日本にもあった違法伐採!! 波紋拡がる宮崎県の盗伐事件(3)

第二回 宮崎市高岡町花見字山口(その1)

 本記事第一回の冒頭で触れた、伐採業者の黒木達也被告の初公判が2019年9月27日、宮崎地裁で開かれました。黒木被告は起訴内容を否認し無罪を主張。なお黒木達也被告は国富町の山林所有者に無断でスギを伐採し盗んだとして、森林法違反(森林窃盗)の罪に問われています*1
 また、黒木達也被告以外に、林業仲介業の富永悟被告の第二回公判が2019年9月4日に宮崎地裁で開かれたことも報じられました。富永悟被告は追起訴内容を認めたとのこと。富永悟被告は宮崎市加江田の山林約2.7(ha)でスギ1,330本を業者に伐採させ、盗んだとして、有印私文書偽造、同行使の罪で起訴、森林法違反(森林窃盗)の罪などで追起訴されたのでした*2
 これら宮崎県内の盗伐事件は、まだまだ氷山の一角に過ぎません。今後もさまざまな盗伐事件が明らかにされていくものと思われます。

 今回は、宮崎県盗伐被害者の会会員の川越静子さんの事件を紹介します。

事件のあらまし:盗伐現行犯が示談に
 この事件は、伐採届が提出されていない無届伐採で、盗伐(森林窃盗)です。また前回、会員の事例を3つに類型化しましたが、この事件は(1)高齢の独り暮らしの女性、(3)聴覚障害や知的障害など何らかの障害を持つ、または家族にそうした者がいる、に該当しています。
 川越静子さんは2016年(平成28年)7月末に盗伐被害に遭いました。林地の所在地は宮崎市高岡町花見字山口4925、4926-1、4927で合計面積は約0.41(ha)です。名義人は平成25年に亡くなったご主人、川越弘己さん。静子さんはご主人が亡くなった際に林地を相続しましたが、登記上の名義変更はしていませんでした。またこの林地は1972年(昭和47年)に静子さんが亡くなったご主人と共にスギを植えたところでもあります。当時のことを振り返りながら静子さんは話をしてくれました。

『山間の窪地ゆえ樹木を植えるためには水を流さなければならず、毎回鍬かスコップを持って行かなければならず、植林はとても大変な作業だった。結婚当時は貧しく、田んぼが売りに出た際、知人から「買わないか?」という話をもらい、借金をして土地と苗木を買った。その土地は元は田んぼだったものだが、米作りにはあまり向かず、登記を“山林”に変更して林地とした。これがはじめての財産だった。家も何もなく、林地にはとても愛着があった。週に一回は山を見に行っていた。主人と二人で大きくなったら息子か孫に家を建ててやろう、なんて話をしていた。それが「盗伐」に遭い、悔しくて涙も出ない』

 なお、この林地は元々が田んぼだったゆえ、地籍調査も済んでおり、「土地の境界が不明確」といった林地とは異なります。
 この事件は現行犯で発見されました。事件当日、たまたま川越静子さんの息子さんが林地のすぐ側にある田んぼに来ていて、林地からチェーンソーの音がするため、見にいったところ、H林業*3とN林業*4が伐採しているところを目撃し、急ぎ高岡警察署へ通報しました。三人の警察官が駆けつけてくれたまではよかったのですが、そのうちの一人、H警察官からはその場で示談を勧められ、示談書と思われる書面への指印まで要求されたのでした。
 それを聞きつけた静子さんは、翌日、高岡警察署へ行ったのですが、署の入口付近にH警察官が出てきて、静子さんからの相談を受けることもなく帰宅を促したのだそうです。静子さんからすれば、いわゆる「門前払い」を食らった形でした。
 さらに、その数日後となる2016年8月2日、H林業の社員二名が静子さんの自宅を訪れ、示談金20万円と「現場の片付け、および植林をすること」を明記した誓約書を置いていったそうです。その時のことを静子さんは以下のように振り返ります。

『相手が恐くて恐くて仕方なかった。二人で来たが顔もよく見られなかった。彼らが「どうもすみませんでした」と表面的に詫びの言葉を発しているところへ「あんたたちは泥棒だー!!!」と大きな声で言ってやるのが精一杯の抵抗だった。そうしたら「すみません、すみません」と、また表面的に詫びるのみだった』

