COP24閉幕 – 公平性に欠けるパリ協定の実施指針、気候変動への行動強化にも繋がらず

12月2日から開催されていた第24回気候変動枠組条約締約国会議(COP24)は、予定していたよりも1日遅い15日に終了しました。

何が期待されていたのか?

今回のCOPで期待されていたのは、気候変動行動強化に関する主な2つの点です(開幕時の論点整理はこちら)。

一つはパリ協定の実施指針(ルールブック)の合意、そして二点目は、各国の気候変動への国別目標(NDC)の強化です。今回のCOP24は、気候変動の緊急性と行動強化の必要性を示したIPCC1.5度特別報告が2018年10月に発表されてから初めて開催されたCOPであることから、2023年の各国の気候変動取り組みの進捗を確認し合うグローバル・ストックテークに5年先立ち、各国が目標強化の取り組みなどについて議論するために設けられた促進的対話(タラノアダイアログ)などを通じて各国の気候変動への国別目標(NDC)の強化が期待されていました。

ルールブックはどうなった?

一点目の主要点であるルールブックにおいては、残念ながら、先進国の気候変動への歴史的責任はほぼ削られる結果となりました。

途上国はルールブック作りにも公平性・共通だが差異ある責任の原則の適用を主張し、NDCに関しても緩和中心ではなく、適応などその他の要素も含めるべきだと主張していました。結果的に、緩和については必須ですが、適応などその他の項目は、NDCに含めたい国は含めることという形になりました。

「透明性枠組み(各国の気候変動対策の取り組みの報告に関する枠組み)」では、各国は2年ごとに各国の排出目録と取り組みの進捗レポートを提出することになります。提出フォーマットに関しては先進国と途上国の間に差が設けられました。(先進国の提出は2022年から、途上国は2024年から)。適応と損失と被害についての報告は要素として盛り込まれましたが、損失と被害に対応するための資金の言及は完全に削除されました。

資金情報の報告については、新たに拠出された公的資金だけでなく、民間から動員された商業融資や投資、保険などもカウントして良いことになりました。

一方、先進国は2年ごとに今後拠出する気候資金の情報についてレポートを別途提出することになりました。資金がなければ自国の気候変動対策実施が難しい途上国にとっては、この点は一つの勝利といえます。

今後2年間は、各国がNDCを強化する非常に重要な年になります。

「グローバルストックテーク」は、2023年から始まる各国が気候変動対策の取り組みを見直し、5年ごとに目標を強化して再提出するプロセスです。グローバルストックテークでは公平性原則が非常に重要な論点であり、途上国、とくにインドなどは、残されているカーボンバジェット(1.5度目標達成のために残された温室効果ガスの排出許容量)や歴史的排出を目標強化のプロセスに盛り込むよう求めましたが、実施指針には残りませんでした。また、「損失と被害」についての言及は最後までアメリカが強行に反対し、本文では言及されず、最終的に脚注に追いやられました。

IPCC1.5度特別報告の扱いは?気候変動行動強化につながったのか?

二点目の各国の気候変動への国別目標(NDC)の強化について、COP24の決定文の中には1.5度特別報告を直接歓迎することができず、各国のNDCの強化は「2020年までにNDCを強化して再提出する」という、これまでの決定文にも含まれていた表現が含まれるのみにとどまりました。IPCC特別報告の内容をそもそも認めないという立場のアメリカに加え、サウジアラビア、ロシア、クウェートなど、温室効果ガスの大型排出国がIPCC特別報告の扱いについて最後まで強硬な立場をとったためです。

タラノアダイアログにおいても各国の取り組み強化が加速されることが期待されていましたが、公平性や1.5度レポートについて言及されたものの、COP決定文の中では「タラノアダイアログの完了を歓迎する」と記したのみで、今後の行動強化には繋がりませんでした。

気候資金は?

パリ協定は、先進国の途上国に対する資金・技術支援を義務付けています。しかし、ルールブックのいたるところで先進国の資金・技術支援の義務が弱められた表現になっています。

京都議定書のもとで設けられた適応基金は、存続は決まっていますが、これまでクリーン開発メカニズムの利益の一部を原資としていたため、パリ協定下でどのように運営するのか、議論が決着していません。市場メカニズムの議論はCOP25まで先送りされたためです。

また、先進国は2020年までに年間1000億ドルの気候資金を拠出することになっていますが、その約束も2025年までで、それ以降の資金目標が決まっていません。今回のCOP24で、次なる資金目標の議論は2020年から始めることに決まりました。

気候変動の被害は加速する一方

2018年は、日本でも気候変動の被害がさらに拡大しました。猛暑や洪水、大雨などで亡くなる方や、家を失う方がたくさん発生しました。途上国でもその被害は特に甚大です。災害への備えが少なく、農業や漁業など第一次産業に従事する人口も多いため、より大きな気候変動被害を受けます。しかし、そういった人たちほどほとんど温室効果ガスを排出していません。

一方、先進国の政府や銀行、企業はいまだに化石燃料企業やプロジェクトに投資し続けています。間違った気候変動支援が、コミュニティや環境の破壊、そして人権侵害に繋がっています。

また、今回のCOP24では、市民社会の参加に対する抑圧が非常に顕著でした。気候変動の現場でたたかい、実際に化石燃料プロジェクトとたたかう市民社会の声が押さえつけられるようなことがあってはなりません。

公平性や途上国の視点からは、今回のCOP24の結果は非常に残念な結果だったと言わざるを得ません。

今後さらに重要になってくるのは、各国での取り組み、とくに先進国による国内での温室効果ガスの大幅な削減などの取り組みの強化と、途上国への支援強化です。また、化石燃料プロジェクトや間違った気候変動対策に対する草の根の取り組みもとても重要です。

FoE Japanは、これからも公平性の観点を重視した提言活動、実際に気候変動を加速させている化石燃料プロジェクトに対する草の根の取り組みに尽力していきます。

(小野寺ゆうり・深草亜悠美・高橋英恵)

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日立の英ウィルヴァ原発、断念まであと一歩~署名にご協力を

※FoE JapanとPAWBは、日英両政府および日立に対して、ウィルヴァ原発の中止を求める国際署名を行っています(オンラインおよび)。
1月8日に第一次提出を行う予定です。

日立製作所が進めるイギリスでのウィルヴァ原発建設計画が岐路を迎えている。
12月10日のテレ朝の報道(注1)によれば、複数の関係者が「建設費のさらなる増大が見込まれる中、資金の調達先が決まらず計画を断念する方向で検討している」とのことだ。

この報道をうけ、日立の株価は上昇した。市場では「不採算事業への投資を見送り、利益下振れへの警戒感が和らぐ」と評価されたもようだ(注2)。

日立は12月12日に取締役会を開催。この問題について議論を行ったとみられる。
12月16日になって、共同通信が、日立がウィルヴァ原発の計画を「凍結する方向で調整している」「日立は事業継続の可能性を残すが、現状では事実上、撤退する公算が大きい」と報じた(注3)。翌日の17日、中西会長は、「(今の枠組みでは)もう限界だと英政府に伝えた」と発言(注4)。しかし、撤退に向けた最終決定ではなく、依然として継続の余地を残す。日立は2019年内にも最終投資判断をするとしていたが、年度内に早まる可能性がある(注1)。

