【撤退の意思決定を!】日立に英国への原発輸出反対署名を提出&日立前にシロクマくん出現

本日1月8日、日立製作所がイギリスで進めるウィルヴァ原発建設計画の中止を求める署名を、日立および安倍首相に対し提出しました。第一次集約分は、個人署名が2725筆(32カ国)、団体署名が79団体15カ国でした。ご協力いただいたみなさま、本当にありがとうございます。

日立製作所の中西会長自ら、プロジェクトは「もう限界」と発言しています。

まだ遅くありません。時代遅れで危険な原発事業から、今こそ事業から撤退するべきです。

正式に事業撤退の最終決定をさせるためにあと一押し!ということで、一次集約分の署名の提出と、日立製作所が入っている日本生命丸の内のビル前でアピールを行いました。

アピールには英ウェールズの住民団体PAWBのロブさんもインターネット参加。「今や、ウィルヴァニューウィッド原発は、英国と日本政府の支援なしには継続不可能であることは明らか。しかもそのツケを支払わされるのは将来世代で、島にも大きなリスクが押し付けられる」と訴えました。

日立の家電のキャラクターのしろくまくんも参加。原発輸出を強引に進めればしろくまくんのイメージも損なわれかねないと心配だったのでしょうか?

署名は安倍首相にも提出しました(郵送)。安倍首相は、明日からオランダとイギリスを訪問。メイ首相との会談でこの原発輸出案件についてもふれられるとみられています。

この原発案件は日英両首脳の思惑が強く働いています。日立には、賢明な経営判断をしていただきたいと思います。

署名自体は日立が事業から完全撤退するまで継続します。ぜひ引き続きご協力よろしくお願いします。

(満田夏花・松本光・深草亜悠美)

動画も公開中!

FoE Japanでは、これまでに2度、ウィルヴァ原発建設立地の状況調査やウェールズのみなさんにインタビューを行っています。この度その様子をまとめた動画が完成しました。ぜひご覧ください&拡散お願いします。


イギリスへの原発輸出ー現地住民の声

イギリス・ウェールズ地方の北西部に位置するアングルシー島で、日立の完全子会社であるホライズンニュークリアパワーが新規原発建設計画を進めています。

この原発事業をめぐって、地元では、もともとの計画が浮上した80年代から、市民による原発反対運動が続いています。FoE Japanは2017年11月現地を訪問。事業の問題点を調査し、地元の声を聞きました。

アングルシー島は人口7万人ほどの小さな島で、18世紀には銅採掘が盛んでした。主な産業として、アルミ加工工場が操業していましたが、2009年に閉鎖し、現在は観光業や農業、そして地元の小さな企業が島の経済を支えています。

また、2015年までマグノックスの原発が稼働していましたが、2012年に2号基が、2015年に1号基が閉鎖。写真の中央に見える建屋が現在解体作業中のマグノックスの原発です。

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中央に見える灰色の建物がマグノックスの原発(ウィルヴァA)

ホライズンが計画しているウィルヴァニューイッド原発の建設は、80年代にウィルヴァB原発計画として浮上しました。しかし「新規原発はいらない」と声を上げた地元市民が現在も活動を続けています(注:ホライズンはもともとドイツの企業、EONとRWEのジョイントベンチャーであったが、2012年に日立に売却した)。

地元の脱原発団体「ウィルヴァBに反対する人々(People Against Wylfa B、PAWB)」の創立メンバーの一人であるディラン・モーガンさんは、ウェールズ語の書籍を扱う書店を経営する傍ら地元大学でウェールズ語を教えています。1988年にPAWBを設立し、以来ウィルヴァ原発反対活動を続けています。

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PAWBのメンバーらと

「88年に始めた活動は成功しました。中央政府は当時、ウィルヴァ原発の計画を凍結させたのです。しかし2006年、労働党のブレア政権で原発推進政策が復活し、それから10年以上に渡りウィルヴァ計画に再び反対の声を上げてきました。」

ディランさんが話すように、イギリスでは1950年代から継続して原発推進政策が進められ、アングルシー島での新規原発建設計画も80年代に持ち上がりました。しかし、90年代はじめに電力部門の民営化やエネルギー政策の見直しで、新規原発建設がストップされて以降、イギリス国内では1995年を最後に原発の新規建設はありませんでした。2006年、ブレア政権のもとエネルギー政策が見直され、原発推進の新たなエネルギー計画(エネルギー白書2007年、原子力白書2008年)が発表されます。

ディランさんは「原発は危険で、健康や環境を脅かすものだと思っています。また建設には莫大なコストがかかることから公的資金の投入なしにはプロジェクトは進まないでしょう。日本の公的資金が投入される可能性が報道されていますが、20世紀の時代遅れのテクノロジーに日本の公的資金を無駄遣いしてほしくないと思っています。」と話します。

ウェールズ訪問中、2度、住民の方と意見交換する場を設けてもらいました。集まったのは地元の脱原発団体(PAWB)のメンバーだけでなく、地元の緑の党のサポーター、FoEのローカルグループ、アングルシー島で働いている人々、また事業に関心はあるけど事業について特に立場が明確なわけではないという住民の方などです。

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アングルシー島に住むある夫婦の方は、「島の若い人は(仕事がないから島を)出て行く。若い人は雇用創出に期待している。個人的には賛成でも反対でもないけれど、福島の事故の話を聞いていると、心配」との意見でした。

