森林破壊に繋がる私たちの日常

こんにちは。FoEでインターンをしている佐藤悠香です。

今回は、10代・20代向け オンライン連続セミナー第4回「食卓と繋がっている気候変動の影響」に参加しました。

このセミナーではまずはじめに、地球環境戦略研究機関(IGES)で長年、土地利用と気候変動の関係を研究されている山ノ下麻木乃さんからお話がありました。

気候変動と聞くと、エネルギー排出の多い交通系や製造業を想像する方が多いのではないでしょうか。しかし、実は農林業は世界の温室効果ガス排出の23%を占めています。

農林業が大きな排出源になる原因としては、窒素肥料の過剰使用や牧畜・稲作が挙げられます。つまり、化学肥料の使い過ぎや牛肉と米の生産が気候変動に結びついているのです。

農業からの温室効果ガス(Green House Gas, GHG)排出の要因はいくつかあり、

  1. 化学肥料の製造過程で多くのGHGが排出
  2. 窒素肥料を過剰に投入すると余剰分からN2Oが発生
  3. 農業機器で化石燃料の使用
  4. 水田からを耕すことでメタン排出

などが挙げられます。そして、わたしたち個人がこの問題に取り組むためにまずできることは、有機栽培された食材の購入や、地産地消を心掛けた消費を行うことでしょう。

また、それ以外にも「森林の減少」も大きな要因の一つです。

人口の急激な増加に従って、人間は食料生産を大幅に増やす必要がありました。そのため、化学肥料を使って収量を増加させるだけでなく、森林を農地に転換することで作付面積を拡大してきました。

主に増えたのは大豆の生産量で、これは人間の食用よりも主に家畜の飼料として使われています。そして、農地の8割が家畜の餌を生産するために使われているにも関わらず、世界の食料供給(カロリー)は全体のわずか2割ほどです。

現在、世界人口の9%である6億9000万人が飢餓状態であると言われています。わたしたちは人間が食料として消費するよりも、主に牛肉を生産するために大量の大豆と穀物を生産しているのです。

森林の減少は都市化が原因と考えられがちですが、実は農地への転換が主因で、こうしている今も6秒にサッカー場1個分の熱帯の森林が失われています。

また、山ノ下さんのお話のなかで「国産牛でも飼料の約半分は輸入している」というお話は個人的に驚きました。日本で育てられる牛は、森林伐採に関係していないというわけではなく、その牛を育てるために生産される餌が森林を壊しているのです。

そのほかにも、畜産は牛のゲップ・おならがメタンを放出させたり、輸出入の際にCO2を排出したり、糞尿が環境汚染をもたらしたりと幅広く地球環境に悪影響を与えます。

考えてみると、こんなに莫大な温室効果ガスを排出し自然を汚染しながら生産されたお肉でも、レストラン・スーパー・家庭で多くのフードロスが発生しています。これはお肉に限った話ではありません。私たちは、「食べ物を捨てるために食べ物を生産している」といってもおかしくないでしょう。

私はNetflixで”Cowspiracy(サステナビリティの秘密)”を見たことがきっかけで肉食をやめましたが、山ノ下さんのお話を聞いて、自分も知らなかった畜産と気候変動の関係だけでなく、日本人の食文化であるお米が与える悪影響について初めて知り大変驚きました。

続いて、FoE マレーシアのMageswari Sangaralingamさんから、マレーシアで実践している持続可能な農業「アグロエコロジー」についてお話を伺いました。

アグロエコロジーとは、大規模な工業型農業ではなく、地球への環境負荷を最小限に抑えた農業のことを指します。また、家族やコミュニティで一丸となって農業に励むため、人との繋がりを生み、新たな分散型社会の形成に貢献します。

Mageswariさんたちは、マレーシアで実際にアグロエコロジーの実践方法を農民の方に教えたり、化学肥料を用いずコンポストを利用したりするなどして地球環境に配慮した、持続的な農業を広めていく活動をしています。

ときには、ワークショップを開いて現地の子どもたちと一緒に土壌を触ってアグロエコロジーを体験できる機会を設けたり、コミュニティ内の人の繋がりをサポートしたりと、地域住民の方が自立してアグロエコロジーを継続していくお手伝いをしていらっしゃるようです。

わたしのように東京に住んでいる人間からしたら、なかなか普段の生活で農業にチャレンジすることはハードルが高い気がしていましたが、都内でもコミュニティが共同で農業を行う場はあるようなので早速トライしてみたいと思います。

