気候資金や拡大する損失や被害への対策で進展みられず(COP閉幕レポート2)

ボンで開催されフィジーが議長国を務めた国連気候変動枠組条約会合は、残念ながら期待された成果を出すことなく閉幕しました。

cropped-38181814401_69c43ccd05_oCOP23は、気候変動の影響を受けている島嶼国フィジーが議長国を務めるということで、気候変動の影響をすでに大きく受けている途上国や貧困層の人々への支援(「損失と被害」)や気候資金について、進展があることが期待されていました。

今年、巨大ハリケーンにより人道的危機に直面したバハマやキューバなどから会議冒頭、支援の強化を求める強い声が相次ぎましたが、この会議で損失と被害を議論することに反対する米国を中心に、先進国の反対によって今会議での大きな進展は見られず、リスク移転のための保険制度整備情報サイト立ち上げと来年春の専門家フォーラムの開催を決定するに留まりました。

2018年に合意される予定のパリ協定のルールブック交渉(パリ協定を実施するためのルールブック)については、成果の鍵とみられた来年に向けた交渉文書の要素書き出しで進展がみられ、今後の交渉の基礎となる最初の一連の文書が出されました。国別貢献(NDC)の定義や透明性枠組みでの報告の範囲、先進国途上国の差異化など根本的な論点について歩み寄りはなく、見出しと小見出しに全ての国の交渉上の立場が反映されています。

COP17以降の6年間の停滞の時期を経て、このCOP中に、国際(炭素)市場メカニズムについての交渉が予想以上のスピードで進み、次回4・5月に開催される補助機関会合までに交渉文書のたたき台が用意されることが見込まれています。この交渉はロシアや東欧圏に大量に蓄えられている京都議定書下の過去の排出量枠、CDMのオフセットルールの移植、熱帯雨林/REDD+(途上国の森林減少・劣化に由来する排出の削減)、国際民間空港機関(ICAO)のもとでの新しいグローバルオフセットスキームとの連携可能性など、かなり懸念の大きい要素が含まれています。

COP22と23の議長国であるモロッコとフィジーは、促進的対話(タラノア対話と改称)のデザインを作成。この促進的対話のデザインは最終日に承認され、2018年を通じ実施され、COP24での対話を経て2020年以降の各国の野心の引き上げを促進することが意図されています。しかし承認されたデザインでは、2020年以降のアクション、それも緩和のみに焦点がおかれ、途上国への資金支援や、公平性については含まれていません。

一方で途上国は初日に、タラノア対話とは別に2020年までの行動の検証を議題として提案していました。これは京都議定書第二約束期間に関するドーハ合意の批准、2020年までの先進国の排出目標含む野心の引き上げ(カンクン目標)、先進国による2020年までに年間1000億円の気候資金目標の進捗などを交渉内で検証していくことを提案したもので、決定文書に採択されました。背景には、先進国の過去のコミットメントや2020年以降のパリ協定下での責任に不信を持つ途上国の強い結束があり、この議論を受け、EUは来年末までに京都議定書の第二約束期間(ドーハ合意)を批准すると表明しています。

今回の会議では、農業に関する交渉でひとつ前向きな結果が出ました。農民が適応やレジリエンス(強靭性)を高めるための具体的な行動や支援事業について議論する場が設けられることが決まり、さらにローカルコミュニティと先住民族プラットフォーム、ジェンダーアクションについても市民社会含め一定の成果と見られています。

アメリカの交渉団は、あきらかに交渉を妨害する形で存在感を発揮していました。オーストラリアの支持のもと、とくに資金のスケールアップ、損失と被害についての交渉をブロックし、パリ会議前同様、パリルールブックの交渉のもとで歴史的責任をないがしろにし、事実上途上国への責任転嫁となる発言を繰り返し行っています。多くの先進国はアメリカの陰に隠れつつも先進国として交渉をブロックしていました。また、アメリカは化石燃料と原発を推進するサイドイベントを開催。市民団体やユースが非暴力で阻止する様子(歌を歌ってサイドイベントを妨害)がソーシャルメディアを通じて世界に流れました。

気候資金についても大きな進展は見られませんでした。パリ協定9条5項のもとでの先進国による気候資金に関する事前の情報提供に関しては、途上国が事前に気候変動対策を計画する上で重要な要素となってきます。現在京都議定書下にある適応基金の将来についても、解決を来年度に先送りを狙う先進国の思惑により2018年に交渉が持ち越され、パリ協定のもとに引き継がれることが京都議定書締約国会議(CMP)決定に盛り込まれましたが、パリ協定締約国会議(CMA)のもとでの決定がこれから必要になってきます。先進国、とくにEUは、国際炭素市場メカニズムを推進し、適応基金と引き換えに市場メカニズムの交渉を進展させるよう求めていると言われています(適応基金の原資がクリーン開発メカニズムの一部収益を基にしているため)。