ウィルヴァ原発は、日立の100%子会社のホライズン・ニュークリア・パワー社がイギリス・ウェールズ北部アングルシー島で進める。ABWR型の原発2基の建設を行うもの。
日立は以前より、ウィルヴァ原発事業を継続する条件として、自社の出資比率を50%以下に縮小するとしていたが、投資パートナーは見つかっていない。日立は東電や中部電、日本原電のほか、国際協力銀行(JBIC)や日本政策投資銀行(DBJ)などに出資を求めてきたが、十分な出資を得るのは難しい情勢となっている(注5)。

東芝も長らくイギリスにもつ原発会社ニュージェンの売却先を探していたが見つからず、今年11月7日にニュージェンの解散を決めた。原発という危険なビジネスに手を出す企業はなかなかいないということだ。

それはそうだ。イギリスでは電力需要は減少している上、風力発電などの再生可能エネルギーの価格がめざましく低下している。先行して計画が進むヒンクリーポイントC原発からの買取電力価格は、市場価格の倍で、その差額は国民負担となる。原発の建設費用は国際的に増加し、この事業でも3兆円にはねあがった。どうみても、原発建設が経済的に成り立つ環境にはない。

一方、日英両政府は、ウィルヴァ原発事業を進めるため、投融資や政府保証などの支援を行おうとしてきた。

ウェールズの住民団体PAWB(People against Wylfa B=ウィルヴァ原発に反対する人々)は、日立が取締役会を開催する前日の12月11日、日立宛てに手紙を送付し、改めて原発計画に反対した。手紙の中で、「イギリス政府によるウィルヴァ原発に対する補助は不公正であり、イギリスの消費者に大きな負担を押し付けることになる。日立にとっても評判を損ねることになる」「日立は、高価で時代遅れで危険で不必要な原発を推進するのではなく、未来のための投資してほしい」と訴えた。

アングルシー島は、美しい海岸線が有名な観光地で、EU保護種であるキョクアジサシも生息する。反対する住民は、原発事故の危険性、核廃棄物が将来にわたり残されること、事業によって自然のみならず、地元に残されているウェールズの文化が破壊されることを恐れている。

ウィルヴァ原発の建設が予定されているアングルシー島の風景(写真提供:PAWB)
事業地周辺にはEUの保護種であるキョクアジサシも生息する
(写真提供:PAWB)

日本政府は、原発輸出政策を国策として進めており、第二次安倍政権になってからはなりふり構わぬトップセールスを展開してきた。しかし、ベトナム、リトアニア、トルコなどで原発輸出が相次いで頓挫(下表)。

トルコ・シノップ原発については、事業費の倍増などから、三菱重工業なども含めた官民連合が撤退に向けた最終調整に入ったと報じられている。FoE Japanは2014年、現地訪問を行い、住民たちと交流。日本の「脱原発をめざす首長会議」から、シノップ周辺で反対の声を上げる首長たちへの応援レターを届けた。また、シノップ原発の地質調査に関して、経済産業省から日本原電の委託調査の不透明さについて、問題提起。日トルコ原子力協定に反対し、シノップの住民の手紙を日本の国会議員に届けたりなどの活動を行ってきた。

トルコ・シノップの美しい漁港(2014年撮影)

日本政府肝いりで進められた原発輸出政策。いまや残るはこのウィルヴァ原発のみだ。日立が国との関係で、ウィルヴァ原発を継続せざるをえないのではないかという懸念もきかれる。日立が現時点でこの事業を中止すれば最大約2700億円の損失が生じるとされているが、撤退判断が遅れればこの額はさらに膨らむだろう。日立には、日本政府に忖度することなく、正しい経営判断を行うことを望みたい。(満田夏花)

注1)日立が英原発建設計画「断念も視野」 建設費増大で(テレ朝、2018年12月10日)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000142690.html
注2)<東証>日立が上昇に転じる 「英原発建設、断念視野」と伝わる(日経、2018年12月10日)
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL10HJL_Q8A211C1000000/
注3)日立、英原発計画を凍結へ(共同、2018年12月16日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181216-00000040-kyodonews-bus_all
注4)日立の英原発計画「もう限界」採算見通し厳しく(共同、2018年12月17日)
https://this.kiji.is/447329326390936673?c=39550187727945729
注5)日立の英原発事業、電力大手との出資交渉難航(日経、2018年12月16日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39012980W8A211C1TJC000/

サヨナラCoal! – 気候変動に脅かされる途上国市民社会からの声

action 2昨年のCOP23の会場において、日本が市民社会からの厳しい批判を受けたことを皆さんは覚えているでしょうか。それから約1年、日本の化石燃料融資に対する批判の声が、再びCOPの会場内に響き渡りました。

会場内でのアクションでは、特定の国名や企業名は名指しできないという制約があるため、工夫を凝らしてのアクション。気候変動の脅かされる途上国市民社会からの声が叫ばれました。

インドネシアで鉱山開発問題などに取り組むJATAMのスタッフ、アルウィヤ・シャウバヌ氏は、“日本はインドネシア有数の石炭事業への融資国。日本の国際協力銀行は、北カリマンタンの鉱山開発、そして(他の州での)石炭火力発電所に融資している。これらの鉱山や石炭火力発電所の建設計画地近くでは人権侵害が横行し、環境が汚染され、(住民たちの)土地も奪われ、そして生計手段をも奪っている状況です。日本はいますぐ、この私たちの生活を奪う破壊的な事業をやめるべき。”とスピーチ。

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FoE Japanの深草も、次のようにスピーチしました。

日本はG20の中で、化石燃料事業に対する最も高額な公的資金の融資国。世界の平均気温上昇を1.5℃に抑え、世界の温室効果ガス排出量を今世紀後半までにゼロにすることを目標に掲げたパリ協定の採択後も、日本の石炭火力発電の技術は高性能であると謳い、未だに融資を続けている。日本が融資している事業は、気候変動の影響を悪化させているだけなく、近隣住民への人権侵害、土地収奪、そして生計手段の喪失を引き起こしている。日本においても、今年の夏に度々見舞われた豪雨のように、気候変動の影響を無視できない状況になりつつある。今、日本に求められているのは、気候変動への影響に対する歴史的責任の下、途上国への削減支援する資金の拠出、そして、人々の命を中心に据えた気候変動への解決策であるべき”
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action 1また、気候ネットワークインターンの塚本悠平さんからは、

“日本が今本当に必要としているものは石炭ではない。必要なのは、再生可能エネルギー100%の社会への移行だ。今、行動を起こさないと、気候変動はより悪化し、将来世代への影響が大きくなる。エネルギーの効率化や再生可能エネルギーの技術など、私たちはすでに解決策を持っている。政府の皆さん、今すぐ、方向転換を。”

温室効果ガスを最も排出する電源である石炭火力からの脱却の流れが世界で加速している一方、日本はいまだに国内外で石炭火力を推進しています。昨年COP23期間中にも、日本の丸紅株式会社がベトナムで低効率の石炭火力発電所事業を進めていることが発覚し、大きな批判を呼びました。しかし、批判を浴びたにも関わらず、2018年4月に日本の公的金融機関である国際協力銀行は、同事業への融資を決定しています。

この一年間、気候変動の影響を受ける途上国の市民社会は期待をもって見守っていたはずです。しかし残念ながら、日本は世界の期待に応えるようには進んでいません。また、米国の環境団体によると、G20諸国の中で公的資金を使って化石燃料を支援している最大の国は日本であると報告されています (注1)。パリ協定の温度目標達成のためには今世紀後半の脱炭素化が必要であるため、石炭だけでなくその他の化石燃料からの脱却も加速する必要があります。今、方向転換できなければ、今後ますます孤立の道を歩むことになりかねません。