地元のアングルシー議会は、原発計画に賛成しています。賛成の最も大きな理由が原発事業による雇用創出です。ホライズン社は建設時に多い時で9000千人の雇用、そして長期的には800名分の雇用を生み出すとしています。この「雇用創出」をめぐっては、様々な観点から懸念の声が上がっています。

アングルシー島に住むという高齢の女性の方は「建設現場では多くの低賃金外国人労働者が働いているのが実態。ウィルヴァ原発の建設にも外部から労働者がやってくるだろう。ただでさえ病院などのインフラが足りていないと感じるのに、九千人もの雇用を受け入れられるとは思わない。」と話します。

また「本土と島をつなぐ橋は2つしかなく、事故の時に避難ができるのか心配」とも指摘。

地元で行政職員をしていたグウィン・エドワーズさんは、PAWBのメンバーの一人。原発建設は長期的な雇用問題解決に貢献しないと警鐘を鳴らします。

「1960年代、最初のウィルヴァ原発建設のときにも雇用創出につながるといわれた。しかしアングルシー島はウェールズの中でも失業率の高い地域。原発に雇用を奪われた地元企業は倒産していき、地元企業が崩壊してしまった」

PAWBメンバーで医者のカールさんも原発産業が雇用を生み出すという論理について、否定しています。来日経験もあり南相馬も訪問したことがあるというカールさんは「日本でもイギリスでも共通に感じたのは、貧しい地域に原発を押し付け、結局なにも起こらなかった(=雇用問題は解決しなかった)ということ。雇用を生み出すというが、原発政策と地元での雇用創出はそもそも関係ない。」

PAWBのメンバーは、原発が雇用をうむという言説に対抗するために、地元経済や雇用に関する代替策の提言も行っています。

他にも、アングルシー島の美しい自然への影響や、長年続く農業への影響も挙げられました。アングルシー島の沿岸部は、ヘリテージコーストと呼ばれ、自然保護区域になっています。

PAWBの創設者の一人でもあるロバート・エリスさんは、地元の元獣医師です。「美しい海岸線をこれ以上壊されたくない」と話します。

新たな原発の建設にはさらに広大な用地を必要とします。用地取得は完了していますが、2011年には300年続いた農業を守る為、農家の方が土地を売るのを拒否し、地元の人々や環境団体もサポートしました

【農地売却に抵抗した農家のインタビュー(ウェールズ語のみ)】

抗議の結果、2012年、ホライズンは土地を買収するのを諦め、運動に勝利した農家により今でも農業が続けられているそうです。

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ロバートさん(中央)と土地買収に抵抗した農家の夫婦(写真:ロバート・エリスさん提供)

ホライズンは、機材納入や運搬のために新たに桟橋を設け、また建設作業者のために新たに合計4000人を収容できる住居施設を建設するとしています。また、新たな送電線の建設、アクセスロードの建設も今後行われる予定で、送電線の建設に反対する市民グループもあります(注:送電線を建設するのは、送電部門を管轄するNational Grid)。

アングルシー島出身で、長年平和活動を続けているシオネッドさんは、核兵器開発の観点から原発に反対しています。

「広島、長崎の悲劇をしり、原子力兵器のために開発されたこの技術に反対することを決めました。また、放射性廃棄物の問題も解決していません。将来世代にこのような遺産をのこすべきではありません。」

続く…

プロジェクト概要

ウィルファB原子力発電プロジェクト(ウィルヴァニューイッド原発、Wylfa Newydd)は、イギリス・ウェールズ地方北部、アングルシー島で二基のABWR(改良型沸騰水型軽水炉)を建設するもの。発電設備容量は合計で2,700MW。ホライズンニュークリアパワー(日立の子会社)が事業主体。

事業名:ウィルヴァニューイッド
事業内容:二基のABWR(改良型沸騰水型軽水炉)の建設(発電設備容量合計2,700MW)
事業主体:ホライズンニュークリアパワー(日立が100%株式所有)
総事業費:不明(約1.5兆〜3兆円と報道あり)
建設開始予定:2019年
運転開始予定:2025年

ベトナム・原発からの「勇気ある撤退」の理由とは

11月10日、ベトナム政府は、ベトナム中南部のニントァン省原発建設計画について白紙撤回を求める決議案を国会に提出しました。22日にも採決される予定と報じられています。
ニントゥアン省では2か所で原発建設が予定されており、第一原発はロシアが、第二原発は日本が受注を予定しており、実現すれば同国初の原発となったはずでした。
なぜ、ベトナムは原発からの撤退を決断したのでしょうか?
国会議員で科学技術環境委員会副委員長のレ・ホン・ティン氏は、VNEXPRESSのインタビューに答えて、まず経済性をあげ、原発の発電単価が当初計画よりも上昇していること、再生可能エネルギーやLNGが競争力をもったこと、ベトナムの巨額の対外債務問題、放射性廃棄物の処理の問題をあげました。
「これは“勇気ある撤退”だ」とレ・ホン・ティン氏。「これ以上展開し、さらなる損失を被らないうちに早期に計画を中止する必要がある」。
かたや日本では、原発事故の被害額は膨らむ一方。損害賠償や廃炉費用を国民にさらに転嫁するような検討も進んでいます。その一方で、40年超の老朽原発も相次いで運転延長が決まりました。「勇気ある撤退」は程遠い状況です。
以下、VNEXPRESS紙のレ・ホン・ティン氏のインタビュー記事を、翻訳者のご厚意により転載いたします。

