アブラヤシ生産の現場では何が?ー現地調査報告

みなさん、こんにちは。FoE Japanスタッフの杉浦です。

コロナがまだまだ収束せず、ステイホームが余儀なくされる今ですが、いかがお過ごしでしょうか?

今回は、去年の12月に行ったインドネシアでの現地調査についての報告をしたいと思います。

今回の調査の目的は、パーム油の原材料であるアブラヤシの実がどのように生産されているのか、本当に環境・人に優しい環境で栽培されているのかという実態調査です。

みなさんは、パーム油ってご存知ですか?

パーム油は、様々な商品に使われており、カップラーメンやチョコレート、ファストフードのような食品から、石鹸や化粧品にも使われています。あまり、日本では親しみがないように思えますが、広くいろいろなところで私たちの生活に関わっています。実際に、日本の国内植物油消費量の中では菜種油に続く、第二位となっています。

主な生産地はマレーシアとインドネシアで、その使いやすさから、生産量は2018年には71,453,193トンと1961年の48倍にも増えています。(下の図参照)

さらに、日本では2012年に再生可能エネルギーの普及を推進する目的で、固定価格買取制度、通称FiT制度が制定され、太陽光、風力、水力、地熱と共に、パーム油を含めたバイオマス発電も対象とされています。このFiT制度は、再生可能エネルギーを利用した発電設備で発電された電気を、一定の期間・価格で、電力会社が買い取ることを国が保証する制度であり、私たちの払う電気料金からのお金で成り立っています。

このFiT制度が制定されて以来、日本でのバイオマス発電所は増え続けており、認定されているうちの4分の1ほどはパーム油を燃料とする発電所です。現在認定を受けている事業がすべて稼働すれば、急激に日本のパーム油の輸入量が増えると予想されます。

パーム油は植物由来の油ですが、果たして本当に環境にいいのでしょうか?再生可能エネルギーと呼べるのでしょうか?現地調査から学んだことをまとめました。

インドネシアは何度か訪れていますが、今回は初めてインドネシア本島ではなく、アブラヤシ生産が盛んな、カリマンタン島の中央カリマンタンに行ってきました!下のグーグルマップでみると、赤い線で囲まれたところが中央カリマンタンになります。さらに、その中の丸く囲まれたところが今回調査した地域になります。

自然な豊かな土地から、様々な開発が行われており、アブラヤシ農園開発を含めた土地造成が至る所で行われています。下の図は、1990年と2017年を比べたものになります。緑のところが手が付けられていない自然、そして黄色いところが開発されたところになります。ご覧いただける通り、2017年には中央カリマンタン全体がほぼ黄色くなっていることがわかります(WALHI – FoE インドネシアのデータ)。

今回訪れた2つの農園をご紹介します。

一つ目はGawi Bahandep Sawit Mekar社と呼ばれる会社の保有する農園。

Seruyan地区Jahitan村Seruyan Hilir郡に位置し、トリプトラグループが保有する子会社です。面積は19,594.22ha (約東京ドームの4169倍 )にもなります。

そして、この農園は、2014年からRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証を取得しています。

このRSPOというのは「持続可能なパーム油が標準となるよう市場を変革する」というビジョンを持っていて、現存するパームアブラのための認証制度としては、とてもしっかりしているものだと思います。たとえば、生産段階の認証では

原則1:透明性への誓約
原則2:適用される法令と規則の厳守
原則3:長期的な経済的及び財政的存続可能性への誓約
原則4:生産者と搾油工場による適切な最善の慣行の活用
原則5:環境に関する責任と自然資源及び生物多様性の保全
原則6:従業員及び生産者や搾油工場によって影響を受ける個人とコミュ ニティに関する責任ある配慮
原則7:新規作付けの責任ある開発

といった7つの原則を持っており、それぞれ厳しいチェックが行われます。

さらには、様々な7つのステークホルダーが意思決定に参加しており、アブラヤシ生産者、精油業、商社、消費者製品製造業、小売業、銀行、投資家の他に、環境・自然保護NGOや社会・開発NGOが含まれており、市民社会の声も反映された制度になっています。

