【参加報告】東京湾石炭火力問題サミット in千葉「声を上げ続けることが状況を変える」

2018年10月27日午後、東京湾岸で進められている石炭火力発電所について考える、東京湾石炭火力問題サミットinが開催されました。

参加者は100人以上と会場がほとんど満席となる盛況。

会は東北大学の長谷川公一教授による基調講演、気候ネットワークの平田仁子氏による報告に続き、東京湾の会のメンバーである蘇我石炭火力を考える会、袖ヶ浦市民の望む政策研究会、そして横須賀火力を考える会それぞれのメンバーによる各地域の活動事例の報告がありました。

以下、各報告の概要です。

<基調講演>「石炭火力発電所問題と市民活動の意義」長谷川公一教授

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  • 2017年に提訴された仙台発電所(以下、仙台PS)の運転差止裁判は、石炭火力発電所単体の差止を求める日本初の訴訟。
  • 仙台PSの請求理由は「大気汚染による人格権侵害」「気候変動による人格権侵害」「干潟への影響等、環境権侵害」。このうち、最も有効なのは「大気汚染による人格権侵害」。
  • 訴訟および石炭火力に反対する署名活動を受け、被告(住友商事)が石炭火力発電からバイオマス発電に計画を変更。
  • 仙台の運動の特徴は、事業者が完全なよそ者であったこと。
  • 仙台運動の今後の課題として、個別被害をどのように立証するのか、その対策として、NOxの自主測定や地域での学習会等の実施。
  • 石炭火力の「訴訟リスク」を健在化させたという点に、この訴訟の意義がある。

 

<総論>「石炭火力発電がなぜ問題か〜推進し続ける日本の問題〜」平田仁子氏

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  • パリ協定をはじめとした、温暖化対策に関する国際的な流れと日本の取り組みの概要。脱石炭は国際的な流れであり、日本の取り組みのレベルには大きな差がある。
  • パリ協定での気温上昇を2℃未満に抑えるためには、新規の石炭火力発電所を建設する余裕は一切なく、今動いているものも止めていかないといけない。
  • G7の主要国は脱石炭を宣言。COP23では、イギリス、カナダを中心に脱石炭を目指すPowering Past Coal Alliance(PPCA)が結成された。これに対し、日本は石炭火力を猛烈に推進。50基もの新計画を策定し、うち19基が建設開始。パリ協定のトレンドと全く逆な方向に動いている。
  • 東京湾の3つの発電所計画について。5の排出シミュレーションによれば、東京湾沿岸のみならず、伊豆半島から栃木県、茨城県、太平洋まで影響が及ぶ。もっとも大きな健康影響の受けるのは千葉県。
  • 金融機関の投資方針にも変更が相次いだ。しかし、「慎重に対応」「新規融資はしない」と表明した金融機関はそもそも石炭火力に対する融資は全くやっておらず、現状投資している金融機関は「政府援助の分は検討」とあまり意味はない。
  • 東京湾の案件はアセスが終わりかかっているものの、訴訟、裁判、市民運動等の運動で今まで6基止まってきた。まだまだ私たちは止められる可能性がある。

 

<現地からの報告>

◆蘇我(蘇我石炭火力発電所を考える会/小西さん)

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  • 蘇我は、「あおぞら裁判」のまち。1970年代から川崎製鉄に対する裁判を起こした過去のある、今でも粉塵問題が深刻な地域。
  • 蘇我石炭火力発電所計画を考える会は、2016年から活動を開始。今まで勉強会を開いたり、裁判を傍聴したりと様々な取組をしてきた。
  • 現在計画中の石炭火力発電所は中国電力とJFEスチールによるもの。原発一基分の電力を発電予定であり、最新の超超臨界を予定している。
  • 建設予定地のすぐ横には、双葉電子アリーナを始め、市民の健康のためにテニスコートや公園等、たくさんのスポーツ施設がある。また、防災の視点からも、災害の際は自衛隊の臨時基地ともなる場所でもある。また周囲には、たくさんの働く世代がすむ。
  • 千葉県の発電・消費電力については、発電量の75%を千葉県外に売電。千葉市においても、75%を市外に消費しており、市内の消費分のうち、半数は産業部門である(2013年度統計年鑑)。自分達の使用する電力が足りなくなるのではとの心配の声もあるがそんなことはなく、自分達CO2排出量を抑えるためには、トイレおふたを閉めたりこまめに電気を消したりといった市民の涙ぐましい節電よりも、新たに石炭火力発電所を作らないこと。
  • 住民の声としては、粉塵問題をどうにかしてほしいというものがもっとも大きい。アンケートのうち331名の回答という高い回答率であり、そのうちの2/3は住所・氏名を明かしている。
  • アンケートで寄せられた意見としては、子どもの健康への心配、におい、汚れ等。中には車の上に鉄粉が積もり錆びるとの声も。
  • 関心のない方にこそ、知ってほしい。力も足りない。残念に思うのは、住民も敵であること。建設計画者であるJFEからは町内会や祭りにお金をもらっていたり、議員や町内会にJFEのOBであったりことが多く、仙台の事例(建設計画者がよそ者であったため、地域住民が結束しやすかった)は羨ましい。計画者が“うちわ“であることが非常に難しくしている。なんとか外から、中からやっていきたい。

 

◆袖ヶ浦(袖ヶ浦市民が望む政策研究会/富樫さん)