VNEXPRESS
2016年11月10日(木)なぜ国会は原発計画を中止へと見直しするのか

11月10日、国会の廊下でレ・ホン・ティン氏(科学技術環境委員会副主任)は、マスコミ取材に対し、政府がどのような観点でニントゥアン原発計画実施を見直し、中止とする議案を国会に提出することにしたかを述べた。

-政府が国会に、ニントゥアン原発建設計画の実施を見直して中止とする議案を国会に提出するに至った主要な理由は何か。

-主な理由は、原発計画の実現可能性が、現時点ですでにないことだ。以前の建設計画では発電原価が約4.9セント/kWhとなっていたが、今ではこれが8セント/kWhにまで上昇している。

さらに、2009年、政府が国会に原発計画を諮ったとき、経済成長が9-10%の速度であることを条件として、それに伴い電力需要も17-20%の伸びを条件としていた。
当時の政府はわが国の電力需要を十分に賄うために、22%の伸びを見込んでいた。
しかし現在、経済成長率はそれよりもずっと低く、毎年約6-7%で推移している。これにより電力需要も予想より伸びが低く、今後5年間で11%、さらに10-20年後には7-8%と見積もられている。

現在は節電技術が進み、エネルギー消費が抑えられてきた。今後2021年までの間に、国内需要は十分賄える見込みだ。さらに、再生可能エネルギーが発展を始めており、電力原価は5 セント/kWh以下にまで下がった。わが国にはニントゥアン、ビントゥアン、バックリュウ等々、風力発電を展開できる多くの地域がある。原油価格1バレル50USDという予想が出ているが、これに代わるLPGガスが合理的な原価を示しているので、我々が輸入して環境にやさしいエネルギー源として発展させることができるだろう。

原発の話で言うと、計画を展開した後に出る核廃棄物の解決は議論が必要だ。特に、最近の環境事故の後ではその必要が高まっている。

さらに現時点で原発計画を中止すべきもうひとつの理由として、わが国の債務がすでに許容範囲ぎりぎりに迫っていることが挙げられる。さらに大きな計画に投資を続けるとなると、危険はさらに増す。もちろん原発への投資をやめると、わが国の電気需要に対応するための電源を確保するために他の電源開発への投資が必要になるだろう。ニントゥアンですでに建設したインフラは別の事業に利用できるだろう、たとえば土地を確保して太陽光発電などの再生可能エネルギーに充てる、工業団地を建設する等々。

―もしも原発計画を続けるとしたら、40京ドンの投資が必要になるといわれているが、この数字をどう評価するか。

―当初の計画では投資金額は20京ドンとされていた、しかし現在計算しなおすとこれが2倍に膨れ上がっている。もし計画が遅れれば、投資金額はさらに膨れ上がる。その後の廃炉費用まで計算すると、発電コストはさらに上がるだろう。

―もし国会で中止が決定したら、すでに署名ずみの契約相手との関係の問題はどうなるのか。

―関係各省庁、各部局が契約相手と合理的な話し合いや協議を行う必要がある。というのも、この計画中止には、すでに述べたような「不可抗力的な」理由があるからだ。

―海外へ原発技術研修に派遣した人材はどうなるのか。

―高度人材はいつでも必要だ。当面は発電総合会社や稼働中の発電所でこの人材を使用することができるだろうし、カネの無駄にはならない。

―この原発計画中止決定を「勇気ある撤退」だとする意見があれば、これをどう評価するか。

―その通りだ。私はこの原発計画中止の提案は、勇気ある撤退だと考える。ベトナムは原発で後発の国であり、立案時には原油価格が高く原発が必要と考えられていた。その後状況が変化し、我々は、さらなる損失を被らないうちに早期に計画を中止する必要がある。

―原発への投資を決定してから、このような難解な数学の問題に直面したような国の例はあるか。

―もちろんある。たとえば南アフリカだ。ほとんど準備が整った時点で中止した。もしくはドイツがある。技術上の変化、安全上の要求、そして使用済み核燃料の問題から、多くの原発を廃止したり中止したりしている。我々が現時点で原発を中止するのは、時機を得た、かつ必要なことだ。

(囲み記事)

2009年11月25日に、382票の議員の賛成を得て(全議員の77.48%に相当)、国会はニントゥアン原発建設計画を議決した。計画では原発は2ヶ所、1ヶ所につき2基の原子炉が予定されていた。ニントゥアン第一原発はトゥアンナム県フォックジン郡に、ニントゥアン第二原発はニンハイ県ヴィンハイ郡に、それぞれ2,000MWの容量で建設が決まっていた。

ヴォー・ハイ、アイン・ミン

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▼色あせてしまったニントゥアン第二原発の看板 (c)FoE Japan

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ベトナム原発計画のゆくえ…「多くの国会議員が原発中止に賛成」

ベトナムが原発事業を白紙撤回する方針であることが報じられています。科学技術環境委員会の副委員長は、原発発電の単価が上昇していること、核廃棄物の解決、事故、債務問題などをあげ、「いまの時点でやめると判断するほうが、さらに投資を続けてからやめるよりもよい」と発言しています。ベトナム電力公社の社長すら「原発は経済面で競争力なし」と発言したそうです。VNEXPRESSが報じました。翻訳者の方のご厚意で転載させていただきます。

