原発とガスを「グリーン投資」に!?欧州議会が承認 「グリーンウォッシュのツール」「プーチンへの贈り物」批判の声続々 

7月6日、グリーン投資を促進するための「EUタクソノミー」(注1)に原発と天然ガスを含めるという欧州委員会の提案が、欧州議会(注2)本会議で承認されました。

正確には、欧州議会の下の環境と経済の合同会議で、6月14日、欧州委員会の同提案に反対する決議が採択されたものの、本会議に付された同じ決議が、否決されたという形です。

「原発とガスをタクソノミーに入れる補完的委任法」に対する反対決議案に対して:
賛成:278、反対:328、棄権 : 33 

本会議が行われたストラスブールの会場の前では、環境活動家らが、原発とガスを含めることに反対し、「原発・ガスはグリーンではない」「プーチンに贈り物をするのをやめろ」などと書いたバナーを持って抗議アクションを繰り広げました。

Twitter上では、#NotMyTaxonomyというハッシュタグがトレンド入りし、この決定に対する憤りの声でみちあふれました。

「グリーンウォッシュ」

本会議での採決の結果を受け、欧州議会環境委員会の副委員長であるBas Eickhout氏は、「EUは有害なシグナルを投資家やEU以外の国々に送ることになる」と述べ、また、「エネルギー分野での環境投資の信頼性を低め、グリーンウォッシュすることになる」と批判しました。(ガーディアン紙

欧州気候基金CEOのLaurence Tubianas氏はツイッターで、「今日、政治と既得権益が科学に勝った。真剣な投資家、企業、消費者は、必要な環境基準を求めて他の場所を探すことになる」と発信しました。

Friends of the Earth Franceで金融と化石燃料のキャンペーナーを務めるLorette Philippot氏は、 「欧州委員会に続いて、欧州議会議員の多くは、科学者や市民社会、ウクライナ国民の声よりも、ガスや原子力産業の利益に耳を傾けることを選んだ。これらの2つの有害なエネルギーをグリーンラベルから除外することによって、グリーンウォッシングを拒否することも、金融関係者の責任である」とコメントしました。

グリーンピースEUの持続可能な金融活動家アリアドナ・ロドリゴ氏は、「ガスと核にグリーンというレッテルを貼り、プーチンの軍資金により多くの資金を注ぎ込む言語道断の決定である。しかし今、私たちはこれと法廷で戦うつもりだ」と述べています。

「プーチンへの贈り物」?

注目されるのは、「原発・ガスはグリーンではない」という本来の論調に加え、EUからロシアのガス・原子力産業に資金が流れることに抗議する論調が強くなった点です。

今年5月、ロシアのこれらの産業からの欧州議会へのロビイングについて、グリーンピース・フランスが調査レポートを発表(注3)。実際、EUはガスのみならず、ウランをかなりロシアから輸入していますし、ロシアの原子力産業は東欧に強い影響力を持っています。

7月5日には、「原発とガスをタクソノミーに含めることは、環境的にも間違っているだけでなく、ウラジミル・プーチンに対して何十億ユーロもプレゼントすることになる」という趣旨で、ル・モンド紙にNGOのリーダーたちの論説も掲載されました(グリーンピース・フランスやCANフランス、FoEフランスなどが連名)。

European green taxonomy: ‘Including gas and nuclear would benefit Russia to the tune of several billion euros per year’

同じ趣旨のAvaazの署名には、わずか5日間で30万筆を超える署名が集まりました。

今回の欧州議会の採決により、原発・ガスは、一定の条件は付されますが、「環境的に持続可能」とされ、今後、EUの環境や持続可能性を目的とした投資メニューに含まれることになります。

一方で、オーストリアやルクセンブルクは、この法令が発効したあと、提訴する構えを見せています。

タクソノミーに原発とガスを含めることに抗議するドイツとフランスの市民たち(c)BUND(FoEドイツ)

「信頼性を損なう」

今回の件、NGOのみならず、たとえば以下のように、投資家たちからも明確な批判の声があげられていました。

「タクソノミーは政府が自分たちの好きな経済活動に資金を誘導したり、グリーンウオッシュ(見せかけだけの環境対応)したりするための道具ではない」(オランダ年金連合会)(注4)

「ガスと原発を含めることは持続可能な事業への投資を促進するタクソノミーの信頼性と有用性に悪影響を与えるだろう」(EUROSIF(欧州社会的責任投資フォーラム))(注5)

これらの投資家の声をみるにつけ、本来グリーンウォッシュを防止するために創設されたEUタクソノミーの制度そのものが、信頼性を失い、機能不全に陥る結果につながってしまう可能性は大いにあるでしょう。

原子力ロビーの影響力

もう一つ特筆したいのは、原子力産業の影響力です。

以前より、今回の欧州委の唐突な提案に関して、「原子力産業からのロビー」の影響を指摘する人は多かったですが、それは、原子力とガスがあとから突っ込まれた一連の経緯からもうかがえます。とりわけ、当初、タクソノミーの正式な諮問機関である技術専門家グループ(TEG)が、原発をタクソノミーに含めないことを勧告していたのにもかかわらず、欧州委がわざわざ別の機関(JRC)に諮問したのはとても恣意的に思えます。

