イギリスですすむ日立の原発輸出〜公的資金で後押し!?市民に押し付けられるコストとリスク

ウェールズ・ウィルヴァで日立の子会社ホライズンが進める原発計画。
イギリスでは高すぎる原発のコストが問題になっています。実際にどれくらいウィルヴァ原発事業が進んでいるのでしょうか。また、誰が莫大なコストを負担するのでしょうか。

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2015年に閉鎖したマグノックスの原発。この横にウィルヴァニューイッドを建設しようとしている。

パート1はこちら

イギリスの市民に押し寄せる負担

現在、イギリス・ウェールズ地方北部で進むウィルヴァニューイッド原発計画は、報道によると総事業費3兆円、それに対し、日本政府100%出資の国際協力銀行(JBIC)および日本貿易保険(NEXI)による融資と保証が検討されているとされています。
イギリスでは、実は1995年以降、一つも新しい原発は建設されていません。2008年に発表された英・原子力白書では、2030年までに新たに12基の原発を建設するとしており、ヒンクリーポイントC、サイズウェルC、ウィルヴァ、オールドバリーB、ムーアサイド、ブラッドウェルBの計8カ所で原発計画が提案されています。まだ1基も建設されていないのが現状ですが、そのうち、計画が最も進んでいるのがイギリス南西部で進むヒンクリーポイントC原発建設です。
ヒンクリーポイントC原発(3200MW、2機のEPR(欧州加圧水型炉)建設)は、フランスのEDFが66.5%、中国広核集団(CGN)が33.5%出資しておこなう原発事業です。事業費は約3兆円(£196億、これは2012年のロンドンオリンピックのコストの2倍だそう)で、このプロジェクトに対してはイギリスの政府債務保証スキームの適用、差額調整契約制度(CfD)による電力価格の保証 がされています。差額調整制度とは、電源別に基準価格(ストライクプライス)を定め、その価格が市場価格を上回った場合、その「差」を電力料金にのせて需要家から回収するシステムです。ヒンクリーポイントC原発の基準価格は£92.50/MWhで35年契約です。2018年1月のイギリスの電力の市場価格はだいたい50 £/MWhでした。単純に今の市場価格で考えると、約40£の差額は電気料金に上乗せされるのです。(ちなみにイギリスの風力価格は2017年末時点で£57.5/MWh
イギリス監査局の試算では、今後2030年までにCfDを通じて、約4兆5千億円(300億ポンド)の事実上の補助金が投入され、電気料金が年間最大2000円(15ポンド)ほど値上りする恐れがあるとしています 。消費者の負担が大きくなることからも、風力の価格が低下していることからも、原発を政府が手厚く支援することに関して、イギリス国内で問題になっています。

ウィルヴァ原発に対しても、イギリス政府が債務保証スキーム適用検討に合意していますが、前述のようにヒンクリーポイントC原発のコストが高すぎるので、ヒンクリーポイントCで用いたスキーム以外を模索するとしており 、ウィルヴァ原発の資金調達の枠組みや電気の買取価格は今の所不明です。また、ウィルヴァの基準価格はヒンクリーポイントCよりもかなり安くなるとも言われており、その場合、事業の採算性は非常に下がることになります。

このように、新規原発建設によるイギリス国民への負担は莫大です。イギリスは電力市場を自由化しているのですが、原発には補助金を投入しない(No public subsidy policy)という政策をとってきました。原発事業によるコストやリスクは事業者が原則負うとことになっていたのですが、ヒンクリーポイントC原発のように、事実上、イギリス政府は手厚く原発建設を支援しています。

日本の役割

ウェールズへの原発輸出は、一民間企業(日立)の事業です。一義的にはプロジェクトのリスクやコストは事業者や融資する銀行などが負うべきですが、日本では小泉内閣の2005年の原子力政策大綱を受けて、翌2006年にまとめられた原子力立国計画で、それまで国内が中心であった日本の原発産業が国際的な市場で原発推進に先導的な役割を果たすことが強調されています。そしてウェールズへの原発輸出に対し、政府100パーセント出資の日本貿易保険(NEXI)による融資保証、国際協力銀行(JBIC)を通じた融資を行うことが報じられています。

東電福島第一事故後も原発輸出は国策として推し進められておりインドやベトナムなどに対し、トップセールスが繰り広げられ、2016年には長年締結交渉が続けられてきたインドとの原子力協定が署名され、2017年には国会審議を経て批准・発効してしまいました。

原発輸出に対して公的信用を付与する際には、政府が輸出相手国が原発の安全を確保するために適切な制度などを有しているか等「安全確認」を行います。2015年に閣議決定された「原子力施設主要紙機材の輸出等に係る公的信用付与に伴う安全配慮等確認の実施に関する要綱」は、相手国が原子力安全条約などの国際条約を締結しているかどうか等をイエス・ノー方式で調査するもので、プロジェクト個別の安全性は審査せず、とても実質的な安全確認はできないものになっています。

JBICおよびNEXIは、融資・保証を行うか決定する際に、融資・保証審査に加え、環境社会配慮ガイドラインにのっとり、プロジェクトが社会環境に及ぼす影響を確認・配慮することになっています。しかし、JBIC・NEXIは「安全確認」に関しては「政府が行う」としており、JBIC・NEXIは行わないとしています。つまり政府側にも、JBIC・NEXI側にもプロジェクト個別の安全性を主体的に確認するシステムがないのです。

一般的に、プロジェクトの一義的なリスクは企業や銀行が負うべきですが、保険をかけてリスク分散することもあろうかと思います。しかし、融資保証を行う報道されているのは政府100パーセント出資の公的信用機関です。融資額や保証額が巨額になることが予想されるため、万が一貸し倒れが生じた場合は、国民負担が発生する可能性も指摘されています。

原発は、東電福島第一原発事故でも経験したように、一度事故が起これば、取り返しがつかず、非常にリスクの大きな事業です。事故が怒らなくても、収益性は乏しく、商業上のリスクは大きいのです。まさしく「民間ではカバーできない」規模のリスクです。

世論は脱原発を支持しており、福島事故の被害が続く中、国民的議論もないままに、公的資金で輸出を支援することは社会的に許されるべきではありません。日立製作所や民間大手銀行が負いきれないリスクを、政府100%出資のJBICやNEXIがカバーするということは、リスクを国民に転嫁しているいるといっても過言ではありません。

(スタッフ 深草)

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事業者はもっと住民と真摯に向き合い、説明を-蘇我火力発電所に関する住民説明会