次回、COP24は2018年12月にポーランドで開催され、来秋のIPCCによる1.5℃目標シナリオの特別報告を受けての2020年、2030年の野心引き上げ(つまりタラノア対話と2020年までのアクション検証)、パリルールブックの採択、そして気候資金が注目されます。気候資金に関する閣僚級対話および国連事務局による公式の隔年評価報告も2018年に行われます。損失と被害に関してはCOP25で報告がまとめられ、現状のサポートメカニズムが評価・見直しされる予定です。なお、COP25はブラジルが開催国として名乗りを上げましたが、ラテンアメリカ諸国のコンセンサスが得られるまで決定は持ち越しとなっています。

また、パリ協定のルールブック作りに関する追加会合が2018年10月に行われる可能性が高いものの、開催の最終的な有無は来年5月の補助機関会合で正式に決定されることになっています。

(小野寺・深草)

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気候変動影響を受ける人々の声は国際社会に届いたか(COP閉幕レポート1)

11月6日から18日まで、ドイツ・ボンにて気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)が開催されました。

気候変動の影響を受けやすい島嶼国・フィジーが今回の議長国であったこともあり、FoE Japanは気候変動による損失と被害に対する支援がどれくらい議論されるかなどについて注目してきましたが、残念ながら気候変動による損失と被害についての交渉には、あまり大きな成果が出ませんでした。

FoEグループはこれまでも、先進国や一部の裕福な人々による気候変動への歴史的責任と、一方で多くの被害は貧しい人々や途上国に集中している不公正さを訴え、気候正義を求めてきました。またCOP期間中にもかかわらず、日本の国際協力銀行は住民から強い反対の声も上がっていたインドネシア・チレボン石炭火力発電所への貸付を実行。これについては、アジア諸国の市民社会からも大きな非難の声が上がり、ボンでは緊急アクションが行われました。

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また、FoE JapanはアジアのFoEグループなどと協力して、COP一週目にアジアの気候変動影響に関するレポートの発表や関連するイベントを行いました。

太平洋諸島では海面が上昇し、多くの人々が移住を迫られている。フラッキングを行う企業が干ばつの影響を受ける地域に入り込んでいる。ハリケーンは国全体を機能不全に陥らせ、そして気候変動移民を含む人々の自由な移動を阻止するための壁やフェンスが建てられている—

これらはFoEインターナショナルの「気候変動の影響を受ける人々」のワークショップで聞いた、話の一部です。

世界の人口の60%が集中するアジア太平洋地域は、気候変動の影響を最も影響を受けやすい人々の地域でもあり、ワークショップの初めには、FoEアジア太平洋による新たなレポートの発表も行いました。このレポートは、スリランカ、フィリピン、パプアニューギニアの3つの国のケーススタディを取り上げ、気候変動が引き起こす移住への懸念が高まる中、政府や政府機関がこの問題に早急に対応するよう訴える内容になっています。

ワークショップには、四人のスピーカーが登壇。

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左からステラ-マリア、マリナ、ヘマンサ(ファシリテーター)、カティア、ジョイ

FoEオーストラリア/ブリスベンの気候最前線グループ(Climate Frontlines Collective)のメンバーでパプアニューギニア出身のステラ-マリア・ロビンソンは、「ママの骨」と題した演劇のビデオの一部を上映。海面上昇が原因で母国を離れて新しい国へと移動する人々の現実を扱った演劇です。母国に根付いた文化や伝統、スピリチュアリティは移動のプロセスの中で失われていきます。

ロビンソンは、「オーストラリアは良い隣人ではない。彼らは移民の面倒を見ないし、自国の富の蓄積のためにしか行動しない。この状況を変えるために私たちは共に行動しなければならない。今、行動しなければならない。すぐに手遅れになり、地球という家がなくなるだろう。」と話を締めくくりました。

南アフリカのカルー地域のコイサン族の族長、ジョイ・ダーリングは、コミュニティーの「雨乞い人」。カルーは干ばつの土地という意味だそう。2017年6月、彼は部族を率いて、伝統的な雨の踊りのセレモニーに参加したましたが「雨は降らず、私たちは全ての家畜を失い、植物を植えることもできなくなった。これは、私がコミュニティーを破壊させてしまったことを意味する」と話しました。

コイサン族の干ばつで破壊されたエリアでは、現在、企業がフラッキングを行おうとしています。カルー環境正義運動にも参加しているダーリングは、「私たちは、フラッキングに反対し、私たちの大切な土地を破壊する活動にお金を与えないよう、世界銀行に求めている。お金はコミュニティーを分断し、人々の要求を満たすことはない。」と訴えます。

プエルトリコは、9月の2週間の間にイルマとマリアという2つのハリケーンに襲われ、深刻な状況が続いています。ハリケーン・イルマは電力供給を破壊し、ハリケーン・マリアは水インフラに影響を及ぼしました。「私たちのコミュニティーでは電気も水もなくなり、食料も不足してから60日間が経過した。」カティア・アヴィレス・ヴァスケスは、プエルトリコの小さなコミュニティーとともに25年間活動している彼女が話す姿は、多くの人の感情に訴えました。

ハリケーンによりプエルトリコのインフラ設備の多くが失われ、プエルトリコ政府は深刻な状況にある人々を支援せず、自分たちのために使っていると彼女は指摘します。16人しか死者が出ていないというのは政府のプロパガンダであると指摘し、「私たちの政府は実際には900以上の死体を燃やし、さらに100以上が死体安置所で燃やされるのを待っている。」と話しました。