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(高橋英恵・深草亜悠美)

(注1) http://priceofoil.org/content/uploads/2017/07/talk_is_cheap_G20_report_July2017.pdf

COP24 二週目突入 – 交渉の行方と抑圧される市民社会

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COP24も2週目に差し掛かりました。1週目は主にパリ協定のルールブックづくりの技術的な部分が話し合われました。技術的な交渉は8日土曜日に終結する見込みでしたが、今週11日火曜日まで延長されました。二週目は閣僚級が集まるハイレベル会合が開催されます。

この間、COPに参加する市民団体のメンバーらが国境で強制送還されたり、カトヴィチェのホテル滞在中に突然拘束され強制送還される事例が報告されています。確かな数はわかっていませんが、100名以上のNGO関係者らが入国拒否されているとの情報もあります。

強制送還や拘束の理由は不明です。入国拒否をされた人の中には、過去に何度もCOPに参加したことがあるNGOスタッフや、政府代表団の一員としてCOPに参加する予定だったNGOスタッフも入っているとのことです。

このような深刻な人権侵害の状況をうけて、FoEインターナショナルはじめとする市民団体は抗議声明を発表し、拘束・強制送還された仲間の状況を確認している状況です。12月10日にCOP24会場内で行われた記者会見では、少なくとも12名がポーランドから強制送還・拘置されている350.orgの東欧グループのメンバーから「基本的な人権を奪わないでほしい。拘束される理由もない。ポーランド政府による明らかな市民社会への弾圧だ。皆さんの助けが必要です」と発言がありました。

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COP会場では、石油会社や原発企業が、ガスや石炭(”クリーンコール”)推進、原発推進のサイドイベント開催を許される一方、市民団体への監視や締め付けが厳しくなっています。本来であれば、気候変動の影響を受ける人々の声ほど政策に反映されるべきです。気候変動の影響をより受けやすい脆弱なコミュニティや人々の人権が保護されること、資金にアクセスできること、その他必要な技術支援が受けられることが重要です。

交渉の中でも、COP決定(COP交渉の最後に採択される文章)におけるIPCCの1.5度レポートへの言及について強い対立があり、主にアメリカやアラブ諸国がIPCCへの言及に反対しています。気候変動の「損失と被害」に関する言及や扱いについても、温室効果ガス排出責任を問われることを取り分け恐れるアメリカが、非常に強く反対しており、他の先進国もそれを支持しています。

私たちにはあまり時間が残されていません。今までの1度の気温上昇でも、すでに被害が広がっています。

気候変動の背景には、化石燃料の開発・利用をいまだに止めようとしない企業、人権やコミュニティをないがしろにし、利益を優先して環境破壊・資源収奪・搾取を行うネオリベラリズム経済が存在します。そういった新経済主義を体現する企業が交渉に強く干渉し、また人々の声がないがしろにされることに非常に強い危機感を覚えます。

(深草亜悠美)

【日々のくらしの裏側で – vol.4】気候変動という危機を放置していいのか?袖ケ浦石炭火力発電所建設計画に立ち向かう人々

“石炭火力発電は海の魚が住めない環境をつくったり、屋外でも活動は控えてくださいとか、住んでいる住民の生活や健康を害してしまう。これは子供達、子孫に対する今生きている人間の犯罪になるとうふうに、私は考えているんですね。”

 

そう語るのは、袖ヶ浦市民が望む政策研究会の富樫孝夫さん(以下、富樫さん)。富樫さんの住む町、袖ヶ浦では、出光興産(株)、九州電力(株)、東京ガス(株)の3社が共同出資して設立した(株)千葉袖ケ浦エナジーが、大型の石炭火力発電所2基の建設を計画しています。同発電所の建設予定地は、一般の住宅地から一本大きい通りを挟んだ奥にある工場地帯内にあります。

 

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(建設予定地。住宅地から一本大きい通りを挟んだ奥にある、出光興産株式会社のバルクターミナル内にある。)

 

なぜ、袖ヶ浦の石炭火力問題に向き合うことを決意したのか。そして、自分たちの住む地域に石炭火力発電所ができるというのはどのような気持ちなのか。

富樫さんをはじめ、この建設予定の石炭火力発電所の建設計画の向き合う地域住民である川上宏さん(以下、川上さん)、石田俊道さん(以下、石田さん)に、お話を伺いました。

 

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(左から富樫さん、川上さん、石田さん)

 

まず、活動を始めたきっかけについて。石田さんがお話しくださいました。

“私がこの活動をやらなければならないという意識はですね、温暖化とか、あるいは環境問題で多くの人がやはり健康を害していると、前から新聞で見ていて関心もありました。でもやはり、それは意識だけではなく、行動して示して阻止していく、改善をしていくというのが大事だという気持ちが50代くらいから芽生えてきて。会社務めだったものですから、なかなか行動は取れなかったんですけどね。この問題は富樫さんが事務局でチラシを配ったときに知りました。今はもう定年になりましたので、ようやく自分の考えで行動をできるという時間ができたというのもあって、より多くの人々に、一人でも多くの人に活動に参加してもらいたいと思って、この活動をしています。”

 

より多くの人々に、一人でも多くの人に活動に参加してもらいたいと考える石田さん。何が一番問題と考えているのでしょうか。

“やはり、石炭火力発電所で発生する大量のCO2が温暖化につながること。それに、私達の住んでいる地元でも喘息のお子さんもおりましたし、大気汚染につながっていくことも問題です。それから、夏場になりますと光化学スモッグ注意報が発令されるんですよ。で、屋外でも活動は控えてくださいと。袖ヶ浦市の空を守るということから考えると大変なことになってきているなと。それなのに、石炭火力発電所が新しく新設されるということになると、ますます大気汚染になって、住んでいる住民の方々に健康を害するということになっていく。そういうことですから、ぜひともこれは阻止しなければならないと思っているところです。”

 

この答えに重ねるようにして話してくださったのは、袖ヶ浦市民が望む政策研究会のメンバーとして、この石炭火力発電所の問題に率先して関わってきた川上さん。

“いま、温室効果ガスが400ppm濃度を越したということは地球人類の危険が迫っているということなんですよね。450ppmを越したら命にかかわると言われています。そういう状況で、ボケッとしていていいのかという、子供達、私達のあとに残る子供達のために自分ができることなんて少ないけれど。ただね、本当に、異常気象だとかなんだとかの問題を通り越しちゃっているんですよね。COP24なんかでさらにきつい話になるだろうと、この問題についてきちんと向きあってほしいと期待しています。”

 

続けて、富樫さんがこの活動にかける想いを話してくださいました。

“石炭火力発電は海の魚が住めない環境をつくったり、屋外でも活動は控えてくださいとか、住んでいる住民の生活や健康を害してしまう。これは子供達、子孫に対する今生きている人間の犯罪になるとうふうに、私は考えているんですね。あと、今、川上さんがCO2が400ppm超えたという話が出ましたけど、ちょっと振り返ってみるとね、私が高校生の時、新潟地震があったんですね。そのときに石油タンクがなんと15基、火災になったんです。あと、北海道の十勝地震のときでしたかね、そのときも同じように石油タンクが爆発した。そして今回の3.11のときも、コスモ石油の石油タンクが燃えました。爆発自体も十分怖いことで危険だけれど、今、CO2濃度が上がると、大変なことになるんだよということが世界中で言われている。しかしながら、それを無視してね、事業者も一般市民もそれをよく真剣に考えようとしていない。そういう環境だけれど、でも、だからこそ、なんとか少しでも多くの人に危険だよと、大変なことが迫っているんだよということを、微力かもしれないけれど知らせたい。それを伝えていきたいという気持ちです。”

 

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(建設予定地付近の海岸。釣りをしている 人を多く見かける。)

 

一人でも多くの人に伝えたいという富樫さん。これからどのような活動をお考えなのでしょうか?

