「流れを変える大きな勝利!」気候変動対策の先送りは将来世代のくらしの自由を奪う

FoEドイツ(BUND)「流れを変える大きな勝利!」
気候変動対策の先送りは将来世代のくらしの自由を奪うードイツは削減目標引き上げへ

ドイツ連邦憲法裁判所は2021年4月29日、2019年11月に制定された連邦気候変動法が「憲法に抵触する」という訴訟を部分的に認める判決を下しました。

裁判所は現行の気候変動法の内容について、2030年の削減目標が不十分でありドイツの炭素予算をほとんど使い果たしてしまう、また2031年以降の具体的な対策が定められていないことは、若い世代を含む原告の基本的人権を侵すものであるとして見直しを求めました。

世界の気温上昇を1.5℃までに抑えるためには、これまで以上に緊急で早急な対策が不可欠です。くらしのあらゆる側面は温室効果ガス排出を伴うものであり、対策の先送りで2030年以降の過大な「削減義務」のしわ寄せが来るとすれば、それは将来のくらしの中の「自由」を脅かすものである、というのです。裁判所は、2022年末までの気候変動法改訂を命じました。

これによって、ドイツ政府は気候変動法を早急に見直すこととなり、新たな削減目標は2030年に65%削減、2040年に88%削減、2045年にカーボンニュートラルという方向だと報道されています。

この訴訟は、若い世代を含む11人の個人と2つの団体、ドイツソーラーエネルギー促進協会Solarenergie-FördervereinDeutschland(SFV)とFoEドイツFederation for Environment and Nature Conservation Germany(BUND)が提訴、またFridays For Futureドイツやグリーンピースドイツなども支援していました。

FoEドイツ代表のオラフ・バント(Olaf Bandt)は、次のようにコメントしています。
「憲法は実効性のある気候変動対策を求めています。将来世代の自由の権利は、公正な気候政策によってのみ保証されます。連邦憲法裁判所によるこれらの重要な発表は、すべての原告、特に若い世代にとって大きな成功です。現在の連邦政府は、気候変動目標を2030年までに少なくとも70%の温室効果ガス削減とするよう調整しなければなりません。連邦議会選挙ではすべての政党が1.5℃目標の達成につながる政策を提示することを求めていきます。」

・連邦憲法裁判所による判決文(英)
https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Pressemitteilungen/EN/2021/bvg21-031.html   
・FoEドイツ(BUND)のプレスリリースhttps://www.bund.net/service/presse/pressemitteilungen/detail/news/bahnbrechendes-klima-urteil-des-bundesverfassungsgerichts/
・ソーラーエネルギー促進協会(SFV)の気候訴訟に関するページ
Klimaklage (sfv.de)

 日本でも、削減目標およびその具体的な内容の見直しは急務です。4月22日、米バイデン大統領が呼びかけた気候サミットにあわせて、日本の新たな温室効果ガス削減目標が発表されました。その内容は「2030年までに2013年度比で46%削減、さらに50%の高みに向けて挑戦を続ける」というものです。

 FoE Japanは、22日に「新たな削減目標も気候正義の観点から不十分」とする声明を、また20日にはその削減の内容について誤った対策を用いるべきでないとする声明を出しました。様々な団体と取り組む「あと4年、未来を守れるのは今」では、20日に168,157筆の署名を提出、22日には「緊急気候マーチ」を呼びかけました。FoE Japanも、横須賀JERA前や経済産業省前などでアクションに参加しています。

 ドイツでのこの判決はこれからの世界の気候変動対策を揺るがしうるものです。先進国で大量排出国である日本にこそ、本気で、早急な、そして気候正義にもとづく対策の必要性がつきつけられています。6月のG7会合やCOP26に向けて、そして大詰めを迎えるエネルギー基本計画見直しに向けて、引き続き声を上げていきましょう。 (吉田明子)


・日本語の報道記事
気候保護法、一部に違憲判断 憲法裁「将来の対策不十分」 – NNA EUROPE・ドイツ・マクロ・統計・その他経済

気候保護法は「一部違憲」ドイツ議会に温暖化対策求める:朝日新聞デジタル (asahi.com)

温暖化ガス削減、さらに厳格に ドイツ憲法裁が命令: 日本経済新聞 (nikkei.com)