企業の株主総会で気候変動アクション!

近年、企業に対し気候変動対策の強化を求めて株主が行動を起こすケースが増えています。機関投資家の動きはこれまで注目されてきましたが、海外ではNGOが自ら株主となり、企業に対し気候変動対策の強化を株主提案し、可決されるケースも出てきています。

日本でも、昨年気候ネットワークがみずほ銀行に対し株主提案を、今年はマーケットフォースが住友商事に、そしていくつかのNGOが合同で三菱UFJフィナンシャルグループに株主提案をしています。

参考:株主総会ピーク 気候変動問題へ取り組み強化求める提案相次ぐ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210629/k10013109341000.html

FoEJapanは他のNGOとともに株主総会会場近くで、企業の関係者や総会に参加する株主に対し、アピールを行いました。

住友商事は2050年に住友商事グループのカーボンニュートラル化を目指すことや、原則として新規の発電事業・建設工事請負には取り組まないとしています。しかし、実際には今も新規石炭火力発電所への関与を完全には否定していません。バングラデシュ・マタバリ石炭火力発電事業はその一つ。住友商事はすでに建設中のマタバリ1&2号機に関与していますが、新規の3&4号機ついては、今も「参画の是非を検討する」としています。

マーケットフォースの株主提案は否決されてしまいましたが、日本の大手商社に対して気候変動の観点で出された初めての株主提案としては一定以上の賛成票を集められたのではないかと評価する声もあります(参考:東洋経済オンライン「住友商事、気候変動の株主提案「賛成2割」の重圧 「脱石炭」に遅れ、石炭火力完全撤退は2040年代」https://toyokeizai.net/articles/-/436303)。

みずほ銀行の株主総会でのアクションの様子

脱石炭ポリシーを掲げている三菱商事、新規石炭火力のEPCに参画

三菱商事に対しては、すでに脱石炭方針を掲げているにもかかわらず、今でも新規石炭火力発電事業に参画を続けていること、カナダで進めているLNGカナダ事業に関連して先住民族の反対や人権侵害が発生していること、またミャンマーの軍に利する可能性のあるガス事業に参画している問題点などを指摘し、三菱商事に対しては問題ある事業からの撤退を、そして株主総会に参加する株主たちに三菱商事に対し気候変動・人権ポリシー強化を求める質問等を行なうようアピールしました。

今後も企業に対し様々な形で気候危機対策や、脱化石燃料を求めていきます。

(深草亜悠美・杉浦成人)

「分断ではなく共生を」地域住民抜きの事業に声をあげる、徳島県陸上風力発電所を視察して

6月20日、徳島県那賀町、上勝町、神山町周辺の陸上風力発電所を視察しました。

お話を伺ったのは、徳島県那賀町の「風力発電とまちづくり(共生)を考える会」を立ち上げた桑高仁志さんです。桑高さんは群馬県出身ですが、新潟県の地域復興支援員を経て、8年前に徳島県那賀町の地域おこし協力隊に。現在は古民家ゲストハウスを営む傍ら地域づくりの活動をされています。

桑高さんが風力発電事業に関心を持ったのは、2018年、隣町の方から徳島西部・天神丸での陸上風力事業-(仮称)天神丸風力発電事業について相談を受けてからでした。一杯のそばで買収されたと、冗談を交えながら、そのきっかけを話してくださいました。

「天神丸の事業について話を聞いて、で、環境影響評価書の配慮書が縦覧開始されるというのを町の広報誌で知って、調べてみてインターネットで見てみたら、300ページくらいある。こんなもの地元の爺さん婆さん見ないと思って。だから、要約してわかりやすいリーフレットみたいにしないと地元の人はどこで何が起こるのかがわからない。それで勉強会の資料を作って、公民館押さえても町は周知をさせてくれない。中立ですといっても、公民館や役場の掲示板をつかわせてもらえず、移住者がこうした話題を取り上げることにタブーを感じた。」

きっかけとなった天神丸での計画は2021年5月末に見送りとなりましたが[1]、2020年、徳島南部の那賀町での計画が持ち上がりました。新型コロナによる一回目の緊急事態宣言期間中の縦覧は町広報での事前周知もありませんでした。オンライン縦覧こそ行われましたが、桑高さんは、オンライン中心の縦覧だと地域のお年寄りは取り残されるという問題を指摘します。

とはいえ、県内では、風力発電に疑問を持つ人はとても少ないといいます。

「風力を問題視できる人が少ない。やっぱりメリットとして、雇用が生まれるんじゃないかとか、土木が潤うとか。再生可能エネルギーじたい必要なんだし。たぶん電気代安くなるんでしょとか。あと、考えることをやめてしまっている人たち。何もないところにやって来てくれる。そこに期待してしまう。町としての戦略はずっと林業。今までの産業を、どう守っていくかという考え方だからなかなか新しい雇用が生まれてこない。」

そのほかにも、住民や行政積極的になりづらい理由があるようです。

「那賀町の木頭地区[2]ってところが、過去にダムを「作る」「作らない」で二分された。分断のせいで、村の助役が自殺するようなことも起きた。住民運動の結果、ダムは作らないことになったけれど、そのせいで県にずっと睨まれ、道路の拡張工事とかをしてもらえなかった。村が賛成反対で二分されたという過去があるところに、風力でまた賛成反対の議論になってしまうと。またいざこざが起きると。でも、俺からしたら、声をあげなかったら議論が始まらない。だったら、中立でいいから、事業者からどうやってメリットを引き出すかという知識をつけていきましょうよ、ということをずっと言っているんですけどね。どうしても、登山家とか自然の愛好家とか外部の人から「反対」の声が先に上がってしまう。でも、風力が建つ山を持っている山主はお年寄りで、山が売れないという後ろめたさや、少しでもお金になるんだったらという淡い期待をもってしまう。地元の人は賛成も反対も言わないオロオロしている状態のときに周りの意識高い系の人たちが反対って言っちゃうんですよ。移住者もそうだけど。そうなると地元は、賛成したい人もいるのに反対って言えなくなっちゃう。神山は実際風力が立つにあたって立て看板で「絶対反対」って言っている。海陽町の方は、県議を巻き込んで運動しているが賛成反対の構図ではまた分断が生まれてしまう。」

