【日々のくらしの裏側で – vol.8】本当に向き合うべき相手とは。JFEと中国電力だけではないもう一つの壁。

国会議員に話しても、石炭は悪い。けど、JFEは支援者だから言えないってはっきりおっしゃるんです。だから私が代わりに言わないと。知らない人のためにも、知っていて言えない人のためにも、やっぱり誰かが言わないといけないと思うんですよ。つくってしまったらね、やっぱり30年とか40年とか壊せないわけでしょ?だから作らせまいと。そのために踏ん張らないといけないと思います。”

こう話すのは、石炭火力を考える東京湾の会(以下、東京湾の会)の共同代表を務める、蘇我石炭火力を考える会(以下、蘇我の会)の小西由希子さん(以下、小西さん)。蘇我石炭火力の建設計画は、小西さんの仲間の市議会議員から聞いたそうです。この計画について調べていく中で問題だと思ったことが、蘇我の会の最初のきっかけだった言います。

知らない人のためにも、知っていて言えない人のためにも、誰かが言わないといけない。そのように考えるまでに至った、その背景を伺いました。

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(小西由希子さん。JFEアクションにて気候変動への危機を訴える)

 

小西さんにとって、何が一番問題なのでしょうか?

“やはり、この問題を知らない人が多いことかなと思います。特に、千葉でできた電気を消費しているところにいらっしゃる方が、こういう問題があるということを知らないことが大きいと思います。もちろん、消費している人が出したCO2としてカウントされていくんだけれど、実際は発電所から出た排気ガスはここに残していかれているわけで。そういうことを知っていただくのと、それからやっぱり、電気は十分に足りていて、この石炭火力を日本政府が進めようとしているその裏には、原発と抱合せでエネルギー基本計画等が、なんの見直しもなくやられていること、それから、やっぱりこれから電気を必要としている他の国々のために、石炭火力のプラントを売り込んでいこうというような政治姿勢は、本当に私たちが望んでいることか考えてほしいと思います。”

 

この活動をされていて、困っていることをお聞きしました。

困っていることはいっぱいあります(笑)。そうですね、まず一つは、計画を知らない方がすごく多いということです。それはあまり広報されていないということもあるし、広報されていないからと思いますが、マスコミもあまり取り上げていないんですよ。私たちが何か署名を届けた時とかは取り上げてくださるけど、あんまり関心を持ってくださらない。

それと、市民でも、お話させていただくと、電気が足りないんだったら原発よりいいんじゃない?と思ってらっしゃる方も結構いるんです。そもそも発電しなくていいのよっていっても、そこはなかなかわかってもらえない。というのも、福島が発電所を背負ってくれて、迷惑かけていて、私たちがいっぱい電力使っているのに、そんなわがまま言っちゃいけない、というふうに思っている人が多いんですよ。あと他に、ここに石炭火力がくると、きっと雇用が生まれるんじゃないかとか、固定資産税が増えるんじゃないかとか、なんとなく期待感を持っている方もいます。けれど、行政と事業者に、ここでの経済的メリットは何なのという質問をしたんですけれど、結局行政も事業者も、どんな経済効果があるって言えなかったんですよ。だから、それほど効果がないということなのではないかなと。でも、なんとなく儲かるのではと、そういう“なんとなく感”に縛られている。これを逃したら雇用が減るのではないかとか、なんか、そういうことに縛られてしまっているというか、そういうことがあるのかなと感じます。”

 

電力を多く使っているから文句は言えない。そんな住民の声を聞いて、小西さんは千葉市そして千葉県の電力消費量を調べてみたそうです。その結果について教えてくださいました。

“千葉県とか千葉市の発電所の電気ってどこでどれだけ使われているのだろうって調べたんです。でもそういうデータってどこにもなくて。そこで自分で、いろんなその消費電力とか発電所の規模とかから計算して出してみたんです。そうしたら、千葉市の場合は、千葉市でつくっている電力の25.9%くらいしか市内で消費していないんです。しかも千葉市は製鉄所を持っているから、産業部門の消費電力がすごく大きくて、千葉市民が使っているのは、結局千葉市でつくっている電力の5.8%しかないんです。で、残りの72.1%は市外に出している。市外といっても首都圏ですよね。じゃあ千葉県はと調べてみたら、27%が県内消費、残りの73%は外に向けての電気だっていうことがわかったんです。この結果を見たとき、これは、福島が他県のために電気を作っているのと全く同じ構図だということがわかったんです。だから千葉県、千葉市がこれ以上発電所を作らなければならない理由はないんじゃないかと思ったわけ。千葉市のこの家庭部門での消費は5.8%しかないのに、市民は自分たちで、エコドライブに気をつけましょうとか、電気はマメに消しましょうとか、トイレの電源は出かけるときは抜きましょうとか、市民はこんなにコツコツ節電しているのに、なんでそんな温室効果ガスを出すような発電所を認めるの?って、全く私には納得いかない話でしたね。”

 

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(東京湾石炭火力サミットにて。住民の声を届ける。)

 

事業者との会合も何度か設けたという小西さん。そのとき印象に残った事業者のコメントがあるそうです。

“中国電力の方に最初に話を聞いたときにおっしゃったのは、「石炭火力発電は製鉄所で使うよりずーっと、質の悪い石炭でできる」って、はっきりおっしゃったのよ。要するに、硫黄とか不純物を含んでいる質の悪い石炭が燃やされるということなんです。こういう質の悪い石炭が燃やされると、発電所周辺の被害もあるし、その石炭の採掘現場でも、相当の環境問題を引き起こすわけですよね。それに、日本がプラントを輸出することで、どれだけ環境汚染を輸出してしまうのかということも、やっぱり私たちは考えていかないといけないと思う。だからもうやっぱり、石炭火力で金儲けをする時代ではないっていうことを、やっぱり言っていきたいなあと思うし、やっぱりその、消費する側の方にも、こういう問題があるということを、ぜひ知っていただきたい。“

 

質の悪い石炭でもいいという、中国電力社員の衝撃的な言葉。その言葉が意味することを彼は理解しているのかと、怒りすら覚えます。この中国電力のコメントについて、もう少し小西さんに伺ってみました。

結局、住民がどれだけの空気のよさを求めるかによって、プラントの質が決まり、原料が決まるっていうわけなんですよ。私たち住民があまり文句言わなければ、安いプラントでいいし、原料も安くていい、と。しかも、石炭採掘とかやってらっしゃるJERA(株式会社JERA。東京電力グループと中部電力とが共同で設立した火力発電会社)なんかはね、いろんな質の石炭を持っているわけですよ。だから、出口が決まっていると、石炭のブレンドが決まってくると。この質の悪いのを3割、中くらいのを3割、いいのを4割入れよう、というように。住民がどれだけ無害さを求められるかによって、いくらでもブレンドできると、つまりは、住民が何も言わなければ、いくらでも安いものを入れられると、そういう話をするわけですよね。でも、そんなことをされたら、たまらないでしょ。しかも、石炭ってね、敷地内に野積みにされるんです。船から石炭を搬入するときは密閉したベルトコンベアーでやりますっていうんだけれど、搬入後の石炭の保管の仕方が野積みだったら、なんの問題解決にもなっていない。”

 

日本は政府のやっていること、企業活動に反対の声をあげるのが非常に難しい世の中。筆者自身も、国や企業の活動で何かおかしいなと感じても、考えを発信することに躊躇してしまう人が多いように感じます。それでも、声を上げ続ける小西さん。その原動力は何なのでしょうか。