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  • 袖ヶ浦で予定されている石炭発電所の計画について。計画者は東京ガスと九州電力。2015年の計画当初の電源は石炭火力だったが、2018年9月にLNG(液化天然ガス)へと燃料転換することを発表した。
  • 立地の理由としては、東京湾に面し電力大消費地である東京に近いこと、東電袖ヶ浦火力の送電線の接続が容易なこと、そして石炭灰の処分先が近いことがあげられる。
  • 袖ヶ浦の取り組みとして、「東京ガスを励ます会」という形で、建設計画者である出光興産を批判するのではなく“応援”する取り組みをしている。
  • 具体的に、出光興産へは手紙を出している。手紙の内容は、石炭は気候変動的にも経営的にも衰退の可能性が高いこと、次世代の再エネルギーとして再生可能エネルギーに転換していくことが企業の繁栄に繋がるとのメッセージ。
  • 手紙は社長のみならず、地域の所長にも出している。社長のみに提出した場合捨てられてしまったらそこで終わってしまうが、所長等にも提出し、読み手を増やすことで、自分たちが直面している問題を計画者内で取り上げてもらうきっかけを増やすことができたらと考えている。
  • そのほか、ブログ、チラシ配布を実施してきた。
  • 今後の課題は、若手を巻き込むこと。

 

◆横須賀(横須賀火力発電所建設問題を考える会/鈴木さん)

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  • 抱えている問題は蘇我、袖ヶ浦と全く一緒。ただし、横須賀は新規建設計画ではなく、以前から立地していた石炭火力発電所を立て直す(リプレイス)計画ため、合理化ガイドラインが適用されている。袖ヶ浦より後に計画が立ち上がったのに、今は袖ヶ浦を追い越し、今もアセスなしで解体が進んでいる。
  • リプレイス合理化ガイドラインの影響により実態調査は全くされず、ペーパー調査がまかり通っている。経産省の審査の場合も、「これはリプレイスですね」と、作るということを前提で、その場所に石炭火力発電所が運転されることによって生じる問題については触れられない。
  • そもそもなぜ止まっていたはずの横須賀の火力発電所を立て直すことになったかというと、横須賀は既存の港湾施設があるため、石炭の施設や送電線等、インフラ投資は不要であることが理由としてあげられる。
  • もう一点の理由として、横須賀の地域経済の衰退がある。大きな工場の海外進出、造船業の衰退により人口減少が進み、石炭であっても経済を活性化させてくれたらありがたいという声がある。
  • 課題は、準備所の事業者説明会にいかに住民に参加してもらうかが課題。今まで実施した2回のうち、両方合わせて410名が参加した。地元としては相当集まった方と思う。とくに、事業者が会場を設置した2回目は262名が参加し、参加者からの質問が絶えず、事業者が予定した時間の倍以上の時間を要するほど盛り上がった。
  • そのほかの取組みとしては、学習会に注力している。火力発電所ができたらどのような経済効果があるのかという問題を取り上げた。横須賀市だけでなく逗子市からの参加者もおり、隣市の逗子市には固定資産税は入らないけれど、5はちゃんと降るという事実を逗子の人は知らないということから、9月16日(日)に逗子で勉強会を開催した。参加者が集まるかとの不安もあったが、会場満杯(50名の参加のうち、20名は高校・大学生)となった。
  • 11月4日(日)は三浦市で新たな勉強会を開催予定。逗子での勉強会に参加した高校生が、農業も温暖化の影響があるのではという疑問をもったことがきっかけ。そのほか、11月28日(水)に鎌倉で、近日中に葉山でも勉強会を開催予定。横須賀市だけでなく、三浦半島の4市1町でセミナーが開催されることとなる。
  • また、11月10日(土)に横須賀火力発電建設中止を求める署名定期集会を予定。

 

参加者からの感想としては、

  • 石炭火力をめぐる訴訟や課題等について、改めて俯瞰的に捉えることのできる良い機会となった。市民活動があるからこそ、計画が中止になったり、次の計画を断念させることができているとわかって、元気をもらえた。
  • 温暖化防止で2℃まで抑えるには1基たりとも石炭火力は新設できないという現実をもっと多くの人に知らせないといけない。
  • 石炭火力発電の粉塵発生・空気汚染。なぜ東電が脇にあるのにJFEで行うのか。
  • 袖ヶ浦の活動は単に直球の反対運動だけでなく、多角的な活動を組み立てているところが素晴らしいと思った。
  • 横須賀の解体もアセスメントなしでスピードアップされ建設計画が進んでいると聞いてびっくりした。
  • 難しいけれど、住民市民の声を集めてぜひ中止を勝ち取りたい。

といった声が多くありました。

以上にように、今回のサミットの各登壇者の報告は「市民活動があるからこそ、石炭火力発電所建設計画を断念させることができる、また、その可能性を信じている」という想いにあふれたものでした。横須賀ではすでに住民による自主的な勉強会が連鎖的に広がり、大きな流れをうみ出す可能性があると感じています。

着実に進行している石炭火力発電所建設計画ですが、まだまだ止められる可能性があると信じ、FoE Japanとして、引き続き石炭火力発電所建設計画の撤回を求める運動を支援していきます。

 

<今後のイベント>

11月4日(日)【三浦セミナー】温暖化でどうなる?三浦の農業 -横須賀の石炭火力発電所建設から考える−

11月10日(土)【横須賀】横須賀火力発電建設中止を求める署名提起集会

(高橋)