<経緯>

  • もともと技術専門家グループ(TEG)は、原発は「著しく害を与えない(DNSH)」基準(注4)に適合しないとし、タクソノミーに含めないことを欧州委員会に勧告していた
  • 2020年7月 欧州委員会がJoint Research Center(JRC)に原子力のDNSH基準についての評価を委託、JRCは2021年4月、原発はDNSHに適合するという評価報告書を提出
  • 2021年に発効したEUタクソノミー(委員会委任規則2021/2139)には原発・ガスは含まれず。
  • 2021年末に欧州委員会がEUタクソノミーに原発・ガスを含めることがリーク記事により明らかに
  • 2022年1月1日、欧州委員会が原発・ガスの技術的基準を含めた補完的委員会委任規則案を発表
  • 2022年1月21日「持続可能な金融に関するプラットフォーム」が「補足委任法への回答」を公表。「原発を持続可能な経済活動として認知することはできない」とした。同プラットフォームは欧州委員会の正式な諮問機関。
  • 2022年2月2日、欧州委員会が正式に原発・ガスの技術的基準を含めた補完的委員会委任規則を採択
  • 2022年6月14日、欧州議会の環境委員会と経済金融委員会の合同委員会にて、欧州委員会提案に対する反対決議を採択
  • 2022年7月6日、欧州議会の本会議で上記反対決議は否決

FoE Japanは7月1日、オンラインセミナー「オンラインセミナー:原発はグリーンか? 欧州のエネルギー事情とEUタクソノミーのゆくえ」を開催しました。

セミナーで講演したFoEドイツのヤン・ヴァローデさんは、「EUは、グリーンウォッシングを防ぐ代わりに、過去最大のグリーンウォッシングの道具を作ろうとしている」と痛烈に批判。

ヴァローデさんによれば、EUタクソノミーの考えられる影響として、以下があげられるとのことです。

  • 「持続可能な金融商品」と銘打つすべての投資活動が、タクソノミーによって定義される。
  • 大企業は、自社の活動がタクソノミーにどの程度適合しているかを報告する必要がある。
  • EU以外の国も追従する可能性がある。
  • EUの公的資金が原発に流れこむ可能性がある
  • 原子力事業の実現可能性が高まり、真に持続可能な経済活動への投資が減る。

セミナーの映像および資料は以下からみることができます。

https://foejapan.org/issue/20220621/8455/

持続可能性投資の分野で国際的な世論を引っ張ってきたEUだけに、今回の決定の影響力はやはり大きいと言わざるをえません。

とはいうものの、EU内外の反対の声が可視化され、投資家からも強い批判の声があがったことも事実です。FoE Japanとして、継続的に原発やガスの問題を訴えるとともに、今後の動きを注視していきたいと思います。

(満田夏花)

注1)EUタクソノミーとは、「環境的に持続可能」な経済活動への投資を促進するため、以下の6つの環境分野に貢献する活動を分類するもの。

  • 気候変動の緩和
  • 気候変動への適応
  • 水と海洋資源の持続可能な利用と保全
  • 循環型経済への移行
  • 環境汚染の防止と抑制
  • 生物多様性と生態系の保全と回復
  • いずれの目標に対しても「著しい害を及ぼさない(Do No Significant Harm、DNSH)」ことなどの条件がある。

注2)欧州議会とは、直接選挙で選出される議員から構成されるEUの組織。EU理事会とともに立法府を形成している。一方で、欧州委員会とはEUの政策執行機関。

注3)Greenpeace EU, ‘Russian doll’ gas and nuclear lobbying threatens EU energy independence – new research

注4)日経新聞2022年2月2日「原発・天然ガスはグリーンか EU「変心」に投資家反発

注5)EURACTIV, “Investors warn ‘green’ label for gas undermines EU taxonomy” February 4, 2022

注6)タクソノミーの対象となる当該経済活動が、気候変動などの環境目標に合致するのみならず、他の環境目標(たとえば環境汚染の防止と抑制など)に対しても「著しい害を及ぼさない(Do No Significant Harm、DNSH)」ことが条件となっている。

処理汚染水の海洋放出をめぐり、規制庁、東電、経産省と会合

6月2日、東電の福島第一原発の処理汚染水を海洋放出するための実施計画変更を認可する審査書案をめぐり、規制庁、東電、経産省と会合を持ちました。審査書案は6月17日までパブリックコメントにかけられています。

事前に提出した質問への3者の回答については、こちらをご覧ください。
https://foejapan.org/wpcms/wp-content/uploads/220602_answers.pdf

会合では、いろいろと驚きの事実が明らかになりました。

以下、ポイントをまとめました。

1.放出される放射性物質の総量は不明。

まあ、これは以前からたびたび問題提起していたことではありますが、やはり放出される放射性物質の総量については不明のままです。東電は40以上あるタンク群のうち3タンク群についてのみ、64核種(ALPS除去対象の62核種+トリチウム+炭素14)について測定を行い、濃度を公表しています。
残りについては、東電は準備がととのったものから、放出前に測定し、順次公表するとしています。ちなみに、現在、タンクの水の7割近くで、トリチウム以外の放射性物質について、告示濃度比総和が1を超えています(つまり基準を満たしていません。下図参照)。東電は2次処理を行ってから放出するとしています。…つまり、準備ができたタンクから、二次処理→測定→放出…ということになるので、全量の放出が終了する30年後(?)にしか、放射性物質の放出総量はわからないことになります。

2.「64核種以外の放射性物質が残留していないこと」については東電がこれから検証し、規制庁があらためて審査する。

東電は、64核種(ALPSの除去対象62核種+トリチウム+炭素14)以外が残留していないことについては、今後、検証するとしています。またその検証結果を踏まえて放出前の測定対象核種を決めるとしています。規制庁は、東電の今後の検証を待ち、それを改めて審査すると述べていました。
ただ、このポイントは審査がはじまった段階で規制庁側が提起した課題だったのですが…。