そういった点から、冒頭に説明した、FiT制度はRSPO認証をうけたパーム油(RSB認証というも認められているが日本にはまだほとんど入ってきていない)をFiT制度の対象にしています。

しかし、RSPO認証を受けていても、現場では様々な問題が起きていました。

まず、農園の近隣に住む人から話を聞くと、農園開発のせいで、彼らの生活は一変したと言います。

企業は2006年ごろからこの土地を開拓しようとやってきて、住民とぶつかります。その理由は、企業が開発しようとした地域に住民の土地が含まれてしまっていたから。住民たちは、ここは自分たちの土地だと訴えましたが、企業側は一切引かず、実は今現在も解決していません。2016年ごろから、何度も市や警察が関わり仲裁が取られているにもかかわらず、話し合いは平行線をたどっているそうです。

しかし、そんな住民の反対にもかかわらず、事業は推し進められ、住民たちの生計手段は大きく変わります。彼らの農地は奪われ、川は汚れ、農業や漁業で前のように生計は立てられなくなりました。

さらに、森林火災も頻繁に起きています。現地NGO、研究者によると、所有する敷地内・外で火災が起きており、2019年には、毎年インドネシア政府から発表される森林火災の容疑者のリストにも上がっています。

下の写真は、今回僕が訪れた時に撮ったものです。去年の森林火災によって、あたり一面の木が燃え、このように燃えかすが残っていました。このように自然林を燃やすことによって、企業はアブラヤシ農園開拓の場所を広げたり、または自分の農園が燃えることによって、保険金を手に入れることができるそうです。

訪れたもう一つの農園は、Mustika Sanbulu社という企業の農園。Kotawaringin Timur地区Mentaya Hilir Utara郡・ Telawang郡, Pondok Damar村, Bangkal村, Tanah Putih 村 and Sei Babi村と多くの村にわたって位置し、日本にパーム油を輸出しているウィルマー社がもつ子会社の農園です。こちらも、2010年からRSPO認証を取得しています。こちらも、19,632,27haという広大な土地にアブラヤシが一面に広がっています。

この農園でも、1つ目の農園と似たような問題が起きていました。

まずは、土地紛争。1996年ごろから住民が強制的に移転させられ、現地住民の土地は奪われてしまいました。彼らの土地を奪っただけではなく、いまだに地域住民に対しては平等な権利が与えられていません。具体的には、企業は、企業が有する土地の20%を地域住民が主体となりアブラヤシを管理する小農農園(Plasma)として割り当てなければならない(2007年農業大臣令)のにもかかわらず、企業が拒んでいるそうです。

奪われた土地は、農業・漁業で使われていた土地で、現在は生活も厳しくなったと、現地の人たちはいいます。

さらにはこの近くにはサンピット川と呼ばれる川が流れていますが、農園からの汚染がひどく、現地の人々は

「事業が始まると川も汚れていった。」

「水の色はどす黒くなり、匂いがする。」

「魚が死に、生活用水(水浴び)として 利用もできない。」

と嘆いています。健康被害もあり、水に入ると体がかゆくなったり、発疹がでるそうです。

汚染の原因の一つとして、現地住民が見つけたのは、工業廃水の貯水タンクが破損しているということ。

現地保健局にも問い合わせ、そうすると貯水タンクの数が規定に合っていないことが判明しました。なのにもかかわらず、いまだに現状は変わっていないそうです。

さらに、森林火災にも関わっているようです。この企業は、1999年から森林火災に関与しているそうで、2019年も同じように森林火災が農園内・外で起きているということでした。

親会社のウィルマーグループは、パーム油生産で大変有名な企業で、しかし森林火災に関わっていることが多く、常に要チェック対象になっています。

現地でお話を聞いた住民の一人はこう述べています。

「アブラヤシ農園ができる前は、私たちの生活は豊かだった。農 業で野菜を取り、森に肉を取りにいって川や湖に魚を取りにいっ た。なのに今はなにもできない。私たちにはなにもない。誰だっ て、どこにいたってみんな生きる権利がある。みんなだ。もう私 たちは死んだも同然だ。」