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【エコメッセin千葉2018参加報告】千葉の皆さんへのメッセージ「ご存知ですか?東京湾に3つの石炭火力発電所建設計画があることを」

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10月8日、エコメッセinちば 2018(千葉・幕張メッセ)が開催されました。

『エコメッセ in ちば』は、持続可能な社会の実現を目指し、市民・企業・行政・大学の協同によって、1996年から毎年開催されている環境イベント。アースデイに参加された経験のある方はイメージしやすいかと思いますが、千葉県からの出展者が多く集まるアースデイのようなものです。

今回のテーマは「ちばから発信SDGs」。SDGsとは、”世界中の誰もが力を合わせて、地球上の自然の恵みを大切にし、人権が尊重され、すべての人が豊かさを感じられる平和な世界をつくろう”という、国連が提唱する持続可能な開発目標です。このテーマの下、千葉、袖ケ浦、横須賀に石炭火力発電所建設計画があるという事実を少しでも多くの方に知ってほしいという想いから、「石炭火力を考える東京湾の会」のメンバーとともに出展しました。その様子を報告します。

 

会場である幕張メッセの国際会議場は、開幕1時間ほど前から所狭しと並んだブースで各々が思い思いに準備に勤しみ、雰囲気は高校の文化祭のよう。運営団体の情報によると、出展団体は100以上だったそうです。

我々は、持参した東京湾岸の石炭火力発電所のマップや「なぜ石炭火力は問題なのか」が書かれたシート、石炭や天然ガス等の資源毎のCO2排出量比較表を駆使して「No石炭!No原発!」をアピール。

 

閉幕間際まで来場者の足は絶えず、最終的な来場者数は9,000人ほどであったようです。私たち東京湾の会のブースにも、足を止めてくださる方もいらっしゃいました。

もともと環境に関心のある来場者ですが、ブースに立ち寄ってくださった方からは、

「こんな計画があるなんて知らなかった」

「そもそも東京湾にこんなに火力発電所があるんだ」

というコメントがほとんど。地元の方々でさえも知らされていないことを痛感しました。

 

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[写真]ブースに立ち寄ってくださった方との会話風景。

 

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[写真]実際に蘇我の空中写真をお見せしながら。

 

 

 

展示のほかにも、会場ステージでプレゼンする機会も。千葉市の住民の方からは実際にお住まいのマンションに届く煤の状況説明、そして、袖ケ浦在住の住民の方からは火力発電と気候変動の関係など、現場に住む方から発せられるメッセージは、深く印象に残りました。

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その一方、

「電力は本当に足りているのか?」

「計画が進んでいるなら、止められないのでは?」

等々の様々な疑問や、

「今の技術ではそんなに健康被害はないはず」

「経済のために仕方ない」

とのコメントがあったことも事実。また、家族連れや中高生の来場者を多く見かける中、石炭火力建設問題は、彼らにとって専門家だけで議論する遠い存在となってしまっているような不安も覚えました。

 

「経済のために仕方ない」とのコメントがあったように、今の社会は経済最優先である傾向を強く感じます。今回出展をご一緒した東京湾の会の方が、来場者への説明の中でおっしゃった「生活あっての経済なのに、経済が先にきてしまっている」との言葉は、非常に重みのあるものでした。この言葉の通り筆者自身も、今の社会はどうしてもいのちがないがしろとなってしまっている危機感があります。この東京湾岸の石炭火力建設計画は、「利益のためならどんなことをしても構わない」風潮の典型例の一つなのではないでしょうか。

私たちNGOの役割は、本来ならば身近であるはずの、いのちの危機に繋がるような事実を “じぶんごと”として捉えられるよう伝えること、そして、その会話の中で寄せられた疑問について一緒に考えていくことなのではないかと、強く感じた会でもありました。

 

<東京湾の石炭火力問題についての情報>

FoE Japan 気候変動 石炭火力問題 東京湾にも 3 か所で建設計画が!

「石炭火力を考える東京湾の会」http://nocoal-tokyobay.net/

 

<東京湾の石炭火力を考える会についての直近のイベント>

2018年10月27日13:30~16:30  東京湾石炭火力問題サミットin千葉

 

(高橋)

温暖化の進行でさらなる“気候変動危機” ―IPCCからの警告

IPCC English2.jpg2018年10月1~6日、韓国・仁川でIPCC(気候変動に関する政府間パネル)総会が開かれ、8日、地球規模の1.5℃の気温上昇に関する特別報告書(SR15)と政策決定者むけのサマリー(SPM)が発表されました(*1)。

レポートは、世界の平均気温が工業化以前より1.5℃上昇した場合の影響を描き、2℃上昇した場合の影響と比較、また1.5℃までに抑えるためには、世界の全体の人為的なCO2排出量を、2030年までに約45%削減、2050年頃までには正味ゼロのする必要があることを示しました。

2015年に採択されたパリ協定では、気温上昇を2℃未満、できる限り1.5℃以下に抑えることを目指すとされましたが、今回の報告書では、2℃の気温上昇は1.5℃に比べて大きな影響・被害が予測されることが示され、気候変動対策がより差し迫ったものであることが警告されました。