3.東電はかきまぜずに測定。

東電の放射線影響評価で、示されている3タンク群およびタンクごとの濃度を公開している主要7核種の測定の前には、東電は攪拌を行っていませんでした。
これではタンクの底部にたまっているかもしれない物質を捕捉しそこねている可能性があります。
これらのデータは、ALPS処理水中の放射性核種に関する検討や、放射線影響評価の前提として使われています。東電はタンクを攪拌した上での測定を踏まえた上で、あらためて放射線影響評価を行い、規制委員会は審査をやりなおすべきではないでしょうか。
なお、東電は放出前に攪拌を行って測定を行うとしており、そのための設備も設置予定です。つまり正確な測定には「攪拌」が必要だと認識しているわけです。

4.ウランの取扱い

東電は、核兵器不拡散条約における計量管理の対象核物質であるウラン類を測定対象としていません。
東電は、ALPS除去対象核種を決める時、「原子炉停止 365 日後の濃度が告示濃度限度に対して 1/100 を超えたもの」を対象としたと説明しています。そしてALPS対象核種を測定対象としているわけです(場合によってはもっと絞り込まれるかもしれません)。
原子力市民委員会の滝谷紘一さん(元原子力安全委員会事務局技術参与)は「ウラン類は、溶融炉心が原子炉圧力容器の破損箇所から飛散流出する際に一部が微粒子になって固化し、冷却水中に移行、ALPSのフィルターを通過した微粒子が貯蔵タンクの底部に沈殿していると考えられる。海洋放出に際して貯蔵タンクからの水流の攪拌作用により微粒子が再浮遊して流出するおそれがある」と指摘しています。

5.放出前の測定対象核種は決まっていない

前述の通り、東電は「測定評価対象核種については、国内における廃止措置や埋設施設に関する知見を踏まえ、汚染水中に有意に存在するか改めて検証」するとしています。こんな重要なことを先送りにして審査を通してしまうとは驚きです。

6.放出後の海域モニタリングはこれから検討する

質問は、「海域モニタリングにより異常値が検出された場合は、緊急遮断弁の自動作動又は運転員の操作により、ALPS処理水の海洋放出を停止する、としているが、トリチウムについては週1回の測定ということになっており、異常値が検出されたとしても、一週間遅れという事態にもなりかねない」とし、常時モニタリングとするべきではないかというものでした。(原子力市民委員会の大沼淳一さんの問題提起です)
これに対し、「いや、それは放出前の海域モニタリングの話。放出後はこれから検討する」ということでした。
しかも、規制庁は、「海域モニタリング」は規制委員会の審査の対象外とも述べていました。海域モニタリングは、総合モニタリング計画の一環で政府の関係省庁や東電も入ったモニタリング調整会議というところでとりまとめを行っている、とのことでした。

7.東電は海洋放出費用の総額を示さなかった

「海洋放出する場合、数十年にわたる放出期間全体の費用はどのように評価しているのか」という質問に対して、東電は「将来も含めて処理水の処分にいくらかかるかを現時点で見通すことは難しい」と回答。
そんな馬鹿な!いくつか仮定をおいて、概算でも見積もりを示すことは、東電と国の責任だと思うのですが…。
経済産業省のもとに設置された「トリチウム水タスクフォース」での議論では、海洋放出は91ヶ月、34億円、とされていました。現在、報道によれば、本体工事費約350億円
2021~24年度の4か年で計約430億円に上る見通し」とされています。
改めて、他の代替案との比較評価を行うべきなのではないか。」という問いに対して、東電は国が丁寧なプロセスを踏んですでに決定している、国内で放出実績がある点やモニタリング等を確実かつ安定的に実施可能な点を評価して海洋放出が選ばれた、と回答しています。

しかし、原子力市民委員会が提案している、石油備蓄に使われている大型タンクでの長期安定保管やモルタル固化処分も実績がある点では同じではないでしょうか。また、国は「幅広い関係者のご意見等を丁寧に伺ってきた」わけではなく、国が選んだ「関係者」の意見を形式的にきく場をもうけただけです。国は海洋放出決定以降、公開の場の公聴会は開催していません。

大切なことがいろいろと先送りになっているのにもかかわらず、この審査書案も通されてしまうのでしょうか。

FoE Japanでは、審査書案に関するパブコメ・セミナーを開催中です。ぜひご参加ください。

第1回:6/6 19:00-20:00 (終了しました)
コメント:宇野朗子さん(福島から京都へ避難)
お申込み>https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZAuc-mhrjwsGtWbyeb1oiHH5KdSiAMcZ9I7

第2回:6/11 11:00-12:00
コメント:阪上武さん(原子力規制を監視する市民の会)
お申込み>https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZ0kfuGvrTwpHdK-Mnw5c6Yc86xVi52xjd_N

第3回:6/13 19:00-20:00
コメント:濱岡 豊さん(慶応義塾大学商学部教授)
お申込み>https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZAocumupjMiGdBoTMlDzdFaR6tIsH0EL0Z9


【2分でわかる!汚染水動画シリーズ】

1 汚染水って何? 何が含まれているの?

2トリチウムって何?

3 代替案は?

4 人々の声は?

