米レイチェル・カーソン協会、拡大する木質ペレット産業に関するレポート「グリーンウォッシング」を発行

アメリカの木質バイオマス産業の実体を詳報するレポート「グリーンウォッシング」がレイチェル・カーソン協会(Rachel Carson Council: RCC)から発行されました。本レポートは、アメリカの木質ペレット産業を支配する力について書かれた「Clear Cut(皆伐)」、木質ペレット産業を支えるカネについて書かれた「Bad Business(悪のビジネス)」に次ぐ3冊目です。

「グリーンウォッシング」は、木質ペレット製造の主要企業であるエンビバ社とドラックス社の慣行を中心に、アメリカの木質ペレット産業の全体像、木質ペレット生産の増加を可能にしている政策、そして木質ペレット生産による気候正義と地域コミュニティや環境への影響について、環境団体・大学・研究機関による調査結果をまとめたものです。

ここではレポートから、アメリカの木質ペレット産業に対するインセンティブについて書かれた一節から要点をご紹介します。


  • 米国エネルギー省(Department of Energy: DOE)と米国農務省(Department of Agriculture: USDA)をはじめとする様々な省庁や法令が、木質ペレット生産における減税や木質ペレットが持続可能であるというお墨付きを与えている。
  • DOEとUSDAは、木質ペレットに関する減税やプログラム実施に毎年130億ドルを投入している。米国財務省(Department of Treasury)を通じ、木質バイオマスは2つの減税プログラムの対象となっている。
    • 減税プログラムとは、米・内国歳入法(Internal Revenue Code)のセクション45に基づく再生可能エネルギー生産税控除(Production Tax Credit: PTC)とセクション48に基づく再生可能エネルギー導入投資税控除(Investment Tax Credit: ITC)のこと
  • 米下院で可決された「ビルド・バック・ベター法」(Build Back Bettter Act, より良い復興の意味)には、老齢林(old-growth forest)の保護に5,000万ドルの助成金があるが、バイオマスを持続可能と分類し、バイオマス燃料のための森林管理を認めている。
  • エンビバ社やドラックス社をはじめとする木質ペレット産業は、政府など様々な主体から補助金や助成金を得て、木質ペレットの生産を拡大している。たとえば、エンビバ社はペンシルバニア州ノーザンプトン郡の工場だけで、2011年以降に30億ドル(1ドル149円換算で4,470億円)もの大金を手にしている。

レイチェル・カーソン協会のレポートは、いずれも英語版のみですが、アメリカの木質ペレット産業の構造や実態が詳報されています。


【関連ブログ】FoE USを含む25のアメリカの環境団体、バイデン政権に木質ペレット工場への補助金取り止めを求める書簡を発出

レポート「グリーンウォッシング」で問題視されている木質ペレット産業に対する減税プログラムに関連して、レイチェル・カーソン協会やFoE USを含むアメリカの環境団体、25団体がバイデン政権に書簡を発出しました。ブログで概要を紹介していますのでご参考ください。

https://foejapan.wordpress.com/2023/10/27/biomass_news2/