森林破壊に繋がる私たちの日常

こんにちは。FoEでインターンをしている佐藤悠香です。

今回は、10代・20代向け オンライン連続セミナー第4回「食卓と繋がっている気候変動の影響」に参加しました。

このセミナーではまずはじめに、地球環境戦略研究機関(IGES)で長年、土地利用と気候変動の関係を研究されている山ノ下麻木乃さんからお話がありました。

気候変動と聞くと、エネルギー排出の多い交通系や製造業を想像する方が多いのではないでしょうか。しかし、実は農林業は世界の温室効果ガス排出の23%を占めています。

農林業が大きな排出源になる原因としては、窒素肥料の過剰使用や牧畜・稲作が挙げられます。つまり、化学肥料の使い過ぎや牛肉と米の生産が気候変動に結びついているのです。

農業からの温室効果ガス(Green House Gas, GHG)排出の要因はいくつかあり、

  1. 化学肥料の製造過程で多くのGHGが排出
  2. 窒素肥料を過剰に投入すると余剰分からN2Oが発生
  3. 農業機器で化石燃料の使用
  4. 水田からを耕すことでメタン排出

などが挙げられます。そして、わたしたち個人がこの問題に取り組むためにまずできることは、有機栽培された食材の購入や、地産地消を心掛けた消費を行うことでしょう。

また、それ以外にも「森林の減少」も大きな要因の一つです。

人口の急激な増加に従って、人間は食料生産を大幅に増やす必要がありました。そのため、化学肥料を使って収量を増加させるだけでなく、森林を農地に転換することで作付面積を拡大してきました。

主に増えたのは大豆の生産量で、これは人間の食用よりも主に家畜の飼料として使われています。そして、農地の8割が家畜の餌を生産するために使われているにも関わらず、世界の食料供給(カロリー)は全体のわずか2割ほどです。

現在、世界人口の9%である6億9000万人が飢餓状態であると言われています。わたしたちは人間が食料として消費するよりも、主に牛肉を生産するために大量の大豆と穀物を生産しているのです。

森林の減少は都市化が原因と考えられがちですが、実は農地への転換が主因で、こうしている今も6秒にサッカー場1個分の熱帯の森林が失われています。

また、山ノ下さんのお話のなかで「国産牛でも飼料の約半分は輸入している」というお話は個人的に驚きました。日本で育てられる牛は、森林伐採に関係していないというわけではなく、その牛を育てるために生産される餌が森林を壊しているのです。

そのほかにも、畜産は牛のゲップ・おならがメタンを放出させたり、輸出入の際にCO2を排出したり、糞尿が環境汚染をもたらしたりと幅広く地球環境に悪影響を与えます。

考えてみると、こんなに莫大な温室効果ガスを排出し自然を汚染しながら生産されたお肉でも、レストラン・スーパー・家庭で多くのフードロスが発生しています。これはお肉に限った話ではありません。私たちは、「食べ物を捨てるために食べ物を生産している」といってもおかしくないでしょう。

私はNetflixで”Cowspiracy(サステナビリティの秘密)”を見たことがきっかけで肉食をやめましたが、山ノ下さんのお話を聞いて、自分も知らなかった畜産と気候変動の関係だけでなく、日本人の食文化であるお米が与える悪影響について初めて知り大変驚きました。

続いて、FoE マレーシアのMageswari Sangaralingamさんから、マレーシアで実践している持続可能な農業「アグロエコロジー」についてお話を伺いました。

アグロエコロジーとは、大規模な工業型農業ではなく、地球への環境負荷を最小限に抑えた農業のことを指します。また、家族やコミュニティで一丸となって農業に励むため、人との繋がりを生み、新たな分散型社会の形成に貢献します。

Mageswariさんたちは、マレーシアで実際にアグロエコロジーの実践方法を農民の方に教えたり、化学肥料を用いずコンポストを利用したりするなどして地球環境に配慮した、持続的な農業を広めていく活動をしています。

ときには、ワークショップを開いて現地の子どもたちと一緒に土壌を触ってアグロエコロジーを体験できる機会を設けたり、コミュニティ内の人の繋がりをサポートしたりと、地域住民の方が自立してアグロエコロジーを継続していくお手伝いをしていらっしゃるようです。

わたしのように東京に住んでいる人間からしたら、なかなか普段の生活で農業にチャレンジすることはハードルが高い気がしていましたが、都内でもコミュニティが共同で農業を行う場はあるようなので早速トライしてみたいと思います。

最後は参加者の方々に、このセミナーを通じて感じたことを自由に話し合っていただきました。

・パーム油マークは時々見るが、パーム油と森林破壊の繋がりは初めて知った

・アグロエコロジーという言葉自体、聞いたのは初めてだが、楽しいからこそ多くの人が無理なく続けているのだろう

・幼い時からコンポストをやるという経験が日本でも広まると、日本人の環境意識が変わるのではないか

・買い物をするときに自分で食べ物を選択する機会がなかなかないので、問題意識を自分の家族と共有することがまず大切だということに気が付いた

・すごく安い製品の裏側には誰かの犠牲があることを忘れないようにする

といった感想を聞くことが出来ました。

農林業とか畜産とか、アグロエコロジーとか、こういったお話を聞くととんでもないことがこの世界で起きていることを知り、ショックを受ける人が多いと思います。しかし、「じゃあどうやって自分の日常を変えていけばいいの?」と思う人でも出来ることはたくさんあります。

お肉を食べる量を半分に減らしてみる。少し高くてもオーガニックのものを選択してみる。自分の家のベランダで野菜を育ててみる。

こうした行動を継続していくことで、周りの人も感化され行動に移していくかもしれません。今の社会状況や搾取の仕組みを一人で変えることはできないけれど、みなさん一人一人が消費行動をもう一度考え直して実践していけば、周りの人間も企業もこの社会も絶対に変わると思います。

この問題を知った方と一緒に私も不安や怒りを感じるだけでなく、それを行動に移していきたいと思います。

(インターン 佐藤悠香)

第4回のゲストスピーカーのお話は、Youtubeからご覧いただけます。

*お話の内容*
・山ノ下麻木乃さん「食卓とつながっている気候変動の影響」資料はこちら
・Mageswari Sangaralingamさん「Agroecology」資料はこちら

★次回のお知らせ★
「気候危機から未来を守るために立ち上がろう!〜日本でアクションするということ〜」
・日時:2021年3月16日(火)19:00〜21:00
・ゲストスピーカー:
 白馬高校、
 総社南高校、
 Fridays For Future Sendai、
 Fridays For Future Shizuoka、
 Fridays For Future Yokosuka
・参加費無料
・申込みはこちら

★スクール・オブ・サステナビリティの概要はこちら