置き去りとなったALPS処理汚染水長期陸上保管の選択肢

東京電力福島第一原発で増え続けるALPS処理汚染水について、経産省のもとに設置された「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」(ALPS小委員会)は、昨年12月23日、「海洋放出」、「水蒸気放出」、そしてその組み合わせという3つの案に絞り込んだ「とりまとめ案」を発表した。しかし、これらはいずれも放射性物質の環境中の拡散を許すものとなっている。大型タンク貯留案やモルタル固化案などの陸上長期保管の代替案は無視されてしまった。

ALPS処理汚染水は、2019年10月段階で約116万m3、タンク数は960基にのぼる。トリチウムの総量でいえば推定856兆ベクレル(注1)。タンクにためられている水のうち約8割で、トリチウム以外の62の放射線核種の告示比総和が1を超えている(告示比総和とは各核種濃度の告示濃度限度に対する割合を足し合わせたもの。排出基準として1未満でなければならない)。ヨウ素129やストロンチウム90などだ。東電は海洋放出する場合は二次処理を行い、基準以下にするとしている。

汚染水に関しては、更田原子力規制委員会委員長が「希釈して海洋放出が現実的な唯一の選択肢」と繰り返し発言。原田前環境大臣も記者会見で「海洋放出しかない」と発言し、大きく報道された。しかし、十分現実的な陸上保管案が提案されているのにもかかわらず、それについてはほとんど検討されていないし、報道もされていない。

実質的な議論がなされなかった大型タンク保管案

陸上保管案については、大型プラントの技術者も参加する民間のシンクタンク「原子力市民委員会」の技術部会が、「大型タンク貯留案」、「モルタル固化案」を提案し、経済産業省に提出している(注2)。

大型タンク貯留案については、ドーム型屋根、水封ベント付きの10万m3の大型タンクを建設する案だ。建設場所としては、7・8号機予定地、土捨場、敷地後背地等から、地元の了解を得て選択することを提案。800m×800mの敷地に20基のタンクを建設し、既存タンク敷地も順次大型に置き換えることで、今後、新たに発生する汚染水約48年分の貯留が可能になる。

2018年8月、ALPS小委員会事務局が実施した公聴会では、漁業関係者も含めた多くの参加者が海洋放出に反対し、「陸上長期保管を行うべき」という意見が表明された。これを受けて山本 一良委員長は、「一つのオプションとして検討する」と約束。

しかし、陸上保管がようやく俎上に上がったのは、一年近くたった2019年8月9日の第13回委員会でのことだった。第13回の会合で東電が大型タンク貯留に関して、「検討したが、デメリットが大きい」という趣旨の説明を行ったのみだ。これに対する質疑や議論は行われていない。

東電がデメリットとして挙げたのは、「敷地利用効率は標準タンクと大差ない」「雨水混入の可能性がある」「破損した場合の漏えい量大」といった点であった。大型タンクは、石油備蓄などに使われており、多くの実績をもつことは周知の事実だ。また、ドーム型を採用すれば、 雨水混入の心配はない。さらに、原子力市民委員会による大型タンクの提案には、防液堤の設置も含まれている。ALPS小委員会は、東電の一方的な説明のみを受け入れるべきではない。

「モルタル固化案」はまったく無視

原子力市民委員会が提案する「モルタル固化案」は、アメリカのサバンナリバー核施設の汚染水処分でも用いられた手法で、汚染水をセメントと砂でモルタル化し、半地下の状態で保管するというもの。

「利点としては、固化することにより、放射性物質の海洋流出リスクを遮断できることです。ただし、セメントや砂を混ぜるため、容積効率は約4分の1となります。それが欠点といえるでしょう。それでも800m×800mの敷地があれば、今後、約18年分の汚染水をモルタル化して保管できます」。同案のとりまとめ作業を行った原子力市民委員会の川井康郎氏(元プラント技術者)はこう説明する。

事務局は、「実績がない」として片付けようとしているが、サバンナリバー核施設での実績をもちだすまでもなく、原発の運転時に発生する低レベル廃棄物についても、その多くがモルタル固化され、トレンチあるいはビット処理を行っている。きわめてシンプルな手法であり、現実的だ。「実績がない」として片付けることは理屈にあわない。

敷地は本当に足りないのか

敷地をめぐる議論も、中途半端なままだ。

東電が示した敷地利用計画は、使用済核燃料や燃料デブリの一時保管施設、資機材保管に加え、モックアップ施設、研究施設など、本当に敷地内に必要なのかよくわからないものも含まれている(注3)。さらに、使用済み核燃料取り出しの計画はつい最近最大5年程度先送りすることが発表されたばかり。デブリの取り出しについても、処分方法も決まっていない。そもそもデブリの取り出し自体を抜本的に見直すべきではないか。

委員からは、「福島第一原発の敷地の利用状況をみると、現在あるタンク容量と同程度のタンクを土捨て場となっている敷地の北側に設置できるのではないか」「敷地が足りないのであれば、福島第一原発の敷地を拡張すればよいのではないか」などといった意見がだされた。

敷地の北側の土捨て場にもし大型タンクを設置することができれば、今後、約48年分の水をためることができると試算されている。

委員から再三にわたり、「土捨て場の土を外に運びだすことができないのか」という質問がなされたが、原子力規制庁は、「外に出す基準について検討が必要」という趣旨のあいまいな回答にとどまっている。

土捨て場にためられている土について、東電は「数Bq/kg~数千Bq/kg」と説明しており(注4)、これが正しければ敷地から動かせないレベルの土ではない。

敷地拡大の可能性については、事務局は「福島第一原発の外側である中間貯蔵施設予定地は、地元への説明を行い、福島復興のために受け入れていただいており、他の用途で使用することは難しい」としている(注5)。もちろん、地元への説明・理解は不可欠であるが、その努力をまったくせずに、「敷地拡大は困難」という結論を出すことは時期尚早だろう。

問題が多い小委員会「取りまとめ案」

 昨年12月に発表されたALPS小委員会の「取りまとめ案」は小委員会の議論を反映したものではなく、事務局や東電の誘導により「海洋放出」、「水蒸気放出」、そしてその組み合わせという結論を導き出したように思える。