一方、これまですでに産業革命期以降約1℃の平均気温上昇が見られ(日本では約1.2℃(*2))、それにより甚大な被害が出ています。気温が2℃上昇した場合にくらべ、1.5℃上昇程度に抑制することができた場合はそれでも、水不足に苦しむ人々の数や、気候変動の様々なリスクに直面する人々の数が半減することを示しています。例えば、極度の干ばつや森林火災などを含めた異常気象や食糧不足、熱波に起因する病気や死亡リスク、そして生物多様性や生態系の喪失といったリスクを抑制することができると考えられます。温暖化を1.5℃に止めた場合、2℃の気温上昇に比べ2050年までに世界で数億の人口が気候変動のリスクや貧困にさらされる影響を回避できるとしています。さらに、海面上昇による1,000万人規模の移住リスクも回避することができるかもしれないとしています。

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IPCCの特別報告書は、危険な気候変動の影響を1.5℃の気温上昇に食い止める可能性が十分あることを示していますが、そのためには各国がいますぐに行動することが必要です。パリ協定の下で約束されている温室効果ガス削減分を積み上げても、1.5℃目標にはほど遠いことはこれまでも明らかでした(現状の対策では、3℃以上の上昇が予測されています)。このことから、政策決定者向けサマリーの大きな焦点は、現在のパリ協定下での2030年までの各国の目標を大きく強化する必要性と、さらには今後20年ほどの間にかつてない規模でのシステムチェンジ(例として世界で今進んでいる自然エネルギーへの移行)、社会変革やライフスタイルの大きな変換を呼びかけています。

この報告書は12月の国連気候サミット(COP24)で議論され、2020年までに既存の各国2030年目標の引き上げを図る決定がなされる動きをつくることが想定されています。

しかし、留意すべきなのは、IPCCが提唱している気温上昇を1.5℃未満に抑えるための方策の中には、大きなリスクを孕んだ、検証の未だ十分でない技術も含まれているという点です。例えばBECCS(バイオマス炭素回収貯留)が挙げられます。BECCSは広大な土地で燃料とするための作物を育て、発生したに二酸化炭素は回収貯蔵するという技術です。最大でインド国土の倍の農地をバイオ燃料生産に振り向けることを予想するなど広大な土地を利用することから、土地収奪の可能性や、食糧生産への影響が懸念され、世界の最貧困層にとってさらなる問題を引き起こす可能性があります。火力発電所を石炭からバイオ燃料に置き換える動きはすでに国内外で始まっています。また、CCS(二酸化炭素回収貯留)を伴った化石燃料発電や、原子力発電も、シナリオの上では対策として含められています。

FoEグループはこのようなリスクを伴う技術に頼って、温度目標を達成することには反対しています。今回のIPCCの報告書では、こういったリスクを抱えた技術に頼らずとも、脱化石燃料の動きをさらに早め、省エネとライフスタイルの変革で全体のエネルギー需要を下げることで、気温上昇を1.5℃未満に抑えることが可能であるシナリオも示しています。またこれを世界で実現するためには、地球規模での化石燃料を中心とした社会からの移行や、それらを促進するための北側の先進国から南の途上国に向けた資金援助が必要不可欠です。

気候変動問題は、日本にとっても差し迫った問題です。近年の大型台風や集中豪雨、猛暑などの異常気象は、日本列島にも大きな爪痕を残しています。しかしながら、日本が現在示している気候変動目標は、十分なものではありません(2030年までに2013年比で温室効果ガス26%削減)。

国内では石炭火力発電所の建設計画が相次ぎ(*3)、石炭火力発電の輸出も推進(*4)しています。
FoE Japanは、今回のIPCCの警告を受け、消極的・後ろ向きな日本の気候変動・エネルギー政策の転換を改めて求めます。気候変動被害の拡大を少しでも抑えるために、一刻も早く化石燃料中心の社会からコミュニティや人権を尊重した再生可能エネルギー中心社会へと移行することが必要です。

(スタッフ:小野寺・深草・吉田、インターン:天野)

*1 IPCC:Special Report on Global Warming of 1.5 °C (SR15) ,  政策決定者向けサマリー, プレスリリースの和訳(環境省)
*2 気象庁「日本の年平均気温」
*3 日本の石炭火力問題
*4  No Coal, Go Green! JBICの石炭発電融資にNO!

<参加報告>全国メガソーラ問題シンポジウム

「全国メガソーラ問題シンポジウム」に参加したので報告します。

日にち:2018年10月8日
場所:長野県茅野市茅野市民館
主催:全国メガソーラー問題シンポジウム実行委員会、NPO法人地球守

参加者(筆者推定):約500人
参加者層(筆者推定):地元市民、関係者

□講演内容

「FIT法の何が問題か?」佐久裕司さん

「現代土木の限界と災害、大地環境の仕組みから、メガソーラの何が問題を診る」高田宏臣さん

「メガソーラーをやっつけろ!闘う住民のための十訓」梶山正三さん

 

□各地報告とパネルディスカッション

①長野県諏訪市四賀ソーラー事業
②千葉県鴨川池田地区(田原地区)メガソーラー事業
③静岡県伊豆高原メガソーラーパーク発電所
④愛知県知多郡東浦町メガソーラー計画
⑤三重県四日市足見川メガソーラー計画

 

・伊豆高原案件では、林地開発許可の審議会を4回も実施したものの、許可されてしまった。現状では不許可となることはありえない許可制度である。その中で4回の審議回数になったのは活動の成果ではないか。

 

・太陽光発電事業に関わる規制、条例、法律は以下①~④である。

①環境アセスメント

・全国で太陽光を対象にしている県は長野県、山形県、大分県の3件のみ

・その他なんらかの対象としている都道府県は29ある

・事業者自らが実施するため、都合の悪いチェック等は実施しないという問題点がある。

②林地開発許可

・通常許可されてしまう制度となっている

③市条例(ある場合)

