【第5回スクール・オブ・サステナビリティ2報告】わたしが住みたい理想の街のあり方

こんにちは!FoEインターンの佐藤です!

スクール企画最終回の第5回は、環境分野の通訳・ライターとしてご活躍されている熊崎実佳さんと、パッシブハウスジャパン代表理事の森みわさんをゲストにお迎えしました。

車が走らない地域づくり

まずは、ドイツの環境先進都市「フライブルク」における車のない社会作りについて、熊崎さんからお話を聞きました。

みなさんは、そもそも「車」の必要性について考えたことはありますか?

車は移動も簡単、そしてラクに荷物も運べることがメリットですが、デメリットには何が挙げられるでしょう。

私自身、デメリットというと「車=二酸化炭素排出!」の印象が強いのですが、それだけでなく実は車はものすごく場所を占拠する乗り物。車が道路を塞ぐだけではなく、車を止めるための駐車場自体も実は大きな面積を占めています。

その大きな面積を自転車用道路や、トラム(路面電車)の通路に当てたら一体街はどう変わるのでしょうか?

これを実現したのがドイツのフライブルクです。

フライブルクでは、「車から脱却した社会」を目指して、代わりに公共交通・自転車・徒歩を中心とした生活が営めるように地域がデザインされています。

フライブルクの交通政策としては、路面電車と自転車優先道路が張り巡らされており、そういった乗り物では移動がカバーできない地域には加えてバスも走っています。また、レンタル自転車の利用も盛んで、公共機関には乗り放題の定期券も作られているのです。このように、車に頼らない交通網が普及しているため、車なしでの日常生活も豊かで充実したものとなります。

そして、車なしで移動するのが理想ですが、そうはいかない人には「カーシェアリング」もよく利用されています。一家に車一台という広まった価値観から離れ、「そもそも車は本当に必要なのか」「車のない地域は具体的にどんな姿をしているのか」というような疑問に向き合い、解決策を生み出していったのがフライブルクです。

フライブルクのなかでも特に自動車を減らす取り組みに尽力したのが「ヴォーバン地区」です。

ここは、まず地区全体を袋小路にして通過交通(目的があって寄ったのではなく、たまたま通りかかった車の量)を無くすことで、交通量の削減が図られています。

そして、駐車場を自宅に併設する代わりに、共同の立体駐車場に移します。そうすることで自動車に乗るまでの移動が増えて必要なときに素早く乗れるという自動車の魅力が失われることで、それならトラムを利用し目的地の都市まで向かう方が効率が良いと考える人が増えました。

車の量を減らすことは、道路が誰もが使える空間に変わるということ。その分、路上に子どもが遊べるスペースが確保でき、これまでにない場所の使い方も生まれてくるでしょう。

また、徒歩や自転車の利用は車よりも、ご近所さんと顔を合わせる機会も増えるために、人同士の繋がりも生まれるそうです。

何より、車社会であったフライブルクで、「自動車のないまちづくり」を可能にしたのは一体誰なのでしょうか。

熊崎さんは、この答えは「市民」だとおっしゃいます。自動車産業というのはとてもロビイング力は強いため、産業政策にも大きな影響を与えてしまいます。

そのため、理想の街づくりを行うには政治家に任せておくままではいけません。トップダウンによる変化が期待できないとき、動き出したのがフライブルクの市民だったのです。

「車の量を減らしたい。自分たちの街を変えたい」この意志がどの地域よりも強く、そして実際に行動に移していく行動力があったからこそ、車依存社会を脱するという大きな変化がもたらされました。

このお話を聞き、権力を持っている大企業などに対してでも、市民が結束して行動を起こすことで求めていた結果が出たという、この事例にわたしも大変励まされました。

「Eco(環境)」も「Ego(経済性)」も両立できる家づくり

続いて、パッシブハウスジャパンの森さんからエコフレンドリーな建築「パッシブハウス」についてご説明いただきました。

私たちが住む日本では、この50年間で一人当たりのエネルギー消費量は3.6倍まで上がり、エネルギーを大量に消費する生活が営まれています。

エネルギーを温水のように使う私たちの暮らしのなかで、最もエネルギーが消費されているのが「給湯」そしてその次が「暖房」です。この暖房部分にメスをいれ、熱を逃がさない仕組みを作ったのがパッシブハウスです。

パッシブハウスは、「健康×省エネ×経済性」を両立させた新しい建築の形で、いまある普通の家よりも90%ほど熱を逃さないと言われています。

森さんは、「Eco×Ego= パッシブハウス」とも言えるとおっしゃいます。つまり、環境のために我慢をしたり何かを犠牲にすることなく気持ちよく過ごせる家が「パッシブハウス」なのです。

パッシブハウスの特徴としては以下のものが挙げられます。

①しっかりした断熱
②空気の漏れを無くすこと
③熱橋(熱が簡単に通り抜けるところ)をなくすこと
④良い性能の窓(三層ガラスなど)
⑤熱交換換気(熱を逃がさないで新鮮な空気を取り込む)
→これらを上手く組み合わせることで暖房のいらない家づくりが可能に

こんなに優れたパッシブハウスでも、たとえオール電化仕様で、巨大な蓄電池を積んだとしても冬のエネルギー自活にはなかなか難しいものがありました。

この課題の解決策の一つとして挙げられるのが”P2G(Power to Gas)です。

余剰の太陽光をストレージとして貯蔵することで、インフラにバイオメタンを戻すことができます。

スイスの独立した集合住宅やドイツの賃貸住宅でもこの仕組みの利用がすでに実現し、再エネをどうマネジメントしていくかが問われるこれからの時代に、非常に有望視されている住宅の仕組みとなっています。

細かい仕組みまで完全に理解することは難しいかもしれませんが「健康も守り、地球も守る」。そんな新しい住宅の選択肢に魅力を感じる人は多いのではないでしょうか。

人と違うことに自信をもつ

最後にお2人から、参加者へ向けて一言ずつ頂きました。

この日本社会では、人と違うことはとても目立つし、ネガティブな言葉をかけてくる人も少なくはありません。

しかし、森さんは「自分の考えを持ち、人との違いが生まれることは、自分自身が確立したことを示している」と仰っていました。そして、出る杭は打たれる状況のなかでも、自分を信じ守れるのは自分だけだと。
それと同時に、「できった杭は打たれない」という言葉もくださいました。もう周りが口を出せないほど突き抜けてしまえば、周りからの視線も変わります。自分の感性を信じてブレずに突き進むことの大切さに気付き、その勇気をもらいました。

そして熊崎さんからは、仲間を見つけることの大切さをお話しいただきました。他人を巻き込むことは、自分自身の強さになるだけでなくその周りに影響を与えることにもなります。自分の殻にこもって抱えすぎないで、同じ方向をもつ仲間とともに辛抱強く向き合い続けることの重要性を改めて認識しました。

今回の第5回が最終回となりましたが、最後まで参加してくださり、ありがとうございました!

毎回新しい知識を得ていくのが、私もとっても楽しかったです!

みなさんとまたどこかでお会いできるのを楽しみにしております!

(インターン 佐藤悠香)

▼第4回のプログラム
・車のない社会を目指して〜ドイツ・フライブルク市の取り組み〜(熊崎実佳さん、環境分野の通訳・ライター)
・誰も置き去りにしないエコハウスを!(森みわさん、一般社団法人パッシブハウス・ジャパン代表理事)
※ゲストスピーカーの講演のみ公開しています。


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https://www.foejapan.org/climate/event/school2021.html

世界遺産の隣では…米軍北部訓練場が「やんばるの森」に与える影響

9月21日、世界自然遺産に登録された沖縄島北部(やんばるの森)に関して、環境省・防衛省と意見交換会を行いました。オンラインで、沖縄から蝶類研究者の宮城秋乃さん、Okinawa Environmental Justice Projectの吉村秀樹さんなどを含め、80名以上の市民が参加しました。

やんばるの森は、奄美大島、徳之島、西表島などとともに、7月26日に世界自然遺産に登録されました。かけがえのない生態系や生物多様性の普遍的な価値が、国際的にも認められたのです。しかし、隣接する米軍北部訓練場がこの地域の自然や人々の脅威となっています。

意見交換会では、北部訓練場における米軍機による訓練による騒音や低周波音などの影響、また、世界遺産登録地に含まれている北部訓練場の返還地に大量に残された米軍廃棄物などについて議論となりました。>事前質問書

訓練場近隣で深刻化する米軍機騒音

北部訓練場の米軍機による訓練が、騒音や低周波音により、世界自然遺産の野生生物や周辺住民の脅威になっていることを指摘し、防衛省、環境省の認識について問いました。
防衛省は、2012年の米軍が実施した環境レビューをもとに、「影響は小さい」という認識を示しました。しかし、この環境レビューはあくまで予測値を用いた簡略なものであり、日本政府として、騒音や低周波などに関して実データをもとにした登録地の生態系に与える評価を行ったわけではありません。

琉球新報の報道(2021年5月11日付「世界自然遺産推薦地のすぐ近く…東村高江周辺では米軍機の騒音が約3・5倍に」)では、周辺集落では頻繁に80デシベル以上の騒音が観測されており、その頻度は、2014年度は80デシベル以上の騒音測定回数は105回だったのが、20年度は368回に増加したことが報じられています。

防衛省は、北部訓練場周辺の集落3か所において常時騒音測定を行っているのですが、いずれもLden値(時間帯補正等価騒音レベル)では、環境基準を超えていないとしました。

一方で、環境省は、「訓練が野生生物に及ぼす影響については、必要に応じて、日米合同委員会のもとにある環境分科委員会で共有していく」としました。

市民側は、騒音レベルは平均値ではなく最大値を重視するべきこと、訓練が世界遺産登録地の野生生物に与える影響を評価するべきこと、また、米軍に対して世界遺産登録地および集落上空での低空飛行や旋回をしないように日本政府として要請してほしいとうったえました。

米軍が自然遺産登録地で訓練? 境界越えを防ぐために

北部訓練場と自然遺産登録地は、地図上では長く曲がりくねった境界線を共有しています。

防衛省・環境省は、米軍が陸伝いに境界線を越えて自然遺産登録地に入ったり、自然遺産登録地を訪れた人が北部訓練場に入ったりすることを防止するような措置はとっていないし、今後とる予定もない、としました。

市民側は、安全上の観点からも、世界遺産登録地への影響を回避するためからも、境界線を越えが起こらないよう、境界線を明示するなどあらゆる対策をとることを要請しました。

Hideki Yoshikawa, Dr. Masami Kawamura, “NGO Evaluation and Recommendations regarding The Nomination of NPOI for World Natural Heritage“(October 05, 2019)

世界遺産に残された米軍廃棄物~「いであ」への委託は十分だったのか?

