コロナ危機をどう乗り越えるか 〜システムチェンジに向けた連帯を〜

先月末、FoE ドイツの呼びかけで、このコロナ危機について意見交換や情報交換をする機会がありました。

ヨーロッパだけでなく、アフリカやラテンアメリカ、米国、アジアから40人近くのFoEのメンバーが集まって、「このコロナ危機をどう捉えるか」という話から始まり、途上国や先進国で起きていることの共有、そして、私たち市民が持続可能な社会のために目指すべき経済復興対策はどのようなものかという問題提起がありました。

話の中で出たのは、

・コロナ危機は、今まで見えないふりをしてきた気候変動による甚大な被害、生物多様性の損失、所得格差の拡大などの延長線上にあるもの。コロナ危機は、これらの社会問題・環境問題の原因である今の社会の仕組みが、限界であることを教えてくれている。

・コロナ危機の中で、不安定な雇用や家庭内暴力等に苦しむ人々、社会のセーフティーネットから溢れてしまう人々の存在など、社会の脆弱性が顕在化し、人々がこれらに気がつくようになった。その中で、お互いを気遣いあう人々が増えてきていたり、人間活動の低下による自然の回復を目にして自然との関係を見直そうという議論が盛んになってきたりしていることも事実である。

・南アフリカ(途上国で起きていること):多くの人々が電気など、基本的なニーズへのアクセスが困難な状況。すでに気候変動等の影響を被っている人ほどコロナ危機対策の網の目からこぼれ落ちている。今の状況は、もはや気候危機が起きたようなもの。

・米国(先進国で起きていること):政府から化石燃料産業や航空産業など、気候変動を加速させるような産業へ多くの補助金が渡されている。

 

会の後半は、今後、この危機を乗り越え、私たち市民で持続可能な社会をつくるための経済復興対策はどのようなものであるべきかという話になりました。話の中で出てきたのは、まずは経済の目的を考え直すこと、つまり人々や地球の健康の価値を見直すことが必要であるという話になりました。

そして、人々や地球の健康を大切にする経済の条件として、税の公平性の実現、公共サービスの提供、地産地消とフェアトレードの推奨、協同組合などを中心とした経済活動の拡大、利益追求の名の下に自然や人権を搾取するような企業に対する、拘束力のあるルールの確保、といった案が出ました。

 

また、全体を通してのキーワードは、”Just Recovery”という言葉。

”Just Recovery”とは、この危機による経済的打撃から回復する方法として、環境破壊や所得の格差を広げてしまうような過去の社会・経済の仕組みを繰り返すのではなく、社会的公正・環境に配慮しながら、回復しようという考え方です。

具体的には、気候変動の原因となる化石燃料ではなく、再生可能エネルギー普及をはじめとした脱炭素社会構築のための補助金や仕組みづくり、また、脱炭素社会に向けた仕事を増やし、すべての人々が人間らしい仕事と生活ができるような雇用支援をしていくことで、これ以上の自然破壊を止め、人々の公平性を実現していこうという考え方です。

例えば、政府からのお金が化石燃料産業などを維持するために使われてしまったら、短期的に求められる必要な緊急対策や、長期的な視野が求められる脱炭素社会のための技術や雇用の保護に十分なお金が行き届来ません。

 

繰り返しになりますが、私たちは今、気候変動、生物多様性の損失、所得格差の拡大、ジェンダーの不平等など、社会的問題と環境問題が複雑に絡み合った世界にいます。これらの問題を後回しにし、その悪影響が顕在化したのが、今回の危機と言えます。

だからこそ、私たちは個々の問題に個別に対処するのではなく、コロナ危機の影響を最も受けている人々の声を聞きながら今まで複数の危機に立ち向かってきた人同士で連帯し、すべての人が尊厳を持って生きることができる経済・社会を目指す必要があります。

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持続可能な社会とはどのような社会なのか、そして政府の打ち出す政策が持続可能な社会につながるものなのかを私たち市民がしっかり確認し、政府に訴えていくことが求められているように感じます。

(高橋英恵)

 

参考:

Friends of the Earth international, 2020/5/6 “Solidarity with peoples affected by coronavirus crisis – Friends of the Earth International”

https://youtu.be/DDrGl1rxtzg

 