実は、私たちの向き合うべき相手は、石炭火力のJFEと中国電力だけではないんですよ。実は住民、議員でもあるんです。この問題って、ちょっと考えたらおかしいでしょ?だけど、議会でも、ほとんど取り上げられないんです。それは何故かというと、一つはJFEがこの千葉市にとって非常に大きな企業で、納税も高いってことで、保守系の方々が何もおっしゃらないというのがあります。民主党系の議員の方は言ってくださるかなと思って、国会議員に話しても、JFEは支援団体だそうで「石炭は悪いよ、けど、支援者だから言えない」ってはっきりおっしゃるんです。だから、私が代わりに言わないと。知らない人のためにも、知っていて言えない人のためにも、やっぱり誰かが言わないといけないと思うんですよ。つくってしまったらね、やっぱり30年とか40年とか壊せないわけでしょ?だから作らせまいと。そのために踏ん張らないといけないと思います。渡辺敬志さんもおっしゃっていたけれど、ここはJFEの企業城下町でもあるので、なかなか住民も声を上げない。あと、自治会長さんがJFEのOBだったりしてちょっと言えないとか、それから、お祭りとか運動会とかにいっぱい寄付をいただいていたりとか。そうすると、なかなか反対の声を上げられない。個人同士で話すと、やっぱりおかしいよねとか、車が汚れて困っているとか、石炭火力発電所なんてありえないというようになるんだけれど、じゃあ組織として何か言ってくれるかというとなかなか。政治家も、今は本当に残念ながらあてにならない。力になってもらえていないです。”

 

住民の結束の難しさにも関わらず、諦めずに続ける強さはどこから来るのでしょうか。

 “それでも私がやろうとするのは、相手がJFEとかではなくて、よそ者だったときは、私たちが望まない事業を止めることができた経験があるからなんです。3.11の後、指定廃棄物の埋立所が蘇我の東京電力の敷地内に計画されたんです。まあ、計画というか、国が決めたものでした。環境省が決めたルールで、放射能の濃度が高いものを全体から集めて一箇所に埋めるということになったんです。そこで、おそらく、東電が敷地を持っているからここを提供しますって売ったのだと思うんですけれど、当時、その千葉県議会の知事も、千葉市の市長も、これにはノーコメントだったんですよ。議会も、全然コメントがなかったんです。でも、千葉市が持っている指定廃棄物は本当に少しだったんですよ。なので、私たちは、もう一度考え直して欲しいということを、国に対して随分言ったんですね。当時は議会も市長も知らん顔だったけれど、私たちが一生懸命、地域の人にアピールしたんです。それこそ自治会長さんとか。そうすると、今回の石炭火力とは違って、相手が環境省っていう、要するに、よそ者だったから、住民も「それはおかしい、反対だ」ってなってきたんです。さすがに住民とか自治会が文句を言いはじめると、議員も動き出してきて。自分の有権者が色々言い出してくると、さすがにそれはちょっと耳が痛いと。それで、議会も、市長も、指定廃棄物は千葉市は受け入れません、と宣言したんです。

そんなふうにね、法律でどうしようもないことでも、住民が声をあげることが風を起こすというか、やっぱり為政者はどっちに風が吹いているかなといつも見極めていて、こっちかなこっちかなと、こっちに風がきたとなったら、うん、前からそう思っていたんだよと、いうわけですよね。やっぱり住民の声っていうのは力を持っているわけだから、この石炭火力もね、やっぱり住民がおかしいと声を大きく上げていくことで、この地域から票をもらっている議員たちに動いてもらうと。そういうふうに、下からの活動でも続けてやっていくことで、少しでも止める力になれないかなあと私は思っています。”

 

利益を得るために、住民が黙っていれば質の悪い石炭でも良いだろうという事業者。そして、企業と行政の癒着により十分に市民の声が届かない議会。

そんな状況でも、この問題を多くの人に伝えて声をあげる仲間を増やし、企業や行政を変える風を起こすことは可能だと、小西さんの言葉から強く感じました(注1)。

 

日々のくらしに追われて、私たちは自分たちの生活を構成しているものがいったいどこからきているのか、また、どのような影響を及ぼすのか、考えることは滅多にないように思います。けれど、日々使っている電気が、誰かの幸せを奪っているかもしれない社会を、私たちは望んでいるのでしょうか?また、“経済”のために、人々の生活や自然が犠牲なってもいいのでしょうか?

エネルギーは、決して利潤創出の手段になってはいけないものです。私たちが目指すべきエネルギーのかたちとは、発電所周辺地域の住民のために生産され、発電所周辺地域の住民の権利が保障されるものであるべきです(注2)。

 

ぜひ、考えてみてください。

日々のくらしの裏側で、誰かの苦しみを伴うようなことはあっていいのか。

また、みんなが安心して日々のくらしを営むための電気のあり方とはどのようなものなのか。

そして少し勇気を出して、あなたの考えを周りの人と話してみてください。

たとえ一人一人の声は小さくても、多く集まれば社会を変える風になります。

 

(高橋英恵)

(注1)2018年12月27日(木)、中国電力JFEスチール、および左記2社によって設立された特別目的会社である千葉パワーは、蘇我における石炭火力発電所開発に関する検討の中止を共同で発表。

(注2)FoE Japanが目指すエネルギーについては、こちらをご参照ください。

 

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【日々のくらしの裏側で – vol.7】一人のサッカーファンの願い

11月から蘇我石炭火力を考えるの会(以下、蘇我の会)の新メンバーとなった品田知美さん(以下、品田さん)。

品田さんのご家族は、大のサッカーファミリーだそうで、蘇我の石炭火力発電所建設予定地真横に立地するサッカースタジアムもよく訪れるそうです。そんな中、同サッカースタジアムのすぐ隣に石炭火力発電所ができると知り、いてもたってもいられなくなったとのこと。

サッカースタジアムの真横に石炭火力発電所が建てられようとする状況について、千葉に住む一人のサッカーファンとしてどのように感じるのか、お話しを伺いました。

 

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(品田さん。JFEアクションにて)

“この蘇我の石炭火力発電所の建設計画は、時々寄付をしている環境団体さんの投稿で知りました。

私の住んでいるところは海沿いの空気のきれいなところなのですが、蘇我はいつも通るたびに空気汚れているなと思ったり、サッカー観戦に来た時には、サッカー選手はこんなところで練習したり試合したりしていて大丈夫かなあと心配していたんですね。そんなときに、今回の新しく石炭火力発電所ができるということを知って。これは絶対に反対しないと、と思ったんです。

色々調べていく中で、PM2.5の飛散するシミュレーションを見つけて、それをみたんです。そしたら、私の住んでいるところまでPM2.5がちゃんと飛んできてしまうんですね。自然が好きで、空気のきれいなところに住んでいるのに、ここまで空気が汚れてしまうのかって、思いました。そういう風に思う方は、蘇我の方だけでなくて、私みたいにたまたま知った人でもたくさんいると思うんですよ。もう少し遠くの人も巻き込んで、ぜひ積極的にやりたい。だって、遠くに住んでいても被害を受けるということは、この石炭火力発電所の関係者なんです。だから、私もその一人だと思って、もうこれは反対しようと思ってきました。”

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(蘇我、袖ヶ浦、横須賀で建設が予定されている石炭火力発電所が稼働した場合のPM2.5の飛散シミュレーション)

 

サッカーが大好きという品田さん。この計画を知った時の気持ちを教えてくださいました。

“私の家族はサッカーファミリーで、本当にサッカーが好きなんです。

先日ちょうど建設計画のお話をきく機会があって、具体的な予定地を聞いたら本当に真横で。かえってショックで、眠れなくなるくらいショックで。地図を見たらそこなの?みたいな。本当に横だったのでがっくりきちゃって。

