SB56開催中〜COP27に向けて途上国が求めるものとは?

6月6日から16日にかけて、国連気候変動枠組条約の第56回補助機関会合(SB56)が開催されています。補助機関会合では、条約の公式な決議などはありませんが、年に一度開催される締約国会議に向けた勧告や合意案が検討されます。

COP26以降、2022年2月には、IPCC第二作業部会が気候変動の「影響・適応・脆弱性」に関する報告書を公表しました。この報告の中で、気候変動の影響はすでに広範に及んでいること、世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えることが達成されたとしても気候変動の影響による損失と被害を全く無にすることはできないこと、また、気候変動にレジリエントな開発ができるかどうかは、この10年の行動が鍵となることが指摘されました。

そして、2022年4月のIPCC第三作業部会による「緩和」に関する報告書では、現行の各国の気候変動対策目標(NDC)はパリ協定の1.5度はおろか、2度未満に抑えるためには極めて不十分であること、既存及び計画中の化⽯燃料インフラからのCO2排出量のみですでに1.5℃目標の達成は不可能であること、脱炭素技術の大規模な普及だけでなくこれまでに類をみない抜本的な社会変革が求められ ることが求められることが示されました。

このように、IPCCによる報告が相次いだ後に開催されているのが、今回の補助機関会合です。第一週目には、今回の補助機関会合の開幕に際し、気候正義を求める市民社会が、記者会見やイベントを開催しました。

もはや被害の時代に突入。求められるのはアクション

6月7日には、開催された気候正義を求める市民社会(Demand Climate Justice)の記者会見がありました、その中で、Third World Network/FoE マレーシアのMeena Ramanは、冒頭に述べたようなIPCC第六次報告の指摘を振り返りながら、

私たちは、求められる気候変動対策から程遠い所にいる。ウクライナ侵攻があってもなお、先進国はまだ化石燃料から脱却する準備ができていないようだ

と、求められる気候変動対策が進まないもどかしさを示しました。

また、議題から抜けていた途上国にとって極めて重要な、適応に関する世界全体の目標(Global Goal on Adaptation、GGA)は初日の交渉で議題に盛り込まれましたが、損失被害の資金支援(グラスゴー対話)は、途上国からの強い要求があったにもかかわらず、今回の補助機関会合の主たる議題として取り上げられなかったことについても言及しました。

GGAはパリ協定第7条ですでに合意されてきた。にもかかわらず、どのように目標に向かって枠組を動かしていくかという重要な議論が未だになされていない。IPCCの第二作業部会の報告でも、適応にもっと注力すべきだという指摘があった。そして、今はもう損失と被害の時代になりつつある。途上国は、損失と被害に対応するための資金ファシリティを求めている。2025年以降の気候資金に関する新たな定量的な全体の⽬標(New Collective Quantified Goal on Climate Finance、NCQG)も、途上国にとっての優先事項だ

と、今回の補助機関会合での注目点を述べました。

Asian People Movement on Debt and Development のClaire Milandaは、求められる気候資金が十分に達していない一方、何十億ドルもの資金が化石燃料事業に使われている実態に触れ、2025年以降の気候資金に関する新たな定量的な全体の⽬標(NCQG)に関する議論で、具体的な額が提案されることを求めました。

Corporate AccountabilityのRachel Rose Jacsonも、理不尽なウクライナ戦争は、私たちが化石燃料中毒に陥っていることを示していると述べました。化石燃料によって引き起こされる気候変動によって、ナイジェリアやインドなど、気候変動にほとんど寄与していない人々やコミュニティが気候変動による被害を被っていること、そしてその被害はすでに日常茶飯事となり、多くの人々がなくなっていることにふれた上で、

気候変動に関する議論はもう26年も続いています。何年もの間、行動が先延ばしにされてきたことを、私たちはみてきました。もう話をしている場合ではなく、アクションを起こさないといけない時です。時間を無駄にしている場合ではありません。パリ協定の第6条2項および第6条4項は、私たちに求められている時間軸での温室効果ガス削減には役に立ちません。パリ協定の第6条8項に基づく、確実な温室効果ガス削減策や適応支援といった解決策が必要です

と、口だけで行動が伴わない実態を批判し、確実に温室効果ガスを削減する対策が必要であることを提示しました。

公平性の実現をーCOP27への期待

途上国の交渉官らも含めたイベントも開催されました。COP26の結果を振り返るとともに、COP27に求めることを発言しました。

途上国(G77+China)の気候資金に関するコーディネーターを担うZaheer Fakir氏は、現在の1000億ドルの長期資金が合意された背景や歴史を話したのち、

COP26では、年間1000億ドルの長期資金の動員に失敗したことについて、途上国はもっと怒りを示すべきだった。2025年以降の気候資金に関する新たな定量的な全体の⽬標(NCQG)についての議論が始まっているが、私たちは過去の1000億ドルの長期資金から学ぶ必要がある。つまり、資金の定義、会計方法について話し合うべきだ。1000億ドルの長期資金について話すとき、人によってこの動員額が異なる。それは、この年間1000億ドルの気候資金が決まった時にこの資金の定義を決めなかったからだ。

と、今後の議論に向け提言しました。

途上国同志グループ(LMDC)の第6条のスポークスパーソンを担うDiego Pacheco氏は、

グラスゴー気候合意には2つの問題点がある。一つは2050ネットゼロ、もう一つは、1.5度目標達成に関する文言だ。もちろん、1.5度目標を達成できなければ、気候危機の被害は深刻さを増すから、1.5度目標の達成は支持する。だが、その方法は、先進国にとって有利なものだ。2050年ネットゼロと設定し、発展途上国が先進国により依存せざるを得ない罠のような(市場メカニズム)制度を作り出すことで、先進国は気候危機のすべての負担を発展途上国に移している。この点こそ、私たちがグラスゴー気候合意を「グラスゴー植民地協定」だと呼ぶ理由だ。グラスゴー気候合意(での先進国と途上国の力関係)は、とてもアンバランスだ。今回の補助機関会合でも、私たちは適応に関する世界全体の目標(GGA)に関する議題を含めることを試みたが、うまくいかなかった。 適応に関する世界全体の目標の策定は簡単な作業ではない。でも簡単ではないからこそ、より多くの力を投入する必要がある。COP27では、バランスの取れた合意を求める。先進国は、少なくとも2030年までに確実な削減を行い、条約とPAの原則(Common But Differenated Responsibilities、共通だが再ある責任)を維持する必要がある。そして公平性を実現するならば、それは先進国は発展途上国のために炭素予算を残さなければならないはずだ。

インドの交渉を担うRicha Sharmaも、昨年のグラスゴー気候合意は緩和が中心となりすぎていると批判し、COP27での交渉は、適応策や損失と被害に関する議題が緩和策と同等に扱われるべきであることを指摘し、実効性のある対策や資金の拠出を求めました。

最後に、COP27のホスト国であるエジプトの大使Mohamed Nasr氏も発言しました。Mohamed氏は、近年の国際交渉では民間企業など関与するアクターが増えたこと、そして水問題、農業、ジェンダー問題など様々な課題にも包括的に立ち向かうことを強調しながら、COP27への意気込みを下記のように発言しました。

何をもってCOP27の成功というかは明確だ。バランスの取れ、実行力のある結果を伴う合意だ。そして、科学が私たちに伝えていることが優先されたものであるべきだ。

*サイドイベント “Developing country views on Road to COP 27”の様子はこちら

国際交渉の意義、先進国に住む私たちの役割とは

約2週間の補助機関会合では、正式な国際合意はありません。ですが、今回の補助機関会合は、COP27での合意に向けた勧告が作成される重要な場です。開催にあたっての記者会見やイベントにおける途上国の発言にあるように、今はもう温室効果ガスを減らすだけではなく、気候変動にどう適応していくか、これから多発するであろう損失と被害に対してどう備えるかを、形にしなくてはいけない時になっています。

記者会見の最後、Corporate AccountabilityのRachel Rose Jacsonが以下のような発言をしました。

私のようなグローバルノースの人々、メディアに伝えたいことがあります。私たちはこの交渉が辛いからといって、立ち去ることはできません。グローバルノースの人たちこそ、自分たちの政府にもっと訴えないといけません。私たちには、この交渉の会場で起こっている真実を先進国の人たちに伝えるメディアが必要です。多くの人が関心を持つ必要があります。

国際交渉の現場では、市民社会や途上国の声よりも先進国等の利益が反映されがちで、時に無力感を覚えます。さらに、約2週間の補助機関会合では、正式な国際合意はないため、注目度はあまり高くありません。ですが、彼女のこのメッセージによって、気候変動の国際交渉の場で、すでに被害を受ける人々の声が議論の場に届いているかということに、私たちが関心を持ち続けることの重要性を再認識しました。

私たち日本の市民は、すでに気候変動の被害に直面する人々とどのように連帯できるのか。それを考えるためにも、日本のより多くの人々に、すでに被害を受ける人々、途上国の人々の声を届ける活動を続けていきます。

(髙橋英恵、小野寺ゆうり)

【横須賀石炭訴訟報告 vol.13】ついに結審。判決は11月28日に。

本日、横須賀石炭火力訴訟の第13回期日が開廷されました。

本裁判は、石炭火力発電所を建設するにあたって、環境影響評価手続きが適切にされていないことを指摘し、本建設に係る環境影響評価の確定通知の取り消しを求める裁判です。

(裁判についてのより詳しい説明はこちら:横須賀石炭火力、提訴へ!日本4件目の気候変動訴訟。その背景とは?

