疑問だらけの東電・処理汚染水放出「素案」

3月24日、東電がALPS処理汚染水の放出に関する「素案」を発表した。
「一度に大量に放出せず、年間トリチウム放出量は、廃止措置に要する30~40年の期間を有効に活用する」とし、水蒸気放出・海洋放出のそれぞれのフローを示している。また、タンクの72%の水で基準超えしているトリチウム以外の放射性核種については、「二次処理を行う」としている。
この「素案」、以下のように数々の疑問が呈されているのにもかかわらず、経産省はこれをそのまま自らのウェブサイトに掲載し、現在行っている意見募集の基礎資料の一つとしている。

何が残留しているのか

東電によれば、トリチウムについては、タンク水に約860兆ベクレル残留している。(建屋の中には保守的に見て1,209兆ベクレル残留していると見積もっている。)
トリチウム以外に、セシウム137、134、ストロンチウム90、コバルト60、アンチモン125、ルテニウム106、ヨウ素129なども残留し、告示濃度比総和(注)の分布は以下の通り。

注)告示濃度比総和とは、それぞれの核種の濃度を告示濃度(排出濃度基準)で割ったものを足し合わせたもの。全体として排出基準の何倍になっているかを示す。排出する際は1を下回っていなければならない。

文書名東電への質問200423(解説付き).pdf

告示濃度比総和は、最大14442.15倍とのことだ(2018年10月1日付東電資料では約2万倍となっていた)。つまり、これらの核種で全体としてみたとき基準の最大14000倍以上となっているということを意味する。この数字は東電の説明資料からは省かれている。(ちなみに、2018年10月1日東電資料には書かれていた)

告示濃度比で最大なのはストロンチウム90。化学的性質がカルシウムに似ているので骨に蓄積することが知られている。

残留核種の総量は不明

問題なのは、東電はそれぞれの核種が、総量でどのくらい残留しているのか示していないことだ。タンクごとに核種濃度がわかれば、簡単に計算できるはずなのに、それをしない理由は何なのか。放出する水がどのようなものであるのかは、もっとも重要な情報である。

二次処理するからいいじゃないかということなのかもしれない。しかしそれでは、二次処理後はどの程度の量になるのか。二次処理した上で、その総量を示すべきだと思うのだが、それすら明言していない。

また、少なくとも二次処理せず放出する28%の水については、含まれている放射性核種、その総量、その他の汚染物質について開示すべきではないか。
また、排出する水の総量も不明である。もちろん、トリチウムの排出量、濃度をどうとるかによって変わってくるが、いくつかの代表的なケースごとに示すべきではないか。

「二次処理」の性能試験は?

それでは、「二次処理」によってどのくらい放射性物質を除去できるのか。
東電は、「素案」の中で、「2020年度、高濃度のもの(告示濃度限度比100倍以上)を約2,000m3程度処理し、二次処理の性能を確認する」としている。

リスク管理という観点からは、高濃度の水を優先的に二次処理することは理解できる。
しかし、目的が「二次処理の性能を確認」するためであれば、より低濃度の水も含め、1~100倍のものも含め、処理対象のそれぞれの濃度のバンドから抽出し、二次処理の性能を確認するべきではないか。

問題の多い海洋拡散シミュレーション

東電の「素案」には、海洋放出した際の拡散シミュレーションについても記載されている。

東電処理水200324_ページ_21

東電によれば、「2014年の実気象に対して、放出量を仮定して連続的に放出した場合のシミュレーション結果を一例として提示したもの」とのことである。
年間放出量ごとにトリチウム1ベクレル/ℓ以上となる海域が示されている。

しかし、このシミュレーションには数々の疑問が呈されている。

まず、影響範囲を1Bq/ℓ以上としている理由が不明だ。東電の「素案」p.22の図によれば、原発近傍ですら、核実験や原発事故の影響を受けていない期間の海水の濃度は0.5Bq/ℓ程度にみえる。影響範囲というのであれば、もう少しきめ細かく、0.5Bq/ℓ以上から何段階かに分けて示すべきではないだろうか。

