インドネシア 海に沈む農村

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ショートムービー『浸水する生活-インドネシア、プカロンガンの気候変動影響』(約5分・英語)

 

インドネシア、ジャワ海に面するプカロンガン市のバンドゥンガン村。
市街地から沿岸の方に進むと、屋根も窓もやけに低い家々が目立ち始めます。

村は稲作とジャスミン栽培を中心にした小さな農村でした。
2006年頃から徐々に海水が内陸に向けて侵入しはじめ、現在では100ヘクタールほどあった稲作地はすべて100cm~150cmもの深さの海水の下にあります。農民の中には行政の勧めもあり、魚やエビの養殖業へと転換した人もいますが、網を使った養殖場でも海面上昇に対応できず、全く収獲できない年も出てきています。
300戸以上の家屋と生活道路にも浸水し、井戸やトイレ、お風呂も使えません。浸水が始まった当初、住民の避難場所となっていた学校やモスクも今では冠水しています。
水の侵入を防ぐため、毎年のように50cmほど床を高くせざるを得ない家も少なくありません。冒頭の屋根や窓が低い家々は、床を何度も高くしていった結果です。
収入減を失っている住民たちには、このような家屋の改築等も大きな負担となっています。行政からは、一部の限定的な支援が突発的にあるだけで、住民は水の来ない場所に移住することもできず、悪化し続ける環境に耐え続けています。

FoE Japanは、プカロンガン市を含むジャワ海沿岸のコミュニティで2008年からマングローブの浸食防止作用を活用した適応対策を導入してきています。
しかし、バンドゥンガン村の状況には、マングローブだけでは対応しきれません。2015年よりプカロンガン市及び隣接するプカロンガン県の沿岸コミュニティの被害状況と行政プログラムの調査を行っています。現在、急速な環境変化によって住民が直面している様々な生活環境の問題と、地方行政の既存のプログラムを整理して結びつけることで、すぐにでも改善・支援を開始できる部分を明らかにしていってます。将来的には、住民ニーズに沿った新たな支援プログラム及び、効果的な支援メカニズムを地方行政の下に構築することを目指しています。

この度、FoE Japanの現地のパートナー団体であるBINTARI財団からスタッフ2名が来日し、2/23(木)、2/24(金)に、活動報告会とシンポジウムで、それぞれこれまでFoEとBINTARIが実施してきた適応対策の成果、そしてプカロンガン市等の被害の現状を報告します。ぜひ、ご参加ください。

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2/23(木)活動報告会「気候変動影響の中で生きる~インドネシア 海面上昇の村、水不足の農村の人々の挑戦」
 
インドネシアでは、気候変動が人々の暮らしに大きな影響を及ぼしています。農村では、降雨パターンが変化し、伝統的な農法や特産物の栽培ができなくなり、また深刻な水不足が生じています。一方で沿岸部では、海面上昇により広大な農地や養殖場が失われ、家屋や道路への浸水が慢性化しています。 FoE Japanは、現地NGOや大学と連携し、2008年からスマラン市、ウンガラン郡、プカロンガン市の農村や漁村にて、コミュニティ主体で気候変動影響に適応していくためのサポートを続けてきました。 本報告会では、住民理解の促進から、適応対策導入のための組織化、行政の能力強化、そして気候変動により収入減を失ったコミュニティの自立化までの経験、成果をご報告します。さらに、適応対策の可能性と限界について考えます。
日時: 2017年 2月23日(木)18:30~20:30
場所東京ウィメンズプラザ 第一会議室
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-53-67
参加費: 500円 (FoE Japanサポーター・学生無料)
申込み: http://www.foejapan.org/aid/community/mangrove/170223.html
主催・問合せ: FoE Japan 担当:柳井
プログラム
1.イントロダクション インドネシアの気候変動影響
2.農村の気候変動影響とアグロフォレストリーを通じた適応対策
スピーカー:Amalia Wulansari氏(BINTARI財団)
3.海面上昇の被害を受ける沿岸コミュニティのマングローブ保全を通じた適応対策
スピーカー:Arief Khristanto氏 (BINTARI財団ディレクター)
4.ディスカッション コミュニティの適応対策の可能性と限界
※逐次通訳あり
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2月24日開催「シンポジウム:アジアの気候変動の現実とClimate Justice(気候正義)」

http://www.foejapan.org/climate/lad/170224.html

洪水、熱波、渇水などの異常気象や海面上昇、農作物への被害…気候変動による被害は各地で見られています。アジアの途上国の貧困層は特に、農業や漁業に頼って生活していたり、住居が脆弱であることから気候変動の影響は特に甚大です。
2016 年、パリ協定が発効し、気温上昇を1.5 度までに抑える努力が書き込まれました。 その目標を達成するためにも、すでに被害を受けている人々を救うためにも、持続可能で公正な解決策をいますぐ実施していかなくてはいけません。歴史的に温室効果ガスを大量排出して発展を遂げてきた日本の責任は重大です。
同シンポジウムでは、国立環境研究所地球環境研究センターの江守正多氏を迎えて国際交渉や科学の動向を、実際に現地で影響を受けながらも対策に取り組むインドネシアの方々をお招きしてアジアで広がる気候変動の被害についてお聞きします。ぜひ、ご参加ください。

プログラム(予定)
【基調講演】
「気候変動の科学とClimate Justice」
…江守正多/国立環境研究所地球環境研究センター気候変動リスク評価研究室室長
▼COP22交渉のポイントと、COP23に向けて
…小野寺ゆうり/FoE Japan
▼COP22と気候正義を求める市民社会の声
…深草亜悠美/FoE Japan
▼インドネシアにおける被害の現状と取り組み
…Arief Khristanto 氏/BINTARI 代表
柳井真結子/FoE Japan
◆言語:日本語日 時 2017年2月24日(金)14:00~16:30(開場13:30)
場 所 文京シビック スカイホール(26階)(東京都文京区春日1‐16‐21)
参加費 1000円(FoEサポーター・学生500円)
定 員 80名
申 込 http://www.foejapan.org/climate/lad/170224.html
問合せ FoE Japan 担当:深草 (info@foejapan.org
★★こちらも御覧ください
動画「気候変動 スリランカの声」
動画「気候変動 フィリピン〜巨大台風の傷跡〜」

(柳井 真結子)