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多くの国会議員が原発計画中止に賛成

VnExpress logo VNEXPRESS 2016年11月10日(木) 11:18 GMT+7
科学技術環境委員会副主任は、現時点での原発計画中止の検討を「時機を得た必要なこと」と評した。
国会はニントゥアン原発計画を見直すことに。
ベトナム電力公社社長:「原発は経済面で競争力なし」

11月10日午後、国会は商工大臣チャン・トゥアン・アインとの特別会合を持ち、大臣はニントゥアン原発建設計画の中止に関する議案の説明を行った。それに続き、科学技術環境委員会主任ファン・スアン・ズンが、上述の議決草案の審査報告を行った。
国会の廊下でのマスコミ取材に対し、レ・ホン・ティン氏(科学技術環境委員会副主任)は、現時点での原発計画の見直しを「時機を得た必要なこと」と評した。

科学技術環境委員会副主任、レ・ホン・ティン氏。撮影:ヴォー・ハイ
ティン氏によると、原発計画の実現可能性は、現時点ですでにない。というのも、以前の建設計画では発電単価が約4.9セント/kWhとなっていたが、今ではこれが8セント/kWhにまで上昇している。計画の展開が遅れると資金も追加する必要がある。さらに重要なことに、計画を展開した後に出る核廃棄物の解決は議論が必要だ。特に、最近の環境事故の後ではその必要が高まっている。
わが国の債権はすでに許容範囲ぎりぎりに迫っている。さらに大きな計画に投資を続けるとなると、危険はさらに増す。この時点で中止することが、さらに展開を続けてからやめるよりもすぐれている。」 ティン氏はこのように見解を述べた。
計画準備のために派遣して養成した人材については、ティン氏は、高度人材はいつでも必要であるとする。「当面は発電総合会社や稼働中の発電所でこの人材を使用することができるだろうし、カネの無駄にはならない。」 ティン氏は、原発を始めようとして準備ができたところで中止した国々は南アフリカをはじめとして多いと言う。あるいは、ドイツのように、安全と使用済み核燃料の問題のため、多くの原発計画を撤回した国もあるとする。

ニントゥアン省副書記長グエン・バック・ヴィエット。撮影: Q.H
ニントゥアン省副書記長グエン・バック・ヴィエットは、もしも国会が原発計画の中止を議決するなら、ベトナム電力公社はすでに別の計画の実施を予定していて、それらは太陽光や風力発電の計画かもしれないと言う。省からはすでに中央に提案を出し、原発建設予定であった土地が「非常に美しい」ことを利用したいくつかの計画を考えている。そして、天災を避けるために新たな場所に定住した人々が、よりよい条件で暮らせるようにと考えている。

ヴィエット氏によると、原発計画の準備のため、国会と政府はすでにニントゥアン海岸道路に投資を決定している。さらにタンミー貯水池(貯水量2億立方メートル以上)の建設再開も決定した。「もし原発計画をやらないのなら、これらの計画がニントゥアンの発展につながるだろう。」とヴィエット氏は述べた。

原発技術を学びに派遣された留学生については、ヴィエット氏は、「彼らは勉学を終えれば、ベトナム電力公社の発電所、計画立案、プロジェクト管理などの職に配置する。学生らは安心して勉学を続ければよいのであって、先の心配はない。」

10月14日に閉会した党第12期中央委員会第4回総会において、中央委員会事務局はニントゥアン省の各原発の建設計画展開の実施方針にかかる問題に関し、技術面および全面での見直しを行った。政治部が国会党団に提出した意見書と完全に意見が一致し、政府の党職員が報告書を完成させ、国会がこれを検討して決定を行う手順になっている。

2009年11月25日に、382票の議員の賛成を得て(全議員の77.48%に相当)、国会はニントゥアン原発建設計画を議決した。計画では原発は2ヶ所、1ヶ所につき2基の原子炉が予定されていた。ニントゥアン第一原発はトゥアンナム県フォックジン郡に、ニントゥアン第二原発はニンハイ県ヴィンハイ郡に、それぞれ2,000MWの容量で建設が決まっていた。            ホアイ・トゥー、ヴォー・ハイ

Reference:
http://vnexpress.net/tin-tuc/thoi-su/nhieu-dai-bieu-quoc-hoi-ung-ho-dung-du-an-dien-hat-nhan-3496951.html
(10/11/2016)

▼ニントゥアン第二原発の看板 (c)FoE Japan

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▼建設予定地の風景と人々のくらし (c)FoE Japan

 

ベトナム 原発計画を撤回!?-オールジャパンの売り込み攻勢の影で

ベトナムにおけるニントゥアン原発建設計画の白紙撤回の方針が報道されています。今日から国会で審議されるとのこと(注1)。
FoE Japanは、2011年からベトナムに建設される原発について問題提起を行ってきました。その一環として、先月、ベトナムを訪問。福島原発事故の経験を伝えました。
オールジャパンが売り込み攻勢をかける中、ベトナムのリーダーたちは冷静で賢明な判断をしたと思います。一方、移転を迫られた現地の人たちは…。ブログ記事にまとめました。