Friends of the Earth international, 2020/4/15 ”COVID-19 crisis is a wake up call for system change”

https://www.foei.org/news/covid-19-coronavirus-crisis-system-change

 

Friends of the Earth Europe 2020/4/20 “Coronavirus: Choices lie ahead for how we build back our broken economies”

http://foeeurope.org/coronavirus-choices-lie-ahead-070420

 

Friends of the Earth APAC, 2020/4/26 “COVID-19: An Opportunity for System Change”

https://foeasiapacific.org/2020/04/26/covid-19-an-opportunity-for-system-change/

 

Friends of the Earth US, 2020/4/15 “New Report: Big Oil’s Money Pit to Reap Stimulus Billions”

https://foe.org/news/new-report-big-oils-money-pit-to-reap-stimulus-billions/

【COP25 Vol.7】 COP25閉幕―主要議題で合意に至らず。評価できる点も

12月13日に交渉最終日を迎える予定だったCOP25。土曜深夜も交渉が続いた後、日曜昼過ぎに閉幕しました。気候変動がもはや目の前の危機として認識される中、先進国は気候危機の現実から目をそらし、国際市場メカニズムなど「誤った気候変動対策」を推進していることをFoEグループは批判してきました。

 会議終盤、主要議題であった国際市場メカニズムや目標引き上げは合意に至らず、これらの論点は来年の中間会合に持ち越されることになりました。しかし、既に発生・拡大している損失や被害に対応するため、途上国提案を基にした支援制度の強化が盛り込まれました。また、温室効果ガス排出の賠償責任を負わないとする文言を求めた米国の主張は途上国によって拒否されました。国際市場メカニズムに合意がなかったことは、むしろ多くの排出を許すルール決定に至らなかったという意味であり、今後も国際市場メカニズムをめぐる戦いは続くことになります。

FoEグループは、温室効果ガス削減に対する拘束力を持たないパリ協定では1.5℃目標達成は難しく、そもそもパリ協定自体がとても弱い枠組みになってしまったことを批判してきました。

私たちに残された「カーボン・バジェット(炭素予算。温度目標達成と整合する、温室効果ガスの累積排出量の上限値)」はほとんどありません。一刻も早く、社会全体の脱炭素化を行わなくてはいけません。しかし、温室効果ガスの排出は増え続けています。1.5℃目標達成のためには、2030年前でに2018年比で55%の排出削減を行わなくてはいけません(UNEP Emissions Gap Report 2019)。

現在の気候危機に対する責任が大きく、資金や技術を持つ先進国にこそ大きな削減義務があるはずですが、目標引き上げや次回の長期資金目標に関する交渉結果は乏しく、途上国にとって残念な結果に終わりました。

 一方で損失と被害の賠償責任を認めないという文言をどうしても含めたかった米国の主張は日本を含む先進国に支持されたものの、途上国の強い反対で最終的に落とされました。今回のCOPで損失と被害に関する支援強化のための専門家グループとサンティアゴネットワークの設立も決定され、それは評価できる点といえます。

来年のCOP26はスコットランド・グラスゴーで開催される予定で、4年連続ヨーロッパでCOPが行われることになります。特にアジアやラテンアメリカの途上国や市民社会の参加への負担は大きくなるので、参加の機会確保が課題です。また来年は京都議定書が終わり、パリ協定が始まる年でもあります。この10年は「(再び)失われた10年」と表現されることもあります。排出は増え続け、被害は拡大しています。パリ協定の実施はそれぞれの国にかかっていますが、各国が公平性をもって削減に取り組むためルールや、1.5℃目標達成のためにどのように各国目標を引き揚げさせるのか、国際市場メカニズムなどの誤った対策を推進させないためにもCOPの場での戦いも重要です。

FoEグループはこれからも現場でたたかう人々とともに、グラスルーツの取り組みを進めるとともに、国際レベル・国内レベルの政策をウォッチしていきます。

*COP25の交渉結果・合意内容に関する詳細な報告は後日掲載予定。

(深草亜悠美・高橋英恵・小野寺ゆうり)

