【COP25 Vol.7】 COP25閉幕―主要議題で合意に至らず。評価できる点も

12月13日に交渉最終日を迎える予定だったCOP25。土曜深夜も交渉が続いた後、日曜昼過ぎに閉幕しました。気候変動がもはや目の前の危機として認識される中、先進国は気候危機の現実から目をそらし、国際市場メカニズムなど「誤った気候変動対策」を推進していることをFoEグループは批判してきました。

 会議終盤、主要議題であった国際市場メカニズムや目標引き上げは合意に至らず、これらの論点は来年の中間会合に持ち越されることになりました。しかし、既に発生・拡大している損失や被害に対応するため、途上国提案を基にした支援制度の強化が盛り込まれました。また、温室効果ガス排出の賠償責任を負わないとする文言を求めた米国の主張は途上国によって拒否されました。国際市場メカニズムに合意がなかったことは、むしろ多くの排出を許すルール決定に至らなかったという意味であり、今後も国際市場メカニズムをめぐる戦いは続くことになります。

FoEグループは、温室効果ガス削減に対する拘束力を持たないパリ協定では1.5℃目標達成は難しく、そもそもパリ協定自体がとても弱い枠組みになってしまったことを批判してきました。

私たちに残された「カーボン・バジェット(炭素予算。温度目標達成と整合する、温室効果ガスの累積排出量の上限値)」はほとんどありません。一刻も早く、社会全体の脱炭素化を行わなくてはいけません。しかし、温室効果ガスの排出は増え続けています。1.5℃目標達成のためには、2030年前でに2018年比で55%の排出削減を行わなくてはいけません(UNEP Emissions Gap Report 2019)。

現在の気候危機に対する責任が大きく、資金や技術を持つ先進国にこそ大きな削減義務があるはずですが、目標引き上げや次回の長期資金目標に関する交渉結果は乏しく、途上国にとって残念な結果に終わりました。

 一方で損失と被害の賠償責任を認めないという文言をどうしても含めたかった米国の主張は日本を含む先進国に支持されたものの、途上国の強い反対で最終的に落とされました。今回のCOPで損失と被害に関する支援強化のための専門家グループとサンティアゴネットワークの設立も決定され、それは評価できる点といえます。

来年のCOP26はスコットランド・グラスゴーで開催される予定で、4年連続ヨーロッパでCOPが行われることになります。特にアジアやラテンアメリカの途上国や市民社会の参加への負担は大きくなるので、参加の機会確保が課題です。また来年は京都議定書が終わり、パリ協定が始まる年でもあります。この10年は「(再び)失われた10年」と表現されることもあります。排出は増え続け、被害は拡大しています。パリ協定の実施はそれぞれの国にかかっていますが、各国が公平性をもって削減に取り組むためルールや、1.5℃目標達成のためにどのように各国目標を引き揚げさせるのか、国際市場メカニズムなどの誤った対策を推進させないためにもCOPの場での戦いも重要です。

FoEグループはこれからも現場でたたかう人々とともに、グラスルーツの取り組みを進めるとともに、国際レベル・国内レベルの政策をウォッチしていきます。

*COP25の交渉結果・合意内容に関する詳細な報告は後日掲載予定。

(深草亜悠美・高橋英恵・小野寺ゆうり)

【COP25 Vol.5】COP25は2週目へ

COP 2週目に突入しました。2週目からは各国の閣僚級が集まり、ハイレベル交渉が始まります。1週目の金曜日には気候マーチが開催され、50万人があつまり(主催者発表)、気候正義を求めました。ゴールに設置されたステージにはグレタの姿もあり、希望はCOPではなくマーチに集まっている人々の中にあると訴えました。

 10日火曜から閣僚級会合が始まりますが、いくつかの議題に関する実務レベルの交渉は遅れを見せており、補助機関会合の結論は9日の夜にまでもつれ込む見込みです。FoE グループが注目する交渉の状況はどうなっているのか、そして今週の交渉の行方について、まとめました。

 損失と被害

 気候変動への適応が限界を迎え、すでに各国で損失と被害が生じています。損失と被害に関しては、条約のもとにあるワルシャワ国際メカニズム(WIM, Warsaw International Mechanism)というメカニズムが、専門的アドバイスや損失と被害に関する情報収集などを行なっていますが、今回のCOPでWIMのレビューが行われており、WIMの機能やガバナンスについて議論が行われています。

 「損失と被害」は米国がもっとも強固に懸念を示す議題でもあります。アメリカの強い主張で、COP21の決定文書に、パリ協定の損失と被害に関する第8条を損失と被害の責任の所在を追求する根拠とはしないとする文言がもりこまれました(注1)。