“今は、出光興産の社長に手紙を書くということを一生懸命やっています。そして、これからやろうとしていることははがき作戦ですね。出光興産に向けたはがきを皆さんに配って、市民の方から直接コメントを書いて送ってもらってね、市民がどれだけその関心を持っているか、どれだけ嫌だという気持ちを持っているかということを、社長に感じてもらうということを考えています。やはり、社長さんの立場からすれば、やはり金稼がなきゃいけないわけだから、環境に悪いことはわかっているけれどもやりましょうというふうな気持ちもあると思う。でも、そこは踏みとどまってもらわないと。やっぱり市民の声を届けていくというのをやりたい。なので、出光興産の本社が有楽町のところにありますね、皇居のすぐとなりですけど、ここ(袖ヶ浦)からそこまで出かけていって、直接訴える。同時に、社長に対する会談も申し入れようかというふうなことも考えています。”

 

また、千葉で作られた電気を使っている人々へのメッセージを、石田さんよりいただきました。

“私はですね、都心に住んでいる方に対しては、皆さんがお使いの電力は東京湾岸の発電所で発電した電気を使って働いているとか、あるいは住まわれているということを考えてほしい。その電気はどこに作っているのかというと、都心ではなくて、その周辺のところで工場地帯で作っているということになります。発電所のある周辺では光化学スモッグが発生しているとか、煤塵が発生しているとか、喘息のいる子供が多いとか、そういう自体を踏まえた上で、そういうところから送られてきた電気ではじめて生活しているんだと。そこで、都心の真ん中に、自分たちの使う電気を発電する発電所作ったらどうかという話になったら、いやそれは困るという判断になる。でも遠くから来るから、自分たちは直接の関係はないからと、無関心のままで、過ごされているということも多いかと思います。でも、そうじゃなくて、全国のいろんなところで作って、いろんな犠牲があってはじめて生活ができているということを自覚してもらってほしい。それで、じゃぁ住んでいるみなさんがそういう発電所の近くでも安心して生活ができるような環境をつくる、あるいはそういう設備に改造していくとか、そういうかたちでの改善を図っていく、というのが必要だと思います。あと、富樫さんが先程言ったように、環境を汚染する電力を発電させないとか、切り替えていくというようなことを率先してやってもらいたいなと。

住民の方含めてですけど、今の地球を守っていくとか、大気汚染を防ぐとか、そういうことで生きている喜びというのを皆さんで分かち合えるような、そういう形にしていきたい。私達の環境は皆さんの力で、改善をしていきたい。皆さんの協力が必要です。”

 

インタビューの中で浮き上がってきたのは、はたして私達は、あたり前のように使っている電気がどのような環境の下で作られているのかについて、気をめぐらせたことがあるのだろうかということ。

そして、次の世代のために、良い環境を残していきたいという意志を強く感じました。

 

また、余談ではありますが、文化を意味する”Culture”という言葉は、耕すという意味の“Cultivate”と語源を共にします。そして “Cultivate”という言葉は、“土地に気をかける(care)”という意味を含んでいるそうです。

ここから考えられることは、”Culture”という言葉にも”care(気にかける)”という意味が込められているのではないかということ。では、いったい何を気にかけるのか。それは、将来世代なのではないでしょうか。

袖ケ浦の方々から発せられた「魚の住めない環境をつくったり、住民の生活や健康を害したりする環境をつくったりすることは、子孫に対する今生きている人間の罪なのでは」「地球人類の危険が迫っている状況でボケッとしていていいのか」「今の地球を守っていくことを通して、生きている喜びを皆で分かち合えるような社会にしたい」という言葉のように、将来世代を気にかけるということこそ、本来の「文化(culture)」の意味なのではと考えます。

 

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(袖ケ浦の未来に青空を。記念撮影)

(高橋英恵)

 

<関連記事>

・インタビュー記事:「【日々のくらしの裏側で ーvol.1】横須賀石炭火力発電所建設計画への地元高校生への目線

・インタビュー記事:「【日々のくらしの裏側で – vol.2】過去の経験から未来へ。あの公害を繰り返したくない。

・インタビュー記事:「【日々のくらしの裏側で – vol.3】きれいな空気は誰のもの?命を脅かす石炭火力発電所の恐さ

・袖ケ浦石炭火力発電所建設計画に関する署名はこちら

・動画:近日公開

【日々のくらしの裏側で – vol.3】きれいな空気は誰のもの?命を脅かす石炭火力発電所の恐さ

11月4日、三浦で開催された横須賀石炭火力発電所について考えるセミナーに参加されていました、横須賀市在住の大竹裕子さん。子育てをするために横須賀に越してきた矢先に、喘息が発症したそうです。喘息を持つ立場として、お住まいの横須賀に石炭火力発電所ができるということについて、どのように感じていらっしゃるのか、伺いました。

 

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“私は子育てするためにこちらに移住してきたんです。父たちが先に来ていたのもありますけれども。すごくいい環境で子供を育てたいなっていうふうに思ったので。なのに、妊娠中にはじめて病気が発症して、大きな発作を起こしてしまったんですね。で、赤ちゃんの命に関わると言われて。強い皮下注射でその場は命拾いをしたんですけれど、それからはとにかく死なないように、予防に徹していました。喘息って、一回起こすともう器官が健常な人の半分しかなくなってしまう、死に至る病気なんです。例えば、健常の方はストロー、太めのストローを口に加えて24時間生活してみてください。それでわかります。それくらいの呼吸量になってしまうんです。なので、煙とかタバコとか、お線香とかもできるだけ避けるようにしないといけないんです。ここは冬も暖かいくらいすごく温暖で、気候もいいですけれども、自然環境もものすごくいいんですね。ですから、ここ(横須賀)では風邪も引きづらいはずなんです。医学的な証明はできないんでしょうけど、喘息になったのはそれがきっかけじゃないかなと、思っています。”

 

この横須賀の石炭火力発電所の問題はどのような経緯で知ったのでしょうか?