今日をもって原告と被告の主張は終わり、結審となりました。判決前最後の審理であるということもあり、雨天にもかかわらず定員50名を超える約60名が会場に集まりました。

結審では、小島弁護士から今回の裁判の要点について、千葉弁護士からは横須賀石炭火力建設に係る環境アセスメントの瑕疵について、改めて提起されました。一方、被告からの陳述はありませんでした。

「気候保護に関する世論や議論が成熟していない」は、原告の訴えを退ける理由にならない

小島弁護士は、結審にあたり、次の5点についてお話ししました。

  1. 原告らの生命・健康・住居などの財産・食料への危険が差し迫っていること。危機は極めて深刻で重大な人権問題。
  2. 地球温暖化・気候変動による人権侵害を防止するためには、排出量の削減が決定的に重要である。
  3. 先進工業国それぞれが、パリ協定及び1.5度特別報告書で求められる排出削減措置を尽くすことが必要であり、それが世界各地の裁判所の共通認識ともなっている。
  4. 司法が自らの責任を果たすことが求められている。
  5. 気候保護に関する社会情勢や議論がまだ成熟していないとの理由で、司法による法的保護を否定するのは3つの意味で間違っている。

1点目について、指摘にあたっては、今年4月26日の神戸石炭火力訴訟の大阪高等裁判所の判決で「もはや地球温暖化対策は国境を超えて人類の喫緊の課題であることは疑いない(中略)」と、気候危機が裁判所でも認められたことを引用し、異常気象や漁業の被害を強調しました。そのほか、昨年ヨーロッパ各地を襲った山火事や、カナダでの49度という異常気温、日本での熱中症被害が頻発し毎年1000人が亡くなるほどになっていること、洪水などの気象災害によって600名が命を落とし3万件もの住居が流されたことに触れました。そのほか、原告尋問でも証言があったように、原告の居住地域である横須賀市内でも土砂崩れが起きたこと、海藻が育たず海の生態系が急速に失われていること、そしてその結果として漁業という生計手段が成り立たなくなりつつあることを再確認しました。

排出量の削減が決定的に重要であるという2点目については、昨今のIPCCの報告を引用し、人間活動によるCO2排出が地球温暖化を引き起こしており、排出量をゼロにしていくことは不可欠であることを訴えました。国際的にも、具体例として、世界エネルギー機関(IEA)は、「2021年以降のCCS(大気中のCO2を回収して貯留する技術)の備えない石炭火力の建設中止」「2030年までに先進国のCCSを備えない石炭火力の廃止」などが示されています。しかし、CCSについては、日本では適切に貯留できる場所が陸域にないことが経済産業省の報告書の中でされており、現在は海域での貯留場所も探索中で確実なものとはいえず、吸収量の増加に頼る対策は極めて困難であることを強調しました(注1)。

(注1)報告会では、北海道苫小牧市におけるCCS実証実験では3年間で30万トンのCO2貯留に成功した一方、横須賀石炭火力発電所が稼働した場合、年間726万トンのCO2が排出されることを比較されました。

次に、近年の世界各地での気候訴訟の判決事例を挙げながら、先進国としての責任、そして裁判所に求められる役割について指摘しました。2015年のハーグ地方裁判所での判決では、「少ない排出量だからやらなくてもいいというのでは、温室効果ガス削減を達成できない。人為的な温室効果ガスの排出は、どんな小さな量でも待機中のCO2濃度の上昇に寄与し、気候変動につながることが立証されている」と判断され、2019年のオランダ最高裁判所の判決でも踏襲されているそうです。また、2020年7月のアイルランドでの裁判、2020年11月のフランスでの裁判、そして2021年3月のドイツでも同様な判断がなされたことも紹介し、「世界的な共同体として、それぞれがちゃんとした責務を果たさなくてはならない」ということが、世界各地の共通認識であることを示しました。

最後の「気候保護に関する社会情勢や議論がまだ成熟していないとの理由で、司法による法的保護を否定するのは3つの意味で間違っている」という点は、前述の神戸高裁判決で、原告の訴えを退けた理由となっています。しかし、今回の裁判では、この点について、1)少数派の権利を保護するという人権保護の理念にそぐわないこと、2)気候変動の被害は全ての人に等しく同じタイミングで及ぶものではなくすでに被害を被っている人々がいること、そして、3)政治参加の権利を持たない未成年など将来世代がより深刻に気候変動による人権侵害を被ることを挙げ、反論しました。

再度提示されるアセスの瑕疵、被告の反論書面への指摘

千葉弁護士からは、「適切な複数案検討がされなかったこと」「環境アセスメントの簡略化」の2点に絞って、再度、横須賀石炭火力発電所建設に係る環境アセスメントの問題点について強調されました。

また、最後に、小島弁護士から、被告の準備書面への指摘がありました。被告の「今回の環境影響評価は『局長級取りまとめ(注2)』にそって行なっている」との主張について、もしそれに基づけば、事業審査の段階でパブリックコメントや専門家による審議が必要となるものの、それらが一切なされていないことを指摘し、仮に今回のアセスメントが『局長級取りまとめ』に沿ったアセスメントだったとしても、手続きに瑕疵があることを取り上げました。

(注2)『局長級取りまとめ』とは、2015年に経済産業省と環境省の局長が、東電が火力発電の入札をする際の扱いをまとめた文書。この文書をもって新規の石炭火力も検討することとされた。従って、電気事業法46-17-1(環境要件)として使い、確定通知に該当する。具体的には、電気事業者が経済産業省に申請するが、行政手続法上では、申請においては、審査基準をもうけ、パブリックコメントなどを実施しなくてはいけない。

判決は11月28日。公正な判断は下されるか

次回は、約半年後の11月28日(月)14:00〜、東京地方裁判所103号法廷です。いよいよ判決になります。

報告会では、判決まで時間があくことについて、小島弁護士は「他の石炭火力訴訟の結果を単に踏襲するのではなく、今までの口頭言論や原告尋問の内容などを踏まえて判断するゆえではないか」と述べました。

また、神戸石炭訴訟にも関わる浅岡弁護士も、「神戸と横須賀の裁判の違うところは、環境アセスメントの瑕疵がより明確であること。ここが横須賀裁判の特徴になっている」と、お話しされました。

先月末に開催されたG7環境・気候・エネルギー会合では、「2035年までに電力部門の大部分を脱炭素化する」ことが合意されました。COP26の合意文書にも書かれた「排出削減対策がなされていない石炭火力発電の削減」をより明確化した形になります。さらに、横須賀市内では4月24日と6月4日に気候マーチが開催され、のべ300人以上が参加し、この横須賀石炭火力の建設中止を訴え、少しずつですが着実に、横須賀市民の中でこの石炭火力建設の問題が共有されつつあります。

一方、日本政府は明確な脱石炭政策を打ち出すどころか、水素やアンモニア混焼に対し、グリーンイノベーション基金を通じて支援しています。燃やしてもCO2が出ないことから「ゼロエミッション燃料」と呼ばれる水素・アンモニアですが、現状、化石燃料で水素・アンモニアを生産することが公表されており、生産の過程でも温室効果ガスが排出されてしまいます。日本は、削減につながらない技術で石炭火力を延命するのではなく、今こそ、再生可能エネルギー社会へと転換すべきです。

日本の脱石炭につながるよう、FoE Japanは引き続き、横須賀石炭火力訴訟に関わる原告や気候変動対策の抜本的な強化を求める市民とともに活動していきます。

横須賀石炭訴訟について:https://yokosukaclimatecase.jp/

過去の訴訟報告ブログはこちら

(髙橋英恵)