 前述の大型タンクをめぐっては、東電の説明をそのままなぞるだけの文面となっている。

土捨て場の土壌の運びだしに関しては、「敷地内土壌が汚染されている実態が明らかになっていないこと、敷地内の土壌の搬出先、保管方法等についての具体化がなされていないこと、敷地内土壌の最終的な処分方法が決まっていないことから、敷地外へ土壌を持ち出すことは困難であるとの結論に至った」など、小委員会で議論されていないことも含めて、決めつけている(注5)。

 にもかかわらず、小委員会の委員が明確な異論を示さない限り、この事務局主導の「取りまとめ案」が委員会の意思として固まってしまうだろう。

 ALPS小委員会での議論はそろそろ大詰めだ。近日中に小委員会が開催され、「取りまとめ」が確定するだろう。そして、地元の理解を得たことにする何らかのプロセスがはじまると思われる。

 しかし、地元の漁業者は「放出ありき」の議論に、早くも反発を強めている。

 ALPS小委員会は、陸上保管案を真剣に検討し直し、地元も含めた幅広い市民の意見をきくべきだろう。

注1) 2019年11⽉18⽇東電発表資料
注2)原子力市民委員会「ALPS 処理水取扱いへの見解」2019年10月3日
注3) 第14回 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 資料3
注4) 第15回 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会における東電発言
注5)第16回 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 資料4

「オリンピック、どう思う?」 避難者の声をききました。~優先すべきことは何?

東京オリンピックまであと1年となりました。「復興五輪」とも呼ばれていますが、原発事故の避難者の方々はどのように感じているのでしょうか? これについて、海外のメディアから問い合わせがあり、福島から東京に避難している方々の「声」を集めました。いろいろ考えさせられる内容であったため、ご本人たちの了解を得られたものについて、FoE Japanのブログでも紹介させていただきます。
避難者の方からすると、「もっと優先すべきことがあるのではないか」というご意見が多かったようです。福島県在住の方、近隣の方、避難された方のご意見を今後集めていきたいと思います。
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オリンピックについては私個人としては実は複雑です(^_^;)
オリンピック自体にはなんの偏見も無いのですが東京に誘致する際の安倍総理の発言やオリンピック開催が決まってから避難している事自体が変!って感じになり地元へ帰れるのに帰らない!って目で見られるように持って行かれた感が半端ない気がしました。
避難者を切り捨て嘘で塗り固めたオリンピックには正直怒りさえ覚えます。復興オリンピックみたいなイメージですが全くその復興のふの字もない空っぽのオリンピックにしか見えていません。
無理矢理住宅を追い出して全世界に日本の再生をアピールするよりも避難者や弱者にも優しいオリンピックであって欲しかったかな
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わたしの人生においてオリンピックには、そもそも興味がありませんでした。 応援したい人はいつも身近な存在の人です。
一時の為に莫大な予算を掛けて、会場や宿泊施設を作り終わったら破壊するというのは無駄でしかないと思います。
そんなことをするならば、福島の子供達の為に国が保養施設を作って、クラス単位で毎年決まった日数を過ごすようにして欲しいです。
家族でいつでも使える保養施設を作って欲しいと思います。
原発は国策で作られたのですから、安全神話を信じてそれを容認していた私達にも問題はあったと思いますが、個人では経済的にも時間的にも精神的にも負担がありすぎるので、国の援助がほしいです。
民間でもやっていますが、それは抽選であり行きたくても行けない人がたくさんいると思います。
そして年々保養をやってくれている団体が減ってきていると聞いています。
福島はアンダーコントロールと総理大臣がいいましたが、まだ福島は汚染されていますし、福島第一原発は事故当時のままに何も解決してないでしょう。今も放射能を撒き散らしているでしょう。汚染マップにある通り放射能汚染は福島だけにとどまってないでしょう。
(それでもできるだけ遠くホットスポットを避けて今よりも汚染されてない場所へ大切な人と離れることなく、多くの人が避難してほしいと願っています。)
国に放射能汚染を認めてほしいです。 今も危ないのだと。 みんな気をつけて生活してほしいと。 絶えず真実を公表して国も出来ることをすると。
そして、避難したい人には避難するためのバックアップをするシステムを作ってほしいです。
できたら、コミニュティを壊すことなく地区ごとに避難できたらいいです。 新しい町をどこかに作ってほしいです。
過疎化が進んだ地域はいたるところにあるのですから、不可能な事ではないと思います。
たった数日の熱狂のためより、たくさんの人が安心して幸せに暮らせるような、そういうことに税金を使ってほしいと思います。
しかし、もうオリンピックの予算はつけられて、箱物も作られてもう完成したのでしょうか。 オリンピックはどうして既存の施設を使わないのでしょうか?
あるものを使えばいいだけではないですか? 日本は格差が広がり、また消費税の増税が決まっており、どんどん生きづらくなっていると思います。
弱者を作らない政策を、穏やかな日々を。 そう。ただ一時期の熱狂より、穏やかな日々を望んでいます。 子どもを社会全体が守るように。
子どもが世の中を冷めた目で見るようなことがないように。 子どもがこの世はいいところだと思い、未来を信じられるような世の中になってほしいです。
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東京オリンピックの時は、まだ、3歳なので、東京オリンピックが、決まりますようにと、お祈りして、決まった時の感動🥺一人夜中に、拍手👏良かった!
でも、安倍晋三さんの原発は、コントロールされている発言は、無責任な言動!
それでも、オリンピックに向けて多くの人が、頑張ってあと一年になるのは、素晴らしいなぁと若い選挙を応援したいです📣。
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日本全国的には勇気付けられると思うけど、新しく建てている国立競技場の姿を見ると、未だに仮設住宅暮らしの人とか自宅がないも同然の人にすべきことの方が重要性と早急性は高いんじゃないかな、とは思ってます。

オリンピック成功のため、都合の悪い避難者は排除されたと思っている、勇気付けられる事など一つもない。自主避難者現状を世界に知って欲しいし私達への仕打ちを非難して欲しい。
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選挙応援のスピーチで、福島県にまで足を伸ばした安倍総理が言った。「福島県の復興がない限り、日本の明日はありません。」 本当か?
私はこう思います。その「復興」をかかげる陰に、どれだけの犠牲者が出たことか、悲惨な毎日を今も送っていることか、真実をよく見てほしい。全体主義のために、母子家庭の暮らしや社会的弱者を踏みつけながら、オリンピックに沸く国に、本当の復興はまだ訪れません。
——

「日印原子力協定」ここが問題!

