福島県外の除染土埋立処分で環境省令案~濃度制限なし、地下水汚染防止策なし

環境省は、福島県外の除染土の埋立処分をすすめるため、放射性物質の濃度によって上限を設けることなく、埋立処分できるとした環境省令およびガイドラインの記載案を発表しました。
環境省は、福島県外において保管されている除染土壌の放射性物質の約95%は2500ベクレル/kg以下であるとし、30cmの覆土は行うものの、雨水流入防止や地下水汚染の防止等の措置は不要としています。
すなわち、高濃度の除染土であっても、そのまま埋め立てることを許す内容となっています。

3月15日、環境省の「第4回 除去土壌の処分に関する検討チーム会合」が開催されました。この場で、栃木県那須町、茨城県東海村での除染土埋め立ての実証事業について、空間線量率、作業員の被ばく、浸出水モニタリングなど、いずれも問題なしという結果が報告されました。

この実証事業にはいろいろ問題があります。埋め立てる土の放射性物質濃度に関してサンプリング調査しかしないこと、モニタリング期間が非常に短いこと(とくに浸透水のモニタリングは、東海村では昨年10月24日~2月27日、那須町では昨年12月20日~2月25日にすぎません)、さらに豪雨時・災害時についてはモニタリングされていません。
那須町の実証事業の問題点については、こちらをご覧ください。
http://www.foejapan.org/energy/fukushima/181012.html#nasu

那須町での実証事業の断面図。
今回の環境省令での除染土埋め立てでは、このような遮水シートや排水処理も不要としている。

ここからが本題です。
検討会で、福島県外の除染土の埋立処分について環境省令およびガイドラインへの記載案が示されました。
http://www.env.go.jp/press/t04_mat02.pdf

「放射性物質濃度の上限を決めることなく、埋立処分できる」としています。覆土は30cmです。

「雨水等の侵入の防止や地下水汚染の防止等の措置は不要」としています。つまり屋根や遮水シートなどを設置する必要はなく、穴をほってそのまま埋めてしまえるということになります。

環境省は、福島県外において保管されている除去土壌の放射性セシウム濃度を推計した結果、中央値は 800Bq/kg 程度、約 95%は 2,500Bq/kg以下であるとしています(平成29 年3月末時点)。
埋め立てても支障がないという判断なのでしょうか。

従来、セシウム換算100Bq/kg以上のものは、ドラム缶につめ厳重に管理されていました。
また、県外の除染土であっても、2,500Bq/kg以上のものもたくさんあるでしょう。現に実証事業では、6100Bq/kgのものがありました。

1万Bq/kg以上の可能性があるものは、作業者の安全確保に必要な措置について電離則に基づく措置を講ずる、としているだけで、埋めてはならない、とはしていません。つまり、どんなに高濃度なものがあったとしても、埋められてしまうかもしれません。

また、どの単位での1万Bq(袋レベル?、袋の中に濃い部分があって、あとは薄かった場合は?)なのかは示されていません。

埋める土についての測定は、容器の表面線量率の測定と、放射能濃度のサンプル調査のみで、①放射能濃度が1万Bq/kgが超える可能性があるもの、②比較的表面線量率が高いものの中から合理的な範囲で抽出したものについて、としているだけです。

作業者などの外部被ばく量は最大でも0.43mSv/年としています。しかし、 除染作業などを行っている作業者はあちらでもこちらでも被ばくを強いられ、累積的な影響に関しては試算も考慮もされていません。

一方、環境省は8,000Bq/kg以下の廃棄物は管理型処分場で一般の廃棄物と同様に処分できるとしています。
今回の県外除染土は、埋め固めて、30cmの覆土をするだけで、管理型処分場以下であり、また、放射能濃度で分けることはしないので、8,000Bq/kg以上のものも埋めてしまうことになります。

放射性物質のばらまきを許す環境省令に反対していきましょう!

那須町の実証事業の様子

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山林から恩恵を受けているということ~鴨川市田原地区メガソーラー計画を取材して

○再生可能エネルギーと開発

福島原発事故以来、原発への依存度を下げるべく、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の割合を増やすことが決定されました。固定価格買取制度もあいまって、国内では大規模な開発を必要とするメガソーラーの建設が多く計画されています。

再エネの普及は、気候変動の原因である温室効果ガスを減らすための有効な手段でもあります。しかし現在、再エネの名の下に森林を伐採し、環境を破壊するような開発事例(以下、乱開発)が見られるようになってきました。

FoE Japanは、再エネの普及の名の下で山林を破壊することは、生物多様性の保全の観点から、また、気候変動の観点からも、森林は温室効果ガスの吸収に重要な役割を果たすため看過できないものであると考え、再エネによる乱開発の現場の取材を始めています。(FoE Japanでは北杜市も訪問

その一つとして今回、千葉県鴨川市に計画されている、メガソーラーの建設予定地を訪問しました。 (取材日時:2019年2月15日)

○鴨川市、田原地区、メガソーラー計画の主な問題点

千葉県鴨川市におけるメガソーラーは、田原地区という、鴨川市の玄関と言えるような場所に計画されています。同計画は、千葉県による林地開発許可審査中で、まだ着工はされていません。詳細はこちら

同計画の問題点として挙げられているのは、大規模な土地改変です。東京ドーム32個分にもなる広大な山林を平坦にするため、1,300万立方メートルの山を削り、その土砂で谷を埋め立てる予定であると事業者は言います。10トンのダンプトラック約200万台にもなる土砂も移動するそうで、流れる川や沢も埋め立てられる予定となっています。流れる川や沢が埋め立てられた場合、その川や沢に流れていた水が行き場を無くし、地中に水分が含まれていくため、地盤の脆弱化の恐れが考えられています。また、建設予定地は林野庁により「山地災害危険地区」に指定されている急峻な土地で、開発自体も危険や困難が伴う可能性があります。さらに、10万本以上の木が伐採されるとの意見もあり、この開発による大規模な環境破壊は免れません。

削られる予定地の山なみ
事業計画地映像(鴨川の山と川と海を守る会より)

○山林は漁業にとって必須

「山の緑から海に流れる豊富な栄養分は魚にとって大切だ。それを知らない漁師はいない。生計に関わる問題であり、本事業は反対だ」

とてもシンプルなコメントを述べたのは、年間25億円の販売高、組合員数約1400人の鴨川市漁業協同組合を統括する松本ぬい子組合長(以下、松本さん)。「今回の事業は環境破壊である」とさらに付け加え、山と海の関係を強調する松本さんの言葉からは、鴨川で漁業を営む人々は人間が生きるために長年自然を大切にし、持続可能な環境を作り上げてきたことを感じます。

松本ぬい子組合長

○山林の開発は、地主さんだけの問題ではない、公益性がある

現場で説明をする今西さん

鴨川の海と川と山を守る会(以下「守る会」)代表の勝又さんは、メガソーラー開発に対して、地元民の動きに懸念を示しました。「建設予定地は5区の財産区だったのだが、40数年前にリゾート開発会社へ売却している。その後、転売を重ねてきた山なので愛着がわかないのではないか。これは地主さんだけの問題ではない。そこに暮らして田んぼを耕作する人、川の水を利用する人、魚を取る人、それらを利用し、山の恩恵に浴する鴨川市民全体の問題だ」

勝又さん

同じく守る会の今西さんは「市はほとんどなにもしていない。これだけの規模の山を削り、谷を埋めることは、エネルギー問題とは関係なく通常の人の感覚では実行できないはずだ」と憤ります。

「山に降った雨が山林で浄化され川に流れ、そこに住む動物、生命の多様性が維持されている。これらは公共性があるものであり、都市部の方々も関係している。地主さんの意向で開発を決める筋合いのものではない」と今西さんは言います。

守る会では「エネルギーの問題については多様な意見があるが『この場所とこの規模』はダメという言い方をしている」と、統一見解はあると勝又さんは言います。また、「ようやく2018年2月ころから市民や議員の意識が変わり始めたと感じる。市民の関心が少し出てきたからこそ、未だに林地開発許可の審査に時間がかかっていて下りていないのだと思う」と、市民活動の成果についても分析していました。

◯市議会の雰囲気は?