マリナ・ソフィア・フレヴォトマスは、難民が壁に直面しており、食糧危機、戦争、海面上昇などの自国の過酷な現実から逃げるための自由な移動ができなくなっているという状況を指摘。

「壁を築いているのは、まさしくその移住の原因をつくっている人々である」彼女は、先進国が利益を求めて起こす行動こそが、移住の原因をつくっており、その不正義を訴えました。彼女は、「難民」はいつかは自国に帰るという希望をもって新しい場所に移動している一方で、気候変動移民は、精神面でも自らの場所を追い出され、もう自国には戻れない状況になります。多くの人々が、多くの人が想像できないような状況に置かれています。多くはヨーロッパに向かう途中で命を落とし、中にはヨーロッパとの境界に到達することすらできない人々もいます。この境界の警備には莫大な費用がかけられ、移民たちが到達した時には彼らは歓迎されない状態にあります。

「移民とは恐れるべき存在で、彼らの入国は止めなければいけないという恐れの物語を作り上げた。先進国にはこの不当な行為をやめるという責任がある」「壁は解決策ではない。気候正義は、壁がないという意味である。」

世界中で特に貧しい国や地域の人々が、気候変動の影響を受けています。国連気候変動交渉のもとでは、ワルシャワ国際メカニズムという気候変動の損失と被害を扱う会議の下に、「人々の移動」に関する特別委員会が設けられました。

しかしこのメカニズムには、十分な資源が与えられていません。気候変動による損害を認めてしまうと、気候危機をおこした過失と責任の追及につながる可能性があるために、汚染の原因をつくっている先進国が強い反対をしているからです。

これらの国々は、排出を迅速に削減したり、実際に被害を受けている人々を助けるために必要な資源を供給したりするなどの、歴史的な責任を負うための取り組みを、ほとんどしていないのが現状です。

気候変動の影響を受ける人々の人権、安全と尊厳は、保障され、尊重されなければなりません。
豊かな国々の政府は、一刻も早く排出を削減し、再生可能エネルギー中心で民主的なシステムに移行し、これまで気候変動を起こしてきた任をとらなくてはいけません。

ワークショップのレポートの詳細はこちら(英語)ワークショップのレポートの詳細はこちら(英語)

COP23はじまる~ポイントはパリ協定の具体化 ドイツでは史上最大の気候マーチも

気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)が、今日からドイツ・ボンで始まります。
開催国はドイツですが、会議の議長国はフィジー。初めて島嶼国が議長国ということでも注目されています。

フィジーなどの島嶼国は、海面上昇や巨大台風など様々な異常気象の影響を特に大きく受けるため、気候変動のフロントラインとも言われています。今回のCOPは、気候変動の緩和や適応だけでなく、気候変動による「損失と被害(ロス&ダメージ)」にもしっかりと焦点をあてた「ロスダメCOP」になるかどうかも注目されています。

さらに、注目ポイントは、主に二つ。
まず一つは2015年に採択されたパリ協定の具体的なルール作りです。パリ協定は2015年に採択され、2016年には発効が決まりましたが、パリ協定をどのように2020年から施行していくかについての詳細ルール作りは現在進行しているところです。このパリ協定の「ルールブック」は2018年までに完成させることになっており、今回の交渉でこのルールブック作りがどれだけ進むかが一つのポイントです。

もう一つは、促進的対話と言われるものです。パリ協定では、各国がおこなう気候変動への国別目標を定め、5年ごとに報告と目標の引き上げを行います。これまで各国が出している国別目標を積み上げてもパリ協定が掲げている気温上昇を1.5度に抑える目標には到底到達しません。2018年に予定されている促進的対話を通じ、各国がどれだけ目標を引き上げることができるかがキーとなり、今回のCOPではその促進的対話をどのように行うかが話し合われる予定で、こちらも注目されます。

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FoEグループ、すでに気候変動の影響を受けている人々への支援や人権の尊重、化石燃料や原発、大型ダムなど”汚いエネルギー”から民主的で分散型エネルギーへの一刻も早い転換、大量消費を促し、人権や人々への利益ではなく企業の利益を優先するような社会システムの変革などを求めています。

今回のCOPの場でもサイドイベントやアクション、アドボカシー活動を通して、「気候正義」や「システムチェンジ」を訴えていきます。

会議に先立ち、土曜日には気候マーチが開催されました。
世界中からあつまっている市民社会のメンバー地元の人々が、ボンの街を行進し、気候正義(クライメートジャスティス)や、「脱石炭」を訴えました。FoE Japanも、スリランカ、ウルグアイ、イギリス、コスタリカなど世界中のFoEの仲間とともに行進しました。
マーチには約2万5千人、気候変動に関するマーチとしてはドイツでは過去最大の参加人数でした。

翌日日曜日にはボン近郊にある炭鉱(Hambach 炭鉱)をアクティビストらが占拠。数千人の非暴力不服従アクションによって、炭鉱の操業を部分的に停止させました。