現在、日印原子力協定批准に関する審議が国会で行われています。
問題点を整理しました。見やすいパワーポイントでのまとめはこちら→日印原子力協定の問題点

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<現在の状況>
2016年11月に日印両政府が日印原子力協定に署名
2017年4月より国会にて批准可否の審議中

<論点>
二国間原子力協定は、「核物質,原子炉等の主要な原子力関連資機材及び技術を移転するに当たり,移転先の国からこれらの平和的利用等に関する法的な保証を取り付けるために締結するもの」とされています(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/atom/topics/jyoyaku.html)。つまり原発を輸出する際、日本には輸出国として、輸出した資機材が相手国によって軍事転用をされないようにする責任があると言えます。
さらに、現在の制度では、原発輸出にの際には「原子力施設主要資機材の輸出等に係る安全配慮等確認」を内閣府が実施することになっています(http://wwwa.cao.go.jp/oaep/)。つまり、相手国側が原発を運用する際、適切に安全配慮を行なっているかどうかを、確認する責任があるのです。

何世代にも及び核のゴミを残し、一度事故が起これば取り返しがつかない原発を利用することは、そもそも倫理的にも社会的にも問題です。それでなくても、現在議論されている日印協定及びそれを取り巻く状況は「インドが原発運用に関し安全に配慮し、かつ軍事転用しないことを保証する」ものではありません。簡単に解説していきます。

問題点その1:軍事転用を防げない
そもそも、インドは核兵器開発を行っており、核不拡散条約(NPT)にも加盟をしていません。日本はこれまで、中国を除き(現在は加盟国)、核不拡散条約に加盟していない国との原発協定を結んだことはありませんでした。核廃絶を国是とする日本が、事実上核兵器国のインドと原子力協定を結ぶことには被爆地からも強い反対の声がありました。
また、インドはもともとカナダの原子力協力より得た、技術や核物質を使って核開発を行ったという経緯があり、そこから原子力技術の輸出側は、軍事転用を防ぐためにの紳士協定を取り決め(原子力供給国グループ、NSG)、NPTに加盟していない国との協力は原則行わないというルールをもっていました。(この背景については→http://www.foejapan.org/energy/export/pdf/India_Nuclear_FS_Short_Revised.pdf

協定を結ぶ上で大きな論点となったのは「インドが核実験を行った場合、協定を停止する」ことを条文に盛り込むかどうか、そして再処理を認めるかどうかでした。後者の再処理については認めてしまいました。そして、そもそも、(核実験を行ったときに行動を起こすのではすでに遅いのですが…)現在議論されている原子力協定の14条(http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000202918.pdf)にはこう書いてあります。

14条「…協定の下での協力の停止をもたらし得る状況が、安全保障上の環境の変化についての一方の締約国政府の重大な懸念 から、又は国家安全保障に影響を及ぼすおそれのある他の国による同様の行為への対応として、生じたものであるか否かについて考慮を払うことを合意する。」

協定には「核実験したら停止」とは明確に書いていないばかりか、実験の理由によっては停止しないような含みさへ持っているのです。たとえば、インドとパキスタンは軍拡競争を行っており、二国間関係も良好ではありません。パキスタンが核実験を行った場合、インドがこれは重大な安全保障条の環境変化だと主張することは大いに考えられるのではないでしょうか。

さらに、協定の本文とは別の付属文書である「公文」
(i) 2008年9月5日のインド外務大臣の声明(「民生用原子力イニシアティブに関するプラナーブ・ムガジーインド外務大臣の声名」)が基礎
(ii) この基礎になんらかの変更があった場合停止手続き可能
(iii)この声名からの深刻な逸脱がみられる場合、再処理停止

としています。このiにある、インド外務大臣による声明には、核実験のモラトリアムだけでなく核軍備競争を含むいかなる軍備競争にも参加しないこと、核の先制不使用、なども含まれていますが、日本政府は「インドが核実験を行った場合には協定を終了する」と説明しており、非常に曖昧で不安定な協定であると言わざるをえません。

なお、いままでトルコ、ヨルダン、ベトナムなどとの原子力協定においては、日本が協力した施設等からの核廃棄物の再処理は、基本的には認めておらず、両国の合意が必要としており、トルコの原子力協定をめぐる国会での答弁では、日本は同意しないとしていました。これは再処理によって、軍事転用可能なプルトニウムが取り出されることによるものです。

しかしインドとの原子力協定においては、再処理を認めてしまっています。

問題点その2:インドの原子力安全体制は不十分 日本の安全確認の仕組み形式的
日本は、福島の原発事故を防げませんでした。インドはどうでしょうか。
インドでは現在20基ほどの原発が稼働していますが、1998~2010年の間に少なくとも年間21回から54回に及ぶ事故件数(Ramana 194)があると報告されています。

また、日本の原発事故の反省でも大きな焦点だった、原子力を規制する組織の独立性についてですが、インドの原子力規制委員会(AERB)は原子力省から独立していないと指摘されています。IAEAのレビューでも、AERBの独立性が問題視され、改善が促されています。