【COP26 vol.10】グラスゴー会議閉幕 – バランスを欠く合意に途上国は失望

交渉2週目の最終日。気候正義を求める市民たち

10月31日より開催されてきた第26回国連気候変動枠組条約締結国会議(COP26)は、1日の延期を経て、11月13日夜に閉幕しました。

閉会式では、議長Alok Sharma氏や国連気候枠組条約事務局長Patricia Espinoza氏が、COP24からの宿題となっていたパリ協定第6条、第4条、第13条の議論をまとめられたことを理由に「COP26は成功した」と発言する一方、後発開発国やアフリカ、島嶼国は、緩和目標強化の作業計画がグラスゴーでの合意(Glasgow Climate Pact) に盛り込まれたことは歓迎するものの、今回強く求めていた適応や損失と被害に対応するための資金提供を先進国がほぼ拒絶し、バランスを欠く合意であるとして失望の意も示しました。

また、決定文書に記載された石炭火力の段階的廃止に関する文言(para20)についても、インド等の反対があり、閉会式前のCOP決定文書案は、“Phase out(段階的廃止)”が”Phase down(段階的削減)”へと、文言が弱められた形となりました。パリ協定の1.5℃目標達成のためには先進国は2030年までに、その他の国も2040年には石炭火力発電を全廃する必要がありますが、ただでさえ弱かった文言がさらに弱くなったことは残念です。しかし、気候変動枠組条約の決定で、化石燃料対策が直接取り上げたことはかつてなく、文言が弱められたからと言って廃止の必要性が国際的に理解され、実際に各国が脱石炭に向けて動き出していることには変わりません。先進国が率先して石炭火力発電を廃止し、途上国のジャスト・トランジションを支援する必要があります。またその他の化石燃料に関しても、公平性に配慮した形でフェーズアウトを進めていく必要があります。

FoE Internationalの気候正義・エネルギープログラムのSara Shawは、今回の結果について、下記のように述べています

“今回の結果は、気候正義を求める市民団体が望んだ結果とは程遠く、炭素市場取引という形で、途上国の土地をオフセットのために使うことで、先進国に継続的な排出を許すものなりました。英国政府とその同盟国は、交渉をまとめあげた自分たちを褒め称えていますが、炭素市場については、合意が全くない方がましでした。

これはスキャンダルに他なりません。具体的な行動策を伴わずに、ただ単に1.5℃目標を言っているだけでは無意味です。COP26は、すでに気候危機にありながら、エネルギーシステムの変革や気候変動への適応策の実行、また、すでに起きている損失と被害に対応するための資金の乏しいグローバルサウスを裏切ったものとして記憶されるでしょう。これが最終的に炭素市場での取引が強制された瞬間であったことは今更驚くことではありません。炭素市場は、排出量の削減に消極的な先進国のためのものです。

多くのグローバルサウスの国々は、今回の会合に参加したり彼らの声を届けたりするうえで困難を伴った一方、化石燃料企業の存在感は大きいものでした。

今回の交渉結果は、世界全体の温室効果ガスの排出量を増加させてしまうことに加え、今世紀半ばまでに温室効果ガスを”ネットゼロ”にするといった弱いコミットメントや、途上国の土地での大規模植林をもたらす聞こえのよい自然に基づく解決策は、実際には先進国自らの排出を相殺するためであり、途上国や先住民族の土地収奪を加速させてしまいます。

気候正義の実現を求め、COP26期間中に開催された気候マーチに参加した15万人以上の市民は、何が本当の気候変動への解決策か知っています。化石燃料に依存しない社会への公正な移行、そして先進国から途上国への気候変動対策のための資金を供与することです。

残念なことに、豊かな国々は「逃亡条項」を選択してしまったものといえます。”

今回の決定文書には、”Climate Jusitce(気候正義)”という言葉が記載されました。気候変動への影響をより深刻に受ける国々や人々への配慮が会議期間中の首脳サミットやイベントでのスピーチに散りばめられていましたが、いずれも中身のない言葉に過ぎず、会議場内での交渉では先進国が団結して、すでに厳しい気候変動の影響を受けている開発途上国の声を断固として拒絶し続けました。決定文書の内容は、公平性の原則やシステムチェンジからは程遠く、歴史的累積排出量の責任を負う先進国の大量排出を今後も許し、途上国に排出責任の肩代わりを求め、かつ彼らが必要とする支援を拒み続けるものです。

議長国英国の下で、先進国は気候植民地主義的な枠組みを推進し、既存の権益と世界での優位の維持を優先しています。決定文書に盛り込まれた言葉とは裏腹に、パリ協定の1.5℃目標の実現を危うくするものでもあります。ですが、早急で野心的な行動の必要性は変わらないのです。FoEグループは引き続き、Climate Justiceの真の実現に向けて活動していきます。

(小野寺ゆうり、高橋英恵、深草亜悠美)

【COP26 vol.9】グラスゴー会合終盤〜COP26のポイントや課題〜

 イギリス・グラスゴーで開かれている気候変動枠組条約締約国会合(COP26)は11月12日に閉幕を予定しています。現地時間19時現在、まだ会議は終了していませんが、この二週間続いているグラスゴー会合のポイントや課題についてまとめます。

公平な参加

 今回のCOPは、これまでの歴史の中でも最も多くの参加者が登録されていますが、途上国のメンバーにとって参加のハードルはとても高く、参加の機会が均等に確保されたとは到底言えないCOPになってしまいました。ワクチンが世界的に公平に行き届いておらず、英国へのVISA申請や高騰する渡航にかかるコストが、途上国のメンバーの参加を阻みました。気候変動の影響を最も強く受ける途上国の市民の代表が不在のCOPになったといえます。FoEグループの参加も、残念ながら開催地である英国やヨーロッパのFoEメンバーの参加が多く、上記の理由等により、多様性を確保することは困難でした。

 またコーポレート・アカウンタビリティやグローバル・ウィットネスなどのNGOが調査したところ、少なくとも503人の化石燃料ロビーストがCOPに参加していることがわかっています。これはどこの国の政府代表団よりも大きな数字です(政府代表団メンバーとして最も多くの数が登録されているのはブラジル政府で479人)。途上国の人々がCOPに参加できない一方で、化石燃料産業に利害関係を持つ人間がたくさんCOPに参加しているのです。

 また会場には原子力産業のロビー団体も出展し、サイドイベントなどを行い原発を宣伝していました。

炭素市場、「ネットゼロ」、「自然に基づいた解決策(NbS)」 – 危険な目眩し

炭素市場

 FoEグループは温室効果ガスの削減に繋がらない炭素市場に反対の意を示してきました。今回のグラスゴー会議でも炭素市場に関して交渉が継続されていますが、そもそも炭素市場は気候変動対策にはならず、今の交渉状況をみると、むしろ炭素市場はより多くの排出を促してしまうことが懸念されます。

 例えば、11日の時点で、EUは京都議定書下の炭素市場であるクリーン開発メカニズム(CDM)の下で生成されたクレジットをパリ協定の下でも使えるようにする方向に、立場を和らげています。CDM下でできたクレジットの移管が許されてしまえば、取引のために使用できるクレジットは、約300トン〜約3400トンになると計算されています

Net Zero ネットゼロの欺瞞

 グラスゴー会合のCOP決定文書案CMA決定文書案には、「今世紀半ばまでにネットゼロを目指す」と書き込まれまれています。これは、排出量を技術至上主義的な考え方で吸収量を差し引きすることで相殺することを想定しており、相殺をあてにして裕福な国や大企業にこの先何十年にもわたって温室効果ガスの排出を続けることを許すことにつながります

 また、エネルギーシステムの公正な移行のための具体的な計画や、移行をすすめるための新しい公的資金支援が欠落しています。石炭からの脱却や化石燃料支援への公的資金の中止がを宣言するだけでは不十分です(化石燃料に関するこれらの文言は12日朝現在のドラフトには記載されている)。いずれにせよ、これは最終的な決定文書からは削除される可能性もまだあります。

 

Nature based solutions 自然に基づく解決策

 10日に出された決定文書案には、「自然に基づく解決策(Nature based solutions)」という言葉が複数回出てきますが12日の朝に発表されたものからは消えていました。ですが文言自体は消えていてもそういった考え方は文書の中に残っています。自然に基づく解決策という言葉は聞こえは良いですが、実態は土地収奪や食料安全保障の不安定化、そしてすでに気候変動の影響を受けている途上国の人々への人権侵害を引き起こしかねないものです