【COP25 vol.1】COP25マドリード開幕 – 気候危機を乗り越えるために今システムチェンジを

12月2日から13日までの2週間にわたり、スペイン・マドリードで国連気候変動枠組条約締結国会議(COP25)が開かれます。今回の会議の注目すべき点、市民社会の視点についてまとめました。

声を上げる若者たち

2018年に続き2019年も、世界各地で猛暑や大雨・洪水が起こっています。フランスやパキスタンでは記録的な熱波、アマゾンやインドネシアでの森林火災、日本でも昨年の西日本豪雨に引き続き、今年10月は連続して上陸した巨大台風によって大きな被害がありました。年々脅威を増す気候変動はもはや「気候危機」と表現されています。にもかかわらず、なぜ大人たちはすぐに行動しないのか。そう訴え、2018年8月にスウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさんが、たった一人でスウェーデン国会前で座り込みを始めました。その行動は世界中の若者を動かし「未来のための金曜日(Fridays For Future)」と呼ばれるムーブメントに発展しています。

日本でも若者たちが声をあげ、これまでに4回「気候マーチ」を開催。9月と11月のグローバルアクションデーには日本全国各地でマーチやスタンディングなどのアクションが行われました。

やはり一番大事な目標の引き上げと行動

これ以上の気候危機を防ぐためには、今すぐ行動することが必要です。私たちに残された時間は残念ながらあまり長くはありません。

パリ協定のもとで、各国はNDC(National Determined Contribution)とよばれる国別の目標を提出することになっています。11月末時点で184 カ国が国連事務局にそれぞれの国の目標を提出しています。しかし各国が提出した計画をそのまま実行すると、今世紀末に3℃以上温度上昇してしまうと計算されています。つまり、各国がNDCを引き上げなければ、1.5℃目標は達成できません。そのため、各国は目標を引き上げて再提出することが求められています。

昨年のCOP24は、IPCCが1.5℃レポートを発表した直後に開かれたこともあり、気候変動への緊急性への認識が高まり、各国が目標を強化することが期待されていました。しかし、COP24での先進国による抜本的な目標の引き上げはみられませんでした。

今年9月にはアントニオ・グレーテス国連事務総長の呼びかけにより国連気候アクションサミットが開催され、気候変動対策への機運が盛り上げられましたが、日本は目標を引き上げていません。COP25では、日本を含む先進国による目標の引き上げと具体的な行動をとることが強く求められます。

石炭火力発電は最も温室効果ガスを排出する発電方法であることから、すでに少なくない数の国々が石炭火力発電事業からの撤退を表明しています。また、パリ協定の1.5℃目標達成のためには、新規の石炭火力発電所の建設は許されず、既存のものも、順次閉鎖していく必要があります。そんな中、日本は国内外で石炭火力発電を推進し、その姿勢が国際的にも批判されています。行動強化の観点からも、日本には国内外で進めている石炭火力発電所の新設中止・撤退がもとめられます。

市場メカニズムの動向

先進国にとって注目されるのが、市場メカニズム(パリ協定6条)のルールづくりです。気候変動における国際市場メカニズムとは、削減努力をして得られた削減分を排出権やクレジットとして金銭的な価値を付加し、市場で売買するメカニズムです。6条のルールづくりは、昨年のルールブックの議論で積み残された議題の一つでした。

いくつかある論点としては、例えば、排出量を「排出権を売却した国(削減努力を行なった国)」と「排出量を買い取った国(買い取って排出分を相殺した国)」の両方で削減としてカウントしてしまうと、重複して削減量をカウントしてしまうことになります。これを避けるため、調整を行う方法やどの範囲で調整を行うのかなどが議論になっています。

また、これまでに発生しているクレジットを2020年以降にも使えるようにしたいという国も存在します。これまでに発生しているクレジットは数十億トン分に相当し、これを許せばさらなる大型排出が可能になってしまいます。

市場メカニズムは結局、排出削減努力を行った分どこか別のところでの排出を許してしまうため、絶対的な削減が達成されるわけではありません。

また、森林保全を行い、二酸化炭素吸収源を確保した分に見合う金銭的付加価値をつけるというREDD+というスキームも行われていますが、そのために先住民族が住む土地の囲い込みが発生するなどの問題も発生しています