・伊東市の例では、市長の同意が必要としているが、罰則規定がないと無視されてしまうという問題がある

④改正FIT法

・2016年改正FIT法では接続契約をしていないと許可が降りなくなった

・28GWが失効し、22GWが残っている

・法令違反が見つかれば経産省が調査し、取り消しできることになった。伊豆では市長の不同意のままに実行することは違法である、とする活動を実施している

 

パネルディスカッションのまとめでは、このようなメガソーラ問題は原発と同じ構図であり、それは大手資本、海外資本によるものであること、地方にお金は落ちないこと、自然は破壊されること、土地問題があることとした。

 

□聴講した所感

このシンポジウムで報告された5つの事例は環境破壊型、地元非同意型ソーラ発電として許されるものではない。太陽光発電事業で問題を抱える事例はこの他に多数あるが、地元住民の同意が得られていない計画はなんらかの問題があると考える。まず真っ先に改善すべきところは事業者による正確な情報開示と丁寧な説明であり、その上で何が問題かを議論すべきである。しかし現状では情報がないのに問題点を指摘しなくてはならないという不条理を感じる。そんな中、各地の活動では地道に情報収集を行い、整理をしているのは大変なことである。

 

パネルディスカッションでは、現状の太陽光発電事業に関係する制度の整理をしていただき、「環境破壊型」ソーラー発電計画を止めるためのヒントや力の入れどころを示していただいたのが良かった。

 

FoE Japanとしては引き続き、持続可能なエネルギーとはなにかを考えて活動していきたい。

 

<プログラム:主催者HP>
https://megasolarsympo.wixsite.com/-solar-sympo/blank-2

 

(2018年10月 田渕)

人生初めてのインターンの活動日記

こんにちは。インターンの三輪です。

今日で事務所での活動が最後ということで、今回のインターンで感じたことや感想を簡単に書かせていただきます。

まずインターンをしようと決めた理由は、大学二年生になり就職活動もそう遠くはないと考え始め、将来の職業を決めるきっかけになればと考えました。

FoE Japanに決めた理由は、環境問題に興味があり、一年次に受講した「地球環境論」を少しでも生かせればよいなと思いました。また池袋付近ということもあり通いやすいのではないかと思っていました。

インターンというのは自分にとって初めてだったので正直何をしていいのかまったく分かりませんでした。人と話すのは苦手なほうなので馴染んでいけるか心配でした。また、「仕事をする」ということに対する緊張も少しありました。ですが、事務所のみなさんが温かく接してくださったことで馴染みやすい環境ができ、緊張もいつの間にか消えていました。とても感謝しています。

 

私の仕事は、主に事務所作業やイベントへの手伝いでした。事務所作業は資料作成や発送作業など細かい作業が多かったです。普段やらない作業で戸惑うところもありましたし、自分は不器用なので少し苦労した部分もありました。何のためにこの資料があって、何のためにこの作業をするのか。それを念頭に「早く丁寧に」を心がけて作業を行ないました。

アルバイトとの兼ね合いもあって、イベントにはなかなか参加できないこともありました。その中初めて参加した「里山の定例活動」は良い経験になりました。普段なかなか体験できない草刈りや栗拾いなど、今振り返ってみると大変でしたが達成感のほうが大きかったし良い思い出になりました。次の日は無事筋肉痛になりましたね。。。

宇津木の森が少しでも元気になってよかったです。

他にも事務所での会議、「Know The Chain」の会議や、原発賠償制度の見直しの会議にも参加させていただきましたが、知識不足すぎて正直何を言っているのかわからないことばかりでした。環境問題について学んだはずでしたがまだまだ勉強不足だと気付かされました。勉強することへの意識を変えていかないといけないなと思いました。勉強できるのは今のうちなので意欲的に勉強に取り組んでいきたいです。

 

今回のインターンでは自分の持っている知識を生かせなかったと感じました。そもそも知識を持っていたのかと言われるとどうだろうと思いますが。。。事務所の資料を読んだり、FoE Japanのみなさんから様々な話を聞いたりして、自分の持っている知識以上の環境問題について詳しく知ることができました。また、みなさんの一つ一つの環境問題に対する熱意を感じました。そして何か物事に対して熱心に作業、活動することの大切さというのを改めて知ることができました。インターンで学んだことを忘れずに将来の職業選択に繋げていけたらいいです。

FoE Japanのみなさん、20日間のインターンでしたが本当にお世話になりました。

そして、ありがとうございました。

 

(三輪)

環境と社会ー構造的問題に対するオルタナティブを模索すること

ニュースレターやブログなどを通じFoEの活動は見えてきても、スタッフの姿は見えないことが多いと思います。どんな人がFoE Japanで働いているのでしょうか?なぜFOEに?
インターンスタッフに3名の職員をインタビューをしてもらいました。

第三弾は気候変動・開発金融と環境・福島支援と脱原発チームの深草亜悠美です。

FoE Japan では何をされていますか?