 今回のWIMのレビューにおいて、米国は損失と被害の責任や賠償について、COP21の決定文書に挿入されたものと同じ文言を挿入しようと強い姿勢を示しており、パリ協定でも損失と被害への先進国の責任追及を避けようとするアメリカの強い主張が反映されてしまうことになります。

 国際市場メカニズム

 市場メカニズムに関する交渉は遅れています。

 月曜日の早朝現在、いまだ様々な国が求める主要な主張は残ったまま交渉文書が出てきており、本格的な交渉は明日からのハイレベル会合に決着が持ち越される見通しです。(市場メカニズムについて詳しくはこちら)

 2週目に向けて

 2週目はハイレベル会合に入り、市民社会参加者はほとんどの交渉を傍聴できなくなります。とくに市場メカニズムの議論は、さらなる大型排出を許してしまう抜け穴のあるルールが交渉に含まれており、市民社会は非常に大きな危機感を抱いています。

 また、議長国が、Climate Ambition Alliance(気候野心連合)を呼びかけており、野心(気候変動目標)の引き上げを宣言する国を集めています。水曜日にオフィシャルイベントが企画されていますが、視点は公平性に欠けており、「宣言」や「イニシティブ」にとどまり、具体的な行動に結びついているのか市民社会がしっかりと監視する必要があります。

また、第一週目の交渉の様子、第二週目の交渉への期待に関する解説についてはこちらもご覧ください。

(小野寺ゆうり・高橋英恵・深草亜悠美)


注1: CP21.52 Agrees that Article 8 of the Agreement does not involve or provide a basis for any liability or compensation 

【COP25 vol.3】Final Call? Sayonara Coal 再び

  COPで気候変動に対する取り組みが議論される中、日本の石炭火力支援に抗議する声が再び会場の外で響きました。気候危機の影響を受ける途上国のメンバーを中心に、日本の石炭支援はこれまでもCOPの会場やその他の主要な国際会議の場等で批判されてきました。

 抗議に参加した途上国メンバーの一人は「このCOPが、私たちが“Sayonara coal”と声を上げる最後のCOPになるだろう」とコメント。日本に対する期待というよりは、もう後はない、このまま石炭を推進し続ければ、日本も気候変動によりさらなる影響を受けるだろうことを思ってのコメントでした。

 実際、日本にも気候危機が迫っています。今年も多くの災害が発生し、尊い命が失われました。

 そんな中、日本の梶山経産大臣は石炭温存を明言。「脱石炭」は国際的な常識となってきている中、この発言を受けCOP初日に日本は“化石賞”(気候変動に後ろ向きな国に対し、国際的な気候変動NGOのネットワークClimate Action Network,CANから贈られる賞)を受賞しています。

 日本の石炭支援が批判される理由は気候変動だけではありません。石炭火力発電所の開発が進む地元では、土地収奪や反対派住民のレッテル貼、ハラスメント、生計手段の喪失など様々な問題が報告されています

 日本の国際協力銀行(JBIC)による公的資金支援が行われているインドネシアのチレボン石炭火力発電事業では、地元で住民による環境許認可に係る法廷闘争が続いているなか、許認可発行に係る贈収賄事件が浮上しています。建設を請負う韓国・現代建設の元幹部が地元の前県知事に賄賂を渡したとして、インドネシアの捜査機関が両名をすでに容疑者認定しました。また、これに絡み、丸紅とJERA(東電と中部電力の合弁)が出資する事業者の元取締役社長など上級幹部2名も、同贈収賄事件に絡んで、海外渡航禁止措置を受けています。 

 これまで、同事業の影響を受ける住民は、生計手段の喪失や健康被害を懸念し、同事業への融資を続けるJBICに異議申立てを行なってきました。また今般、JBICとともに融資を続ける3メガ銀行(みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行)が、同事業において国際CSR規範の66項目を遵守していないことが、日本NGO 「Fair Finance Guide Japan」が新しく発表した調査報告書「腐敗にまみれたインドネシア石炭発電」でも明らかになっています。

 現在、日本が関わるものとしては、ベトナムで2つの石炭火力発電所(ブンアン2石炭火力発電所、ビンタン3石炭火力発電所)の計画が進んでいます。さらにインドネシアでは、インドラマユ石炭火力発電所が国際協力機構(JICA)の支援で進んでいます。

 フィリピンの市民団Philippines Movement for Climate JusticeのIan Riveraは、

「これまでも「さよなら石炭!」と声を上げてきたにも関わらず、日本政府は過去の過ちから学ぼうとしていない。台風は威力を増し、フィリピンだけでなく、日本、そしてアジア各国に甚大な被害を及ぼしている。“高効率石炭”を売り込み、日本は気候変動対策よりも利益を優先している。ただちにやめるべきだ。世界有数の経済大国としてリソースがあるのだから、日本はクリーンエネルギー中心社会へのシフトを牽引して欲しい。まずは化石燃料支援を止めることから始めて欲しい。」とコメント。

