【横須賀石炭訴訟報告 vol.7】被告の不誠実な対応を問う

本日、横須賀石炭火力行政訴訟の第7回期日が開催されました。

被告からの反論陳述が予定されていた今回、被告の反論書面があることを最初に確認しました。原告と被告の双方の提出書類等の確認後の意見陳述は、原告からの陳述から始まりました。

今までの裁判では、原告適格温暖化による漁業への影響環境アセスメントの簡略化の非整合性などが原告の主張の主な内容でしたが、今回は少し角度が変わり、被告の裁判に対する姿勢を問う陳述がなされました。

一般的に裁判では、双方の弁護人や裁判長ともに「事実」と「主張」をしっかり峻別し、「事実」を否定する場合は、その具体的理由を持って否定することが民事訴訟規則で定められています。

民事訴訟法規則79条3項「準備書面において相手方の主張する事実を否認する場合には、その理由を記載しなければならない。」

(経済産業省による横須賀火力発電所の環境影響評価の確定通知取り消しを求める本裁判は、被告が行政機関である行政訴訟ですが、行政訴訟であっても、規定上、民事訴訟規則を参照する場合があるとのことです。)

しかし、過去6回の弁論を含む本訴訟において、被告は原告の主張を「事実」や「主張」の峻別を行わずかつ具体的根拠なしに否定しています。この対応について、裁判に臨む基本的姿勢として不誠実であると主張されました。また、被告である経済産業省は国の行政機関の一つです。しかし、他の行政機関が認識していることを否定するのは、行政としての一貫性がなく問題でありあることを指摘しました。

具体的に、陳述を行った半田弁護士は、上記の根拠として2つ例を挙げられました。

一つ目の例は、「石炭火力発電の温室効果ガス排出量は、天然ガス火力の温室効果ガス排出量のおよそ2倍である」という原告側主張の事実について、資源エネルギー庁による平成27年11月の資料では、この事実について掲載されています。

二つ目の例として、原告が主張する「エネルギー転換部門における温室効果ガス排出量は増加傾向にある」という事実について、総合エネルギー統計によれば、エネルギー転換部門の温室効果ガス排出量は1990年比増加傾向にあることが読み取れます。

*いずれもFoE Japan作成。本画像は法廷で示された資料のイメージを促すイメージであり、法廷で提示された資料とは異なります。

このように、客観的事実も否認するような態度は裁判の運営を妨げるものであること、そして先に紹介した民事訴訟規則79条3項を無視する対応であることも指摘しました。

噛み合わない被告の回答

また、事前に提出されていた原告の主張に対する被告の反論書面について、小島弁護士から、

「原告の『事実』に関する主張資料は、国の公式な報告書に基づいて具体的な例を出している。それにも関わらず、今回被告が提出した反論書類には、その事実についての認否がなされていない。それは、原告の事実に関する主張については争わないとの理解で良いか?」

との指摘がありました。

この指摘について、被告側代理人は

「『争わない』という趣旨ではない」と返答しましたが、

「『争わない』ということは、政府が出している報告書を否定するということか。日本政府も気候危機に関する資料などを出しているが、それを否定しているということか」

小島弁護士が問い直したところ、

「今後の対応について検討させていただく」との回答でした。

このやりとりを聞いていた裁判官は、

「裁判の目的は真相究明。出された証拠をから判断していくしかなく、(反論)の主張がない場合はそういうことだと理解する。なお、(原告の主張以前としての)『事実』の認否の仕方について議論するのはいささか不毛である。とはいえ原告の指摘する『事実』と『主張』の峻別は大事で、事実を否定する場合は具体例をもって反論すること」

とのコメントがあり、閉廷しました。

今回の裁判の傍聴の参加者には、建設地の様子がよく見える団地に住んでおられる方もいらっしゃいました。日々クレーンが忙しく稼働し建設が着々とすすむ様子にも、今回のようになかなか終わりの見えづらい裁判にも、焦りを感じられていました。

次回の裁判は9月3日(金)14:00〜、東京地方裁判所の予定です。

また、今回(第7回期日)に関する報告会は、5/28(金)17:00〜18:00、オンラインで予定しております。ぜひご参加ください。

オンライン報告会の詳細については後日こちらに掲載されます。

https://yokosukaclimatecase.jp/news/20210517-7th-court-date/

先進国として、着実な気候変動対策の強化を

世界の流れとしては、先月のバイデン米国大統領主催の気候リーダーズサミットで多くの国が気候変動対策目標の引き上げを宣言し、ドイツでも「現状の気候変動目標は違憲である」との判決が出されるなど、気候変動対策の強化が急速に進んでいます。また、来月のG7に向けて、主催国の英国がG7各国に「石炭火力全廃」を提案する動きが出ています。このような中、石炭火力や、未だ実用化されていないアンモニア混焼や水素混焼にしがみつく日本は、時代に取り残されているどころか、先進国としての無責任と言えます。

新型コロナウイルス禍にも関わらず、地元横須賀では裁判に並行し、横須賀火力発電を考える会や有志市民による石炭火力発電所建設についての住民アンケートの実施や、Fridays For Future Yokosukaによるアクションなどが弛むことなく行われています。FoE Japanは、横須賀石炭火力発電所の建設中止に向け、地域の方々や若い世代とともに活動していきます。

*FoE Japanの国内石炭火力問題に関する活動はこちら

(高橋英恵)