さらに、日本が原発を輸出する際に、3・11前から原子力安全保安院が「安全確認」を行っていました。3・11以降、原子力安全保安院がなくなりましたが、原子力規制委員会はこの業務を引き継ぐことを断り、結果的に内閣府に「「原子力施設主要資機材の輸出等に係る公的信用付与に伴う安全配 慮等確認に関する検討会議」が設けられました。
新たに設けられた検討会議は、以下の点を確認するとしています。(>要綱

1 相手国・地域が安全規制を適切に行える体制等を整備していること
2 国際取り決め等を受け入れ、遵守して いること
3 輸出する機器等の製造者が、品質確保や保守補修および関連研修サービスを適切に行っていくこと

しかしこの調査は、イエス・ノー方式で質問票を埋めるもので、主体的に安全性を確認するものになっておらず、質問票の内容も原子力安全条約やIAEAの総合規制評価サービスの受け入れなどをきくのみで、極めて表面的なものです。また核不拡散条約(NPT)や包括的核実験禁止条約(CTBT)など、核不拡散を担保するような条約が質問票の項目にはいっていません。
また、事業ごとの立地や事業特性などを確認するようなものにはなっていません。公開は、事後的に「議事要旨」のみで、透明性にも問題があります。さらに、インフラシステム輸出戦略を所管する、つまり原発を推進する主体である内閣府を中心とする体制では中立性は担保されません。

ちなみに、この確認内容は、3・11前に原子力安全保安院が行っていた内容とほぼ同等ですが、一定の専門性を有していた原子力安全保安院ではなく、内閣府が行うこと、15億円以上の事業は対象外にすることなど、実質は後退しています。

 

それ以外の重要な論点
FoE Japanでは2015年にインドを訪問し環境活動家や原発に反対する地域住民、ジャーナリストらと意見交換を行いました。インドでは情報公開も進んでおらず、原子力技術が核兵器技術と密接に関わっていることから、情報公開を要求してもほとんど情報が得られないそうです。

原発が立地する各地では、市民が命がけの反対運動を展開しています。私たちがあった人々も日本にはインドへの原発輸出をして欲しくないと話していました。

また、原子力などの大型インフラを輸出する際には、公的資金の動員も予想されます。国際協力銀行(JBIC)および日本貿易保険(NEXI)は現在、原発輸出にかかる指針を策定している最中ですが、その指針の内容は情報開示のみに限定され、事業における安全配慮確認については前述のように内閣府の確認は「ざる」であるのにもかかわらず、政府まかせになりそうです。

私たちの税金が、こういった持続可能でなく地元の人が反対しているようなプロジェクトに使われるのは問題ですし、なにより福島事故が収束していない中、日本が原発輸出を進めることは非倫理的であると言わざるをえません。

私たちは強くこの協定に反対していきます。

ジャイタプール

(ジャイタプールの女性らによる原発反対集会)

 

ベトナムで原発に関し国会議員やNGOらと意見交換を行い、福島原発事故の被害について訴えました

10月4日から7日まで、原発に関する国際ワークショップに参加するため、ベトナムに行って来ました。現地のNGOおよび財団が主催しました。

1日目のワークショップでは、ベトナムの国会議員や専門家があつまる審議会において、日本、ドイツ、南アフリカから参加した三人のパネリストがそれぞれのテーマで原発に関する発表をしました。ドイツの元SPD(ドイツ社会民主党)議員で、ゴアレーベン出身のピータークラウス・ダダ氏は、ドイツが脱原発を達成した経緯など報告。また、原発における数多くの事故や廃棄物の処理で、原発の費用が莫大にふくれあがっているなど指摘がありました。

また原子力発電所を有する南アフリカからの参加として、研究者でNGO代表、デイビッド・フィグさんが原発のライフサイクルコストについて説明。現在、南アフリカは原発の拡大を政策として掲げていますが、新たに建設する原発の調達に関して、政府は決定を先延ばしにしている事をあげ、原子力政策は様々な理由遅れたり、そのために費用がかさんだりすることも指摘。さらに南アフリカでは、放射性廃棄物の投棄サイトの近くに沢山人が住んでいるという問題や、南アフリカは経済成長しているがエネルギー需要が減っているなどの話がありました。また、会場からあがった「原発が世の中を豊かにするために電気を供給できるのではないか」との質問に対し、「原発があっても南アフリカの貧困の問題は解決していないし、むしろ多くの負の影響を与えている」と回答しました。

FoEの満田からは、福島の事故による被害の大きさについて発表。広範囲にわたる放射能汚染の状況、山菜やきのこ、魚を分かち合う喜びや、それも含めたふるさとが失われたこと、農林水産業が大きな打撃をうけたこと、事故がまだ収束していないこと、除染や賠償費用がふくれあがり、現在の納税者や未来の世代がになわされていること、一度事故がおきれば取り返しがつかないこと、周辺の環境や社会だけでなく、国として大きな損失が免れないということなどを報告しました。

また、ベトナムのNGO・Green IDから、ベトナムの再エネについて、さらにVUSTA(Vietnam Union of Science and Technology Associations)から、原発建設予定地のニントュアンの村での聞き取り調査についての報告がありました。

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フロアからは特にコストについてと再エネの可能性についての質問が相次ぎました。
原子力関係の機関から参加した人もあり、再エネ懐疑論や、原発はクリーンなエネルギーではないかなどの発言もありましたが、中には原発に対して慎重になるべきではとの声もありました。