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原発建設予定地のニントゥアン省タイアン村に建てられた看板は、年月を経て、はげかかっている…

共同通信の報道によれば、ベトナム政府は、日本などの受注が決まっていたニントゥアンの原発建設計画を白紙撤回すると明らかにしたそうです。今日、国会に上程され、決定されるとのこと(注1)。
理由としては、財政難であることが挙げられていますが、原発のリスクについても言及されていました。

実は、先月、国会議員などが参加する原発に関する国際ワークショップに招へいされ、ベトナムに行き、福島原発事故の被害について報告させていただきました。

多くの人たちがふるさとを失ったこと、「原発さえなければ」と書き残して自殺した酪農家、除染・賠償・廃炉の費用がどんどん膨れ上がり、13兆円を超えたこと、東電は払いきれず、納税者や次世代が払うことになることなどを写真をまじえて報告させてもらいました。

終了後、ワークショップの議長を務めた国会議員が、「報道されていない福島の痛ましい状況がよくわかった」と話しかけ、握手をしてくれました。

ニントゥアン省の原発予定地は、ハノイから飛行機で3時間、車で1時間ほどの静かで平和な村。美しい豊かな海とふしぎな形の石と乾燥地の特異な生態系に囲まれており、人々は農業と漁業、家畜などで生計をたてています。

近くには美しい海を活かした観光拠点も多い、本当に本当に美しい土地です。

事業により移転しなければならないとされたタイアン村の人たちは、「国家事業だからしかたない」といいますが、「せっかく耕した農地やいまの暮らしを失いたくない」「本当は移転したくない」というのが本音なのです。

しかし、中には、「宙ぶらりんの状況はもういやだ。将来設計もできない。移転をするのかしないのか、はっきりさせてほしい」という人もいました。もう10年も、原発建設の話があるそうです。

新たに入ってくる原発事業により、雇用の増大に期待を示す人もけっこうたくさんいるという調査もあります。しかし、原発のリスクについてはもちろん説明なし。

翻弄されるのはいつも地元の人たちなのです。

それでも、私自身は、ベトナムのリーダーたちの慎重で冷静な判断を歓迎したいと思います。

日本は、経済産業省の補助金(「低炭素発電産業国際展開調査事業」)や委託事業で、28億円を原電に流し込み、F/S(実施可能性調査)を実施しています。その中には、復興予算の流用も含まれていました。さらにそれ以前には、東電が、経産省の補助金をつかってカーボンオフセット・クレジットの可能性調査をしていました。
ニントゥアン原発は、日本側が官民で売り込み、税金を使い、トップセールスを繰り返し、おそらくこうした巨大事業によって利権をえる人たちにくいこんで、かちとったものなのです。

原発はある意味、抜け出せない麻薬のようなものです。一度、巨大な利権が形成されると、にっちもさっちもいかなくなるのは、日本の例をみても想像できます。
地方分散型のエネルギー供給の仕組みも阻害されてしまいます。
そんな、「シャブ漬けエネルギー・システム」を、相手の国に売り込む。そしてその過程で多くの税金が使われた、という意味では、私たちにも責任があるのです。

ちなみに、ベトナムへの原発輸出は、日本側が政府系資金を貸し付けることが前提となっていました。しかし、ベトナムの対外債務問題も深刻です。ベトナムにとって日本は長年、最大のODA供与国。その大部分は「円借款」。ただし、ODAは原発には直接は使えません。送電線や周辺のインフラ整備、揚水発電などには、使われる可能性は大いにあります。
現にJICAはニントゥアン省における揚水発電事業に対して、協力準備調査を実施中です。もちろん、私たちの税金を使って。
ODA以外の公的資金の貸し付けも半端ではないでしょう。このままニントゥアン原発建設が進んでいけば、さらに巨額の債務が上乗せされたでしょう。

報道によれば、今日以降、国会でニントゥアン原発事業について審議されるそうです。情勢を見守りたいと思います。

関連記事>ベトナム・原発からの「勇気ある撤退」の理由とは

(満田夏花)

注1)日本受注のベトナム原発計画白紙 財政難理由、政権輸出戦略に打撃
(共同通信 2016年11月9日)
http://this.kiji.is/168978958645937661

日インド原子力協定にNO!

Amirtharaj Stephen (0)

Coast guard aero plane was flown too low over the protesting villagers who ventured into the sea as a part of their Jal Sathyagraha. (C) Amir Stephen

複数の報道によると、インドのモディ首相が来日中の11月に日本とインドが原子力協定に署名するのではと言われています。

FoE Japanはかねてより原発輸出に反対していますが、特にNPT(核不拡散条約)に加盟せず核実験も行っているインドとの協定締結は日本の核不拡散の姿勢とまったく矛盾し、核拡散のリスクを拡大させることから反対してきました。

今回は日インド原子力協定の問題点を改めて整理したいと思います。

【背景】
1975年、インドがカナダによる民生協力をもとに核実験を行った事からNSG(原子力供給国グループ)が設立され、NPTに加盟していない/IAEAの査察を受け入れない国との原子力貿易を制限(但し拘束力は無い)しました。これにより長らくインドは世界の核市場の外にありました。しかし、アメリカを含む様々な国がインドとの「例外的」な原子力協定を結びだし、日本も締結交渉を開始。