気候変動は、特に途上国や貧しい地域では、すでに生存の問題に差し掛かっています。交渉の場でも、気候変動への適応の限界を迎え生じ始めている損失と被害について議論が行われています。損失と被害は往々にして経済的損失として数値で表されがちですが、貧しい国々ではまさに日々の生存の問題です。生計手段や文化の喪失でもあります。

多くの国々が気候変動の緊急性と重要性を理解し、脱石炭を進めています。

日本には一刻も早い脱石炭と、社会の脱炭素化のためのロードマップづくりが求められます。(深草亜悠美・波多江秀枝)

【COP25 vol.2】COP25初日終了 – 政府によるチリ市民への弾圧への連帯を、そして市場メカニズムにNOを!

COP25初日が終了しました。

開幕の朝、会場入り口にて、南米の先住民族を中心に、チリ政権による市民社会への弾圧に反対する声をあげるアクションが開催されました。冷たい空気の中、15人ほどが眼帯をかけ、チリでたたかう市民への連帯を示し、気候危機の根本には不正義や、市民の声を封じるような政権の存在があるとし、Justice for climate, Justice for Chilean と声をあげました。

気候正義を求めるNGOの連合Demand Climate Justiceのメンバーの一人は「開催地はスペインに変わっても、私たちはチリの人々と共にある。スペインに変更になったからといって、現地で起こっている不正義から目をそらしてはいけない」と語りました。

開催地はスペイン・マドリードに変更となりましたが、COP25の交渉を進める議長はチリのままです。気候正義を求める市民社会としては、市民を弾圧する政府に今回の議長を任せることはできません。

また、初日の午後には、Friends of the EarthインターナショナルとしてCOP25にかける期待を記者に向けて発信。

南米・エルサルバトルのRicardo Navarroは、南米の市民社会と連帯することをうったえました。

「社会的・政治的な不公正、環境不正義を避けるために、私たちが取り組まなければならないことはシステムチェンジです。システムチェンジはいますぐに、すべてが気候危機に瀕する前に起こさなくてはなりません。今こそ、システムチェンジの時なのです。」

「開催地は変わっても南米の市民社会と連帯を」Ricardo Navarro(南米・エルサルバトル)

ナイジェリアのPhilip Jakporは、国際市場メカニズムについて指摘。ナイジェリアではShellや、ENIなど巨大化石燃料企業が化石燃料採掘を続けています。

また、FoEナイジェリアとFoEオランダは、化石燃料採掘を続け、気候危機を加速させているShellを相手取り、訴訟を起こしています。

ナイジェリアのPhilip Jakporは、国際市場メカニズムについて指摘。

しかし、驚くべきことに、Shellは市場メカニズムに参入する見返りとして、オランダ政府から補助金を受け取っています。Phillip Jakporはこれらの事実を記者会見で指摘し、企業の利益ばかり反映され、大規模プランテーションがクレジットになるようなメカニズムは、今すぐにやめるべきであるとコメントしました。

(高橋英恵・深草亜悠美)

【COP25 vol.1】COP25マドリード開幕 – 気候危機を乗り越えるために今システムチェンジを

12月2日から13日までの2週間にわたり、スペイン・マドリードで国連気候変動枠組条約締結国会議(COP25)が開かれます。今回の会議の注目すべき点、市民社会の視点についてまとめました。

声を上げる若者たち

2018年に続き2019年も、世界各地で猛暑や大雨・洪水が起こっています。フランスやパキスタンでは記録的な熱波、アマゾンやインドネシアでの森林火災、日本でも昨年の西日本豪雨に引き続き、今年10月は連続して上陸した巨大台風によって大きな被害がありました。年々脅威を増す気候変動はもはや「気候危機」と表現されています。にもかかわらず、なぜ大人たちはすぐに行動しないのか。そう訴え、2018年8月にスウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさんが、たった一人でスウェーデン国会前で座り込みを始めました。その行動は世界中の若者を動かし「未来のための金曜日(Fridays For Future)」と呼ばれるムーブメントに発展しています。

日本でも若者たちが声をあげ、これまでに4回「気候マーチ」を開催。9月と11月のグローバルアクションデーには日本全国各地でマーチやスタンディングなどのアクションが行われました。