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一番右が深草

最初は、原発問題を中心に活動していて、原発輸出や国内の再稼働を止める為のキャンペーンに携わっていました。現在もこれらのキャンペーンにも関わっていますが、石炭を含むエネルギー問題と気候変動に関するキャンペーンも行なっています。
エネルギー分野では、石炭火力発電所の海外輸出を止めるキャンペーンを行っています。石炭火力には、持続可能なエネルギーではなく大気汚染や気候変動を加速させているという点の他に、開発が行われる現地では社会影響や人権侵害が起きているという問題もあります。
気候変動に関しては、単なる温度上昇だけではないと思っています。近頃、気候変動による影響が大きくなって来ているのが日本でも実感されますが、歴史を振り返れば、日本を含む先進国が温室効果ガスを大量に排出して発展して来たという背景があり、今なお多くの温室効果ガスを排出しています。その一方で、途上国や貧困層の人々の受ける被害の方が大きいのが現状です。気候変動は、途上国と先進国の格差や人権問題など『社会正義』にも関わる問題であると思います。そういった観点から気候変動問題の重要性や緊急性、そして対策の必要性等を日本国内に発信するキャンペーンをやっています。

FoE Japan に入るきっかけは?
昔から漠然と「環境」には興味がありましたが、大学の授業でたまたま FoE のことを知り、FoEの理念に「環境」だけでなく「社会」という価値観が含まれているところがしっくりときたので、大学2年生の終わり頃からインターンを始めました。当時は震災が起きてから一年も経たない頃だったのですが、エネルギー問題に興味を持ち、大学のサークルなどで取り組んではいたものの、その時はまだ原発事故の実感が薄かったです。しかし、スタッフの皆さんは原発事故の対応の真っ只中で、政府交渉や避難している人々の話を聞いていく中で、全然物事が見えていなかったことや自分がいかに知らなかったかということにショックを受け、危機感を覚えました。また、FoEのスタッフの人と真剣に原発の問題や環境問題について話すことができ、インターン生であっても対等に扱ってくれるような環境に居心地の良さを感じていました。FoE Japan は、自分に刺激をくれた場所であり、自分を受けてくれる団体だったのです。

入ってから今日まで続ける上でのモチベーションは何ですか?
「社会が変わるところや、変わるためにNGOとしてどんな新しい価値観を提供出来るのかという部分を見てみたい。」FoE Japan で活動していく中で、環境問題にしろ、原発にしろ、社会構造に根本的な問題があるのではないかと考えるようになりました。二酸化炭素削減や原発の稼働停止などは数ある多くの問題の中の一つで、今あるシステムを変えたり、新しいアイディアを考えていかなければいけないと感じるようになったのです。そして、そういった新しい価値観や物の見方を世の中にに発信することはNGOに出来ることの一つであり、そこに携わっていきたいと思っています。

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インターン生の頃にドイツ・ベラルーシ・日本の若者交流プロジェクトに参加。日本開催の時にはインターン生として主体的に企画に参画させてもらいました。

今までやってきた活動の中で最も印象に残っていることは?
今、世界中で環境や人権を守る活動家が危機にさらされています。FoEグループでは、環境や人権のために戦う活動家やコミュニティを守るための制度構築のための国際アドボカシー活動や、緊急支援の活動もしていて、そこに少しだけ関わっています。危険にさらされている人々は、代々守ってきた川や森、それと一体となっている伝統的な暮らしなどを守るために立ち上がっている。生活そのものである自然や文化を守ろうとたたかっています。都会に暮らしていると、自然と人間がとても断絶しているように感じます。しかし私たちは自然なしには生きられないし、そもそも自分たち人間も自然の一部なんだと思います。けれど資源収奪や利益のために、一番最前線で自然とともに生き、守ってくれている人たちが危機にさらされている。非常に重要で深刻な問題だし、私たち日本に生きる人も無関係ではありません。
あともう一つ、学生インターンの頃に現事務局長の満田さんに出会ったことも大きいですね。いつも誰のために・なんのために活動をしているのか、という軸がブレない。今でもとても学ばせていただいています。

FoEでボランティアやインターンがしたいへのメッセージ
世の中にはたくさん環境問題があります。その中でも、人や社会・人権といったところに注目して活動している FoE が好きなので、そういうところに共感してくれると嬉しいです。

最後に、FoE Japan は一言で言うとどのような場所ですか?
日々の生活の中でモヤモヤしていることや解答が見つからないことというのは多々あると思いますが、FoE Japan は、そういった物事について一緒に議論したり、行動を起こしてみたりして、「考えながら、やりながら考える」ことが共に出来る場だと感じます。また、周りの人を見て「ここで自分だけ立ち止まっていられない」と感じる、そんな刺激を受けられる場所です。

(聞き手:インターン杉浦)

日々情報を得ているからこそ、もっとアンテナを高く

こんにちは!FoE Japanにインターンでお世話になった、埼玉の大学に通っている早川です。

私は大学で地球環境論という授業を取る機会があり、そこで世界で起こっている現実を知りました。今もなお森林を壊し、牛の放牧地にしていること。同じ地球に住んでいるのに、夜明るいのは日本・アメリカ・ヨーロッパなどの先進国だけであり、発展途上国では暗闇に包まれていること。世界では親の元を離れ学校にも行けずに、家族のために劣悪な環境で働いている子ども達がいること。授業ではそれらの一部にしか触れることが出来ませんでした。だから私は環境問題に対して活動しているFoE Japanでもっと深く学ぼうと思いました。