これには、広島・長崎市長をはじめ、多くの反対の声にもかかわらず昨年、覚書が取り交わされ、日インド共同声明の中で“両首脳は,日印民生用原子力協力協定に関し,両国政府間で合意に達したことを歓迎し,必要な国内手続に関するものを含む技術的な詳細が完成した後に署名されることを確認した”と記されました。

安倍総理は2016年1月7日の参議院本会議において
(以下要約)日印協定は、インドが核の平和利用に責任ある行動をとらせるものであり、実質的に核無き世界に向けた日本の姿勢に合致する。仮にインドが核実験を行った場合、日本からの協力は停止する。核実験モラトリアムが協定の前提になる事は、インド側も認識しており、そのうえで原則合意に至った。米仏がインドと締結したもの以上の協定を目指す。

と発言していますが、NPTやCTBTには触れていません。

【焦点】
協定締結交渉の焦点は
ーインドに日本が輸出した原発から発生する使用済み燃料の再処理を認めるかどうか
ーインドが核実験を行った場合に日本が原子力協力を停止する事を明記できるかどうか
と言われています。

しかし、日本はこれまで‘NPT’を中心とした不拡散レジームの維持を主張してきました。
日本政府側の言い訳としては
「インドはほかの非NPT国と違う…核実験をおこなうようなことがあれば、日本からの協力は停止」(12月14日内外情勢調査会)

としていますが、核実験をさせない枠組みや方法が明確でなく、またNPTに入らずとも原子力協定を結べるのなら、むしろNPT加盟へのインセンティブを損ないます。
また日印原子力協定によってインドが不拡散体制に組み込まれるとしていますが、どのように民生利用が転用されていないと確かめるのか、そのことをどのように担保するのかがまったく不明です。

その他、インドの原発事情や原発輸出が抱える問題点はこちらにまとめてありますのでご覧ください。
くわしくはこちら→
ファクトシート

★No Nukes Asia Forumとりまとめ
日インド原子力協定反対署名にご協力お願いします!
→https://goo.gl/x7ijUp

ベトナムで原発に関し国会議員やNGOらと意見交換を行い、福島原発事故の被害について訴えました

10月4日から7日まで、原発に関する国際ワークショップに参加するため、ベトナムに行って来ました。現地のNGOおよび財団が主催しました。

1日目のワークショップでは、ベトナムの国会議員や専門家があつまる審議会において、日本、ドイツ、南アフリカから参加した三人のパネリストがそれぞれのテーマで原発に関する発表をしました。ドイツの元SPD(ドイツ社会民主党)議員で、ゴアレーベン出身のピータークラウス・ダダ氏は、ドイツが脱原発を達成した経緯など報告。また、原発における数多くの事故や廃棄物の処理で、原発の費用が莫大にふくれあがっているなど指摘がありました。

また原子力発電所を有する南アフリカからの参加として、研究者でNGO代表、デイビッド・フィグさんが原発のライフサイクルコストについて説明。現在、南アフリカは原発の拡大を政策として掲げていますが、新たに建設する原発の調達に関して、政府は決定を先延ばしにしている事をあげ、原子力政策は様々な理由遅れたり、そのために費用がかさんだりすることも指摘。さらに南アフリカでは、放射性廃棄物の投棄サイトの近くに沢山人が住んでいるという問題や、南アフリカは経済成長しているがエネルギー需要が減っているなどの話がありました。また、会場からあがった「原発が世の中を豊かにするために電気を供給できるのではないか」との質問に対し、「原発があっても南アフリカの貧困の問題は解決していないし、むしろ多くの負の影響を与えている」と回答しました。

FoEの満田からは、福島の事故による被害の大きさについて発表。広範囲にわたる放射能汚染の状況、山菜やきのこ、魚を分かち合う喜びや、それも含めたふるさとが失われたこと、農林水産業が大きな打撃をうけたこと、事故がまだ収束していないこと、除染や賠償費用がふくれあがり、現在の納税者や未来の世代がになわされていること、一度事故がおきれば取り返しがつかないこと、周辺の環境や社会だけでなく、国として大きな損失が免れないということなどを報告しました。

また、ベトナムのNGO・Green IDから、ベトナムの再エネについて、さらにVUSTA(Vietnam Union of Science and Technology Associations)から、原発建設予定地のニントュアンの村での聞き取り調査についての報告がありました。

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フロアからは特にコストについてと再エネの可能性についての質問が相次ぎました。
原子力関係の機関から参加した人もあり、再エネ懐疑論や、原発はクリーンなエネルギーではないかなどの発言もありましたが、中には原発に対して慎重になるべきではとの声もありました。

ベトナムは現在「中所得国」。電気の普及率も全土で平均して9割を越えています。
街中はバイクや車であふれかえっておりとても活気があります。一方で大気汚染の状況はひどく、街の大気汚染は北京やニューデリー並みの日もあるそうです。工業廃水や生活廃水により、とくに最近では外国企業の排水が原因の魚の大量死も報告されています。

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ハノイの風景

ベトナムは原子力の導入を検討しており、ベトナム第6次電源開発プラン(PDP 6)において初めて原発について触れられています。
また、ニントュアン省に建設される原子力発電所2基について、2010年に日本が協力することが合意され、その後2011年に日ベトナム原子力協定が調印されました。日本政府は、国税合計25億円を費やして日本原電に実施可能性調査を委託。このうち5億円は復興予算が流用されました。
また、日本とのパートナーシップのもとですすめられているニントュアン第二原子力発電所以外に、ロシアとともに第一発電所の建設計画が進められています。ですが、原発の建設に関しては何度も延期がされてるのが実情です。