やはり一番大事な目標の引き上げと行動

これ以上の気候危機を防ぐためには、今すぐ行動することが必要です。私たちに残された時間は残念ながらあまり長くはありません。

パリ協定のもとで、各国はNDC(National Determined Contribution)とよばれる国別の目標を提出することになっています。11月末時点で184 カ国が国連事務局にそれぞれの国の目標を提出しています。しかし各国が提出した計画をそのまま実行すると、今世紀末に3℃以上温度上昇してしまうと計算されています。つまり、各国がNDCを引き上げなければ、1.5℃目標は達成できません。そのため、各国は目標を引き上げて再提出することが求められています。

昨年のCOP24は、IPCCが1.5℃レポートを発表した直後に開かれたこともあり、気候変動への緊急性への認識が高まり、各国が目標を強化することが期待されていました。しかし、COP24での先進国による抜本的な目標の引き上げはみられませんでした。

今年9月にはアントニオ・グレーテス国連事務総長の呼びかけにより国連気候アクションサミットが開催され、気候変動対策への機運が盛り上げられましたが、日本は目標を引き上げていません。COP25では、日本を含む先進国による目標の引き上げと具体的な行動をとることが強く求められます。

石炭火力発電は最も温室効果ガスを排出する発電方法であることから、すでに少なくない数の国々が石炭火力発電事業からの撤退を表明しています。また、パリ協定の1.5℃目標達成のためには、新規の石炭火力発電所の建設は許されず、既存のものも、順次閉鎖していく必要があります。そんな中、日本は国内外で石炭火力発電を推進し、その姿勢が国際的にも批判されています。行動強化の観点からも、日本には国内外で進めている石炭火力発電所の新設中止・撤退がもとめられます。

市場メカニズムの動向

先進国にとって注目されるのが、市場メカニズム(パリ協定6条)のルールづくりです。気候変動における国際市場メカニズムとは、削減努力をして得られた削減分を排出権やクレジットとして金銭的な価値を付加し、市場で売買するメカニズムです。6条のルールづくりは、昨年のルールブックの議論で積み残された議題の一つでした。

いくつかある論点としては、例えば、排出量を「排出権を売却した国(削減努力を行なった国)」と「排出量を買い取った国(買い取って排出分を相殺した国)」の両方で削減としてカウントしてしまうと、重複して削減量をカウントしてしまうことになります。これを避けるため、調整を行う方法やどの範囲で調整を行うのかなどが議論になっています。

また、これまでに発生しているクレジットを2020年以降にも使えるようにしたいという国も存在します。これまでに発生しているクレジットは数十億トン分に相当し、これを許せばさらなる大型排出が可能になってしまいます。

市場メカニズムは結局、排出削減努力を行った分どこか別のところでの排出を許してしまうため、絶対的な削減が達成されるわけではありません。

また、森林保全を行い、二酸化炭素吸収源を確保した分に見合う金銭的付加価値をつけるというREDD+というスキームも行われていますが、そのために先住民族が住む土地の囲い込みが発生するなどの問題も発生しています

上記等の理由から、FoEグループはこれまでも国際市場メカニズムに反対しています

日々大きくなる損失と被害

別の注目議題が、「損失と被害」です。特に途上国で深刻になっている気候変動により生じた損失と被害について、COP19でワルシャワ国際メカニズム(Warsaw International Mechanism, WIM)とよばれるメカニズムが設立されました。

国連気候変動枠組条約のもとには、緩和(温室効果ガスの排出量を削減すること)や適応(すでに起きつつある気候変動に対応していくこと)のための資金メカニズムはありますが、損失と被害へのサポートや支援メカニズムがありません。ワルシャワ国際メカニズムはこれまで、損失と被害に関する知見の蓄積やその共有、気候変動に起因する人口移動(Displacement)に関する助言などを行うなど、小規模な活動にとどまっていましたが、具体的な損失と被害に対するアクションや資金支援についても議論が求められます。

突然変更された開催地

もともとCOP25は南米チリで開催される予定でした。しかし、首都サンティアゴでチリ現政権に対する抗議行動が続いていることを理由に、チリでの開催は急遽中止されました。しかし、即座にスペインが代替地として名乗りでたことから、議長国はチリのまま、開催地をマドリードに移し開催されることになりました。

サンティアゴではすでに市民社会サミットも計画されていました。開催1ヶ月前の突然の開催地変更は、参加を予定していた市民参加者、経済的に制約の大きい途上国の参加者に追加的なコストと手間を強いることになりました。

また、一昨年のCOP23はフィジーを議長国としてドイツのボンで開催され、昨年のCOP24はポーランドで開催されました。来年はグラスゴーで開催することが決まっており、4年連続でヨーロッパでCOPが開催されることになります。COPの開催地は毎年大陸持ち回りで、多様な地域の市民社会の参加を確保してきましたが、物価の高いヨーロッパでの開催は、途上国の参加者にさらなる経済的負担を強いることになります。