インターンの富塚です。先日、千葉市で計画されている蘇我火力発電所に関する事業者による説明会が開かれ、参加しました。その様子を報告します。

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千葉市中央区蘇我地区に建設が予定されている蘇我火力発電所。環境への影響調査の方法が記された環境影響評価方法書が1月22日に提出された。この方法書は3月8日まで公開されているが450ページ以上あり、内容も大変専門的で理解するのが困難だ。このことも踏まえ、事業者である千葉パワー株式会社による住民説明会が2月7、9、10日と蘇我と市原で行われた。地域住民や数多くの環境団体は近辺への影響、そして地球温暖化への影響を懸念し、建設計画に強く反対している。

新しく建設予定の石炭火力発電所は、石炭と副生ガスよる超々臨界圧発電方式で出力約107万kWになると見込まれている。千葉パワーは建設を2020年開始とし、24年からの稼働を目指している。

千葉パワーは中国電力とJFE スチールが共同出資をして昨年4月に立ち上げられた。(蘇我火力発電所が共同会社として初のプロジェクトとなるということだが、説明会は淡々と慣れた様子で行われた。)今回の説明会は「環境影響評価方法書のあらまし」ということで、建設によって懸念される周辺地域や環境への悪影響をどのように調べ、対策をするかという説明が主だった。環境調査は昨年5月に始まり、今年4月まで行われるとのこと。

私が参加した2月7日の説明会には、地域住民、環境団体、そして報道関係者などおよそ80名が参加した。説明会は千葉パワー幹部であるJFEスチール東日本副社長などが登壇した。環境影響評価手続きやその方法についての説明が約45分間あったのちに30分の休憩を経て質疑応答に入ったが、参加者には休憩時間中前半の15分と短い質問提出の時間が与えられた。質問用紙につき一問ずつとされていたため、十数枚の用紙に手を休めることなく意見する人も多くいたが、すべての意見を書き出すには全く時間が足りなかった様子だった。また、休憩時間後半の15分は事業者の解答準備の時間として設けられたため、質問にその場で答えることができないことにも疑問と不安が募った。第2、3回の説明会ではこの進行方針の見直しを参加者は要求したが、事業者側は全く対応しなかった。

質問については「そもそもなぜ」といった内容のものが多かった。なぜ石炭火力発電所なのか。そしてなぜ蘇我なのか。住民の健康被害や環境破壊が懸念される中で、どうしてこのような計画にいたったのか。JFE スチール東日本製鉄所が所有する建設予定地にはすでに火力発電所に必要な設備がもう備わっている上に冷却に必要とされる海水も豊富にあるという。しかし説明によると発電事業で使用された海水は7度ほど温度が上昇して海に戻されるという。これは国が定めた基準値に順ずるとしているが、温度の上がった海水が、大量に海へ放出された時の生物などへの影響、そして東京湾岸の他の火力発電所との複合的な影響も参加者の心配材料だった。

また千葉パワーは国の「エネルギー基本計画」に従い、日本は島国でありながら資源も少なく電力の輸入も難しいため、石炭火力発電所は必要なのだと説明。安価で安定した石炭火力発電は地政学的にも経済的にもリスクが低く、将来的にも地元の雇用増大、地域への納税などんメリットを示したが、パリ協定をはじめとした各国の脱石炭やCO2削減目標、そして国内でももうすでに電力は十分に足りていることなどを考慮すると、事業者が経済的利益と海外輸出を目論んでいることは明確だろう。

もう一つの論点は周囲への環境被害だ。粉塵や煤塵、そして二酸化硫黄や二酸化窒素をはじめとした大気汚染物質への対策についての質問も多く寄せられた。蘇我では過去にも公害訴訟がたたかわれた背景もあり、今も地域の大気の状態は良いものであるとは言えない。しかし千葉パワーはこのような環境被害拡大への懸念があるにもかかわらず、石炭粉塵の影響は全く環境影響評価の項目としていない。これは、すべて密閉容器内で処理をするためとし、その他の大気汚染物質に関しては散水や排煙脱硝装置などの設備による対策を進めると説明した。事業者側は最新鋭の技術を駆使し、被害を最小に抑える努力をすると繰り返したが、実際、磯子火力新2号機と比べると大気汚染物質量の比較によって最善策をとっているわけではないことがわかる。様々な環境被害への懸念に対して長期的には心配はいらないとしているが、短期的に基準に反しているのであれば問題なのではないか、独自に調査をするために測定地をもうけないのかという質問も寄せられていた。詳しくはこの先の準備書に明記し、改めて理解を得られるようにするとのことだった。市民への健康被害は国の規定に反していないため心配ないとのことだが、説明会後参加者の一人はこのような対策では不十分だと、明らかに納得のいかない表情を見せていた。また、国が定めている基準値も他国のものと比べると甘く(例えば水銀など)、見直すべきなのではないかと思われる。

第一回目の説明会で寄せられた質問は約60件、環境、健康、必要性、などが多く問われたが返答があったのは39。予定時間より質疑応答は30分延長したが、質問とは少し違った答えだったり、曖昧な解答が多かった印象を受けた。また、時間切れになることを理由に答えにくい質問は避けたのではないかという声も多く上がった。千葉パワーはこの第一回の説明会で社会貢献の資料などを配布し、地域住民の理解を得ようとしたが、悪影響しか及ぼさない石炭火力発電所建設計画にはとても賛同しがたい。地域住民は、既に問題である地域の大気の状態や環境破壊への影響をまずは対処するべきだという強い意思を持っている。これからさらに多くの地域の方々にこの計画と実情を知ってもらうことも今後の課題となる。
(インターン 富塚)

気候ネットワークが作成した蘇我火力に関する解説書はこちら→
環境影響評価方法書から読み解く(仮称)蘇我火力発電所建設計画~問題点と事業者に確認すべきポイント
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蘇我石炭火力発電所の中止を求める署名も行っています!
詳しくはこちら

 

環境問題を一人一人が自分事にする大切さ

約4か月間、FoE Japanでインターンシップをさせていただいた、川口と申します。私は大学で環境学と開発学を専攻しています。大学で学んだ環境分野の知識をより深め、環境NGOが実際にどのような活動をしているのか、どんな仕組みで動いているのか関心があり、インターンに申し込みました。インターンでは、気候変動やエネルギー問題、森林保全など、幅広い分野の活動に携わり、大学での学修が社会の中でどう関わっているのか、知ることが出来ました。また、インターンで様々なトピックに触れたことで、新たに関心を持ったり、より身近に感じられるようになりました。