ベトナムは電力の大半をを大型水力と化石燃料で賄っていますが、風力や太陽光などの再生可能エネルギーのポテンシャルについても報告されています。
風の強いBac Lieu(バクリュウ)では、メガ風力の導入も決定しており、改訂された第7次国家電源開発プランでも再エネが強調されています。

ベトナムが原発や化石燃料などの持続可能でない「汚いエネルギー(dirty energy)」から、再生可能エネルギーにシフトするには、この機会を逃さない手はありません。
原発はコストも高く、安全ではなく、気候変動の解決にならない事はすでに歴史が証明しており、とくにそれは日本が一番経験しているはずです。

私たちがベトナムの人々に伝えたい事がどれくらい受け止められたかわかりませんが、今後も原発輸出に反対する立場から活動していきます。

ベトナムへの原発輸出に関する過去の活動
>http://www.foejapan.org/energy/news/111121.html

(スタッフ 深草)

原発輸出>JBIC/NEXIによるコンサルテーション会合報告…内閣府による「要綱」のズサンさが明らかに

9月21日、国際協力銀行(JBIC)と日本貿易保険(NEXI)の原子力関連プロジェクトにかかる情報公開指針(仮称)作成に関する第3回のコンサルテーション会合が開催されました。

これは、JBIC/NEXIが、原発輸出に対して公的信用を付与(つまり、融資や保険をつける)際の情報公開に関しての指針をつくるため、広く関心を有する人たちの意見を聞くため開催しているものです。JBIC/NEXIが、合意形成や透明性を重んじてこのようなプロセスをもつこと自体は高く評価したいと思います。

NGO4団体は、JBIC/NEXIに対して、原発輸出を支援すべきでないという前提にたちつつも、指針に関しては、情報公開にとどまらず、プロジェクトごとに立地特性などに即した実質的な安全確認をするべきだとして、今年1月、以下の提言書を提出していました。
http://www.foejapan.org/energy/news/160128.html

JBIC/NEXI側は、指針の内容を情報公開に限る理由として、「安全配慮確認は国が行う」としていました。
しかし国(内閣府)が実施する安全配慮確認は、原子力安全条約などの加入や加入意思、IAEAの総合規制評価サービス(IRRS)の受け入れを確認するだけであり、極めて形式的なものにすぎません。
詳しくは以下の要綱をご覧ください。http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/genshiryoku_kakuryo_kaigi/pdf/1006siryou3.pdf

本日の会合では、NGO側がかねてから求めていた国による「安全配慮確認」に関して、内閣府からの説明が実現しました。説明は概ね、上記の要綱の内容をなぞっただけですが、とりわけ、印象に残ったのは、「安全配慮確認」を以下のようにきわめて限定的に定義しているということです。

1) 相手国又は地域における原子力安全の確保、放射性廃棄物対策及び原子力事故時の対応に関する国際的取決めの遵守及び国内制度の整備
2) 当該原子力施設主要資機材の供給事業者による国際標準に適合した品質の確保に係る契約の締結及び安全関連サービス提供態勢の整備
3) 発電用原子炉施設の設置の場合における IAEA(国際原子力機関)の実施する主要な評価サービスの受入れ及び関連する許認可の取得

その後の質疑で、以下のようなやりとりがありました。(そのうちJBICのサイトに議事録が公開される予定です)。総じて、現在の内閣府による確認体制が、「形だけ」であることが明らかになったと思います。

・立地や耐震性などプロジェクトに即した実質的な安全確認はしないのか
→一義的には、安全確認は相手国が行うもの。日本としては、相手国が条約に加入していること、または加入の意思があること、IAEAのレビューを受けていること、または同等の措置を行っていることを確認する。

・原子力安全条約・IAEAレビューだけでは実質的な安全は担保できない。現に同条約に加入し、IAEAレビューを受けている日本でも事故が起こった。福島原発事故を繰り返さないというのが国是ではないのか
→明確な答えなし。

・内閣府に置かれた「審議官級」の会議では、実質的な安全確認はできない。根本的に見直すべき
→組織的に対応するという意味。見直すつもりはない。

・議事要旨を事後に公開するだけでは不十分。議事録を公開し、傍聴・中継を認めるなど、原子力規制委員会が行っているような対応をすべき
→自由な議論をさまたげないように、議事要旨のみの公開としている。

・パブリック・コメントを行うなど国民の意見の収集・反映に努めたのか。
→国民の権利・義務にかかわることではないので、パブコメは不要。

・実際に調査票を埋める外部専門家とはだれか?
→IAEAにつとめた経験のある専門家など。

・外部専門家の氏名・レポートは公開されるのか。
→まだきまっていない。

・15億円以下は安全配慮確認の対象としないのは問題ではないのか?
→行政コストの合理化という観点から。ネジ一本に至るまで確認することはできない。OECDのコモンアプローチも考慮した。