東電処理水200324_ページ_23

また、鉛直方向にも30層にわけてシミュレーションを行ったとのことだが、示されているのは一番上の層だけ。「鉛直方向には均一に分布」しているとして、この30層のシミュレーションは開示していない。しかし、いくら何でも「鉛直方向に均一に分布」というのは不自然ではないだろうか。

原子力市民委員会委員、大沼淳一氏(元愛知県環境調査センター主任研究員)は以下のように指摘している。

「そもそも拡散シミュレーションをする場合には、初期条件と環境条件を明らかにしてからしか作業することが出来ないが、それが明らかにされていない。日間、月間、年間を含めた干満、沿岸流、海底地形、流入河川水、年によって変動する黒潮の蛇行などである。放出される汚染水の水量、放出速度、放流水深、放流口の形状、水温、密度なども必須の入力項目である。シミュレーション結果は、これらの変数を変化させて、そのケース毎に拡散図が示されるべきである」

「素案では、解像度が水平方向は1㎞メッシュ、鉛直方向は水深に対して30層(深さ1㎞まで)とされている。すなわち1km四方で深さ「水深/30」mの箱(水深30mなら100万立米、1000mなら3000万立米)を積み上げて計算していることになるが、いかにも箱が大きすぎる。最初の箱に汚染水を放出して均等にかき回される保証はどこにもない。汚染水の放出速度にもよるが、せめて10mx10m(30層)の箱を積み上げるべきである」

つまり前提条件が不明確な上に、おおざっぱすぎる、ということだ。

ちなみに、「何年間放出すると仮定したのか」という質問に対して、東電は、「1年間の連続放出をした場合、例えば、22 兆ベクレルを一定の放出率で1年間継続して放出する場合、開始から1年以内に放出と拡散とのバランスがとれて、その後は、任意の点における濃度が準定常状態(濃度がある一定の変動範囲内に収まること)となります。従いまして、「何年間」という仮定はしておりません。」と回答している。

前述の大沼氏は、以下のように指摘する。

「素案で示したのは、長期間放出を続けて、準定常状態になった時の汚染分布図」だと回答している。コンピューター上で、数百回(1年間なら約700潮汐)の潮汐を繰り返させた結果であろう。漁民や市民が懸念しているのは、こうした平均値ではない。1日に2回起きる潮汐でも大きさが異なる。大潮と小潮では干満差が全く違う。黒潮の蛇行も季節変化や年変化が大きい。風の影響、降水量の影響なども大きく、沿岸流の方向は逆転することも頻繁に起きている。こうした環境要因の変動ごとに、放出される汚染水塊がどのように拡散するかが知りたいのである。」

東電によれば、このシミュレーションは、電力中央研究所が実施し、米国Rudgers 大学により開発された領域海洋モデル「ROMS:Regional Ocean Modeling System」に、トレーサー計算できるように改良を加えたプログラムを利用しているとのことである。また、シミュレーションの適用にあたっては、Cs-137 の実測データによりモデルの検証を行っているということだ。>参考文献

その他、モニタリングなどに関しても数々の疑問があるが、それらはまた後日述べたい。

(満田夏花)

※FoE Japanでは、「原発ゼロの会」のご協力をえて、東電の「素案」に関して、現在までに3回東電に対して質問書を提出しています。質問への回答は以下をご参照ください。(すべてPDF)

東電回答(2020年4月1日)
東電回答(2020年4月8日)
東電回答(2020年4月29日)

「よりよい海を取り戻したい。海洋放出は反対」…福島の漁業者が訴え

福島第一原発のサイトでタンク内にためられているALPS処理汚染水--。
政府小委員会は、「水蒸気放出」「海洋放出」が現実的とし、「海洋放出」の方が利点が大きいとする報告書をだしました。
FoE Japanでは、2020年3月、小名浜や新地町の漁業者のインタビューを行いましたが、より多くの人たちに漁業者の直接の声をきいていただきたいということで、小名浜から底曳網漁協の理事である柳内さんをお迎えし、永田町の議員会館で、経済産業省・東電・国会議員がいる前で「お話しをきく会」を開催しました。新型コロナの影響を考慮し、一般の方々には、オンラインで参加していただきました。
柳内さんは処理汚染水を海に流すことは、福島の漁業に大きな打撃を与えるとして、放出反対の意見を述べました。