最後は参加者の方々に、このセミナーを通じて感じたことを自由に話し合っていただきました。

・パーム油マークは時々見るが、パーム油と森林破壊の繋がりは初めて知った

・アグロエコロジーという言葉自体、聞いたのは初めてだが、楽しいからこそ多くの人が無理なく続けているのだろう

・幼い時からコンポストをやるという経験が日本でも広まると、日本人の環境意識が変わるのではないか

・買い物をするときに自分で食べ物を選択する機会がなかなかないので、問題意識を自分の家族と共有することがまず大切だということに気が付いた

・すごく安い製品の裏側には誰かの犠牲があることを忘れないようにする

といった感想を聞くことが出来ました。

農林業とか畜産とか、アグロエコロジーとか、こういったお話を聞くととんでもないことがこの世界で起きていることを知り、ショックを受ける人が多いと思います。しかし、「じゃあどうやって自分の日常を変えていけばいいの?」と思う人でも出来ることはたくさんあります。

お肉を食べる量を半分に減らしてみる。少し高くてもオーガニックのものを選択してみる。自分の家のベランダで野菜を育ててみる。

こうした行動を継続していくことで、周りの人も感化され行動に移していくかもしれません。今の社会状況や搾取の仕組みを一人で変えることはできないけれど、みなさん一人一人が消費行動をもう一度考え直して実践していけば、周りの人間も企業もこの社会も絶対に変わると思います。

この問題を知った方と一緒に私も不安や怒りを感じるだけでなく、それを行動に移していきたいと思います。

(インターン 佐藤悠香)

第4回のゲストスピーカーのお話は、Youtubeからご覧いただけます。

*お話の内容*
・山ノ下麻木乃さん「食卓とつながっている気候変動の影響」資料はこちら
・Mageswari Sangaralingamさん「Agroecology」資料はこちら

★次回のお知らせ★
「気候危機から未来を守るために立ち上がろう!〜日本でアクションするということ〜」
・日時:2021年3月16日(火)19:00〜21:00
・ゲストスピーカー:
 白馬高校、
 総社南高校、
 Fridays For Future Sendai、
 Fridays For Future Shizuoka、
 Fridays For Future Yokosuka
・参加費無料
・申込みはこちら

★スクール・オブ・サステナビリティの概要はこちら

【第3回 スクール・オブ・サステナビリティ報告】サステナブルファッションにチャレンジしよう!

はじめまして、FoEインターンの増田千紗です。第3回スクール・オブ・サステナビリティに参加しました。

今回は、「暮らしのどんなところで気候変動に繋がっているの?」パート1として、サステナブルファッションについて、Kamakura Sustainability Instituteの青沼愛さんと、パタゴニア日本支社環境社会部の中西悦子さんにお話していただきました。

ソーシャルオーディタ―(社会的責任監査員)として活躍されている青沼さんから、ファッション産業がいかに自然環境と人権に影響を与えているのか、また私たちは具体的に何ができるのかについてご説明頂きました。口に入らない商品だからこそ気にしてこなかった、見えてこなかった汚染問題や資源の無駄遣いがあることに気が付かされました。洗濯方法一つで、環境汚染を抑えることができることに驚いた方は少なくなかったのではないでしょうか。

一方で、サプライチェーンにかかる環境問題や強制労働等の構造に変化をもたらすためには、消費者としての責任ある行動が必要だと感じました。ゲストスピーカーのお二人が指摘していた、企業や社会に訴えかけていくというアクションに貢献できると感じた参加者が多くいらっしゃいました。大量消費文化を見直し、効率性よりも公正性を求める行動を心がけたいですね。

上述の通り、私たちが企業や社会に訴えかけていくことが必要とされています。しかし、参加者の方からは「発信したいけどできない」という声が聞かれました。というのも、日本では個人がSNSで政治や社会情勢について考えを発信する文化が受け入れられていないのが現状なのです。ある参加者の方は、アメリカにいたときと比較し、日本はSNSを発信ツールとして使いにくいとおっしゃっていました。地球規模の問題を「自分事」として捉えることができていないユーザーが多いのかもしれません。

これを解決するには、魅力的で発信力のある企業が、情報提供や行動指針を提示していくことが求められているのではないでしょうか。そのような取り組みを早くから行うのが、パタゴニアです。二人目のゲストスピーカーとして、中西悦子さんには、パタゴニアが取り組む環境再生型(リジェネラティブ)の活動や、再エネ化や選挙にむけたアクション事例について伺いました。