上記等の理由から、FoEグループはこれまでも国際市場メカニズムに反対しています

日々大きくなる損失と被害

別の注目議題が、「損失と被害」です。特に途上国で深刻になっている気候変動により生じた損失と被害について、COP19でワルシャワ国際メカニズム(Warsaw International Mechanism, WIM)とよばれるメカニズムが設立されました。

国連気候変動枠組条約のもとには、緩和(温室効果ガスの排出量を削減すること)や適応(すでに起きつつある気候変動に対応していくこと)のための資金メカニズムはありますが、損失と被害へのサポートや支援メカニズムがありません。ワルシャワ国際メカニズムはこれまで、損失と被害に関する知見の蓄積やその共有、気候変動に起因する人口移動(Displacement)に関する助言などを行うなど、小規模な活動にとどまっていましたが、具体的な損失と被害に対するアクションや資金支援についても議論が求められます。

突然変更された開催地

もともとCOP25は南米チリで開催される予定でした。しかし、首都サンティアゴでチリ現政権に対する抗議行動が続いていることを理由に、チリでの開催は急遽中止されました。しかし、即座にスペインが代替地として名乗りでたことから、議長国はチリのまま、開催地をマドリードに移し開催されることになりました。

サンティアゴではすでに市民社会サミットも計画されていました。開催1ヶ月前の突然の開催地変更は、参加を予定していた市民参加者、経済的に制約の大きい途上国の参加者に追加的なコストと手間を強いることになりました。

また、一昨年のCOP23はフィジーを議長国としてドイツのボンで開催され、昨年のCOP24はポーランドで開催されました。来年はグラスゴーで開催することが決まっており、4年連続でヨーロッパでCOPが開催されることになります。COPの開催地は毎年大陸持ち回りで、多様な地域の市民社会の参加を確保してきましたが、物価の高いヨーロッパでの開催は、途上国の参加者にさらなる経済的負担を強いることになります。

私たちのメッセージ:FoEグループとして

FoEグループが考える気候危機への解決策は、多国籍企業等の利益や経済成長を優先する社会から、自然やそれとともに生きる人々を中心にすえた持続可能で民主的な社会への抜本的な変革(System Change)です。

化石燃料事業、環境破壊を引き起こす原発や大規模バイオマス発電等の誤った気候変動対策、カーボンオフセットなど市場原理を利用した「解決策」、損失と被害への資金支援としての保険の導入は、気候変動対策にならないだけではなく、大企業や多国籍企業の力を強め、さらなる経済的な格差の拡大につながります。

これ以上の気候危機を防ぐためには、エネルギーの自治権を人々に取り戻し、経済活動においても遠くの資源を使うのではなく身近な資源を活用すること、森林を奪うのではなく先住民族の知恵による森林管理(コミュニティフォレストマネジメント)や森林農業(アグロエコロジー)を見直すこと、そして、気候変動への責任の公平性に基づいた目標の設定と利益に左右されない公的資金による途上国への支援することが必要です。

社会の公平性を取り戻すことが気候危機対策につながり、また、適切な気候危機対策は公平な社会の実現につながります。社会の公平性と気候危機対策はお互いに切り離せない関係です。この”Climate Justice for ALL”というFoE グループのメッセージを、このCOP25期間を通じ、会場内外で強く訴えていきます。

(小野寺ゆうり・深草亜悠美・高橋英恵)

パリ協定実施指針採択に向けて—クライメートジャスティス(Climate Justice)への道のり

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今日9月4日から9日までタイ・バンコクにて、12月に開かれる気候変動枠組条約締約国会合(COP24/ポーランド開催)で採択される予定のパリ協定の実施指針(ルールブックまたはPAWP)を交渉するための追加会合が開催されています。COP24前最後となる公式の政府間交渉で、交渉のたたき台となる決定文書案を準備することが望まれています。パリ協定は世界の気候変動対策の枠組みであり、その効果的な実施が世界の将来を左右するため、COP24での実施指針採択はパリ協定が採択されたCOP21パリ会議以来、最も重要な会議と見られています。