・被ばく労働など社会的な配慮に関する評価は行わないのか
→相手国が行うことである。

福島原発事故を繰り返さない、そのことさえ、蔑ろにされています。少なくとも内閣府の参事官は一度もそれを口にしませんでした。

また、「事業の安全配慮確認の責任は一義的には相手国が担うこと」…総じて、この内閣府によるやる気のない「要綱」はそこから出発しているようです。

しかし、日本が総力をあげて、国として、事前調査から多額の税金を投入し、オールジャパンで海外の原子力事業をすすめようとしている中、それは無責任きわまりない論でしょう。

数十年前、日本のODAを含む投融資が海外で甚大な人権侵害・環境破壊を引き起こしていたとき(そしてその状況はまだ続いているのですが)、ともかくも「いや、実施国だけではなく、資金を提供する日本にも相応の責任がある」とコンセンサスがえられた時代に逆もどりしたような状況です。

みなさん、今後もこのプロセスに注目してください。

(満田)

遠のく「核なき世界」 インドの原子力供給グループ(NSG)入りの動きを後押しするアメリカ

先日オバマ大統領が現職のアメリカ大統領として広島を訪問し、話題になりました。
ですが、私たちは核の脅威なき世界に近づいているのでしょうか?

今週、アメリカを訪れていたインド・モディ首相とアメリカ・オバマ大統領の間で、米・ウエスティングハウスがインドで6基の原発を建てる事を確認。早期の建設開始に向け合意しました。ホワイトハウス発表の共同声明によると、原発の建設にあたってはアメリカの公的な輸出銀行である米輸出入銀行(US EX-IM)が融資協力等を行うことも示しています。

FoE Japanがかねてより反対している日インド原子力協定ですが、インドの原子力を巡ってはアメリカとインドの動きはとても重要です。

実は、インドの原子力供給国グループ(以下NSG)入りをめぐって、アメリカとインドの間で様々な動きが見られます。インドは核不拡散条約に入らず核実験を行った国で、核実験のために使われた機材や技術はもともと民生利用として支援を受けたものでした。
これをうけて、原発輸出を行う限られた国同士でNSGをつくり、民生利用の為に輸出された原子力技術が軍事転用されないためのルールを定めました。
インドは原子力技術に関して経済制裁を受けており、原発の技術や資材を輸出する事も輸入する事も出来ない状態でした。
ですが、インドの大きな原子力市場を狙って、また様々な政治的思惑により、インドへの経済制裁が一部解除され、インドへの原発輸出が可能となりました。本来、核不拡散条約に加盟していない国に原発輸出しないというNSGのルールがあったのですが、インドは例外扱いとなりました。
これを受け、アメリカやフランス、オーストラリア等の国が次々とインドと原子力協定をむすんでいったのです。
*インドの原子力協定について詳しくはこちら>日インド原子力協定

アメリカもインドとは原子力協定を締結しており、ウェスティングハウスによる原発計画がかねてより進行中で、モディ首相のふるさとでもあるグジャラート州に6つの原発を建設予定でした。しかし現地の果物農家の反対により移転を余儀なくされました。さらにインドには原発が事故等を起こしたときに、メーカーに責任を定める原子力賠償法(Nuclear Liability Law)があり、それがインドへの原子力輸出のハードルを上げていたとされています。

今回の共同声明の中では、インドのCSC条約(事故の際、メーカーではなく事業者が責任を負う)批准を含むいくつかのステップで、関係が強化されたとも触れられています。

現在、アメリカのオバマ大統領はインドのNSG入りを後押ししており、日本もNSGのメンバー国の1つとして安倍首相は前回の日インド首脳宣言で、インドのNSG入りを支持しています。ですが、核不拡散条約にも包括的核実験禁止条約にも入らず、IAEAの査察も完全には受け入れていないインドをNSGのフルメンバーとして認める事は、核不拡散体制の形骸化に他なりません。

日本もアメリカも、インドのNSG入りを反対すべきです。さらに、インドがNSGのメンバーとなれば。パキスタンとの対立や緊張関係がさらに悪化する事も予想されます。

ウエスティングハウスを有するのは日本の東芝ですが、日本とインドはまだ原子力協定を結んでいません。
今後、日本とインドの原子力協定締結に向けて加速していくでしょう。(forbes紙は、アメリカの技術を使うので、日インド原子力協定は障害にならないとのコメントもありますが、原子力資料情報室の方によると多くの原発関係機材を最早アメリカではつくらず日本などから輸入しているとの事。)

そもそもインドの原発を巡っては土地収奪、人権侵害、非民主的弾圧、核開発など様々な問題があります。インドでは太陽光の伸びが大きく、また巨大な国土でエネルギーアクセスを確保するために原発が向いているとは言えません。
現地の反対運動も活発です。

核なき世界を目指すオバマ大統領は、原発も核拡散の脅威であるという事を強く認識するべきです。

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日インド原子力協定反対官邸前アクションの様子(2015.12)

(スタッフ:深草)

参考:
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/71167174-2acb-11e6-a18d-a96ab29e3c95.html#axzz4Asi1Xu00
http://timesofindia.indiatimes.com/india/US-based-Westinghouse-to-build-6-nuclear-power-plants-in-India/articleshow/52644065.cms
http://www.armscontrol.org/ACT/2016_06/Focus/Obamas-India-Nuclear-Blind-Spot
http://in.reuters.com/article/india-usa-nuclearpower-modi-idINKCN0YU07U?feedType=RSS&feedName=topNews