 大規模な排出企業や先進国の排出量を吸収するのに十分な土地や森はありません。

 企業や国は、オフセットや技術に頼ることで排出量を相殺し、この先何十年も今まで通りの事業を続けるのではなく、化石燃料からの早急な脱却を進めていく必要があります。

「アナウンスメント」だけでは1.5℃目標は達成できない

 今回のCOPでは議長国等の主導により、交渉の外で、さまざまな宣言や取り組みが発表されました。

 そもそも、気候変動に対する歴史的責任の大きな先進国は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減し、途上国に対して負っている気候・環境負債を返済しなくてはいけません。

 2030年までに排出を半減し、2050にはネットゼロにする、というのはグローバルなゴールです。「共通だが差異ある責任(Common but differenciated responsibilities, CBDR)」の原則に基づき、先進国が先んじて行動する必要があります。しかし今回の交渉でも、差異ある責任の議論は主に先進国によってブロックされていました。

 今回のCOPでは、これまでのブログでもお伝えした通りさまざまな「宣言」が飛び出したCOPでした。これらは各国の自主的な取り組みを表明しているだけで、国連の交渉の外で行われています。

 もちろんこういった宣言も重要です。これまで、石炭については英国等中心に廃止を求める国際的な流れが形成されており、「脱石炭」の運気を盛り上げ、実際に加盟する各国は脱石炭を進めてきました。しかし、それぞれの宣言の中身を見ても、1.5℃目標や、気候正義を達成するには全く不十分な内容です。

 こういった「交渉の外」の取り組みに加え、先進国は途上国への支援を交渉の中で表明し、NDCの目標を引き上げ、まずは国内での削減を確実に進めていくことが重要です。

 気候資金についても重要です。コペンハーゲン会議(COP15)で約束された年間1000万ドルの気候資金動員目標はまったくもって達成されていません。公的資金による供与が望まれるところ、民間資金の動員が強調されていることも懸念されます。

英国政府のダブルスタンダード?

 英国政府は一見野心的な取り組みを次々と発表しているように見えますが、実際国外内での化石燃料開発の手を緩めておらず、環境団体などから批判の声が上がっているのも事実です。

 実際英国の政府系銀行はモザンビークにおける巨大なガス開発に支援を続けており、国内でもカンボ石油開発事業やカンブリアにおける新規炭鉱の開発を続けようとしています。.

解決策は草の根から〜市民の力、真の解決策、システムチェンジ

 この数年間、私たちは、政府に対し気候危機をはじめとした様々に関連する危機に対応するよう要求する市民による大きな運動、特に若者による運動を目にしてきました。COP26期間中の気候マーチは、英国内で過去最大の規模のマーチとなりました。風と雨が強かったにもかかわらず、20万人以上が参加しました。主催者によれば、グラスゴー以外の都市でも、世界中で約300のデモが行われ、英国だけでも100を超えるデモが行われたとのことです。

 人々はすでに草の根レベルで変化をもたらし、食料、エネルギー、経済システムを変革するための真の解決策を追求しています。コミュニティは、クリーンで持続可能な再生可能エネルギーを作り始めています。市民は食糧主権と農民の自然と調和したアグロエコロジーを追求することにより、産業・企業主導の農業に挑戦しています。

 先住民族と地域コミュニティこそ自然を守ってくれています。私たちは彼らの権利を守らなければなりません。

 気候危機だけでなく、地球は複数の、互いに関係しあっている社会的、政治的、経済的な危機に直面しています。この危機の中心にあるのは、利益を追求することのみを目的とした、持続不可能な経済システムです。エネルギー、食料、経済の根本的なシステムチェンジによってのみ、気候変動の大惨事や世界の平均気温の上昇を1.5度までにを防ぐことができます。

交渉は続く…

現地時間12日18時の時点でまだ交渉は続いています。私たちが各国政府に求めるのは、化石燃料に依存した社会のあり方から持続可能な社会に転換していくための計画とその実行です。追加的な排出を許してしまう炭素市場のような危険な解決策が今回の会合の場で認められてしまわないよう、今後も市民社会として監視や提言を続けていきます。

(高橋英恵・深草亜悠美)

【COP26 vol.5】COP26グラスゴー会合、2週目に突入。“外向け”の宣言と交渉の実態の差

10月31日から始まったCOP26グラスゴー会合が2週目を迎えました。第一週目はワールドリーダーズサミットをはじめ、様々な議長国主催イベントでの宣言等がメディアを賑わせましたが、途上国が重要視している気候資金、損失と被害に関する交渉などについては、ほとんど進捗が見られませんでした。

閣僚級会合で合意が待たれる気候資金

第一週の議長国によるワールドリーダーズサミットや、ファイナンスデーでは、途上国への資金支援の増額や先進国が脱炭素に向けた資金動員をアナウンスしましたが、実際の交渉では、長期資金や適応資金、損失と被害に対応するための資金に関する交渉はほとんど進んでいません。

例えば、途上国は、2025年まで提供することが合意されている年間1000億ドルの資金(長期資金)について、2025年以降の資金提供について議論を始めたいと考えていますが、先進国はその議論を拒んでおり、実際に交渉されていることと、先進国政府が交渉の外で言っていることとの間に大きな差があります。

先送りにされる損失と被害の交渉

世界的に気候変動の被害が深刻化する中、コロナウイルスのパンデミックもあり、気候変動による損失と被害に対する具体的な支援も、途上国にとって喫緊の議題です。

損失と被害に関する制度については、2013年のCOP19で設立されたワルシャワ国際メカニズムがありますが、先進国の圧力によって、極めて機能が限定されたものになっています。また、2019年に開催された前回のCOP25では、損失と被害に関するサンティアゴ・ネットワークが設立されました。途上国としては、今回のCOP26で、サンティアゴネットワークをワルシャワ国際メカニズムとどのように差別化するか、そしてこのネットワークを本格的に稼働させていくために、具体的に損失と被害を最小化したり避けるための具体的な技術支援の内容や、支援の受け方、対策のための資金提供の仕組みなどを話し合いたいと考えていますが、それに対してもアメリカが中心となって議論が前進することを阻んでいます。

先進国のニーズ優先で進んだ第一週の交渉。二週目は?

気候変動による影響を特に大きく受ける途上国グループは、気候変動への適応策に対する支援や、損失と被害に対する具体的な支援や資金に関する合意がない限り、今回のグラスゴー会議は成功したといえないと、本日開かれたストックテイク(各会議体の進捗確認をするための会合)にて発言し、同様のコメントが島嶼国グループや後発開発国グループの国からも相次ぎました。気候資金に関する交渉は閣僚級会合に引き継がれ、適応策や損失と被害に関する交渉は、一部の議題を引き続き交渉官による議論を行った後、閣僚級会合に引き継がれる予定です。

交渉と並行して行われている議長イベント

今回のグラスゴー会合では、議長国がそれぞれの日にテーマを設定しています。11月1-2日に開催されたワールドリーダーズサミットでは、120カ国以上の首相たちが参加し、NDCの引き上げなどの宣言がありました。日本は、岸田首相が600億ドルの気候資金に加え、現在足りていない分を補うため、新たに5年間で最大100億ドルを追加することを述べたほか、アジアの途上国において水素やアンモニアといったゼロエミッション火力を推進するため1億ドル規模の支援を展開することをスピーチで述べました。しかし、ゼロエミ火力は石炭火力を延命させるためのものでしかありません。

それ以外にも、ワールドリーダーズサミットでは、生態系保全のために2030年までに森林保全を推進するGlasgow’s Leaders’ Declaration on Forest and Land Useに133カ国が賛同し、9月にEUと米国が公表した二酸化炭素に次いで気候変動に影響があるメタンを2030年までに2020年比30%削減を目指すMethane emission reduction pledgeにもこのワールドリーダーズサミットで参加表明する国が相次ぐなど、様々なイニシアチブが打ち出されました。

エネルギーデー(Energy Day)として定められた11月4日には、議長国が脱石炭に向けた世界規模の公正な移行に関するイニシアチブ “GLOBAL COAL TO CLEAN POWER TRANSITION STATEMENT” や、2022年以降の化石燃料事業への公的支援を停止するイニシアチブ “STATEMENT ON INTERNATIONAL PUBLIC SUPPORT FOR THE CLEAN ENERGY TRANSITION“の発表など、脱石炭だけでなく脱化石燃料を促す動きがありました。FoE Japanも、このエネルギーデーにあわせ、日本の脱石炭を求めるアクションを他の国のNGOとともに会場付近で行いました。

上記のように多くの宣言が出された第一週ですが、いずれの宣言も公式な交渉外での宣言であり、それぞれの宣言についてどのように進捗を図るのかが不明瞭であるという問題点があります。これらが宣言だけに留まらず、気候変動対策に資する内容が伴うものとなるよう今後の働きかけが重要となってきます。