これまでにすでに世界平均で1℃前後の気温上昇が記録され、日本だけではなく、世界各地で記録的な猛暑を記録し、集中豪雨などが発生しています。記録的な飢饉、水不足、農業生産の減少・食糧危機、洪水や海面上昇による避難民(気候難民)がアフリカ、南アジアや中南米の各地で増加しています。それにより多数の犠牲者が出ています。
特に、近年被害が急速に拡大している途上国の市民はCOP24を強い関心を持って見守っています。インフラが脆弱で、十分な資金のない途上国にとって、追加的な資金支援や技術支援、公平性を反映した実施指針の策定が重要です。COP24の開催国であるポーランドが、COP24に参加予定の市民団体を弾圧する立法を行ったこともあり、このバンコクでの会合の機会を最大限に活かそうと、アジアの市民社会を中心に、会議場周辺で連日さまざまな抗議行動や集会が開催される予定です。

これまでに各国が提出した2025/2030年までの協定の下での気候変動に関する行動計画(NDC)を積み上げた結果では、3℃以上の気温上昇が予想されます。21世紀末までの気温上昇を1.5℃までに留めるよう努力するというパリ協定の目標とは程遠いのが現実です。 10月には1.5℃の気温目標に関し世界の科学者の知見を集めた特別報告(IPCC特別報告書)が出されますが、その中でももう時間の猶予がほとんどなく、被害規模の予測とともに、今すぐの脱化石燃料の必要性が明らかにされるとみられます。最近発表された研究では、平均気温が1.5〜2℃以上上昇すると、森林火災、アマゾン森林の枯渇、局地に存在する大量のメタンガスの放出などが引き金となって、もはや人間では止めようのない温暖化が発生する可能性があると報告されています。

バンコクに集う市民やFoEのメンバーは、政府による行動の不十分さ、とくに歴史的な温室効果ガス排出の半分を占め、化石燃料で発展を遂げた先進国の責任を追及しています。パリ協定の実施指針だけでなく協定の内容を超えた速やかな脱石炭、脱化石燃料と自然エネルギーへの移行、大規模被害への支援や気候避難民の保護、更にこれらを達成するために必要となる社会経済システムの変革を問い、先進国がその責任を果たすことを求めています。

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(C) Chidambaram SP

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(C) APMDD

実際の交渉では、先進国(特に米国をリーダーとする日本を含む環太平洋の先進国)は協定下で途上国や新興国との差異化を認めず、様々な局面において同等の扱いを要求しています。また、化石燃料や産業型農業などの多国籍資本が主要な交渉内容に大きな影響力を持ち、協定の実施指針を弱めようとする状況が続いています。

世界の市民はパリ以来、今また改めてCOP24に向けて大きな声を上げようとしており、その国際的な組織化がこのバンコクで弾みをつけることになります。

(小野寺ゆうり)

COP23はじまる~ポイントはパリ協定の具体化 ドイツでは史上最大の気候マーチも

気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)が、今日からドイツ・ボンで始まります。
開催国はドイツですが、会議の議長国はフィジー。初めて島嶼国が議長国ということでも注目されています。

フィジーなどの島嶼国は、海面上昇や巨大台風など様々な異常気象の影響を特に大きく受けるため、気候変動のフロントラインとも言われています。今回のCOPは、気候変動の緩和や適応だけでなく、気候変動による「損失と被害(ロス&ダメージ)」にもしっかりと焦点をあてた「ロスダメCOP」になるかどうかも注目されています。

さらに、注目ポイントは、主に二つ。
まず一つは2015年に採択されたパリ協定の具体的なルール作りです。パリ協定は2015年に採択され、2016年には発効が決まりましたが、パリ協定をどのように2020年から施行していくかについての詳細ルール作りは現在進行しているところです。このパリ協定の「ルールブック」は2018年までに完成させることになっており、今回の交渉でこのルールブック作りがどれだけ進むかが一つのポイントです。

もう一つは、促進的対話と言われるものです。パリ協定では、各国がおこなう気候変動への国別目標を定め、5年ごとに報告と目標の引き上げを行います。これまで各国が出している国別目標を積み上げてもパリ協定が掲げている気温上昇を1.5度に抑える目標には到底到達しません。2018年に予定されている促進的対話を通じ、各国がどれだけ目標を引き上げることができるかがキーとなり、今回のCOPではその促進的対話をどのように行うかが話し合われる予定で、こちらも注目されます。

