私たちに残された「カーボン・バジェット(炭素予算。温度目標達成と整合する、温室効果ガスの累積排出量の上限値)」はほとんどありません。一刻も早く、社会全体の脱炭素化を行わなくてはいけません。しかし、温室効果ガスの排出は増え続けています。1.5℃目標達成のためには、2030年前でに2018年比で55%の排出削減を行わなくてはいけません(UNEP Emissions Gap Report 2019)。
気候変動への適応が限界を迎え、すでに各国で損失と被害が生じています。損失と被害に関しては、条約のもとにあるワルシャワ国際メカニズム(WIM, Warsaw International Mechanism)というメカニズムが、専門的アドバイスや損失と被害に関する情報収集などを行なっていますが、今回のCOPでWIMのレビューが行われており、WIMの機能やガバナンスについて議論が行われています。
「カーボン・オフセット」の場合、前述のように、「カーボン・オフセット」によって生成された排出権は取引可能なため、キャップ・アンド・トレード同様、売り先の排出者に継続的な排出を認めることになります。また、同じ量の温室効果ガス排出を削減するにしても、先進国を中心とした多くの事業者は、費用を抑えるために途上国等で実施する事例が多く、そのほとんどが実質的な削減となっていなかったり、環境破壊や人権侵害が生じていたりしています。例えば、森林保全を行い、温室効果ガス吸収源を確保した分に見合う金銭的付加価値をつける森林劣化減少を抑えるREDD+(Reducing Emissions from deforestation and forest Degradation )という国際制度がありますが、この制度によって先住民族が住む土地の囲い込みが発生するなどの問題も発生しています。
このような問題点を指摘するため、FoE グループはAsian People Movement on Debt and Development(APMDD, アジアの途上国市民グループ)やIndigenous Environmental Network(IEN, 先住民族グループ)、La Via Campesina(小農民連合)とともに記者会見を開催しました。
そのほか、米国等は国際民間航空機関(ICAO)で準備中のカーボン・オフセット制度(CORSIA, Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation)との接続を主張していますが、航空業界からの排出量は莫大で、それを相殺しようとするとパーム油など大規模バイオマス燃料の推進などにつながり、森林破壊や土地収奪につながる可能性も高いと指摘されています。
開幕の朝、会場入り口にて、南米の先住民族を中心に、チリ政権による市民社会への弾圧に反対する声をあげるアクションが開催されました。冷たい空気の中、15人ほどが眼帯をかけ、チリでたたかう市民への連帯を示し、気候危機の根本には不正義や、市民の声を封じるような政権の存在があるとし、Justice for climate, Justice for Chilean と声をあげました。
This morning Friends of the Earth joined a solidarity action outside #COP25 to denounce the COP moving from #Chile to Madrid. A #Mapuche woman demanded her govt stop grabbing Indigenous territories. We are in solidarity with struggling people everywhere #ChileDespertopic.twitter.com/Zx3WuAfKdb
2018年に続き2019年も、世界各地で猛暑や大雨・洪水が起こっています。フランスやパキスタンでは記録的な熱波、アマゾンやインドネシアでの森林火災、日本でも昨年の西日本豪雨に引き続き、今年10月は連続して上陸した巨大台風によって大きな被害がありました。年々脅威を増す気候変動はもはや「気候危機」と表現されています。にもかかわらず、なぜ大人たちはすぐに行動しないのか。そう訴え、2018年8月にスウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさんが、たった一人でスウェーデン国会前で座り込みを始めました。その行動は世界中の若者を動かし「未来のための金曜日(Fridays For Future)」と呼ばれるムーブメントに発展しています。
社会の公平性を取り戻すことが気候危機対策につながり、また、適切な気候危機対策は公平な社会の実現につながります。社会の公平性と気候危機対策はお互いに切り離せない関係です。この”Climate Justice for ALL”というFoE グループのメッセージを、このCOP25期間を通じ、会場内外で強く訴えていきます。