通常と異なる形で議論されるCover Decision

また、今回のグラスゴー会合では、COP(UNFCCCの締約国の会議)、CMP(京都議定書締約国の会議)、CMA(パリ協定締約国の会議)全てにかかる文書(Cover Desision)が議長国や各交渉グループによって検討されています。通常は、COP、CMP、CMAの合意内容に基づき文案が作成されますが、今回は1.5度目標の明示やNDCの継続的な引き上げ、ネットゼロに向けた取り組みの強化など、実際の議題にはない文言が、合意文書のたたき台にあがっています。一部の国は、会合の議題として取り上げられていないことが書かれていることから同文書の法的拘束力を疑問視しています。また、本日開催されたストックテイクにおいても、途上国グループや市民社会が同文書の決定プロセスが公正でないことを指摘しました。さらに、現在検討されている文案の中には、先進国のネットゼロを達成するための要素(自然に基づく解決策の活用など)など、途上国や市民社会が問題視するような内容が盛り込まれており、決して途上国の声が反映されたものであるとはいえません。このCover Decisionについても、今後どのような内容になるのか、どのような位置付けになるのかを注視していかなくてはなりません。

交渉結果に気候正義を求める市民の声を

先進国が歴史的責任に鑑み、確実な方法で自国の排出削減をし、途上国へもしっかりとした支援を行っていくことが、気候正義に基づいた1.5度目標達成への道のりです。

土曜日に行われた世界気候マーチには、10万人以上が参加しました。グラスゴー以外でも、世界各地で気候正義を求める市民の声があげられています。気候変動対策を具体的な行動にうつすのは私たち市民です。

最も被害を受けている人々が不在の中での開催であっても、気候正義の実現を求める声が交渉に反映されるよう引き続き、会場内外で市民社会の声を高めていきます。

(高橋英恵、小野寺ゆうり)

【COP26 vol.2】「ネットゼロ目標ではなく具体的な行動を」開幕にあたってのFoE International記者会見

2週間にわたるCOPの開幕にあたり、FoE InternationalはCOP会場内で記者会見を行い、気候正義の観点から今回のCOPに期待することを語りました。

気候変動交渉を長年追ってきたFoE マレーシアのMeena Ramanは、

「私たちにとっての主要論点は2050年に向けたネットゼロ目標ではありません。特に先進国のネットゼロ宣言は論点ではありません。目標を掲げるには(2050年は)遅すぎで、小さすぎます。先進国が掲げるべき目標は、「真のゼロ」であるべきで、この目標を掲げるとしても、すでに遅すぎるくらいです」

と、先進国に向けたメッセージを発しました。

今回コロナによる入国制限等の関係で現地での参加が叶わなかったメンバーもいます。そのメンバーの1人であり、モザンビーク在住のFoE International気候正義プログラムのコーディネーターの1人であるDipti Bhatnagar は、この記者会見に向け事前にビデオレターを送り、その中で、新たな気候変動対策が先進国が途上国の土地や資源を搾取する構造を残していることを指摘しました。

「権力のある国々は、歴史的責任や気候負債のことを考えらたがらず、その代わりに炭素市場の話ばかりしています。彼らは「我々はどこにでも炭素を貯留できる」と言っていますが、でも実際具体的にはどこなのでしょうか?それは私の住む国のような途上国に埋めることを想定しているのです」

また、FoE EWNI(イングランド・ウェールズ・北アイルランド)のRachel Kennerleyは、

「英国は、自分が他の国に求めていることを自分の国で実行していません。国やコミュニティを越えて、人々は多くの化石燃料事業に反対しています。政府はいまだに何十億ドルもの資金をモザンビークでの天然ガス開発に費やし、気候危機や人権侵害を加速させています」

と、議長国の矛盾を指摘しました。

最後に、FoE ScotlandのMary Churchは、

「たとえ政治家が行動していなくても、過去にないほど多様で多くの市民が気候危機を防ぐために行動を起こしています。気候変動を止めるために活動する市民たちによって、利益ではなく人々の命が優先される向けたシステムチェンジは可能だと信じています」

と、今回のCOPへの期待を述べました。

「ネットゼロ目標ではなく具体的な行動を」

「ネットゼロ」や「カーボンニュートラル」という新しい言葉が使われ始めても、化石燃料を使用し続け、先進国が途上国の資源を自らの利益のために搾取する構造は変わなければ、気候危機は解決できません。

見栄えの良い「ネットゼロ」宣言や野心の引き上げといった口約束ではなく、化石燃料の使用をやめること、利益よりも人々の命を優先する紗j界に向けた具体的な行動が、今求められています。

(高橋英恵、深草亜悠美)

▼FoE Internationalの開会記者会見は、こちらからご覧いただけます。

https://unfccc-cop26.streamworld.de/webcast/friends-of-the-earth-international

▼COP26に関するブログはこちら

2021年10月31日「COP26開幕。2年ぶりに開催される国連気候変動会議の行方と、市民の声

【COP26 vol.1】COP26開幕。2年ぶりに開催される国連気候変動会議の行方と、市民の声

10月31日から11月12日にかけ、英国グラスゴーで第26回国連気候変動枠組条約締結国会議(COP26)が開催されます。コロナ禍により一年延期されたCOP26ですが、対面での開催となります。

 新型コロナウイルスの流行により私たちの生活は一変した一方、私たちは深刻な気候危機にも直面しています。2021年、熱波は北米に深刻な被害をもたらしました。カナダでは49.6度を記録し、これまでの最高記録を5度も上回るものでした。世界各地で深刻な山火事被害が発生しています。ドイツの洪水被害も記憶に新しいでしょう。インドや東南アジアの国々でも大規模災害が多発しています。日本も毎年のように豪雨災害に見舞われています。

 世界の平均気温はすでに1℃以上上昇しています。今年発表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書の第一作業部会のレポートは、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と断言しています。気温の上昇を1.5℃以下に抑えるためには、世界全体の人為的なCO2の排出量を2030年までに約45%削減、2050年頃までにはゼロにする必要がありますが、現在、各国が表明している削減目標をすべて達成したとしても、このままでは21世紀末までに約3℃気温が上昇してしまいます。

私たちはCOP26に何を期待できるのか、何が論点になっているのか、整理したいと思います。

開催国の意気込みと実態の乖離ー過去のCOPの中で最も不公平な条件での開催ー

COP26議長国の英国は、各国に気候変動対策目標の引き上げを求めてきました。また、自国としても気候変動対策への資金を拠出し、今回のCOP26においても、1・2日目は各国首相に参加を呼びかけるWorld Leader’s Summitが予定され各国の貢献を期待している様子が伺えます。また各日にテーマを設定し、それぞれのテーマへの議論や取り組みを強めようとしています。

一方で、コロナ禍の影響により、途上国からの参加が非常に困難な状況となっています。開催日に近づくにつれ規制緩和が行われたり、COP参加者に対する支援パッケージなども用意されましたが、ワクチン接種が進んでいない途上国のメンバーには依然高いハードルがあり、コロナ対策のための追加費用も高額になるためそれぞれの国からの入国条件には差があり、参加の機会が平等に確保されているとは全く言えない状況です。FoEグループはじめ、途上国のClimate Justiceをもとめるグループの多くのメンバーが、新型コロナウイルスの状況や資金不足等の観点から参加を見送っています。

そのような問題もあるなかで開催される今回のグラスゴー会合ですが、注目される論点は、主に下記の3点です。2、3点めについては、次回以降のブログで扱います。

  1. 野心の強化
    1. 各国の2030年目標(NDC)の引き上げ
    2. 長期目標の強化
  2. パリ協定ルールブック交渉で未解決の議題の合意
    1. NDCの共通時間枠(第4条)
    2. 協力的アプローチ(第6条)
    3. 透明性(第13条)
  3. 途上国への気候資金など、損失と被害への支援強化

気候変動目標の強化を

 パリ協定に基づき、各国はNDCを国連に提出することになっており、NDCには温室効果ガスの削減目標や、適応などについて書かれています。

 COP開幕に先立つ10月25日、これまで提出されているNDCの統合報告書の最新版が発表されました。192カ国のうち、143カ国は削減目標などが更新されたものを国連に提出していますが、それでもこのままの計画でいけば、2030年には2010年比で16%排出が増加することになってしまい、今世紀後半までに2.7℃の気温上昇が予測されます。

出典:https://unfccc.int/news/updated-ndc-synthesis-report-worrying-trends-confirmed

 つまり、各国が一刻も早く削減目標を強化すること、特に歴史的に排出量の多い先進国が削減目標を大幅に強化し、今すぐそれを実行していく必要があるのです。

 また気候変動対策のための資金が少ない途上国は、資金支援を前提としたNDCを提出している国も多く、途上国のNDC達成のためには、先進国による支援の重要性も強調されました。COPにおいても気候資金は重要なアジェンダです。気候資金の議論も注目されます。

排出削減=化石燃料は地中に!