私たちのメッセージ:FoEグループとして

FoEグループが考える気候危機への解決策は、多国籍企業等の利益や経済成長を優先する社会から、自然やそれとともに生きる人々を中心にすえた持続可能で民主的な社会への抜本的な変革(System Change)です。

化石燃料事業、環境破壊を引き起こす原発や大規模バイオマス発電等の誤った気候変動対策、カーボンオフセットなど市場原理を利用した「解決策」、損失と被害への資金支援としての保険の導入は、気候変動対策にならないだけではなく、大企業や多国籍企業の力を強め、さらなる経済的な格差の拡大につながります。

これ以上の気候危機を防ぐためには、エネルギーの自治権を人々に取り戻し、経済活動においても遠くの資源を使うのではなく身近な資源を活用すること、森林を奪うのではなく先住民族の知恵による森林管理(コミュニティフォレストマネジメント)や森林農業(アグロエコロジー)を見直すこと、そして、気候変動への責任の公平性に基づいた目標の設定と利益に左右されない公的資金による途上国への支援することが必要です。

社会の公平性を取り戻すことが気候危機対策につながり、また、適切な気候危機対策は公平な社会の実現につながります。社会の公平性と気候危機対策はお互いに切り離せない関係です。この”Climate Justice for ALL”というFoE グループのメッセージを、このCOP25期間を通じ、会場内外で強く訴えていきます。

(小野寺ゆうり・深草亜悠美・高橋英恵)

【COP24】サイドイベント報告:Reclaiming Power 〜化石燃料からのフェーズアウトを目指して〜

12月4日、Friends of the Earth インターナショナル(FoEI) は、他のNGOとともにCOP24の会場でサイドイベント「“Reclaiming Power: The People’s Global Movement to Phase Out Fossil Fuels for Real Climate Action(パワーを取り戻そう!真の気候アクションのための世界的な脱化石燃料の動き)」実施しました。同イベントで発せられた、世界各地の仲間からのメッセージを紹介します。

 

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Philippine Movement for Climate Justice(フィリピン)の代表イアン・リベラ氏は「中国、韓国、日本の石炭火力プロジェクトへの融資は、誰も望んでいない。」と発言。

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FoE EWNI(England, Wales, North Ireland)のレイチェル・カナーリー 氏は「脱石炭だけでは安心はできない。石油、LNGといった化石燃料も採掘時の環境への大きな悪影響、採掘場付近ではパイプラインの設営を巡っての問題がある」と発言。FoE EWNIはフラッキング(ガスの採掘方法の一種で、多大な環境負荷が発生する)に対するキャンペーンを展開しています。

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FoE ナイジェリアのワリ・オバワンジュ氏からは「地産地消の、再生可能なエネルギーが必要だ。LNGは利権争いなど紛争を地域にもたらしている。」とのメッセージがありました。

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また、参加者から化石燃料への代替案として、原発利用が提案されましたが「原発は、その建設過程から運営に至るまで非民主的に進められる。また、放射能に対する対処法がまだない。原発国フランスでは放射能漏れによって、何日も水が飲めないということが起きた。」との回答が登壇者からありました。

イベントでは、石炭をはじめとする石油や天然ガスといった化石燃料、原発、メガソーラー等、環境に悪影響を与え、人々の生活を脅かすエネルギーを“Dirty Energy(汚いエネルギー)”として批判。FoE グループは非民主的で、環境負荷が大きく、気候変動を加速させるエネルギーを”汚いエネルギー”であるとして反対しており、もちろん原発にも反対しています。

日本が直面しているエネルギーの問題は、今、世界のどの国でも直面している問題なのだと肌で感じます。

みなさん、これでも石炭を、化石燃料を、原発を進めますか?

これら“Dirty Energy”を「必要悪」と捉える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、誰かの犠牲の上に成り立つエネルギーは、本当に必要なのでしょうか?