まず広報です。市の広報で、石炭を利用した発電所ができるので、この計画についてJERAという会社が説明をするから集まってくださいという呼びかけを受けて、参加しました。“

 

そういった説明会などの誘いがあったとしても参加されない方もいらっしゃる中、なぜ、説明会へ参加しようと思ったのでしょうか。

”この横須賀には核燃料棒を作っている会社があって、もともとは核燃料棒の活動をしていたんです。その活動も、きっかけは3.11でした。3.11があって、まず最初の行動は官邸前に、国会前に一人で行きました。そこには、自分と同じようにポツンポツンと来る女性・男性がとても多くて、話してみると、やっぱり何をしているかわからないけどとりあえずここに来てみたと、そういうような自分と同じ人が多かったんですね。それで、官邸に集まるようになりました。たくさん人数が集まって、変えられると思ったのもあるんですけど、地元に燃料棒を作っている会社があることをもっと地元の人に知らせなきゃっていうことで、その核燃料棒の活動を立ち上げたんです。それを7年間、もう8年目ですけど、みんなに可視化するという行動を続けていたところ、エネルギー関連だったということもあって、たまたま石炭発電所が久里浜に来るということを知ったんです。ありえないですよね、この時代に石炭なんて。なので、すぐに参加しようと思いました。”

 

最後に、大竹さんが描く横須賀の未来をお聞きしました。

“とにかく命が大事にされること。あと、人間の尊厳が大事にされることだけですね。あと、幸せに、美味しいものを食べて、幸せに暮らせる未来。戦争は、もちろんない。戦争は環境を壊す一番の大罪だと思っているので。そうですね、人間も生物も、すべての人がありのままに暮らせる未来がいい。やっぱり自分や家族、自分の周りの人、自分と関わり合いのある人達が幸せでなくてはいけないと思っているので。そのために頑張りたいと思います。”

 

この横須賀の石炭火力発電所の建設計画。横須賀石炭火力を考える会の鈴木陸郎さんもおっしゃっていましたが、営利目的の計画であることは明白です。

利益のためなら、命はないがしろにされていいのか。横須賀の石炭火力発電所の計画において、私達はこの点は問いただしていくべき論点と考えています。

(高橋英恵)

 

<関連記事>

・動画:「日々のくらしの裏側で〜神奈川県横須賀市久里浜

・横須賀署名スタート!詳細はこちら

・インタビュー記事:「【日々のくらしの裏側で ーvol.1】横須賀石炭火力発電所建設計画への地元高校生への目線

・インタビュー記事:「【日々のくらしの裏側で – vol.2】過去の経験から未来へ。あの公害を繰り返したくない。

 

気候変動における汚染者負担の原則「フェアシェア(公平な分担)」を考える

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COP24の期間中、気候変動の排出目標に関する市民社会レビュー「パリ協定以降 – 格差、公平な分担、気候危機」(以下、市民社会レビュー)が発表されました。「市民社会レビュー」は研究者やNGOらのグループによって2015年から毎年発行されている研究レポートです。公平性の観点から、過去に遡って気候変動へどれだけ影響を及ぼしてきたかという歴史的責任を鑑みて、各国がどれだけ温室効果ガスの削減責任を負うべきなのかを計算したものです。今年の市民社会レビューは国別の削減責任を計算するだけでなく、それぞれの国の中でも貧富の格差が広がっていることも考慮に入れたレポートになっています。

10月に発表されたIPCCの1.5度特別報告書では、平均気温の上昇が2度の場合と1.5度の場合では気温上昇による被害に非常に大きな差があることがわかっています。同時に、必要な措置を行なえば1.5度に抑えることは可能であるということもわかっています。1.5度以下に抑えるためには「エネルギー、土地利用、都市、インフラ、そして工業システムを迅速に変えていく」必要があります。

地球規模で気候変動への責任を考えると、先進国により大きな責任があり、また先進国にはより多くの責任を果たすための金銭的・技術的能力があるのは明らかです。下のグラフは、世界の人口を収入で低い方から10等分して縦軸にとり、各階層の1人当たりの収入を横軸で表したものです(「貧困のシャンパングラス」)。最富裕層のトップ10%が、世界の富の50%を得ています。一方、たった10%の富が、世界人口の最下位50%に、そして40%の「中間層」が残り40%を占めています。中間層といっても、実際は非常に貧しいのが現状です。またこの10%の富裕層が、世界の温室効果ガスの50%を排出しています。
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レポートによると、温室効果ガスの歴史的排出量にもとづいて排出削減量を計算すると、先進国や一部の新興国は現在排出している以上の削減が必要になります。つまり、途上国における削減を支援しない限り、削減量における「公平な分担」を全うすることができません。すなわち先進国である日本は、国内排出ゼロを達成し、同時に途上国への削減支援(および適応、損失と被害への支援)を行わなくてはいけません。

先進国に歴史的責任がある一方、先進国内での貧困の格差も深刻になってきました。レポートは、国際的なレベルでの国家間の公平性を求める一方、気候変動対策のために必要な社会変革のあり方として、貧困層や、化石燃料企業の労働者などが必要以上にコストを支払うことなく、むしろ貧困層や労働者、脆弱なコミュニティーがトレーニングや社会的保護を得られる形で変革を起こしていくべきだと結論づけています。

レポートの本文はこちら

【日々のくらしの裏側で – vol.2】過去の経験から未来へ。あの公害を繰り返したくない。

都心から近く、海と山に囲まれた地域ということで移住者の多い三浦半島。

その三浦半島の一端である横須賀市久里浜に「(仮称)横須賀火力発電所新1・2号機建設計画」の建設が計画されています。

この建設計画は、東京電力フュエル&パワー(株)と中部電力(株)が共同出資して設立した(株)JERAが、横須賀火力発電所内の発電設備を撤去し、新たに設備容量65万kWの石炭火力発電設備2基を建設するものです。

現在、環境影響評価法等に基づく環境アセスメントの手続きが進められていますが、長期計画停止していた既存設備の更新と位置づけられ、環境負荷の実測値との比較が行われない等の課題を抱えており、既存設備解体工事は住民への説明も不十分なまま既に進められています。

そのような中、2017年4月、この問題について考える市民団体、横須賀石炭火力を考える会が発足しました。この一年間、横須賀だけでなく逗子や三浦、鎌倉で横須賀石炭火力の問題についての学習会を開催してきた、同会代表の鈴木陸郎さんにお話を伺いました。

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(横須賀石炭火力を考える会、鈴木陸郎さん)

 

この横須賀の石炭火力発電所の建設計画はどのような経緯で知ったのでしょうか?

“発電所ができるらしいよという話を聞いたんです。それで、いろいろ調べたらやっぱりそうだったということでした。それまで石炭火力はあまり意識したことがなかったので、どんなものになるかってことをまず知ろうとして、経産省外郭団体の研究所の方に横須賀に来ていただいて、いろいろ話を伺ったのが最初でした。そこで、石炭火力に頼らなくとも電気は十分足りると、しかも節電とか、再生可能エネルギーで十分やっていけるという話を伺った。その時先生が強調されたのが印象的でした。というのも、節電というと「我慢」ということをよく言うでしょ。でも、そんなに我慢しなくとも節電は可能だということを話されて。だから、生活の水準を落とさずに節電と再生可能エネルギーで産業もやっていけるし、私たちの暮らしも十分エネルギーが足りるという話をされたんです。ふりかえって横須賀の計画のことを考えると、これは必要のない火力発電所を作る計画だということだと。その間に温暖化の問題があるし、大気汚染物質が出るということも同時に学んで、じゃぁ横須賀で何かしなきゃというのでみんなで相談して、それから半年ぐらいかかって、今の考える会(横須賀石炭火力を考える会)をみんなで立ち上げたと。こういうことです。”

 

具体的に横須賀発電所の計画はどのようなものか、教えていただきました。

“ここはもともと石油を燃料にした発電所があったんです。作られてから、40年50年以上経って施設が古くなって、長期の計画停止となり全く発電しなくなってからしばらく経っているんです。その古い発電所を解体して、新しく発電所を作るんですけれど、その燃料を今度は石炭に変え、石炭火力発電所として作ろうとしているわけです。