興味深かったのは、パタゴニアのビール生産。なぜアパレルブランドが食料品を?と疑問に思うかもしれませんが、これもリジェネラティブな取り組みなのです。青沼さんから指摘があったように、世界で排出されている二酸化炭素量の10%がファッション産業から。パタゴニアは、炭素を土に固定するための農業によって、ファッション産業などから排出される炭素の環境負荷を軽減させようと取り組んでいます。特に、農業のリジェネラティブ化は、カーボンニュートラルに大きく寄与できるそうです。必要性のあるものでビジネスを拡大するという考えは、これぞ「つくる責任」。中西さんが「ヒット商品であっても、本当に必要とされていたものだったのか」と何度も考え直し、悩むこともあるとおっしゃっていたのが印象的です。

グループディスカッションでは、参加者の方から「知ってるつもりになっていた。まだまだ知らないことが多い。」「考えや情報を家族や友人と共有したい」といった声が聞かれました。知らないことへの探求心を持つ次世代が、声を上げることができる社会を私たちでつくっていきたいと強く思いました。

(インターン 増田千紗)

第3回のゲストスピーカーの青沼さんのお話は、Youtubeからご覧いただけます。
https://youtu.be/hI-Ic-2vg84

★次回のお知らせ★
「暮らしのどんなところで気候変動につながっているの?
part2〜食卓とつながっている気候変動の影響〜」
・日時:2021年2月17日(水)19:30〜21:00
・ゲストスピーカー:山ノ下麻木乃さん(地球環境戦略研究機関)、
          Mageswari Sangaralingam(FoE マレーシア)
・参加費無料

*【10代・20代向けオンライン連続セミナー】スクール・オブ・サステナビリティ〜気候変動の危機から世界を守るために立ち上がろう!〜の詳細はこちら

気候危機解決、本当に必要なものは「システムチェンジ」

こんにちは。FoEでインターンをしている横浜国立大学の佐藤悠香です。

今回は、1月21日に行われたウェビナー「『私たちに必要なのはシステムチェンジだ』~斎藤幸平さんと考える、気候危機を生んだ世界像からの脱却後の世界像~」に参加報告です。
1時間半と短い時間でしたが、とても内容が濃く、個人的に刺さるものが多かった回でした。

このウェビナーではまず、大月書店の岩下さんからナオミ・クラインの著書『地球が燃えている』刊行記念として、この本の概要やナオミ・クラインが提唱するグリーンニューディールについてご説明いただきました。

気候変動を止めるための新しい社会のあり方「グリーンニューディール」とは、単なる環境政策ではなく、気候変動を格差や社会福祉の問題と結び付けて、包括的な解決策を提唱するものです。

ナオミ・クラインさんの著書『地球が燃えている』で詳しい説明がされていますので、みなさんもぜひ読んでみてください。

斎藤幸平さんからのお話:資本主義からの「脱却」

つぎに、斎藤幸平さんから「気候危機を生んだシステムからの脱却を」というテーマでお話いただきました。(投影資料はこちら

2020年は、今までどおりの「普通」が普通でなくなり、新しい「ニューノーマル」を考える転換点になりました。

しかし、ワクチンが広まり、コロナ危機の前の生活に戻ることが果たして本当に正しいのか。
私たちは破局への道を進んではいないか。改めて今の社会システムのあり方の再考が求められること、そして、コロナ危機と気候危機に直面する今だからこそ、新しい社会システムを求めていく「システムチェンジ」のタイミングにいることを強調されました。

この「システムチェンジ」というのは、単に電力システムとか交通システムの話ではなく、資本主義という経済・社会システムを抜本的に変えていくことを意味します。これは現在の社会を「スローダウン・スケールダウン」していくだけでは不十分で、新しいシステムを掲げる必要があるということです。

また、技術革新を頼り、今の生活水準を落とさずにEV車を普及させ、再エネへの転換を進めるだけでは圧倒的に不十分で根本的なところの解決にはなりません。

資本主義の下で進めるグリーンニューディールは、結局無限の経済成長を求めるだけで、自然と弱者からの収奪を強めてしまうのです。そして、これは結局グローバルな格差拡大につながってしまうことを指摘されました。