実際にインターンに行ってみて最初に思ったことは、私が知っていることは現実で起こっていることの本当に一部分であるということでした。日本だけでもニュースになっていること以外の多くのイベントや会議・集会がありました。FoE Japanは気候変動・福島支援と脱原発・森林・開発金融と環境といった幅広い分野で活動して、知らないことばかりでした。
そんな知らないことばかりの中で私が興味を持ったのは、脱原発のパワーシフトという試みです。現在の日本は火力発電で81%を発電しており、それを再生可能エネルギーを販売している電力会社に乗り換えようというものです。火力発電には燃料の多くを輸入しているという問題と、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を沢山排出するという問題があり、それを解決する方法として再生可能エネルギーを使うことはとてもいいことだと思いました。そこで私が出来ることは何かと考え、まず家の電力会社を東京電力から変えました。そして、今は大学の電気会社をパワーシフトしようと資料作りをしています。

私がこのインターンに参加して得た一番大きな学びは、情報を得ることの大切さです。パワーシフトという活動もFoE Japanに来たからこそ知りました。日々ニュースで流れていることを見るだけでなく、そのニュースの何が問題なのか、どのような影響があるのかなど自分から調べることの大切さを感じました。情報を知らないために、取り返しのつかないことをしてしまうかもしれません。そうならないためにも日々アンテナを高くし、情報を得ようと思いました。

最後に、将来何をしたいか決まっていない人も、情報を得る環境に身を置くことで何をしたいか分かるかもしれません。FoE Japanの活動に是非ボランティアとして参加してみてはいかがでしょうか。
(インターン 早川)

インドネシア・スラウェシ地震 緊急支援にご協力ください

インドネシア・スラウェシ島の中スラウェシ州で28日に発生した地震と津波で大きな被害が出ています。WALHI/FoEインドネシアの地域オフィスもあり、スタッフは皆無事だったそうですが、ほとんどが避難を強いられているとのこと。

地震・津波の発生後、インドネシアの市民団体は緊急支援を行う対策本部(ナショナルポスト)を立ち上げており、WALHI/FoEインドネシアはその事務局を担っています。

WALHIをはじめとするNGOらは、救助活動、ボランティアの動員、情報収集、情報発信などを行っていますが、被害は甚大で、大きな支援を必要としています。

是非、支援にご協力ください。

●インドネシアに直接送金する
注:インドネシアの団体へ寄付するため、寄付控除の対象にはなりませんので、ご了承下さい。
Account holder: WALHI
Bank Name: CIMB Niaga
Bank Address: Jalan Buncit Raya No. 100 Jakarta Indonesia
Account number: 800127563330
Swift code: BNIAIDJA

Account holder: Yayasan WALHI
Bank Name: Bank Central Asia
Bank Address: Jalan Bendungan Hilir Raya No. 44/I Jakarta
Account Number: 3019991980
Swift Code: CENAIDJA

●FoEJapanを経由して寄付をする
注:インドネシアの団体へ寄付するため、寄付控除の対象にはなりませんので、ご了承下さい。

*郵便振替
郵便振替口:00130-2-68026 口座名:FoE Japan
郵便局備付の払込取扱票をお使いください。
通信欄に、「インドネシア震災寄付」とご明記の上、住所、氏名をお忘れなくご記入ください。

*銀行振込
振込先:城南信用金庫 高円寺支店 普通358434  エフ・オー・イー・ジャパン
送金後、確認のために、FoEまでお知らせください。
info@foejapan.org / 03-6909-5983

国連気候変動枠組条約・バンコク会議閉幕―パリ協定実施指針交渉の行方は

Stack of booksタイ・バンコクで9月4日から9日まで開かれていた、国連気候変動交渉。主にはパリ協定を実際に実施していくための詳細なルールを定める国際交渉で、実施指針自体は12月ポーランドでの第24回締約国会合(COP24)で採択が目されています。

COP前の最後の公式会合であるこの会議では、各国の様々な主張は削らずに様々な選択肢の整理を行い、COPで本格的な交渉に映るためのたたき台を用意することが主な作業でした。その結果、306ページにわたる非公式文書が会合の終わりに準備されました。京都議定書の実施指針に相当する2001年のマラケシュ合意は240ページ以上の文書でしたが、ベージ数の多さはさておき、非公式文書に含まれている分野ごとの進捗のばらつきが今後の課題となってきます。先進国の望む緩和行動に関する部分だけが今度のCOPで採択され、途上国支援などが置き去りにされる懸念があります。会議閉会時に、議長たちに10月15日までにこの非公式文書をさらに整理し、COPでの交渉のたたき台の用意を託す旨が合意され、バンコク会合が終わりました。

これまで2年半の実施指針の交渉での大きな対立点は、差異化の部分です。言い換えると、先進国の義務をどのように実指指針に反映させるかという点が争点でした。気候変動枠組条約の文言に比べると表現は弱められましたが「共通かつ差異ある責任」の条約の原則はパリ協定にも引き継がれ、歴史的な責任に鑑み、先進国は途上国の対策を資金・技術面で支援することになっています。
ほぼすべての国が提出している2030年もしくは2025年までの国別行動計画(NDC)の定義について、今回も排出削減行動のみをNDCの中身とする先進国が、支援についてもNDCに入れるべきとする途上国提案を拒絶して紛糾するひと幕もあり、この部分は両論併記する形にとどまり、ほぼ進展がありませんでした。各国のNDCの進捗の報告義務を定める「透明性枠組み」の交渉でもやはり二分論が出ていますが、そこは議論が分かれる部分を分けることで非公式文書の一定の整理が進みました。