柳内さん(議員会館にて)
(議員会館にて、福島の漁業の状況や処理汚染水を放出に関する懸念を述べる柳内さん)

以下、柳内さんのお話の概要です。>録画映像はこちらから。

・現在、ほとんどの魚種が出荷制限解除になっているが、なかなか震災前の水揚げが回復していない
・ALPS小委員会の報告書が、海洋放出を推奨しているともとれる内容でたいへん危惧している
たとえ浄化して海洋放出が実施されたとしても水産業にとって大きな打撃となる。海外の輸出禁止措置の解除もむずかしくなる
・漁業の先が見通せず、投資意欲も減退している
・投資をしたとしても売り上げが回復しなければ借金のみが残ってしまう
事故前のトリチウムの放出量は年間2.2兆ベクレル、これが東電の「素案」では少なくとも年間22兆ベクレルのトリチウムが、数十年かけて放出されてしまう
・(2018年の)公聴会でいろいろな人が意見を述べたが、多くの人が陸上での保管継続をすべきと発言。しかし、それができないと。できない理由として(敷地外に持ち出すことについて)法律がネックになっているということであったが、たとえば中間貯蔵施設についても新たな法律をつくって対応していた。今回の水の件も同様に対応できるはず。
・事故前の漁業に戻すには、競争力を取り戻さなければならない。福島の海をよりよい海にしていく必要がある。さもないと私たちは復興できない。

また、今回、経済産業省が、「地元をはじめ、幅広い関係者の意見をきく」としていることについては、以下のように指摘。

「関係者の意見をきく、というが、すでに公聴会のときに(海洋放出反対の)意見は言っている。意見をきいて、それをどう反映するかが問題だ」

柳内さんのお話のあと、東電・経済産業省との質疑を行いました。

東電が発表している処理汚染水の「処分素案」に関して、東電は以下のように説明。

・年間の放出量が事故前の福島第一原発の管理目標値22兆ベクレルであるとすると、放出完了までに20~30年かかる。
・排出する水の総量(m3/日)は示すことができない。
・現在、タンクにたまっている水には、トリチウム以外に、セシウム-137、セシウム-134、ストロンチウム-90、コバルト-60、アンチモン-125、ルテニウム-106、ヨウ素-129などの放射性核種が残留している。
・トリチウム以外の核種の告示濃度比総和(各核種の濃度を、その核種の排出濃度基準で割り足し合わせたもの)の最高値は14442.15倍となっている(2018年10月の発表資料では約2万倍)。この中でもっとも告示濃度比総和が高いものはストロンチウム90

東電は、タンク水の二次処理を行い、トリチウム以外の放射性物質の濃度を基準以下に下げると言っていますが、どの程度下げられるのか、残留する放射性核種や微生物などはどの程度になるのかについては、示していません。

東電処理水200324_ページ_10

(東電、3月24日発表のALPS処理水処分素案 p.9)

また、東電が3月24日に公開した、仮に海洋放出を行った場合の拡散シミュレーションについても議論となりました。

東電処理水200324_ページ_21

(東電、3月24日発表のALPS処理水処分素案 p.20)

このシミュレーション、いろいろと問題が多いと思いますが、最も問題なのは放出の前提が示されていないことでしょう。
季節、干潮時・満潮時、水温、水量などが示されていません。

また、東電は、1Bq/L以上の部分を示していますが、なぜ1Bq/Lなのでしょうか。
東電が発表している以下のグラフを見る限り、福島第一原発近くにおいても、核実験や原発事故の影響を受けていない時期の値は0.5Bq/L程度に見えます。

東電処理水200324_ページ_23

(東電、3月24日発表のALPS処理水処分素案 p.23)

