長運転を認める

①の第四原発は、日立と東芝が原子炉を製造することになっていたため、「日の丸原発」とも呼ばれていました。しかし根強い反対運動が続けられており、2014年にそれまで原発を推進してきた国民党の馬英九政権下で「凍結」が決定されたという経緯があります。それをまた進めようという案です。

②については、一見不思議な設問ですが、理由をきくと納得しました。

「台湾では、石炭火力発電による公害にみんなが悩まされており、脱石炭の民意が強い。原発推進派は、その民意を利用して、石炭火力を減らすには原発を進めるしかない、というプロパガンダを行っている」とのことでした。

ちなみに、緑色公民行動連盟など、反原発をけん引する環境団体は、石炭火力の公害問題にも熱心に取り組んでいます。

崔さんたちは、国民投票の乱立には反対のようでしたが、推進派に対抗するために、以下のような設問を提案しようとしているそうです。

④第四原発を廃止
⑤高レベル廃棄物の最終処分場が運営を開始するまで、原発の運転期間を延長させたり、新規の原発の運転を開始したりしてはいけない

④については説明するまでもありませんね。崔さんたち曰く、これについては、賛否は五分五分でどちらに転ぶかわからない、とのこと。

⑤はどうでしょう? 

台湾には、2014年9月時点で約3,400トンの使用済み核燃料があり、敷地内で使用済み燃料を貯蔵できるスペースは限界が近づいています。通常運転40年が経つと5000トンの使用済み核燃料が溜まるそうです。最終処分場は、候補地すらきまっていない状況とのこと。

崔さんたちの意図としては、「トイレなきマンション」状態について、国民の目を向けさせ、このような状況で原発を動かすことの愚を訴えていきたい、ということでした。

前回の国民投票で、反原発派が負けたわけは?

前述のとおり、2018年11月、台湾の国民投票で2025年までの脱原発を定めた電気事業法の条項を削除することへの賛成が多数を占めました。

タン・ウィジさんは、「反原発の負け、というよりも保守勢力の巻き返しが、民進党の批判となってあらわれた」とみています。

崔さんは以下のように説明していました。

「いくつかの理由があると思う。福島第一原発事故の記憶が薄らいだこと、民進党への批判が、民進党がかかげる反原発政策への批判に結びついてしまったこと。国民投票の設問が10以上もあり、有権者が自ら考えるのではなく、 “第一問は〇、第二問は×…”というような単純な宣伝にのってしまったのではないか。また、私たち脱原発運動側が、もう勝ったと思い、脱石炭への運動に比重を移してしまったこともある。」

ちなみに、緑色公民行動連盟は、石炭火力発電所からのPM2.5の問題や、放射性廃棄物の問題にも熱心に取り組んでいます。

邱さんは、「ネット上で発信される原発推進派による宣伝」をあげました。

「とりわけ、『原子力のデマを終わらせる会』(核能流言終結者)という2013年から結成されたグループの力は大きく、若い人たちの支持も獲得していきました。彼らは、自分たちこそが、科学的・理性的であるとし、脱原発派を非科学的・感情的と攻撃しました。福島第一原発事故で直接死んだ人はいない、原子力災害は大きな事故とはならない、原子力に頼らなければ化石燃料は減らせない、太陽光は不安定、LNGは高い、などなどです。
彼らは、停電に対する恐怖心をあおり、原発をやめるのは時期尚早と訴えました。しかし、彼らは台湾に20基も原発をつくりたい、とも言っています」

国民投票の功罪

民意が無視されることが多い日本の現状と比較すると、このように国民投票で直接民意を問える台湾は、うらやましいでようにも思います。

しかし、それにしても、こんなにホイホイ国民投票をやることは、行き過ぎではないでしょうか。

この点を聞いてみると、崔さんは、「民進党になってから、国民投票のハードルを下げた。」と説明してくれました。また、通訳を務めてくれた、とある日系企業の方も、「確かに行き過ぎ。〇か×かで重要な政治的課題を決めることはできないこともあるし、政治の首尾一貫性も重要だし。人権に反することなど、たとえ国民投票で決まっても、守らなければならないこともある」とのご意見でした。私もこれには賛成です。