私たちは、成長主義とは決別し、抜本的なライフスタイルの転換を伴うグリーンニューディールを求めていく必要があります。

この別の社会のあり方を作り上げていくことは、オルタナティブな享楽主義(alternative hedonism)を求めていくチャンスでもあるといいます。現在のライフスタイルを続けることが本当に幸せなのか、そして、資本主義のもとで暮らす私たちの別の生き方・働き方を再考するきっかけになると、「資本主義からの脱却がもたらす新しい可能性」もお話くださいました。

気候正義(climate justice)とは

つづいて、FoE Japanの高橋さんから、気候変動アクションマップの紹介がありました。気候変動アクションマップは、今の社会システムがもたらしている日本が関係する環境破壊・人権侵害の問題についてまとめ描いたものです。

また、資本主義とも密接に関わり、気候危機解決に向けて最も大切であろう概念「気候正義(climate justice)」とは何か、そしてなぜ気候正義が重要なのかを、海外のFoEのメンバーの言葉を引用しながら説明していただきました。

気候変動は「単に科学や環境の問題ではない」
この言葉を聞いてすぐに意味が分かる方はどれほどいらっしゃるのでしょうか。

気候正義とは、気候変動を引き起こしてきた、自然や人間の搾取に基づく社会の仕組みを社会の公平性を実現する形で変えていくことです。

気候正義が何かを知ると、気候変動解決に向けた運動は、「自然を守りたい」「生物を傷つけたくない」人たちの運動ではないことが分かると思います。そして、気候不正義と資本主義は密接に関わっていることが分かると思います。

あくまでも先進国の豊かな生活を実現するための経済成長を続ける限り、その成長からこぼれ落ちる人々・成長実現のために踏みつぶされる人が大多数になります。そして、この経済活動のせいで生じてくる気候危機のツケまでも払わされるのが、CO2をほとんど排出していない途上国の人々です。

このような不正義と格差を目の前にして、私たちはもっと持続可能で公正な社会を求めていくべきではないでしょうか。こういう話をすると、規模が大きすぎて到底無理そうに聞こえるかもしれませんが、この不可能そうに聞こえることを実現しなければいけないほど、気候危機の中にいる私たちには時間がないのです。

変化を起こすのは市民である私たち

これに気が付くと、「マイ〇〇をもっておけばOK」という話では到底済まないことが分かります。個人のライフスタイルを環境に配慮したものに変えていくことはもちろん大切だけれど、消費者としての努力を求めるよりもそれ以上に市民が、

・本当に公正な政治的意思決定を求めていく

・グリーンウォッシュ企業に”NO”を突きつける

といった声を上げて生産のあり方を抜本的に変えていかない限りは、現在の自然破壊と弱者からの収奪が蔓延した社会は変わりません。

そして、FoE Japanの吉田さんから、FoE Japanの考えるシステムチェンジの原則について、ご紹介いただきました。

「国や企業ではなく市民が声を上げていかない限り、システムチェンジは実現できない。
政府や企業や大きな力を持つ人ではなく、私のような普通の市民が声を上げ続けることが実は一番大切で効果的」
というお話は、私自身としても、これからも声を上げ続けるモチベーションになりました。

また、斎藤さんも、「個人の変化」「政治の変化」「企業の変化」をセットで求め実行していくには、私たち一人一人の声とアクションが必要になるとおっしゃいました。

斎藤さんやFoE Japanのお話を聞くと、「現状を変えなくてはいけないことは分かったけれど私は何をすればいいの?」と思う方も多いと思います。

そのような方は、自らもアクションに参加することがネクストステップになります。NPO・NGO・政治活動・社会運動。世の中にはいろんな立場からすでに声を上げて活動している人がたくさんいます。

そんな人たちに話を聞きにいったり、支援をしたり、自分もその活動に加わることで人とのつながりを増やしていくことが重要なのではないでしょうか。

斎藤さんは、このアクションを起こすことのハードルの高さには二つあるとおっしゃっていました。一つは、アクションに対する心理的なハードル。二つ目は労働時間の長さによる時間的ハードルです。

斎藤さんによると、教育・医療・交通機関といった「コモン」を脱商品化し、みんなの共有財産にしてできるだけ安価にアクセスできるようになれば、賃労働に依存しない生活が維持できるようになります。そして、このように労働時間を減らすことで仕事以外のアクティビティに費やす時間を増やすことが可能になるのです。

私は、Fridays For Future Japanでの活動を通して、一つ目のハードル「アクションすることへの心理的ハードル」を下げていきたいと思っています。

同調圧力が強い日本社会でも、年齢や性別、人種に関わらず誰もがおかしいことは堂々と「おかしい」と言っていいこと、自分の声には価値があること、主張は持つだけでなくアクションを通じて示すことは最高にクールであることを特に同世代に伝えていきたいです。