通常はFoEの事務所で企業への意識調査のための名簿作りやイベントの広報、チラシの折込み作業等、デスクワークを行いました。これらの仕事を通して、活動全体を円滑に進めるために、下準備や段取りはその基盤となる重要なことだと感じました。また、事務所外では、沖縄の基地建設による環境影響の討論会やCOP23のメディアへの事前説明会及び報告会、福島の保養活動「ぽかぽかプロジェクト」、福島原発の放射能による健康被害を主張する裁判に参加しました。実際に現地へ足を運ぶことで、被害を受けている方々の生の声を聞くことができ、また最新の会議報告を知ることが出来ました。特に、「ぽかぽかプロジェクト」への参加は、放射能の影響やエネルギーシフトについてより深く考えるきっかけになりました。放射能汚染について、はっきりした情報がない中で、お母さんたちは未来を担う子どもたちへの影響をとても心配しています。少しでも汚染の少ない地域へ行って、子どもたちを思い切り遊ばせたい、安全な食材を使った料理を食べさせたい、と願うお母さんたちの思いを伺い、福島を取り巻く状況が原発事故以降、激変してしまったことを痛感しました。また、福島の住民だというだけで、差別を受けることがあると知り、胸が痛みました。このプロジェクトは、複数の企業や団体の協力を得て成り立ち、お母さんたちはそのことにとても感謝していることがアンケートから読み取れました。FoEも含めて様々な方向から協力することで、プロジェクトがより豊かに、活発になることを学びました。


国際的な環境枠組みであるCOPについては、大学で学んでいたこともあり、ボン会議の報告会はとても興味深かったです。環境に対する世界的な動きの中で、日本はどうあるべきなのか、考えることが出来ました。国としてパリ協定を意識した政策を行うのはもちろんのこと、民間団体や企業などのプライベートセクターの取り組みもこれからさらに重要になってくるのではないかと思いました。

インターンを振り返って、環境に関する知識が増えただけでなく、様々な分野から沢山の人が携わり、一つのプロジェクトが成立していることを学びました。また、環境分野の課題は規模が大きく、複数の要因が絡み合い、長期にわたるため、地域、国、世界、それぞれのレベルで対策が必要であり、地球市民一人ひとりが自分たちの問題として考えていかなければならないと感じました。そのために、環境NGOは、環境政策提言や環境被害を訴える市民のサポート、啓発活動などをメインに取り組んでいることを知りました。スタッフの方々の熱い思いに尊敬の念を抱きながら、とても学びの多い4か月間でした。ありがとうございました!

【蘇我】千葉市長にむけて計画中止を求める署名を集めます

(こちらの記事は石炭火力を考える東京湾の会のブログからの転載です。)
(仮称)蘇我火力発電所建設予定地についてはこちら

IMG_3213 (1)蘇我石炭火力発電所計画を考える会は、千葉市長宛に、(仮称)蘇我火力発電所建設計画の中止を事業者に働き掛けることを求める署名を開始しました。提出締め切りは3月31日(土)、千葉県以外の方も署名ができます。所定の用紙をプリントアウトして署名していただき、期日までに以下の住所にお送りください。

署名用紙のPDFはこちら

提出先:蘇我石炭火力発電所計画を考える会
〒260-0013 千葉市中央区中央3-13-17

☎℡ 090-7941-7655(小西)

提出締め切り:2018年3月31日(土)


署名文

千葉市長 熊谷俊人様

(仮称)蘇我火力発電所建設計画の中止を事業者に働き掛けることを求める署名

千葉市中央区川崎町1番町(JFEスチール(株)東日本製鉄所(千葉地区)構内)に石炭火力発電所(出力107万kW、事業主体は千葉パワー株式会社)の建設が計画されています。石炭火力発電所は、多量の二酸化炭素を排出するだけでなく、窒素酸化物や硫黄酸化物、さらには水銀等重金属などの大気汚染物質が排出され、海域や河川には温排水による影響も懸念されます。

建設予定地の千葉市中央区蘇我地区では、長い間製鉄所からの大気汚染物質により喘息(ぜんそく)などの健康被害で多くの市民が苦しんできており、1975年、「子どもたちに青空を」求めて地域住民と市民が提訴した「あおぞら裁判」は、いまだ市民の記憶にも鮮明に残っています。

現在でもばいじんや粉じんによる被害が千葉市役所や事業者への苦情となっており、郊外は解決されておりません。さらに環境負荷の大きい石炭火力発電所が建設されることは地域住民にとって到底受け入れられるものではありません。

地球温暖化防止の視点からも、また市民の健康を守るためにも、石炭火力発電所の建設計画の中止を事業者に働きかけるよう強く求めます。

イギリスへの原発輸出ー現地住民の声

イギリス・ウェールズ地方の北西部に位置するアングルシー島で、日立の完全子会社であるホライズンニュークリアパワーが新規原発建設計画を進めています。

この原発事業をめぐって、地元では、もともとの計画が浮上した80年代から、市民による原発反対運動が続いています。FoE Japanは2017年11月現地を訪問。事業の問題点を調査し、地元の声を聞きました。

アングルシー島は人口7万人ほどの小さな島で、18世紀には銅採掘が盛んでした。主な産業として、アルミ加工工場が操業していましたが、2009年に閉鎖し、現在は観光業や農業、そして地元の小さな企業が島の経済を支えています。

また、2015年までマグノックスの原発が稼働していましたが、2012年に2号基が、2015年に1号基が閉鎖。写真の中央に見える建屋が現在解体作業中のマグノックスの原発です。

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中央に見える灰色の建物がマグノックスの原発(ウィルヴァA)

ホライズンが計画しているウィルヴァニューイッド原発の建設は、80年代にウィルヴァB原発計画として浮上しました。しかし「新規原発はいらない」と声を上げた地元市民が現在も活動を続けています(注:ホライズンはもともとドイツの企業、EONとRWEのジョイントベンチャーであったが、2012年に日立に売却した)。

地元の脱原発団体「ウィルヴァBに反対する人々(People Against Wylfa B、PAWB)」の創立メンバーの一人であるディラン・モーガンさんは、ウェールズ語の書籍を扱う書店を経営する傍ら地元大学でウェールズ語を教えています。1988年にPAWBを設立し、以来ウィルヴァ原発反対活動を続けています。

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PAWBのメンバーらと

「88年に始めた活動は成功しました。中央政府は当時、ウィルヴァ原発の計画を凍結させたのです。しかし2006年、労働党のブレア政権で原発推進政策が復活し、それから10年以上に渡りウィルヴァ計画に再び反対の声を上げてきました。」