確かに、単純に真っ向から対立し、議論の多い政治的イシューの場合、ある時点での「民意」は、表面的なポピュリズムに左右されたり、宣伝するための資金が多い側が有利になるかもしれません。同じ土俵の上で、十分に情報を共有し、双方が議論し、お互いの質問に応えたうえで社会的合意を形成し、それを政策につなげていくのにはどうしたらよいのか。

日本の状況を考えると、やや暗たんたる気持ちになりますが、それでも熟議民主主義を確立するためには、不可欠の課題ですね。

2019年4月27日に台北で行われた脱原発を訴えるデモ(提供:緑色公民行動連盟)

※私の「8年後の福島の今と日本のエネルギー政策」の講演について台湾のメディアが報じてくれました。中国語ですが…。

福島核災已八年 日環團:傷害持續只是災民「隱形化」了

福島核災真的無人死亡??日本環團?露災民與死一樣難承受的人生

 

冒頭、「福島原発事故で直接的に死んだ人はいない、という人がいますが、“震災関連死”として亡くなった方は福島県で2,267人。自殺された方も約100人いらっしゃいます。長期化する避難生活の中で、絶望し、心身を病んでしまわれた方が多いのです。直接か間接かは問わず、原発さえなければ、ふるさとで豊かな生活を送っていた方々です。作業員の方々も過酷な労働を強いられています。作業員の労災認定は白血病で3人、肺がんで1人、亡くなった方もいらっしゃいます」ということを申し上げたところがハイライトされているようです。

(満田夏花)

未来のために、若い力を行動に!!Fridays for future Japan参加録

 こんにちは。大学2年の前川天です。現在FoE Japanでインターンをしています。今回は3月15日に行われたFridays for futureに参加した感想をお伝えしようと思います。

実際のマーチの様子

Fridays for futureとは?

 Fridays for futureはスウェーデンの高校生グレタさんが金曜日に学校を休んで国会前に座り込み、環境について訴えたのが始まりです。

この活動はその後世界の多くの場所に広がっていき、日本でも2019年2月22日に1回目が開催されました。

・3月15日2回目のFridays for futureに参加して感じたこと

 僕は中心メンバーの一人として参加してきました。今回は1回目とは違い国連大学前に集合し集会を行った後、国連大学前→表参道→原宿→渋谷→国連大学前のルートでマーチをしました。

多くの人がイメージするようなデモとは違い、周りと会話したり、写真を撮ったり、コールしながら楽しくマーチを行いました。

「what do we want?」「Climate justice!」

「when do we want it?」「Now!」

これはマーチの時にしたコールの一つです。

僕も少しコールをしましたが、参加者の「未来を変えたい!」という気持ちが伝わってきてとても楽しくコールすることができました。

みんな一丸となってコールしました!

Fridays for futureを通して伝えたいこと

 僕の個人的な想いですが、もっと多くの人に未来について考えてほしいと思います。そして、その思いを行動にしてみてほしいと思います。実は僕がひっそりと推している活動があります。それは1人や友達とFridays for futureです!遠くて参加できない、人前に出るのが苦手、将来に影響が出るのではないかなど様々な理由でFridays for futureに参加できない方もいると思います。そのような方はぜひ、自分の想いを書いて#Fridays For Future #Fridays4FutureJapanをつけてSNSに投稿してみてください!皆さんの想いは必ず未来につながると思います!

1人でもF4F!!