蘇我の発電所の建設予定地のすぐ横に、すごく大きなスタジアムがあるんですけど、その横にもいっぱい小さなスタジアムがあって、そこではいつもお子さんたちが、千葉中のお子さんたちが集まって、サッカーやっているところなんですね。そこにね、また空気を汚してしまうようなものをつくるというのは、本当に健康の被害を増やすだけだと思うんです。サッカーが好きな人は、このあたりには本当に多いと思うんです。だからこそ、この計画を知っている人を増やしていかないとまずいなって思っています。”

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(建設予定地周辺図)

 

この計画を知っている人を増やしていきたいと、繰り返し語る品田さん。品田さんの考える今後の告知戦略をお聞きしたら、サッカー家族ならではのアイデアが。

“今、サッカーやっているお子さんは本当に多いので、小学生のサッカークラブに一斉メールとか、一斉チラシとか送ることが効果的なんじゃないかと思っています。若いお母さんたちだって子どもの健康にはすごく気を使うと思うんですね。

私は仕事上、環境問題が研究対象なので、石炭火力発電は温室効果ガスを排出して気候変動の問題を悪化させることや、石炭火力発電をつくっているのは先進国で日本くらいしかないのも知っているけれど、これは、健康も本当に大事な問題なんです。私自身、少し喘息気味というのもあるので、自分の健康も不安だけれど、実際、娘や息子の友達がこのスタジアムでプレーしているんです。選手だけじゃないんです。だから私が反対しないと。選手たちってなかなかそういう活動ってしにくいと思うんですよね。だからやっぱり、できる立場にいる自由な人間がやった方がいいのかなって。私はそういうことを言っても別に仕事上困ったりはしないので、私が代わりに言わないと、彼らの健康を守れないから。”

 

筆者が蘇我の石炭火力発電所の建設予定地の視察・インタビューに訪問したのは、ちょうど小学校の下校の時間でした。道々では多くの小学生が友人らと共に自宅へと向かい、また、これからサッカーの練習に向かうであろうお子さんの姿も多く見かけました。

自分の子ども、友人がサッカーをする場所の空気が汚れてしまったら?また、自分の応援するサッカー選手が空気の汚れのせいで病気になってしまったら?

サッカーに限りません。野球であっても、テニスであっても、サイクリングであっても、自分の好きなスポーツをする場所の環境・空気が汚れてしまったら?

一度、自分の身近なものに置き換えて、考えてみませんか?

(高橋英恵)

 

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【日々のくらしの裏側で – vol.6】残すべき未来のために、一筆一筆の力を信じて。

千葉エコメッセ、早朝のJFE本社前アクション等、東京湾の会の活動にはほぼ休むことなく参加している山崎邦子さん(以下、山崎さん)。子どもの権利に興味があり、普段は子どもの権利に関わるお仕事に携われているそうです。蘇我の石炭火力発電所の建設計画を知ったのは、日頃から一緒に活動している仲間から教えてもらったとのこと。この計画を向き合うに至った背景をお聞きしました。

 

20181226_4.JPG(山崎さん)

 

“今回の石炭火力発電所が計画されていることは、日頃からいろいろと中央区で一緒に活動をしている仲間と話している中で知りました。実はその前に、3.11以後の特定廃棄物の処分場が蘇我の東京電力の敷地にできるという問題が持ち上がりまして。そのことが環境問題に関心を持つきっかけになりました。きっかけは産業廃棄物の問題だったんですけれど、環境問題について勉強していくうちに、世界ではみんな石炭は扱わないという流れになっていく中で日本が石炭を推し進めているということも、その時に知ったんです。しかも、その理由が、儲かるからこの事業を展開していくというもので。3.11以降、多くの人が自然とか環境を考えたり一生懸命電気を節約したりしているおかげで、原発を止めているけれど電気が足りないということは起こっていない状況なのに、このような企業の考え方がとても信じられない気持ちでいっぱいでした。企業はこういう皆の、主婦といいますか、一般市民の努力を知らないのかなと。”

 

企業の論理と生活者の論理。この事業を推し進める企業の言い分の一つとしては、石炭火力発電所を作ることで地域に雇用が生まれ、地域経済が潤うという主張です。このような意見に対して、山崎さんはどのように感じるのか、伺ってみたところ、次のような返答が。

“企業としては地域で雇用が生まれて、そこでの業績を税金として市とかに納めるという言い分をされると思うんですけど、今回のことに関してはそのあたりのことを聞いてみても、はっきりとした答えが出てこない。雇用も実はそんなに増えないんじゃないかなと私は感じています。例えば、フクダ電子アリーナができたときも、その周辺はお店が増えて経済が潤うという話もあったみたいですけれど、そうはなっていないように感じます。アリーナの説明会の時も、地元でどのくらい雇用があって、どのくらい地元に貢献できるのかというのを聞いた方がいらっしゃったのですが、それに対するはっきりとした答えが何もなかったんです。確かに建設のときは沢山の人が雇用されたと思いますけれど、完成したらあとは自動化といいますか、そこで働く人というのはそんなにはいなかったみたいで。この石炭火力の計画も、フクダ電子アリーナのときのように、建設の時はたくさんの方が関わるかもしれないけれど、完成したらまちが潤うというようなことはないと思います。”

 

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(中国電力の前にて。)

 

そもそも、山崎さんはどうしてこの計画を止めないといけないと考えているのでしょうか?

やっぱりきれいな環境を子どもやこれからの将来残していきたいというのはとても強く思っています。それにいろんな借金、まあ行政の借金ですけれども、これを本当に残したくない。国の借金、県の借金、市の借金は今でさえたくさんあって、まずはこの借金を減らさなきゃと思うけれど、逆に行政は市債とかを出して債権をどんどん増やしているんです。でもこれって、将来への負担をどんどん増やしているということで、こればかりもう、行政の方々と主婦の家計簿感覚は違うんですよね。そういうのが行政的な考え方というのか、きっと会社的なものなのかわからないですけど、ちょっと主婦的な、家計簿的な考えていうと、借金をどんどん子どもに残すというのは、受け入れかねる部分があるんです。環境に関しても、同じだと思います。なにか綺麗にできる、ちゃんと手立てがあった上での何かであったらいいんですけど、原発もそうですよね、結局最後に、廃棄物をちゃんとキレイにするとか、どういう風に保管するとか何も対策できていないままに進めている。今回の石炭火力にしても、これをすると絶対に身体によくないものが出るというのがわかっているのに進めようとするということに関しては、やっぱりもう絶対止めて、じゃないと、将来がどうなるだろうというのがあります。

 

将来の世代に残したいものは失われていく方向にある一方、将来世代に残したくないものばかりが増えていく。この状況を、まずは多くの人に知ってほしいと切々とお話しする山崎さん。この問題を知った私達が力になるには、どうすればよいのでしょうか?

この問題の難しいところでもあるんですけれど、CO2も窒素酸化物とか、目に見えなくてついつい見過ごしがちになってしまうものが温暖化という世界規模の問題につながっているということを、まずは皆さんに知ってもらいたいです。そして、電気はまず足りているということもありますけれども、石炭火力発電所は要らないよということをしっかりとわかってほしいし、一人でも多くの人がその運動に関わってもらえたらなと思います。

この計画の中止というか、見直しをしてもらうためには、市議会とかで意見がどんどん出てくるようになることが望ましいと思います。今の状態では、私たちがそこに直接言うのはなかなか難しいと思いますけれど、やっぱり市民が、たくさんの市民が、例えば署名をするとか、チラシを一緒に配布してくれるとか、市長への手紙とか、意見をどんどん言ってくれるということがあると、何か本当にその一つ一つ、一筆一筆がとても力になる、動かせるって思っています。”

 

20181226_3.JPG(JFE本社前アクションにて)

 

山崎さんとお話しすると、いつも温かさを感じます。そして今回お話を伺う中で、山崎さんの言葉の中に、市民の力を信じる強さを感じました。

 