佐藤カズユキ議員

鴨川市議会の中で本事業に唯一反対表明している、佐藤カズユキ議員に話を伺いました。

佐藤議員が反対を表明する理由についてお聞きしたところ、

「漁師の家に生まれ、自然を守ることを公約に掲げている。今回の事業は環境破壊である」

と自然破壊の懸念に加え、

「農業、漁業、林業の1次産業、観光が特徴の当市であるが、本事業はいずれにも大打撃を与える可能性がある。一時的な税金収入よりも失うものの方が大きいと思う」

と、経済的な懸念も理由として挙げていました。

これだけの問題のある事業に他の議員はなぜ表立って反対しないのかについて質問したところ、「事業に賛成の議員もいるが、個人的には反対だと言う議員が多い。しかし、個人的には反対としながらも、あくまでこの問題は市に許可権限はなく、国や県の問題であって市の問題ではないと言う議員が多く、個人の事業であることから、市や市議会が賛否を示すものではないという意見も多い。これは鴨川だけの問題ではないが、地方議会の議員の多くは国の方針にそのまま従う傾向がある」

と、議会の中で自らの意見を発することが困難であることを憂慮の声を漏らしました。

鴨川の市議会の構成については、

「鴨川市議会は圧倒的に自民系が多い。どこの政党であっても、漁業、農業、林業の1次産業が基幹産業である鴨川市を守るのは当然であるが、外部からの投資を優先させるなど、地元産業を守る動きにはなっていない」

との回答。

さらに、「良い再エネ、悪い再エネがある。本事業のような悪い再エネが再エネ全体の評判を落とすことになるのを懸念している」と話し、再エネの固定価格買取制度についても「再エネの使い方をしっかり国が制度化すべきだったと思う。再エネは、再エネ賦課金など国民が負担している公共の事業である。民間の事業利益主義だけ考えると今回のようにおかしくなってしまう」と、懸念を示していました。

加えて、「個人の事業だから私たちは何も言えませんという態度を行政がとっているのが問題。議会内での勉強会も進んでいないし、国からの通達がないと動かない。トップの方の意見が大きく左右する」

と、トップダウンでの動きにしか対応しない鴨川市にも問題があるといいます。

○市長のやるべきことはなにか

鴨川市役所訪問
亀田鴨川市長(左)

今回の訪問では、市民団体や市議会議員の他、2017年3月から鴨川市長を務める、亀田郁夫市長(以下、市長)との会合も実施しました。

鴨川市議会が昨年12月20日、国に対して提出した意見書『大規模太陽光発電施設の開発に対する法整備等を求める』には「自然環境、景観への影響・・・土砂災害等自然災害発生の懸念・・・市民生活を脅かす事態となっている」と説明があり、鴨川市としても、市長としても本事業は「自然環境、景観・・・災害の観点から問題である」と考えるのかを問うたところ、市長は以下のように答えました。

「個人的にはいろいろな意見があるが、法令等の基準に則り対応していく」。加えて、「鴨川市の環境破壊は市への大きな打撃となるのでは」との質問に対しては、「制度の範囲内で対応していくしかない。事業者としても法令遵守を前提として申請している。市としては現行法令の中でできることとして、市民の皆様に対して説明会を開催することや、市民の皆様の疑問に文書で答えることを求めたり、事業終了後あるいは災害等に対応するための積立金をするよう事業者に要請してきたところである」と市民との対話を促しつつも、他の地方行政にあるような条例を市として制定するなどの対策をする構えではありませんでした。

本事業のメリットについて市長は、「市としてメリットの有無で判断するものではないが、地域には短い期間経済的メリットはあろう。市内には、太陽光発電事業者によりミニトマトの温室栽培が行われているところもある」とあくまで中立性を強調しました。

一方で、本事業は鴨川市にとって失われるものについては「地域が担保できる積立金をするように事業者と合意を得たい」と事業者との合意形成に関しては積極的な姿勢は示すものの、本事業のデメリットについての言及はしませんでした。

最後に、「市としてそれ以上対応しないのは他に課題があるからか?」と、鴨川市における福祉や経済など他の課題が優先されて、本事業に関連した対応ができないのかという問いに対して市長は、「他の案件によって今回の事業への対応ができないということではない。繰り返しとなるが、法令に則して中立に対応していく」と否定しました。

と、上記のような形で面談は終了しました。市民や事業者との対話は重要視をしつつも、乱開発の規制を求めるような条例の制定や法令以上の対応には否定的でした。本事業は、鴨川市の基幹産業を脅かす課題とは捉えていないようです。

○鴨川市の向かうべき方向

今回は鴨川市のメガソーラー建設計画についての視察でしたが、メガソーラーへの懸念だけではなく、鴨川市の前向きな側面も発見しました。

守る会の勝又さんは、「鴨川市は移住者が多く自分で得られるものを自分で得る暮らしがしたい、自然の中で暮らしたいという方が多い。ジビエ、サーフィンも魅力であり、半分第一次産業、半分他の仕事(半農半X)みたいな生活に興味がある方々に良いまちである」と自然と触れ合いながら、自分の興味のあることに取り組める受け皿が鴨川にはあると強調されていました。

また、漁業組合長の松本さんも、「他地区は苦戦している中で当漁協は13年間黒字、若い方も入れ替わり入ってくるし経験者がやりかたを教えるという雰囲気が次世代を育てているようだ」と、鴨川の漁師も外からの移住者への対応も積極的で、これがモデル化されはじめ、鴨川のように漁師が増えることを「鴨川方式」といわれることがあるといいます。新しい風が吹いている鴨川でメガソーラー開発に対して「次世代のために反対。若い人たちの姿があるからこそ、想像がつく」と松本さんは強調します。

○自然とともに生きるとはなにか

今回の訪問で多くの方にお話を伺い、鴨川市における本事業は、再エネへの悪い印象が市民の間で広まるのではないかという懸念を感じました。国際環境経済研究所前所長の澤昭裕氏によると、ドイツでは太陽光発電の「施設建設に当たって森林等の伐採を行えば、その6倍の植林を行わないといけない」そうです。大規模な開発を伴うメガソーラー建設に頼らずとも、植林など対応が難しい耕作放棄地や一般住宅、工場などに設置する再エネを普及させるなど、やるべきことは他にもあります。

大規模に土地を削り、埋めるような事業は、再エネ事業に関わらず根本的に問題です。今回の訪問で、鴨川の経済を支える漁業組合を始め、一部の議員にも大規模開発に対する問題意識があり、自然環境の大切さが共有されていること強く感じました。長年維持されてきた自然環境は失ってから気づくのでは遅いのです。さらに、これは地域の問題ではなく都市部に住む人々も自然の利益を受けており、責任があると感じます。固定価格買取制度や環境影響評価法などの制度は短い期間の利益や影響は考慮していますが、さらに30年50年以上先を見据えるような長期的な視点が必要です。漁業や農業を支える自然保護の大切さを改めて感じ、行動していく必要があるのではないかと感じた取材となりました。

「計画概要」(鴨川の山と川と海を守る会調べ

場所:千葉県鴨川市、鴨川有料道路西側、清澄山系の山林

面積:事業面積250ha, 伐採面積150ha

発電規模:130mw

事業者:AS鴨川ソーラーパワー合同会社

地権者:Aスタイル

造成:大蓉工業

設計:ユニ設計

発電設備:日立製作所

(2019年2月 高橋英恵、松本光、天野遼太郎、田渕透)

台湾の脱原発に「待った」!?脱原発政策の行方

 

 昨年2018年、台湾の「2025年に原発ゼロ」政策の是非を問う国民投票が実施され、投票者の過半数が政策廃止に投票しました。今、台湾で何が起きているのか。一橋大学博士課程在籍で、地球公民基金研究員のダン・ウィジさんにお話を聞きました。

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 台湾には2011年の東電福島事故以前から脱原発運動がありましたが、2000年以降沈静化していました。しかし、福島第一原発事故をうけて、再び論争が白熱化し、運動は盛り上がり、最終的に2025年までに原発ゼロにするということが決定されました(法制化された)。

 台湾は、九州と同じくらいの面積で、4箇所の原子力発電所があります。首都台北から近いところに第1、第2原発があり、台湾南部に第3原発があります。1980年代、台北の北部に第4原発建設計画が浮上。それは台湾の民主化運動の盛り上がりの時期とも重なっています。

 2002年、環境基本法に脱原発社会を構築すると明記されました。しかしいつまでに脱原発社会を実現するかについては、定まっていませんでした。福島事故後、「2025年」というタイムラインが書き込まれました。

 2018年、「2025年原発ゼロ政策を撤回」すべきかどうかという国民投票が行われ、投票率54%、賛成が589万票、反対が401万票で、賛成多数で政策撤回が決まってしまいました。

 もともと2025年までに原発ゼロというのは野心的な目標ではありませんでした。現存する原発を40年間運転して、延長稼働しなければ、2025年には自然に原発ゼロとなるからです。ただ、見方をかえると2025年の電源構成には再エネ20%が含まれており、2016年時点で再エネが5%であることを考えると、再生可能エネルギーが原発に代替できるのかということに関しては不安がありました。

 では、なぜこの短期間の間に脱原発に向かい風が吹いたのか?