また、徳島県那賀町の立体地図を見せながら、徳島の風力発電の状況をお話くださいました。

「今稼働中のところは佐那河内(大川原ウインドファーム[3])。今建設中なのがこの上勝神山あたり(上勝・神山ウインドファーム[4])。あと、天神丸ってところで計画されたけど2021年撤回になって(天神丸風力発電事業[5]、オリックス株式会社、144,900kW、42基)、JAG国際エナジーがあたらしくやろうとしているのが木沢から鷲敷までのこの黒い尾根(那賀・勝浦風力発電事業[6])と海陽町(那賀・海部・安芸風力発電事業[7])。天神丸あたりは四国の中でも1000m超えで、ブナの原生林もあって、この辺で風力発電建てられるんだったら、四国はどこでも建てられるでしょって話になるんですよ。だから、那賀町が毅然とした態度で挑めば、建てていい場所、建てちゃいけない場所の基準が出てくると思うんです。また四国で20数頭しかいない絶滅危惧種のツキノワグマ生息域もあるため、ゾーニング(事業適地の絞り込み)をちゃんとやってほしい。クマなんかいらないという地元の人もいれば、クマがいるってことはそれだけ生態系が豊かであるということだから残した方がいいっていう人もいる。」

上勝・神山ウインドファームの建設現場へ

桑高さんにお話を伺ったのち、桑高さんと一緒に、現在建設中の上勝・神山ウインドファームに向かいました。自然観察指導員でもあり森林活動ガイドでもある登山家の坪内強さんが現場を案内くださいました。

左:ヤマツツジ、右:鹿が木の皮を食べた跡

上の写真は、T1の設置場所の脇にある登山道を進んでいった時の風景です。写真を撮った場所と写真の赤丸で囲ったところは本来繋がった登山道だったそうで、陸上風力の部品を運び込むために山が削られ、上記の写真のような形となったそうです。「再エネの主旨はわかる。でも、自然のかたちをここまで変えて発電所を作る必要があるのか?」と案内くださったお二人は漏らします。

風力発電事業への住民の思い

上勝神山ウインドファームの建設現場視察後、意見交換を行いました。

大川原ウインドファームの発電基を見上げながら、坪内さんは、大川原ウインドファームでは、冬の期間、風車のブレードが凍ること、その氷を取り除く作業を時々やっていることをお話くださいました。タワーのブレード上部に届く60m位の高さのクレーンで氷を除去している。現在建設が進む(上勝神山ウインドファームの)高さ80mの風車は、冬期の積雪期には現在のメンテナンス方法では厳しいのではと懸念していました。

また、事業と地域の関わりについても、地域で得たエネルギーなら、電源交付金のように地元にお金を落とすべきところ、風力にはそんな仕組みはなく、何か地元に利益が還元する仕組みがあればよいのですがと話していました。

年に20回は、この尾根を歩いている。ある時、巨大な風速計が山の中に立った。それでなんやろと思っていたら、土質調査のボーリングが始まった。その後重機が入って大規模に山を削り、自然林を伐採して建設用地と作業道が造られた。その結果、家内と四季折々山野草を楽しみながら歩いた尾根筋は通行できなくなってしまった。自然を楽しんで歩く「四国のみち」も尾根道から林道に変更されてしまった。那賀町の建設予定地はサラサドウダン絶滅危惧2類などの珍しい植物が自生していて建設による絶滅が心配される。造形物と自然の美しさ、どちらを残したいか。私は反対って立場ではない。ただ、現場をみて皆に考えてもらいたい。

また、今回一緒に建設現場を視察した、勝浦町の農村体験型宿泊施設や上勝町のキャンプ場で働きながら地域自家発電の研究に携わる新居彗香さんは、

「風力発電事業は桑高さんのSNSの投稿を通じて事業に興味を持った。風力の何が問題なのか分からず、いい点、悪い点を知りたかった。地元では、大川原高原はとても流行っていて、いいじゃんという人が多い。」

と、地域の多くの住民の様子を教えてくださいました。

それに付け加えるように、桑高さんも、風力発電のできる地域は住民が普段来るようなところではなく、地元の人すら行ったことのない山で事業を計画されるから関心持ちづらいと、住民の関心をあげる難しさを教えてくださいました。とはいえ、桑高さんが考えていきたいことは、「風力発電と共生する地域づくり」だといいます。最後に、桑高さんに、徳島での陸上風力発電事業(那賀町と海陽町の事業)について、どのように関わっていこうと考えているのかお聞きしました。

今は準備書前の現地調査をする段階。考えているのは、この間にうまく事業者を引っ張り出せないかと考えている。事業者は、地元が反対していたとしても調査はさせてほしいと言っている。その結果、できるかできないかを協議させてほしいという立場。だから、事業者にうまいこと「じゃぁどういう共生を考えているんですか?地元の小学生中学生と一緒に考えませんか?地元の人が何をしたいのかを聞く場面を設けますんで、よかったらきませんか?」というのをやりたい。子どもとの共生WSとかだったら向こうも断りづらいだろうし。僕は風力発電を、自分たちの町の未来を前向きに考えるテーマとして積極的に捉えようってスタンスなんです。僕は、町のみんなが自分の町の未来を考えるお手伝いをしたい。

一呼吸あって、桑高さんはこう続けました。

「共生というのは一つのキーワードのはず。いいもの悪いものってのはやっぱり皆で議論して初めてわかるもの。事業者のベストの形もあるし、行政のベストな形もあれば、住民のベストな形もあるので、そのすり合わせはやっぱりしないとダメなんです。

僕は、風は地域の資源だと思っている。便利な言葉で、『7つの風』という言葉がある。風土とか風味とか風習とか、風がつくる7つの景観があると。風によって地域は形作られているんだから、その風を使うなら地元が一番その恩恵を受けられるよう対話をしていく必要があるのではないかと思う。」

エネルギーを考えるうえで大切なこととは

今回の視察を通じて、改めて、生活のためであるはずの電力なのに利益追求のための電力になっていること、事業への賛成/反対の議論が地域の分断をもたらしてしまうこと、その分断を恐れ何もいえなくなっている状況を目の当たりにしました。

脱原発や気候変動の防止の観点から、再エネは重要なエネルギー源です。再生可能エネルギーのポテンシャルが高い地域から、大消費地に送電する方法もあります。しかし、事業を誘致すれば自治体にお金がはいるような仕組みができたとしても、それは地域の内発的な活動を阻害したり、地域の人々の分断を生んでしまったりするようなものは、再生可能エネルギーであったとしても許されないはずです。

建設現場の一部をみていても、本当に必要な伐採だったのか、排水や廃棄物の影響をどのように考えているのか、工事で出てきた作業土はどこに行くのか、山に生きる動植物への影響などの疑問が残りました。事業のライフサイクルにわたった環境・社会影響の調査、評価、予測、対策の強化の必要性を感じます。