本当の豊かさを見つける

今回のウェビナーを通じて、自分が特に意識せずに生活していた資本主義というシステムの中で、私たちは本当に必要のないものまで広告やメディアの影響を受け、「より早く、新しいものをたくさん」消費しようとしていたことに気が付きました。

資本主義から脱却するには、まず「足るを知る」こと。そして、物質に左右されない自分にとっての本当の幸せを見つめなおすことが大切です。

大量生産・大量消費ではなく、顔の見える消費をすること。地域への貢献を実感すること。このような暮らし方は単に、弱者とか地球環境とかだけだけでなく結局は自分自身の心の豊かさに繋がっていくのではないでしょうか。

スローダウンした社会のあり方は、今よりずっと公正で絶え間ない消費と労働からのプレッシャーから開放され、人々が心の余裕のある暮らし(働く以外の活動の領域が広がる生活)に繋がるのではないかと思います。

経済指標に左右されない「人間らしい」生活を大切にするには、今の社会でおかしいところを探してみる。興味を持つ。そして、自分で調べたりたくさんの人の声を聞きにいくこと。

そして、そこで得た情報や知識に満足するのではなく、次は自分が本当に実現したい社会のために行動して声を上げること。

このようなことが重要なのではないでしょうか。

水素やEV、アンモニア、自然エネルギーなどのイノベーションの前に、まず私たちが、資本主義の下で地球と弱者に負担をかけ続ける社会システムを見直さない限り何も根本的な解決にはなりません。

そのため、気候危機やグローバルな格差・貧困の解決には、個人のライフスタイルの変化は大前提であるものの、これだけでは実は全く足りてなくて、「国の政策と企業のあり方」をより公正で本当の意味で人々の心を豊かにする方向へいくように、私たち一人ひとりが市民の立場からプレッシャーをかけ続けることが重要です。

資本主義のような絶対に誰かをとりこぼすような社会システム、踏みつけられて泣き叫んでいるようなひとがいるシステムがおかしいと思うなら、レジ袋をもらうのをやめたりマイボトルを持つのだけでは到底十分ではなくて、この経済・産業システムの変革を求めてアクションをすることが大事だという斎藤さんとFoE Japanのみなさんから強いメッセージを受け取りました。

最後に

システムチェンジを求めて声を上げ続けること、そしてそれと同時に新しい社会の形成に向けて、「自分の人生には本当は何が必要なのか」という自分自身の考え方(生き方)を考え直すことが必要になります。

be the change you want to see in the world.
世の中で見たい変化があるならば、まずはその変化に自分がなること。

社会とともに、自分自身もこれまでとは違う「新しい豊かさ」を再考していきたいと思います。

(インターン・佐藤悠香)

*斉藤幸平さんの当日の投影資料はこちら

*FoE Japanの気候変動アクションマップの購入はこちら

*FoE Japanが考えるシステムチェンジの五原則「気候危機とコロナ禍からのシステム・チェンジを」はこちら

【第2回 スクール・オブ・サスティナビリティ報告】未来を担う私たちができること

はじめまして、FoEインターンの小出です。2回目のスクール・オブ・サスティナビリティに参加しました。

第2回は、「気候危機に立ち向かうため、世界はどのように動いているの?」ということで、気候変動と政治の関係について、国立環境研究所の亀山康子さんと、NO YOUTH NO JAPAN 能條桃子さんにお話を伺いました。

はじめに、気候変動に関する国際関係を専門としている亀山さんから、気候変動の現状や、世界の気候変動対策について、そして温室効果ガス実質ゼロに向けた4つのゴールをお話しいただきました。冒頭に、気候変動の現状を解説していただきました。実際に気候変動に直面しているグリーンランドの写真などを見ながら話を聞くと、「気候変動は本当に今まさに起こっていることなのだ」と実感する参加者の方は多かったのではと思います。

その後、国連気候変動枠組条約の歴史や、2015年に制定されたパリ協定について解説いただき、アメリカの大統領選では、アメリカ国内へのインパクトだけではなく国際交渉に大きく影響を与えたことなどを説明くださいました。

また、日本の現状について、石炭の消費量が増え続けていること、石炭火力についてはアメリカより遅れていることなどを指摘したうえで、今年発表された2050年温室効果ガス排出量実質ゼロを実現させるためには、2030年目標を変えなくてはならないことを強調していました。