私たちがほしい未来はどのような未来なのか。また一方で、私たちの望まない未来とは。

私たちが望む未来とは、企業の利益のために命が犠牲となる社会ではなく、そこに生活する人々の命と、これから生まれてくる命が第一に優先される社会なのではないでしょうか。

石炭火力発電所は近隣住民の健康被害につながるほか、温室効果ガスの排出による気候変動の影響を悪化させます。近年では日本でも豪雨の被害が頻繁に起きていますが、気候変動の影響は日本から離れた島嶼国での海面上昇、干ばつからくる農作被害そして農民の自殺、またヒマラヤ山脈付近の国々では氷解による被害等、深刻な被害をもたらし、人々の命が奪われています。

企業の利益ではなく人々の命が中心となる社会。そこには、石炭火力発電所はないはずです。

(高橋英恵)

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【日々のくらしの裏側で – vol.5】企業の懐柔策に埋もれる蘇我住民の声

千葉県蘇我駅から車で5分ほど。そこに、千葉の地元のサッカーチームであるジェフユナイテッド千葉が拠点とするフクダ電子アリーナがあります。

“あの右側の奥に、石炭火力発電所ができるんです。”

そうおっしゃったのは、蘇我石炭火力を考える会(以下、蘇我の会)のメンバーの渡辺敬志さん(以下、渡辺さん)。9年ほど前に東京から広い家を求めて蘇我に越してきたものの、新しく出てきた今回の蘇我の石炭火力発電所建設計画。この現状にどのように感じているのかを、伺いました。

そもそもは石炭火力というよりも、マンションの汚れが非常に目立つということがきっかけでした。最初は私個人の問題としてJFEに電話をしたり、あるいは行政に電話をしたりしていたのですけど、所詮個人では埒が明かなくて。それで、マンションの管理組合とか自治会関係に携わっていたこともあり、自治会として住民に全戸アンケートを取ったんです。そうしますと、過半数以上の回答(139戸中79戸)がありまして、そのうちの85.6%から「粉塵問題悩んでいる、なんとかしてほしい」という声が生々しく上がったんです。コメントの中には子どもさんへの影響が気になるというようなご意見もありました。それを自治会の役員として受け取ったわけですよ。そうするとね、受け取った以上は放置できない。そういうことで、この件を自治会として扱おうという決議を出し、同じ自治会、連協の会長さん宛とか、行政宛に自治会名で要望書を出したりしていました。“

そして、新しく出てきた今回の蘇我の石炭火力発電所建設計画。なんと、たまたま蘇我駅を通りかかったとき、同計画に関するチラシを受け取ったのが知ったきっかけだそうです。

“たまたま蘇我の駅を通りかかったとき、石炭火力ができますよというチラシを受け取りました。それではじめて「えっ」と思ったんです。そもそも、私どもが粉塵問題で取り上げたのは、かれこれ6年前。6年前に取り上げたときは、行政とJFE、私どものマンション、それから環境N POの方と、お互いに話をぶつける4社ヒアリングの場が設けられました。でも、結局3回で流れてしまいました。流れてしまった理由を簡単に言いますと、非常に実のない話に終止してしまいがちだったんです。行政はどちらかというとJFE側の立ち位置で、NPOさんも行政やJFEに対して何か言ってくれるかと思えば中間的な立場で物言いをされるし、結局はうちの自治会関係が言うだけで空回りというような感じだったんです。だけど、このときJFEさんは「年間10億円の予算で毎年粉塵問題を解決しています、いろいろと企業努力をしています」と言っていたんです。そのときに出た例の1つが、老朽化した設備を新しく入れ替えることによって、煙突から飛散する粉塵については軽減を図っておりますという話だった。風で粉塵が飛んでいるということは知っていたんですね。あと、工場見学に行ったときに石炭が山積みされたところを通ったからそれはどうなの?と聞いた時は、散水して飛散を防止していますと。他にも、12mの高さの緑化マウンドを作って、飛散防止を図っていますということだった。我々も毎年10億円の予算をかけてJFEさんが努力してくれているのであれば、様子見をしようということで、一旦は鉾をおさめたときがあったんです。

でも、そういった矢先に石炭火力の話を知って、冗談じゃないと。今までのJFEの善意はこのために意図的にやっていたのかと。こういうことで非常に腹がたってですね。で、石炭火力の問題を追求し始めた。そのときに私どもの自治会だけではなくて、地域の市民の人たち、市民ネットの方、あおぞら会という、昔川崎製鉄で粉塵の問題で公害訴訟をなさった人たちが集まって、蘇我の会というものを作り、昨年の4月から活動をはじめました。並行して、袖ヶ浦と横須賀でも石炭火力の話が出ていましたから、じゃあ、それぞれの会が連携してやりませんかという話になって、東京湾の会もでき、私どもは蘇我の会として、石炭火力の話を真正面から取り組むようになりました。“

蘇我の会として、今までどのような活動をされてきたのでしょうか?

“まず大きな一つは、近隣マンションへのアンケートです。あと、一般の皆さんへの学習会や、駅でのチラシまきとか。それからパタゴニアさんの助成金を申請したら受かったものですから、その資金を活用して、新聞折込とかをさせていただきました。こういう一般住民向けの活動と、それからJFEとのヒアリングを何回か、あと、行政とのヒアリングもやっています。そのほか、先日千葉県の弁護士会館で石炭火力問題のセミナーを開催していただいたりと、いろいろなかたちで、今、協力者の輪を広げつつあります。”

近隣マンションへのアンケートが一つの大きな活動だったとおっしゃる渡辺さん。アンケートの結果について教えてもらいました。

“2万件を足で歩いて、1戸1戸ポスティングをしてきました。回答が355件あって、そのうちの278件が記名式で連絡の取れるものでした。名前の記されたアンケート回答は、僕は珍しいと思っています。やっぱりそれだけ自分の名前を出してでも、訴えたい方がいらっしゃっるんだと思いました。しかも、そのアンケートの結果ですが、90%以上の人が石炭火力は冗談じゃないと。で、「今病気通っています」とか「自覚症状あります」とか、「今治療中です」とか言う方もいらっしゃいました。何より、「将来が不安だ」という方が圧倒的多数だったんです。

そういうことを聞いたときに、私として興味を持ったのが、回答は確かに2万件の中で355件だったんですけど、たとえばうちのマンションの355件のうち何人回答したかをみてみたら、12人しかいないんですよ。一方、私の自治会が過去にやったアンケートではね、さっき言いましたように、139のうち79%の回答がありまして、そのうちの85.6%が粉塵問題で悩んでいるということになると、そんな10人どころの話じゃないんですよ。

しかもこの地区はマンションだけで、全てのマンションから必ず1人から5人くらいの粉塵の悩みが寄せられたんです。それらを合わせて推察したとき、あるマンションの一戸だけが汚れていると思えない。そうすると単にアンケートに答えていないだけで、この千葉みなとを中心とした地区に、少なくとも4千人から5千人の方が苦しんでいると思います。”

 

バリバリと活動をされている渡辺さんですが、活動している中で直面している壁もあるのだとか。

“とにかく、知らない人が多すぎる。私自身もこの計画を知ったのが、蘇我の駅を通りかかったときのチラシがきっかけだったんですね。いろんな説明会とか、蘇我の会としてやっていますけど、ほとんどの人が知らなかったということが圧倒的に多いんですね。市に言ってみたら、官報に載せていますってことだったんですが、誰も見やしない、ものすごく小さい記事なんですよ。だから、実質的には何一つとしてこの計画の広報を行政としてはやっていない。そう思います。