ディランさんが話すように、イギリスでは1950年代から継続して原発推進政策が進められ、アングルシー島での新規原発建設計画も80年代に持ち上がりました。しかし、90年代はじめに電力部門の民営化やエネルギー政策の見直しで、新規原発建設がストップされて以降、イギリス国内では1995年を最後に原発の新規建設はありませんでした。2006年、ブレア政権のもとエネルギー政策が見直され、原発推進の新たなエネルギー計画(エネルギー白書2007年、原子力白書2008年)が発表されます。

ディランさんは「原発は危険で、健康や環境を脅かすものだと思っています。また建設には莫大なコストがかかることから公的資金の投入なしにはプロジェクトは進まないでしょう。日本の公的資金が投入される可能性が報道されていますが、20世紀の時代遅れのテクノロジーに日本の公的資金を無駄遣いしてほしくないと思っています。」と話します。

ウェールズ訪問中、2度、住民の方と意見交換する場を設けてもらいました。集まったのは地元の脱原発団体(PAWB)のメンバーだけでなく、地元の緑の党のサポーター、FoEのローカルグループ、アングルシー島で働いている人々、また事業に関心はあるけど事業について特に立場が明確なわけではないという住民の方などです。

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アングルシー島に住むある夫婦の方は、「島の若い人は(仕事がないから島を)出て行く。若い人は雇用創出に期待している。個人的には賛成でも反対でもないけれど、福島の事故の話を聞いていると、心配」との意見でした。

地元のアングルシー議会は、原発計画に賛成しています。賛成の最も大きな理由が原発事業による雇用創出です。ホライズン社は建設時に多い時で9000千人の雇用、そして長期的には800名分の雇用を生み出すとしています。この「雇用創出」をめぐっては、様々な観点から懸念の声が上がっています。

アングルシー島に住むという高齢の女性の方は「建設現場では多くの低賃金外国人労働者が働いているのが実態。ウィルヴァ原発の建設にも外部から労働者がやってくるだろう。ただでさえ病院などのインフラが足りていないと感じるのに、九千人もの雇用を受け入れられるとは思わない。」と話します。

また「本土と島をつなぐ橋は2つしかなく、事故の時に避難ができるのか心配」とも指摘。

地元で行政職員をしていたグウィン・エドワーズさんは、PAWBのメンバーの一人。原発建設は長期的な雇用問題解決に貢献しないと警鐘を鳴らします。

「1960年代、最初のウィルヴァ原発建設のときにも雇用創出につながるといわれた。しかしアングルシー島はウェールズの中でも失業率の高い地域。原発に雇用を奪われた地元企業は倒産していき、地元企業が崩壊してしまった」

PAWBメンバーで医者のカールさんも原発産業が雇用を生み出すという論理について、否定しています。来日経験もあり南相馬も訪問したことがあるというカールさんは「日本でもイギリスでも共通に感じたのは、貧しい地域に原発を押し付け、結局なにも起こらなかった(=雇用問題は解決しなかった)ということ。雇用を生み出すというが、原発政策と地元での雇用創出はそもそも関係ない。」

PAWBのメンバーは、原発が雇用をうむという言説に対抗するために、地元経済や雇用に関する代替策の提言も行っています。

他にも、アングルシー島の美しい自然への影響や、長年続く農業への影響も挙げられました。アングルシー島の沿岸部は、ヘリテージコーストと呼ばれ、自然保護区域になっています。

PAWBの創設者の一人でもあるロバート・エリスさんは、地元の元獣医師です。「美しい海岸線をこれ以上壊されたくない」と話します。

新たな原発の建設にはさらに広大な用地を必要とします。用地取得は完了していますが、2011年には300年続いた農業を守る為、農家の方が土地を売るのを拒否し、地元の人々や環境団体もサポートしました

【農地売却に抵抗した農家のインタビュー(ウェールズ語のみ)】

抗議の結果、2012年、ホライズンは土地を買収するのを諦め、運動に勝利した農家により今でも農業が続けられているそうです。

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ロバートさん(中央)と土地買収に抵抗した農家の夫婦(写真:ロバート・エリスさん提供)

ホライズンは、機材納入や運搬のために新たに桟橋を設け、また建設作業者のために新たに合計4000人を収容できる住居施設を建設するとしています。また、新たな送電線の建設、アクセスロードの建設も今後行われる予定で、送電線の建設に反対する市民グループもあります(注:送電線を建設するのは、送電部門を管轄するNational Grid)。

アングルシー島出身で、長年平和活動を続けているシオネッドさんは、核兵器開発の観点から原発に反対しています。

「広島、長崎の悲劇をしり、原子力兵器のために開発されたこの技術に反対することを決めました。また、放射性廃棄物の問題も解決していません。将来世代にこのような遺産をのこすべきではありません。」

続く…

プロジェクト概要

ウィルファB原子力発電プロジェクト(ウィルヴァニューイッド原発、Wylfa Newydd)は、イギリス・ウェールズ地方北部、アングルシー島で二基のABWR(改良型沸騰水型軽水炉)を建設するもの。発電設備容量は合計で2,700MW。ホライズンニュークリアパワー(日立の子会社)が事業主体。

事業名:ウィルヴァニューイッド
事業内容:二基のABWR(改良型沸騰水型軽水炉)の建設(発電設備容量合計2,700MW)
事業主体:ホライズンニュークリアパワー(日立が100%株式所有)
総事業費:不明(約1.5兆〜3兆円と報道あり)
建設開始予定:2019年
運転開始予定:2025年

エネルギー基本計画見直し議論の現状

2017年8月より、「エネルギー基本計画」見直しの議論が始まっています。
経済産業省の審議会「基本政策分科会」で主に議論され、並行して新たに設置された「エネルギー情勢懇談会」で2050年を見据えた議論を行い(2018年3月中にとりまとめとのこと)、その議論結果も参考にしながら、4月以降エネルギー基本計画見直しについてまとめるとされています。

今月26日に開催予定の基本政策分科会では原子力・火力がテーマとされます。審議会の中では、「日本は資源が乏しい」「2030年の原子力割合20~22%をどう達成するか」と考えるメンバーが多く、世論や世界情勢との乖離を感じざるをえません。

審議会での議論は、「資源が乏しい日本」というように、いまだに中央集権型エネルギー構造がベースとなっており、脱原発・脱化石燃料に向かう世界の動きや、震災後の「地域分散型」エネルギーシステムにむかう各地での変化を無視したものです。
この間にも地域での再エネ活用や・地域づくり、そしてパリ協定を受けて再エネやサステナビリティを重視する方向へと、企業も大きく方向転換しようとしています。

エネルギー基本計画改訂に市民の声を(12月8日作成のスライド)
           
FoE Japanは、eシフト・グリーン連合などのネットワークを通じて、エネルギー基本計画を「原発ゼロに」と呼びかける署名をスタートすべく準備中です。また、年明けには政府交渉や院内集会を予定しています(詳細が決まり次第ご案内します)。