また、陸上風力発電の建設が進む神山町では、戦前は地域や各戸の小水力発電があり、コミュニティベースで管理していたそうです。しかし、大規模供給にあたり、小水力発電で発電したものを電線に繋げようとすると不具合が生じることから、四国電力は住民の水車を買い上げたり水車を閉じさせたりして、今では住民の中で小水力発電のノウハウがなくなっているということもあるようです。

一方、桑高さんとお話する中で、事業の進め方によっては、住民を巻き込んだ民主的な地域づくりの可能性を感じました。

化石燃料依存社会から脱炭素社会への移行は、単なる「エネルギー・チェンジ」ではなく、発電所周辺の住民の声が無視されたり、発電機の製造に必要な資源や燃料を搾取されたりすることのない電力システムへの「システム・チェンジ」であってほしいと思います。

(高橋英恵)

*再生可能エネルギーの持続可能性に関するFoE Japanの見解はこちら


[1] 2021/5/29、徳島新聞「オリックス、風力発電計画の事業化見送り 美馬、神山、那賀の3市町境

[2] 2005年、鷲敷町、相生町、上那賀町、木沢村、木頭村が合併し、那賀町となった。

[3] 株式会社ユーラスエナジーホールディングス、最大19,500kW(1,300kW x 15基)

[4] 株式会社ユーラスエナジーホールディングス、最大34,500kW(2,300kW x 15基)

[5] オリックス株式会社、最大144,900kW(42基)

[6] JAG国際エナジー、最大96,000kW程度

[7] JAG国際エナジー、最大96,000kW

Dear Shareholders of Mitsubishi Corporation

To prevent Mitsubishi Corporation from being left behind in the race to zero emissions

Did you know?

Mitsubishi Corporation’s commitments include a 30% renewable energy ratio in power generation, decarbonization of coal by 2050, and the promotion of ammonia, carbon dioxide Capture, Utilization and Storage (CCUS), and hydrogen-related businesses. The company says they are committed to protecting the environment and addressing climate change issues, but these are far from those contained in the Paris Agreement, which seeks decarbonization of society by 2050.

A recent report released by the International Energy Agency (IEA) (Net Zero by 2050) called for zero investment in new fossil fuel development after 2021 in order to achieve net zero greenhouse gas emissions in 2050. Not only coal but also gas may become “stranded assets” in the future.

Mitsubishi Corporation should not only accelerate its efforts to eliminate coal, but also withdraw from other new fossil fuel businesses.

Indigenous peoples are protesting in Canada

Mitsubishi Corporation is involved in the development of shale gas and the construction of a liquified natural gas (LNG) terminal in British Columbia – LNG Canada project.

Indigenous peoples and local NGOs have voiced opposition to these developments and the development of gas pipelines, which threaten indigenous peoples’ lands and accelerate climate change. However, armed police are violently suppressing these protests.

Canadian citizens expressed outrage at the police crackdown.

Strikes in solidarity with indigenous peoples have spread across Canada

Photo: Michael Toledano

The United Nations is keeping a close eye on this project

The Coastal GasLink pipeline, which is being constructed to transport fracked gas to Mitsubishi Corporation’s LNGCanada project, is being constructed without the consent of indigenous peoples. Therefore, the UN Committee on the Elimination of Racial Discrimination is calling on the Canadian government to immediately halt the construction of the Coastal Gas Link pipeline project, the Trans-Mountain pipeline project as well as the Site C dam until they obtain their Free Prior and Informed Consent (FPIC).

Mitsubishi Corporation also has its policy on indigenous peoples’ rights stating, “in the context of its overall commitment to respecting human rights, [Mitsubishi Corporation] pays special attention to upholding the rights of indigenous peoples, acknowledging their unique social and legal status under national and international laws, as well as their unique histories and cultural contributions throughout the world.”

Continuing this project would pose a reputation risk to the company.

Please speak with Mitsubishi Corporation

Please urge Mitsubishi Corporation to withdraw from the LNG Canada project and establish a stronger environmental policy.

Contact: Friends of the Earth Japan info@foejapan.org

三菱商事の株主の皆様へ

三菱商事が脱炭素の流れから
取り残されないために

ご存知ですか?

三菱商事は環境保全や気候変動対策に取り組んでいますが、その内容は、発電事業における再生可能エネルギー比率30%、2050年までの脱石炭、アンモニアやCCUS・水素関連事業の推進など「2050年までの社会の脱炭素化」を求めるパリ協定からは程遠い内容です。国際エネルギー機関(IEA)が最近発表したレポート(「Net Zero by 2050」)では、2050年温室効果ガス排出ネットゼロのためには2021年以降新規の化石燃料開発への投資をゼロにすべきと示しました。今後石炭だけでなく、ガスも「座礁資産」化する恐れがあります。三菱商事は脱石炭の加速だけでなく、その他の新規化石燃料事業からも撤退すべき時に来ています。

カナダで先住民族が反対の声をあげています

三菱商事はカナダ・ブリティッシュコロンビア州でシェールガス開発やターミナル建設(LNGカナダ事業)を行なっています。これらの開発やガスを運ぶためのパイプライン開発は先住民族の土地を脅かし、気候変動を加速させる懸念があり、先住民族や現地NGOが反対の声をあげています。しかし、こうした先住民族等の抗議を武装した警官が暴力的に弾圧しています。警察による過度の弾圧に対し、カナダの市民も怒りの声をあげました。先住民族に連帯して行われたストライキはカナダ全土に広がりました。

Photo: Michael Toledano

国連もこのガス開発事業を注視しています

三菱商事のLNGカナダ事業にガスを運ぶために建設が進められているコースタル・ガスリンク・パイプラインは、特に先住民族の反対が大きく、先住民族の同意を得ずに建設が進められていることから、国連人種差別撤廃委員会が「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(free, prior and informed consent)」が得られるまで、コースタル・ガスリンク・パイプライン事業、トランス・マウンテン・パイプライン事業、サイトCダムの建設を即時中止するよう連邦政府に求める決議を行いました。また三菱商事自身も「人権尊重のコミットメントの一環として、先住⺠がいる地域での事業活動においては、先住⺠が固有の文化や歴史 を持つことを認識し、事業活動を行う国・地域の法律や国際的な取り決めに定められた先住⺠の権利への配慮を行います。」としています。このまま事業を継続することは、三菱商事に評判リスクももたらします。

株主の皆さんも一緒に声をあげてください

ぜひ三菱商事に対し、LNGカナダ事業からの撤退、より強力な環境方針の設定を求めてください。

LNGカナダ事業に関する情報はこちら

連絡先:国際環境NGO FoE Japan | info@foejapan.org

先住民族の権利や豊かな自然を破壊するガス開発 – 日本の官民は撤退を

日本の官民が関わるガス開発に反対し、弾圧されている先住民族がカナダにいることをご存知ですか?