あと、もう一つ、今は引退しましたけれど、現役の時はどちらかというと経営者側の目線でした。経営者だったものですから、小さい会社ですけどね。当時は、経営者側の考えること、あるいはそれにまつわる行政の思想、それから政治家のあり方、そういうものをいっぱい見てきました。しかも、それを自分の利益になるのであれば、容認してきた時期もあります。でも今、市民にはじめて戻って、一市民の目線でその粉塵問題という、現実に自分の目の前に降りかかってきて。行政や事業者、あるいは政治家とどう対峙していけばいいかというのは、私なりにわかります。でも、この問題について冗談じゃないとなった時に、一番重要なのは住民のパワーをどのように結集していけるか、この一点だと思います。そのために何をやればいいかということを今模索している最中であると、それが正直なところです。解決策はまだ見つかっていません。”

また、こんなコメントも。

ほとんどの自治会長さんは何かの祭りのときはJFEから協賛金を頂いたり、清掃するときにはJFEから人を差し入れて頂いて一緒にやったり、あるいはJFE祭りを華々しくやって近隣住民の皆さんにいろいろサービスしてもらったりしています。そういうものを受けた住民側から見たらね、なかなかJFE相手に物申すということができない。出来づらいだろうなと思います。でも、本来はこの地区とかにお住まいの全自治会の会長さんがすべきなのは、住民の悩みを吸い上げて、実態調査をして、それに沿った自治会の政策を作ることのはずなんです。”

周辺住民の無関心。そしてJFEの住民への懐柔策。蘇我の会が直面する課題は大きいですが、活動を通して、少しずつ動きは変わってきているようです。

“JFEも我々の動きを軽視できなくなってきているように思います。神経質にさせた事自体が一つ前進だと思いますし、行政側も、環境審議会の中に今まではなかった大気関係の専門部会が今年から作られました。これも一歩前進なんです。ただ、その委員の中には冗談じゃないという人が委員に選ばれていたりと中身はないんですけど、形式的にはそういう動きがある。ほかにも、千葉市を美しくする会という組織に対して、千葉市を美しくするために大気環境は欠かせない問題なので取り組んでくださいという要望書を出してみたら、会長さんから、検討してみるというレベルですけど、回答がありました。活動の成果はじわじわと浸透しつつあるんです。”

最後に、どのような気持ちで活動していらっしゃるのか、伺いました。

“私個人でいうと、負けず嫌いですから、相手が大きければ大きいほどなんとかしてやろうという気持ちはあります。もちろん、虚しい気持ちもいっぱいありますよ。やれどもやれども相手にされないという虚しさは。でも誰かが声を出していかないと、誰かがアクションを起こさないと、日本も変わらないから、そう思って活動しています。”

JFEの住民への懐柔策に埋もれた住民の声。

住民が本当に欲しいのは地域の催しの協賛金や清掃サービスではなく、安心して暮らすことのできる綺麗な空気であるはずです。

(高橋英恵)

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・インタビュー記事:「【日々のくらしの裏側で – vol.4】気候変動という危機を放置していいのか?袖ケ浦石炭火力発電所建設計画に立ち向かう人々

・住民へのインタビュー動画「日々のくらしの裏側で〜千葉県千葉市 蘇我〜

【日々のくらしの裏側で – vol.4】気候変動という危機を放置していいのか?袖ケ浦石炭火力発電所建設計画に立ち向かう人々

“石炭火力発電は海の魚が住めない環境をつくったり、屋外でも活動は控えてくださいとか、住んでいる住民の生活や健康を害してしまう。これは子供達、子孫に対する今生きている人間の犯罪になるとうふうに、私は考えているんですね。”

 

そう語るのは、袖ヶ浦市民が望む政策研究会の富樫孝夫さん(以下、富樫さん)。富樫さんの住む町、袖ヶ浦では、出光興産(株)、九州電力(株)、東京ガス(株)の3社が共同出資して設立した(株)千葉袖ケ浦エナジーが、大型の石炭火力発電所2基の建設を計画しています。同発電所の建設予定地は、一般の住宅地から一本大きい通りを挟んだ奥にある工場地帯内にあります。

 

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(建設予定地。住宅地から一本大きい通りを挟んだ奥にある、出光興産株式会社のバルクターミナル内にある。)

 

なぜ、袖ヶ浦の石炭火力問題に向き合うことを決意したのか。そして、自分たちの住む地域に石炭火力発電所ができるというのはどのような気持ちなのか。

富樫さんをはじめ、この建設予定の石炭火力発電所の建設計画の向き合う地域住民である川上宏さん(以下、川上さん)、石田俊道さん(以下、石田さん)に、お話を伺いました。

 

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(左から富樫さん、川上さん、石田さん)

 

まず、活動を始めたきっかけについて。石田さんがお話しくださいました。

“私がこの活動をやらなければならないという意識はですね、温暖化とか、あるいは環境問題で多くの人がやはり健康を害していると、前から新聞で見ていて関心もありました。でもやはり、それは意識だけではなく、行動して示して阻止していく、改善をしていくというのが大事だという気持ちが50代くらいから芽生えてきて。会社務めだったものですから、なかなか行動は取れなかったんですけどね。この問題は富樫さんが事務局でチラシを配ったときに知りました。今はもう定年になりましたので、ようやく自分の考えで行動をできるという時間ができたというのもあって、より多くの人々に、一人でも多くの人に活動に参加してもらいたいと思って、この活動をしています。”

 

より多くの人々に、一人でも多くの人に活動に参加してもらいたいと考える石田さん。何が一番問題と考えているのでしょうか。

“やはり、石炭火力発電所で発生する大量のCO2が温暖化につながること。それに、私達の住んでいる地元でも喘息のお子さんもおりましたし、大気汚染につながっていくことも問題です。それから、夏場になりますと光化学スモッグ注意報が発令されるんですよ。で、屋外でも活動は控えてくださいと。袖ヶ浦市の空を守るということから考えると大変なことになってきているなと。それなのに、石炭火力発電所が新しく新設されるということになると、ますます大気汚染になって、住んでいる住民の方々に健康を害するということになっていく。そういうことですから、ぜひともこれは阻止しなければならないと思っているところです。”

 

この答えに重ねるようにして話してくださったのは、袖ヶ浦市民が望む政策研究会のメンバーとして、この石炭火力発電所の問題に率先して関わってきた川上さん。

“いま、温室効果ガスが400ppm濃度を越したということは地球人類の危険が迫っているということなんですよね。450ppmを越したら命にかかわると言われています。そういう状況で、ボケッとしていていいのかという、子供達、私達のあとに残る子供達のために自分ができることなんて少ないけれど。ただね、本当に、異常気象だとかなんだとかの問題を通り越しちゃっているんですよね。COP24なんかでさらにきつい話になるだろうと、この問題についてきちんと向きあってほしいと期待しています。”

 

続けて、富樫さんがこの活動にかける想いを話してくださいました。

“石炭火力発電は海の魚が住めない環境をつくったり、屋外でも活動は控えてくださいとか、住んでいる住民の生活や健康を害してしまう。これは子供達、子孫に対する今生きている人間の犯罪になるとうふうに、私は考えているんですね。あと、今、川上さんがCO2が400ppm超えたという話が出ましたけど、ちょっと振り返ってみるとね、私が高校生の時、新潟地震があったんですね。そのときに石油タンクがなんと15基、火災になったんです。あと、北海道の十勝地震のときでしたかね、そのときも同じように石油タンクが爆発した。そして今回の3.11のときも、コスモ石油の石油タンクが燃えました。爆発自体も十分怖いことで危険だけれど、今、CO2濃度が上がると、大変なことになるんだよということが世界中で言われている。しかしながら、それを無視してね、事業者も一般市民もそれをよく真剣に考えようとしていない。そういう環境だけれど、でも、だからこそ、なんとか少しでも多くの人に危険だよと、大変なことが迫っているんだよということを、微力かもしれないけれど知らせたい。それを伝えていきたいという気持ちです。”

 

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(建設予定地付近の海岸。釣りをしている 人を多く見かける。)

 

一人でも多くの人に伝えたいという富樫さん。これからどのような活動をお考えなのでしょうか?