(吉田明子)

・基本政策分科会 資料等
(8月9日、11月28日、12月26日(予定))
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/
・エネルギー情勢懇談会 資料等
(8月30日、9月29日、11月13日、12月8日)
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/#ene_situation/

▼「どうする?これからの日本のエネルギー」ウェブサイト
http://ene-rev.org/
*解説リーフレット「どうする?これからの日本のエネルギー」は7万部以上を配布しています。引き続き各地の勉強会やイベントで活用いただければ幸いです。  

原発を退けた人々の力(2)韓国慶尚北道ヨンドク郡~地域民主主義そのものを問いかけ、やりとげた


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韓国の東海岸に位置する盈徳(ヨンドク)郡(慶尚北道)。人口4万5,000人ほど。美しい海とズワイガニの産地として知られ、カニが郡のシンボルマークとしてあちらこちらに目につく。

ここでは、3回にわたり放射性廃棄物の処分場の候補地となり、さらに原発建設の計画がもちあがった。ふるさとを守るために歯を食いしばって前に進み、地域の分断を乗り切り、「地域の運命は、住民自らが決める」ことを重視し、最後には住民投票で原発反対の住民の意思を示すことに成功した人々のたたかいについて話をきいた。以下、聴き取りの内容をまとめた。

処分場反対で、つまはじきに

「最初の2回の処分場建設計画のときには、地域全体がまとまって反対しました。しかし、2005年の3回目の処分場計画の時は、そうではありませんでした」と、元ヨンドク核発電所誘致住民投票推進委員会のキム・オクナムさん。行政が「ヨンドクの発展のきっかけのため」と誘致に積極的になり、反対運動は行政と対立したのだ。「地域の発展を邪魔するのか」と白い目でみられた。反対をした人たちは地域の親睦団体からもつまはじきにされ、仕事もこなくなり、生活すら厳しくなった。精神的にもぼろぼろになってしまった。組織も崩れ去ってしまった。
このときは、キョンジュ、ポハン、ヨンドク、グンサンの4つの候補地で住民投票を行い、最終的には最も誘致賛成が多かったキョンジュに決まった。反対派が勝ったともいえる。しかし、それはあまりに苦いものだった。

今度は原発建設構想がやってきた

写真 2017-11-25 16 21 48そして、2011年、今度は原発建設の構想が持ち上がった。この計画は、予定地の敷地の399人の同意だけで決めてしまったため、「郡民全体の意見をきくべきではないか?」と郡議会に陳情を行った。これには保守派・原発推進派が圧倒的多数を占める議会も、「民主主義の手続きが足りなかった」ということで、特別委員会を設置し、全体の意見を調べる必要があるということになった。地域全体でも8割が朴槿恵(パク・クネ)大統領支持ということで、住民投票にかけたとしても賛成派がかつのではないかと思われた。
キム・オクナムさんたちには迷いがあった。前回の処分場誘致のとき反対した人たちは、生活が崩壊し、組織も崩壊し、深い傷を負っていた。果たして住民投票をする実務、力量があるのか。資金があるのか。
それでも、結論としては、外からの力を借りながら、なんとかやりとげるしかないということになった。全国の脱原発運動に取り組む団体の力をかりることになった。

地域民主主義そのものを問いかける

しかし、いざ、住民投票をやるとなると、国も道も郡も、この住民投票は「違法」だと言い出した。「原発建設は国家事務であり、住民投票の対象ではない」というのだ。住民が自ら、自分たちの意思を示すことを、政府は恐れたのだろう。

住民投票の実施は、「中央が決めることに地域は従うのか? 地域の重要なことは地域住民自身が参加して決めるべきではないか?」という地域の民主主義そのものの問いかけとなっていった。キムさんたちは、「地域の重要なことを地域の住民自身が決めていく。そのための意見表明の場である」ことを強調し、賛成・反対の違いによって後で感情的な対立を生むことがないよう、投票のプロセスが公平であるよう、細心の注意を払った。これは切実な問題だった。
政府や韓水原の宣伝はものすごかったという。「ヨンドク史上、ここまで全国に報道されたことは初めてでした」とキムさん。地域全体が、原発賛否をめぐる、双方のプラカードで埋め尽くされた。韓水原などは投票不参加の勧誘に取り組んだ。

1万人が原発誘致に反対票を投じた

選挙人名簿もなく、資金もなく、媒体もなく、反対運動はボロボロだったし、さまざまな葛藤があったが、キムさんたちは、やりとげた。とにかく住民たちは自分たちの意思をあらわしたかったのだ。
2015年11月13日住民投票の結果が出た。1万1201人が投票。うち原発誘致反対が91.7%。誘致賛成は7.7%。
政府側は投票率は32.5%とした。今回の住民投票は、住民投票法に基づくものではなかったが、住民投票法上、有権者数の3分の1以上が投票しなければ、無効となり、開票もされないため、投票率が3分の1を超えるかどうかが注目された。選挙管理委員会の協力が得られなかったキムさんたちには選挙人名簿がなかったため、有権者数の正確な数はだれもわからなかったが、前回の住民投票の有権者から不在者を除いた数を母数とすると、投票率は33%をはるかに超えるとした。

とにかく彼らはやりとげた

住民が自らの地域の運命を自分たちで決める。私たちがやった住民投票の本質はそこだ。もう一度、同じことをしろと言われてもできないだろう」とキム・オクナムさんは言う。

「私は、自分のふるさとが100年後も続くことを願っている。ムン・ジェイン政権になって、脱原発方針に舵を切ったことは歓迎したい。地方自治のあり方もよい方向に変わるだろう。私たちの住民投票が、ムン・ジェインを生み出した民主主義の力に貢献したと思っている。もう一度、同じような住民投票がすぐに必要になるとは思わないが、そのときは、その時代の人たちががんばることになるだろう」
「一方で、原発に反対するのならば、それでは地域のどういう未来を描くのか、それを具体的に示していかなければならないだろう。それがまだできていないことには忸怩たるものを感じている」

牧師さんで、先立つ処分場計画には賛成だったペク・ウンヘさん。福島原発事故を契機に考え方を変え、住民投票推進委員会の共同委員長となった。

福島原発事故は、原発の危険性、核の恐ろしさを考えさせるきっかけとなった。私は考えを変えた。反対運動をすることは、国家と対決することでもあり、自分の人生を厳しいところにおく選択になる。キムさんとは友達だが考え方は違う。しかし大同小異で、大きい目的を達成するために、手を携えていくことは重要だった」。