今、世界的に見ても、石炭火力というのは温暖化ガスの問題があって廃止していくという状況にも関わらず、石炭を燃料にしようとしているんですよ。しかも、65万キロワットの発電所を2基作る。2基合わせて130万キロワットになるわけですけれど、130万キロワットというのは大型の原子力発電所と同じぐらいの能力を持つ、そういう大きな発電所なんですね。電気が足りないかというとそうでない。十分電気が足りているのに、燃料を石炭にして、ここに発電所を作ろうとしているわけなんです。” 

 

電力が十分に足りている。それなのに、なぜ新しい発電所を、しかも、世界に環境対策に逆行するような石炭を燃料とする発電所がなぜ建てられるのか。その理由を尋ねると、次のような答えが。

なぜかというのはよく聞かれます。けれど、それはやっぱり、現時点で石炭が燃料として一番安いからなんですね。一番安い燃料で作れば、安い電気ができると。電力自由化の中で、事業者は競争にさらされているわけですから、競争に打ち勝つだめには、安い電気を作ると。こういう事情で石炭を選んでいると思うんですけど。果たして、石炭がいつまでも安い燃料かというともうそうでない。自然エネルギーの方がコストがずっと安くなっていくというのが世界的な流れになっていますので。必ずしも、今事業者が考えているように、石炭が安い電気を作る燃料ではない。これからそういう時代になってくる。別に発電することに反対しているわけではないの。ただ、環境的にも、経済的にも問題がある発電所を作るということを、問題と考えているわけです。”

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(現在解体作業中の横須賀火力発電所。振り返るとすぐ目の前にマンション、新築の戸建が経つ。)

アセスメントの制度が十分に整っていない時期に当初の発電所が建設されたからか、建設予定地のすぐまわりにはたくさんの住宅が。この横須賀計画について、近隣住民の反応はどうなのかというと、そもそも計画を知っている人がほとんどいなかったそうです。そればかりか、たとえ知っている人がいたとしても、次のような反応だったそう。

“たまたま知っている人がいても、高効率のいい、新しい技術の発電所が作られるのだから問題ない、という受け止めだったんです。ですけども、知らないという方が圧倒的に多かったという状況自体といいますか、これだけのものを作ろうというのに事業者は周りの住民に知らせないというのはどういうことなんだろう、ということを最初の頃はよく考えました。”

 

計画のことを知ったとしても、「そうなんだ」と終わってしまう人が多いのが、悲しくもこのご時世。無関心の多い中で、どうして会を立ち上げようと思ったのでしょうか?

“どうしてと言われても困ってしまうのだけれど、私達の年代からすれば、いわゆる公害問題を経験している。私自身は公害で健康を害したということはなかったですけど、そういう悲惨な状況を同じ世代が経験しているわけですよ。それで、公害問題が起こったときも、「公害対策にお金をかけたら産業が大変になっちゃうからほどほどに」という議論があって、それと非常によく似た論理で温暖化問題が言われているわけですよね。節電すると電気をいれなくなるだとか。非常に似た構造だと思ったんです。そうなると公害問題をそれなりに経験してきた立場からすればほっとけないという気持ち。このままの社会を残したら持続ができないというのがはっきりしてきているじゃないですか。それを私達の世代が作ってきたわけでしょ。それをそのまま残していいのかというのがやはり問われる。そういう気持ちがあったんですよね。だからできるときにできることをやらないと。やっぱり後悔するかなという思いで。”

 

公害問題をそれなりに経験してきた立場からすれば放っておけないという鈴木さん。放っておけないと思うほどの公害は、実際どのような経験だったのでしょうか。

“若いときに川崎に住んでいました。その時の川崎というと、もう公害の街と言われていたんですね。まだ完全に公害がなくなっているわけではないんですけども、やっぱり公害問題を克服したまちというか、今は若い人にすごい人気のあるまちになっていますよね。

川崎にいた頃は工場から出てくる煤塵がうちの中まで入ってきてね、朝出ていって、帰ってくると、テーブルの上がザラザラするというような、それぐらいひどい時代があったんです。

それからもう一つ、東京も昔は自動車の排ガスがひどいときがあったでしょ。幹線道路の沿線で喘息とか、公害病になる人が非常に多かった時期があった。その頃、私の甥なんですけど、東京の大学に来ているときに喘息を患って、公害認定患者になったんです。もう亡くなったんですけどね。当時、東京では暮らしていけないというので田舎に帰ったんですけど、その喘息がとうとう治らなくて、何べんも発作を起こして緊急に入院したり、それから喉を切開して人工呼吸をやったり。そういう非常に悲惨な状況で暮らさざるを得なかった。その甥はサッカーの好きな子で、とても身体の丈夫な甥っ子だったんですけどね。そういう公害病の恐ろしさというのは自分の身内にもいたということでね。本当に目に見えないですから、大気汚染物質というのは。目に見えないのに病を起こすというそういう経験もあって、そういう思いは他の人にしてほしくないというのはとても強く思っています。”

 

「放っておけない」という鈴木さんの想いから始まった横須賀石炭火力を考える会。会を立ち上げてからは何をされてきたのでしょうか?

“一番多いのは学習会。何回も重ねましたし、それから横須賀の会が立ち上がったときにちょうど千葉県の蘇我、袖ヶ浦の方でも同じような運動をしているということを気候ネットワークの方を通じて知って、同じ問題抱えているのなら、連絡会のようなものを作って、いろいろ情報交換すれば運動に役に立つのではないかということで、それから1ヶ月か2ヶ月くらい後に、東京湾の会(石炭火力を考える東京湾の会)立ち上がったわけです。そこで、一緒に環境省への申し入れをしたり、それぞれの事業者に直接申し入れをしたりしてきました。”

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(写真:三浦のセミナーで計画の概要を説明をする鈴木さん。)

 

活動していての感触について尋ねると、

“環境省の担当者の方たちは環境問題に熱心でね、温暖化の問題をこのまま放置してはだめだという思いが共通していて、お互いに頑張っていきましょうというようなやり取りをしたことはとても印象的でした。ただ、アセスの審査会を何度も傍聴したとき、その審査会の先生方が非常に頑張っていらっしゃるのはよくわかるんですけど、なかなか審査員の先生方と私達との間で情報交換ができていなくて。審査会で私たちの声をもう少し反映できたらなという思いは今でもあります。そういうつながり研究者とのつながりをもっと早くからつくることが出来ていれば、と。あと、事業者には私たちの力が及ばないなと常々感じますね。事業者の方はやっぱり事業ですから利益が上がるということを目指してやっているわけですから。けれども、それでも今は事業者への働きかけを強めなきゃいけないのかなという感じを持っています。”

 

横須賀の会の活動の働きかけもあり、近隣住民のこの問題に対する周知は高まったそうです。

 “事業者は近隣住民に説明する責任がもちろんあるから、環境アセスメントの書類(注1)を提出するたびに説明会を開くわけ。でも、環境アセスメントの方法書が提出されたときに説明会が実施されたんですけど、参加したのは30人くらい。2か所合わせて60人か70人くらいしかいなかったんです。そして、次に環境アセスメントの準備書が提出された。できるだけ多くの人に計画を知らせるというのは事業者の役割ですけれども、この時は私達も住民に呼びかけて。そうしたら全体で410名も集まって、会場が溢れて、第2会場、第3会場を準備しなくてはいけないような状況になりました。質問時間も1時間くらいしか用意していなかったのに、さらに延長1時間半というほどになりました。そういう状況を作ったというのは、それなりに関心がやっぱりあって多くの人が集まってきたと思います。“

 

これからどのようなことをやっていこうとしているのでしょうか?