 背景として、民進党政権への不満が高まっていました。じつは今回の国民投票は、脱原発だけが議題ではありませんでした。10件の国民投票と地方統一選が同時に行われました。

 民進党政権は、エネルギーシフトに加え、年金改革や同性婚の認可を政策として進めてきました。そういった課題に対して、国民党を含め保守勢力は大きく反発し、国民投票で民進党政権の政策に反対しようと乗り出しました。

また、政権の実績に対しても、とくに経済政策がうまく行っていないという世論があり、一般国民の間でも現政権に対する反感が高まっていました。

 そこで、政権全体への信を問うも同然のような10項目の国民投票が浮上してきたのです。

 そこには、もう一つ背景があります。2017年に国民投票法が改正され(これも民進党政権肝いりで実現した)、国民投票の実施のハードルが下がっていました(有権者の1.5%が署名したら実施できることに。もともと5%だった)。皮肉ですが、民進党政権が進めた国民投票法改正が、保守陣営にうまく利用され、自分たちが自分たちの改革に飲み込まれた側面がありました。

 民進党が進めようとする同性婚政策を問う国民投票も反対多数で可決されました。地方統一選においても民進党は大敗を喫し、今回の投票結果は、エネルギーシフトや脱原発に民意が支持しないというよりは、民進党政権への不満の結果としてあらわれた現象とみたほうが妥当だと思います。

 また、政権側の対応も、後手に回りました。政策の一つである同性婚に関しては、とくに保守派の反対が強く、民進党が繊細な課題への意思表明を避けたかったため、原発についても強くでることができませんでした。

 さらに、議題提案者(台湾核エネルギー学会が主導した「以核養緑」国民投票運動が議題提起、表のリーダーは原子力支持任意団体(「核能流言終結者」)が務める。)が、エネルギーシフトの課題を壁として見せることに成功していました。つまり、脱原発政策を支える代替案がちゃんと整備されていないことを声高に叫びました。

 また、大気汚染問題に関する世論がとくに昨年から盛り上がっていました。脱原発を進めたため、火力発電が増やされ、大気汚染が深刻化したという論調が飛び交いましたが、原発が即時停止されたわけではなく、これは明らかに事実と異なります。しかし、こうした言説は、大気汚染問題が深刻な台中市や高雄市で国民党の市長候補者が選挙戦にとり入れたため、一気に広がりました。

 さらに、問題だったのはカンニングペーパー効果です。国民投票は発議されてから1ヶ月以内に投票が行われなくてはいけません。これでは十分な議論の時間ができません。内容をきちんと理解した上で投票した人はほんの一握りでした。

 ではみんな何に頼って投票したのか?SNSにどの議題になんと答えるかの解答例が出回りました。それに頼って投票した人が多かったのです。脱原発=大気汚染推進という画像も出回りました。フェイクニュースです。

 投票提起者は、これが脱原発法を削除する国民投票であると言わず、これは「以核養緑」のための投票だと説明していました。すなわち、再エネの普及は時間かかるので、2025年までに再エネ20%、LNG50%、石炭30%というエネルギーミックスは無理があり、なので原子力をもっと活用して、再エネの健全な普及を図ろうという意味です。

 (ちなみに、国民投票請求のための署名集めの最中には核エネルギー学会と東電が主催で「東電再建の道」という廣瀬直己会長講演会も行なっていたとのこと)

 実際にこの決定がどのような影響を及ぼすのでしょうか?

 第1・第2原発に関しては、運転延長期間の申請は間に合いません。第3原発は可能ですが、地方自治体首長は否定しており、活断層の問題もあります。第4原発は工事再開のために予算編成が必要です。

 現在、原発擁護派は第4原発の是非を問う国民投票を目論んでいます。また環境団体の説明会に乱入して、嫌がらせすらしています。

 今後、脱原発派は原発安全問題をもっと主張していくつもりです。日本で震災が起きてから8年。台湾でも記憶が薄れつつあります。原発事故の状況についても、引き続き台湾に伝えていく必要があります。

 また、自分たちの活動に資するような、今回の国民投票に対して対抗的な国民投票も考えています。

(聞き手・書き起こし:深草亜悠美)

大規模開発から守りたい「暮らし」~インドネシア・インドラマユ火力発電所で奪われるものは?

約3年前からFoE Japanが取り組んでいるインドネシア・インドラマユでの石炭火力発電事業・拡張計画問題。本事業は、国際協力機構(JICA)が政府開発援助(ODA)として支援をしています。

私たちは現地NGOであるWALHI(インドネシア環境フォーラム、FoEインドネシア)と協力し合いながら、事業に反対の声を上げている現地住民の支援を続けていますが、12月27日、この反対運動をしている農民3名に対し、彼らの身に覚えのない「国旗侮辱罪」でそれぞれ5ヶ月(2名)と6ヶ月(1名)という実刑判決が言い渡されました。FoE Japanを含む日本の3団体は、これは冤罪であり、国家事業に異を唱える住民への弾圧に他ならないことから、同日、日本政府・JICAに人権状況の改善を求める緊急要請書を提出しました。

本件を担当しているFoE Japanのスタッフは定期的に現地調査をしていますが、今回同スタッフと11月からスタッフに加わった私、杉浦2名で12月に現地調査をしてきました。その時の体験談を踏まえて、本事業のこと、また現地の様子などをご紹介します。

インドネシア・インドラマユ石炭火力発電事業・拡張計画とは

インドネシアの首都であるジャカルタから東に約120~130キロ行ったところに位置する西ジャワ州インドラマユ県。自然に恵まれた環境から、車窓からは見渡す限り農地が広がり、海沿いの村には多くの漁船も見えるなど、農業や漁業が盛んな地域のようでした。

インドネシア・ジャワ島地図(googleマップより)

このインドラマユ県北西部の海沿いに面したスクラ郡とパトロール郡というところに石炭火力発電所の建設が予定されています。発電所の規模は、1,000MWを2基の計2,000MW。東京ドーム約59個分にもおよぶ275.4ヘクタールの広大な敷地が予定地としてとられています。JICAは初めの1基分1,000MWの協力準備調査をすでに行い、現在は基本設計などに対するエンジニアリング・サービス(E/S)借款での貸付17億2,700万円を続けています。また、インドネシア政府の要請を待って、本体工事に対する借款も行う予定になっています(詳しい事業の内容はこちら)。

12月現地調査~事業と闘いつづける住民との村での語らい

今回12月に私たちが訪れたのはムカルサリ村。パトロール郡に位置し、本事業に反対している現地の住民ネットワーク“JATAYU”(インドラマユから石炭の煙をなくすためのネットワーク)の中心地でもあります。実際に私たちもJATAYUメンバーのお家に泊めていただきました。

現地に着いた時には夕方。すでに訪問の連絡をしていたため、その家の皆さんがたくさんのご飯を用意して待ってくれていました。初めて会い、しかもインドネシア語が喋れず、ほぼコミュニケーションがとれない私にも優しい笑顔で「食べな、食べな(現地語でマカン “makan”)」と言ってくれるみなさんの温かさに、緊張がすぐほぐれました。

作ってくださった夜ご飯(2018年12月撮影、FoE Japan)

ご飯を食べながら和やかな雰囲気でお家の方々と話していると、JATAYUのメンバーが続々と家にやって来ました。すると、上述した不当逮捕・勾留されている仲間の農民3名の裁判に関する話題へと移っていきました。和やかな雰囲気がガラッと変わり、みんなの表情も真剣なものになるのがすぐにわかりました。

ここで裁判の内容を説明すると、この3名は、JATAYUが訴訟に勝利し、お祝いをしていたときに、インドネシア国旗を反対に掲げたとして“国旗侮辱罪”で昨年(2017年)12月に逮捕されました。一度は釈放されたものの、今年9月に再逮捕。現在は上述のとおり判決が出ているものの(2名に実刑5ヶ月、1名に実刑6ヶ月)、私たちが訪問した時は裁判の真っ只中でした。この国旗侮辱罪――インドネシア国民だったら国旗の赤白の向きを誰もが知っているなか、3人は「分かっていてそんなバカなことをするわけがない」と罪を否定しています。

インドネシアでは現在、土地・人権・環境といった権利を求め活動する人々への国家による弾圧が高まっており、いくつものケースで反対運動をする人々が犯罪者にしたてあげられています。WALHIによると、現在、本件のような開発事業に伴う環境問題を訴え、「犯罪者扱い」されている住民のケースはインドネシア国内で15件(計63名)にのぼるそうです(参照:FoE アジア太平洋地域の声明「フィリピンとインドネシアは土地権利擁護者に対するテロリストのレッテル貼りや犯罪者扱いを止めよ」(2018年3月) モンガベイ記事「先住民族による抗議を黙らせるため犯罪者扱いや暴力が増加―国連報告書が指摘」(2018年9月))。

本事業も国家プロジェクトのため、私たちは今回の農民3名の「国旗侮辱罪」による不当逮捕もそういった国家の弾圧なのではないかと考えています(26カ国188団体が署名した農民解放を求める要請書も日本政府・JICAに提出)。

捕まっている3人には家族があり、まだ小さなお子さんがいる方もいます。奧さんと子どもと一緒にご飯を食べたり、遊んだり、また仕事をしたり、そんな時間を考えると、自分がやってもいない罪で逮捕・勾留というのは本人にとっても、またご家族にとっても辛く、長い日々だということを今回の現地調査のなかで感じました。

拘束・逮捕されている農民3名(2018年12月撮影、FoE Japan)

村でみなさんの話を聞いていると、JATAYUのメンバーは、ただ自分たちの当然の権利を主張しているだけなのに、仲間・家族がそういう目にあっているということが許せず、怒り、悲しみ、悔しさなど様々な感情が混ざり合っている様子が、彼らの表情、声に出ているのがわかりました。

なんとか仲間の無実を証明し、そして石炭火力発電所の建設を止めたいという意思を改めて確認し、JATAYUとして最後まで闘い抜くという強い思いを感じました。

奪われる生活の基盤

翌日、発電所建設予定地の視察へと向かいました。

村内でバイクに乗り移動。まず、一番初めに驚いたのは民家と建設地の近さ。家が多く立ち並ぶ場所からバイクに乗って2分も経たないうちに、長く続く白いフェンスが目に飛び込んできたのです。