この住民投票では、本当にいろいろな葛藤もあった。この保守の地域で、政府に反旗を翻すことは人生をかけることでもあった。

しかし、分断を乗り越え、前をむき、希望と民主主義の力を信じて、彼らはやりとげたのだった。その勇気と意思の力に、心から敬意を表したい。(満田夏花)

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韓国ムン・ジェイン大統領のもとでの脱原発の道のり~新古里5・6号機の公論化プロセスで問われたものは?~

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▲ヨンドクの市場

原発を退けた人々の力(1):韓国江原道・三陟(サムチョク)~「普通の女性たち」が立ち上がったわけとは

IMG_0908三陟(サムチョク)市は韓国江原道南部に位置する。人口は約7万人。美しい海水浴場と石灰岩の洞窟が有名な観光地でもある。

サムチョク市では、前市長が強引にすすめようとした原発誘致に、市民が粘り強い反対運動を展開した。ついには反原発で住民投票を公約にかかげた新しい市長を当選させるに至ったが、この市長が住民投票をやろうとしたが中央の意を受けた選挙管理委員会にはばまれた。それならばと市民が主導して住民投票を実施し、ついには誘致反対を勝ち取った。11月24日、サムチョク市を訪問。この驚異の運動を成功させたコアメンバーの人たちに話をきくことができた。(写真:サムチョク核発電所反対闘争委員会およびサムチョク女子高同窓会のメンバーからの聴き取り風景)

サムチョク市は30年間で核に関するたたかいが3回あったという。
1992年から99年にかけての原発誘致に対する反対運動、2003年から2005年にかけての核廃棄物処分場への反対運動、そして2010年からはじまった再度の原発誘致への反対運動。
「私たちは最初の2回のたたかいに勝利しました」とサムチョク核発電所反対闘争委員会のメンバーで市議でもあるイ・グァンウさんは胸をはる。「そして3回目についても、苦しい局面を乗り越えながらほとんど勝利しました。来月発表される第8次電力基本計画では、サムチョクは原発候補地からはずれるでしょう。それが最終的な勝利です」。

以下3度目の原発誘致への反対運動の概要を、イ・グァンウさんからの聴き取りおよび各種資料をもとにまとめる。

強引に原発誘致を進めた前市長

サムチョク市では、李明博(イ・ミョンバク)政権によるバックアップのもと、2010年からキム・デス前市長が強引に原発誘致を進めようとした。市議会とは「住民投票にかける」という約束をしたが、これは無視。

誘致賛成派は「空がみえないほど」のプラカードを設置し、誘致賛成の署名を集め、2011年3月9日に発表。なんと市の96.6%もの人たちが誘致に賛成しているとしたが、これは信ぴょう性に乏しいものであったという。そしてその2日後に福島第一原発事故が起こった。

サムチョク市の市民やカトリック関係者、教職員組合などが中心となり、「サムチョク核発電所反対闘争委員会」が結成された。キャンドル集会など、さまざまなアクションを展開。一貫して建設に反対。市長に対して、原発の是非を問う住民投票を要求し続けた。原発建設予定地となったサムチョク市クンドク面の住民たちも立ち上がり、「クンドク核発電反対闘争委員会」を組織。2012年1月には、地元の名門校のサムチョク女子高の同窓会も、原発建設反対を決議。運動に合流した。

市長リコール運動に失敗。が、2年後の市長選で圧勝

彼らは一度は韓水原による住民説明会の阻止に成功。さらに市長が住民投票要求を無視し続けると、2012年6月から市長のリコール運動に取り組むこととした。1,500人ものボランティアが参加し、リコールの住民投票に必要な署名は1か月という短期間で集めることができた。この勢いに乗って、勝つと思いきや、10月31日の投票日当日、自治体の末端職員やチンピラたちが投票所の前で投票にきた市民を威嚇。所定の投票率である34%を達成することができず、開票に至らなかった。こうして市長のリコールは失敗した。

しかし、これにもめげずに、彼らは2年後の市長選挙にかけた。水曜日にはミサ、キャンドル集会を継続。一人デモやスタンディング、人々に伝える運動に取り組んだ。そして2014年、「原発の賛否を問う住民投票の実施」を公約をかかげたキム・ヤンホ市長が圧勝。

原発は国家が決めるものなのか?

キム市長は公約通り、議会に住民投票を提案。8月末に住民投票議案が通過した。ところが、中央の意をうけた選挙管理委員会が「原発は国家事務だから、住民投票の対象ではない」と拒否。

ならば、住民がやるしかないと、住民投票管理委員会が組織された。2014年10月9日、有権者の68%が投票し、うち85%もの人たちが原発誘致に反対の意思表示を行った。

一方、市長は、住民投票を行おうとしたことが職権濫用にあたるとして起訴された。しかし、のちに無罪とされる。「投票による意見集約は住民意思の確認手段」とされたのだ。

普通の女性たちが立ち上がったわけ
「地域の未来の問題だと思っていましたが、国家とのたたかいでもありました」

この驚異的な運動の中で、何度も何度もつらい局面があった。リーダーたちの中にはいやがらせや脅迫によって、病気になってしまった人もいたという。

「涙がでるほどうれしかっこと」の一つが、地元の名門校のサムチョク女子高同窓会が、「原発反対に力を注ぎます」と決定し、いままで運動に縁のなかったきわめて普通の女性たちが運動に合流した。のちに「核アングリー・マム」と呼ばれ、脱原発派のキム・ヤンホ市長の誕生にも大きな力となる。

当時、この決定を行ったのが同窓会の第10期会長キム・スクチャさん。

「高校の同窓会で、よく原発反対という政治的な問題に踏み込めましたね」ときいてみた。

「私は、これを政治的な問題とは思わなかったんです。私たち自身の問題、地域の問題だと。じっとしていたら原発が入ってきてしまう。となりのウルチンでは原発が導入されても、地域はさびれるし、農産物も売れなくなった。地域の豊かな富がなくなってしまった。おまけに放射能の問題もある。地域のため、子どもたちのために、反対を決めました」とスクチャさん。

「ところが、反対運動をやってから知りました。これは国家との闘いなのだと」。

「“笑いながらやっていこう。しぶといやつが最後に勝つんだ”。つらくなるたびに、私たちはこのように励ましあいました」と、サムチョク核発電所反対闘争委員会の共同代表のキム・オクリンさん。「そしてこの言葉は本当のことでした」

「核アングリー・マム」たちは、笑顔が素敵な、世話好きのおばさまがただった。

(満田夏花)

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韓国ムン・ジェイン大統領のもとでの脱原発の道のり~新古里5・6号機の公論化プロセスで問われたものは?~