“これからやらないといけないこと、たくさんあるんです。準備書が出されて、それで、環境大臣がそれの準備書に対する意見を出しているんです。これはとても厳しい意見です。いまでさえ、今運転している石炭火力発電所も止めなきゃいけないほどのCO2を出しているわけですね。減らさなきゃいけない状況の中で、新しく作るっていうのは、30年とか40年、CO2を出し続けるということになってしまうでしょ。世界的に見れば石炭火力はやめましょうという時代なのに、先進国がやめるときに日本がピークを迎えるというような、そういう状況ですから、やっぱりいろんな人にまだまだ訴え続けてですね、やらなきゃいけないことはまだいっぱいあると思っているんです。事業者に対してもやはり環境大臣があれだけ厳しい意見を出しているのに、事業者がそれに対する答えを出して、公表するという場面がないんですね。ですから、そういうこともこれから事業者に対して聞いていく必要があるかなというふうに考えています。”

 

最後に、この活動にかける想いを聞きました。

“横須賀というのは本当に温暖な気候で、とても住みやすい場所なんですね。そういう場所でありながら米軍の基地があって、その他にこういう石炭火力の発電所ができるなんていうことになると、非常にこう、環境の恵まれた町がいわば財産を失っていくみたいな、そういうことになる。ですけれども、やはりそうでなくて、自然豊かな町で、それを求めて都会からも多くの人が横須賀に移り住んでくれると。そういう時代になるというふうに思いますのでね、東京湾の側もいいところですし、相模湾の方も、そこなんかは本当に景観も優れているし、気候も本当にいいところですので、そういう町にずっとしていきたいというふうに思っています。

今はまだこの計画を知らない人も多いけれど、とにかく話を聞いてもらえれば、理解してもらえる話ではないかな。昨日の三浦での勉強会でも、「電気がたくさんあった方がいいんじゃないか」という質問があったけれど、あの方の気持ちからすれば、電気というのは余裕を持っていっぱい持っていれば、何かあったときにちゃんと電気が供給できるじゃないかと、だから発電所はいっぱいあったほうがいいと。そういう意味でおっしゃっていたのかなと思いました。やっぱりそういう人多いと思うんですよ。当然だと思います。だから不自由なく暮らしているわけなのでね。でも、そういうことは起こらない。ここに石炭火力をつくらなくとも、そういう問題は心配しなくともいいということも知らせたい。ここに新しく石炭火力発電所を作ることによって30年40年、温室効果ガスを出し続けるということになると、世界中で石炭火力がなくなってしまったときに、日本だけがそういうことをずっと抱えているということになったら、いろんな面で支障があると思うんですね。だから、世界の流れから見ても石炭火力をやめることは当然のことなので、理解してもらえると思っています。とにかく、反対運動のようにだけとられちゃうと、その入口でシャットアウトされちゃうんでね、だからそうでない、ポジティブな、例えば再生可能エネルギーをどんどん増やしましょうというメッセージと一緒に、石炭火力はそういう意味ではブレーキをかけるし、時代遅れになってしまうよという、そういう形で伝えていけば、どんどん受け入れてもらえるというふうに考えていますね。”

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(公園から建設予定地が一望できる。計画では、遠くに見える海を隠すように、発電所が建設される予定となっている。)

 

鈴木さんの描く横須賀の未来像。それは、鈴木さんだけでなく、横須賀の人々全てが描くものなのではないでしょうか。

その一方、建設予定地を視察した際に痛感したのは近隣住民の無関心。発電所のすぐ隣には、建設されてから日の浅そうなマンションや、新築の戸建てがありました。そのマンションの前の通りに立ってみると、途切れることなく響く解体工事の音。また、現在はまだ旧発電所の解体段階であるものの、石炭火力発電所が稼働した場合には、多くの排煙を浴びることになりそうです。そのような状況にも関わらず、建設予定地周辺には、建設計画に対する反対のバナー、のぼり等は全く見られないという風景。

 

横須賀石炭火力を考える会のfacebookでは、石炭火力発電所問題について積極的に情報発信しています。ぜひ、フォローしてみてください。

(高橋英恵)

 

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・動画:「日々のくらしの裏側で〜神奈川県横須賀市久里浜

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・インタビュー記事:「【日々のくらしの裏側で ーvol.1】横須賀石炭火力発電所建設計画への地元高校生への目線

 

(注1)環境アセスメント(環境影響評価)とは、大規模な開発事業などを実施する際に、事業者が、あらかじめその事業が環境に与える影響を予測・評価し、その内容について、住民や関係自治体などの意見を聴くとともに、専門的立場からその内容を審査することにより、事業の実施において適正な環境配慮がなされるようにするための一連の手続きをさす。事業の開始に当たっては、配慮書、方法書、準備書、評価書の4段階をふむ必要がある。詳細はこちら

【COP24】サイドイベント報告:Reclaiming Power 〜化石燃料からのフェーズアウトを目指して〜

12月4日、Friends of the Earth インターナショナル(FoEI) は、他のNGOとともにCOP24の会場でサイドイベント「“Reclaiming Power: The People’s Global Movement to Phase Out Fossil Fuels for Real Climate Action(パワーを取り戻そう!真の気候アクションのための世界的な脱化石燃料の動き)」実施しました。同イベントで発せられた、世界各地の仲間からのメッセージを紹介します。

 

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Philippine Movement for Climate Justice(フィリピン)の代表イアン・リベラ氏は「中国、韓国、日本の石炭火力プロジェクトへの融資は、誰も望んでいない。」と発言。

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FoE EWNI(England, Wales, North Ireland)のレイチェル・カナーリー 氏は「脱石炭だけでは安心はできない。石油、LNGといった化石燃料も採掘時の環境への大きな悪影響、採掘場付近ではパイプラインの設営を巡っての問題がある」と発言。FoE EWNIはフラッキング(ガスの採掘方法の一種で、多大な環境負荷が発生する)に対するキャンペーンを展開しています。

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FoE ナイジェリアのワリ・オバワンジュ氏からは「地産地消の、再生可能なエネルギーが必要だ。LNGは利権争いなど紛争を地域にもたらしている。」とのメッセージがありました。

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また、参加者から化石燃料への代替案として、原発利用が提案されましたが「原発は、その建設過程から運営に至るまで非民主的に進められる。また、放射能に対する対処法がまだない。原発国フランスでは放射能漏れによって、何日も水が飲めないということが起きた。」との回答が登壇者からありました。

イベントでは、石炭をはじめとする石油や天然ガスといった化石燃料、原発、メガソーラー等、環境に悪影響を与え、人々の生活を脅かすエネルギーを“Dirty Energy(汚いエネルギー)”として批判。FoE グループは非民主的で、環境負荷が大きく、気候変動を加速させるエネルギーを”汚いエネルギー”であるとして反対しており、もちろん原発にも反対しています。

日本が直面しているエネルギーの問題は、今、世界のどの国でも直面している問題なのだと肌で感じます。

みなさん、これでも石炭を、化石燃料を、原発を進めますか?