危険で有害なエネルギーに拠らない経済の仕組みや社会のあり方に、私たちは正面から向き合わなければならないと感じました。

(高橋英恵)

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国連気候変動枠組条約・バンコク会議閉幕―パリ協定実施指針交渉の行方は

Stack of booksタイ・バンコクで9月4日から9日まで開かれていた、国連気候変動交渉。主にはパリ協定を実際に実施していくための詳細なルールを定める国際交渉で、実施指針自体は12月ポーランドでの第24回締約国会合(COP24)で採択が目されています。

COP前の最後の公式会合であるこの会議では、各国の様々な主張は削らずに様々な選択肢の整理を行い、COPで本格的な交渉に映るためのたたき台を用意することが主な作業でした。その結果、306ページにわたる非公式文書が会合の終わりに準備されました。京都議定書の実施指針に相当する2001年のマラケシュ合意は240ページ以上の文書でしたが、ベージ数の多さはさておき、非公式文書に含まれている分野ごとの進捗のばらつきが今後の課題となってきます。先進国の望む緩和行動に関する部分だけが今度のCOPで採択され、途上国支援などが置き去りにされる懸念があります。会議閉会時に、議長たちに10月15日までにこの非公式文書をさらに整理し、COPでの交渉のたたき台の用意を託す旨が合意され、バンコク会合が終わりました。

これまで2年半の実施指針の交渉での大きな対立点は、差異化の部分です。言い換えると、先進国の義務をどのように実指指針に反映させるかという点が争点でした。気候変動枠組条約の文言に比べると表現は弱められましたが「共通かつ差異ある責任」の条約の原則はパリ協定にも引き継がれ、歴史的な責任に鑑み、先進国は途上国の対策を資金・技術面で支援することになっています。
ほぼすべての国が提出している2030年もしくは2025年までの国別行動計画(NDC)の定義について、今回も排出削減行動のみをNDCの中身とする先進国が、支援についてもNDCに入れるべきとする途上国提案を拒絶して紛糾するひと幕もあり、この部分は両論併記する形にとどまり、ほぼ進展がありませんでした。各国のNDCの進捗の報告義務を定める「透明性枠組み」の交渉でもやはり二分論が出ていますが、そこは議論が分かれる部分を分けることで非公式文書の一定の整理が進みました。

歴史的責任と公平性の問題は、単に原則論とするのではすまされない重要性を持っています。現在各国が提出しているNDCを積み上げるだけだと、世紀末までに3℃以上の気温上昇を招くとされていますが、これは途上国のNDCがきちんと実施されることを前提としています。多くの国のNDCには、外からの支援なしに実施不可能な部分があり、先進国が途上国への支援義務を果たさなければ、気温上昇の予測は3℃をさらに上回るでしょう。実施方針に支援の義務とその実施の方法を書き込むことはとても重要なのです。しかし先進国、とりわけ協定撤退を表明したアメリカが率い、日本もメンバーである「アンブレラグループ」は、先進国の義務を明示的に指針に表記することに強硬に反対しています。この溝は実施指針の交渉開始時点から深く、COP二週目の閣僚級の交渉まで持ち越されるでしょう。

NDCや透明性の議論のほか、バンコクで引き続き対立点となったのは、パリ協定作業計画にふくまれる途上国支援、とりわけ資金支援の報告に関するものでした。先進国は事後報告だけでなく、2年ごとに今後の支援規模を国連に提出することが協定文にありますが(9.5条)、先進国は提出の仕方は任意に留めたく、また協定前に約束した年間1000億ドルの途上国への資金目標が終わる2020-2025年以降の次の資金目標の定め方の議論にも反対しています。途上国の間で広がる被害や自国のNDC実施の計画立案には海外からの公的資金の見通しの情報が不可欠であることが途上国の要求の背景にあります。ここでもスイスやアメリカといった先進国が共同歩調で途上国の要求を突っぱねている状況が続いています。

途上国支援の要として設けられた緑気候基金(GCF)の資金は年内にも底を尽きる見通しです。7月のGCFの理事会では、やはりアメリカが追加増資の議論をとめてしまいました。資金支援でのトランプ政権の強硬姿勢に屈さず、実施指針の内容をさらに弱めることにならないようにしなければなりません。

COP24の直前から期間中、気候資金の隔年閣僚級対話、資金委員会の包括的気候資金の隔年評価報告、2020年までの先進国義務進捗に関する議題など協定実施指針だけでなく、重要な途上国支援の議論が並行して行われることになります。先進国は気候資金を2020年までに年1000億ドルに引き上げる目標の進捗を示す独自の報告を用意しているとも言われ、資金問題はポーランドでの議論の台風の目となります。

一方で途上国支援に民間資金の活用が叫ばれています。しかし、同時に貧しい国民を支える公共サービスの市場開放を求められる途上国にはもろ刃の剣です。先の見通しが立てにくい民間投資、さらには先進国にとって実施指針の目玉の一つであり4月以降議論に弾みがついている途上国での事業で得た削減量を自国のNDCに編入できるグローバル炭素市場が来年以降始動すれば、外からの市場の動向の影響で、途上国が政府主体で国内の長期的なエネルギー開発政策を定めることをますます難しくします。