米軍廃棄物の問題を訴え続けてきた東村に住む蝶類研究者の宮城秋乃さんは、世界遺産登録地に含まれる北部訓練場返還地で、実弾1発を含む不発弾、放射性物質を含む電子部品、その他多くの廃棄物を発見たことを指摘。宮城さんは県警に連絡しましたが、対応はされなかったそうです。

意見交換会にて、防衛省は返還地の廃棄物や土壌汚染について、「いであ株式会社」に委託して調査および廃棄物や汚染除去を行ったと説明。その際、対象範囲は、土壌汚染の蓋然性が高いと考えられる、ヘリパットや過去のヘリ墜落地点などに限定して実施したとのことです。「業務終了の際、防衛省も現場に行き、問題がないこと確認を行った」としました。

しかし、実際には、対象地でも、その他の地域でも多くの米軍廃棄物が見つかっているのです。

防衛省は、「引き渡し後に、廃棄物が発見されたときでも、防衛省として地権者や関係機関と連携をとり適切に処理していく」とし、また、米軍廃棄物が発見されたときは、「地権者である沖縄県森林管理所もしくは沖縄防衛局に連絡してほしい」としました。

市民側からは、「いであ株式会社」への委託は範囲が限定的でありすぎ、また調査や廃棄物除去が十分ではなかったことを指摘。あらためて、包括的な米軍廃棄物除去計画の策定と実施を提案しました。

また、宮城さんは、米国海兵隊北部訓練場ゲート前に、発見した米軍廃棄物を少量置くことにより、抗議の意を示しました。ところが、これが「威力業務妨害」にあたるとして、沖縄県警から捜査を受け、書類送検されたのです。

市民側はこれは不当で威圧行為であるとし、「政府は廃棄物を発見し、問題提起を行った宮城さんにむしろ感謝の意を示すべき」としましたが、防衛省は、捜査中の案件なので回答を差し控えるとするにとどまりました。

主催団体は、北部訓練場の返還地の廃棄物除去に関するいであ株式会社との契約の詳細などについて、防衛省・環境省に追加の質問書を提出しました。

また、今回の会合の報告をIUCNなどに提出するなどのアクションをとっていきたいと考えています。

(満田夏花)

<アーカイブ映像>


0:00:00- Part I: オンライン集会
0:05:55-「やんばるの森の実状ーこれで本当に世界自然遺産?」宮城秋乃さん/蝶類研究者
0:29:15-「世界遺産登録の持つ意味は?」吉川秀樹さん/Okinawa Environmental Justice Project
1:05:08- Part II: 防衛省・環境省との意見交換
1:09:41-北部訓練場での訓練について(低空飛行、騒音など)
1:45:40-北部訓練場と自然遺産登録地の境界について
2:07:30-北部訓練場返還地の米軍廃棄物について

やんばるの森は「多くの固有種が集中して分布する国内最大級の亜熱帯照葉樹林の生態系、雲霧林、渓流植物群落などの河川生態系、石灰岩地特有の動植物、マングローブ生態系といった多様な生態系が複合的に一体となった景観」が評価され、世界遺産に指定された。(写真は環境省資料より)

【第4回スクール・オブ・サステナビリティ2】実際、他国のエネルギー政策は?再エネ先進国の共通点と、日本に足りないもの

こんにちは、インターンの杉本です!

第4回スクールオブサスティナビリティは、デンマーク大使館上席商務官の田中いずみさんと、コスタリカ政府公認ガイドの上田晋一郎さんをお招きしてお話を伺いました。

デンマークとコスタリカにおける政府の役割や政策、国民の自然環境に対する思いを教えていただきました!

SDGs達成度3位のデンマークの裏には政府の野心的環境政策!

田中さんには最初にデンマークについて少し教えていただきました。デンマークは日本の人口の1/20ほどで、面積は九州ほど。そしてなんと、デンマークは幸福度・働く人の幸福度1位なんだそうです!

デンマークはエネルギー政策として、2012年から2050年までに化石燃料に依存しない社会の構築を長期的に目指しています。この目標は、与野党の国会議員の約9割(170/179)から支持を得て、可能になりました。発端は1973年のオイルショックで、石油代替エネルギーとして原子力発電の建設という、日本と同じような議論になったそうです。しかし、1985年に国とし原子力発電をを使わないと決めました。この理由が個人的にとても驚きだったのですが、政府としては原発を導入したかったが、政府のアドバイザーが「国民に説明しなければいけない」と、国民に原発の利点と欠点をわかりやすく説明した冊子を配った結果、原子力発電所の建設計画は無くなりました。(詳細は「北欧のエネルギーデモクラシー」という本で説明されているそうです。)国民と政府の距離の近く、また国民に寄り添う政府だなと感じました。

また、2019年に新しい気候変動政策として、温室効果ガスの排出量を2030年までに1990年比で70%削減を目標としました。これは同年に行われた「グリーン選挙」で、各政党が環境に関しての目標を掲げ、選挙を制した新政府が定めました。以降、化石燃料に依存せずに温暖化ガス排出量を削減しながら経済成長すること(デカップリング)を、1990年からデンマークは証明しています。

そんな日本は電力生産の16.9%(2018)が再生可能エネルギーに対し、デンマークでは79%(2019)を再エネが占めています。ここに再エネである地熱や水力発電がないのは、デンマークには火山やマグマ活動がなく、また山がないので発電できるような川がないからだそうです。このように、地域の特性によって柔軟に対応していくことも大事だなと気づかされました。

また、地域熱供給状況ついても教えていただきました。私はこの地域熱供給を知りませんでした。というのも私のイメージでは、各自給湯器があり熱を作り使う方法しかないと思っていたからです。しかし、地域熱供給は限定された場所で熱を作り、それを施設や住宅に送り熱源として利用する仕組みになっていて、熱の生産効率をあげることができ、また再生可能エネルギーや廃熱を導入しやすいので省エネや環境保全に優れているそうです。この地域熱供給の熱源も再エネが半数以上占めており、一番使われる燃料がバイオマスで、農業大国デンマークでは、収穫した麦からできた麦わらがその大半を占めます。

そして最後には移動手段としての自転車の利用率や、その町づくりを紹介していただきました。自転車専用の道だったり、自転車を列車に乗せれる車両など、みんなが自転車に乗りやすい環境づくりができているなと感じました。

お金はないけど、再生可能エネルギーが主電力の国!?

続いて、23年コスタリカに在住の上田さんにお話を伺いました。「ジャングルの中を一緒に歩いているような気持ちでコスタリカのお話を聞いてほしい」と、コスタリカのジャングルの写真をzoomの背景にしながらお話くださいました。

コスタリカは北海道の6割程度の面積で、人口は500万人ほどの福岡より少し少な中進国です。先ほどのデンマークで幸福度が高かったことと同様、コスタリカの幸福度は日本が56位に対して16位だそうです。

コスタリカは参加者のイメージで多かったように、軍事を持たない国です。1948年に当時大統領だったホセ・フィゲーレス・フェレールはコスタリカの軍事放棄しました。そして、「兵士の数だけ教師を作ろう」というスピーチしました。軍事費がかからないので、浮いたお金を教育と福祉にあて、無料です。

そんなコスタリカで、平和の根源にあるのは「民主主義・人権・環境」なのだそうです。

民主主義についてコスタリカでは、選挙がお祭りで、自分が支持する政党の旗を振ったりと、とてもオープンな場になっている印象を受けました。日本ではなんだか考えにくいですが、、、。また、子供の時から政治について話し合ったり、子供選挙(模擬選挙)などが行われるそうです。

そして、人権が犯されていると憲法裁判所に各個人が訴えれます。憲法違反で訴訟と聞くと、たくさんのプロセスを通して、手間のかかる印象がありますよね。しかし、コスタリカでは、小学生でも大人もただの紙きれやメールに書いてもいいとのこと。直接国民の声が反映されていて、システム整備されていると感じました。

最後に環境について教えていただきました。

コスタリカのの電力は再生可能エネルギー(水力・風力・太陽光・地熱)が主電力だそうです。上田さん曰く、「お金はそんなにないが、地の利を生かしている」そうで、コスタリカの熱帯森林の雨、火山、貿易風による風、痛いほど強い太陽光によって可能になっているようです。原子力発電所や油田を作ったりしない理由として、万が一事故になった場合、人や環境を汚染してしまいうので開発しないという意志の強さも印象的でした。