以上、簡単でしたが2つの事例を今回の現地調査から紹介させていただきました。

今回の調査で、パーム油は植物由来の油であるが、大量生産・大量消費をすることによって、農地拡大が大規模におき、現地に住むひとびとの生活・暮らしを壊していること、さらに、RSPO認証といった認証制度があっても、様々な抜け穴や、管理がちゃんとされておらず、持続可能だということは言い切れないことが改めて認識できました。今後、FiT制度により、バイオマス発電が促進されると、さらにパーム油や木質由来の燃料を国外から輸入することになり、需要は急激に高まり、それに比例し現地での生産が拡大、そして森林破壊・人権侵害につながる恐れがあります。

特に、FiT制度は私たちのお金が使われている制度です。こういったパーム油のような燃料に、「再生可能エネルギー」だといって私たちのお金が使われていいのでしょうか?

私たちは今後も調査を進め、政府への提言を行なっていきます。

現在、旅行会社であるHISが進めるパーム油を燃料としたバイオマス発電事業に反対する署名活動も行っております。是非、署名にご協力ください!

署名サイトはこちらから👉http://chng.it/LLXWdXfF

FoE Japanスタッフ 杉浦

国交省の公平性に欠けたリニア準備工事提案 撤回を求めよう!

IMAG2555~3(写真:山梨実験線)

リニア静岡工区を巡り、大井川の減水を懸念する静岡県と準備工事の早期着工を求めるJR東海の話し合いが膠着状態の中、7月9日付けで国交省が双方に対して「提案」を発表しました。

以下国交省HPから:
「水資源・自然環境への影響の回避・軽減とリニア中央新幹線の早期実現を両立させることが重要であることについて、累次にわたり、静岡県、JR東海とも認識の共有を確認してきたところです。この共通認識の下、国土交通省より、静岡県及びJR東海に対し、大井川の水資源及び自然環境への影響が軽微であると認められる範囲内で、国の有識者会議の議論等と並行して、速やかに坑口の整備等を進めることを提案いたしました。」

国交省提案:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001352937.pdf
報道発表資料:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001352938.pdf

提案:

1.JR東海は、国の有識者会議における議論等、必要な検討・手続きが終わるまで、 トンネル掘削工事に着手しない。

2.静岡県は、坑口等整備の速やかな実施を容認するものとし、7月の早い時期を目途に、必要な手続きを進める。

3.JR東海は記2.の必要な手続きの終了後、坑口等整備を行うが、その際、国の有識者会議の今後の議論等の結果、坑口の位置、濁水処理施設等に変更が必要になった場合には、当該変更を行うことを前提とする

 

トンネル工事等の本体工事に関しては有識者会議の結論を待つとありますが、本体工事のための準備工事(宿舎建設やヤード建設等)を一刻も早く始めたいというJR東海の意向を十二分に汲んだ提案となっています。
本来、国は中立の立場であるべきですが、国交省自らが設置した有識者会議の結論すら出ていない段階にも関わらず、事業有りきの提案を行い、また、有識者会議の結論により計画変更もあるという先の読めない工事の早期着手を促す等、無責任極まりない提案です。

一方、このところの大雨により、リニア工事のための作業用道路等が土砂崩落の影響を受けており復旧の見通しもたたないとの報道もあります。
国交省にとっては流域住民、そして現場の作業員の安全よりも、2027年開業がそれほど重要なのでしょうか。

本日7月10日17:00~国交省が静岡県に提案の説明を行います。
YouTubeの静岡県チャンネル「shizuokapref」または、静岡県のホームページ「ふじのくにネットテレビ」により、リアルタイムで配信予定です。

国交省に公平性に欠けた無責任な提案の撤回を求める声を送りましょう!

FoE Japanの参加するリニア新幹線沿線住民ネットワークでは、国交省に提案撤回を求めるアクションを呼びかけています。
提案撤回を求める声は、以下のFAXやオンラインフォームにて送付することが出来ます。
また、下記に上記住民ネットワーク事務局の参考文例です。

送付先:
国土交通省あて FAX番号 03-5253-1634
静岡県知事室充て 〃   054-254-4032
※静岡県宛てにも激励や国交省に撤回を求める声を届けた旨を添えてコピーを送りましょう。

国交省の「国土交通ホットラインステーション」の「鉄道関係」の「1.新幹線」の意見募集のフォームから意見提出できます。
(※1000字以内)
https://www1.mlit.go.jp:8088/hotline/cgi-bin/u_hotline08011.cgi