さらに、実質ゼロ達成に向けた4つのゴールとして、①エネルギーの脱炭素化、②エネルギーの効率的利用(省エネ)、③エネルギーサービス需要の(節エネ)、④森林保全&CO2以外の温室効果ガス対策(メタン、フロンなど)の4つがあると整理してお話くださいました。

続いて、参加者と同世代である、NO YOUTH NO JAPANの能條桃子さんがお話をしました。

NO YOUTH NO JAPANは、「若者が声を届け、その声が響く社会へ」をビジョンに、10代・20代でもわかるように、政治についてわかりやすく発信したり、国会議員とのトークをライブ配信したりしている団体です。
(NO YOUTH NO JAPANの団体詳細はこちら→http://noyouthnojapan.org/

その代表を務める能條さんの問題意識は、特に若い世代(20代)の投票率が低いというところにあるそうです。選挙の候補者の下でインターンをしていた頃、候補者の周りにいるのは高齢者、子育てを終えた世代ばかりだったそうです。また、デンマークに留学していた際、若い世代が動くことで社会を変えていく様子を目の当たりにし、今の活動を始めたとお話をしてくださいました。

政治を気軽に話せる時代を目指して、SNSでの発信を通じて、自分では何ができるかを考えてほしい、そして、政治に声を上げたいと思う仲間を増やしたいので、是非参加者の人とも何かできればとメッセージを伝えていました。

後半のディスカッションで参加者の声を聞くと、同世代である能條さんのお話のインパクトが大きかったようです。政治を変えるのは大変だけど、個人個人が行動を起こすことで、波及して行くような雰囲気を作りたいという感想を持った方もいました。

また、亀山さんのお話を聞くまで、省エネ、節エネを同じものだと思っていたという参加者もいて、それぞれ様々な発見、新しい知識を得ることができたセミナーだったのではと思います。

そして、参加者の方々とお話をする時間があり、感想を共有できただけではなく、違う考え方にも触れることができました。次回のスクール・オブ・サスティナビリティも楽しみです!

(インターン 小出愛菜)

第2回のゲストスピーカーのお話は、Youtubeからご覧いただけます。

*お話の内容*
・亀山康子さん「政治の世界で気候変動はどのように語られてきたのか」
資料はこちら
・能條桃子さん「若者が声を届け、その声が響く社会を目指して」
資料はこちら

★次回のお知らせ★
「暮らしのどんなところで気候変動につながっているの?
part1〜サステナブルファッションにチャレンジしよう!〜」
・日時:2021年2月3日(水)19:30〜21:00
・ゲストスピーカー:
 青沼愛さん(Kamakura Sustainability Institute)、
 中西悦子さん(パタゴニア日本支社 環境社会部)
・参加費無料
・申込みはこちら

*【10代・20代向けオンライン連続セミナー】スクール・オブ・サステナビリティ〜気候変動の危機から世界を守るために立ち上がろう!〜の詳細はこちら

【横須賀石炭訴訟報告 vol.5】訴訟はターニングポイントへ。次回から本案審理開始。

10月14日、第5回期日が実施されました。前回に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大予防の観点から、傍聴人数を制限しての開催でした。

今回の裁判では、前半に原告代理人からの主張があった後、後半は裁判長より今後の裁判の方針についての話がありました。

第5回の裁判の内容の結論から言うと、過去4回の期日を通じて議論されていた原告適格や訴訟要件の議論と並行し、次回の第6回期日から、本案の審理に進むこととなりました。本案審理に進むにあたり、裁判長は被告である経済産業省に対し、原告が今まで提出してきた書類への反論準備を、次次回期日(5月17日予定)までにするようにとの指示をしました。

原告適格や訴訟要件の議論と並行してではありますが、本案の審理が開始されるということは、次のステップに進むことなったといえます。

以下、裁判での原告主張は下記の通りです。今回、原告代理人からの主張は、浅岡弁護士より(1)環境アセスメントにおける地球温暖化の影響の評価について、小島弁護士より(2)温室効果ガス排出による漁業者への影響についての二点ありました。