COP23直前セミナーの資料はこちら

FoEグループ、すでに気候変動の影響を受けている人々への支援や人権の尊重、化石燃料や原発、大型ダムなど”汚いエネルギー”から民主的で分散型エネルギーへの一刻も早い転換、大量消費を促し、人権や人々への利益ではなく企業の利益を優先するような社会システムの変革などを求めています。

今回のCOPの場でもサイドイベントやアクション、アドボカシー活動を通して、「気候正義」や「システムチェンジ」を訴えていきます。

会議に先立ち、土曜日には気候マーチが開催されました。
世界中からあつまっている市民社会のメンバー地元の人々が、ボンの街を行進し、気候正義(クライメートジャスティス)や、「脱石炭」を訴えました。FoE Japanも、スリランカ、ウルグアイ、イギリス、コスタリカなど世界中のFoEの仲間とともに行進しました。
マーチには約2万5千人、気候変動に関するマーチとしてはドイツでは過去最大の参加人数でした。

翌日日曜日にはボン近郊にある炭鉱(Hambach 炭鉱)をアクティビストらが占拠。数千人の非暴力不服従アクションによって、炭鉱の操業を部分的に停止させました。

 

COP22閉幕 交渉は進むも、「アクション」にはほど遠く

COP22会議閉幕
アクションのCOPになるといわれたマラケシュ会議
交渉は進むも、「アクション」にはほど遠く

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11月7日から18日までマラケシュで行われていた国連気候変動会議が閉幕しました。昨年パリ協定が採択され、今年のCOPはそれを実施につなげるCOPとして「アクション」のCOPと言われていました。また、気温上昇を1.5℃におさえるためには今すぐの行動が不可欠である事から市民社会から「アクション」の必要性が主張されてきました。

削減目標が適応されるのは2020年から。しかし約束されている削減目標を積み上げても、3℃上昇は免れません。FoEグループは、気候変動の被害を食い止め気温上昇を1.5℃におさえるには、今すぐ、とくに2020年までの行動が大事で、このままではパリ協定は不十分と訴えてきました。

今回、残念ながらアクションのCOPからはほど遠い結果となりました。

気候変動の責任がより大きい先進国は、野心を先駆けて引き上げていくべきでした。議論は適応に偏り、すでに影響を受けている脆弱な国への支援や損失と被害に関する議論は十分に行われませんでした。2020年前の行動の強化という議論が十分に成されなかったことは、1.5℃目標から遠ざかる事を意味し、そして既に気候変動の影響を受ける人々や、気候変動の影響に対し、脆弱な人々が、さらに貧困や危機に陥るという事を意味します。

一方で、パリ協定が正式に発効し、交渉ではパリ協定を実施するために必要なルール作りのワークプラン(今後のスケジュール)が合意された事は確かに前進です。また、適応資金の交渉や気候変動の損失と被害に関するワルシャワ国際メカニズムの交渉でも進展が見られました。

会議の最終日、気候変動脆弱国フォーラムの加盟国が、なるべく早い段階で再生可能エネルギー100%を達成する目標を含むマラケシュ・ヴィジョンを発表しました。

またアフリカ大陸全体で固定価格取引制度やコミュニティーベースの再エネを組み合わせて2020年までに10GW、2030年までに必要となる需要の半分の300GWを賄う野心的な計画が本格化しました。

FoEはこれからも先進国の温暖化への歴史的責任と公平な負担(フェアシェア)の観点から今すぐの行動を求めていきます。

★詳しい交渉の内容は、セミナーで報告します!(詳細は後日FoEのウェブサイトに掲載予定)
2016年12月14日14:30~16:00
Tフロントビル会議室(溜池山王駅すぐ)
http://www.kaigishitu.com/detail/00200895001/001/
内容(予定)
マラケシュ会議の成果(報告者:小野寺ゆうり)
– 気候資金の行方
– 損失と被害 など

★これまでのCOP報告はこちら
https://foejapan.wordpress.com/tag/cop22/