また、コスタリカは自然環境を観光資源とするエコツーリズム発祥の地です。

ファストフードなどの普及で1980年代に、牧畜のため多くの国土が森林伐採され国土の森が30%ほどになったが、FONAFIFOという、使っていない私有地を国と契約するとお金がもらえる制度を通して今では森林起伏率が50%ほどだそうです。また、セテナと呼ばれる国家環境技術事務局があり、私有地でも森林伐採の際には木だけでなく、どのくらい周囲の生態系に影響するかなどを調査する機関があり、森林伐採すること自体難しいそうです。このことから言えるように、コスタリカ人は自然に生かされているという認識がとても強いと仰られていました。

終わりに、コスタリカの挨拶を教えていただきました。スペイン語が共通言語と聞いたので、「Hola」だと思いましたが違いました。コスタリカでは挨拶もありがとうも「Pura vida(プーラビーダ)」といい、「自然体で人生を楽しもう」という意味だそうです!日本にはなかなか無いのではないでしょうか。使う言葉で国民性が見えてきますね。

参加者の声

  • 国民と政府が互いに協力し合って国全体で環境問題に取り組む姿勢が素晴らしい一方で日本では二者の障壁を感じた。
  • 幸福度にあまりGDPは関係なく、日本も経済発展を目標にしているが、その目標を考え直すべきではないか

お二人からメッセージ

田中さんからは、「日本がデンマークの環境対策をそのままそっくり日本で実現できるわけではないが、デンマークの情報をデータベースにし、どのような対応をしているかを知ることで、これからの日本に繋げてほしい。そして自分ができる頃からやってみて、知識を蓄えてほしい!」とのことでした。上田さんも「できることから初めて、その活動を続けて成長してほしい。そしてこのコスタリカの話が少しでも刺激になったら」とお話ししてくださいました!

日本の良さを生かして環境保全

私はデンマークとコスタリカ、名前は知っているけど、どちらも小さな国というイメージだけ持っていました。この北欧と南米にある二カ国は一見重なる部分がなさそうに見えますが、実は教育や福祉が無料であったり、環境問題に取り組み、幸福度が高く民主主義が根付いている点で共通点だらけだと感じました。どちらも、国民だけでなく政府もが環境への意識が強い印象がを受けました。それとともに、政府が市民に寄り添う環境が整っており、国民が声をあげることで政府をも変えることできるという思いが作られ、より良い社会になっているんだなと感じました。山があったり島国などの日本の地理的条件を上手に使って水力や洋上風力などの再エネ資源も考えていけるのではないか、そして大都市がある一方素晴らしい自然環境を生かした日本が学べることは沢山あるのではないかと思いました。日本が遅れをとっていると感じる一方で、日本の良さを生かして他国の例から取り入れることはあるはずだと感じました。Pura vida!

(インターン 杉本奈帆子)

▼第4回のプログラム
・自然エネルギー100%の鍵をにぎるデンマークの地域熱供給(田中いずみさん、デンマーク大使館上席商務官)
・カーボン・フリーに一番近い国、コスタリカ(上田晋一郎さん、コスタリカ政府公認ガイド)
※ゲストスピーカーの講演のみ公開しています。


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【第3回スクール・オブ・サステナビリティ2報告】「それって正しい気候変動政策?」もう騙されないために知っておきたいこと

こんにちは!FoE Japanインターンの増田千紗です!
今回もスクール・オブ・サステナビリティ2のご報告をします。3回目のテーマは「日本の気候変動政策」です。

ゲストスピーカーとして、気候ネットワーク東京事務所長の桃井貴子さん、東北大学東北アジア研究センターの明日香壽川さんのお二人ににお越しいただきました。

桃井さんからは世界に遅れをとっている「日本の石炭火力政策」について、明日香さんからは「日本が目指すべきエネルギーシステムの在り方」についてお話いただきました。

日本は世界に遅れをとっている!?石炭中毒な日本

まず、桃井さんには「エネルギー基本計画」や「省エネ法」など日本のエネルギー政策がどういったものなのか、石炭火力政策は具体的に何が行われているのか、詳しくご説明頂きました。

桃井さんによると、世界的な気温の上昇を産業革命以前とくらべて1.5℃に抑えるという「1.5℃目標」を達成するためには、2030年(あと9年!)までに先進国が「石炭火力」を全廃することが必須とされています。「石炭火力」の全廃が求められているのは、現在の発電方法の中で、最もたくさんのCO2を排出するためです。すでに、英国は2024年、フランスは2022年と、先進国各国が、2030年までの脱石炭を宣言しています。一方で、日本は未だその宣言さえできていません。

現在、エネルギー基本計画見直しの真っ最中ですが、2030年電源構成に19%もの石炭火力が含められていることからも、日本政府は再エネ化を進めたいのかそうでないのか、はっきりしないように感じます。また、驚いたのはエネルギー基本計画やエネルギー政策の詳細を策定するのが経済産業省の官僚であること。国会で審議できるのは大枠を定める法律だけですし、本来、環境政策をリードするべき環境省には、十分な決定権が与えられていないそうです。

気候変動政策について学ぶ度に、「しっかりした政策を掲げる政治家を選びたい」と思うのですが、政策を実行する官僚の裁量がここまで大きいとなると、選挙だけじゃなく、パブリックコメントなどで行政に声を届けることも必要なんだなと考えるようになりました。

*現在、第六次エネルギー基本計画についてのパブリックコメントの募集期間です。締め切りは10月4日まで!ぜひ皆で意見を届けましょう!「何がどのように問題なのか」をまとめたウェブページを紹介いただきましたのでご参考ください。

https://www.kikonet.org/info/press-release/2021-09-08/public-comments-2021

1.5度目標達成のため、日本に必要なこと

次に、明日香さんから1.5℃目標達成には何が必要なのか、日本と世界の「再エネの計画・政策」や「省エネによる削減率の計画・政策」を中心にお話頂きました。

世界中の国々は2030年のCO2削減目標を「1990年比」で設定していますが、日本だけはなぜか「2013年比」なのだそうです。理由は、「2013年が最もCO²排出量が多い年だったから」。46%の削減を表明し、その目標の低さに大バッシングを受けている菅政権ですが、少しでも数値を大きく見せれば私たち国民は騙せると思われているのがとても残念です。信頼できる情報をもとに自分で判断するために、学び続けなくてはと改めて感じました。

そして、1.5℃目標のためには「再生エネルギー」の推進が最も効果的だとされていますが、日本では以下の3つの懸念点が挙げられています。

①電力供給量不足のため脱原発かつ脱石炭火力は不可能なのではないか。

②再エネ化で電気料金が値上がりするのではないか。

③石炭火力発電に関わる労働者の雇用が心配。

一方で、このような課題をすでに克服している国があることが印象的でした。例えば、ベルギーでは既に脱石炭火力と脱原発を実現しています。また、再エネ構成比が9割になっても電気料金はほぼ変わらないことが、各研究所や米国政府からも報告されています。雇用に関しても、日本では再生エネルギー化による影響を受ける労働者の数は比較的少なく、再エネ関連の雇用創出も見込まれることから、石炭火力発電所を温存する理由にはならないように感じました。

米国・EU・中国などによる、大規模な再エネ政策や、政策実行の加速化が見られるなか、日本の政策は「今のところ実現できそうな目標」をとりあえず言っているだけなのでは?と疑ってしまいます。最後に明日香さんには、日本の再エネ政策が遅れている理由として、「恵まれた環境にいて危機感がない」「再エネ化は無理だと思い込んでいる」「政府と企業の時間稼ぎ」「環境省の未成熟」を挙げていただきました。

また、上記の課題を克服しながら、気候危機を脱する方法が「グリーン・ニューディール」とおっしゃっていました。明日香さんを含む日本の科学者による、日本における「グリーン・ニューディール」の詳細は、下記よりご覧いただけます。

「レポート2030〜グリーン・リカバリーと 2050 年カーボン・ニュートラルを実現する 2030年までのロードマップ〜」

https://green-recovery-japan.org/

参加者の声

お二人の話を聞いて、参加者からは以下のような意見が聞かれました。

・再エネ政策が進む国では市民運動に政策を後押しする力があるけど、日本にはまだないように思う。

・日本の教育では、市民の力やアクションに希望が持てない。

・お金儲けのための環境政策をやめよう。

・エネルギー政策の話は難しいが、国民にまで届いていないし、選挙の争点になっていないことは問題だ。

日々考えたい政治のこと

先日、私の地元、横浜市の市長選挙がありました。「直前にいろいろ調べて選んだらいいや」と軽く考えていたのですが、いざ調べてみると全然時間が足りなかったんです。様々な分野の政策がありますし、知りたいことは山ほどありました。今回のウェビナーでも、改めて政策について考える難しさを感じました。日々少しずつでも、政治に関心を持つことが習慣になればいいなと思います。

※今回のウェビナーでは、かなーり詳しく日本のエネルギー政策についてお話いただきました。(石炭火力を延命させるために、「容量市場」や、数字上 “高効率” に見せることを許容した省エネ法の改正など…)

詳しくはYoutubeでチェックできますので、ぜひご覧ください!