さらに、水深ごとの鉛直方向の結果を出してほしいと言っても、「表層から放出されたトリチウムは、海洋の混合の影響によって、鉛直方向に均一に分布する」という回答でした。

「ALPS(多核種除去設備)で処理されたがトリチウムなど放射性物質を含む水」(以下、ALPS処理汚染水)について、現在、経済産業省が一般からの意見を募集しています(5月15日まで)。

多くのみなさまにパブコメを書いていただくことを目的として、以下のオンラインでのパブコメセミナーを開催します。ぜひご参加ください。

〇第1回 ALPS処理汚染水パブコメ・セミナー:4月17日(金)12:00~13:30
(講師:満田夏花/FoE Japan)
〇第2回 ALPS処理汚染水パブコメ・セミナー:4月26日(日)14:00~15:30
〇第3回 ALPS処理汚染水パブコメ・セミナー:5月 2日(土)14:00~15:30
内容:ALPS処理汚染水を議論のポイント
実際にパブコメを書いてみよう

ご参加の方は以下からお申込みください。
https://pro.form-mailer.jp/fms/27c1d91b193245
お申込者に後ほど、メールにて、オンラインでの会議システムzoomの使い方と
参加可能なリンクをお送りします。

▼以下ご一読ください。
【ALPS処理汚染水、大気・海洋放出で本当にいいの? パブコメを出そう!(〆切5月15日)】
http://www.foejapan.org/energy/fukushima/200407.html

★東電福島第一原発で増え続ける、放射能を含んだ「処理水」Q&A
Q:そもそも「処理水」って何?
Q:「処理水」には何が含まれているの?
Q:トリチウムは安全?
Q:海洋放出しか現実的な手段はないの?
Q:敷地は本当に足りないの?
Q:漁業者は何と言っているの? など

http://www.foejapan.org/energy/fukushima/200324.html
http://www.foejapan.org/energy/fukushima/200324.html

置き去りとなったALPS処理汚染水長期陸上保管の選択肢

東京電力福島第一原発で増え続けるALPS処理汚染水について、経産省のもとに設置された「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」(ALPS小委員会)は、昨年12月23日、「海洋放出」、「水蒸気放出」、そしてその組み合わせという3つの案に絞り込んだ「とりまとめ案」を発表した。しかし、これらはいずれも放射性物質の環境中の拡散を許すものとなっている。大型タンク貯留案やモルタル固化案などの陸上長期保管の代替案は無視されてしまった。

ALPS処理汚染水は、2019年10月段階で約116万m3、タンク数は960基にのぼる。トリチウムの総量でいえば推定856兆ベクレル(注1)。タンクにためられている水のうち約8割で、トリチウム以外の62の放射線核種の告示比総和が1を超えている(告示比総和とは各核種濃度の告示濃度限度に対する割合を足し合わせたもの。排出基準として1未満でなければならない)。ヨウ素129やストロンチウム90などだ。東電は海洋放出する場合は二次処理を行い、基準以下にするとしている。

汚染水に関しては、更田原子力規制委員会委員長が「希釈して海洋放出が現実的な唯一の選択肢」と繰り返し発言。原田前環境大臣も記者会見で「海洋放出しかない」と発言し、大きく報道された。しかし、十分現実的な陸上保管案が提案されているのにもかかわらず、それについてはほとんど検討されていないし、報道もされていない。

実質的な議論がなされなかった大型タンク保管案

陸上保管案については、大型プラントの技術者も参加する民間のシンクタンク「原子力市民委員会」の技術部会が、「大型タンク貯留案」、「モルタル固化案」を提案し、経済産業省に提出している(注2)。

大型タンク貯留案については、ドーム型屋根、水封ベント付きの10万m3の大型タンクを建設する案だ。建設場所としては、7・8号機予定地、土捨場、敷地後背地等から、地元の了解を得て選択することを提案。800m×800mの敷地に20基のタンクを建設し、既存タンク敷地も順次大型に置き換えることで、今後、新たに発生する汚染水約48年分の貯留が可能になる。