リニア新幹線沿線住民ネットワーク参考文例〉—————————————————————
国土交通省鉄道局長殿
国交省は静岡県、JR東海に対する提案を撤回し、
静岡工区有識者会議の審議を冷静に見守るよう求めます

国土交通省は7月9日、リニア中央新幹線の静岡工区の準備工事を認める趣旨の提案を静岡県とJR東海に提示しました。
基本は明らかに、JR東海の早期着工意図を勘案したもので、トンネル本体工事と準備工事は一体なものとして工事着工を認めないとする静岡県の意志を覆そうとするものです。
国交省による静岡工区有識者会議の趣旨について、静岡県は国交省がJR東海に対し指導的な役割を果たすよう期待していると伝えられています。
静岡県知事は先月下旬のJR東海社長とのトップ会談で、準備工事は本体工事と同じものであり、6月中の着工を認めない姿勢を示しました。本来ならば少なくとも中立的な行司役を務めるべき国交省が、JR東海による早期着工をあと押しすることは、静岡県民の意志を曲げるものであり許せません。
静岡県知事が示している有職者会議の結論を待ち、静岡県の同意が得られれば協定を結び着工を図るべきだと考えます。準備工事を済ませればそれを既成事実として位置づけ、本体工事につなげるという進め方は、沿線各地でJR東海が実施しているやり方です。
静岡県内だけでなく沿線各地でリニア中央新幹線の工事が大幅に遅れています。残念ながら、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、岐阜県、愛知県は知事がリニア中央新幹線期成同盟会の会長となり、工事や供用についての沿線住民の不安や疑問を取り上げることなくJR東海の事業推進を後押ししています。
静岡県知事はリニア中央新幹線の実現には反対ではないと明言していますが、それには大井川水系の水問題解決と南アルプスの自然環境の保全が必須条件となっていることと推察します。
このような状況にあっても、工事の手続き的な整理や区分が今先決だという国交省の考え方は、県民の命と貴重な自然を必死に守ろうとしている静岡県の姿勢を甘く見ているとしか言えません。
私たちは国土交通省の提案を撤回するよう強く求めます。

2020年7月10日
飯田リニアを考える会の参考文もこちらにあります。
http://www.nolineariida.sakura.ne.jp/2020-07/2020-0709.html

 

関連:7/11 19:00~【オンラインセミナーのご案内 ~ FoE現地報告会シリーズ4】リニアは止められる?~「大井川」をめぐる静岡県とJR東海の対立とは

住民がパーム油発電を撃退!(京都府舞鶴市)

うれしいお知らせが飛び込んできました。京都府舞鶴市で日立造船が計画していたパーム油発電所。住民の猛反対でカナダの投資会社が撤退していましたが、6月23日日立造船の株主総会で住民に詰め寄られた常務取締役が「パーム油発電は今後しません」と明言しました。

粘り強い住民の反対が、ついに事業中止を勝ち取ったのです。

パーム油の需要拡大に伴うプランテーション開発は東南アジアにおける熱帯林破壊の最大の要因になっています。そればかりか、京都府福知山市で運転中の三恵エナジーのパーム油発電所では、騒音・悪臭で近隣の住民たちが悩まされています。

H.I.S.が宮城県角田市で進めるパーム油発電所はこのまま稼働してしまうのでしょうか? 国際的な注目が集まっています。>署名サイト:H.I.Sさん、熱帯林をこわすパーム油発電やめて!

この件について、日本のバイオマス発電について国際的な情報発信を続けている米NGOのマイティー・アースがプレスリリースを発出しました。地元の住民の方の声やFITの政策まで、全体的な状況をよく伝えていると思いますので、以下に和訳を掲載します。英語のオリジナルはこちらをご覧ください。

プランテーションのために伐採された山(マレーシア・サラワク州)

写真:パーム油生産のプランテーション開発のために皆伐された山(マレーシア・サラワク州)(c)FoE Japan


Mighty Earth
プレスリリース
2020年7月1日

 