公平性・先進国の歴史的責任を、途上国支援の面で実施指針に反映させることは協定全体の効果を左右する重要なことです。しかし、FoEグループは実施指針がさらに弱められた抜け道だらけの内容となると危惧しています。今年のポーランドでのCOPは、COP参加者とくに市民団体の活動を制限するような立法措置が取られていますが、引き続き、日本を含む先進国の歴史的責任と義務、原発に頼らない急速な化石燃料からの脱却/脱石炭、食糧主権、コミュニティーの権利とエネルギー民主主義、企業支配からの民主的スペースの奪回などをテーマに、働きかけやメディアアクションなどを行なっていきます。

(文:小野寺ゆうり 編:深草亜悠美)

国連気候変動会議 ー今すぐの脱石炭を、気候正義を

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国連気候変動交渉が行われているバンコクにおいて、市民社会によるアクションが開催されました。現在の気候変動による被害は、これまでに先進国が大量の化石エネルギーを利用し発展してきたことに要因がある一方、ほとんど温室効果ガスを排出していない途上国の貧しい人々が特に深刻な被害を受けているという不正義を是正するよう訴え、特に日本や韓国などのアジアの先進国に対して、インドネシアやベトナムに依然石炭火力発電所を輸出していることを批判が繰り広げられました。

パリ協定の目標を達成し、気候変動の影響を特に受けやすい人々を守っていくためには、日本は劇的な温室効果ガス排出の削減、パリ協定に矛盾せず人権を尊重した途上国支援、適応に対する支援や、すでに生じている気候変動被害に対応する支援などが必要です。しかし、2016年以降、日本は少なくとも海外において7つの石炭火力発電事業への支援を決めています。

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そのうちの一つはインドネシア・チレボン石炭火力発電所事業です。日本の国際協力銀行が融資を行っています。このプロジェクトは、深刻な人権侵害や生計手段の喪失などが起きています(詳しくはこちら)。

FoE Japanも参加する国際的な気候正義の「Demand Climate Justice」ネットワークでは、各国政府に対し、8つのことを求めています。

1. 100パーセント再生可能エネルギーへのコミットメント(先進国は2030年までに、途上国は2050年までに)
2. 民主的で持続可能なエネルギーを達成するために必要な資金
3. 新規石炭プロジェクトへの国際的なモラトリアム
4. フラッキングの禁止と、新規化石燃料探査・採掘の禁止
5. 大規模で危険なエネルギープロジェクトの中止
6. 化石燃料への補助金の停止(先進国は2020年までに)
7. 大規模バイオマスや巨大ダムから公的資金の撤退
8. 国際気候変動交渉における利益相反ポリシーの制定

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日本は国外への石炭火力輸出だけでなく、国内でも石炭火力発電所の拡大を続けていますが、これはパリ協定やそれを受けて脱炭素化を目指す世界の潮流に逆行しています。
日本は今すぐ石炭火力発電や原発などの環境汚染を生み、人権や生命を脅かすプロジェクトへの支援をやめ、再エネや人々を中心とした支援に切り替えて行くべきです。

(深草亜悠美)

パリ協定実施指針採択に向けて—クライメートジャスティス(Climate Justice)への道のり

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今日9月4日から9日までタイ・バンコクにて、12月に開かれる気候変動枠組条約締約国会合(COP24/ポーランド開催)で採択される予定のパリ協定の実施指針(ルールブックまたはPAWP)を交渉するための追加会合が開催されています。COP24前最後となる公式の政府間交渉で、交渉のたたき台となる決定文書案を準備することが望まれています。パリ協定は世界の気候変動対策の枠組みであり、その効果的な実施が世界の将来を左右するため、COP24での実施指針採択はパリ協定が採択されたCOP21パリ会議以来、最も重要な会議と見られています。

これまでにすでに世界平均で1℃前後の気温上昇が記録され、日本だけではなく、世界各地で記録的な猛暑を記録し、集中豪雨などが発生しています。記録的な飢饉、水不足、農業生産の減少・食糧危機、洪水や海面上昇による避難民(気候難民)がアフリカ、南アジアや中南米の各地で増加しています。それにより多数の犠牲者が出ています。
特に、近年被害が急速に拡大している途上国の市民はCOP24を強い関心を持って見守っています。インフラが脆弱で、十分な資金のない途上国にとって、追加的な資金支援や技術支援、公平性を反映した実施指針の策定が重要です。COP24の開催国であるポーランドが、COP24に参加予定の市民団体を弾圧する立法を行ったこともあり、このバンコクでの会合の機会を最大限に活かそうと、アジアの市民社会を中心に、会議場周辺で連日さまざまな抗議行動や集会が開催される予定です。