(インターン 増田千紗)

▼第3回のプログラム
・世界からブーイングを受ける日本の石炭火力政策(桃井貴子さん、気候ネットワーク東京事務所長)
・日本が目指すべき分散型エネルギーシステム(明日香壽川さん、東北大学教授)
※ゲストスピーカーの講演のみ公開しています。


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日本にもあった違法伐採!! 波紋拡がる宮崎県の盗伐事件(15)

第六回 えびの市大字西長江浦(その3)

 2021(R3)年8月27日、田村貴昭衆議院議員が本稿で紹介している志水惠子さんの被害地を含む宮崎県えびの市の盗伐被害地を視察しました。現場にはえびの市議、高鍋町議など共産党系議員や報道関係者に加え、えびの市役所から2名、そして志水さんをはじめ宮崎県盗伐被害者の会からも3名参加しました。国会再開後、再び農林水産委員会などで論議され、解決に向けてまた一歩前進することを期待します。

 今回も、前回に引き続き、志水惠子さんの事件を紹介します。
 ※今回も被害当事者の志水惠子さんのご了承を得て、実名で記述しております。

紆余曲折の末、えびの警察署による実況見分
 2020(R2)年10月2日、えびの警察署員4名(男性3名、女性1名)による実況見分が実施されました。所要時間は2時間40分でした。
 まず警察は、志水さんの所有地周辺の杭(林道側の3本(宮崎県、えびの市、日本道路公団)、ニンニク畑側の3本(日本道路公団))を確認しました。次に、ニンニク畑周辺の確認作業に入り、伐り株の採寸、伐根の測量を実施しました。
 その後の志水さんの所有地全体の伐り株探しは難航しました。志水さんが2016(H28)年に立木の一部売却を検討すべく下見に行ったとき、林床はとても歩きやすい状態でした。志水さんは警察に「林内にも盗伐されずに残った5~6の伐り株がある」と伝え、警部(課長)A氏から「志水さんも中に入ってください」と促され、伐り株探しに協力し、枝に埋もれて隠れていた大きな伐り株を3つ探し出しました。その後、警部(課長)A氏とM氏とで、追加で3つずつ見つけ、全員が「まだある」と感じたのか、より積極的な伐り株探しになり、最終的に29の伐り株を特定し、採寸しました。
 その作業中、志水さんは警察から「ヒノキとスギの見分け方を教えてくれ」と質問され、「切り株からではわからない」と回答すると、警察は熱心に樹上を見上げて葉を確認したそうです。その結果、警部(課長)A氏は「この山はほとんどヒノキですね」と感想を述べました。

えびの署、あきれたその後の対応
 ようやく実現した警察による実況見分。順当にいけば、その後は警察による捜査が始まるものと期待されたのですが、事は想定外の方向へ進んでいきました。
 10月の実況見分の後、11月5日、えびの警察署から連絡を受け、署に出向くと警部(課長)A氏より「志水さんの件は時効です」と伝えられたのでした。これに納得いくはずもなく、志水さんを含む宮崎県盗伐被害者の会では11月25日、宮崎県警察本部を訪問し、苦情申出を行いました。県警本部監察課警部I氏、警部補K氏と面会し、「文書での回答」を強く要請しました。
 その後、志水さん以外の川越静子さん、川越員さん(それぞれ本ブログ第二回、第三回で紹介)に対しては、宮崎県公安委員会から文書での回答を得ました。ただし内容は「調査の結果、一連の職務執行は適正であった」というものでした。
 業を煮やした志水さんは、2020(R2)年12月21日、えびの警察へ電話で問い合わせたところ、「えびの署では書面での回答はしていない。県警本部監察課からも何も聞いていない」という返答で、書面での回答を断られ、電話上で口頭での回答となりました。以下に志水さんの苦情申出の内容と、えびの署副署長H氏の回答について記します。

苦情1:2020年2月えびの警察署訪問の事実が否定されていること
えびの署の回答:2020年4月21日の訪問が最初で、その際に対応したのは刑事生活安全課のS氏1名。

 志水さんは2020年2月に2度、訪問をしており、複数の人々がその事実を認めています。2020年2月の初めての訪問の際、えびの署S氏から「貴方の山であることを証明できますか」と問われたため、鹿児島県湧水町木場の土地家屋調査士T氏にも相談、調査依頼をしており、T氏もそれを証言しています。さらに2020年4月21日の訪問時の対応者はS氏のみでなく、警部補M氏が加わり2名での対応だったことも捻じ曲げられてしまっています。

 その後、2021年1月8日、電話での回答では聞き逃しがあったため、再度回答についての確認をするためにえびの署を訪問し、副署長H氏に「今日、私が訪問したことは記録に残して貰えますよね?」と確認すると、「記録には残しませんよ。被害届を受け取っていないでしょ?」という回答だった。

 この発言を受けて志水さんは、「ようやくえびの警察署の『被害届を受け取っていないから、訪署記録にも残さない』という“やり方”を理解した」と言います。「11か月もの間、こんなにも悩まされ、苦しめられ、事実無根の様相を漂わされ、2020年2月の訪署に関する証拠集めを余儀なくされ、体調を崩す日々を強いられたのは何だったのか!高齢被害者に対する極まりないえびの警察署の仕打ちで、怒りが抑えきれない」。

苦情2:S警官の発言「木を切った人に残りの木を売ったらどうか」は不適切
えびの署の回答:『被害者救済として、このような方法もある』とS警官は述懐している。

 被害を受けて落胆している被害者にとっては「心の折れる」驚愕の発言でした。合わせて志水さんは、警察官は被害捜査をすべきであり、民事に介入する必要はなく、不適切な発言だったと考えています。

苦情3:容疑者Iは盗伐後にニンニク畑として使用していたことは不動産侵奪罪。なぜ逮捕されないのか?
えびの署の回答:犯人による証拠隠滅の恐れや逃走する可能性がないため逮捕する要件がない。

 志水さん所有の山林が盗伐された跡地がニンニク畑として使用されたことは疑う余地もありません。それにも関わらず「逮捕する要件がない」との認識は理解に苦しむところです。志水さんによると、えびの市婦人部の集まりにおいても、容疑者Iは「他人の木を盗んだり、山を転売している」という話があって悪名高い人物なのです。加えて志水さんの知り合いの土地調査家屋士T氏や、えびの市内の林業者も同様のことを証言しています。

苦情4:えびの署警部(課長)A氏の供述調書作成にかかる強要行為について
えびの署の回答:Aは強要していない。Aの発言は「前日に供述調書を作る」としたもので、「供述調書は今日でないと駄目」とは言っていない。

 志水さんは「前日に供述調書を作る」という発言は聞いていません。これも事実が捻じ曲げられているものです。志水さんが聞いたA氏の発言は「尋ねたいことがある」、「いろいろな書類を作らなければいけない」の2点のみで、「供述調書を作る」とは一言もありませんでした。
 2020年11月5日当日の様子は以下のとおりです。えびの署で警部(課長)A氏とやりとりをしている中で、志水さんは「供述調書は今日でないと駄目です」という発言をA氏より受けた後、その場で携帯電話のショートメールにて宮崎県盗伐被害者の会会長の海老原氏へ相談をしました。ショートメール送信後、すぐに海老原氏から電話があり、A氏にその携帯電話を手渡し、A氏と海老原氏とが直接やりとりをしました。その会話の中で海老原氏は「今日でないと駄目、というのはおかしいのでは?」と問いかけました。大きな声でのやりとりだったゆえ、傍らにいた志水さんにも漏れ聞こえてくるものでした。
 彼らのやりとりが終わり、携帯電話を手元に戻し、海老原氏との会話に戻ると、海老原氏から席を外すよう指示があったため、駐車場まで行って会話を継続しました。そして「すぐに退署したほうがよい」との助言があり、退署する旨をA氏に伝えるべく部屋に戻ると、A氏は「今日でなくても良いですよ」と、手のひらを返したような対応に変わったそうです。
 A氏の対応が急に変わったことに違和感を覚えながらも、志水さんは帰ろうとすると、A氏から「出来上がった供述調書を読み上げますけど聞きますか?」と問われたそうです。一連の対応、および態度の急変など、とてもA氏を信用できる状態になく、且つ調書の内容についても5~6分程度で出来上がるものを信用できるはずもなく、その申し出は断り、帰宅したのでした。

苦情5:不条理な時効について
えびの署の回答:伐採したS社の日報、領収書、供述などの捜査をした結果、伐採は2017年2月下旬に始まり2017年3月28日に終了している。森林法時効は3年ゆえ、このことにより2020年3月28日に時効が成立している。

 志水さんはこの不条理な時効について到底受け入れられません。盗伐を発見したのが2020年1月29日。2020年2月6日にえびの市役所による現場検証が行われ、同じ2月にえびの警察署を被害の訴えのために訪問しました。盗伐被害地一体の土地(1195-9(畑)、1195-21(原野)、1216-1(畑))を所有権がM氏から容疑者Iに移転したのは2017年3月23日であり、2017年2月下旬~3月23日の期間は容疑者Iが合法的に伐採できる術はなく、えびの署の理屈でも、容疑者Iは他人の山を盗伐したことになります。
 また容疑者Iに所有権が移転した2017年3月23日の同日付で伐採届がえびの市役所に提出されていることも変な話であり、さらにその伐採届には「届出提出後、30日以後に伐採する」よう記載されています。加えて容疑者Iが購入した土地は「畑」と「原野」であったにも関わらず、提出された伐採届には樹種や本数まで記載されているのです。

 これらを考慮すると、隣接する志水さん所有のヒノキ山(ヒノキ200本)を盗伐するためのM氏との土地売買契約、伐採届であったとしか考えられません。

元の土地所有者M氏も何か関与?
 実は、志水さんの林地は、元々は志水さんの父親(故人)がM氏から購入したものでした。それゆえM氏は志水さんの林地の盗伐に関して何か情報を持っているのではないか?と思い、盗伐を発見してから間もなくM氏にコンタクトしたのでした。M氏宅に訪問し、何度も電話をかけ、留守番電話に「盗伐された件に関してお話をお聞きしたい」旨のメッセージを残したものの、何の連絡もありませんでした。
 他方、前回で触れたとおり、えびの警察署はM氏にコンタクトでき、Iに土地を売ったことを確認しています。志水さんとは話ができない何かあるのか?憶測は膨らむばかりです。

 これまで本ブログで紹介してきた盗伐被害の中で、伐採後にニンニク畑として使用していた事例はありませんでした。「盗伐=伐り逃げ」といったイメージがありましたが、本事例から、如何に盗伐犯が堂々と振舞っているかがわかるかと思います。

 志水さんの闘いはまだまだ終わりません。次回、志水さんと宮崎地検とのやりとりを紹介します。(三柴 淳一)

第一回 宮崎市瓜生野ツブロケ谷(その1)
第一回 宮崎市瓜生野ツブロケ谷(その2)
第二回 宮崎市高岡町花見字山口(その1)
第二回 宮崎市高岡町花見字山口(その2)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その1)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その2)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その3)
第四回 宮崎市田野町字荷物取地乙
第五回 国富町大字木脇(その1)
第五回 国富町大字木脇(その2)
第五回 国富町大字木脇(その3)
第五回 国富町大字木脇(その4)
第六回  えびの市大字西長江浦(その1)
第六回  えびの市大字西長江浦(その2)
第六回  えびの市大字西長江浦(その3)

【第2回スクール・オブ・サステナビリティ2報告】「気候正義」と聞いてもピンとこない。そんな私が気づいたこと

こんにちは〜!
FoE Japan インターンの増田千紗です。
今回は、連続オンラインセミナー、「スクール・オブ・サステナビリティ2」の第2回「気候正義とは?」の内容を報告します!