温室効果ガスの排出が石炭と比べ少なく、再生可能エネルギーが普及するまでの「つなぎ」とみなされることが多いガス。しかし、ガスも化石燃料であることから、気候変動対策にはなり得ません。それ以外にも、たくさんの課題があります。

カナダのブリティッシュ・コロンビア(BC)州で進められている大規模な新規ガス開発現地には、人権や環境を脅かすこの開発に長年反対してきた先住民族がいます。「太古の昔から、私たちは大地と調和のとれた関係を保ってきました。私たちは大地に生かされており、大地を守る責任があるのです。…彼らは私たちを私たちの土地から抹消しようとしています。」2019年4月、国連先住民族問題に関する常設フォーラムで先住民族のフレダ・ヒューソンさんはそう演説しました。現地で何が起きているのでしょうか。

カナダ最大規模の大型LNG事業

カナダはこれまで、採掘したガスの多くをアメリカに輸出してきました。しかし、アメリカ国内でガス生産が増加していることに加えアジアでのガス需要の増大を見越して、液化天然ガス(LNG)をアジアに輸出するカナダ初の大型LNG事業が進んでいます。この事業は主に3つの部分で構成されています。

(地図出典:Coastal Link Gas Pipeline)

1)ガスを採掘するためのモントニー・シェールガス開発事業(地図右上部、Dawson Creekあたり。)

2)採掘場から輸出ターミナルにガスを運ぶためのコースタル・ガスリンク・パイプライン事業(CGL事業)

3)ガスを液化、貯蔵、そして輸出するためのLNGカナダプロジェクト(地図左側、Kitimatエリア)

三菱商事、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、国際協力銀行(JBIC)がモントニーでシェールガス開発事業に関与し、同じく三菱商事が出資するLNGカナダプロジェクトに対してもJBICが融資の検討を行っています。また、BC州で新規の大型ダム(サイトCダム)の建設も進んでおり、この事業はガス開発に電力を供給するために進められているとも言われています。

先住民族の権利を無視した開発

この大型ガス開発では、特に670キロメートルのパイプライン敷設事業に関して強い反対の声が上げられてきました。パイプライン事業は、先住民族Wet’suwet’enの土地を通過する計画ですが、Wet’suwet’enの伝統的酋長らは同パイプライン事業に合意してません。

2019年1月7日、BC州最高裁判所が先住民族の反対運動を違法とみなし、パイプライン建設を認める判決を下しました。この判決は、先住民族の土地に関する決定権は先住民族にあるという過去の判例をそもそも無視しているとの指摘もありました。しかし、この判決を根拠に建設を進めようと、数十名の武装した警官が反対運動を続ける先住民族に弾圧行為を加えたのです。警官はチェーンソーで障害物を破壊して強制的に土地に侵入し、14名を逮捕しました。

先住民族の権利が侵されている事態に対し、国連人種差別撤廃委員会(Committee on the Elimination of Racial Discrimination)は2019年12月13日付けで、「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(free, prior and informed consent)」が得られるまで、コースタル・ガスリンク・パイプライン事業、トランス・マウンテン・パイプライン事業、サイトCダムの建設を即時中止するようカナダ連邦政府に求める決議を発表しました。

しかし、翌年の2020年2月6日現地時間朝3時すぎ、再び数十名の武装した警官が非暴力行動を続ける先住民族を強制退去させようとし、28人を逮捕しました。この件はカナダ全土で大きく報じられ、カナダ国内外70都市以上で先住民族の人々への連帯を示すアクションが行われました。こうした状況をうけ、連邦政府・BC州・先住民族(Wet’ensuwet’en)の間で、「Wet’ensuwet’enの土地に係る権利を認める」とする覚書が結ばれました。それにもかかわらず、この覚書には一連のガス事業についての言及はなく、その後も、パイプライン建設は継続されてしまっています。

カナダ連邦政府は「先住民族の権利に関する国際連合宣言(United Nations Declaration on the Rights of Indigenous Peoples, UNDRIP)」を2016年に採択しており、BC州も同宣言を実施する決議を行っています。先住民族の土地への権利はカナダの最高裁で認められているにもかかわらず、その反対の声や平和的な抗議活動が武装した警官によって抑圧されているのが現状なのです。

環境負荷の高いシェール開発

フラッキングという手法を使って採掘されるシェールガスには多大な環境影響が伴うことも問題です。シェールガスは地下数百から数千メートルに存在する頁岩(けつがん)層に含まれます。その採掘のために頁岩層まで掘削を行い、岩に割れ目(フラック)を作り高圧で水を注入し破砕する(水圧破砕法またはフラッキング)必要があり、高い環境負荷が生じます。地震誘発、フラッキングのために注入する水による水質汚染、大気汚染、メタン排出による地球温暖化などのリスクが指摘されています。このような問題のため、フラッキングは2011年にフランスで禁止され、2012年にはブルガリア、その後ドイツやアイルランドでも禁止されています。モントニーでも過去にフラッキングが誘発したと見られる地震が発生し、一部で操業の一時的停止措置がとられています。

ガスはつなぎのエネルギー?

ガスは、石炭火力よりもCO2排出が少ないことから、再エネに転換されるまでの「つなぎのエネルギー」と言われることがありますが、大きな間違いです。

気候変動に関する国際条約であるパリ協定は、地球の平均気温の上昇を1.5℃までに抑える努力目標を掲げており、これを達成するためには2050年までに世界の温室効果ガスの排出を実質ゼロにする必要があります。つまり新たなガス田の開発や採掘、ガス関連施設を建設することは、新たな温室効果ガスの排出を長期にわたり固定(「ロックイン」)することに繋がり、パリ協定の目標とも合致しないのです。LNGカナダプロジェクトは2024年度中から40年稼働が計画されており、計画通り進めば2050年を超えて運転することになり、パリ協定と整合しません。

さらに最近国際エネルギー機関(IEA)が発表したレポート(「Net Zero by 2050 A roadmap for the global energy sector」)は、パリ協定の達成のために新規のガス開発投資もやめるべきであると示し、大きな注目を集めました。

三菱商事を含む企業、そして融資に参加する銀行は、今すぐ先住民族の権利侵害への加担をやめ、事業から撤退すべきです。

★事業の詳細はこちら
★先住民族グループからJBICに対して送付された書簡はこちら

写真は全て(C) Michael Toledano

(深草亜悠美)

「処理水」?「汚染水」? どっち? そして、何をどれくらい放出するの?