発電所建設予定地を区切るフェンス(2018年12月撮影、FoE Japan)

建設地に一番近い家からは本当に目と鼻の先です。このフェンスを越えると石炭火力発電所の計画地になります。

発電所建設予定地入り口(2018年12月撮影、FoE Japan)

そのゲートをくぐると次に私を驚かせたのは広大な敷地でした。

発電所建設予定地(2018年12月撮影、FoE Japan)

果たしてこんなに広大な敷地が必要なのかというくらいの土地の広さ。東京ドーム59個分なんて、今この記事を読んでいる方もなかなか想像ができないと思います。この大きな土地で農作業を依然として続けている住民の方が何人か見られました。普段はもっと多くの農民が田んぼや畑作業をしているそうですが、みんな仲間の裁判のため忙しく、今はあまり作業ができていないとのこと。

そこには農民たちが休憩できる場所もありました。お昼時にはその辺りの農地で働いている方々がきて、ご飯を食べたり休憩をしながらお話をしたりしている様子が見られました。

発電所建設予定地内の休憩所(2018年12月撮影、FoE Japan)

農地でお話を聞いた方の畑には、トマト・ナス・赤タマネギ・かぼちゃなど、様々な野菜がなっており、今では多くのところで見られる単一栽培とは違う昔ながらの小規模混合栽培方法で野菜を作っていました。

発電所建設地内にある農地1(2018年12月撮影、FoE Japan)
発電所建設地内にある農地2(2018年12月撮影、FoE Japan)

こんなに立派な畑――もちろん発電所の建設工事が本格的に始まれば、全て潰されてしまいます。農家の方々が大切に使い育ててきた土壌だってきっとコンクリートが流し込まれる。彼らの生活手段だって無くなります。作物の補償金はもらっている(もしくはこれからもらうはずである)ものの、そんなの一生分もらえるわけではなく、ほんの少し。

お話を聞いた農家の方は、これからどうすればいいかわからないと言います。「建設地外の農地に移るといったって、他の農家だって農地を使いたいだろうから取り合いになる。もともとそんなに土地だって余っていない。」

「今後の生活、本当にどうすればいいかわからない。」

そんな話をきいて、私はすごく胸が苦しくなりました。

作業をする農民(2018年12月撮影、FoE Japan)

この開発予定地の中には、浜辺も含まれています。ここでは小規模漁民が現地の名産である小エビをとって、生計の一つとしています。私たちが沿岸を歩いていると、現地の漁民1名が網を使い小エビ獲りに精を出していました。

海で小エビを獲る漁民(2018年12月撮影、FoE Japan)

こんな浜辺も、全て立ち入り禁止になり、いままで家からすぐだった場所ではなく、しばらく歩く、もしくはバイクで遠くまで行かないと小エビが獲れなくなる。発電所から排出される温排水だって海水の温度を上げ、海洋生態系を壊しかねません。今まで獲れた小エビが獲れなくなってしまうかもしれないのです。

小エビ漁用の網(2018年12月撮影、FoE Japan)

“Livelihood”が壊されるという意味

私は今回のインドネシア訪問が開発現場の初めての現地調査となりました。大学で政治学を学ぶ中で開発学を少し学び、大学院では開発学を専攻しさらに専門性を身につけました。しかし、今回まで実際に現場を見るという機会がなく、今まで机上で勉強してきた“Livelihood”が壊される現状というのを初めてちゃんと理解することができました。

“Livelihood”という言葉は、日本語で「生計・暮らし」と訳されます。しかし、その言葉にはもっと深い意味があり、それは彼らの生活の基礎となる水・土・空気など全てを含む自然環境が欠かせないものであり、また人々が集まって意見を交換したり、話をして笑ったり泣いたりする生活環境も含まれるものなのだと思います。今回の現地訪問で、多くの人々に出会いました。畑仕事をしている農家のご夫婦、魚を網でとる漁民の人、羊を連れて歩き草を食べさせている羊飼いの人、バイクに乗って楽しんでいる若者、元気に田んぼ道を走り回っている子供たち、外で椅子に座って話している畑仕事終わりの方々、家事をしているお母さん方――そんな彼らの当たり前の生活全てが”Livelihood”であり、それがいま壊されようとしています。

そんなことがわかったら、反対の声が出るのは当たり前です。しかし、その反対の声さえも政府の弾圧によって抑えられようとしているのです。

私たちはそんな状況を決して許せないと思いました。私たちができるあらゆることをしながら、現在捕まっている3名の農民の解放を訴え、またこの石炭火力発電事業を中止させたい。そう固く決意した現地調査になりました。

(開発と環境・森林担当 杉浦 成人)

住友商事・スミフルは今すぐ対応を!血に染まるバナナ―現場からの緊急報告

バナナプランテーションの実態

庶民の食べ物として広く流通するバナナ。日本のコンビニやスーパーなどで見ないことはありません。日本におけるバナナの購入数量は生鮮菓物のなかで2004年以降、みかんを抜き、13年連続1位。その需要の高さが伺えます。その日本のバナナのうち、金額・数量をそれぞれ85%、83%占めるのがフィリピン産[1]。そして、国内販売量No.1を謳(うた)うスミフル(旧住友フルーツ)は、大手金融機関による投融資も受け、住友商事が株を49%保有しています。しかし、スミフルが事業を展開するフィリピンのバナナ農園を巡って、農薬による野菜・環境の被害や深刻な健康被害が告発されてきました

フィリピンにおけるバナナプランテーションへの批判の歴史は日本では長く、故・鶴見良行氏の『バナナと日本人』(1982年、岩波新書)に始まります。しかし、問題は残念ながら解決されていません。今、正当な権利を勝ち取ろうと声をあげるバナナプランテーションの労働者を狙い、軍や警察、私兵などによる脅迫・暴力行為が起き、銃撃・放火事件も相次ぐなか、死傷者が出るなど深刻な事態となっています。 その深刻な人権侵害の状況把握と背景を調査するため、12月にフィリピンのミンダナオ島コンポステラ・バレー州をPARC(アジア太平洋資料センター)と訪問しました。

現場からの緊急報告(コンポステラ・バレー州)

ドゥテルテ大統領が2016年まで市長を務めていた南部の大都市ダバオに到着。翌日、早朝の目覚めとともに衝撃的な一報が入りました。スミフルの労働組合NAMASUFA(Nagkahiusang  Mamumuo  sa  Suyapa  Farm)の現地事務所と組合のリーダーの家など4棟が未明に放火されたというのです。急いで支度し、出発。ダバオから北東へ車でおよそ2時間、コンポステラ・バレー州に入りバナナのプランテーションが視界に入ってきました。途中スミフル専用の港やトラック、バナナを梱包する工場を横目にしながら現場に到着。数十人 の人々が集まっているその奥に煙が見えました。

道の両脇に広がるバナナプランテーション(2018年12月撮影、FoE Japan)

スミフルの労働者から聞取りをするため、使用させてもらう予定だったNAMASUFAの事務所が未だに煙を上げていました。衝撃を隠せませんでした。幸いなことに死傷者はいませんでしたが、リーダーの家や組合事務所を含む4棟、そしてNAMASUFAが所有していたという重要書類が全焼。現場には消防や警察、メディア関係者などはおらず、周辺住民が燻(くすぶ)る炎に水をかけていました。

スミフルの労働組合NAMASUFAのリーダー宅焼け跡(2018年12月撮影、FoE Japan)
バケツで水をかけ火消し(2018年12月撮影、FoE Japan)

NAMASUFAの事務所の焼け跡には、スミフルの備品と思われる焼け焦げた机もありました。日本へ出荷されるバナナの農園・梱包工場で働く労働者たちへの弾圧と理不尽さを目の当たりにし、気持ちの整理がつかないまま、その人たちへのインタビューを開始。根深く、深刻な実態を聞くことになります。

事務所焼け跡からスミフルの備品(2018年12月、FoE Japan)

なぜ、このような事態になってしまったのか。2017年6月に、スミフルの正社員であることを訴えてきた労働者側が最高裁判決で勝利を収めてから事態が悪化したと言います。判決の内容は労働組合NAMASUFAをスミフルの正式な労働組合と認定し、訴えていた従業員をスミフルの労働者と認めるというものでした。ところが、スミフル側がこれを無視。バナナプランテーション及び梱包工場等の操業を変わらずに続けたことにより、今年10月、フィリピン・ミンダナオ島南東部コンポステラ・バレー州におけるバナナプランテーションの主に梱包工場で働く従業員900余名による大規模なストライキが決行されました。しかし、ストライキに参加した900人は事実上の解雇となっています。暴行・放火・銃撃事件が相次ぎ、今回の組合リーダー宅への放火も二度目でした。

11月30日に組合代表の家に撃込まれた8発中2発の銃弾(2018年12月、FoE Japan)

訴訟やストライキを決行した理由には梱包工場での過酷な労働環境や不当な労働契約、有毒な薬の使用などがあります。毎日23時間、身体がボロボロになるまで働かされたという証言。過大なノルマを課せられ、最低賃金を大きく下回り、辞めた女性もいました。