第2回は、Asian People Movement on Debt and Development の Claire Mirandaさんと、Friends of the Earth International の Sara Shawさんにお越しいただきました。Claireさんからは、主に「気候正義」とは何か、Saraさんからは、世界中に広がっている「気候訴訟」の運動について詳しくお話しいただきました。

「Climate Justice」「気候正義」と聞いてもピンとこない、なんて方も少なくないでしょう。私もその1人でした。なぜ「正義」を求める声があがっているの?私たちは何をすればいいの?そんな疑問を抱えながら、今回のウェビナーに参加しました。このブログでは、わたしが学んだことを少しだけでもみなさんとシェアできたらいいなと思います!

利益と成長のため OR 次世代のため あなたはどっち?

はじめにClaireさんからは、気候変動における南北問題に触れながら、気候正義を考える際の要点を教えていただきました。

気候変動は、主にグローバル・ノース(先進国)の政府や企業により引き起こされていますが、その被害を受けやすいのはグローバル・サウス(途上国)の国々、人々だと言われています。このような国家間の公平性みならず、性別間、世代間の公平性を確保しつつ気候変動に対処することが「Cliamte Justice(気候正義)」の考え方です。

もう一つの重要なキーワードが「共通だが差異ある責任(Common But Differenciated Responsibilities, CBDR)」です。この考え方に基づき、先進国は気候変動の緩和策の実行に加え、賠償(資金や技術の提供)を行うことが求められています。

しかし、COP15(2009年)で約束された毎年1000億ドルの先進国から途上国への支援は、未だその半額ほどにしか達していないのです。一方で、化石燃料に対する融資は増え続けており、全く誤った分野に資金が集中してしまっていることが分かります。三菱UFJ銀行やみずほ銀行といった見慣れた名前が、「世界で最も化石燃料に融資をする10社」に並んでいるんです。個人的にメインバンクとしてお世話になっている企業だけれど、これからはどうしようかな、とモヤモヤとしてきました。

そして、1番印象的だったのは「日本は偽りの気候変動対策に加担しないで」というClaireさんの訴えでした。先進国の一員である日本は、豊富な資金や技術を持っているのに、なぜこんなにも気候変動に鈍感なのかと思うのと同時に、やはり政治家を選ぶ選挙って大事だなと再確認しました。次回のスクール・オブ・サステナビリティでは、日本の気候変動政策は実際どうなってるの?というところを考えていきたいと思います。

気候訴訟という闘い方

続いてSaraさんからは、環境汚染を引き起こす企業や政府を訴える「気候訴訟」について、オランダの事例とともに教えていただきました。

ここで登場するのがBig Polluters(大規模汚染者)です。Big Pollutersとは、環境汚染に貢献する大企業のことを指します。実際、過去30年間の温室効果ガスの排出量の半分はたった25の企業が占めていて、また排出量の71%は100の企業の責任です。Big Polluters は莫大な資金を利用し、気候政策を妨害してきました。特に、5大石油ガス会社(シェル、BP、エクソン、シェブロン、もう一個なんだっけ?)は、気候変動の誤解を招くようなロビー活動に何十億ドルもの資金を費やしていたのです。

また、大企業は「大きなウソ」をつきます。
大企業の広告や主張にただ流されるだけの消費者になっていないだろうか、彼らは本当に言っていることを実行しているのか、その方法は本当に正しいのか、など我々が意識すること、暴いていかなければならない事が多いのだなと痛感しました。

そんな大企業と「闘う」方法の一つが気候訴訟です。
2021年5月、オランダにて、石油会社シェルに対する気候訴訟で市民側が歴史的な勝利を収めました。この裁判のポイントは3つです。

①市民に対する「人権侵害」を訴え、それが認められた。

②賠償ではなく、「気候変動対策」と「排出への責任」を企業に求めた。

③FoEオランダに加え、1万7千人のオランダ市民、複数の環境団体が原告となり、世界中からは100万人を超える署名が集まった。

これまで、政府に対する気候訴訟では市民側が勝訴するケースが増えてきました。今後は、このシェル訴訟を前例として、企業に対する気候訴訟の世界的な拡がりが見られそうです。英国、スリランカでは政府を相手にした気候訴訟、オーストラリアでも山火事の被害者と共に化石燃料企業に融資している銀行に対しての訴訟が検討されているようですが、海外の事だから…と聞き流すのではなく、署名で意思表示をしたり、国内で同じような事例がないか考えたり、と私たちにも様々なアクションが起こせそうです。

参加者の声

気候正義という概念を学び、SYSTEM CHANGEの重要性を感じる声があがりました。一方で、いざ自国の社会システムが変えられそうになれば自分も反発してしまうかもしれない、利益や成長の追求は抑えられるのか?という不安や疑問も多くありました。そんな中、参加者からは以下のような意見が聞かれました。

・裁判など第三者の声がないとシステムは変えられない。

・GDPの成長率などで評価される仕組み自体が変わらなければならないのではないか。

・企業のnet zero 計画の問題点を多くの人に分かりやすく示し、市民からの圧力を大きくしたい。

・環境問題にも南北格差があることを知り、先進国に住む者としてより責任を感じた。

・日本は資金や技術がある国でもあることを忘れていたので、企業や政府にも期待したくなった。

今までの発展による恩恵を受けてきたからこそ

資本主義の世の中では、絶対的な力を持っている大企業。自国の発展が企業に支えられてきたことは事実です。私たちは彼らの事業による利益を消費してきたかもしれません。でも、その責任のある市民だからこそ、今声をあげることが必要なのではないでしょうか。

また、目先の利益ではなく、本質的な豊かさを求めることもひとつのアクションなのかなと思います。気候正義に則った政策決定を求めるだけでなく、自分の消費行動など身の回りから見直していきたいと思います。

最後に、Claire さんとSaraさんのお二方がスライドに使っていたメッセージです。

“Which side are you on?(あなたはどっち?)”

“Stand with people, not polluters!(汚染者ではなく人々の味方に!)”

(インターン 増田千紗)

▼第2回のプログラム
・途上国の人々が先進国に伝えたい” Climate Justice”とは?(Claire Miranda, Asian People Movement on Debt and Development)

・気候変動への企業の責任〜世界中で広がる気候訴訟〜(Sara Shaw, Friends of the Earth International)


※ゲストスピーカーの講演のみ公開しています。

【第1回スクール・ オブ・サステナビリティ2報告】1番被害を受けている人々の声が、1番耳を傾けてもらえない

こんにちは!FoE インターンの佐藤悠香です!

今日は、今月から始まったスクール・オブ・サステイナビリティ2の第1回の報告ブログとなります!

第1回では、大阪大学大学院の川尻京子さんとClimate Frontlines CollectiveのStella Miria-Robinsonさんをゲストにお迎えして、川尻さんには海面上昇に直面する国の一つ「ツバル」について、Stellaさんには気候変動に大きく左右されている「パプアニューギニア」についてお話しいただきました。

気候変や地球温暖化と聞くと、海面上昇をイメージする方は多いかと思いますが、現地の方の声を直接聞いたことがない人がほとんどではないでしょうか。わたしもFridays For Futureのオーガナイザーとして活動していながら、実際に南太平洋諸島出身の方から直接話を聞いたことはなかったので今回のウェビナーを大変楽しみにしていました。

気候変動の被害はもう後戻りできないところまで拡大

最初に川尻さんからは、海抜2メートルの国「ツバル」が直面する気候変動の影響を多くの写真と動画と共にお伝えいただきました。ツバルは世界で3番目に人口が少なく、世界で4番目に面積が小さい国です。そんなツバルは、もともと月の満ち欠けによる潮位の変化を受けやすく、満潮時には晴れの日でも家のブロック(壁)に海水とゴミが押し寄せることがあるそうですが、これに加えて気候変動の悪化によりその被害は拡大しています。

個人的に川尻さんのお話のなかで特に印象に残ったのは、今はもう気候変動の緩和策(温室効果ガスの排出量を削減する対策)ではなく、適応策(気候変動に”適応”していくための対策)にも目を向け動き出さなければいけない段階にあるということです。もう戻れないところまで被害が拡大してしまった太平洋諸島は、これからますます増えていく損失と被害に対して「気候変動を受け入れ、どう適応していくか」を考えていかなければいけません。

日本で暮らしていると、気候変動の影響がより強く実感するようになるのは5年後、10年後だという印象がありますが、実際に今現在、拡大する被害を目の当たりにしながら生活のあり方を変えることを強要されている人がいるのです。特に、サイクロンと潮位が上昇するシーズンが重なるときの被害はより一層悲惨で、多くの家屋が流され、国民の約半分が被災することもありました。