FoE Japanの満田です。この記事を図でざっくりまとめるとこんな感じです。

もう少し詳しく解説します。

政府は、福島第一原発の敷地でタンク保管されている処理汚染水について、今年4月13日海洋放出を決定しました。

また、同日、経済産業省は「トリチウム以外の核種について、環境放出の際の規制基準を満たす水』のみを『ALPS処理水』と呼称する」という、少し不思議なプレスリリースを出しました。

さて、この水をめぐっては、政府は従来「ALPS処理水」と呼び、海洋放出に反対する人たちは「汚染水」と呼んでいます。まあ、処理しているのを強調したいのか、まだ汚染されているのを強調したいのかの違いでしょうか…。ただ、政府は、「汚染水」という報道を見かけると、結構しつこく、いや失礼、こまめに、「いや処理水です」と訂正に努めていたようです。

FoE Japanでは、間をとって、というわけではありませんが、「処理されているが放射性物質は残留している水」ということから、「処理汚染水」と呼んでいます。

ところが、タンクの水の7割において、どうしても取り除けないとされていたトリチウム以外の放射性物質について全体として基準を超えているのです。

この水は、事故で溶け落ちた燃料デブリを冷却する水と、建屋内に流入した水が混じった正真正銘のこ~い「汚染水」をALPS(多核種除去装置)など何段階にわたって処理しています(下図)。

残留しているのは、ヨウ素129、ルテニウム106、ストロンチウム90、セシウム137など…。ストロンチウム90というのは、骨にたまる怖い放射性物質。ヨウ素129は、半減期は1570万年で気が遠くなるほど長いのが特徴です。最近では炭素14なんてものが残留していることが明らかになりました。ここらへんの顛末は以下の記事もご覧ください。

ALPS処理水、ヨウ素129などトリチウム以外核種の残留~「説明・公聴会」の前提は崩れた | FoE Japan

東電は、トリチウム以外の放射性物質が基準内におさまるように、二次処理をする、としています。

さて、ここで問題です。

最初の政府による「処理水」の定義(「トリチウム以外の核種について、環境放出の際の規制基準を満たす水』のみを『ALPS処理水』と呼称する」)からすると、

いま現在、タンクにたまっている水はなんと呼べばよいのでしょうか?

実は、私も気になっていたこの点に関して、質問を出してくれた議員さんが…!

立憲民主党の阿部知子議員です。

そうしたら、回答が出ました。(答弁書といいます)

「政府としてその呼称を定めていない」。

ガクッ。

まあ、呼びたいように呼んでください、ということなのでしょうか。

ということで、私は、引き続き、「処理汚染水」と呼ぶことといたします。悪しからず…。

ちなみに、この質問主意書、もっと重要なことも聞いていますので、ご紹介します。

いまタンクに溜まっている水に含まれいている放射性物質の種類ごとの総量、および放出するであろう水に含まれる放射性物質の核種ごとの総量の推定値についてです。

つまり濃度ではなくて、どれくらいの量が含まれているの? もしくは、どれくらいの量を海に出しちゃうの? ということです。

これ、知りたかった! 実は、私も何度も何度も、東電や経産省に聞き続けてきたのです…。

で、その答えは…

「東電に公表を求める予定はない」

ガクッ。

濃度がわかっているんだからいいでしょ? ということ? でも総量が、総量が、重要なんです~。

おいおいおいおい。

何をどのくらい放出するつもりか、教えてくださいよ~。基本情報でしょ~。

ということで、質問主意書、答弁書のオリジナル、以下に貼り付けます。

阿部知子議員、ありがとうございました。 

(なお、この「水」をめぐっては、東電は、放出前に濃度を測定せず、計算だけで基準を満たしているか判断する方針であることが報じられています。こちらもまた、びっくりです。>東電、放出処理水の濃度測定せず 規制委で妥当性議論へ(2021年6月10日付東京新聞のサイトですが、共同通信の配信です。))

(満田夏花)

東京電力福島第一原子力発電所敷地内タンクの放射性物質の総量の公表に関する質問主意書

2030年エネルギーミックスから持続可能な太陽光発電を考える

パワーシフト・キャンペーンの田渕です。FoE Japanは、森林破壊を伴ったり、住民の生活を脅かしたりするような再エネには反対しています。くわしくは、以下の「見解」をご参照いただければと思います。
https://www.foejapan.org/energy/library/180413.html

2030年電力用エネルギーミックスの試算が各団体から出されています、目標値として有用であるため紹介をします。 森林に設置される太陽光発電がどれほど含まれているかを試算をした結果、全体に占める割合は少なく、他の発電方式に変えることで森林破壊を伴ったり、住民の生活を脅かしたりすることのない良いエネルギー社会を目指せるのではないかと思います。

1.2050年温室効果ガスゼロに向けた2030年のエネルギーミックス

2050年温室効果ガスの排出実質ゼロに向け、通過点である2030年の電力に関するエネルギーミックスの試算が各団体から出されている。WWF*1、自然エネルギー財団(以下自然エネ財団)*2、未来のためのエネルギー転換グループ(以下未来エネグループ)*3のレポートから数値を抜粋した電力用2030年発電量予測をグラフ1に示す。

グラフ1.各団体による2030年電力用エネルギーミックス試算

(各レポート内数値を元に筆者作成)

グラフ棒の高さ(電力量総量)は積み上げた数値が大きく異なるのは発電量と需給量の違いなので比較するものではない。

グラフ1に示されているように各団体が試算した2030年電力用エネルギーミックスは基本的に原発、石炭火力はゼロであり、省エネをした上で、総電力量の約半分を再エネで賄う計画となっている。2030年は近い将来でありこれらのエネルギーミックスの実現に向けて最大限努力していかなくてはならない。これらの数値の根拠や条件などの詳細については各レポートを参照されたい。

自然エネ財団と未来エネグループに関しては、太陽光、風力、バイオマスについてレポート内の数値を利用して筆者がさらに細分化した。細分化方法を以下に示す。

<自然エネ財団のデータ細分化>

国土交通省(2013)他の文献を元に表1のように太陽光発電の細分化をしている。

表1 利用可能な土地の推計及び設置可能設備容量*4

(自然エネルギー財団*2の表3-2データを転載,「太陽光発電合計に対する割合[%]は筆者記入)