ベトナムは現在「中所得国」。電気の普及率も全土で平均して9割を越えています。
街中はバイクや車であふれかえっておりとても活気があります。一方で大気汚染の状況はひどく、街の大気汚染は北京やニューデリー並みの日もあるそうです。工業廃水や生活廃水により、とくに最近では外国企業の排水が原因の魚の大量死も報告されています。

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ハノイの風景

ベトナムは原子力の導入を検討しており、ベトナム第6次電源開発プラン(PDP 6)において初めて原発について触れられています。
また、ニントュアン省に建設される原子力発電所2基について、2010年に日本が協力することが合意され、その後2011年に日ベトナム原子力協定が調印されました。日本政府は、国税合計25億円を費やして日本原電に実施可能性調査を委託。このうち5億円は復興予算が流用されました。
また、日本とのパートナーシップのもとですすめられているニントュアン第二原子力発電所以外に、ロシアとともに第一発電所の建設計画が進められています。ですが、原発の建設に関しては何度も延期がされてるのが実情です。

ベトナムは電力の大半をを大型水力と化石燃料で賄っていますが、風力や太陽光などの再生可能エネルギーのポテンシャルについても報告されています。
風の強いBac Lieu(バクリュウ)では、メガ風力の導入も決定しており、改訂された第7次国家電源開発プランでも再エネが強調されています。

ベトナムが原発や化石燃料などの持続可能でない「汚いエネルギー(dirty energy)」から、再生可能エネルギーにシフトするには、この機会を逃さない手はありません。
原発はコストも高く、安全ではなく、気候変動の解決にならない事はすでに歴史が証明しており、とくにそれは日本が一番経験しているはずです。

私たちがベトナムの人々に伝えたい事がどれくらい受け止められたかわかりませんが、今後も原発輸出に反対する立場から活動していきます。

ベトナムへの原発輸出に関する過去の活動
>http://www.foejapan.org/energy/news/111121.html

(スタッフ 深草)

収まらない地震…原発本当に止めなくていいの?

4月14日より発生している熊本県・九州地方での地震により、被災されたみなさまへ心よりお見舞い申し上げるともに、お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りいたします。

今日、「川内原発止めて」署名を、呼びかけ人の高木博史さんとともに提出しました。
避難先での苦しい生活や、収まらない地震に大きな不安を抱えている人が沢山いますが、鹿児島の川内原発の安全性に関しても、また福島原発事故のような事故が起こるのではないか、原発を一度止めるべきではないのかと、多くの人が不安の気持ちを抱えています。

熊本出身の高木さんもそのような方のうちの1人。高木さんは「故郷を’帰れない場所’にしたくない」との思いから、署名を開始。署名には最初の36時間で3万を越える賛同が集まり、4月21日現在では10万を越えています。

これまで集まっている約10万筆の署名を携え、内閣府への申し入れに同行。少なくとも10万を越える市民が川内原発の安全に不安や疑問を感じている事、安全第一というならば一度止めて、検査すべきであるということ、などをお伝えしました。陳情には、原発ゼロの会世話人でもある近藤昭一議員も駆けつけました。

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署名は川内原発がとまるまで集め続けるとの事。
是非まだの人はぜひ署名を。
> https://goo.gl/vLAlTf

「福島とベラルーシ」福島県で報告会開催

スタッフの深草です。2月12日、13日に福島県でFoE Japanの脱原発エネルギーチームの報告会を行いました。前半は昨年行ったベラルーシ視察の報告、後半は福島の健康調査の現状やFoEの保養キャンプ「ぽかぽかプロジェクト」の報告会を行いました。

前半部では、昨年2015年のベラルーシ視察に参加したメンバーから、ベラルーシで見て来た事、現地の方から聞いたお話を報告。さらにベラルーシにおける子ども達の保養の制度やチェルノブイリ法についても解説しました。チェルノブイリ原発事故により、放射性物質に汚染されて線量の高い地域に住む子ども達は、3週間の保養が国の制度によって受けられる一方、原発解体労働者(リクヴィダートル)や避難者の支援が必ずしも実施されていないという現状も報告しました。
福島からベラルーシ視察に参加した八島千尋さんと人見やよいさんも駆けつけてくれました。

八島千尋さんは、小児糖尿病を支援する保養プログラムに3日間滞在。その時の様子を語ってくれました。
ベラルーシでは、チェルノブイリ原発事故後に、小児糖尿病(I型糖尿病の事。発症メカニズムはまだ解明されておらず、一生治らない病気。毎食カロリー計算をしてインシュリンの摂取が必要となる。生活習慣が原因で起こるII型糖尿病とは異なる。)が増加したと報告されています。事故との因果関係は明らかになっていませんが、実際に特に汚染の高いゴメリ州などの地域で小児糖尿病の子ども達が増えていることから、ベラルーシの財団「子ども達に喜びを」が小児糖尿病の子ども達を支援するプロジェクトを立ち上げました。

人見やよいさんは、ベラルーシの良いところも悪いところも見て来たと感想を発表してくださいました。
ベラルーシの市民社会は子ども達を守ろうという強い意志をもって30年間活動し続けていました。ですが、一方でベラルーシ政府は事故はすでに収束し復興したと宣言。市民活動や政治活動への圧力がはげしく、チェルノブイリ被害者の救援を行っている人々も活動しにくい状況があります。

後半には、福島県民健康調査で明らかになった甲状腺がんの多発、そしてFoE Japanが行っているぽかぽかプロジェクトについて報告しました。

また今回福島市の会場では、ベラルーシ視察に参加し、今回発表もしてくれた八島千尋さんの作品展示も行いました。

発表資料は後日ウェブサイトに掲載予定です。
またベラルーシの視察を一冊の冊子にまとめており、今後販売予定です。