 削減強化に何よりも重要なのは化石燃料をこれ以上燃やないことです。ほとんどの温室効果ガスはエネルギー由来であり、エネルギーの中でも電力部門については、電力源の中でもっとも温室効果ガスを排出する石炭火力発電を廃止していこうという動きがここ数年活発です。

 議長国英国は2016年にPowerrng Past Coal Allianceをカナダと立ち上げ、脱石炭政策を推進してきました。2024年までに石炭火力発電を廃止する方針を掲げており、禁煙発電に占める石炭火力の割合は近年2%ほどにまで減少しています(10/31現在は0%)。

 今回のCOPでも英国による脱石炭への強いメッセージがすでに発信されています。こういった個別のエネルギー等についてはCOPの議題ではありませんが、11月4日は議長によってEnergy Day (エネルギーの日)に設定されており、どのような動きがあるのか注目されます。

  また、石炭火力だけではなく、石油・ガスについても新たな動きが見られます。コスタリカとデンマークは、石油・ガスの生産を廃止していくBeyond Oil and Gas Allianceを立ち上げ、COPで正式に発足を予定しています(2週目)。また議長国英国とEIBも石油・ガスへの公的支援を停止するイニチアチブを発表予定です(1週目)。

 一方、日本は今も石炭火力発電所を国内外で建設し続けています。国外については原則輸出事業に公的な支援を行わないとしていますが、例外を認め続けています。国内については廃止の計画すらなく、今も10基が計画・建設段階です。日本はようやく、NDCを更新し26%から46%削減(2030年、2013年比)と目標を引き上げましたが、まだまだ不十分です。

FoEグループのメッセージシステムチェンジ、ジャスト・トランジション、真の解決策

 気候危機を超えて、私たちの地球はさまざまな危機に直面しています。社会的、政治的、経済的な危機の中心には持続可能ではない成長と利益を追い求める経済システムが存在します。

 私たちの社会、エネルギーのあり方、経済のあり方、食料システムのあり方、そういったものを抜本的に変えていくことでしか、今の危機を乗り越えることはできません。

 この数年、若者による運動、世界各地の草の根の運動を通じ、多くの人々が各国政府に対し気候危機対策、そしてそれに関連するさまざまな危機への対策を求めてきました。

 これ以上森林や生態系を破壊せずに守っていくこと、石炭や原発は即時、そしてその他の化石燃料についても段階的に廃止していく計画を策定していくこと、それらが重要な解決策となります。そして、世界規模でこのような脱化石燃料を促進していくために、気候変動への大きな責任を持つ先進国は、途上国への資金提供や技術支援を行なっていかなくてはなりません。

 FoEグループは今回のCOPでも気候正義を求めて、さまざまなアクションや提言を行っていく予定です。

▼COP26に関するHPはこちら

https://unfccc.int/conference/glasgow-climate-change-conference-october-november-2021

(深草亜悠美、高橋英恵)

【第5回スクール・オブ・サステナビリティ2報告】わたしが住みたい理想の街のあり方

こんにちは!FoEインターンの佐藤です!

スクール企画最終回の第5回は、環境分野の通訳・ライターとしてご活躍されている熊崎実佳さんと、パッシブハウスジャパン代表理事の森みわさんをゲストにお迎えしました。

車が走らない地域づくり

まずは、ドイツの環境先進都市「フライブルク」における車のない社会作りについて、熊崎さんからお話を聞きました。

みなさんは、そもそも「車」の必要性について考えたことはありますか?

車は移動も簡単、そしてラクに荷物も運べることがメリットですが、デメリットには何が挙げられるでしょう。

私自身、デメリットというと「車=二酸化炭素排出!」の印象が強いのですが、それだけでなく実は車はものすごく場所を占拠する乗り物。車が道路を塞ぐだけではなく、車を止めるための駐車場自体も実は大きな面積を占めています。

その大きな面積を自転車用道路や、トラム(路面電車)の通路に当てたら一体街はどう変わるのでしょうか?

これを実現したのがドイツのフライブルクです。

フライブルクでは、「車から脱却した社会」を目指して、代わりに公共交通・自転車・徒歩を中心とした生活が営めるように地域がデザインされています。

フライブルクの交通政策としては、路面電車と自転車優先道路が張り巡らされており、そういった乗り物では移動がカバーできない地域には加えてバスも走っています。また、レンタル自転車の利用も盛んで、公共機関には乗り放題の定期券も作られているのです。このように、車に頼らない交通網が普及しているため、車なしでの日常生活も豊かで充実したものとなります。

そして、車なしで移動するのが理想ですが、そうはいかない人には「カーシェアリング」もよく利用されています。一家に車一台という広まった価値観から離れ、「そもそも車は本当に必要なのか」「車のない地域は具体的にどんな姿をしているのか」というような疑問に向き合い、解決策を生み出していったのがフライブルクです。

フライブルクのなかでも特に自動車を減らす取り組みに尽力したのが「ヴォーバン地区」です。

ここは、まず地区全体を袋小路にして通過交通(目的があって寄ったのではなく、たまたま通りかかった車の量)を無くすことで、交通量の削減が図られています。

そして、駐車場を自宅に併設する代わりに、共同の立体駐車場に移します。そうすることで自動車に乗るまでの移動が増えて必要なときに素早く乗れるという自動車の魅力が失われることで、それならトラムを利用し目的地の都市まで向かう方が効率が良いと考える人が増えました。

車の量を減らすことは、道路が誰もが使える空間に変わるということ。その分、路上に子どもが遊べるスペースが確保でき、これまでにない場所の使い方も生まれてくるでしょう。

また、徒歩や自転車の利用は車よりも、ご近所さんと顔を合わせる機会も増えるために、人同士の繋がりも生まれるそうです。

何より、車社会であったフライブルクで、「自動車のないまちづくり」を可能にしたのは一体誰なのでしょうか。

熊崎さんは、この答えは「市民」だとおっしゃいます。自動車産業というのはとてもロビイング力は強いため、産業政策にも大きな影響を与えてしまいます。

そのため、理想の街づくりを行うには政治家に任せておくままではいけません。トップダウンによる変化が期待できないとき、動き出したのがフライブルクの市民だったのです。

「車の量を減らしたい。自分たちの街を変えたい」この意志がどの地域よりも強く、そして実際に行動に移していく行動力があったからこそ、車依存社会を脱するという大きな変化がもたらされました。

このお話を聞き、権力を持っている大企業などに対してでも、市民が結束して行動を起こすことで求めていた結果が出たという、この事例にわたしも大変励まされました。

「Eco(環境)」も「Ego(経済性)」も両立できる家づくり

続いて、パッシブハウスジャパンの森さんからエコフレンドリーな建築「パッシブハウス」についてご説明いただきました。

私たちが住む日本では、この50年間で一人当たりのエネルギー消費量は3.6倍まで上がり、エネルギーを大量に消費する生活が営まれています。

エネルギーを温水のように使う私たちの暮らしのなかで、最もエネルギーが消費されているのが「給湯」そしてその次が「暖房」です。この暖房部分にメスをいれ、熱を逃がさない仕組みを作ったのがパッシブハウスです。

パッシブハウスは、「健康×省エネ×経済性」を両立させた新しい建築の形で、いまある普通の家よりも90%ほど熱を逃さないと言われています。

森さんは、「Eco×Ego= パッシブハウス」とも言えるとおっしゃいます。つまり、環境のために我慢をしたり何かを犠牲にすることなく気持ちよく過ごせる家が「パッシブハウス」なのです。

パッシブハウスの特徴としては以下のものが挙げられます。

①しっかりした断熱
②空気の漏れを無くすこと
③熱橋(熱が簡単に通り抜けるところ)をなくすこと
④良い性能の窓(三層ガラスなど)
⑤熱交換換気(熱を逃がさないで新鮮な空気を取り込む)
→これらを上手く組み合わせることで暖房のいらない家づくりが可能に