また、バナナ農園においても、親が土地をバナナ栽培用に契約し、再契約をさせてもらえずに子どもにそのまま受け継がれてしまうケースも深刻で、自分たちが聞き取りしたその契約内容は、23年間も納品単価の据置きを可能にするものでした。自分の土地について、「Intervention Contract(介入契約)」を結ばされた男性は多額の借金を抱えていました。その聞き取りの内容は衝撃的なもので、10年間の契約が切れた後、バナナ農園の運営をスミフルが担うという名目上、スミフルに対し、年間1ヘクタールあたり35,000ペソ(約73,500円)を支払う必要があるという再契約を結ばされたというものでした。さらに、その契約書のコピーは手渡されることもありませんでした。当初の契約内容も、現在の契約内容も、スミフルのみぞ知るところで、自分たちには確認する術がないのです。現在その男性は500,000ペソ(約105万円)の借金があると言います。この地域の最低賃金が1日365ペソ(約767円)であることを考えると、とても払える額ではありません。

地元コンポステラ町での人権状況の悪化とスミフルが交渉を拒否しつづけている現状から、11月下旬、ストライキをしている900余名のうち、およそ330人はコンポステラ・バレー州から遠く離れたフィリピンの首都マニラに乗り込むことを決断し、大統領府前や労働雇用省前、日本大使館前などでのデモ活動を繰り返しています。コンポステラでの聞き取りを終え、マニラに戻ってから、早速その労働者たちが拠点にしている野外テントを訪れました。

その労働者へも聞き取りを行ない、明らかになったのは2014年から施行された『圧縮労働週間制度(Compressed work week)』が悪用されている実態でした。それは週に6日48時間働く代わりに、週に3日36時間ないし4日で48時間働くというものでした。そうすると1日12時間までが日払い(365ペソ=約767円)となり、残業代(1時間あたり52ペソ=約109円)は12時間労働した後に払われるというものです。つまり、同じ賃金(365ペソ)でも1日の労働時間を4時間長く設定できるので、事業者からすると支払いを抑えることができる=従業員は同じ時間を働いているのにもかかわらず収入が減ります。結果として、労働者たちは以前4時間分の残業を得ていた分を、追加で残業しなければ生活できないので、1日20時間以上も働くことになってしまうのです。

マニラでのデモ(2018年11月撮影、FoE Japan)

加えて、「数種類の農薬が使われている。最近では無臭のものになり、農薬を過剰に吸いやすくなり、深刻な健康被害になる恐れがある」と農薬の調合を担当していた男性は危惧しました。今回、梱包工場の労働者への調査では、PARC制作ビデオ『甘いバナナの苦い現実』で登場するような失明のような深刻な被害を受けた人はいませんでしたが、多くの人が皮膚病をはじめ、腹痛、高熱、アレルギーを訴えており、防具も十分に支給されなかったそうです。

マニラでの聞取り(2018年12月撮影、FoE Japan)

これらの事例は氷山の一角であり、こうした労働環境はスミフルに限ったことではなく、他のバナナブランドでも同じようなことが起きているという証言もありました。また、12月4日のTBSラジオで立教大学異文化コミュニケーション学部教授の石井正子さんが「バナナの大量廃棄処分の実態もあるが全容が明らかでない」と話されていたように、バナナには、他にも様々な問題があります。

朝ごはんやおやつにバナナを食べている方、チョコバナナやバナナパフェが好きな人も多いかと思います。栄養価が高く、健康にも良いとされるバナナを食べるなとは言えません。ついつい安いバナナ、黒い点のない黄色いバナナに手が伸びることでしょう。しかし、その安さや黒い点のないバナナを作っている人たちのことを忘れないでほしいと願っています。そのバナナは血に染まっているかもしれません。

なお、ストライキをするスミフルの従業員の方々は現在、収入がない状況で、募金などの支援により自分たちの正当な権利を勝ち取るための活動を続けています。マニラでピケを張る皆さんは、依然よい結果を得られていないことから、フィリピン人にとって家族と過ごすとても重要なクリスマスや年末年始も地元コンポステラ・バレーに戻ることができませんでした。様々なサポートを必要としている労働者の皆さんのため、カンパを呼びかけています。日本の皆さんからもぜひご協力をお願いします。

[1]財務省貿易統計のデータをもとに計算

※スミフル労働者の問題の詳細や経緯は、こちらもご参照ください。

※スミフル労働組合メンバーへ支援のカンパのお願い

現在、マニラでスミフルへの抗議の声を上げ続けているNAMASUFA(スミフル労働組合)のメンバーが、食料・薬などの生活支援と活動支援を必要としています。ぜひ、カンパのご協力をお願いします。

下記要項を事務局までお知らせの上、銀行口座にお振り込みください。
お名前/ご住所/お電話番号/ご支援金額/用途指定寄付(バナナ)であること

カンパ入金口座:

1)ゆうちょ銀行 〇一九支店(019) 当座口座 0163403
名義: アジア太平洋資料センター

2)郵便振替口座 00160-4-163403 アジア太平洋資料センター

※寄付に関するお問い合わせ

特定非営利活動法人 アジア太平洋資料センター(PARC)/担当:田中

〒101-0063 東京都千代田区神田淡路町1-7-11 東洋ビル3F

TEL:03-5209-3455

E-mail:office (@) parc-jp.org


【撤退の意思決定を!】日立に英国への原発輸出反対署名を提出&日立前にシロクマくん出現

本日1月8日、日立製作所がイギリスで進めるウィルヴァ原発建設計画の中止を求める署名を、日立および安倍首相に対し提出しました。第一次集約分は、個人署名が2725筆(32カ国)、団体署名が79団体15カ国でした。ご協力いただいたみなさま、本当にありがとうございます。

日立製作所の中西会長自ら、プロジェクトは「もう限界」と発言しています。

まだ遅くありません。時代遅れで危険な原発事業から、今こそ事業から撤退するべきです。

正式に事業撤退の最終決定をさせるためにあと一押し!ということで、一次集約分の署名の提出と、日立製作所が入っている日本生命丸の内のビル前でアピールを行いました。

アピールには英ウェールズの住民団体PAWBのロブさんもインターネット参加。「今や、ウィルヴァニューウィッド原発は、英国と日本政府の支援なしには継続不可能であることは明らか。しかもそのツケを支払わされるのは将来世代で、島にも大きなリスクが押し付けられる」と訴えました。

日立の家電のキャラクターのしろくまくんも参加。原発輸出を強引に進めればしろくまくんのイメージも損なわれかねないと心配だったのでしょうか?

署名は安倍首相にも提出しました(郵送)。安倍首相は、明日からオランダとイギリスを訪問。メイ首相との会談でこの原発輸出案件についてもふれられるとみられています。

この原発案件は日英両首脳の思惑が強く働いています。日立には、賢明な経営判断をしていただきたいと思います。

署名自体は日立が事業から完全撤退するまで継続します。ぜひ引き続きご協力よろしくお願いします。

(満田夏花・松本光・深草亜悠美)

動画も公開中!

FoE Japanでは、これまでに2度、ウィルヴァ原発建設立地の状況調査やウェールズのみなさんにインタビューを行っています。この度その様子をまとめた動画が完成しました。ぜひご覧ください&拡散お願いします。


People Power!! きれいな空気をもとめる千葉・首都圏の市民の声が後押しに!

プレスリリース

People Power‼
きれいな空気をもとめる千葉・首都圏の市民の声が後押しに!
JFEスチールと中国電力、蘇我石炭火力発電所計画を中止に

[PDFはこちら

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12月27日、中国電力株式会社並びにJFEスチール株式会社は、千葉市蘇我地区で計画していた「(仮称)蘇我火力発電所建設計画」(107万kW、2024年運転開始予定とされていた)を中止し、天然ガス火力発電所共同開発の事業実現性検討に着手することを発表しました[1]。中止の理由について、「本計画は十分な事業性が見込めない」とホームページ上で公表しています。FoE Japanは、連携する地元団体や環境団体とともに、その決断について歓迎します。

本計画に対しては、2017年4月に発足した蘇我石炭火力発電所計画を考える会(蘇我の会)を中心に、地道なチラシの配布や駅頭での呼びかけ、手配りによるアンケート、千葉市や千葉県の環境委員会等の傍聴や意見提出、事業者本社への働きかけなどなど、ダイナミックに活動してきました。東京湾の他の計画地の市民団体や、気候ネットワークやFoE Japanなどの環境団体もその動きと連携してきました。

しかし、事業者は環境影響評価の手続きを進め、2018年1月には環境影響評価方法書を公開していました。方法書に対しては、住民説明会などでも反対の声が大きくあがりました。

・住民団体が指摘していた本計画の問題点:
(1)気候変動問題に対して世界の脱石炭の潮流に逆行していること
(2)大規模な石炭火力発電所は最新の設備であっても大気汚染物質を拡散(SOxやNOx、PM2.5、水銀など)、その影響は広範囲にわたること
(3)現在すでに粉じんの降下があること
(4)真横にサッカースタジアムもあり、周辺に学校や病院なども多いこと

今回の事業者の決断にあたっては、地域住民や環境NGOからの度重なる要請やアクションなどさまざまな形での声が、無視できない大きさであったことも後押ししたと考えられます。市民の力、People Powerの勝利です。