種類設備容量[GW]太陽光発電合計に対する割合[%]
森林(既存+2019年までの見通し)*下記に詳細記載あり6.76.0%
空き地・原野(民有地)12.911.5%
資材置き場1.00.9%
駐車場2.11.9%
ゴルフ場からの転用12.310.9%
その他・不詳1.51.3%
耕作放棄地52.947.1%
追加転用+追加荒廃農地10.08.9%
湖沼水面2.01.8%
ダム水面8.87.8%
空き家の転用1.91.7%
利用できない建物(廃屋等)-法人所有0.20.2%
合計112.4100.0%

環境へ悪影響を及ぼすかどうかは個々の事案を考慮する必要がある。

建物の上や人工物に設置するものは環境影響が低いと思われるが、既存分を含むものの新たに林地を伐採する可能性がある「森林」を分けてグラフ化した。

森林については自然エネ財団も「森林伐採や造成のコスト、系統連系上の問題が生じやすいこと、環境影響が懸念されることから、2017年までに林地開発許可を得ているもの(約1万ha)に、2018年及び19年の見通し(約0.4万ha)を加えた値とし、それ以上の導入可能性が低い」 *2-P30 としており、見通し分を限定しており電力量全体に占める割合は1%以下で低い。

この設備容量の割合を発電量の割合と同じと仮定し、太陽光(森林)と太陽光(耕作放棄地、追加転用、水面、空き家、人工物、空き地原野、ゴルフ場)に分けた。

<未来エネグループデータ細分化>

太陽光は「屋根置き」「ソーラーシェアリング」「野立て」の3つに分けており、さらに「野立て」については前述した自然エネ財団の設備容量予測の割合(表1)により「森林」とそれ以外に分けた。

未来エネグループのレポートの主題はグリーンリカバリーであり、森林に設置する太陽光発電のようなものは他の手段に置き換えるという考えに基づいている。

この結果、2030年総電力量のうち「森林」は0.7%を占める。(自然エネ財団、未来エネグループ)

<森林と耕作放棄地の定義>

詳細は各団体のレポートを参照いただきたいが、森林と耕作放棄地の定義を転載して示す。

・森林(既存+2019年までの見通し)の定義

森林については、森林伐採や造成のコスト、系統連系上の問題が発生しやすいこと、環境影響が懸念されることから、2017年までに林地開発許可を得ているもの(約1万ha)に、2018年及び19年の見通し(約0.4万ha)を加えた値とし、それ以上の導入可能性は低いとした。(自然エネ財団レポート*2より)

ちなみに自然エネ財団の新しいレポート(脱炭素の日本への自然エネルギー100%戦略 https://www.renewable-ei.org/activities/reports/20210309_1.php)における太陽光発電量の予測では、森林他の細かい分類の記載はなく太陽光全体のポテンシャルは環境省のデータを根拠に十分にあるとしている。一方で*2の文献が引用されている。つまり自然エネルギー財団の最新のレポートとしては表2にあるように森林等も試算に入っていると考えた。(森林の扱いについて慎重な姿勢が見える)

・耕作放棄地の定義

過去1年以上作物を作付けしておらず、今後も作付けする意思のない土地であり、全国で42.3万haに上る。そのうち、果樹園等の傾斜がある耕作放棄地は、太陽光発電の設置に適さない場合が多いなど、全ての耕作放棄地が利用可能なわけではない。今回は、太陽光発電事業者へのヒアリングから、利用可能な土地を15%とした。(自然エネ財団レポート*2より)

また、同様に風力については陸上風力と洋上風力に分けた。バイオマスについては自然エネ財団は「未利用木質、一般木質、農業残渣」と「メタン発酵ガス、建築廃材、一般廃棄物、RPS等」に分け、未来エネグループは「木質バイオマス」と「メタン発酵バイオマス、廃棄物」に分けている。今回は風力発電とバイオマス発電に関しては環境への悪影響については考察しないが、今後活用できるデータとして示しておく。

2.持続可能ではない太陽光発電について

メガソーラーの中には森林を伐採して作られるもの、草原などの貴重な緑地を利用するもの、環境懸念を抱えた住民の反対があるものについては持続可能ではない再エネとして環境団体などでも懸念を示してきた*5-1,5-2

前項で示したように既存分を含むものの新たに林地を伐採する可能性がある「森林」は総電力量の0.7%であった。

 これ以外にも、耕作放棄地、原野やゴルフ場跡地、他の中には環境維持することが重要であったり住民の意思を尊重すべきものがあり、個々の事業を考慮する必要があるものが含まれる。

これら環境への懸念があるものではなく、持続可能な太陽光発電を増やすためにソーラーシェアリングを試算より増やすことはできないか検討した。

試算するにあたって採用した文献は「制約条件を考慮したソーラージェアリングの導入ポテンシャル評価 2018土木学会論文 東大 室城ほか」*6で、関東地域のソーラーシェアリングの導入可能性を作物ごと、日照条件や電源系統への接続条件などを考慮して試算している。これによると関東地域でのソーラーシェアリング導入試算量は69,118[GWh/年]であり、文献内条件case1(地理的な制約考慮、電源系統への接続課題は考慮しないなど)を採用すると63,110[GWh/年]となる。

上記文献は関東地域の試算なので、全国の耕作面積比率データ*7から単純比率で計算すると全国のソーラーシェアリング導入試算量は394,438[GWh/年]となる。地域の条件等はさまざまなのでそれを考慮してそのうち10%が導入できたとすると、39,444[GWh/年]になる。この量は2030年総電力需給量(未来エネグループ試算値)の約5.3%にあたる。

これらの数値を表2に示す。

表2 ソーラーシェアリング導入量試算(文献*5,6から筆者試算)

 ソーラーシェアリング導入量試算 [GWh/年]
関東69,118
文献case163,110
関東→全国換算*7394,438
内10%導入の場合39,444
未来エネグループの2030年総電力需給量を100%とした場合の割合5.3%

この試算によるソーラーシェアリング導入量は、未来エネグループのソーラーシェアリング試算量2.2%の2倍以上である(グラフ2)。

もちろんソーラーシェアリングにはさまざまな課題があるため普及は容易ではないが森林破壊や住民の反対のある発電方式の代替手段としてひとつの可能性を示した。

従って、環境への悪影響があって持続可能ではない太陽光発電ではなく例えばソーラーシェアリングの導入拡大を図ることによって、エネルギーミックスは良い方向へ向かうものと思う。

 グラフ2. 2030年電力用需給見通し割合(未来エネグループ)

(未来エネルギーグループのデータから筆者推定を含め作成)