これまでに各国が提出した2025/2030年までの協定の下での気候変動に関する行動計画(NDC)を積み上げた結果では、3℃以上の気温上昇が予想されます。21世紀末までの気温上昇を1.5℃までに留めるよう努力するというパリ協定の目標とは程遠いのが現実です。 10月には1.5℃の気温目標に関し世界の科学者の知見を集めた特別報告(IPCC特別報告書)が出されますが、その中でももう時間の猶予がほとんどなく、被害規模の予測とともに、今すぐの脱化石燃料の必要性が明らかにされるとみられます。最近発表された研究では、平均気温が1.5〜2℃以上上昇すると、森林火災、アマゾン森林の枯渇、局地に存在する大量のメタンガスの放出などが引き金となって、もはや人間では止めようのない温暖化が発生する可能性があると報告されています。

バンコクに集う市民やFoEのメンバーは、政府による行動の不十分さ、とくに歴史的な温室効果ガス排出の半分を占め、化石燃料で発展を遂げた先進国の責任を追及しています。パリ協定の実施指針だけでなく協定の内容を超えた速やかな脱石炭、脱化石燃料と自然エネルギーへの移行、大規模被害への支援や気候避難民の保護、更にこれらを達成するために必要となる社会経済システムの変革を問い、先進国がその責任を果たすことを求めています。

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(C) Chidambaram SP

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(C) APMDD

実際の交渉では、先進国(特に米国をリーダーとする日本を含む環太平洋の先進国)は協定下で途上国や新興国との差異化を認めず、様々な局面において同等の扱いを要求しています。また、化石燃料や産業型農業などの多国籍資本が主要な交渉内容に大きな影響力を持ち、協定の実施指針を弱めようとする状況が続いています。

世界の市民はパリ以来、今また改めてCOP24に向けて大きな声を上げようとしており、その国際的な組織化がこのバンコクで弾みをつけることになります。

(小野寺ゆうり)

COP22閉幕 交渉は進むも、「アクション」にはほど遠く

COP22会議閉幕
アクションのCOPになるといわれたマラケシュ会議
交渉は進むも、「アクション」にはほど遠く

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11月7日から18日までマラケシュで行われていた国連気候変動会議が閉幕しました。昨年パリ協定が採択され、今年のCOPはそれを実施につなげるCOPとして「アクション」のCOPと言われていました。また、気温上昇を1.5℃におさえるためには今すぐの行動が不可欠である事から市民社会から「アクション」の必要性が主張されてきました。

削減目標が適応されるのは2020年から。しかし約束されている削減目標を積み上げても、3℃上昇は免れません。FoEグループは、気候変動の被害を食い止め気温上昇を1.5℃におさえるには、今すぐ、とくに2020年までの行動が大事で、このままではパリ協定は不十分と訴えてきました。

今回、残念ながらアクションのCOPからはほど遠い結果となりました。

気候変動の責任がより大きい先進国は、野心を先駆けて引き上げていくべきでした。議論は適応に偏り、すでに影響を受けている脆弱な国への支援や損失と被害に関する議論は十分に行われませんでした。2020年前の行動の強化という議論が十分に成されなかったことは、1.5℃目標から遠ざかる事を意味し、そして既に気候変動の影響を受ける人々や、気候変動の影響に対し、脆弱な人々が、さらに貧困や危機に陥るという事を意味します。

一方で、パリ協定が正式に発効し、交渉ではパリ協定を実施するために必要なルール作りのワークプラン(今後のスケジュール)が合意された事は確かに前進です。また、適応資金の交渉や気候変動の損失と被害に関するワルシャワ国際メカニズムの交渉でも進展が見られました。

会議の最終日、気候変動脆弱国フォーラムの加盟国が、なるべく早い段階で再生可能エネルギー100%を達成する目標を含むマラケシュ・ヴィジョンを発表しました。

またアフリカ大陸全体で固定価格取引制度やコミュニティーベースの再エネを組み合わせて2020年までに10GW、2030年までに必要となる需要の半分の300GWを賄う野心的な計画が本格化しました。

FoEはこれからも先進国の温暖化への歴史的責任と公平な負担(フェアシェア)の観点から今すぐの行動を求めていきます。

★詳しい交渉の内容は、セミナーで報告します!(詳細は後日FoEのウェブサイトに掲載予定)
2016年12月14日14:30~16:00
Tフロントビル会議室(溜池山王駅すぐ)
http://www.kaigishitu.com/detail/00200895001/001/
内容(予定)
マラケシュ会議の成果(報告者:小野寺ゆうり)
– 気候資金の行方
– 損失と被害 など

★これまでのCOP報告はこちら
https://foejapan.wordpress.com/tag/cop22/