環境アセスメントにおける地球温暖化の影響の評価について

浅岡弁護士は、CO2の排出累積量と気温上昇の推移の関連性を示しながら、CO2と温暖化の関連性を改めて示した上で、地球温暖化に伴う気象災害リスクや熱中症被害の増加の危険性があり、温暖化は命や生活を脅かすものであることを強調されました。そして、環境基本法では、人の健康や生活環境が守られ、良好な状態に保持されることが規定されている(第14条1号)ことに言及しながら、生命・生活環境は環境影響評価法において確保すべき目標であり、CO2増加に起因する気候変動による影響は、命や生活環境の保全に支障をきたすものであるにもかかわらず、温暖化の影響が横須賀石炭火力建設にあたっての環境アセスメントで評価されていないと主張されました。

漁業者への影響について

小島弁護士は今回の環境アセスメントが始まる2016年以前に、すでに漁業と気候変動の影響に関する調査報告が中央環境審議会や農林水産省より公表されていることを指摘しました。

小島弁護士によれば、様々な調査の結果、一番大きい影響を受けているのはブリやサワラ、スルメイカといった回遊魚だそうで、すでにブリの分布域が北方面に移動していること、スルメイカの漁獲高が2000年代には1980年代と比較して95%減となっていると報告されました。そして将来の予測として、サンマの体重が減り漁期の遅れること、サケの生息域の減少し、2050年にはオホーツク海でもサケの適温水域が消失する可能性があることをあげられました。

養殖業にも大きな影響を与えているようで、帆立や牡蠣にも影響がすでに出ているほか、特に海面養殖業の中で漁獲高第一位の海苔については、神奈川県の海苔の8割を生産する横須賀走水でも生産量が急激に減っていることを述べました(横須賀走水の海苔養殖漁師の話はこちら)。

「今は当たり前のようにおにぎりに海苔を巻いているが、このままだと海苔が高級品になり、その当たり前がなくなっていく」と、身近な食事に照らし合わせて温暖化の漁業への影響を話されたのは印象的でした。

また、神奈川県近海には、高級魚であるマコガレイやアワビの漁獲高も激減っていることも、神奈川県水産技術センター等の調査で判明しているそうです。

その上で、今回の環境アセスメントについては、このような漁業者の手段ともなっていたマコガレイやアワビなど、特定種の生態調査が実施されていない点を指摘し、アセスメントの内容の不十分性を主張しました。

閉廷後、小規模ながら今回の裁判の報告会を実施しました。報告会の中で、弁護団長の小島弁護士は、裁判長の本案審理を開始するという発言について、「世界や大きな変化と世論の盛り上がり、前回の裁判での傍聴席からの圧力を感じたのではないか」とコメントされました。

本案審理が始まる一方、反論準備のために被告に与えられた時間は半年以上と長く、気候危機のタイムリミットを考えるとあまりに悠長であり、歯痒く感じます。

被告である国の反論について、来年1月には神戸石炭火力行政訴訟の結審が予定されており、ここでの被告の反論が今後の横須賀石炭訴訟でも参考になるかもしれません。

次回期日は2021年1月22日(金)14:00から、東京地方裁判所で実施の予定です。

今回の裁判は、横須賀訴訟原告団による地道な漁業者への聞き取り、全国各地で広がる気候変動対策の強化を求める運動、そして裁判の傍聴に参加されてきた皆様や弁護団の熱意が、裁判長の判断につながったものと考えます。

本案審理が始まるからこそ、FoE Japan は引き続き、よりいっそうの世論を盛り上げに注力し、多くの市民の関心をこの裁判に集めていきたいと思います。

(高橋英恵)

*横須賀石炭火力事業についてはこちら:https://www.foejapan.org/climate/nocoal/yokosuka.html

*横須賀石炭火力訴訟についてはこちら:https://yokosukaclimatecase.jp/

*この裁判を応援してくださるサポーターを募集しています!詳細はこちら:https://yokosukaclimatecase.jp/support_us/

*日本の石炭火力問題について、2030年に石炭火力ゼロを目指すキャンペーン「Japan Beyond Coal」が2020年9月29日始まりました。石炭火力発電の問題点や気候変動との関係がまとめられています。ぜひご覧ください。

Japan Beyond Coalはこちら:https://beyond-coal.jp/

「地球の変化に気付いて」横須賀海苔漁師の声

9/11、横須賀市走水で海苔養殖業を営む方を訪問し、気候変動が漁にどれほどの影響を与えているのかを伺いました。お話くださったのは長塚良治さん。今から約40年前、19歳の時から海苔養殖に携わり、現在2代目として、代々受け継がれてきた海苔養殖を引き継がれています。

「海苔はとても温度に敏感。魚は泳いで逃げられるけれど、海藻には足がない。そこ(地盤、網)に掴まるだけ。自分に耐えられない温度になってしまったら、死に絶えるだけなんです」