こんなに優れたパッシブハウスでも、たとえオール電化仕様で、巨大な蓄電池を積んだとしても冬のエネルギー自活にはなかなか難しいものがありました。

この課題の解決策の一つとして挙げられるのが”P2G(Power to Gas)です。

余剰の太陽光をストレージとして貯蔵することで、インフラにバイオメタンを戻すことができます。

スイスの独立した集合住宅やドイツの賃貸住宅でもこの仕組みの利用がすでに実現し、再エネをどうマネジメントしていくかが問われるこれからの時代に、非常に有望視されている住宅の仕組みとなっています。

細かい仕組みまで完全に理解することは難しいかもしれませんが「健康も守り、地球も守る」。そんな新しい住宅の選択肢に魅力を感じる人は多いのではないでしょうか。

人と違うことに自信をもつ

最後にお2人から、参加者へ向けて一言ずつ頂きました。

この日本社会では、人と違うことはとても目立つし、ネガティブな言葉をかけてくる人も少なくはありません。

しかし、森さんは「自分の考えを持ち、人との違いが生まれることは、自分自身が確立したことを示している」と仰っていました。そして、出る杭は打たれる状況のなかでも、自分を信じ守れるのは自分だけだと。
それと同時に、「できった杭は打たれない」という言葉もくださいました。もう周りが口を出せないほど突き抜けてしまえば、周りからの視線も変わります。自分の感性を信じてブレずに突き進むことの大切さに気付き、その勇気をもらいました。

そして熊崎さんからは、仲間を見つけることの大切さをお話しいただきました。他人を巻き込むことは、自分自身の強さになるだけでなくその周りに影響を与えることにもなります。自分の殻にこもって抱えすぎないで、同じ方向をもつ仲間とともに辛抱強く向き合い続けることの重要性を改めて認識しました。

今回の第5回が最終回となりましたが、最後まで参加してくださり、ありがとうございました!

毎回新しい知識を得ていくのが、私もとっても楽しかったです!

みなさんとまたどこかでお会いできるのを楽しみにしております!

(インターン 佐藤悠香)

▼第4回のプログラム
・車のない社会を目指して〜ドイツ・フライブルク市の取り組み〜(熊崎実佳さん、環境分野の通訳・ライター)
・誰も置き去りにしないエコハウスを!(森みわさん、一般社団法人パッシブハウス・ジャパン代表理事)
※ゲストスピーカーの講演のみ公開しています。


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【第4回スクール・オブ・サステナビリティ2】実際、他国のエネルギー政策は?再エネ先進国の共通点と、日本に足りないもの

こんにちは、インターンの杉本です!

第4回スクールオブサスティナビリティは、デンマーク大使館上席商務官の田中いずみさんと、コスタリカ政府公認ガイドの上田晋一郎さんをお招きしてお話を伺いました。

デンマークとコスタリカにおける政府の役割や政策、国民の自然環境に対する思いを教えていただきました!

SDGs達成度3位のデンマークの裏には政府の野心的環境政策!

田中さんには最初にデンマークについて少し教えていただきました。デンマークは日本の人口の1/20ほどで、面積は九州ほど。そしてなんと、デンマークは幸福度・働く人の幸福度1位なんだそうです!

デンマークはエネルギー政策として、2012年から2050年までに化石燃料に依存しない社会の構築を長期的に目指しています。この目標は、与野党の国会議員の約9割(170/179)から支持を得て、可能になりました。発端は1973年のオイルショックで、石油代替エネルギーとして原子力発電の建設という、日本と同じような議論になったそうです。しかし、1985年に国とし原子力発電をを使わないと決めました。この理由が個人的にとても驚きだったのですが、政府としては原発を導入したかったが、政府のアドバイザーが「国民に説明しなければいけない」と、国民に原発の利点と欠点をわかりやすく説明した冊子を配った結果、原子力発電所の建設計画は無くなりました。(詳細は「北欧のエネルギーデモクラシー」という本で説明されているそうです。)国民と政府の距離の近く、また国民に寄り添う政府だなと感じました。

また、2019年に新しい気候変動政策として、温室効果ガスの排出量を2030年までに1990年比で70%削減を目標としました。これは同年に行われた「グリーン選挙」で、各政党が環境に関しての目標を掲げ、選挙を制した新政府が定めました。以降、化石燃料に依存せずに温暖化ガス排出量を削減しながら経済成長すること(デカップリング)を、1990年からデンマークは証明しています。

そんな日本は電力生産の16.9%(2018)が再生可能エネルギーに対し、デンマークでは79%(2019)を再エネが占めています。ここに再エネである地熱や水力発電がないのは、デンマークには火山やマグマ活動がなく、また山がないので発電できるような川がないからだそうです。このように、地域の特性によって柔軟に対応していくことも大事だなと気づかされました。

また、地域熱供給状況ついても教えていただきました。私はこの地域熱供給を知りませんでした。というのも私のイメージでは、各自給湯器があり熱を作り使う方法しかないと思っていたからです。しかし、地域熱供給は限定された場所で熱を作り、それを施設や住宅に送り熱源として利用する仕組みになっていて、熱の生産効率をあげることができ、また再生可能エネルギーや廃熱を導入しやすいので省エネや環境保全に優れているそうです。この地域熱供給の熱源も再エネが半数以上占めており、一番使われる燃料がバイオマスで、農業大国デンマークでは、収穫した麦からできた麦わらがその大半を占めます。

そして最後には移動手段としての自転車の利用率や、その町づくりを紹介していただきました。自転車専用の道だったり、自転車を列車に乗せれる車両など、みんなが自転車に乗りやすい環境づくりができているなと感じました。

お金はないけど、再生可能エネルギーが主電力の国!?

続いて、23年コスタリカに在住の上田さんにお話を伺いました。「ジャングルの中を一緒に歩いているような気持ちでコスタリカのお話を聞いてほしい」と、コスタリカのジャングルの写真をzoomの背景にしながらお話くださいました。

コスタリカは北海道の6割程度の面積で、人口は500万人ほどの福岡より少し少な中進国です。先ほどのデンマークで幸福度が高かったことと同様、コスタリカの幸福度は日本が56位に対して16位だそうです。

コスタリカは参加者のイメージで多かったように、軍事を持たない国です。1948年に当時大統領だったホセ・フィゲーレス・フェレールはコスタリカの軍事放棄しました。そして、「兵士の数だけ教師を作ろう」というスピーチしました。軍事費がかからないので、浮いたお金を教育と福祉にあて、無料です。

そんなコスタリカで、平和の根源にあるのは「民主主義・人権・環境」なのだそうです。

民主主義についてコスタリカでは、選挙がお祭りで、自分が支持する政党の旗を振ったりと、とてもオープンな場になっている印象を受けました。日本ではなんだか考えにくいですが、、、。また、子供の時から政治について話し合ったり、子供選挙(模擬選挙)などが行われるそうです。

そして、人権が犯されていると憲法裁判所に各個人が訴えれます。憲法違反で訴訟と聞くと、たくさんのプロセスを通して、手間のかかる印象がありますよね。しかし、コスタリカでは、小学生でも大人もただの紙きれやメールに書いてもいいとのこと。直接国民の声が反映されていて、システム整備されていると感じました。

最後に環境について教えていただきました。

コスタリカのの電力は再生可能エネルギー(水力・風力・太陽光・地熱)が主電力だそうです。上田さん曰く、「お金はそんなにないが、地の利を生かしている」そうで、コスタリカの熱帯森林の雨、火山、貿易風による風、痛いほど強い太陽光によって可能になっているようです。原子力発電所や油田を作ったりしない理由として、万が一事故になった場合、人や環境を汚染してしまいうので開発しないという意志の強さも印象的でした。

また、コスタリカは自然環境を観光資源とするエコツーリズム発祥の地です。

ファストフードなどの普及で1980年代に、牧畜のため多くの国土が森林伐採され国土の森が30%ほどになったが、FONAFIFOという、使っていない私有地を国と契約するとお金がもらえる制度を通して今では森林起伏率が50%ほどだそうです。また、セテナと呼ばれる国家環境技術事務局があり、私有地でも森林伐採の際には木だけでなく、どのくらい周囲の生態系に影響するかなどを調査する機関があり、森林伐採すること自体難しいそうです。このことから言えるように、コスタリカ人は自然に生かされているという認識がとても強いと仰られていました。

終わりに、コスタリカの挨拶を教えていただきました。スペイン語が共通言語と聞いたので、「Hola」だと思いましたが違いました。コスタリカでは挨拶もありがとうも「Pura vida(プーラビーダ)」といい、「自然体で人生を楽しもう」という意味だそうです!日本にはなかなか無いのではないでしょうか。使う言葉で国民性が見えてきますね。

参加者の声

  • 国民と政府が互いに協力し合って国全体で環境問題に取り組む姿勢が素晴らしい一方で日本では二者の障壁を感じた。
  • 幸福度にあまりGDPは関係なく、日本も経済発展を目標にしているが、その目標を考え直すべきではないか

お二人からメッセージ

田中さんからは、「日本がデンマークの環境対策をそのままそっくり日本で実現できるわけではないが、デンマークの情報をデータベースにし、どのような対応をしているかを知ることで、これからの日本に繋げてほしい。そして自分ができる頃からやってみて、知識を蓄えてほしい!」とのことでした。上田さんも「できることから初めて、その活動を続けて成長してほしい。そしてこのコスタリカの話が少しでも刺激になったら」とお話ししてくださいました!