また、他に印象的だったのは、ツバルの人々は人間が居住していない無人島も島民に所有権があると考えるため、サイクロンによって無人島を失うことは自分たちの財産を失うことを意味しているということです。

単に誰も住んでいない島が消えたという問題ではなく、彼らが祖先の代から大切に守り所有してきた彼らの持ち物が永久に消滅してしまったのです。この感覚は、日本で生まれ育った私には完全に理解することはできませんが、彼らの喪失感が計り知れないものだということは想像がつきます。

最近発表された第6次IPCC報告書では、「人間活動の温暖化への影響は疑う余地がない」ことが断言されました。私たちは南太平洋の方々が受ける被害を最小限に留めるため、温室効果ガスの排出量を大幅に削減しパリ協定で定められた1.5度目標を達成する必要があります。

彼らのような気候変動の影響を肌で感じていない、先進国「日本」で暮らす一人の人間として私たちには一体何ができるのでしょうか。気候変動悪化の原因の一部になっているからこそ、私たちの立場や特権を利用して自分たちの声を聞いてもらえない彼らに代わってできることを早急に行動へ移していく必要性を強く感じました。

結局自分も先進国目線が抜けていない…

続いてStellaさんからは、太平洋諸国の人々にとって祖国を離れ移民になることが何を意味するのかについて語っていただきました。

私たちが、適応策について語るとき議題に多く上がるのは「彼らをより安全な場所へ移動させること」です。しかし、「たとえ気候変動がより悪化したとしても住む場所さえ変えれば問題ない」という先進国にとって都合のいい考えを押し付けているだけかもしれません。故郷を捨てて移民になるということは、その場所で暮らした生活自体を、そして長い年月をかけて作り上げてきたコミュニティ全体を失うということです。さらに、これまで過ごしてきた土地で生まれた文化・言語・知恵は、そこに住む人々のアイデンティティの一部です。母国を失うということは、自分自身の一部を失うことと同じではないでしょうか。

Stellaさんの話しを聞いてより一層実感したのは、「一番被害を受けている彼らの声が、一番耳を傾けてもらえない」ということです。自然から乖離した生活を送る西欧諸国の人々は、彼らを助けたいと言いながら結局は経済成長を前提とした解決策を提示します。弱い立場にいるマイノリティの彼らの声はいつだって聞いてもらえないし、反映もされません。

この話を聞き私はハッとしました。太平洋諸国の海面上昇やゴミ問題、気候難民とも呼ばれる移民が増えている問題については知っていたし、こういった不正義に違和感を感じて活動もしてきたけれど、結局自分も先進国目線が抜けていないのではないか、と感じたのです。彼らの意志にそぐわない解決策の提示に対して何ら疑問を持っていなかったかもしれません。

全く違う環境で生まれ育ち、生活をする私たちには彼らの本当の心情も葛藤も理解できないでしょう。だからこそ、映像や文章や彼らが発する言葉を通じて、ローカルの人々がどんな想いを抱えているのかを随時学び、感じることが重要ではないでしょうか。自分のものさしで判断せずに、現場の人の声を絶えず聞き現状についての知識をアップデートしていくことで、自分のエゴを知らぬ間に押し付けないように気をつけていきたいと思います。

気候変動によって自分の住む地域がボロボロになり、移民にならざるをえないという現在の被害状況は、単に環境という観点からのみではなく、人権の視点から考えても決して見て見ぬふりできるような問題ではありません。今回のウェビナーでは、こういった気候変動と人権の関係性に気が付いた参加者が多かったような気がします。

お2人の話を受けての参加者の声

ゲストのお話を受けてのディスカッションでは、以下のような意見を聞くことができました。

・海水面の上昇により移住するということは、一見解決策のように見えるが、当事者たちにとっては文化・アイデンティティなどが失われることを意味することに気づかなかった。

・地球環境のことは考えてきたけれど、被害を受けている方々の文化的な側面について考えたことがなかったことに気づかされて、活動は最も被害を受けている人、環境のことを一番に考えなくてはいけないと思った。

・土地を失う、移動させられるということは、目に見えないもの(季節、土着の文化・精神、コミュニティなど)も消失してしまうことでもあるというお話をきき、遠い国で起きている事でも全く他人事ではない、と感じました。その被害も目に見えるものだけでなく、精神的ダメージも大きいと思いました。

河尻さん、Stellaさんのお話で共通しているのは、「土地が沈むならじゃあ別の場所に移ればいいよね」という問題ではないということです。その土地はただの島ではなく、彼らの遠い祖先が必死に守り抜き、育て作り上げてきた歴史の積み重ねです。そして、そこで暮らしてきた人々のアイデンティティそのものです。

自分が一生離れなけらばいけないことを想像したとき、自分自身を形成してきた土地や慣習や、何よりも大切な人との繋がりを失ってしまうのだと考えると、その後には自分に何が残るのか想像したとき、非常に恐ろしさを感じました。しかも、この物理的・精神的喪失の原因が自分たちではない外部に由来するならどれほどの憤りを感じることでしょう。

気候正義の重要性を再認識

今回のウェビナーを聞いて気候正義(次回のウェビナーでも解説します!)という概念の重要性を再認識しました。特にマーシャル諸島の人は世界の温室効果ガス排出の0.0001%しか占めていないにもかかわらず、気候変動の影響を最も受ける国の一つです。先進国に住む自分が気候変動の悪化に加担することによって、彼らの居場所を奪う原因の一部になっていること、この事実にこれからも向き合いながら、彼らのストーリーをより多くの人と共有することで、彼らの声に耳を傾ける人を増やしていかなければいけません。そして、それだけではなくアドボカシー活動を通じて声を上げることで、より具体的で気候正義にそくした政策の立案を求めていく必要があります。

私も記事や動画などを通じて、現地の人の声を積極的に聞き、学び、あくまでも彼らの意思を尊重しながら自分がするべきアクションを探り一つずつ実行していきたいと思います。

(インターン 佐藤悠香)

▼スクール・オブ・サステナビリティ2についてはこちら

https://www.foejapan.org/climate/event/school2021.html

▼当日のゲストスピーカーのお話はこちら

▼第1回のプログラム
・海面上昇に直面するツバルの状況(川尻京子さん)
・気候変動に左右されるパプアニューギニアの文化(Climate Frontlines Collective, Stella Miria-Robinsonさん)
※ゲストスピーカーの講演のみ公開しています。

【横須賀石炭訴訟報告 vol.8】気候変動を加速させることは人権侵害

本日、横須賀石炭火力訴訟の第8回期日が行われました。

本裁判は、石炭火力発電所を建設するにあたって、環境影響評価手続きが適切にされていないことを指摘し、本建設に係る環境影響評価の確定通知の取り消しを求める裁判です。

(裁判についてのより詳しい説明はこちら:横須賀石炭火力、提訴へ!日本4件目の気候変動訴訟。その背景とは?

今回から裁判長が変わり、新しい担当者になりました。そのような中執り行われた裁判では、原告代理人の半田弁護士から「気候変動の深刻な状況と本件新設発電所」について、小島弁護士からは「環境影響評価の不備」について再び意見陳述(こちらを参照)があり、前々回以降期待された被告からの反論は、書面の提出のみという形でした。

今回は、半田弁護士による陳述内容を紹介したいと思います。

「気候変動の深刻な状況と本件新設発電所」

前回の期日があった5月以降、世界各地で気候変動に伴う様々な災害が起きました。陳述を担当された半田弁護士は、ドイツやベルギーで7月に1ヶ月分の雨が一日に降ったこと、中国河南省では1000年に一度の大雨により12名の死者が出たこと、8月のトルコでの大雨によるマンションの倒壊、インド南部ではまちが雨に沈んだこと、そして日本でも九州北部での大雨があり「命を最優先する行動を」と呼び掛けられたことをあげ、気象災害が深刻かつ頻度が上がっていることを説明し、本訴訟の原告の自宅のすぐ側でも大雨による崖崩れが起きていることを訴えました。

また、豪雨災害以外にも、異常高温による山火事、熱中症被害の拡大の状況も述べた上で、もし人為的な温室効果ガスが排出されていなかったらというシミュレーションである「イベントアトリビューション」という手法による分析によれば、人為的な温室効果ガスの排出がなかったら、この2ヶ月間に起きたような豪雨や異常高温は起きていなかったという科学者の分析も示されました。

このように、人命や財産を脅かす気候変動を止めるために、IPCCやパリ協定に基づき、日本も昨年10月に2050実質ゼロを宣言しました。その宣言の際、気候変動の原因となる大量の温室効果ガスを排出する石炭火力に関する政策については、抜本的に改革すると宣言しています。このような社会情勢にも関わらず、行政機関である経済産業省が石炭火力の新設を許容することについて、半田弁護士は、環境の恵沢の享受と継承等について定める環境基本法第3条、また、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築等について定める第4条に反すると主張しました。

そして、冒頭に紹介した災害のように気候変動は人命と財産を脅かすものであることを強調した上で、気候変動は憲法第13条で保障されている「生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利」を脅かすものであると指摘し、今後、追加的なCO2の排出を許容することは、すでに顕在化している人命・財産を脅かすことをさらに加速させることにつながり、憲法の観点からも違法であると訴えました。

次回期日のご案内

次回期日は、12月10日(金)14:00〜、東京地方裁判所103法廷で開催の予定です。

ぜひご注目ください。

▼9月7日(火)18:00〜 第8回期日についてのオンライン報告会

https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_whEgRxU7RnaoBCKPOwWlmQ