日本最大のパーム油燃焼発電所建設計画が中止

環境グループ、政府に対しFITによる再生可能エネルギー促進政策の改革
HISに対しパーム油発電建設計画を中止するよう要請

国内外の環境NGOのグループは、本日、舞鶴市にパーム油を燃料とする発電所を建設するために設立された会社、「舞鶴グリーンイニシアティブス 合同会社」の解散にあたり、歓迎の意を表明する。物議を醸しているこの66メガワットの大規模バイオマス発電所に対しては、地元住民が、日本や国際的な環境団体の支援も得て、9カ月にわたり反対運動を続けてきた。

ウータン・森と生活を考える会」の石崎雄一郎氏は「これは熱帯林と舞鶴市民にとって大きな勝利でです。旅行会社エイチ・アイ・エスが宮城県で、京都府で三恵エナジーがパーム油発電所を進めていますが、両社に対して事業への関与をやめ、日本政府に対しては、気候変動を悪化させるバイオマス発電への補助金を通じた支援をやめるよう求めます」と話す。

舞鶴パーム油発電所はパーム油を燃料としていることが問題視された。日本は主としてインドネシアおよびマレーシアで生産されたパーム油を輸入している。絶滅危惧種オランウータンの生息環境も含む原生の熱帯林が失われつつあり、過去20年間にインドネシアとマレーシアの350万ヘクタールの熱帯雨林がパーム油生産のためのアブラヤシ農園に転換された。日本は年間約75万トンのパーム油を輸入しており、主に食品や製品に使用されている。もし舞鶴パーム油発電所が建設されれば、年間12万トンのパーム油を燃焼することになり、パーム油生産による環境影響はさらに大きくなる。

11,000人の反対署名など住民からの圧力を受けた事業の投資会社であるカナダ・トロントのAMPエナジーは、2020年4月にプロジェクトから撤退した。4月22日のアースデーに送られた書簡 の中で同社代表取締役のポール・エゼキエル氏は「今後、当社及び当社グループはパーム油を燃料とする発電事業の検討は行いません」と述べた。この中で、エゼキエル会長は「地元住民の強い反対」を含むプロジェクトの困難さを引き合いに出した。

AMPは脱退したが、工場の建設・運営を担う予定の日立造船が新しい投資会社を探すかどうか不明であった。しかし、2020年6月23日の定時株主総会で、舞鶴市民グループの森本隆氏が、日立造船の白木敏之常務取締役に同工場の建設計画について質問したところ白木氏は、「今後、パーム油への投資が行われる見込みがないため、日立造船はこのプロジェクトから撤退する」と回答。6月26日には舞鶴市長が同発電所建設の中止を表明した。

「数年間にわたるであろうと思われたこの発電所との戦いのために、私たちは総力を結集しました。たった9カ月で事業中止に追い込めたことは驚きです。地元の草の根活動と経験豊富なNGOからのアドバイスを組み合わせることで勝利を収めることができたと思います。世界はさまざまな問題を抱えていますが、他の地域の人々も社会を良い方向に変えることができると思います」と「舞鶴西地区の環境を考える会」の森本隆氏は述べた。

ゆっこ勝利ポーズ

長期的なトレンド

日本では、政府によるインセンティブが発電用のパーム油の使用を促進している。2012年には、固定価格買取制度(FIT)により、再生可能エネルギーの発電電力を電力会社に固定価格で買い取ることを保証する制度が開始された。それ以降、FITによるバイオマス発電に対する買取価格(主に木質ペレット、パーム核殻(PKS)、パーム油)は、24円/KWhと世界で最も高かった。

バイオマス発電のためにパーム油を燃やせば燃やすほど、世界のパーム油需要は増える。2018年3月時点で、日本のFITで承認されたパーム油発電所プロジェクトの総容量は1700 MWであり、もしすべてが建設されるとすれば、毎年340万トンのパーム油が燃やされることになる。これは、現在の日本のパーム油輸入量のほぼ5倍である。この需要の急増は、環境に大きな影響を与える恐れがある。

日本の環境NGOは、宮城県角田市に建設中である、舞鶴発電所に次ぐ規模のパーム油発電所とたたかっている。これまでに20万人の反対署名を集めた。この発電所は、日本の大手旅行会社H.I.S.の子会社であるH.I.S. SUPER電力によって建設されている。