“今は、出光興産の社長に手紙を書くということを一生懸命やっています。そして、これからやろうとしていることははがき作戦ですね。出光興産に向けたはがきを皆さんに配って、市民の方から直接コメントを書いて送ってもらってね、市民がどれだけその関心を持っているか、どれだけ嫌だという気持ちを持っているかということを、社長に感じてもらうということを考えています。やはり、社長さんの立場からすれば、やはり金稼がなきゃいけないわけだから、環境に悪いことはわかっているけれどもやりましょうというふうな気持ちもあると思う。でも、そこは踏みとどまってもらわないと。やっぱり市民の声を届けていくというのをやりたい。なので、出光興産の本社が有楽町のところにありますね、皇居のすぐとなりですけど、ここ(袖ヶ浦)からそこまで出かけていって、直接訴える。同時に、社長に対する会談も申し入れようかというふうなことも考えています。”

 

また、千葉で作られた電気を使っている人々へのメッセージを、石田さんよりいただきました。

“私はですね、都心に住んでいる方に対しては、皆さんがお使いの電力は東京湾岸の発電所で発電した電気を使って働いているとか、あるいは住まわれているということを考えてほしい。その電気はどこに作っているのかというと、都心ではなくて、その周辺のところで工場地帯で作っているということになります。発電所のある周辺では光化学スモッグが発生しているとか、煤塵が発生しているとか、喘息のいる子供が多いとか、そういう自体を踏まえた上で、そういうところから送られてきた電気ではじめて生活しているんだと。そこで、都心の真ん中に、自分たちの使う電気を発電する発電所作ったらどうかという話になったら、いやそれは困るという判断になる。でも遠くから来るから、自分たちは直接の関係はないからと、無関心のままで、過ごされているということも多いかと思います。でも、そうじゃなくて、全国のいろんなところで作って、いろんな犠牲があってはじめて生活ができているということを自覚してもらってほしい。それで、じゃぁ住んでいるみなさんがそういう発電所の近くでも安心して生活ができるような環境をつくる、あるいはそういう設備に改造していくとか、そういうかたちでの改善を図っていく、というのが必要だと思います。あと、富樫さんが先程言ったように、環境を汚染する電力を発電させないとか、切り替えていくというようなことを率先してやってもらいたいなと。

住民の方含めてですけど、今の地球を守っていくとか、大気汚染を防ぐとか、そういうことで生きている喜びというのを皆さんで分かち合えるような、そういう形にしていきたい。私達の環境は皆さんの力で、改善をしていきたい。皆さんの協力が必要です。”

 

インタビューの中で浮き上がってきたのは、はたして私達は、あたり前のように使っている電気がどのような環境の下で作られているのかについて、気をめぐらせたことがあるのだろうかということ。

そして、次の世代のために、良い環境を残していきたいという意志を強く感じました。

 

また、余談ではありますが、文化を意味する”Culture”という言葉は、耕すという意味の“Cultivate”と語源を共にします。そして “Cultivate”という言葉は、“土地に気をかける(care)”という意味を含んでいるそうです。

ここから考えられることは、”Culture”という言葉にも”care(気にかける)”という意味が込められているのではないかということ。では、いったい何を気にかけるのか。それは、将来世代なのではないでしょうか。

袖ケ浦の方々から発せられた「魚の住めない環境をつくったり、住民の生活や健康を害したりする環境をつくったりすることは、子孫に対する今生きている人間の罪なのでは」「地球人類の危険が迫っている状況でボケッとしていていいのか」「今の地球を守っていくことを通して、生きている喜びを皆で分かち合えるような社会にしたい」という言葉のように、将来世代を気にかけるということこそ、本来の「文化(culture)」の意味なのではと考えます。

 

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(袖ケ浦の未来に青空を。記念撮影)

(高橋英恵)

 

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・インタビュー記事:「【日々のくらしの裏側で – vol.3】きれいな空気は誰のもの?命を脅かす石炭火力発電所の恐さ

・袖ケ浦石炭火力発電所建設計画に関する署名はこちら

・動画:近日公開

【日々のくらしの裏側で – vol.3】きれいな空気は誰のもの?命を脅かす石炭火力発電所の恐さ

11月4日、三浦で開催された横須賀石炭火力発電所について考えるセミナーに参加されていました、横須賀市在住の大竹裕子さん。子育てをするために横須賀に越してきた矢先に、喘息が発症したそうです。喘息を持つ立場として、お住まいの横須賀に石炭火力発電所ができるということについて、どのように感じていらっしゃるのか、伺いました。

 

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“私は子育てするためにこちらに移住してきたんです。父たちが先に来ていたのもありますけれども。すごくいい環境で子供を育てたいなっていうふうに思ったので。なのに、妊娠中にはじめて病気が発症して、大きな発作を起こしてしまったんですね。で、赤ちゃんの命に関わると言われて。強い皮下注射でその場は命拾いをしたんですけれど、それからはとにかく死なないように、予防に徹していました。喘息って、一回起こすともう器官が健常な人の半分しかなくなってしまう、死に至る病気なんです。例えば、健常の方はストロー、太めのストローを口に加えて24時間生活してみてください。それでわかります。それくらいの呼吸量になってしまうんです。なので、煙とかタバコとか、お線香とかもできるだけ避けるようにしないといけないんです。ここは冬も暖かいくらいすごく温暖で、気候もいいですけれども、自然環境もものすごくいいんですね。ですから、ここ(横須賀)では風邪も引きづらいはずなんです。医学的な証明はできないんでしょうけど、喘息になったのはそれがきっかけじゃないかなと、思っています。”

 

この横須賀の石炭火力発電所の問題はどのような経緯で知ったのでしょうか?

まず広報です。市の広報で、石炭を利用した発電所ができるので、この計画についてJERAという会社が説明をするから集まってくださいという呼びかけを受けて、参加しました。“

 

そういった説明会などの誘いがあったとしても参加されない方もいらっしゃる中、なぜ、説明会へ参加しようと思ったのでしょうか。

”この横須賀には核燃料棒を作っている会社があって、もともとは核燃料棒の活動をしていたんです。その活動も、きっかけは3.11でした。3.11があって、まず最初の行動は官邸前に、国会前に一人で行きました。そこには、自分と同じようにポツンポツンと来る女性・男性がとても多くて、話してみると、やっぱり何をしているかわからないけどとりあえずここに来てみたと、そういうような自分と同じ人が多かったんですね。それで、官邸に集まるようになりました。たくさん人数が集まって、変えられると思ったのもあるんですけど、地元に燃料棒を作っている会社があることをもっと地元の人に知らせなきゃっていうことで、その核燃料棒の活動を立ち上げたんです。それを7年間、もう8年目ですけど、みんなに可視化するという行動を続けていたところ、エネルギー関連だったということもあって、たまたま石炭発電所が久里浜に来るということを知ったんです。ありえないですよね、この時代に石炭なんて。なので、すぐに参加しようと思いました。”

 

最後に、大竹さんが描く横須賀の未来をお聞きしました。

“とにかく命が大事にされること。あと、人間の尊厳が大事にされることだけですね。あと、幸せに、美味しいものを食べて、幸せに暮らせる未来。戦争は、もちろんない。戦争は環境を壊す一番の大罪だと思っているので。そうですね、人間も生物も、すべての人がありのままに暮らせる未来がいい。やっぱり自分や家族、自分の周りの人、自分と関わり合いのある人達が幸せでなくてはいけないと思っているので。そのために頑張りたいと思います。”

 