また今回は考察しなかったが、再生可能エネルギーであってもパーム油やPKSを利用したバイオマス、燃料を輸入して燃やす木質バイオマス系*8、環境懸念を持つ住民の反対がある風力発電など、持続可能ではないと思われる再エネは他にもある。

気候危機を緩和させるためには地域の合意が大前提であり、再エネ発電が増えたとしても緑地が減ったり地域を重視しない方法ではかえって危機を悪化させるのではないだろうか。

気候危機対策として実施されようとしているものの中には逆効果であるものもあるのではないか、引き続き持続可能な再エネとはなにか?について考え活動をしていきたい。

(田渕 透)

<参考文献>

*1 脱炭素に向けた2050年ゼロシナリオ(WWF)
https://www.wwf.or.jp/activities/data/20201215climate01.pdf

*2 2030 年エネルギーミックスへの提案(自然エネルギー財団)
https://www.renewable-ei.org/pdfdownload/activities/REI_2030Proposal.pdf

*3 レポート2030(未来のためのエネルギー転換研究グループ)
https://green-recovery-japan.org/pdf/japanese_gr.pdf

*4 国土交通省(2013)『平成 25 年 世帯・法人土地・建物基本調査』、農水省(2017)「荒廃農地の現状と対策」、太陽光発電に係る林地開発許可基準の在り方に関する検討会(2019)「太陽光発電に係る林地開発許可基準の在り方に関する検討会報告書」、総務省(2019)「平成 30 年住宅・土地統計調査」、一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会(2019)「利用税の課税状況からみたゴルフ場数、延利用者数、利用税額等の推移」より自然エネルギー財団作成。

*5-1 「持続可能な再エネ」電力会社を選ぶことで「よい社会」を選べる(パワーシフトキャンペーン)https://power-shift.org/downloads/15258/

*5-2 鴨川市田原地区メガソーラー計画を取材しました(FoE Japan)
https://power-shift.org/kamogawa_megasolar190302/

*6 制約条件を考慮したソーラージェアリングの導入ポテンシャル評価 2018土木学会論文 東大 室城ほかhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejer/74/6/74_II_221/_pdf/-char/ja

*7 令和2年耕地及び作付面積統計(併載 平成28年~令和元年累年統計)e-Stat 政府統計の総合窓口
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500215&tstat=000001013427&cycle=7&year=20200&month=0&tclass1=000001032270&tclass2=000001032271&tclass3=000001150346

*8 レポート「バイオマス発電は環境にやさしいか? “カーボン・ニュートラルのまやかし”」 FoE Japan
Click to access 210514.pdf

日本にもあった違法伐採!! 波紋拡がる宮崎県の盗伐事件(14)

第六回 えびの市大字西長江浦(その2)

 林野庁は2021年3月30日の宮崎県盗伐被害者の会からの要請を受け、5月中旬に盗伐被害地視察を予定していましたが、緊急事態宣言の延長を受け、延期となりました。

 今回は、前回に引き続き、志水惠子さんの事件を紹介します。
 ※今回も被害当事者の志水惠子さんのご了承を得て、実名で記述しております。

宮崎県盗伐被害者の会を伴い再び現場検証
 残念な結果に終わった2020(R2)年4月27日のえびの警察署による被害地の現場検証。志水さんはこれに納得できず、宮崎県盗伐被害者の会の海老原会長に相談し、現場を見てもらうことになりました。5月5日、志水さん、ご友人ご夫妻、そして海老原会長とで再び現場検証を実施。この検証で海老原会長によって志水さんの林地の境界杭が確認されたのでした。多くの被害地を見てきた海老原会長は「志水さんの山は境界が公有地(日本道路公団、宮崎県、えびの市)に隣接しているため、被害者の中でも一番わかりやすい」。

えびの市役所との折衝、広範な「無届伐採」が判明
 5月8日に申請した情報開示請求の結果が5月18日に得られました。入手できたのは「公文書非公開決定通知書」で「公文書不存在」との記載のみでした。3筆(1195-1、1195-20、1216-2)とも同じ結果でした。いわゆる「無届伐採」であることが判明しました。
 志水さんらは、本件についてはすでに「無届伐採」であることが判明し、容疑者も明らかであり、市の責任が問われる問題であることや、海老原会長の被害事件「ツブロケ谷」のときのように宮崎市から刑事告発すべき案件なのではないか、伐採業者名を明らかにしてくれ、といった対応を求めました。しかしそれでも煮え切らない態度に対して、「市の責任を問うべく、志水さんからえびの市を訴えてもよい」と被害者側の強い意志を示すと、S氏が10分ほど席を外し、「立木所有者」と「造林者」の欄が黒塗りされた、伐採業者名のみわかる「伐採届」を持ってきました。黒塗りの理由は「伐採業者名を教えてくれとの依頼でしたゆえ」。その伐採届の写しを入手すべく、5月27日、再びえびの市役所を訪れ、二度目の情報開示請求を行いました。
 またこの新たな情報を逐一伝えるべく、5月28日、志水さん、海老原会長とでえびの警察署を訪問しました。対応者は前回同様、警部補M氏と現場検証で「伐った人に残りの木を売ったらどうですか?」と三度打診してきたS氏。この訪問は盗伐被害者の会としては初訪問だったゆえ、挨拶代わりでもありました。

 6月4日、志水さんの手元に「公文書一部公開決定通知書」が届きました(図1)。図2には志水さんの被害林地周辺の概略図を示します。開示された伐採届は2017(H29)年2月15日付けで申請され、3月23日付のえびの市農林整備課印が押されたものでした。これから幾つか重要なことが明らかになりました。(1)地番1195-21を伐採した業者名、(2)志水さんの林地3筆に隣接するその他の地番(1216-1、1195-9)の伐採届が出されていない、つまり「無届伐採」であること、そして(3)伐採期間です。
 まず(1)からこの伐採届が容疑者Iに関連していることがわかります。立木所有者欄は黒塗りですが、志水さんが入手している字図や土地登記簿から地番1195-21の所有者はIで、Mから2017(H29)年3月23日に購入したものであることは確認できています。(2)はIがMから購入した3筆のうち2筆が無届伐採だったことを意味し、志水さんの3筆を加えれば5筆の林地が無届伐採でした。1筆のみ伐採届を出して「合法化」し、広範に盗伐する行為の典型です。(3)は2017(H29)年3月30日~12月20日と記載されていました。志水さんが気付いたのは2020(R2)年1月29日でしたので、森林窃盗(盗伐)罪の時効3年の関係で実際に伐採されたのがいつだったのかがとても重要になります。