「H.I.S.は旅行会社として、従来からボルネオなどでエコツアーを行い、大自然の魅力を体験しようと宣伝してきました。電気を作るために大規模に森林を破壊するパーム油を燃やすビジネスになぜ乗り出すのか、どうやって顧客に説明するのでしょう。私たちは、H.I.S.に対し、日立造船の先例に倣い、パーム油発電所への関与を放棄するよう求めています」と、FoE Japan、満田夏花氏は言う。

泥炭地(西カリマンタン)

写真:プランテーション開発のために開発された泥炭地。蓄えられていた膨大な量の炭素を二酸化炭素として放出する(インドネシア・西カリマンタン州)(c)FoE Japan

環境を破壊するバイオマス発電への補助が、気候変動を悪化させる

残念なことに、日本政府のバイオマス発電促進政策は、森林破壊や著しい温室効果ガス排出につながる燃料源を避けるためのセーフガードを設けていない。経済産業省が2019年に行った分析によると、パーム油の栽培、加工、輸送を含むライフサイクルを通しての排出量は天然ガスと同程度である。しかし、熱帯林が伐採されると、排出量は5倍になる。泥炭地が開発されると排出量は139倍にもなる。
パーム油の燃焼に加えて、日本のバイオマス政策は、森林の伐採や木材の燃焼も促進している。伐採後の森林の成長と炭素の再吸収は遅いため、気候変動に対する取り組みを妨げる。日本で燃やされる木材のほとんどは、ベトナムや北米から輸入される。
舞鶴パーム油発電所に国際的批判が集まる
日本のバイオマス発電所の急増に環境グループが警戒感を示す中、舞鶴パームオイル発電所は、国際的な注目を集めた。国内外の44の金融機関にあてた共同書簡では、8カ国25団体がこのプロジェクトおよびパーム油発電に反対した。
「気候変動を止めるための時間はあと数年ほどしか残されていない中、間違った気候変動対策に時間を浪費することはできません」と、マイティー・アースのシニア・キャンペーン・ディレクター、デボラ・ラピダス氏は言う。「パーム油を燃やすと、炭素を吸収するために必要な森林の破壊が加速します。木質バイオマスを燃やすと、何年分もの炭素の蓄えが、文字どおり煙になってしまいます。舞鶴のパーム油発電所を停止することは、バイオマスの誤った約束を終わらせるための重要なステップであり、真に再生可能な電力のソリューションに焦点を当てるのに役立つでしょう。」

FITの改革が急務

2020年4月、経済産業省は、環境団体の働きかけ応じて、固定価格買取(FIT)制度のもとで、新規に導入されるバイオマス燃料については温室効果ガスの評価を求めることとした。パーム油、木質ペレット、PKS(パーム核殻)などの従来から認められてきた燃料についても、温室効果ガスの排出を厳しく制限するよう求められる。

「日本の再生可能エネルギー促進政策を通じて、気候変動を悪化させる燃料に補助金を出すべきではありません」と、地球・人間環境フォーラムの飯沼佐代子氏は言う。「温室効果ガスの排出量が高いパーム油は固定価格買取制度から除外されるべきであり、経済産業省は木質バイオマスについても厳しい排出枠を採用する必要がありますあります。」

舞鶴パーム油発電所キャンペーン・ウェブサイト
https://maizuru-palm.org/

コンタクト:ウータン・森と生活を考える会 石崎雄一郎 contact-hutan@hutangroup.org

※参考サイト:
Q&A 何が問題?H.I.S.のパーム油発電
https://www.foejapan.org/forest/palm/190609.html

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写真上:パーム油生産のためのアブラヤシ農園(c)FoE Japan

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写真上:アブラヤシの実 (c)FoE Japan

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※パーム油生産のためのアブラヤシ農園開発は、大量に炭素が蓄積されている泥炭地をも開発し、インドネシアでたびたび発生する森林火災の原因とも指摘されている。(c)WALHI リアウ(FoEインドネシア・リアウ支部)