この横須賀の石炭火力発電所の建設計画。横須賀石炭火力を考える会の鈴木陸郎さんもおっしゃっていましたが、営利目的の計画であることは明白です。

利益のためなら、命はないがしろにされていいのか。横須賀の石炭火力発電所の計画において、私達はこの点は問いただしていくべき論点と考えています。

(高橋英恵)

 

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【日々のくらしの裏側で – vol.2】過去の経験から未来へ。あの公害を繰り返したくない。

都心から近く、海と山に囲まれた地域ということで移住者の多い三浦半島。

その三浦半島の一端である横須賀市久里浜に「(仮称)横須賀火力発電所新1・2号機建設計画」の建設が計画されています。

この建設計画は、東京電力フュエル&パワー(株)と中部電力(株)が共同出資して設立した(株)JERAが、横須賀火力発電所内の発電設備を撤去し、新たに設備容量65万kWの石炭火力発電設備2基を建設するものです。

現在、環境影響評価法等に基づく環境アセスメントの手続きが進められていますが、長期計画停止していた既存設備の更新と位置づけられ、環境負荷の実測値との比較が行われない等の課題を抱えており、既存設備解体工事は住民への説明も不十分なまま既に進められています。

そのような中、2017年4月、この問題について考える市民団体、横須賀石炭火力を考える会が発足しました。この一年間、横須賀だけでなく逗子や三浦、鎌倉で横須賀石炭火力の問題についての学習会を開催してきた、同会代表の鈴木陸郎さんにお話を伺いました。

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(横須賀石炭火力を考える会、鈴木陸郎さん)

 

この横須賀の石炭火力発電所の建設計画はどのような経緯で知ったのでしょうか?

“発電所ができるらしいよという話を聞いたんです。それで、いろいろ調べたらやっぱりそうだったということでした。それまで石炭火力はあまり意識したことがなかったので、どんなものになるかってことをまず知ろうとして、経産省外郭団体の研究所の方に横須賀に来ていただいて、いろいろ話を伺ったのが最初でした。そこで、石炭火力に頼らなくとも電気は十分足りると、しかも節電とか、再生可能エネルギーで十分やっていけるという話を伺った。その時先生が強調されたのが印象的でした。というのも、節電というと「我慢」ということをよく言うでしょ。でも、そんなに我慢しなくとも節電は可能だということを話されて。だから、生活の水準を落とさずに節電と再生可能エネルギーで産業もやっていけるし、私たちの暮らしも十分エネルギーが足りるという話をされたんです。ふりかえって横須賀の計画のことを考えると、これは必要のない火力発電所を作る計画だということだと。その間に温暖化の問題があるし、大気汚染物質が出るということも同時に学んで、じゃぁ横須賀で何かしなきゃというのでみんなで相談して、それから半年ぐらいかかって、今の考える会(横須賀石炭火力を考える会)をみんなで立ち上げたと。こういうことです。”

 

具体的に横須賀発電所の計画はどのようなものか、教えていただきました。

“ここはもともと石油を燃料にした発電所があったんです。作られてから、40年50年以上経って施設が古くなって、長期の計画停止となり全く発電しなくなってからしばらく経っているんです。その古い発電所を解体して、新しく発電所を作るんですけれど、その燃料を今度は石炭に変え、石炭火力発電所として作ろうとしているわけです。

今、世界的に見ても、石炭火力というのは温暖化ガスの問題があって廃止していくという状況にも関わらず、石炭を燃料にしようとしているんですよ。しかも、65万キロワットの発電所を2基作る。2基合わせて130万キロワットになるわけですけれど、130万キロワットというのは大型の原子力発電所と同じぐらいの能力を持つ、そういう大きな発電所なんですね。電気が足りないかというとそうでない。十分電気が足りているのに、燃料を石炭にして、ここに発電所を作ろうとしているわけなんです。” 

 

電力が十分に足りている。それなのに、なぜ新しい発電所を、しかも、世界に環境対策に逆行するような石炭を燃料とする発電所がなぜ建てられるのか。その理由を尋ねると、次のような答えが。

なぜかというのはよく聞かれます。けれど、それはやっぱり、現時点で石炭が燃料として一番安いからなんですね。一番安い燃料で作れば、安い電気ができると。電力自由化の中で、事業者は競争にさらされているわけですから、競争に打ち勝つだめには、安い電気を作ると。こういう事情で石炭を選んでいると思うんですけど。果たして、石炭がいつまでも安い燃料かというともうそうでない。自然エネルギーの方がコストがずっと安くなっていくというのが世界的な流れになっていますので。必ずしも、今事業者が考えているように、石炭が安い電気を作る燃料ではない。これからそういう時代になってくる。別に発電することに反対しているわけではないの。ただ、環境的にも、経済的にも問題がある発電所を作るということを、問題と考えているわけです。”

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(現在解体作業中の横須賀火力発電所。振り返るとすぐ目の前にマンション、新築の戸建が経つ。)

アセスメントの制度が十分に整っていない時期に当初の発電所が建設されたからか、建設予定地のすぐまわりにはたくさんの住宅が。この横須賀計画について、近隣住民の反応はどうなのかというと、そもそも計画を知っている人がほとんどいなかったそうです。そればかりか、たとえ知っている人がいたとしても、次のような反応だったそう。

“たまたま知っている人がいても、高効率のいい、新しい技術の発電所が作られるのだから問題ない、という受け止めだったんです。ですけども、知らないという方が圧倒的に多かったという状況自体といいますか、これだけのものを作ろうというのに事業者は周りの住民に知らせないというのはどういうことなんだろう、ということを最初の頃はよく考えました。”

 

計画のことを知ったとしても、「そうなんだ」と終わってしまう人が多いのが、悲しくもこのご時世。無関心の多い中で、どうして会を立ち上げようと思ったのでしょうか?

“どうしてと言われても困ってしまうのだけれど、私達の年代からすれば、いわゆる公害問題を経験している。私自身は公害で健康を害したということはなかったですけど、そういう悲惨な状況を同じ世代が経験しているわけですよ。それで、公害問題が起こったときも、「公害対策にお金をかけたら産業が大変になっちゃうからほどほどに」という議論があって、それと非常によく似た論理で温暖化問題が言われているわけですよね。節電すると電気をいれなくなるだとか。非常に似た構造だと思ったんです。そうなると公害問題をそれなりに経験してきた立場からすればほっとけないという気持ち。このままの社会を残したら持続ができないというのがはっきりしてきているじゃないですか。それを私達の世代が作ってきたわけでしょ。それをそのまま残していいのかというのがやはり問われる。そういう気持ちがあったんですよね。だからできるときにできることをやらないと。やっぱり後悔するかなという思いで。”

 

公害問題をそれなりに経験してきた立場からすれば放っておけないという鈴木さん。放っておけないと思うほどの公害は、実際どのような経験だったのでしょうか。

“若いときに川崎に住んでいました。その時の川崎というと、もう公害の街と言われていたんですね。まだ完全に公害がなくなっているわけではないんですけども、やっぱり公害問題を克服したまちというか、今は若い人にすごい人気のあるまちになっていますよね。

川崎にいた頃は工場から出てくる煤塵がうちの中まで入ってきてね、朝出ていって、帰ってくると、テーブルの上がザラザラするというような、それぐらいひどい時代があったんです。

それからもう一つ、東京も昔は自動車の排ガスがひどいときがあったでしょ。幹線道路の沿線で喘息とか、公害病になる人が非常に多かった時期があった。その頃、私の甥なんですけど、東京の大学に来ているときに喘息を患って、公害認定患者になったんです。もう亡くなったんですけどね。当時、東京では暮らしていけないというので田舎に帰ったんですけど、その喘息がとうとう治らなくて、何べんも発作を起こして緊急に入院したり、それから喉を切開して人工呼吸をやったり。そういう非常に悲惨な状況で暮らさざるを得なかった。その甥はサッカーの好きな子で、とても身体の丈夫な甥っ子だったんですけどね。そういう公害病の恐ろしさというのは自分の身内にもいたということでね。本当に目に見えないですから、大気汚染物質というのは。目に見えないのに病を起こすというそういう経験もあって、そういう思いは他の人にしてほしくないというのはとても強く思っています。”

 

「放っておけない」という鈴木さんの想いから始まった横須賀石炭火力を考える会。会を立ち上げてからは何をされてきたのでしょうか?