日本の良さを生かして環境保全

私はデンマークとコスタリカ、名前は知っているけど、どちらも小さな国というイメージだけ持っていました。この北欧と南米にある二カ国は一見重なる部分がなさそうに見えますが、実は教育や福祉が無料であったり、環境問題に取り組み、幸福度が高く民主主義が根付いている点で共通点だらけだと感じました。どちらも、国民だけでなく政府もが環境への意識が強い印象がを受けました。それとともに、政府が市民に寄り添う環境が整っており、国民が声をあげることで政府をも変えることできるという思いが作られ、より良い社会になっているんだなと感じました。山があったり島国などの日本の地理的条件を上手に使って水力や洋上風力などの再エネ資源も考えていけるのではないか、そして大都市がある一方素晴らしい自然環境を生かした日本が学べることは沢山あるのではないかと思いました。日本が遅れをとっていると感じる一方で、日本の良さを生かして他国の例から取り入れることはあるはずだと感じました。Pura vida!

(インターン 杉本奈帆子)

▼第4回のプログラム
・自然エネルギー100%の鍵をにぎるデンマークの地域熱供給(田中いずみさん、デンマーク大使館上席商務官)
・カーボン・フリーに一番近い国、コスタリカ(上田晋一郎さん、コスタリカ政府公認ガイド)
※ゲストスピーカーの講演のみ公開しています。


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https://www.foejapan.org/climate/event/school2021.html

【第3回スクール・オブ・サステナビリティ2報告】「それって正しい気候変動政策?」もう騙されないために知っておきたいこと

こんにちは!FoE Japanインターンの増田千紗です!
今回もスクール・オブ・サステナビリティ2のご報告をします。3回目のテーマは「日本の気候変動政策」です。

ゲストスピーカーとして、気候ネットワーク東京事務所長の桃井貴子さん、東北大学東北アジア研究センターの明日香壽川さんのお二人ににお越しいただきました。

桃井さんからは世界に遅れをとっている「日本の石炭火力政策」について、明日香さんからは「日本が目指すべきエネルギーシステムの在り方」についてお話いただきました。

日本は世界に遅れをとっている!?石炭中毒な日本

まず、桃井さんには「エネルギー基本計画」や「省エネ法」など日本のエネルギー政策がどういったものなのか、石炭火力政策は具体的に何が行われているのか、詳しくご説明頂きました。

桃井さんによると、世界的な気温の上昇を産業革命以前とくらべて1.5℃に抑えるという「1.5℃目標」を達成するためには、2030年(あと9年!)までに先進国が「石炭火力」を全廃することが必須とされています。「石炭火力」の全廃が求められているのは、現在の発電方法の中で、最もたくさんのCO2を排出するためです。すでに、英国は2024年、フランスは2022年と、先進国各国が、2030年までの脱石炭を宣言しています。一方で、日本は未だその宣言さえできていません。

現在、エネルギー基本計画見直しの真っ最中ですが、2030年電源構成に19%もの石炭火力が含められていることからも、日本政府は再エネ化を進めたいのかそうでないのか、はっきりしないように感じます。また、驚いたのはエネルギー基本計画やエネルギー政策の詳細を策定するのが経済産業省の官僚であること。国会で審議できるのは大枠を定める法律だけですし、本来、環境政策をリードするべき環境省には、十分な決定権が与えられていないそうです。

気候変動政策について学ぶ度に、「しっかりした政策を掲げる政治家を選びたい」と思うのですが、政策を実行する官僚の裁量がここまで大きいとなると、選挙だけじゃなく、パブリックコメントなどで行政に声を届けることも必要なんだなと考えるようになりました。

*現在、第六次エネルギー基本計画についてのパブリックコメントの募集期間です。締め切りは10月4日まで!ぜひ皆で意見を届けましょう!「何がどのように問題なのか」をまとめたウェブページを紹介いただきましたのでご参考ください。

https://www.kikonet.org/info/press-release/2021-09-08/public-comments-2021

1.5度目標達成のため、日本に必要なこと

次に、明日香さんから1.5℃目標達成には何が必要なのか、日本と世界の「再エネの計画・政策」や「省エネによる削減率の計画・政策」を中心にお話頂きました。

世界中の国々は2030年のCO2削減目標を「1990年比」で設定していますが、日本だけはなぜか「2013年比」なのだそうです。理由は、「2013年が最もCO²排出量が多い年だったから」。46%の削減を表明し、その目標の低さに大バッシングを受けている菅政権ですが、少しでも数値を大きく見せれば私たち国民は騙せると思われているのがとても残念です。信頼できる情報をもとに自分で判断するために、学び続けなくてはと改めて感じました。

そして、1.5℃目標のためには「再生エネルギー」の推進が最も効果的だとされていますが、日本では以下の3つの懸念点が挙げられています。

①電力供給量不足のため脱原発かつ脱石炭火力は不可能なのではないか。

②再エネ化で電気料金が値上がりするのではないか。

③石炭火力発電に関わる労働者の雇用が心配。

一方で、このような課題をすでに克服している国があることが印象的でした。例えば、ベルギーでは既に脱石炭火力と脱原発を実現しています。また、再エネ構成比が9割になっても電気料金はほぼ変わらないことが、各研究所や米国政府からも報告されています。雇用に関しても、日本では再生エネルギー化による影響を受ける労働者の数は比較的少なく、再エネ関連の雇用創出も見込まれることから、石炭火力発電所を温存する理由にはならないように感じました。

米国・EU・中国などによる、大規模な再エネ政策や、政策実行の加速化が見られるなか、日本の政策は「今のところ実現できそうな目標」をとりあえず言っているだけなのでは?と疑ってしまいます。最後に明日香さんには、日本の再エネ政策が遅れている理由として、「恵まれた環境にいて危機感がない」「再エネ化は無理だと思い込んでいる」「政府と企業の時間稼ぎ」「環境省の未成熟」を挙げていただきました。

また、上記の課題を克服しながら、気候危機を脱する方法が「グリーン・ニューディール」とおっしゃっていました。明日香さんを含む日本の科学者による、日本における「グリーン・ニューディール」の詳細は、下記よりご覧いただけます。

「レポート2030〜グリーン・リカバリーと 2050 年カーボン・ニュートラルを実現する 2030年までのロードマップ〜」

https://green-recovery-japan.org/

参加者の声

お二人の話を聞いて、参加者からは以下のような意見が聞かれました。

・再エネ政策が進む国では市民運動に政策を後押しする力があるけど、日本にはまだないように思う。

・日本の教育では、市民の力やアクションに希望が持てない。

・お金儲けのための環境政策をやめよう。

・エネルギー政策の話は難しいが、国民にまで届いていないし、選挙の争点になっていないことは問題だ。

日々考えたい政治のこと

先日、私の地元、横浜市の市長選挙がありました。「直前にいろいろ調べて選んだらいいや」と軽く考えていたのですが、いざ調べてみると全然時間が足りなかったんです。様々な分野の政策がありますし、知りたいことは山ほどありました。今回のウェビナーでも、改めて政策について考える難しさを感じました。日々少しずつでも、政治に関心を持つことが習慣になればいいなと思います。

※今回のウェビナーでは、かなーり詳しく日本のエネルギー政策についてお話いただきました。(石炭火力を延命させるために、「容量市場」や、数字上 “高効率” に見せることを許容した省エネ法の改正など…)

詳しくはYoutubeでチェックできますので、ぜひご覧ください!

(インターン 増田千紗)

▼第3回のプログラム
・世界からブーイングを受ける日本の石炭火力政策(桃井貴子さん、気候ネットワーク東京事務所長)
・日本が目指すべき分散型エネルギーシステム(明日香壽川さん、東北大学教授)
※ゲストスピーカーの講演のみ公開しています。


*過去のスクール・オブ・サステナビリティ2の報告ブログや動画はこちらからご覧いただけます。

https://www.foejapan.org/climate/event/school2021.html