土地家屋調査士から有益な情報
 志水さんとT氏は商工会の会員で顔見知りでしたので、すぐに足を運ぶことにしました。志水さんが「市役所から言われたので」と切り出すと、T氏は繰り返し何度も「Iは悪いことばかりやっているのであいつは逮捕してもらわなければならない」、「木があっちこっちで伐られている。志水さんのすぐ近くのすごく大きな山も伐られている。その山主も相当怒っている」という情報を得ました。
 6月25日、今度はえびの警察署警部補M氏より電話がありました。M氏は「山を売ったMに話を聞きに行き、『何十年も山には行っておらず、境界が分からず、山には行かずIに売った』とのことゆえ、境界が分からない以上、事件として成り立たない」との見解でした。志水さんが「時効は2020年12月20日までですか」と問うと「時効は警察では調べようがない、分からない」。「伐採業者S社を調べれば分かりませんか?」と質問すると「S社はまだ調べていない」との回答でした。

警察の執拗な確認行為
 この頃からえびの警察署は志水さんに対して執拗に質問を繰り返すようになりました。それまで窓口になっていたのは警部補M氏とS氏でしたが、2020年8月から警部(課長)A氏から志水さんに連絡がくるようになりました。A氏は何やら2017年2月と4月に強いこだわりを示していました。なぜえびの警察署は急に動き出したのか、なぜ2017年2月と4月にこだわるのか、A氏から明確な説明もなく、その真意ははかりかねますが、森林窃盗(盗伐)罪の時効期限と関連があるであろうことは容易に推測されるところです。
 本来であれば法に基づき捜査権が与えられている警察が入手すべきと考えられる情報について、その情報を知りようもない被害者の志水さんに一度ならず何度も問う行為は、被害当事者からすれば「嫌がらせ」でしかありません。実際、警察からの執拗な問い合わせや、呼び出しを受け、警察の行為は「志水さんを犯人扱い」しているように感じました。これによって志水さんは心身のバランスを崩し、体調不良に見舞われました。

 ここで簡単に整理しておきます。志水さんが盗伐被害に気付いたのは2020年1月29日。えびの警察署にはじめて相談に行ったのは2020年2月のことで6日から14日の間に1回、その後2月中にもう1回、計2回訪問しています。そして3回目の訪問が4月21日。容疑者Iが1筆だけ「合法化」した伐採届が受理されたのは2017(H29)年3月23日で、記載されていた伐採時期は2017(H29)年3月30日~12月20日。伐採届が正式に受理された日付から法的に伐採が認められるとすれば、その日付から3年後の2020年3月23日までが森林窃盗(盗伐)罪の時効期限と考えられます。
 現在えびの警察署は、志水さんの初回の訪問、つまりS氏が対応し、志水さんをほぼ門前払い扱いをした2020年2月中の2回の訪問のことを完全に無視し、3回目の訪問で警部補M氏とS氏の両名が対応した2020年4月21日を「志水さんが初めて警察に相談にきた日」という事実無根の主張を繰り返し、志水さんにそれを認めるよう強要しています。これについては次回、詳細について説明します。

打開策として告訴状を送付
 体調の優れないなかでも、志水さんの盗伐被害事件解明に向けた確固たる信念は揺らぎませんでした。事態の打開策の一つとして被害者の会の海老原会長の支援を得ながら8月24日、告訴状を作成し、宮崎地検検事正、宮崎地裁所長判事、宮崎県警本部長、えびの市長、宮崎日日新聞本社に宛て送付しました。その「告訴状」は「告発状」に修正されて9月14日に正式にえびの警察署に受理されたのですが、紆余曲折あったその経緯を説明します。
 告訴状送付の翌8月25日、宮崎地検M氏から告訴状受領の電話がありました。「えびの警察署に捜査をして貰えていますか?」と問われ、志水さんは「被害当初は捜査してもらえなかったが、最近は電話連絡がくるようになりました」と回答しました。
 8月27日にはえびの警察署警部(課長)A氏から連絡があったため、同署へ出向いて宮崎地検検事正、宮崎地裁所長判事、宮崎県警本部長、えびの市長宛てに告訴状を送付したことを伝えました。その足でえびの市役所農林整備課主任主事S氏も訪ね、同様の報告をしました。
 8月29日、再び、えびの警察署警部(課長)A氏より来署依頼があり、「提出されたのは“告訴状”だが、地権者は志水さんの母親であり地権者本人でないと“告訴”はできず、娘の惠子さんによるものであれば“告発状”であるべき」という説明を受けました。そこでA氏の指示に従い、「告訴状」を「告発状」に修正し、再びA氏に提出すると「新たな“告発状”の内容を再度検討し、受理の可否については追って返事する」との対応でした。これを受け9月2日、志水さんは念のために「告発状」を再び宮崎地検検事正、宮崎地裁所長判事、宮崎県警本部長、宮崎日日新聞本社に宛てて送付。さらに各所を訪問し「告発状」としての再送付したことを伝え、適切に受理してもらえるよう依頼をしました。その結果、えびの警察署A氏から「告発状を受理させて貰います」との電話連絡を受けました。このことは宮崎地検M氏にも報告しました。
 9月4日、その日体調を崩していた志水さんに、えびの警察署から電話があり「ご自宅にお伺いしてもよいですか?」。えびの警察署警部(課長)A氏、F氏が志水さん宅を訪れ、“告発状”は受理、“告訴状”は不受理とする旨、説明を受け告訴状が返却されました。その後9月14日、告発状に不備があったため、えびの警察署へ出向き、その修正後、差し替えたものが受理されたのでした。

 志水さんは「しばらく続いたえびの警察署の執拗な確認行為は9月4日を境に“ピタッと”止まり、態度も急変した」と精神的に厳しかったこの時期を振り返ります。

 告発状が受理され、ようやくえびの警察署が本格的に動き出しました。9月28日、えびの警察署警部(課長)A氏より実況見分実施の知らせがあったのです。次回は実況見分の様子とそれ以降も続く志水さんにとって不本意なえびの警察署のとのやりとりを紹介します。(三柴淳一)

第一回 宮崎市瓜生野ツブロケ谷(その1)
第一回 宮崎市瓜生野ツブロケ谷(その2)
第二回 宮崎市高岡町花見字山口(その1)
第二回 宮崎市高岡町花見字山口(その2)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その1)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その2)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その3)
第四回 宮崎市田野町字荷物取地乙
第五回 国富町大字木脇(その1)
第五回 国富町大字木脇(その2)
第五回 国富町大字木脇(その3)
第五回 国富町大字木脇(その4)
第六回  えびの市大字西長江浦(その1)
第六回  えびの市大字西長江浦(その2)