FoE Japanでは2018年11月、蘇我の会のメンバーにインタビューをし、その声の一部を映像とインタビューにまとめていますので、ぜひご覧ください。
●映像『日々のくらしの裏側で〜千葉県千葉市 蘇我〜』http://www.foejapan.org/climate/nocoal/soga.html

●インタビュー記事
【日々のくらしの裏側で – vol.5】企業の懐柔策に埋もれる蘇我住民の声(渡辺敬志さん)https://foejapan.wordpress.com/2018/12/19/soga_1/
【日々のくらしの裏側で – vol.6】残すべき未来のために、一筆一筆の力を信じて(山崎邦子さん)
https://foejapan.wordpress.com/2018/12/26/soga_2/
【日々のくらしの裏側で – vol.7】一人のサッカーファンの願い(品田知美さん)https://foejapan.wordpress.com/2018/12/27/soga_3/
【日々のくらしの裏側で – vol.8】本当に向き合うべき相手とは。JFEと中国電力だけではないもう一つの壁(小西由希子さん)
https://foejapan.wordpress.com/2018/12/28/soga_4/

しかしまだ、日本には石炭火力発電所の新規建設計画が34基あります[2]。東京湾にも袖ケ浦、横須賀の計画が残っています。FoE Japanは、「事業性がない」ことがすでに明らかとなっている石炭火力発電について、その他の計画も中止としていくことを求め、引き続き地元の市民とともに声をあげていきます。

<関連情報>

・石炭火力を考える東京湾の会:蘇我火力問題の関連ニュース
https://nocoal-tokyobay.net/tag/chiba/

・FoE Japan:電力自由化の負の側面?石炭火力の新規計画ラッシュ!
http://www.foejapan.org/climate/nocoal/index.html

・蘇我にもう発電所はいらない—「公害」の歴史ある土地で進むあらたな建設計画
(2017年10月記事)
https://foejapan.wordpress.com/2017/10/16/soga/

国際環境NGO FoE Japan
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9
03-6909-5983   info@foejapan.org

[1] 中国電力ほかプレスリリース(2018年12月27日)
「石炭火力発電所共同開発の検討中止と天然ガス火力発電所共同開発の事業実現性検討着手について」http://www.energia.co.jp/press/2018/11571.html

[2] 石炭発電所ウォッチ(気候ネットワーク) https://sekitan.jp/plant-map/

 

【日々のくらしの裏側で – vol.8】本当に向き合うべき相手とは。JFEと中国電力だけではないもう一つの壁。

国会議員に話しても、石炭は悪い。けど、JFEは支援者だから言えないってはっきりおっしゃるんです。だから私が代わりに言わないと。知らない人のためにも、知っていて言えない人のためにも、やっぱり誰かが言わないといけないと思うんですよ。つくってしまったらね、やっぱり30年とか40年とか壊せないわけでしょ?だから作らせまいと。そのために踏ん張らないといけないと思います。”

こう話すのは、石炭火力を考える東京湾の会(以下、東京湾の会)の共同代表を務める、蘇我石炭火力を考える会(以下、蘇我の会)の小西由希子さん(以下、小西さん)。蘇我石炭火力の建設計画は、小西さんの仲間の市議会議員から聞いたそうです。この計画について調べていく中で問題だと思ったことが、蘇我の会の最初のきっかけだった言います。

知らない人のためにも、知っていて言えない人のためにも、誰かが言わないといけない。そのように考えるまでに至った、その背景を伺いました。

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(小西由希子さん。JFEアクションにて気候変動への危機を訴える)

 

小西さんにとって、何が一番問題なのでしょうか?

“やはり、この問題を知らない人が多いことかなと思います。特に、千葉でできた電気を消費しているところにいらっしゃる方が、こういう問題があるということを知らないことが大きいと思います。もちろん、消費している人が出したCO2としてカウントされていくんだけれど、実際は発電所から出た排気ガスはここに残していかれているわけで。そういうことを知っていただくのと、それからやっぱり、電気は十分に足りていて、この石炭火力を日本政府が進めようとしているその裏には、原発と抱合せでエネルギー基本計画等が、なんの見直しもなくやられていること、それから、やっぱりこれから電気を必要としている他の国々のために、石炭火力のプラントを売り込んでいこうというような政治姿勢は、本当に私たちが望んでいることか考えてほしいと思います。”

 

この活動をされていて、困っていることをお聞きしました。

困っていることはいっぱいあります(笑)。そうですね、まず一つは、計画を知らない方がすごく多いということです。それはあまり広報されていないということもあるし、広報されていないからと思いますが、マスコミもあまり取り上げていないんですよ。私たちが何か署名を届けた時とかは取り上げてくださるけど、あんまり関心を持ってくださらない。

それと、市民でも、お話させていただくと、電気が足りないんだったら原発よりいいんじゃない?と思ってらっしゃる方も結構いるんです。そもそも発電しなくていいのよっていっても、そこはなかなかわかってもらえない。というのも、福島が発電所を背負ってくれて、迷惑かけていて、私たちがいっぱい電力使っているのに、そんなわがまま言っちゃいけない、というふうに思っている人が多いんですよ。あと他に、ここに石炭火力がくると、きっと雇用が生まれるんじゃないかとか、固定資産税が増えるんじゃないかとか、なんとなく期待感を持っている方もいます。けれど、行政と事業者に、ここでの経済的メリットは何なのという質問をしたんですけれど、結局行政も事業者も、どんな経済効果があるって言えなかったんですよ。だから、それほど効果がないということなのではないかなと。でも、なんとなく儲かるのではと、そういう“なんとなく感”に縛られている。これを逃したら雇用が減るのではないかとか、なんか、そういうことに縛られてしまっているというか、そういうことがあるのかなと感じます。”

 

電力を多く使っているから文句は言えない。そんな住民の声を聞いて、小西さんは千葉市そして千葉県の電力消費量を調べてみたそうです。その結果について教えてくださいました。

“千葉県とか千葉市の発電所の電気ってどこでどれだけ使われているのだろうって調べたんです。でもそういうデータってどこにもなくて。そこで自分で、いろんなその消費電力とか発電所の規模とかから計算して出してみたんです。そうしたら、千葉市の場合は、千葉市でつくっている電力の25.9%くらいしか市内で消費していないんです。しかも千葉市は製鉄所を持っているから、産業部門の消費電力がすごく大きくて、千葉市民が使っているのは、結局千葉市でつくっている電力の5.8%しかないんです。で、残りの72.1%は市外に出している。市外といっても首都圏ですよね。じゃあ千葉県はと調べてみたら、27%が県内消費、残りの73%は外に向けての電気だっていうことがわかったんです。この結果を見たとき、これは、福島が他県のために電気を作っているのと全く同じ構図だということがわかったんです。だから千葉県、千葉市がこれ以上発電所を作らなければならない理由はないんじゃないかと思ったわけ。千葉市のこの家庭部門での消費は5.8%しかないのに、市民は自分たちで、エコドライブに気をつけましょうとか、電気はマメに消しましょうとか、トイレの電源は出かけるときは抜きましょうとか、市民はこんなにコツコツ節電しているのに、なんでそんな温室効果ガスを出すような発電所を認めるの?って、全く私には納得いかない話でしたね。”

 

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(東京湾石炭火力サミットにて。住民の声を届ける。)

 

事業者との会合も何度か設けたという小西さん。そのとき印象に残った事業者のコメントがあるそうです。

“中国電力の方に最初に話を聞いたときにおっしゃったのは、「石炭火力発電は製鉄所で使うよりずーっと、質の悪い石炭でできる」って、はっきりおっしゃったのよ。要するに、硫黄とか不純物を含んでいる質の悪い石炭が燃やされるということなんです。こういう質の悪い石炭が燃やされると、発電所周辺の被害もあるし、その石炭の採掘現場でも、相当の環境問題を引き起こすわけですよね。それに、日本がプラントを輸出することで、どれだけ環境汚染を輸出してしまうのかということも、やっぱり私たちは考えていかないといけないと思う。だからもうやっぱり、石炭火力で金儲けをする時代ではないっていうことを、やっぱり言っていきたいなあと思うし、やっぱりその、消費する側の方にも、こういう問題があるということを、ぜひ知っていただきたい。“

 

質の悪い石炭でもいいという、中国電力社員の衝撃的な言葉。その言葉が意味することを彼は理解しているのかと、怒りすら覚えます。この中国電力のコメントについて、もう少し小西さんに伺ってみました。

結局、住民がどれだけの空気のよさを求めるかによって、プラントの質が決まり、原料が決まるっていうわけなんですよ。私たち住民があまり文句言わなければ、安いプラントでいいし、原料も安くていい、と。しかも、石炭採掘とかやってらっしゃるJERA(株式会社JERA。東京電力グループと中部電力とが共同で設立した火力発電会社)なんかはね、いろんな質の石炭を持っているわけですよ。だから、出口が決まっていると、石炭のブレンドが決まってくると。この質の悪いのを3割、中くらいのを3割、いいのを4割入れよう、というように。住民がどれだけ無害さを求められるかによって、いくらでもブレンドできると、つまりは、住民が何も言わなければ、いくらでも安いものを入れられると、そういう話をするわけですよね。でも、そんなことをされたら、たまらないでしょ。しかも、石炭ってね、敷地内に野積みにされるんです。船から石炭を搬入するときは密閉したベルトコンベアーでやりますっていうんだけれど、搬入後の石炭の保管の仕方が野積みだったら、なんの問題解決にもなっていない。”

