インターンレポート:2/23気候変動影響の中で生きる

インターン生の池上です。
2/23に東京ウィメンズプラザにて「気候変動影響の中で生きる〜インドネシア 海面上昇の村、水不足の農村の人々の挑戦〜」というシンポジウムが開催されました。インドネシア・BINTARI財団のAmalia Wulansari氏からは、農村における気候変動による影響とその気候変動に対する適応対策、Arief Khristanto氏からは、海面上昇による被害を受ける沿岸コミュニティにおける適応対策についてのスピーチでした。

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浸水の被害を受ける地域(インドネシア)

気候変動によって特に南の発展途上国では大変な被害を被っているということは、皆さんもメディアなどによって聞いたことがあるかもしれません。でも、現地の方の話を聞くと本当に大変なことが起きているのだな、と身にしみて感じてきます。例えば、インドネシアの農村では作物を時期によって(主に乾季か雨季)植えています。気候変動によって極端に雨が降り続けたり、止んだと思ったらカラッとした日が何日も続いて季節がわからなくなってしまう。また、気候変動の適応の仕方もわからないのでどうしようもない。これらとその他の要因もあって稲作地の収穫量が減少してしまい、農家は土地を売却したり、生計手段を変えなければならなくなってしまうといった影響が出てしまうのです。また、沿岸部では海面上昇によって多くの家が冠水し、別の家に住まざるを得ない状況にもなってしまいました。
これらの例を解決するために、「適応対策」がなされました。気候変動というのはどういうものなのか理解し、その次にどのように適応するか計画し、実践するというものです。コミュニティレベルから広がってゆき、成果は本当に目を見張るものでした。しかし、適応対策するにはいろいろ課題があります。適応対策を知らない政府の職員に入れ替わると活動が難しくなってしまうことや、気候変動のスパンは長いようで短く、適応しているのに追いつかなくなってしまうことなどです。
最後に私が思ったことなのですが、気候変動を起こしてしまっているのはほぼ大部分が先進国なのです。それが最も影響してしまうのは発展途上国なのです。気候変動によってその気候に適応せざるを得ない途上国の人々の活動をみて、私たちは気づき、危機感を持たねばならないのです。

▼当日の資料はこちら
http://www.foejapan.org/aid/community/mangrove/170223.html

インターンレポート:(2/24)Climate Justice Now!気候正義のアジアでの被害

インターンの近藤です。
2月24日、文京シビックセンターにおいて、アジアの気候変動の現実とClimate Justice(気候正義)との題目でシンポジウムが行われました。今回は、はじめに科学的な視点から見た気候変動の現状について地球環境研究センターの江守氏から基調講演をいただきました。それから、FoEスタッフの小野寺と深草からそれぞれCOP22交渉のポイントとCOP23に向けて、COP22と気候正義を求める市民社会の声という題で国際交渉の観点からの話があり、さらにArief Khristanto氏とAmalia Wulansari氏からインドネシアにおける被害の現状と彼らの取組についてのプレゼンテーションが行われました。

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今回の講演での大きな収穫は、やはりインドネシア現地で働く方の声を生で聞けたということです。途上国では、インフラの整備が十分ではない上に自然環境の影響を受けやすい農業や漁業に従事している人が多く、気候変動は彼らにとって生活に関わる重大な問題となっています。家屋や畑が浸水しトイレやお風呂も使えなくなるなど、まともに生活を営むことができなくなっている映像はわたしにとって大きな衝撃でした。今まで海面上昇で影響を受けているのは、ツバルのようなオセアニアの島国だけかと思っていたからです。同じアジアでもこのような状況に陥っているということに、同じアジアの島国に住む人間として危機感を覚えました。

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気候変動の影響に対して脆弱なのは、これまで温室効果ガスをほとんど出してこなかった途上国の人々です。しかしながら、途上国の住民も行政も気候変動によって引き起こされた問題について解決する能力をもっておらずなすがままにしてきたため、被害は深刻になる一方でした。インドネシアでも、浸水の影響を緩和するための政府の計画はインフラのみで、未だに以前のような暮らしに戻ることができていない人々もいます。わたしたち先進国の人間は今まで多量の温室効果ガスを排出してきた現実を受け止め、パリ協定での気温上昇を1.5℃に抑える目標に向けて自国の対策を進めるとともに、途上国に資金と技術の供給を行うことで責任を取ることが早急に求められているのです。

Climate Justiceという単語は、FoE Japanでインターンをして初めて耳にしました。わたしが理解するに、「気候正義」とは今まで化石燃料などを大量に消費してきた一握りの先進国が気候変動の現状を真摯に受け止め行動することでその責任を果たし、今までさほど化石燃料などのエネルギーを使ってこなかったにも関わらず気候変動の被害をもろに受けている途上国の不公平性を正そうというムーブメントのことです。気候変動の影響はよくマスメディアでも取り上げられますが、だれがこの変化の影響を最も被るのか、という点は見落とされがちです。まずは、「Climate Justice」についての先進国の人々のいち早い理解・協力が必要であると考えます。

(インターンスタッフ 近藤)

ベルタの暗殺から1年~脅かされる活動家たちの生命

日本国内ではあまり取り上げられませんでしたが、非合法伐採や地元先住民を脅かすダム建設、国内米軍基地などに反対し闘ってきた中米ホンジュラスのベルタ・カセレスさんが自宅で暗殺されて、3月3日でちょうど1周年を迎えます。その場に居合わせたFoEメキシコ代表も重傷を負いました。同国では2010年以降120名以上の環境活動家・人権活動家が同様に命を落としています。

