6/5まで「原子力利用に関する基本的考え方(案)」パブリックコメント

直前になってしまいましたが・・・
6月5日まで、「原子力利用に関する基本的考え方(案)(原子力委員会)」に対するパブリックコメントが募集されています。

原子力委員会は、原子力基本法(1955年)にもとづいて1956年に設立され、国の原子力政策の長期計画を策定してきました。
しかし、東電福島第一原発事故後、原子力をめぐる環境が変わったことから、長期計画は策定しないこととされ、そのかわりにこの「基本的考え方(案)」が策定されることとなりました。

表面上は「東電福島第一原発事故をふまえて」などとしながらも、内容は
「運転コストが低廉」な原子力を、「ゼロリスクではない」としながらも、引き続き利用・推進し続ける、というものです。

ぜひ一言でも、意見を出しましょう・・・!

★「原子力利用に関する基本的考え方(案)」パブコメ募集:締め切り6月5日(月)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=095170510&Mode=0

★原子力委員会の会議資料の中に3ページの「概要」もありますので、参考に。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2017/siryo18/siryo1-2.pdf

FoE Japanからも下記提出しました。

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「原子力利用に関する基本的考え方(案)」に対する意見

2017年6月2日
国際環境NGO FoE Japan

1.           <全体> 福島第一原発事故の甚大な被害、すでにほとんどの原発が停止しており事実的に原子力からの発電から脱している現実、ふくれあがる原発のコストに鑑みれば、完全な脱原発をできるだけ早期に具体化することこそ必要である。 発電という目的について考えれば、省エネルギー、エネルギー効率化、再生可能エネルギーなど、優先すべき具体的手段が多数ある。多大なコストをかけ、また多数の市民の生命ややくらしを脅かすリスクを負ってまで原子力を使い続ける理由はもはや存在しない。原子力の技術は、事故炉の廃炉や放射性廃棄物の管理・処分の目的に限り、継続すべきである。

 

2.           <東電福島原発事故に対する考え方について (p.3、6)>
「国民の原子力への不信・不安に真摯に向き合い、社会的信頼を回復していくことが必須」とされている。しかし、市民が脱原発を望む理由は、単なる「不信・不安」にとどまらない。東電福島第一原発事故では、今なお放射能被害の影響が続いている。故郷を失ったり避難を余儀なくされたりなど多くの人がいまだに精神的・経済的・社会的困難を強いられ、社会的な分断が生じている。 すでに起きている原発事故に対する賠償や対応、収束に向けた道筋も見えないことに対する失望や憤りに対しては、容易に理解を得たり対応をしたりできるものではない。

 

3.           <原子力利用をめぐる環境、コストについて(p.3、11)>
電力小売り全面自由化等により、原子力をめぐる競争環境が変化しているのは事実である。加えて、原子力のコストについて、事故費用や賠償費用、安全対策費用の増大などにより国際的にも上昇していることについても認識し、記載すべきである。 たとえば、東芝の危機は、米原子力企業WHが原因であるし、仏アレバも深刻な経営危機に陥っている。公的な支援なしには成り立たない産業となっている。 「運転コストが低廉」との表現があるが、事故のリスクがゼロでないことを考えればこれも適切ではない。

 

4.           <地球温暖化対策と原子力利用について(p.3、10-11)>
途上国を中心に、世界的に深刻な影響を及ぼしている地球温暖化問題に対し、日本は先進国として真摯に向き合い、現在の目標はさらに上方修正していかなければならない。しかし、その対策として原子力を利用すべきではない。 原子力は、出力調整をしやすい電源ではないため、オール電化や夜間電力利用という形で、節電よりもかえって電力消費を増やしてきた。 省エネルギーと熱・電気の利用形態の見直しも含めたエネルギー効率化、再生可能エネルギーの推進こそ、地球温暖化対策として進めるべきである。 「低炭素電源である原子力に一定の役割が期待されている」との記載は削除すべきである。

 

5.           <国民生活や産業との関係について(p.4、11)>
火力発電の焚き増しや、再エネ固定価格買取制度導入に伴う電気料金の上昇が強調されているが、その原因は、早期に運転コストのほとんどかからない国産エネルギーである再生可能エネルギーへの投資を行ってこなかったことにある。 日本の豊かな資源、また未利用の再生可能エネルギーを活用し、早期に「国産エネルギー(=再生可能エネルギー)」へシフトを進めるべきである。

 