 

日本は政府のやっていること、企業活動に反対の声をあげるのが非常に難しい世の中。筆者自身も、国や企業の活動で何かおかしいなと感じても、考えを発信することに躊躇してしまう人が多いように感じます。それでも、声を上げ続ける小西さん。その原動力は何なのでしょうか。

実は、私たちの向き合うべき相手は、石炭火力のJFEと中国電力だけではないんですよ。実は住民、議員でもあるんです。この問題って、ちょっと考えたらおかしいでしょ?だけど、議会でも、ほとんど取り上げられないんです。それは何故かというと、一つはJFEがこの千葉市にとって非常に大きな企業で、納税も高いってことで、保守系の方々が何もおっしゃらないというのがあります。民主党系の議員の方は言ってくださるかなと思って、国会議員に話しても、JFEは支援団体だそうで「石炭は悪いよ、けど、支援者だから言えない」ってはっきりおっしゃるんです。だから、私が代わりに言わないと。知らない人のためにも、知っていて言えない人のためにも、やっぱり誰かが言わないといけないと思うんですよ。つくってしまったらね、やっぱり30年とか40年とか壊せないわけでしょ?だから作らせまいと。そのために踏ん張らないといけないと思います。渡辺敬志さんもおっしゃっていたけれど、ここはJFEの企業城下町でもあるので、なかなか住民も声を上げない。あと、自治会長さんがJFEのOBだったりしてちょっと言えないとか、それから、お祭りとか運動会とかにいっぱい寄付をいただいていたりとか。そうすると、なかなか反対の声を上げられない。個人同士で話すと、やっぱりおかしいよねとか、車が汚れて困っているとか、石炭火力発電所なんてありえないというようになるんだけれど、じゃあ組織として何か言ってくれるかというとなかなか。政治家も、今は本当に残念ながらあてにならない。力になってもらえていないです。”

 

住民の結束の難しさにも関わらず、諦めずに続ける強さはどこから来るのでしょうか。

 “それでも私がやろうとするのは、相手がJFEとかではなくて、よそ者だったときは、私たちが望まない事業を止めることができた経験があるからなんです。3.11の後、指定廃棄物の埋立所が蘇我の東京電力の敷地内に計画されたんです。まあ、計画というか、国が決めたものでした。環境省が決めたルールで、放射能の濃度が高いものを全体から集めて一箇所に埋めるということになったんです。そこで、おそらく、東電が敷地を持っているからここを提供しますって売ったのだと思うんですけれど、当時、その千葉県議会の知事も、千葉市の市長も、これにはノーコメントだったんですよ。議会も、全然コメントがなかったんです。でも、千葉市が持っている指定廃棄物は本当に少しだったんですよ。なので、私たちは、もう一度考え直して欲しいということを、国に対して随分言ったんですね。当時は議会も市長も知らん顔だったけれど、私たちが一生懸命、地域の人にアピールしたんです。それこそ自治会長さんとか。そうすると、今回の石炭火力とは違って、相手が環境省っていう、要するに、よそ者だったから、住民も「それはおかしい、反対だ」ってなってきたんです。さすがに住民とか自治会が文句を言いはじめると、議員も動き出してきて。自分の有権者が色々言い出してくると、さすがにそれはちょっと耳が痛いと。それで、議会も、市長も、指定廃棄物は千葉市は受け入れません、と宣言したんです。

そんなふうにね、法律でどうしようもないことでも、住民が声をあげることが風を起こすというか、やっぱり為政者はどっちに風が吹いているかなといつも見極めていて、こっちかなこっちかなと、こっちに風がきたとなったら、うん、前からそう思っていたんだよと、いうわけですよね。やっぱり住民の声っていうのは力を持っているわけだから、この石炭火力もね、やっぱり住民がおかしいと声を大きく上げていくことで、この地域から票をもらっている議員たちに動いてもらうと。そういうふうに、下からの活動でも続けてやっていくことで、少しでも止める力になれないかなあと私は思っています。”

 

利益を得るために、住民が黙っていれば質の悪い石炭でも良いだろうという事業者。そして、企業と行政の癒着により十分に市民の声が届かない議会。

そんな状況でも、この問題を多くの人に伝えて声をあげる仲間を増やし、企業や行政を変える風を起こすことは可能だと、小西さんの言葉から強く感じました(注1)。

 

日々のくらしに追われて、私たちは自分たちの生活を構成しているものがいったいどこからきているのか、また、どのような影響を及ぼすのか、考えることは滅多にないように思います。けれど、日々使っている電気が、誰かの幸せを奪っているかもしれない社会を、私たちは望んでいるのでしょうか?また、“経済”のために、人々の生活や自然が犠牲なってもいいのでしょうか?

エネルギーは、決して利潤創出の手段になってはいけないものです。私たちが目指すべきエネルギーのかたちとは、発電所周辺地域の住民のために生産され、発電所周辺地域の住民の権利が保障されるものであるべきです(注2)。

 

ぜひ、考えてみてください。

日々のくらしの裏側で、誰かの苦しみを伴うようなことはあっていいのか。

また、みんなが安心して日々のくらしを営むための電気のあり方とはどのようなものなのか。

そして少し勇気を出して、あなたの考えを周りの人と話してみてください。

たとえ一人一人の声は小さくても、多く集まれば社会を変える風になります。

 

(高橋英恵)

(注1)2018年12月27日(木)、中国電力JFEスチール、および左記2社によって設立された特別目的会社である千葉パワーは、蘇我における石炭火力発電所開発に関する検討の中止を共同で発表。

(注2)FoE Japanが目指すエネルギーについては、こちらをご参照ください。

 

<関連記事>

・住民へのインタビュー動画:蘇我編「日々のくらしの裏側で〜千葉県千葉市 蘇我〜

・住民へのインタビュー動画:袖ヶ浦編「日々のくらしの裏側で〜千葉県袖ヶ浦市〜

・住民へのインタビュー動画:横須賀編「日々のくらしの裏側で〜神奈川県横須賀市久里浜〜」

・インタビュー記事:【日々のくらしの裏側で – vol.1】横須賀石炭火力発電所建設計画への地元高校生への目線

・インタビュー記事:【日々のくらしの裏側で – vol.2】過去の経験から未来へ。あの公害を繰り返したくない。

・インタビュー記事:【日々のくらしの裏側で – vol.3】きれいな空気は誰のもの?命を脅かす石炭火力発電所の恐さ

・インタビュー記事:【日々のくらしの裏側で – vol.4】気候変動という危機を放置していいのか?袖ケ浦石炭火力発電所建設計画に立ち向かう人々

・インタビュー記事:【日々のくらしの裏側で – vol.5】企業の懐柔策に埋もれる蘇我住民の声

・インタビュー記事:【日々のくらしの裏側で – vol.6】残すべき未来のために、一筆一筆の力を信じて。

・インタビュー記事:【日々のくらしの裏側で – vol.7】一人のサッカーファンの願い

 

【日々のくらしの裏側で – vol.7】一人のサッカーファンの願い

11月から蘇我石炭火力を考えるの会(以下、蘇我の会)の新メンバーとなった品田知美さん(以下、品田さん)。

品田さんのご家族は、大のサッカーファミリーだそうで、蘇我の石炭火力発電所建設予定地真横に立地するサッカースタジアムもよく訪れるそうです。そんな中、同サッカースタジアムのすぐ隣に石炭火力発電所ができると知り、いてもたってもいられなくなったとのこと。

サッカースタジアムの真横に石炭火力発電所が建てられようとする状況について、千葉に住む一人のサッカーファンとしてどのように感じるのか、お話しを伺いました。

 

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(品田さん。JFEアクションにて)

“この蘇我の石炭火力発電所の建設計画は、時々寄付をしている環境団体さんの投稿で知りました。

私の住んでいるところは海沿いの空気のきれいなところなのですが、蘇我はいつも通るたびに空気汚れているなと思ったり、サッカー観戦に来た時には、サッカー選手はこんなところで練習したり試合したりしていて大丈夫かなあと心配していたんですね。そんなときに、今回の新しく石炭火力発電所ができるということを知って。これは絶対に反対しないと、と思ったんです。

色々調べていく中で、PM2.5の飛散するシミュレーションを見つけて、それをみたんです。そしたら、私の住んでいるところまでPM2.5がちゃんと飛んできてしまうんですね。自然が好きで、空気のきれいなところに住んでいるのに、ここまで空気が汚れてしまうのかって、思いました。そういう風に思う方は、蘇我の方だけでなくて、私みたいにたまたま知った人でもたくさんいると思うんですよ。もう少し遠くの人も巻き込んで、ぜひ積極的にやりたい。だって、遠くに住んでいても被害を受けるということは、この石炭火力発電所の関係者なんです。だから、私もその一人だと思って、もうこれは反対しようと思ってきました。”

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(蘇我、袖ヶ浦、横須賀で建設が予定されている石炭火力発電所が稼働した場合のPM2.5の飛散シミュレーション)