これら“Dirty Energy”を「必要悪」と捉える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、誰かの犠牲の上に成り立つエネルギーは、本当に必要なのでしょうか?

危険で有害なエネルギーに拠らない経済の仕組みや社会のあり方に、私たちは正面から向き合わなければならないと感じました。

(高橋英恵)

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COP24カトヴィチェ会議 – 公平性の担保と今すぐの行動強化を!

12月2日、ポーランド・カトヴィチェにて国連気候変動枠組条約締約国会議(COP24)が開幕しました。この会合は14日まで続き、パリ協定の実施指針(ルールブック)の採択が目指されています。

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すでに世界の気温は産業革命前に比べ平均約1℃上昇しています。今年の日本では、記録的な猛暑や土砂災害などが発生し、それにより多数の犠牲者が出ています。世界各地でも異常気象が多発し、とくに備えの乏しい途上国の貧困層が大きな影響を受けています。10月に出された国連科学者機関のIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の1.5℃特別報告書によると、気候変動の影響はすでにとても深刻で、気温の上昇が1.5℃の時と、2℃の時では被害や影響に大きな差があることがわかりました。
しかし、各国の気候変動に関する国別目標(NDC)を積み上げても、2℃はおろか、3℃以上の気温上昇が予想されています。21世紀末までの気温上昇を1.5℃までに留めるよう努力するというパリ協定の目標とは程遠いのが現実です。1.5℃目標を達成可能とするには今後10年程の間に現在の国別行動計画の大幅な強化が必要とされ、もう時間の猶予はありません。

カトヴィチェ会議の主要論点

パリ協定の実施指針(ルールブック)

2015年に採択されたパリ協定に基づく、2020年からの実施にあたり必要な実施指針(ルールブック)の採択がCOP24にて求められています。
途上国は全ての要素が議論され、パッケージで実施指針が採択されることを求めていますが、先進国は2020年からの運用に直接関わる部分や緩和の部分を強調し、それ以外を先送りにしようとしています。
途上国は、適応や、資金や能力に欠ける途上国への支援(NDC実施に重要になる先進国による資金支援の事前情報通告など)を重要視していますが、支援問題を実施指針の議論と切り離したい先進国と対立しています。

1.5℃レポート

今年10月に、IPCCによる1.5℃目標に関する特別報告書が出されています。1.5℃目標をいかに行動に落とし込むか、どのようにCOP決定に反映されるのかが注目されています。1.5℃レポートの内容からも、今すぐの行動強化が必要であることがさらに緊急性を持って明らかになりました。とくに気候変動の被害を受ける途上国は1.5度目標を決定文書に反映させることを望んでいますが、先進国の中にはCOPの最終的な決定文での言及を避けようという動きがあります。

Pre-2020(2020年までの行動強化)

気候変動を抑制するためには、今すぐの行動が必要ですが、パリ協定の実際の実施は2021年からです。そのため先進国が8年前のCOP16で約束した2020年までの行動強化(Pre-2020)が特に途上国から求められていました。2020年より前の行動強化は会議の公式議題に入っていませんが、2020年前の行動強化に関する閣僚レベルのラウンドテーブルが2週目に予定されています。
京都議定書の第二約束期間の発効に関わる「ドーハ改定」の批准・発効や、途上国の国別行動に必要な先進国から途上国への資金支援などの強化が求められています。

タラノアダイアログ

パリ協定では、各国がおこなう気候変動への国別目標を定め、5年ごとに報告と目標の引き上げを行います。最初の報告が行われることになっている2023年に5年さきがけて、2018年に促進的対話が行われています。(COP23の議長国フィジーにより「タラノアダイアログ」という新たな名称があたえられています)促進的対話を通じ、各国がどれだけ目標を引き上げることができるかが鍵となります。
2018年に国連に提出されている先進国の報告によると、1990年から2016年までの排出削減は、土地利用転換による排出を除くと13パーセント。2010年から2016年までの先進国(アネックスI)による排出量に限ってみれば、4.4パーセントでした(出典)。
日本はすでに自主的な2020年までの削減目標を達成しています。タラノアダイアログでは「どのように目標を達成するのか?」、「現在の進捗は?」、「ゴールは?」という三つの問いが与えられていますが、そもそもなぜこのような状況になっているのか?という問いかけはなされていません。現在の気候変動は先進国や一部の富裕層が多くの温室効果ガスを排出し発展してきた結果です。先進国は歴史的責任を直視し、早急な2020年及び2030年までの行動強化と目標強化が求められます。

資金

これまで気候変動を引き起こしてきた先進国には途上国に対し資金・技術支援をする義務があります。途上国の気候変動対策実施のためには、資金支援が不可欠です。COP16において先進国は2020年までに年間1000億ドルの追加的資金支援をすることを約束していますが、オックスファムがまとめたレポートによると、2015年~2016年の間に拠出された額は年間160億ドル〜210億ドルにとどまります。一方、資金常設委員会からUNFCCCになされた公式の報告では、2016年、先進国による二国間の資金援助を積み上げると380億ドルの拠出が、そしてOECDは2017年に567億ドルが拠出されたと計算しています。
COP2週目には閣僚級の資金に関するラウンドテーブルが予定されており、資金支援についても注目されます。

先般、途上国がNDCの一部を実施するだけでも、3兆5千億米ドルの資金が必要というレポートも発表されています。先進国は途上国支援における民間資金の動員を強調しますが、求められている気候資金は、適応活動や政府の実施能力向上などに必要なもので、営利目的の民間資金ではカバーできないところが多く、先の見通しを立てやすく市場動向に左右されない公的資金であり、既存の開発支援に対し追加的であることが重要です。また、すでに気候変動の被害が深刻な途上国においては、緩和に加え適応や被害への支援が重要です。GCF(緑気候基金)を通じて拠出された気候資金は、半分が緩和、半分が適応に振り分けられることを目指していますが、2017年にFoE USが発表した調査によれば、適応に振り分けられた資金は27パーセントでした。GCFの原資も尽きており、2018年3月の理事会で資金追加のプロセスがようやく合意されましたが、気候変動の影響が深刻化する中、先進国によるさらなる資金支援は急務です。

損失と被害

途上国側が重要視する論点の一つは、損失と被害です。気候変動による損失と被害はすでに途上国で多く現れていますが、COPの中で議論する場所が十分に設けられていません。アメリカは、賠償の議論つながる損失と被害への言及を強硬に拒否しており、他の先進国もそれにならっている状況です。COP19で設立された損失と被害のためのワルシャワ国際メカニズム(WIM)で議論が行われていますが、乏しい予算や人材で十分に活用できていないのが現状です。損失と被害に関するCOP内での議論や支援強化が求められています。

市民社会

COP会場では毎回、世界各国から訪れる政府交渉団に対して、またメディアを通じて、世界にメッセージを発信するために市民社会が様々な働きかけやアクションを行なっています。ポーランドは石炭大国であるということもあり、温室効果ガスをもっとも排出する石炭からの脱却求めるアクションが行われることが予測されています。しかし、ポーランド政府はCOP開催にあたり、警察に対しCOP参加者の個人情報にアクセスできる権限を与えたり、事前に許可されないアクションは禁止する時限法を制定し、市民社会の動きを抑制しようとしています。

FoE Japanは会議場内での議論を注視し、気候変動の被害を最も受ける人々の声をアクションや提言など様々な形で伝えていきます。

(小野寺ゆうり・深草亜悠美)