(インターン 前川)

#FridaysforFutureの情報についてはこちら

グローバルサイト:https://www.fridaysforfuture.org/
Facebook:https://www.facebook.com/fridaysforfuturejapan
twitter:https://twitter.com/FridaysFutureJP
Instagram:https://www.instagram.com/fridaysforfuturejapan

福島県外の除染土埋立処分で環境省令案~濃度制限なし、地下水汚染防止策なし

環境省は、福島県外の除染土の埋立処分をすすめるため、放射性物質の濃度によって上限を設けることなく、埋立処分できるとした環境省令およびガイドラインの記載案を発表しました。
環境省は、福島県外において保管されている除染土壌の放射性物質の約95%は2500ベクレル/kg以下であるとし、30cmの覆土は行うものの、雨水流入防止や地下水汚染の防止等の措置は不要としています。
すなわち、高濃度の除染土であっても、そのまま埋め立てることを許す内容となっています。

3月15日、環境省の「第4回 除去土壌の処分に関する検討チーム会合」が開催されました。この場で、栃木県那須町、茨城県東海村での除染土埋め立ての実証事業について、空間線量率、作業員の被ばく、浸出水モニタリングなど、いずれも問題なしという結果が報告されました。

この実証事業にはいろいろ問題があります。埋め立てる土の放射性物質濃度に関してサンプリング調査しかしないこと、モニタリング期間が非常に短いこと(とくに浸透水のモニタリングは、東海村では昨年10月24日~2月27日、那須町では昨年12月20日~2月25日にすぎません)、さらに豪雨時・災害時についてはモニタリングされていません。
那須町の実証事業の問題点については、こちらをご覧ください。
http://www.foejapan.org/energy/fukushima/181012.html#nasu

那須町での実証事業の断面図。
今回の環境省令での除染土埋め立てでは、このような遮水シートや排水処理も不要としている。

ここからが本題です。
検討会で、福島県外の除染土の埋立処分について環境省令およびガイドラインへの記載案が示されました。
http://www.env.go.jp/press/t04_mat02.pdf

「放射性物質濃度の上限を決めることなく、埋立処分できる」としています。覆土は30cmです。

「雨水等の侵入の防止や地下水汚染の防止等の措置は不要」としています。つまり屋根や遮水シートなどを設置する必要はなく、穴をほってそのまま埋めてしまえるということになります。

環境省は、福島県外において保管されている除去土壌の放射性セシウム濃度を推計した結果、中央値は 800Bq/kg 程度、約 95%は 2,500Bq/kg以下であるとしています(平成29 年3月末時点)。
埋め立てても支障がないという判断なのでしょうか。

従来、セシウム換算100Bq/kg以上のものは、ドラム缶につめ厳重に管理されていました。
また、県外の除染土であっても、2,500Bq/kg以上のものもたくさんあるでしょう。現に実証事業では、6100Bq/kgのものがありました。

1万Bq/kg以上の可能性があるものは、作業者の安全確保に必要な措置について電離則に基づく措置を講ずる、としているだけで、埋めてはならない、とはしていません。つまり、どんなに高濃度なものがあったとしても、埋められてしまうかもしれません。

また、どの単位での1万Bq(袋レベル?、袋の中に濃い部分があって、あとは薄かった場合は?)なのかは示されていません。

埋める土についての測定は、容器の表面線量率の測定と、放射能濃度のサンプル調査のみで、①放射能濃度が1万Bq/kgが超える可能性があるもの、②比較的表面線量率が高いものの中から合理的な範囲で抽出したものについて、としているだけです。

作業者などの外部被ばく量は最大でも0.43mSv/年としています。しかし、 除染作業などを行っている作業者はあちらでもこちらでも被ばくを強いられ、累積的な影響に関しては試算も考慮もされていません。

一方、環境省は8,000Bq/kg以下の廃棄物は管理型処分場で一般の廃棄物と同様に処分できるとしています。
今回の県外除染土は、埋め固めて、30cmの覆土をするだけで、管理型処分場以下であり、また、放射能濃度で分けることはしないので、8,000Bq/kg以上のものも埋めてしまうことになります。

放射性物質のばらまきを許す環境省令に反対していきましょう!

那須町の実証事業の様子