イギリスですすむ日立の原発輸出〜公的資金で後押し!?市民に押し付けられるコストとリスク

ウェールズ・ウィルヴァで日立の子会社ホライズンが進める原発計画。
イギリスでは高すぎる原発のコストが問題になっています。実際にどれくらいウィルヴァ原発事業が進んでいるのでしょうか。また、誰が莫大なコストを負担するのでしょうか。

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2015年に閉鎖したマグノックスの原発。この横にウィルヴァニューイッドを建設しようとしている。

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イギリスの市民に押し寄せる負担

現在、イギリス・ウェールズ地方北部で進むウィルヴァニューイッド原発計画は、報道によると総事業費3兆円、それに対し、日本政府100%出資の国際協力銀行(JBIC)および日本貿易保険(NEXI)による融資と保証が検討されているとされています。
イギリスでは、実は1995年以降、一つも新しい原発は建設されていません。2008年に発表された英・原子力白書では、2030年までに新たに12基の原発を建設するとしており、ヒンクリーポイントC、サイズウェルC、ウィルヴァ、オールドバリーB、ムーアサイド、ブラッドウェルBの計8カ所で原発計画が提案されています。まだ1基も建設されていないのが現状ですが、そのうち、計画が最も進んでいるのがイギリス南西部で進むヒンクリーポイントC原発建設です。
ヒンクリーポイントC原発(3200MW、2機のEPR(欧州加圧水型炉)建設)は、フランスのEDFが66.5%、中国広核集団(CGN)が33.5%出資しておこなう原発事業です。事業費は約3兆円(£196億、これは2012年のロンドンオリンピックのコストの2倍だそう)で、このプロジェクトに対してはイギリスの政府債務保証スキームの適用、差額調整契約制度(CfD)による電力価格の保証 がされています。差額調整制度とは、電源別に基準価格(ストライクプライス)を定め、その価格が市場価格を上回った場合、その「差」を電力料金にのせて需要家から回収するシステムです。ヒンクリーポイントC原発の基準価格は£92.50/MWhで35年契約です。2018年1月のイギリスの電力の市場価格はだいたい50 £/MWhでした。単純に今の市場価格で考えると、約40£の差額は電気料金に上乗せされるのです。(ちなみにイギリスの風力価格は2017年末時点で£57.5/MWh
イギリス監査局の試算では、今後2030年までにCfDを通じて、約4兆5千億円(300億ポンド)の事実上の補助金が投入され、電気料金が年間最大2000円(15ポンド)ほど値上りする恐れがあるとしています 。消費者の負担が大きくなることからも、風力の価格が低下していることからも、原発を政府が手厚く支援することに関して、イギリス国内で問題になっています。

ウィルヴァ原発に対しても、イギリス政府が債務保証スキーム適用検討に合意していますが、前述のようにヒンクリーポイントC原発のコストが高すぎるので、ヒンクリーポイントCで用いたスキーム以外を模索するとしており 、ウィルヴァ原発の資金調達の枠組みや電気の買取価格は今の所不明です。また、ウィルヴァの基準価格はヒンクリーポイントCよりもかなり安くなるとも言われており、その場合、事業の採算性は非常に下がることになります。

このように、新規原発建設によるイギリス国民への負担は莫大です。イギリスは電力市場を自由化しているのですが、原発には補助金を投入しない(No public subsidy policy)という政策をとってきました。原発事業によるコストやリスクは事業者が原則負うとことになっていたのですが、ヒンクリーポイントC原発のように、事実上、イギリス政府は手厚く原発建設を支援しています。

日本の役割

ウェールズへの原発輸出は、一民間企業(日立)の事業です。一義的にはプロジェクトのリスクやコストは事業者や融資する銀行などが負うべきですが、日本では小泉内閣の2005年の原子力政策大綱を受けて、翌2006年にまとめられた原子力立国計画で、それまで国内が中心であった日本の原発産業が国際的な市場で原発推進に先導的な役割を果たすことが強調されています。そしてウェールズへの原発輸出に対し、政府100パーセント出資の日本貿易保険(NEXI)による融資保証、国際協力銀行(JBIC)を通じた融資を行うことが報じられています。

東電福島第一事故後も原発輸出は国策として推し進められておりインドやベトナムなどに対し、トップセールスが繰り広げられ、2016年には長年締結交渉が続けられてきたインドとの原子力協定が署名され、2017年には国会審議を経て批准・発効してしまいました。

原発輸出に対して公的信用を付与する際には、政府が輸出相手国が原発の安全を確保するために適切な制度などを有しているか等「安全確認」を行います。2015年に閣議決定された「原子力施設主要紙機材の輸出等に係る公的信用付与に伴う安全配慮等確認の実施に関する要綱」は、相手国が原子力安全条約などの国際条約を締結しているかどうか等をイエス・ノー方式で調査するもので、プロジェクト個別の安全性は審査せず、とても実質的な安全確認はできないものになっています。

JBICおよびNEXIは、融資・保証を行うか決定する際に、融資・保証審査に加え、環境社会配慮ガイドラインにのっとり、プロジェクトが社会環境に及ぼす影響を確認・配慮することになっています。しかし、JBIC・NEXIは「安全確認」に関しては「政府が行う」としており、JBIC・NEXIは行わないとしています。つまり政府側にも、JBIC・NEXI側にもプロジェクト個別の安全性を主体的に確認するシステムがないのです。

一般的に、プロジェクトの一義的なリスクは企業や銀行が負うべきですが、保険をかけてリスク分散することもあろうかと思います。しかし、融資保証を行う報道されているのは政府100パーセント出資の公的信用機関です。融資額や保証額が巨額になることが予想されるため、万が一貸し倒れが生じた場合は、国民負担が発生する可能性も指摘されています。

原発は、東電福島第一原発事故でも経験したように、一度事故が起これば、取り返しがつかず、非常にリスクの大きな事業です。事故が怒らなくても、収益性は乏しく、商業上のリスクは大きいのです。まさしく「民間ではカバーできない」規模のリスクです。

世論は脱原発を支持しており、福島事故の被害が続く中、国民的議論もないままに、公的資金で輸出を支援することは社会的に許されるべきではありません。日立製作所や民間大手銀行が負いきれないリスクを、政府100%出資のJBICやNEXIがカバーするということは、リスクを国民に転嫁しているいるといっても過言ではありません。

(スタッフ 深草)

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