▼原告団事務局による横須賀石炭訴訟ニュースレターVol.7

第7回期日の裁判などをまとめたニュースレターを発行しています。ダウンロードしてご覧になってください。

https://yokosukaclimatecase.jp/news/newslette-vol7-20210831/

▼裁判関連文書

https://yokosukaclimatecase.jp/document/

エネルギー需要削減の本気度は? ーエネルギー基本計画素案を読む(5)

第6次エネルギー基本計画素案では、エネルギー需要や電力需要の想定が、2018年度の第5次計画に比べて少し下方修正されましたが、そもそも第5次計画の想定が過大なものでした。

以下の図は、2019年度まで最終エネルギー消費量とGDPのデータに、今回示された2030年目標を置いたものです。エネルギー需要は減る見通しとなっていますが、2011年以降の減少傾向から直線を引いたもので、野心的なものではありません。

2050年の排出ゼロを目指すというものには、まったくなっていないのです。

図:最終エネルギー消費と実質GDPの推移(エネルギー白書2021より)より作成

エネルギー需要はどのくらい削減するのか

前提となるエネルギー需要がどのように推定されているのかという部分を、素案の記述に加えて、8月4日の基本政策分科会の資料5、「2030年におけるエネルギー需給の見通し参考資料」を中心に見ていきます。

まずは、エネルギー需要の推計方法です。

↑図1:「2030年におけるエネルギー需給の見通し参考資料」p.6 

このように、人口やGDPを推計し、これらを参考に主要業種の活動量を想定して、省エネ前のエネルギー消費を推定、そこに省エネ対策を加味します。

まずは、経済成長について。下記の図のように、前回計画(H27策提示)での想定に比べれば下方修正されているものの、2021年度から2030年度までの成長率は、コロナ禍前(2013~2019年度)を上回る右肩上がりの想定です。

↑図2:同上 

GDPの大きさは、エネルギー消費の増大とイコールではありません。GDPを上げながらエネルギー消費を下げることをデカップリングと言いますが、最初の図をみると、日本でも2011年以降すでにそのような傾向になっています。

例えば「レポート2030ーグリーン・リカバリ―と2050年カーボンニュートラルを実現する2030年までのロードマップ」(https://green-recovery-japan.org/)では、仮に政府の予想のようGDPが640兆円まで増加したとしても、グリーン・リカバリ―戦略(環境に配慮した経済再生政策)を実施すればエネルギー消費量を40%削減できると試算しています(同レポートのp.13)。

各部門の活動量見通し

続いて、各部門ごとの活動量を見てみます。

産業部門での主要4業種、粗鋼、エチレン、セメント、紙・板紙の生産量は、2000年度から2020年度にかけてそれぞれ減少傾向が見て取れますが、2020年度〜2030年度の想定はほぼ横ばいとなっています。

社会全体で使う資源の量を減らしていくことや、産業構造の転換によって生産量を減らしていくという意図も可能性も、まったく考慮されていません。

業務床面積も、人口減少にもかかわらず、微増となっています。

旅客交通需要は、コロナ禍の影響やテレワーク等の普及、通信技術の普及・発達などにより減少する可能性について十分に考慮されたものではありません。

↑図3:同上
(左上)粗鋼、エチレンの生産量 (右上)セメント、紙・板紙の生産量

(左下)業務床面積 (右下)旅客交通需要と貨物交通需要

その結果、最終エネルギー消費の想定(省エネを加味する前)は、約350百万kl(原油換算)と、2019年度の334百万kl (省エネがなければ356.5百万kl)とほぼ同じです。(図4)

このように、人口減少にも関わらず、「需要量の削減」はほとんど考慮されていないのです。

日本のエネルギー政策で言われる「省エネ」とは、機器の効率改善や性能の向上など、エネルギー効率の改善のことで、消費量・需要量自体や、需要のあり方を大きく見直す・減らすということではないのです。

その「省エネ」を加味した280百万klでも、2019年度の334百万klに比べて約16%削減にとどまっています。

↑図4:同上

各部門ごとの「省エネ」の内容

次に、具体的な「省エネ」の内容についてざっと見てみましょう。

素案では39~42ページに書かれていますが、長文のため、ここでは大枠のみ、概要版の記載から抜粋します。

まず、産業部門について。

「エネルギー消費原単位の改善は進展したものの、近年は足踏みの状態である。」(素案p.39)

これについては、4月13日の審議会資料の中に以下があります。主要4業種において、エネルギー原単位の改善は鈍化、また石炭など化石燃料に大きく依存していることがわかります。

↑図5:第40回基本政策分科会 資料5より

このようなエネルギー多消費型の産業のあり方そのものを、本来見直さなければならないはずですが、そのような議論はまったくありません。

エネルギー基本計画で言う「省エネの深堀り」とは、すでに現在省エネが進んでいる部分について、現実に沿って想定を見直す、という作業にすぎないのです。

業務家庭部門については、建築物・住宅の省エネや断熱性能を高めることは最も重要です。素案に、

「2030年の新築平均ZEH・ZEB目標と整合的な誘導基準・住宅トップランナー基準の引き上げや、省エネルギー基準の段階的な水準の引上げを遅くとも2030年度までに実施する。」(p.41)

とあります。本当は2030年よりももっと早くやらなければならなかいはずですが、ようやく、というものです。

2019年度の新築住宅の断熱性能でも、ZEHレベルはまだまだ小さい割合(戸建て住宅の約25%、共同住宅の約2%、下図参照)です。

↑図6:「2030年におけるエネルギー需給の見通し参考資料」p.20より抜粋

2021年の4月に国土交通省に「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」が設置されて議論が重ねられ、ようやくの前進、ではありますが、2030年度の目標を絵にかいた餅に終わらせず、なおできるだけ前倒しするにはどうすればよいのか、引き続き注目していく必要があります。

脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会(国土交通省)


最後に運輸について。

素案に書かれている内容は、自動車の燃費向上やEV化、消費原単位の改善などです。

しかし、本当に取り組まなければならないのは、ここでも需要削減、例えばテレワーク化や出張の削減、車の利用を減らしてもくらしやすいまちづくりなどです。

欧州ではすでに、近距離の航空利用を削減する動きが広がっています。フランスでは、2時間半以内の国内航空路線の運航を禁止することを盛り込んだ気候変動対策・レジリエンスの強化法案が2021年7月に成立しています。

オランダやドイツでも、近距離路線の減便や鉄道との連携が始まっています。

日本でも、コロナ禍により、航空便の利用は大幅に減少し、航空便の減便は行われていますが、これを一時的な対応とせず、気候変動対策として将来の運行のあり方を大きく見直す必要があるのではないでしょうか。

自動車についても、利用自体を大きく減らさなければなりません。

鉄道やバスなど公共交通へのシフトや、自転車や徒歩で暮らせるまちづくり、自動車のシェアや働き方・通勤のあり方などを含めて、できることはたくさんあるのではないでしょうか。EV化の議論は、そのうえでのことです。

リニア中央新幹線の建設についても、すでに移動需要が減少しているなかで、本当に必要なのか、その環境・社会影響の大きさに鑑みて、見直すべき時ではないでしょうか。

偽りの「カーボンニュートラル」ではなく、真の排出ゼロを目指すための第一歩は、まずは化石燃料からの脱却を進めること、そして同時に需要の大幅な削減を行うことです。

第6次エネルギー基本計画の議論の中では、この需要な点が抜けているのです。

(吉田明子)

鉱物資源の需要拡大の先には?――エネルギー基本計画の素案を読む(4)

気候危機への対策として化石燃料からの脱却が急務な中、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)の普及が急速に進められようとしています。こうした動きの中で蓄電池などの原料として需要拡大が見込まれるのがリチウム、コバルト、ニッケルなどの「鉱物資源」。エネルギー基本計画の中でも、その安定確保に関する項目が盛り込まれています。しかし、鉱物資源の開発現場では、これまでも生態系や先住民族の生活・文化の破壊など、さまざまな問題が起きてきました。今回は「カーボンニュートラル」の裏に潜む、もう一つの危機に目を向けてみます。

結局、海外依存の鉱物資源確保?

まず、鉱物資源について、第6次エネルギー基本計画(素案)の中では、一体どのようなことが書かれているのでしょうか。

以下のように、カーボンニュートラルの実現のために再生可能ネルギーやEVへの移行が不可欠であること、そして、その中で鉱物資源の安定供給が重要との認識が示されています

鉱物資源は、あらゆる工業製品の原材料として、国民生活及び経済活動を支える重要な資源であり、カーボンニュートラルに向けて需要の増加が見込まれる再生可能エネルギー関連機器や電動車等の製造に不可欠である。特に、エネルギーの有効利用の鍵となる蓄電池、モーター、半導体等の製造には、銅やレアメタル等の鉱物資源の安定的な供給確保が欠かせない。」(p.82)

一方、以下のように、海外からの輸入に依存せざるを得ない鉱物資源を安定的に確保するには、さまざまなリスクがあることも認識はしているようです。

「鉱種ごとに埋蔵・生産地の偏在性、中流工程の寡占度、価格安定性等の状況が異なり、上流の鉱山開発から下流の最終製品化までに多様な供給リスクが存在している。」(p.82)
「資源ナショナリズムの高まりや開発条件の悪化等により、資源開発リスクは引き続き上昇傾向にある。」(p.82)

しかし、ここに示されたリスクはあくまで日本側の主観によるリスクであり、後述するような開発現場で影響を受ける人びとや自然環境の視点から見たリスクは一切書かれておらず、一面的なものと言えます。

日本側が特定しているリスクの中で、どうやって必要な鉱物資源を確保していくのか――その方策については、以下のようなことが挙げられています。

・特定国に依存しない強靭なサプライチェーン構築
・リサイクル資源の最大限の活用、製錬等のプロセス改善・技術開発による回収率向上等のため投資を促進
・レアメタルの使用量低減技術やその機能を代替する新材料開発に向けた取組の更なる支援(p.83)