👉 報告会「脱原発する国、原発にしがみつく国~韓国、イギリス現地調査報告会(1月9日@表参道)」

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▲サムチョク女性髙の同窓会のみなさまとともに

「原発反対決起大会24周年」と書かれたバナー

▲原発予定地となっていたサムチョク市のクンドク面河川敷にかかげられた原発反対のバナー

サムチョク市クンドク面「原発白紙記念碑」の前で

▲原発白紙記念碑の前で、クンドク原発反対闘争委員会のジュ・ヘスクさんとともに。記念碑自体は、第一回目の原発誘致を退けたときのもの。ジュ・ヘスクさんは、クンドクの美しい自然を愛し、一貫して原発に反対してきた。

 

 

 

 

気候資金や拡大する損失や被害への対策で進展みられず(COP閉幕レポート2)

ボンで開催されフィジーが議長国を務めた国連気候変動枠組条約会合は、残念ながら期待された成果を出すことなく閉幕しました。

cropped-38181814401_69c43ccd05_oCOP23は、気候変動の影響を受けている島嶼国フィジーが議長国を務めるということで、気候変動の影響をすでに大きく受けている途上国や貧困層の人々への支援(「損失と被害」)や気候資金について、進展があることが期待されていました。

今年、巨大ハリケーンにより人道的危機に直面したバハマやキューバなどから会議冒頭、支援の強化を求める強い声が相次ぎましたが、この会議で損失と被害を議論することに反対する米国を中心に、先進国の反対によって今会議での大きな進展は見られず、リスク移転のための保険制度整備情報サイト立ち上げと来年春の専門家フォーラムの開催を決定するに留まりました。

2018年に合意される予定のパリ協定のルールブック交渉(パリ協定を実施するためのルールブック)については、成果の鍵とみられた来年に向けた交渉文書の要素書き出しで進展がみられ、今後の交渉の基礎となる最初の一連の文書が出されました。国別貢献(NDC)の定義や透明性枠組みでの報告の範囲、先進国途上国の差異化など根本的な論点について歩み寄りはなく、見出しと小見出しに全ての国の交渉上の立場が反映されています。

COP17以降の6年間の停滞の時期を経て、このCOP中に、国際(炭素)市場メカニズムについての交渉が予想以上のスピードで進み、次回4・5月に開催される補助機関会合までに交渉文書のたたき台が用意されることが見込まれています。この交渉はロシアや東欧圏に大量に蓄えられている京都議定書下の過去の排出量枠、CDMのオフセットルールの移植、熱帯雨林/REDD+(途上国の森林減少・劣化に由来する排出の削減)、国際民間空港機関(ICAO)のもとでの新しいグローバルオフセットスキームとの連携可能性など、かなり懸念の大きい要素が含まれています。

COP22と23の議長国であるモロッコとフィジーは、促進的対話(タラノア対話と改称)のデザインを作成。この促進的対話のデザインは最終日に承認され、2018年を通じ実施され、COP24での対話を経て2020年以降の各国の野心の引き上げを促進することが意図されています。しかし承認されたデザインでは、2020年以降のアクション、それも緩和のみに焦点がおかれ、途上国への資金支援や、公平性については含まれていません。

一方で途上国は初日に、タラノア対話とは別に2020年までの行動の検証を議題として提案していました。これは京都議定書第二約束期間に関するドーハ合意の批准、2020年までの先進国の排出目標含む野心の引き上げ(カンクン目標)、先進国による2020年までに年間1000億円の気候資金目標の進捗などを交渉内で検証していくことを提案したもので、決定文書に採択されました。背景には、先進国の過去のコミットメントや2020年以降のパリ協定下での責任に不信を持つ途上国の強い結束があり、この議論を受け、EUは来年末までに京都議定書の第二約束期間(ドーハ合意)を批准すると表明しています。

今回の会議では、農業に関する交渉でひとつ前向きな結果が出ました。農民が適応やレジリエンス(強靭性)を高めるための具体的な行動や支援事業について議論する場が設けられることが決まり、さらにローカルコミュニティと先住民族プラットフォーム、ジェンダーアクションについても市民社会含め一定の成果と見られています。

アメリカの交渉団は、あきらかに交渉を妨害する形で存在感を発揮していました。オーストラリアの支持のもと、とくに資金のスケールアップ、損失と被害についての交渉をブロックし、パリ会議前同様、パリルールブックの交渉のもとで歴史的責任をないがしろにし、事実上途上国への責任転嫁となる発言を繰り返し行っています。多くの先進国はアメリカの陰に隠れつつも先進国として交渉をブロックしていました。また、アメリカは化石燃料と原発を推進するサイドイベントを開催。市民団体やユースが非暴力で阻止する様子(歌を歌ってサイドイベントを妨害)がソーシャルメディアを通じて世界に流れました。

気候資金についても大きな進展は見られませんでした。パリ協定9条5項のもとでの先進国による気候資金に関する事前の情報提供に関しては、途上国が事前に気候変動対策を計画する上で重要な要素となってきます。現在京都議定書下にある適応基金の将来についても、解決を来年度に先送りを狙う先進国の思惑により2018年に交渉が持ち越され、パリ協定のもとに引き継がれることが京都議定書締約国会議(CMP)決定に盛り込まれましたが、パリ協定締約国会議(CMA)のもとでの決定がこれから必要になってきます。先進国、とくにEUは、国際炭素市場メカニズムを推進し、適応基金と引き換えに市場メカニズムの交渉を進展させるよう求めていると言われています(適応基金の原資がクリーン開発メカニズムの一部収益を基にしているため)。

次回、COP24は2018年12月にポーランドで開催され、来秋のIPCCによる1.5℃目標シナリオの特別報告を受けての2020年、2030年の野心引き上げ(つまりタラノア対話と2020年までのアクション検証)、パリルールブックの採択、そして気候資金が注目されます。気候資金に関する閣僚級対話および国連事務局による公式の隔年評価報告も2018年に行われます。損失と被害に関してはCOP25で報告がまとめられ、現状のサポートメカニズムが評価・見直しされる予定です。なお、COP25はブラジルが開催国として名乗りを上げましたが、ラテンアメリカ諸国のコンセンサスが得られるまで決定は持ち越しとなっています。

また、パリ協定のルールブック作りに関する追加会合が2018年10月に行われる可能性が高いものの、開催の最終的な有無は来年5月の補助機関会合で正式に決定されることになっています。

(小野寺・深草)

気候変動影響を受ける人々の声は国際社会に届いたか(COP閉幕レポート1)

11月6日から18日まで、ドイツ・ボンにて気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)が開催されました。