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実はホンジュラスに限ったことではなく、環境や人権を擁護する地域のリーダーや活動家への弾圧が世界的に急増しています。人権問題と環境に取り組む国際NGO グローバルウィットネスによれば、2012年に世界での犠牲者の数がそれまでの3倍に跳ね上がりその後も増え続けています。2015年には186名が殺害されましたが、これは同年命を落とした報道記者の倍にあたる数です。

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今日、環境を守るために活動するということは旧来の自然保護の枠を超え、多くの国や地域で強圧的政権や大企業などの既得権益に対し土地や地域社会の権利、人権を守ろうと志す多くの人々の命を賭けた活動ともなっています。

こうした状況を受け、2012年にFoEインターナショナルはアムステルダム事務局内に人権擁護者(Human Rights Defenders – HRD)プログラムを設置し、脅迫、暴行、誘拐の危険や政府による活動の非合法化に晒されている現地FoEメンバーや協力団体、地域社会のリーダーや活動家へ法的資金的な緊急支援を行う体制を設けました。その後2年間で20カ国以上に緊急支援を行い [1]、昨年FoEナイジェリア代表の家族が誘拐された際は誘拐者との交渉し解放に至るなど実績を挙げています。この成果を受けて、昨年12月のインドネシアでの隔年総会で、政府の弾圧や活動者へのテロが再燃・拡大しているアジア7カ国(バングラディシュ、スリランカ、フィリピン、インドネシア、マレーシア、パレスチナ、(極東)ロシア)にこのプログラムを拡げることが決まりました。

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( 2016年FoEインターナショナル総会で、命を落とした環境・人権擁護者に黙祷を捧げる各国代表)

世界的な右翼国家主義者、民族主義、宗教原理主義の台頭はアジアでも顕著となっています。占領に苦しむパレスチナ、宗教・文化的弾圧が強まっているバングラデシュなどで環境保護や人権擁護を行うことはしばしば命を危険に晒すことになります。

フィリピンでは歴代の政権下でも、政治的殺害が頻繁に起きており、多くの人権・環境擁護者らが暗殺をされてきましたが、昨年6月末に大統領に就任したドゥテルテ政権の下でも、深刻な人権侵害が続いています。日本企業が関わるニッケル開発事業の問題をFoEJapanも調査してきた地域で、今年1月に先住民族ママヌワのリーダーであるヴェロニコ・デラメンテ氏(27歳)が暗殺されました。(FoE Japanでは共同声明を発表しました[2])。

FoEロシア(Russian Socio-Ecological Union)は200以上の団体からなるロシア最大の環境ネットワークですが、複数のメンバー団体が政権から「外国の手先(foreign agent)」の指定を受けました。この指定を受けると海外からの送金を禁止され、いつどこでも当局は令状なしに家宅捜索、押収、身柄拘束をすることができます。ターゲットにされれば事実上活動はできず閉鎖に追い込まれます。(同様の措置がインドでも取られており、ロシアを見習う形で事実上独裁のポーランド、ハンガリーなど東欧旧共産圏諸国にも広がっています。)

私たちは今、急速にそして大きく変わりつつある世界に生きています。米軍基地移転では辺野古の基地建設を強行し不当逮捕などで地元の反対運動を脅かしています。

FoE インターナショナルは、沖縄での基地建設反対運動に参加する市民への暴力的な抑圧についても懸念を示しており、先日も山城博治さんの不当勾留を非難する声明を発表しています。

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FFTVでもこの点について、放送しましたので是非ご覧ください。

人権や環境を守るために活動する人々を「Human rights defender(人権擁護者・人権活動家)」と呼び、国連でも「人権を擁護する活動に対する権利」が1999年に採択されています。

権力や暴力に抑圧されてしまいがちな、社会的に弱い立場に置かれているグループとともに、声を上げ続ける活動家の命や人権が脅かされることはあってはなりません。日本も例外ではありません。国内での活動家・市民による表現や行動の自由・権利を守るだけでなく、海外で横行する活動家の権利侵害には現地に進出する日本や、政府も無関係ではないことも鑑みながら、国際社会の一員としてこう言った状況を積極的に改善していくよう働きかけることも求められています。

(小野寺ゆうり)

[1] http://www.foei.org/resources/publications/publications-by-subject/human-rights-defenders-publications/we-defend-the-environment-we-defend-human-rights

[2] http://www.foejapan.org/aid/jbic02/rt/press/20170206.html

原発の事故賠償・廃炉費用を託送料金に?パブコメ結果

原発の事故賠償費用の「過去分」2.4兆円や、廃炉費用の一部を託送料金で回収しようという案について、117日まで実施されていたパブリックコメントの結果が公開されました。

1412件の意見のうち、託送料金への上乗せに反対する意見が相次ぎました。

29日に開催された「貫徹委員会第5回会合」でもパブコメの結果が報告されましたが、議論はほとんどなく、若干の修正を加えた「中間とりまとめ」が了承されました。

221日に開催された国会エネルギー調査会(準備会)にFoE Japanも参加し、

・本来は原子力事業者(電力会社)の責任である(このことは政府も認めている)

・電力システム改革の趣旨に反する

・国民の理解を得られていない

ことについて改めて確認・質問しました。時間の関係で十分な回答がありませんでしたが、引き続き回答を求めています。(吉田 明子)

▼パブコメ結果はこちら
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620216013&Mode=2

▼国会エネルギー調査会(準備会)第62回 (資料は最下部にあります。)
http://blog.livedoor.jp/gempatsu0/archives/469245.html