また、フィリピンの市民団体CEED(Center for Energy, Ecology, and Development)は、昨年カリタス・フィリピンと共同で公表した研究報告書において、ヴェルデ島海峡で観測された海洋生物多様性の減少は同地でのガス開発によるものではないかと示唆しています。さらに両団体は水質についての別の報告書で、ヴェルデ島海峡のバタンガス湾(位置関係は上段地図参照のこと)の水質調査を実施したところ、リン酸塩、クロム、全銅、鉛、亜鉛などの汚染物質の濃度がフィリピン国内の水質基準を超えたという結果を紹介しました。これを受けてフィリピンの漁民団体であるバタンガス漁民団結(BMB:Bukluran ng Mangingisda ng Batangas)を中心とするグループは、フィリピン環境天然資源省(DENR)に要請書を提出し、事業地周辺のヴェルデ島海峡水域を、「自然または人為のいずれかの特定の汚染物質が既に水質ガイドラインの値を超えている」ことを意味する「(環境基準)未達成地域」として宣言し、基準を超過している汚染物質の新たな排出源となる施設の建設を許可しないよう要請しました。
ちなみに、このガス火力発電所の事業者の親会社はフィリピンの大企業、サンミゲル社(San Miguel Corporation)ですが、今回の油流出事故のタンカーを手配したのも同じくサンミゲル系列の船会社(San Miguel Shipping)の子会社だと判明しました。サンミゲル社はフィリピンでのガス開発を主導しており、フィリピンの市民団体は今回の油の除去作業にかかっている費用や被害を受けた住民への賠償の支払いをサンミゲル社に求めています。
[1] Carpenter, K.E., Springer, V.G. 2005.The center of the center of marine shore fish biodiversity: the Philippine Islands. Environ Biol Fish 72: 467–480.
[2] Center for Energy, Ecology and Development. 2022. Financing a Fossil Future: Tracing the Money Pipeline of Fossil Gas in Southeast Asia. p.39
Center for Energy, Ecology, and Development. Press Release: Immediate action needed on oil spill to protect Verde Island Passage, group says. March 1. 2023
Center for Energy, Ecology, and Development. Press Release: Groups demand strengthened measures in VIP to address environmental nightmare. March 3. 2023.
Center for Energy, Ecology, and Development. Press Release: Dispatches from a Disaster: Oil Spill in Mindoro. March 3. 2023.
Center for Energy, Ecology, and Development. Press Release: Dispatches from a Disaster: “Worse than COVID” March 9. 2023.
Center for Energy, Ecology, and Development. Press Release: 10 days, zero accountability: oil spill-affected communities lament radio silence of responsible parties. March 10. 2023.
Center for Energy, Ecology, and Development. Press Release: POLLUTER MUST PAY: STATEMENT OF PROTECT VIP ON THE INVOLVEMENT OF SAN MIGUEL CORPORATION IN THE OIL SPILL IN VERDE ISLAND PASSAGE. March 13. 2023.
Meena Raman(FoEマレーシア/ Third World Network)は「途上国が最も重視している成果は、COP27で損失と被害(Loss & Damage/ロスダメ)のための資金ファシリティを立ち上げることです。現状のドラフトでは、COP27でファシリティを立ち上げ細かい議論は今後行うというオプション、今後ファシリティを立ち上げることを決定するというオプション、そしてロスダメ資金ファシリティについては何も決定しないというオプションが示されています。最初のオプションですら、資金についてなんの見通しもないことから不十分と言えますが、しかし最初の一歩とは言えます。しかしアメリカを筆頭に先進国が交渉の進展を妨害しています」とコメント。
最後に、Tatiana Roa(FoEコロンビア/CENSAT Agua Viva) は「ラテンアメリカの国々も他の地域と同じく、大きな影響を受けています。気候危機の悪化により、農業や生計手段、食糧安全保障への影響が懸念されます。気候危機の影響を受ける人々が増えているのに、危機に責任のある国は、真の解決策に資金をあてず、化石燃料産業への支援を続けています。真の解決策は、炭素を地中から掘りださないことです。」
Bareesh Hasan Chowdhury(FoEバングラデシュ)は12日の会見で「長年議論されてこなかったロスダメ資金に対する期待がある一方、交渉において、先進国は、今でも方向性を捻じ曲げたり議論を遅らせたりしようとしています。ロスダメは将来の問題ではなく、今すでに私たちが経験していることです。ロスダメ資金の合意なしに、シャルム・エル・シェイクを去ることはできません」とコメント。
“We’re not here to entertain the polluters! We want the polluters kicked out of the COP!” – Nnimmo Bassey, Heal Our Mother Earth Foundation at the Day of Action at #Cop27 in Sharm El Shaikh, Egypt pic.twitter.com/BSqpJwfVZy
12日、アフリカでのガス開発を止めるよう求めるアフリカの市民社会団体の連合「Dont’ Gas Africa」が新たなレポートを発表しました。レポートでは、このまま開発が進めば、投資回収ができず「座礁資産」となる可能性があり、また海外の企業に事業の権利を与えることはアフリカのエネルギーシステムが海外資本によって所有されることを意味し、その利益はアフリカの人々ではなく権益を持つ先進国に渡ること、開発による環境影響は地元の人々が被ること、などと指摘しています。
FoEインターナショナルの国際プログラムコーディネーターでモザンビーク在住のDipti Bhatnagarは「世界最大級のガス埋蔵地がモザンビーク北部で見つかり、豊かな国がそれを採掘しようとしている。海の資源や大地に依存して生きている地元のコミュニティからそれらを奪おうとしており、すでにガス開発によって100万人もの難民が発生している。2020年に日本を訪れ、モザンビークでガス開発をしないでほしいと申し入れた。しかしその後、日本政府は事業への融資を決定した。」とスピーチ。日本に対し、そしてその他の先進国や企業に対し、「アフリカを燃やすな(Don’t let Africa Burn)」と訴えました。
また、日本の官民によるガス開発が進むフィリピンから参加したKrishna Ariola(Center for Energy, Ecology and Development)は「気候危機に責任がある国々が、さらに多くの化石燃料を燃やそうとしている。フィリピンや他の東南アジア諸国は、まだ石炭から脱却する途上にあるのに、人々や環境を犠牲にしてガス依存の状況に陥りつつある。海のアマゾンと言われるヴェルデ島海峡で、巨大なガス開発が進んでおり、生物多様性も破壊されようとしている。今すぐ、融資国は化石燃料への公的支援を止めるべきだ」とコメントしました。