コロナ危機をどう乗り越えるか 〜システムチェンジに向けた連帯を〜

先月末、FoE ドイツの呼びかけで、このコロナ危機について意見交換や情報交換をする機会がありました。

ヨーロッパだけでなく、アフリカやラテンアメリカ、米国、アジアから40人近くのFoEのメンバーが集まって、「このコロナ危機をどう捉えるか」という話から始まり、途上国や先進国で起きていることの共有、そして、私たち市民が持続可能な社会のために目指すべき経済復興対策はどのようなものかという問題提起がありました。

話の中で出たのは、

・コロナ危機は、今まで見えないふりをしてきた気候変動による甚大な被害、生物多様性の損失、所得格差の拡大などの延長線上にあるもの。コロナ危機は、これらの社会問題・環境問題の原因である今の社会の仕組みが、限界であることを教えてくれている。

・コロナ危機の中で、不安定な雇用や家庭内暴力等に苦しむ人々、社会のセーフティーネットから溢れてしまう人々の存在など、社会の脆弱性が顕在化し、人々がこれらに気がつくようになった。その中で、お互いを気遣いあう人々が増えてきていたり、人間活動の低下による自然の回復を目にして自然との関係を見直そうという議論が盛んになってきたりしていることも事実である。

・南アフリカ(途上国で起きていること):多くの人々が電気など、基本的なニーズへのアクセスが困難な状況。すでに気候変動等の影響を被っている人ほどコロナ危機対策の網の目からこぼれ落ちている。今の状況は、もはや気候危機が起きたようなもの。

・米国(先進国で起きていること):政府から化石燃料産業や航空産業など、気候変動を加速させるような産業へ多くの補助金が渡されている。

 

会の後半は、今後、この危機を乗り越え、私たち市民で持続可能な社会をつくるための経済復興対策はどのようなものであるべきかという話になりました。話の中で出てきたのは、まずは経済の目的を考え直すこと、つまり人々や地球の健康の価値を見直すことが必要であるという話になりました。

そして、人々や地球の健康を大切にする経済の条件として、税の公平性の実現、公共サービスの提供、地産地消とフェアトレードの推奨、協同組合などを中心とした経済活動の拡大、利益追求の名の下に自然や人権を搾取するような企業に対する、拘束力のあるルールの確保、といった案が出ました。

 

また、全体を通してのキーワードは、”Just Recovery”という言葉。

”Just Recovery”とは、この危機による経済的打撃から回復する方法として、環境破壊や所得の格差を広げてしまうような過去の社会・経済の仕組みを繰り返すのではなく、社会的公正・環境に配慮しながら、回復しようという考え方です。

具体的には、気候変動の原因となる化石燃料ではなく、再生可能エネルギー普及をはじめとした脱炭素社会構築のための補助金や仕組みづくり、また、脱炭素社会に向けた仕事を増やし、すべての人々が人間らしい仕事と生活ができるような雇用支援をしていくことで、これ以上の自然破壊を止め、人々の公平性を実現していこうという考え方です。

例えば、政府からのお金が化石燃料産業などを維持するために使われてしまったら、短期的に求められる必要な緊急対策や、長期的な視野が求められる脱炭素社会のための技術や雇用の保護に十分なお金が行き届来ません。

 

繰り返しになりますが、私たちは今、気候変動、生物多様性の損失、所得格差の拡大、ジェンダーの不平等など、社会的問題と環境問題が複雑に絡み合った世界にいます。これらの問題を後回しにし、その悪影響が顕在化したのが、今回の危機と言えます。

だからこそ、私たちは個々の問題に個別に対処するのではなく、コロナ危機の影響を最も受けている人々の声を聞きながら今まで複数の危機に立ち向かってきた人同士で連帯し、すべての人が尊厳を持って生きることができる経済・社会を目指す必要があります。

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持続可能な社会とはどのような社会なのか、そして政府の打ち出す政策が持続可能な社会につながるものなのかを私たち市民がしっかり確認し、政府に訴えていくことが求められているように感じます。

(高橋英恵)

 

参考:

Friends of the Earth international, 2020/5/6 “Solidarity with peoples affected by coronavirus crisis – Friends of the Earth International”

https://youtu.be/DDrGl1rxtzg

 

Friends of the Earth international, 2020/4/15 ”COVID-19 crisis is a wake up call for system change”

https://www.foei.org/news/covid-19-coronavirus-crisis-system-change

 