6.           <原子力関連機関に内在する本質的な課題とその対応について(p.5、13-14)>
原子力関連機関に継続して内在している本質的な課題として、事故などの情報共有が遅れたり隠ぺいされたりしてきた問題について、明確に記載すべきである。また国民性や文化をその理由とすべきではない。 原子力事故への対応に対する批判、原子力を維持推進する大きな構造への疑問、原子力発電技術そのものに対する批判、経営体質への批判など、より深く広い社会的課題である。これに向き合うには、原発事故へ対応を抜本的に改革し、将来的な原子力利用について方針転換する必要がある。 インターネットやソーシャル・ネットワーク・サービスによる情報提供など、コミュニケーションの強化により解決できるものではない。

 

7.           <原子力利用の基本目標について(p.6)>
「原子力技術が環境や国民生活及び経済にもたらす便益の大きさを意識して進めることが大切である」とあるが、これは削除すべきである。原子力技術は、多くの課題を抱え、また既に深刻な被害をもたらしている。さらに、これまで「温室効果ガスを出さない」などこれまで便益とされてきたことも、十分に代替する技術やエネルギーがある。すでに発電に原子力を使う理由はない。今ある原子力発電所の廃炉や核廃棄物の管理・処分を安全に行うことのみを目標とすべきである。

 

8.           <ゼロリスクはないとの前提での対策について(p.8-10)>
原子力の被害の甚大さを考えたとき、ゼロリスクはないとの前提に立つのであれば、原子力発電を利用すべきではない。
9.           <原子力防災と自治体・住民の関与について(p.10)>
原子力防災に関しては、原子力規制委員会は、指針をつくっただけであり、審査・確認の対象にしていない。このため、第三者的な目でのチェックが行われていない。事故時の避難についても、現在は30km圏内でしか原子力防災計画が策定されていない。福島第一原発事故の被害状況をみれば、30km以遠の飯舘村も全村避難を強いられた。
その内容は、実効性と程遠く、住民などステークホルダー意見も反映されていない。要援護者など社会的弱者がとりのこされる恐れがあるなど多くの問題点を含んでいる。
また、30km圏内の自治体は、原子力防災計画の策定・実施主体であるのにもかかわらず、再稼働についての意見は考慮されない。
原子力防災の体制については、住民が参加できる枠組みをつくり、原子力規制委員会の審査の対象とし、原発運転の可否と関連づけるなど、抜本的な体制の見直しが必要である。

 

10.      <原子力損害賠償制度について(p.10)>
東電福島原発事故により、現在の原子力損害賠償制度では、過酷事故に対応できないことが明らかとなっている。事故後に原子力損害賠償・廃炉等支援機構法に基づき、本来であれば責任を取るべき東電の経営陣および株主などが責任をとらず、国の支援で、賠償と廃炉が行われている。万が一次の事故が起こった際に対応できるよう、原子力事業者の負担金を引き上げる等の必要な措置を講じる必要がある。その際、原子力事業者の責任を明確にし、負担金が託送料金を通じた国民負担となることはあってはならない。

 

11.      <核燃料サイクル、核不拡散について(p.12、13)>
核燃料サイクルは多額の費用と年月をかけていまだ実現しておらず、今後の実現も全く見込むことができない。核兵器転用の可能性のあるプルトニウムを取り出す核燃料サイクルの中止・撤退を宣言し、使用済燃料の直接処分に転換すべきである。 日本は唯一の被爆国として、核軍縮・核不拡散の先頭に立って取り組むべきである。 原子力の「平和利用」が幻想にすぎず、原発は、被ばく労働や原発事故のリスクを伴い、十万年単位での管理を必要とする核のゴミを生み出し、軍事利用への転換の危険がつねにあることを念頭に置かなければならない。

 

12.      <原発輸出について(p.12)>
東電福島第一原発事故の原因究明もできておらず、また事故処理の道筋も見えないなかで、倫理的観点から、また核不拡散の観点から他国への原子力輸出は行うべきではない。事故の教訓そして脱原発への道筋を世界と共有していくことが必要であり、原発廃止や廃炉、再生可能エネルギーや省エネルギーの技術推進に向けた連携こそ行うべきである。

 

13.      <原子力発電所の廃止について(p.15)>
東電福島第一原発の廃炉については、その全体の工程も明確に提示されていないほど、膨大な年月と技術を必要とする作業である。廃炉作業や汚染水対策、放射性廃棄物の処理・処分について、作業員の安全と人権を最大限確保して行われなければならない。 既存の原発の廃炉については、原子力事業者の責任と費用負担で行われなければならない。

 

14.      <現世代の責任による放射性廃棄物の処分について(p.15)>
放射性廃棄物の処理・処分は、まだ方法もその処分地の選定についてもまったく見通せていない。非常に困難なプロセスが予想される。現世代の責任として行うためにも、まずはこれ以上放射性廃棄物を発生させないために、原発利用の停止を決めることが必要である。