 

サッカーが大好きという品田さん。この計画を知った時の気持ちを教えてくださいました。

“私の家族はサッカーファミリーで、本当にサッカーが好きなんです。

先日ちょうど建設計画のお話をきく機会があって、具体的な予定地を聞いたら本当に真横で。かえってショックで、眠れなくなるくらいショックで。地図を見たらそこなの?みたいな。本当に横だったのでがっくりきちゃって。

蘇我の発電所の建設予定地のすぐ横に、すごく大きなスタジアムがあるんですけど、その横にもいっぱい小さなスタジアムがあって、そこではいつもお子さんたちが、千葉中のお子さんたちが集まって、サッカーやっているところなんですね。そこにね、また空気を汚してしまうようなものをつくるというのは、本当に健康の被害を増やすだけだと思うんです。サッカーが好きな人は、このあたりには本当に多いと思うんです。だからこそ、この計画を知っている人を増やしていかないとまずいなって思っています。”

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(建設予定地周辺図)

 

この計画を知っている人を増やしていきたいと、繰り返し語る品田さん。品田さんの考える今後の告知戦略をお聞きしたら、サッカー家族ならではのアイデアが。

“今、サッカーやっているお子さんは本当に多いので、小学生のサッカークラブに一斉メールとか、一斉チラシとか送ることが効果的なんじゃないかと思っています。若いお母さんたちだって子どもの健康にはすごく気を使うと思うんですね。

私は仕事上、環境問題が研究対象なので、石炭火力発電は温室効果ガスを排出して気候変動の問題を悪化させることや、石炭火力発電をつくっているのは先進国で日本くらいしかないのも知っているけれど、これは、健康も本当に大事な問題なんです。私自身、少し喘息気味というのもあるので、自分の健康も不安だけれど、実際、娘や息子の友達がこのスタジアムでプレーしているんです。選手だけじゃないんです。だから私が反対しないと。選手たちってなかなかそういう活動ってしにくいと思うんですよね。だからやっぱり、できる立場にいる自由な人間がやった方がいいのかなって。私はそういうことを言っても別に仕事上困ったりはしないので、私が代わりに言わないと、彼らの健康を守れないから。”

 

筆者が蘇我の石炭火力発電所の建設予定地の視察・インタビューに訪問したのは、ちょうど小学校の下校の時間でした。道々では多くの小学生が友人らと共に自宅へと向かい、また、これからサッカーの練習に向かうであろうお子さんの姿も多く見かけました。

自分の子ども、友人がサッカーをする場所の空気が汚れてしまったら?また、自分の応援するサッカー選手が空気の汚れのせいで病気になってしまったら?

サッカーに限りません。野球であっても、テニスであっても、サイクリングであっても、自分の好きなスポーツをする場所の環境・空気が汚れてしまったら?

一度、自分の身近なものに置き換えて、考えてみませんか?

(高橋英恵)

 

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【日々のくらしの裏側で – vol.6】残すべき未来のために、一筆一筆の力を信じて。

千葉エコメッセ、早朝のJFE本社前アクション等、東京湾の会の活動にはほぼ休むことなく参加している山崎邦子さん(以下、山崎さん)。子どもの権利に興味があり、普段は子どもの権利に関わるお仕事に携われているそうです。蘇我の石炭火力発電所の建設計画を知ったのは、日頃から一緒に活動している仲間から教えてもらったとのこと。この計画を向き合うに至った背景をお聞きしました。

 

20181226_4.JPG(山崎さん)

 

“今回の石炭火力発電所が計画されていることは、日頃からいろいろと中央区で一緒に活動をしている仲間と話している中で知りました。実はその前に、3.11以後の特定廃棄物の処分場が蘇我の東京電力の敷地にできるという問題が持ち上がりまして。そのことが環境問題に関心を持つきっかけになりました。きっかけは産業廃棄物の問題だったんですけれど、環境問題について勉強していくうちに、世界ではみんな石炭は扱わないという流れになっていく中で日本が石炭を推し進めているということも、その時に知ったんです。しかも、その理由が、儲かるからこの事業を展開していくというもので。3.11以降、多くの人が自然とか環境を考えたり一生懸命電気を節約したりしているおかげで、原発を止めているけれど電気が足りないということは起こっていない状況なのに、このような企業の考え方がとても信じられない気持ちでいっぱいでした。企業はこういう皆の、主婦といいますか、一般市民の努力を知らないのかなと。”

 

企業の論理と生活者の論理。この事業を推し進める企業の言い分の一つとしては、石炭火力発電所を作ることで地域に雇用が生まれ、地域経済が潤うという主張です。このような意見に対して、山崎さんはどのように感じるのか、伺ってみたところ、次のような返答が。

“企業としては地域で雇用が生まれて、そこでの業績を税金として市とかに納めるという言い分をされると思うんですけど、今回のことに関してはそのあたりのことを聞いてみても、はっきりとした答えが出てこない。雇用も実はそんなに増えないんじゃないかなと私は感じています。例えば、フクダ電子アリーナができたときも、その周辺はお店が増えて経済が潤うという話もあったみたいですけれど、そうはなっていないように感じます。アリーナの説明会の時も、地元でどのくらい雇用があって、どのくらい地元に貢献できるのかというのを聞いた方がいらっしゃったのですが、それに対するはっきりとした答えが何もなかったんです。確かに建設のときは沢山の人が雇用されたと思いますけれど、完成したらあとは自動化といいますか、そこで働く人というのはそんなにはいなかったみたいで。この石炭火力の計画も、フクダ電子アリーナのときのように、建設の時はたくさんの方が関わるかもしれないけれど、完成したらまちが潤うというようなことはないと思います。”

 

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(中国電力の前にて。)

 

そもそも、山崎さんはどうしてこの計画を止めないといけないと考えているのでしょうか?

やっぱりきれいな環境を子どもやこれからの将来残していきたいというのはとても強く思っています。それにいろんな借金、まあ行政の借金ですけれども、これを本当に残したくない。国の借金、県の借金、市の借金は今でさえたくさんあって、まずはこの借金を減らさなきゃと思うけれど、逆に行政は市債とかを出して債権をどんどん増やしているんです。でもこれって、将来への負担をどんどん増やしているということで、こればかりもう、行政の方々と主婦の家計簿感覚は違うんですよね。そういうのが行政的な考え方というのか、きっと会社的なものなのかわからないですけど、ちょっと主婦的な、家計簿的な考えていうと、借金をどんどん子どもに残すというのは、受け入れかねる部分があるんです。環境に関しても、同じだと思います。なにか綺麗にできる、ちゃんと手立てがあった上での何かであったらいいんですけど、原発もそうですよね、結局最後に、廃棄物をちゃんとキレイにするとか、どういう風に保管するとか何も対策できていないままに進めている。今回の石炭火力にしても、これをすると絶対に身体によくないものが出るというのがわかっているのに進めようとするということに関しては、やっぱりもう絶対止めて、じゃないと、将来がどうなるだろうというのがあります。

 

将来の世代に残したいものは失われていく方向にある一方、将来世代に残したくないものばかりが増えていく。この状況を、まずは多くの人に知ってほしいと切々とお話しする山崎さん。この問題を知った私達が力になるには、どうすればよいのでしょうか?

この問題の難しいところでもあるんですけれど、CO2も窒素酸化物とか、目に見えなくてついつい見過ごしがちになってしまうものが温暖化という世界規模の問題につながっているということを、まずは皆さんに知ってもらいたいです。そして、電気はまず足りているということもありますけれども、石炭火力発電所は要らないよということをしっかりとわかってほしいし、一人でも多くの人がその運動に関わってもらえたらなと思います。

この計画の中止というか、見直しをしてもらうためには、市議会とかで意見がどんどん出てくるようになることが望ましいと思います。今の状態では、私たちがそこに直接言うのはなかなか難しいと思いますけれど、やっぱり市民が、たくさんの市民が、例えば署名をするとか、チラシを一緒に配布してくれるとか、市長への手紙とか、意見をどんどん言ってくれるということがあると、何か本当にその一つ一つ、一筆一筆がとても力になる、動かせるって思っています。”

 

20181226_3.JPG(JFE本社前アクションにて)

 

山崎さんとお話しすると、いつも温かさを感じます。そして今回お話を伺う中で、山崎さんの言葉の中に、市民の力を信じる強さを感じました。

 

私たちがほしい未来はどのような未来なのか。また一方で、私たちの望まない未来とは。

私たちが望む未来とは、企業の利益のために命が犠牲となる社会ではなく、そこに生活する人々の命と、これから生まれてくる命が第一に優先される社会なのではないでしょうか。

石炭火力発電所は近隣住民の健康被害につながるほか、温室効果ガスの排出による気候変動の影響を悪化させます。近年では日本でも豪雨の被害が頻繁に起きていますが、気候変動の影響は日本から離れた島嶼国での海面上昇、干ばつからくる農作被害そして農民の自殺、またヒマラヤ山脈付近の国々では氷解による被害等、深刻な被害をもたらし、人々の命が奪われています。

企業の利益ではなく人々の命が中心となる社会。そこには、石炭火力発電所はないはずです。

(高橋英恵)

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