 H林業との示談金のやり取りがあった後、静子さんは海老原さんと知り合い、彼のサポートを受けながら、2016年10月6日、宮崎市に伐採届の有無に関して情報開示請求をしました。その結果、「開示請求のあった川越弘己所有の土地にかかる伐採及び伐採後の造林の届出書の届出の事実がないため」と記載された個人情報不開示決定通知書(2016年10月20日付け)が宮崎市森林水産課より手元に届いたのでした。つまり正式な届のない無届伐採だったのです。

警察による人権侵害の疑い
 実は静子さんの息子さんは知的障害者で、第1種の障害者手帳も持っている方で、通常であればできることも、警察のような公の機関から指示を受けるような状況下では、極度の緊張状態に陥ってしまい、物事が十分に理解できず、判断もつかず、言われるままにせざるを得ませんでした。静子さんは以下のように息子さんの状態を説明してくれました。

『息子は漢字の読み書きができない。週に3回は人工透析に通っており、所要時間は一回あたり6~7時間。平素から疲れている/もうろうとしているような状態である。人工透析をするようになって耳も遠くなり、視力も低下した。警察に呼ばれてからは精神のほうにもやや支障をきたし、病院に診てもらうようになった。また身体の健康状態も著しく悪化させている。本人は「また警察から電話が来るかも知れない」と恐れている。無言で庭先に立ち尽くしていることもあった』

 ただし、息子さんは運転免許を持っていて車の運転もできるため、外見からは知的障害者とはわかりにくいようです。さらに宮崎県盗伐被害者の会会長の海老原さんによると、息子さんの知的障害は近所の人々にとっては周知の事実であり、且つH警察官の住まいは息子さんの住所と近く、息子さんのことは既知のことだったのではないか、つまりH警察官は息子さんに示談、および指印を要求すれば間違いなく応じることが分かっていたのではないか、と考えられるそうです。
 もしもこれが事実であれば、この行為は警察官が知的障害者に対して適切な合意なしに故意に示談と文書への指印を強要した行為であり、警察官による許しがたい知的障害者の人権侵害行為です。

受理されない被害届の果てに告訴状の提出
 その後、静子さんは海老原さんや盗伐被害者の会会員の方々のサポートを受けながら、幾度となく高岡警察署に足を運びましたが、同署の対応において、彼女らの話を真摯に真剣に聞く態度は微塵も見られませんでした。
 その間、静子さんの林地を盗伐したH林業は、倉岡神社の御神木34本の盗伐にも関与し、同神社の宮司に対して「植林する」と言ったのですが、未だ履行していません(倉岡神社の宮司さんは盗伐被害者の会会員)。さらに2017年、伐採仲介業の岩村進や松本喜代美が逮捕・再逮捕され、各報道機関も高い関心を寄せていた頃(第一回その1参照)、H林業は、静子さんの盗伐現場に残る切り株に砂をかけて隠蔽しようとしました(静子さんの娘さんのご主人が現場で確認)。
 「自身の林地を盗んだ犯人が大手を振ってさらなる悪行を重ねている」。そんな状況を看過することなど到底できず、静子さんらは弁護士等に頼ることなく自ら告訴状を作成し、2018年9月10日高岡警察署に提出し、受理されました。その告訴状には以下のように記されています。「2年と1ヶ月が経過した今、私が受けた精神的、物的悲痛な思いは図りしないものがあります。ゆえに厳罰に処してほしいと願うばかりです」。

 次回は、告訴状を受理した警察のその後の対応、さらに繰り返される警察による人権侵害の実態について紹介します。(三柴淳一)

第一回 宮崎市瓜生野ツブロケ谷(その1)
第一回 宮崎市瓜生野ツブロケ谷(その2)

*1 宮崎日日新聞, 2019年9月28日, 社会面, p27
*2 宮崎日日新聞, 2019年9月5日, 社会面, p25
*3 H林業は宮崎県森林組合連合会(県森連)による合法木材供給事業者認定を受けている
*4 N林業は宮崎県造林素材生産事業協同組合連合会(県素連)による合法木材供給事業者認定を受けている

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