“一番多いのは学習会。何回も重ねましたし、それから横須賀の会が立ち上がったときにちょうど千葉県の蘇我、袖ヶ浦の方でも同じような運動をしているということを気候ネットワークの方を通じて知って、同じ問題抱えているのなら、連絡会のようなものを作って、いろいろ情報交換すれば運動に役に立つのではないかということで、それから1ヶ月か2ヶ月くらい後に、東京湾の会(石炭火力を考える東京湾の会)立ち上がったわけです。そこで、一緒に環境省への申し入れをしたり、それぞれの事業者に直接申し入れをしたりしてきました。”

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(写真:三浦のセミナーで計画の概要を説明をする鈴木さん。)

 

活動していての感触について尋ねると、

“環境省の担当者の方たちは環境問題に熱心でね、温暖化の問題をこのまま放置してはだめだという思いが共通していて、お互いに頑張っていきましょうというようなやり取りをしたことはとても印象的でした。ただ、アセスの審査会を何度も傍聴したとき、その審査会の先生方が非常に頑張っていらっしゃるのはよくわかるんですけど、なかなか審査員の先生方と私達との間で情報交換ができていなくて。審査会で私たちの声をもう少し反映できたらなという思いは今でもあります。そういうつながり研究者とのつながりをもっと早くからつくることが出来ていれば、と。あと、事業者には私たちの力が及ばないなと常々感じますね。事業者の方はやっぱり事業ですから利益が上がるということを目指してやっているわけですから。けれども、それでも今は事業者への働きかけを強めなきゃいけないのかなという感じを持っています。”

 

横須賀の会の活動の働きかけもあり、近隣住民のこの問題に対する周知は高まったそうです。

 “事業者は近隣住民に説明する責任がもちろんあるから、環境アセスメントの書類(注1)を提出するたびに説明会を開くわけ。でも、環境アセスメントの方法書が提出されたときに説明会が実施されたんですけど、参加したのは30人くらい。2か所合わせて60人か70人くらいしかいなかったんです。そして、次に環境アセスメントの準備書が提出された。できるだけ多くの人に計画を知らせるというのは事業者の役割ですけれども、この時は私達も住民に呼びかけて。そうしたら全体で410名も集まって、会場が溢れて、第2会場、第3会場を準備しなくてはいけないような状況になりました。質問時間も1時間くらいしか用意していなかったのに、さらに延長1時間半というほどになりました。そういう状況を作ったというのは、それなりに関心がやっぱりあって多くの人が集まってきたと思います。“

 

これからどのようなことをやっていこうとしているのでしょうか?

“これからやらないといけないこと、たくさんあるんです。準備書が出されて、それで、環境大臣がそれの準備書に対する意見を出しているんです。これはとても厳しい意見です。いまでさえ、今運転している石炭火力発電所も止めなきゃいけないほどのCO2を出しているわけですね。減らさなきゃいけない状況の中で、新しく作るっていうのは、30年とか40年、CO2を出し続けるということになってしまうでしょ。世界的に見れば石炭火力はやめましょうという時代なのに、先進国がやめるときに日本がピークを迎えるというような、そういう状況ですから、やっぱりいろんな人にまだまだ訴え続けてですね、やらなきゃいけないことはまだいっぱいあると思っているんです。事業者に対してもやはり環境大臣があれだけ厳しい意見を出しているのに、事業者がそれに対する答えを出して、公表するという場面がないんですね。ですから、そういうこともこれから事業者に対して聞いていく必要があるかなというふうに考えています。”

 

最後に、この活動にかける想いを聞きました。

“横須賀というのは本当に温暖な気候で、とても住みやすい場所なんですね。そういう場所でありながら米軍の基地があって、その他にこういう石炭火力の発電所ができるなんていうことになると、非常にこう、環境の恵まれた町がいわば財産を失っていくみたいな、そういうことになる。ですけれども、やはりそうでなくて、自然豊かな町で、それを求めて都会からも多くの人が横須賀に移り住んでくれると。そういう時代になるというふうに思いますのでね、東京湾の側もいいところですし、相模湾の方も、そこなんかは本当に景観も優れているし、気候も本当にいいところですので、そういう町にずっとしていきたいというふうに思っています。

今はまだこの計画を知らない人も多いけれど、とにかく話を聞いてもらえれば、理解してもらえる話ではないかな。昨日の三浦での勉強会でも、「電気がたくさんあった方がいいんじゃないか」という質問があったけれど、あの方の気持ちからすれば、電気というのは余裕を持っていっぱい持っていれば、何かあったときにちゃんと電気が供給できるじゃないかと、だから発電所はいっぱいあったほうがいいと。そういう意味でおっしゃっていたのかなと思いました。やっぱりそういう人多いと思うんですよ。当然だと思います。だから不自由なく暮らしているわけなのでね。でも、そういうことは起こらない。ここに石炭火力をつくらなくとも、そういう問題は心配しなくともいいということも知らせたい。ここに新しく石炭火力発電所を作ることによって30年40年、温室効果ガスを出し続けるということになると、世界中で石炭火力がなくなってしまったときに、日本だけがそういうことをずっと抱えているということになったら、いろんな面で支障があると思うんですね。だから、世界の流れから見ても石炭火力をやめることは当然のことなので、理解してもらえると思っています。とにかく、反対運動のようにだけとられちゃうと、その入口でシャットアウトされちゃうんでね、だからそうでない、ポジティブな、例えば再生可能エネルギーをどんどん増やしましょうというメッセージと一緒に、石炭火力はそういう意味ではブレーキをかけるし、時代遅れになってしまうよという、そういう形で伝えていけば、どんどん受け入れてもらえるというふうに考えていますね。”

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(公園から建設予定地が一望できる。計画では、遠くに見える海を隠すように、発電所が建設される予定となっている。)

 

鈴木さんの描く横須賀の未来像。それは、鈴木さんだけでなく、横須賀の人々全てが描くものなのではないでしょうか。

その一方、建設予定地を視察した際に痛感したのは近隣住民の無関心。発電所のすぐ隣には、建設されてから日の浅そうなマンションや、新築の戸建てがありました。そのマンションの前の通りに立ってみると、途切れることなく響く解体工事の音。また、現在はまだ旧発電所の解体段階であるものの、石炭火力発電所が稼働した場合には、多くの排煙を浴びることになりそうです。そのような状況にも関わらず、建設予定地周辺には、建設計画に対する反対のバナー、のぼり等は全く見られないという風景。

 

横須賀石炭火力を考える会のfacebookでは、石炭火力発電所問題について積極的に情報発信しています。ぜひ、フォローしてみてください。

(高橋英恵)

 

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・インタビュー記事:「【日々のくらしの裏側で ーvol.1】横須賀石炭火力発電所建設計画への地元高校生への目線

 

(注1)環境アセスメント(環境影響評価)とは、大規模な開発事業などを実施する際に、事業者が、あらかじめその事業が環境に与える影響を予測・評価し、その内容について、住民や関係自治体などの意見を聴くとともに、専門的立場からその内容を審査することにより、事業の実施において適正な環境配慮がなされるようにするための一連の手続きをさす。事業の開始に当たっては、配慮書、方法書、準備書、評価書の4段階をふむ必要がある。詳細はこちら