海苔の養殖技術については、昭和40年代は海に立てた支柱に自然に繁殖した海苔を加工・販売する形が主流だったようですが、研究開発が進んだ現在は、陸上で海苔の種付けをし、海水温が海苔にとって最適な温度になったら海に入れ、成長を促す漁法を取り入れています。だいたい9月後半に海苔の種つけ(陸上採苗)をし、11月頃に海に入れるそうです。しかし、海の状況について、40年間海苔養殖をやってきた中で、ここ20年急激に温暖化の影響を感じていると言います。

「海苔の成長に一番良い水温は18度。だいたい22〜23度になったら海に入れるけど、ここ20年、海水温がなかなか下がらない。海水温が下がってきたかなと思うと、台風がきて海がかき乱され、水温が不安定になる。」

海水温の上昇の影響は、それ以外にもあると教えてくださいました。今までは水の冷たさのせいで冬の期間は海底でじっとしていた魚たちが、海水温の上昇で活動できるようになり、養殖中の海苔を食べてしまうという、魚による食害も起きているようです。魚の食害を防ぐための網を張るようになりましたが、労力やお金もかかると言います。

「地球で言ったらとても短い期間で、地球は急に悪化している。この悪化を、人々はどのように捉えているのかを考えると怖い。国の偉い人が、気候変動の影響を全くわかっていない気がする。」

また、気候変動以外にも、頭を抱える問題があると言います。

三浦半島東海岸、千葉県に向かって少し突き出たところに位置する走水では、多くのプラスチックゴミが海岸に流れつくそうです。

東京湾の海流の図(丸良水産HPより)

東京湾に流れ込む海流は、千葉県沖に沿って湾内に入り、神奈川県沖に沿って外へ流れていくため、東京湾西部で少し湾に出っ張ったところに位置する走水には、東京湾北部からやってきたゴミが流れ着くそうです。

「ここに住む人たちは故意に海にゴミを捨てたりしない。なのに、海岸にはゴミがたくさんある。ということは、海を伝って東京湾一帯から流れついてきたとしか考えられない。」

できるところから地球に優しい取り組みをしたい

プラスチックゴミをきっかけに、長塚さんは多くのことに取り組んでいます。

「最近始めたのは、レジ袋の紙袋化。他にも養殖を始めた海ぶどうは、再生紙のパッケージで売るようにした。また、これからは、お客さんが入れ物を持ってきてくれたら、商品の割増をするような取り組みも検討している。」

既に取り組みを始めている長塚さんですが、実は葛藤もあるそうです。

「海苔を乾燥する時は、機械を使うんだけれど、その機械は今まで重油で動かしていた。他にも、たくさんの電気を使っている。こういった仕事に使うエネルギーを、自然エネルギーに切り替えていきたい」

「出荷用の容器も気になっている。今の海苔は段ボールの箱を使って発送しているが、一回使っておしまい、というのが当たり前で、とてももったいない。再利用させて欲しいけれど、なかなか難しい。昔は木の箱を使って魚を市場に送って、空いた箱を回収してまた詰めて、みたいにやっていた。もう一度、昔のやり方でやってもいいのではと思うけれど、そうすると魚の鮮度が落ちてしまう。発泡スチロールでの出荷になってから、今の人は昔に比べて格段に美味しい魚を食べられている。なので、使い捨ての容器を使うことは心ぐるしいけれど、使い方が大切なんだと思う。」

今年1月に訪問した相模湾の目突漁師に続き、私たちの生活の根幹を支えてくださっている漁業従事者や農業従事者など、自然に寄り添って生きる人々が真っ先に地球の変化を感じ取り、また気候変動の被害を受けています。

気候変動の影響はすでに日本でも起きており、この変化を危機として受け止め、即座に行動を開始してかないといけないことを改めて感じました。

これ以上の気候危機を防ぐための具体的な行動として、日本の気候変動対策の強化に向けて声を上げること、そして、温室効果ガスを大量に排出する石炭火力発電所の新規建設の中止に向けて行動を起こすことは急務です。

FoE Japanは、気候変動がもたらす影響についての発信をいっそう強めるとともに、日本の気候変動政策の強化、今回訪問した地域のすぐ近くで建設が進む横須賀石炭火力発電所建設の中止を求めていきます。

(高橋英恵)

横須賀石炭火力事業についてはこちら

https://www.foejapan.org/climate/nocoal/yokosuka.html