Friends of the Earth Europe 2020/4/20 “Coronavirus: Choices lie ahead for how we build back our broken economies”

http://foeeurope.org/coronavirus-choices-lie-ahead-070420

 

Friends of the Earth APAC, 2020/4/26 “COVID-19: An Opportunity for System Change”

https://foeasiapacific.org/2020/04/26/covid-19-an-opportunity-for-system-change/

 

Friends of the Earth US, 2020/4/15 “New Report: Big Oil’s Money Pit to Reap Stimulus Billions”

https://foe.org/news/new-report-big-oils-money-pit-to-reap-stimulus-billions/

未来のために、今できること!

初めまして、FoE Japanでインターンをしている文京学院大学の松田です。

2か月間の活動を通して学んだことを紹介します。

インターンを始めるまでは環境問題に関してはあまり詳しくなかったのですが今回の活動の中でたくさんの事を学びました。

 

まずは原発事故について、現在では毎年3月に数回テレビで特集をやるくらいで自分の中では原発事故の被害はもうないと勝手に思い込んでいました。しかし、実際にはまだ何も解決しておらず中には住宅支援を打ち切られた地域もあります。被災地の現状は自分が思っていた以上に深刻であると思いました。

 

このような現状をどうすればいいのかを考えた時に、こういったことを自分の事のように考える「自分ごと化」をしていくことが重要であると学ばせていただきました。

 

2月12日に議員会館で原子力市民員会の「自分ごと化会議in松江」から学ぶ経験と課題に参加させていただきました。これは過去に島根県松江市で行われた原発の問題について議論した会議で無作為抽出で選ばれた市民21人と学生5人が参加しました。この会議の狙いは市民が原発を自分の事として考えることが狙いであってここでは「自分ごと化会議in松江」の仕掛け人である中央学院大学教授の福嶋さんと市民エネルギーとっとり代表の手塚さんに話をしていただきました。個人的には原発事故を自分の事として考えるという事はとても斬新だと思いました。まずは原発事故への関心を持ってもらうためには自分のことのように考えて想定してくことが大事だと学びました。

 

2月11日に参加したパワーシフトシンポジウム「自然エネルギーで社会をゆたかに」では石油ガスやバイオマスが環境に及ぼす影響について学びました。TERA Enargy、みんな電力などの今まで聞いたことのない企業があり、その企業の方々の話を聞くことができました。エネルギー問題は私達一人ひとりの課題であってをこれを解決するためには再生可能なエネルギー(太陽光など)を選択する必要があります。一人でもできることは十分にあるのでしっかりと電気を選んで環境に負担をかけないようにしたいです。

 

八王子市の宇津木の森での里山プロジェクトに2月と3月に1回ずつ参加しました。

ここでの作業は薪割りやキノコ(しいたけとなめこ)のコマ打ちでした。

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きのこのコマ打ちは特に大変な作業でドリルで直径1センチほどの穴をあけてからその穴にきのこの種をハンマーで叩いて植えました。(白い部分がきのこの種です。)

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上の画像のようにスギの葉を丸太の上に全体に覆い被せます。

スギの葉をかぶせる理由はきのこに他の細菌が入らないようにするためだという事です。

 

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最終的には上の画像のように丸太が全く見えなくなるまでスギの葉を覆い被せます。

周りの方と協力しながらの作業で終わった後の達成感を味わうことができました。

ちなみに、しいたけとなめこの収穫時期は今から2年後の秋だそうです。

どちらも大変な作業でしたが人の手によって自然と手入れして保全することがどれだけ大切なのかを学びました。ライフスタイルが変わった今では自然とのつながりは薄れかけているのでそのつながりを作るために、実際に自然と触れ合うことができることは非常にいい経験になりました。

 

全体を通して、今までは環境問題を解決するためには具体的にはどうすればいいのかよく分かりませんでした。今回のインターンで各種イベントや保全活動に参加をして自分にもできることがあるということを学びました。まだ分からないこともありますが、自分なりに勉強をして知識を身につけたいです。またそれを私の周りの人に共有することを目標にしてこれからも自分なりに環境問題の解決策を見つけていきたいと思います。

 

 

(松田)