これらを見ると、海外からの調達が前途多難であることから、日本国内での循環型社会の重要性を認識しているようにも見えなくはありません。ただ、今後の技術開発にかかっているという点で不確実性があることは否めず、海外の、ひいては地球の資源をいつまで採掘し続けるのか――という疑問が生まれてきます。

具体的な数値としては、以下のようなものも挙げられています。

・ベースメタル(銅、亜鉛、鉛、アルミニウムなど)の自給率を2018年度の50.1%から2030年までに80%%以上に引上げる。そして、2050年までに日本企業が権益をもつ海外の鉱山等からの調達を合わせて国内需要量相当にする。(p.83)(下線は筆者による)

一見、自給率をほぼ100%まで引き上げるのかと歓迎したくなりますが、下線部はすなわち、日本のカーボンニュートラル社会を実現するため、2050年まで海外での採掘を続けますと言っているのと同じです。
なお、レアメタル(リチウム、ニッケル、クロム、コバルトなど)に至っては、自給率について一律の目標は設けず、「鉱種ごとに安定供給確保に取り組む」(p.83)とされており、具体策は示されていません。

こう見ると、これから需要が急増する鉱物資源の大部分を結局は海外からの調達に頼る、つまりは、海外で資源を掘り続けて日本に運んでくることになってしまいそうです。しかし、それで鉱物資源の採掘現場の環境や人びとの生活、そして私たちの住まいである地球は持続可能なのでしょうか。

2050年に必要な鉱物資源は倍増以上?!

日本だけではなく、世界が現在取り組んでいる気候変動対策の中でどれだけの鉱物資源が必要となるのか――世界銀行グループが2020年5月に発表した報告書「気候変動対策と鉱物:クリーン・エネルギーへの移行に鉱物が果たす役割」では、パリ協定の2度目標達成のため、太陽光や風力等への移行とその蓄電技術に必要とされる鉱物について、2050年時点での予測年間生産量が示されています。(図1)

図 1.  2度シナリオ達成のために求められるエネルギー技術に必要とされる2050年の年間鉱物需要予測(左:2018年生産レベルとの比較(%)/右:2050年の生産量予測(百万トン))
出典:世界銀行グループ報告書「気候変動対策と鉱物:クリーン・エネルギーへの移行に鉱物が果たす役割」(2020年5月)p.73

この左側のグラフの中で目を引くのは、グラファイト、リチウム、コバルト(左1~3本目の棒)の年間生産量が2050年までに2018年比で450%以上になるとの予測が出されていることでしょう。これは、リチウムイオン電池の需要増加が見込まれ、その構成材料として必要なためです。

一方、同じくリチウムイオン電池の材料として欠かせないニッケル(左から6本目の棒)は、2018年比で99%の生産量となっています。この99%というニッケルの生産増加割合については、他の鉱物より小さいからと言って、安心できるものではないという点に注意が必要です。

2050年のニッケル年間生産量は226.8万トン(右側グラフを参照。左側から3本目の棒)と予測されており、2018年時の生産量230万トンとほぼ同量のニッケルの生産が求められるということになります。世銀の同報告書(p.82)によれば、2050年までに使用済み製品からニッケルを100%回収し、新しい製品向けにリサイクル利用ができるようになったとしても、必要とされる一次ニッケル(鉱石を製錬所等で処理した後の生産物)の量は23%しか抑えることができないと予測しています。

このような予測から懸念されるのは、気候変動対策が進められていく中で、どの鉱物資源であれ、開発が継続・拡張され、これまで開発現場で地域コミュニティが経験してきた被害が繰り返し起こる、あるいは、むしろひどくなる可能性です。

土地、環境、生活、命を奪ってきた鉱山開発

下の地図は、2021年3月に英の市民グループが出した報告書に掲載されているもので、太陽光や風力発電、蓄電等に必要な鉱物資源の開発に関連して、地域コミュニティが問題の解決を求めている現場をプロットしたものです。すべてをプロットしたものではありませんが、森林伐採、生物多様性の喪失、土壌浸食、水問題、大気汚染、鉱山廃棄物といった環境問題から、児童・強制労働、地域紛争、汚職、健康被害、ジェンダーへの影響、軍事化、労働問題といった社会問題まで、世界各地でさまざまな問題が引き起こされていることが見て取れます。

図 2. 移行に必要な鉱物資源に関連してコミュニティーが問題解決を求めている一部のサイト
出典:英War on Want報告書「気候変動対策と鉱物:クリーン・エネルギーへの移行に鉱物が果たす役割(A Material Transition: Exploring supply and demand solutions for renewable energy minerals)」(2021年3月)p.16-17

実際にどのような環境社会問題が起きているのか、事例を見てみましょう。

下の写真は、FoE Japanが調査を行なってきたフィリピンのニッケル鉱山の様子を遠目から見たものです。

そして、この鉱山周辺をGoogle Earthで見ると、このように黄土色の広がりが確認でき、森林が伐採されて山肌が露出しているのがわかります。(中央に見える茶色は製錬所の鉱滓ダム)

このニッケル鉱山が面している海岸沿いの風景は、こちらです。

このフィリピンのタガニート・ニッケル鉱山(4,862.75 haの採掘許可。2034年まで)では、1987年から大平洋金属と双日が出資する日系企業が採掘を開始。その後、中国や台湾の企業も進出してきたため、どんどん採掘現場は広がるばかりです。そして、2013年からは住友金属鉱山と三井物産が出資する日系企業が国際協力銀行(JBIC)の支援を受けて、製錬所の稼働も始めました。

この開発の波の中で企業が鉱山サイトを拡張する度、20年以上もの間に少なくとも5回は居住地から追い立てられてきたのが先住民族ママヌワの人びとです。鉱山企業が移転地を用意したのは2011年になってからでした。

「これが最後(の移転)と言われている。ここの生活はコンクリートの家で、電気やテレビもあって、よく見えるかもしれないね。でも、決して自分たちが望んでいた(発展の)形ではないんだ。ここでは農業ができないし、木も山に行かないとない。海は(鉱山サイトから流出した)赤土で汚れてしまって魚も獲れない。生活の糧が近くになく、交通費が必要だろう?」

2012年に移転地での生活の様子をこう語ってくれたママヌワの若きリーダーだった”ニコ”ことヴェロニコ・デラメンテさんは、当時、これ以上の開発で自分たち先住民族の土地が奪われていくことにも懸念を示していました。
「最初にこの地での鉱山活動を許した自分たちの年長者を責めはしない。でも、もしチャンスがあるのであれば、企業が鉱山のために先祖の土地を使うのを止めさせたい。

ニコさんはその5年後の2017年1月、移転地近くでオートバイに乗ってやってきた2人組によって射殺されました。27歳でした。ニコさんはこの時、中国系の企業が同地域で計画していた鉱山開発の拡張に反対の声をあげており、生前から死の脅迫を受けていたとのことです。

このように、自分たちの土地の権利や生活を守ろうと声をあげてきた先住民族や住民が殺害されるという超法規的処刑(Extrajudicial killings)は、さまざまな開発現場で起きています。国際NGOグローバル・ウィットネスの報告書「明日を守ること(Defending Tomorrow)」 (2020年7月)によれば、2019年に殺害された土地・環境擁護者は世界で212人にのぼるとのことです。そして、その犠牲者の数が一番多かったのが鉱山問題に関係するケースでした(50名)。

図3. 2019年に殺害された土地・環境擁護者の人数(左:国別/右:セクター別)
出典:グローバル・ウィットネス報告書「明日を守る(Defending Tomorrow)」 (2020年7月)p.9

資源集約的でない解決策を!

第6次エネルギー基本計画(素案)の中では、「気候変動や周辺環境との調和など環境適合性の確保」という項目があり、以下のようなことが書かれています。

「エネルギーの脱炭素化に当たっては、発電所の建設のための土木・建設工事のための掘削や建設機械の使用等に加え、EVや蓄電池、太陽光パネルなどの脱炭素化を支える鉱物の採掘・加工や製品の製造過程におけるCO2排出を考慮する必要もあり、エネルギー供給面のみならず、サプライチェーン全体での環境への影響も評価しながら脱炭素化を進めていく観点が重要である。」
「気候変動のみならず、周辺環境との調和や地域との共生も重要な課題であり、エネルギー関連設備の導入・建設、運用、廃棄物の処理・処分に際して、これらへの影響も勘案していく必要がある。」(p.18)

昨今、サプライチェーン全体で「責任ある鉱物調達」を目指すという方針やスローガンは、鉱山開発を行う川上の企業から、製品を組立て販売する川下の企業まで、大手の企業であれば、どこでも取り入れてきており、環境・社会・人権配慮が行われ、負の影響は回避あるいは低減される前提で開発が進められてきました。

しかし、上述のように既存の鉱山開発の現場では環境・社会・人権問題が解決されておらず、地域の環境と人びとが多大な犠牲を強いられてきた実態をみると、こうした素案の文言があったからと言って、「周辺環境との調和や地域との共生」が実現できるだろうと楽観的な気分にはなれません。今後、需要が高まる鉱物資源の確保を海外に依存し続け、さらに開発の場所を広げるのであれば尚更です。

気候危機への対処が急務で、化石燃料に依存した社会からの急速な脱却が必要であることは言うまでもありません。しかし、大量の電気を使い続けることが前提であれば、結果的に際限なく鉱物資源を掘り続け、そこで土地、環境、生活、命を奪うような開発を繰り返すことになるでしょう。

今、私たちが考えていかなくてはならないのは、エネルギーや電力需要自体を削減し、鉱物資源への依存を拡大する方向ではない社会システムへの移行ではないでしょうか。

  (波多江秀枝)

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