歴史的責任と公平性の問題は、単に原則論とするのではすまされない重要性を持っています。現在各国が提出しているNDCを積み上げるだけだと、世紀末までに3℃以上の気温上昇を招くとされていますが、これは途上国のNDCがきちんと実施されることを前提としています。多くの国のNDCには、外からの支援なしに実施不可能な部分があり、先進国が途上国への支援義務を果たさなければ、気温上昇の予測は3℃をさらに上回るでしょう。実施方針に支援の義務とその実施の方法を書き込むことはとても重要なのです。しかし先進国、とりわけ協定撤退を表明したアメリカが率い、日本もメンバーである「アンブレラグループ」は、先進国の義務を明示的に指針に表記することに強硬に反対しています。この溝は実施指針の交渉開始時点から深く、COP二週目の閣僚級の交渉まで持ち越されるでしょう。

NDCや透明性の議論のほか、バンコクで引き続き対立点となったのは、パリ協定作業計画にふくまれる途上国支援、とりわけ資金支援の報告に関するものでした。先進国は事後報告だけでなく、2年ごとに今後の支援規模を国連に提出することが協定文にありますが(9.5条)、先進国は提出の仕方は任意に留めたく、また協定前に約束した年間1000億ドルの途上国への資金目標が終わる2020-2025年以降の次の資金目標の定め方の議論にも反対しています。途上国の間で広がる被害や自国のNDC実施の計画立案には海外からの公的資金の見通しの情報が不可欠であることが途上国の要求の背景にあります。ここでもスイスやアメリカといった先進国が共同歩調で途上国の要求を突っぱねている状況が続いています。

途上国支援の要として設けられた緑気候基金(GCF)の資金は年内にも底を尽きる見通しです。7月のGCFの理事会では、やはりアメリカが追加増資の議論をとめてしまいました。資金支援でのトランプ政権の強硬姿勢に屈さず、実施指針の内容をさらに弱めることにならないようにしなければなりません。

COP24の直前から期間中、気候資金の隔年閣僚級対話、資金委員会の包括的気候資金の隔年評価報告、2020年までの先進国義務進捗に関する議題など協定実施指針だけでなく、重要な途上国支援の議論が並行して行われることになります。先進国は気候資金を2020年までに年1000億ドルに引き上げる目標の進捗を示す独自の報告を用意しているとも言われ、資金問題はポーランドでの議論の台風の目となります。

一方で途上国支援に民間資金の活用が叫ばれています。しかし、同時に貧しい国民を支える公共サービスの市場開放を求められる途上国にはもろ刃の剣です。先の見通しが立てにくい民間投資、さらには先進国にとって実施指針の目玉の一つであり4月以降議論に弾みがついている途上国での事業で得た削減量を自国のNDCに編入できるグローバル炭素市場が来年以降始動すれば、外からの市場の動向の影響で、途上国が政府主体で国内の長期的なエネルギー開発政策を定めることをますます難しくします。

公平性・先進国の歴史的責任を、途上国支援の面で実施指針に反映させることは協定全体の効果を左右する重要なことです。しかし、FoEグループは実施指針がさらに弱められた抜け道だらけの内容となると危惧しています。今年のポーランドでのCOPは、COP参加者とくに市民団体の活動を制限するような立法措置が取られていますが、引き続き、日本を含む先進国の歴史的責任と義務、原発に頼らない急速な化石燃料からの脱却/脱石炭、食糧主権、コミュニティーの権利とエネルギー民主主義、企業支配からの民主的スペースの奪回などをテーマに、働きかけやメディアアクションなどを行なっていきます。

(文:小野寺ゆうり 編:深草亜悠美)

フィリピンの先住民族・人権活動家のジョアン・カーリングさん、国連環境計画の「地球大賞」受賞

国連環境計画(UNEP)の「地球大賞」(Champions of the Earth)を私たちの古くからの友人で、フィリピンの先住民族・人権活動家であるジョアン・カーリングさんが受賞したとの嬉しい報せが届きました!>UNEPのリリースはこちら

ジョアン
彼女はフィリピン、また、アジア地域の先住民族団体で20年以上活動。ごく最近では国連にエクスパートとして任命され、先住民族やSDG関連の会議等に参加してきましたが、今年2月にフィリピン政府が出したテロリスト600名以上のリストにも名前が掲載され、弾圧の対象となっています。

FoE Japanとジョアンさんの付き合いは、彼女がフィリピ北部のコルディリェラ人民連合(CPA)代表として、サンロケダムの問題に取り組んでいた頃からで、2002年の世界ダム委員会のシンポジウムや2003年の世界水フォーラム(京都)のときに来日してもらいました。

彼女はビデオでも見られるとおり、知的でスマートですが、穏やかで優しく、コミュニティーの信頼も非常に厚い活動家です。冗談も大好きで、小さな身体からこれでもかという程、大きな笑い声を立てるので、周りにいる人たちをよくびっくりさせています。そんなところも、皆から愛される理由だと思います。

私(波多江)個人としては、サンロケダムの問題に取り組み始めた2001年に初めてフィリピンで会い、2004年に活動拠点を東京からフィリピンに移した際の最初のハウスメイトでもあります。フィリピン北部で使われているイロカノ語の私の先生の一人とも言えます。今では、サンロケダムに反対して2006年に暗殺された農民リーダー・アポの奥さんと一緒に、クリスマス時期にバギオの彼女の自宅を訪ねるのが年行事になっています。

ジョアン・カーリングさんの受賞を心から祝福するとともに、身体、そして身の安全に気を付けながら、世界の先住民族や社会的弱者のために益々活躍していってもらいたいと思います。

(波多江秀枝)