気候変動の影響を受けやすい島嶼国・フィジーが今回の議長国であったこともあり、FoE Japanは気候変動による損失と被害に対する支援がどれくらい議論されるかなどについて注目してきましたが、残念ながら気候変動による損失と被害についての交渉には、あまり大きな成果が出ませんでした。

FoEグループはこれまでも、先進国や一部の裕福な人々による気候変動への歴史的責任と、一方で多くの被害は貧しい人々や途上国に集中している不公正さを訴え、気候正義を求めてきました。またCOP期間中にもかかわらず、日本の国際協力銀行は住民から強い反対の声も上がっていたインドネシア・チレボン石炭火力発電所への貸付を実行。これについては、アジア諸国の市民社会からも大きな非難の声が上がり、ボンでは緊急アクションが行われました。

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また、FoE JapanはアジアのFoEグループなどと協力して、COP一週目にアジアの気候変動影響に関するレポートの発表や関連するイベントを行いました。

太平洋諸島では海面が上昇し、多くの人々が移住を迫られている。フラッキングを行う企業が干ばつの影響を受ける地域に入り込んでいる。ハリケーンは国全体を機能不全に陥らせ、そして気候変動移民を含む人々の自由な移動を阻止するための壁やフェンスが建てられている—

これらはFoEインターナショナルの「気候変動の影響を受ける人々」のワークショップで聞いた、話の一部です。

世界の人口の60%が集中するアジア太平洋地域は、気候変動の影響を最も影響を受けやすい人々の地域でもあり、ワークショップの初めには、FoEアジア太平洋による新たなレポートの発表も行いました。このレポートは、スリランカ、フィリピン、パプアニューギニアの3つの国のケーススタディを取り上げ、気候変動が引き起こす移住への懸念が高まる中、政府や政府機関がこの問題に早急に対応するよう訴える内容になっています。

ワークショップには、四人のスピーカーが登壇。

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左からステラ-マリア、マリナ、ヘマンサ(ファシリテーター)、カティア、ジョイ

FoEオーストラリア/ブリスベンの気候最前線グループ(Climate Frontlines Collective)のメンバーでパプアニューギニア出身のステラ-マリア・ロビンソンは、「ママの骨」と題した演劇のビデオの一部を上映。海面上昇が原因で母国を離れて新しい国へと移動する人々の現実を扱った演劇です。母国に根付いた文化や伝統、スピリチュアリティは移動のプロセスの中で失われていきます。

ロビンソンは、「オーストラリアは良い隣人ではない。彼らは移民の面倒を見ないし、自国の富の蓄積のためにしか行動しない。この状況を変えるために私たちは共に行動しなければならない。今、行動しなければならない。すぐに手遅れになり、地球という家がなくなるだろう。」と話を締めくくりました。

南アフリカのカルー地域のコイサン族の族長、ジョイ・ダーリングは、コミュニティーの「雨乞い人」。カルーは干ばつの土地という意味だそう。2017年6月、彼は部族を率いて、伝統的な雨の踊りのセレモニーに参加したましたが「雨は降らず、私たちは全ての家畜を失い、植物を植えることもできなくなった。これは、私がコミュニティーを破壊させてしまったことを意味する」と話しました。

コイサン族の干ばつで破壊されたエリアでは、現在、企業がフラッキングを行おうとしています。カルー環境正義運動にも参加しているダーリングは、「私たちは、フラッキングに反対し、私たちの大切な土地を破壊する活動にお金を与えないよう、世界銀行に求めている。お金はコミュニティーを分断し、人々の要求を満たすことはない。」と訴えます。

プエルトリコは、9月の2週間の間にイルマとマリアという2つのハリケーンに襲われ、深刻な状況が続いています。ハリケーン・イルマは電力供給を破壊し、ハリケーン・マリアは水インフラに影響を及ぼしました。「私たちのコミュニティーでは電気も水もなくなり、食料も不足してから60日間が経過した。」カティア・アヴィレス・ヴァスケスは、プエルトリコの小さなコミュニティーとともに25年間活動している彼女が話す姿は、多くの人の感情に訴えました。

ハリケーンによりプエルトリコのインフラ設備の多くが失われ、プエルトリコ政府は深刻な状況にある人々を支援せず、自分たちのために使っていると彼女は指摘します。16人しか死者が出ていないというのは政府のプロパガンダであると指摘し、「私たちの政府は実際には900以上の死体を燃やし、さらに100以上が死体安置所で燃やされるのを待っている。」と話しました。

マリナ・ソフィア・フレヴォトマスは、難民が壁に直面しており、食糧危機、戦争、海面上昇などの自国の過酷な現実から逃げるための自由な移動ができなくなっているという状況を指摘。

「壁を築いているのは、まさしくその移住の原因をつくっている人々である」彼女は、先進国が利益を求めて起こす行動こそが、移住の原因をつくっており、その不正義を訴えました。彼女は、「難民」はいつかは自国に帰るという希望をもって新しい場所に移動している一方で、気候変動移民は、精神面でも自らの場所を追い出され、もう自国には戻れない状況になります。多くの人々が、多くの人が想像できないような状況に置かれています。多くはヨーロッパに向かう途中で命を落とし、中にはヨーロッパとの境界に到達することすらできない人々もいます。この境界の警備には莫大な費用がかけられ、移民たちが到達した時には彼らは歓迎されない状態にあります。

「移民とは恐れるべき存在で、彼らの入国は止めなければいけないという恐れの物語を作り上げた。先進国にはこの不当な行為をやめるという責任がある」「壁は解決策ではない。気候正義は、壁がないという意味である。」

世界中で特に貧しい国や地域の人々が、気候変動の影響を受けています。国連気候変動交渉のもとでは、ワルシャワ国際メカニズムという気候変動の損失と被害を扱う会議の下に、「人々の移動」に関する特別委員会が設けられました。

しかしこのメカニズムには、十分な資源が与えられていません。気候変動による損害を認めてしまうと、気候危機をおこした過失と責任の追及につながる可能性があるために、汚染の原因をつくっている先進国が強い反対をしているからです。

これらの国々は、排出を迅速に削減したり、実際に被害を受けている人々を助けるために必要な資源を供給したりするなどの、歴史的な責任を負うための取り組みを、ほとんどしていないのが現状です。

気候変動の影響を受ける人々の人権、安全と尊厳は、保障され、尊重されなければなりません。
豊かな国々の政府は、一刻も早く排出を削減し、再生可能エネルギー中心で民主的なシステムに移行し、これまで気候変動を起こしてきた任をとらなくてはいけません。

ワークショップのレポートの詳細はこちら(英語)ワークショップのレポートの詳細はこちら(英語)