2018年8月、ALPS小委員会事務局が実施した公聴会では、漁業関係者も含めた多くの参加者が海洋放出に反対し、「陸上長期保管を行うべき」という意見が表明された。これを受けて山本 一良委員長は、「一つのオプションとして検討する」と約束。

しかし、陸上保管がようやく俎上に上がったのは、一年近くたった2019年8月9日の第13回委員会でのことだった。第13回の会合で東電が大型タンク貯留に関して、「検討したが、デメリットが大きい」という趣旨の説明を行ったのみだ。これに対する質疑や議論は行われていない。

東電がデメリットとして挙げたのは、「敷地利用効率は標準タンクと大差ない」「雨水混入の可能性がある」「破損した場合の漏えい量大」といった点であった。大型タンクは、石油備蓄などに使われており、多くの実績をもつことは周知の事実だ。また、ドーム型を採用すれば、 雨水混入の心配はない。さらに、原子力市民委員会による大型タンクの提案には、防液堤の設置も含まれている。ALPS小委員会は、東電の一方的な説明のみを受け入れるべきではない。

「モルタル固化案」はまったく無視

原子力市民委員会が提案する「モルタル固化案」は、アメリカのサバンナリバー核施設の汚染水処分でも用いられた手法で、汚染水をセメントと砂でモルタル化し、半地下の状態で保管するというもの。

「利点としては、固化することにより、放射性物質の海洋流出リスクを遮断できることです。ただし、セメントや砂を混ぜるため、容積効率は約4分の1となります。それが欠点といえるでしょう。それでも800m×800mの敷地があれば、今後、約18年分の汚染水をモルタル化して保管できます」。同案のとりまとめ作業を行った原子力市民委員会の川井康郎氏(元プラント技術者)はこう説明する。

事務局は、「実績がない」として片付けようとしているが、サバンナリバー核施設での実績をもちだすまでもなく、原発の運転時に発生する低レベル廃棄物についても、その多くがモルタル固化され、トレンチあるいはビット処理を行っている。きわめてシンプルな手法であり、現実的だ。「実績がない」として片付けることは理屈にあわない。

敷地は本当に足りないのか

敷地をめぐる議論も、中途半端なままだ。

東電が示した敷地利用計画は、使用済核燃料や燃料デブリの一時保管施設、資機材保管に加え、モックアップ施設、研究施設など、本当に敷地内に必要なのかよくわからないものも含まれている(注3)。さらに、使用済み核燃料取り出しの計画はつい最近最大5年程度先送りすることが発表されたばかり。デブリの取り出しについても、処分方法も決まっていない。そもそもデブリの取り出し自体を抜本的に見直すべきではないか。

委員からは、「福島第一原発の敷地の利用状況をみると、現在あるタンク容量と同程度のタンクを土捨て場となっている敷地の北側に設置できるのではないか」「敷地が足りないのであれば、福島第一原発の敷地を拡張すればよいのではないか」などといった意見がだされた。

敷地の北側の土捨て場にもし大型タンクを設置することができれば、今後、約48年分の水をためることができると試算されている。

委員から再三にわたり、「土捨て場の土を外に運びだすことができないのか」という質問がなされたが、原子力規制庁は、「外に出す基準について検討が必要」という趣旨のあいまいな回答にとどまっている。

土捨て場にためられている土について、東電は「数Bq/kg~数千Bq/kg」と説明しており(注4)、これが正しければ敷地から動かせないレベルの土ではない。

敷地拡大の可能性については、事務局は「福島第一原発の外側である中間貯蔵施設予定地は、地元への説明を行い、福島復興のために受け入れていただいており、他の用途で使用することは難しい」としている(注5)。もちろん、地元への説明・理解は不可欠であるが、その努力をまったくせずに、「敷地拡大は困難」という結論を出すことは時期尚早だろう。

問題が多い小委員会「取りまとめ案」

 昨年12月に発表されたALPS小委員会の「取りまとめ案」は小委員会の議論を反映したものではなく、事務局や東電の誘導により「海洋放出」、「水蒸気放出」、そしてその組み合わせという結論を導き出したように思える。

 前述の大型タンクをめぐっては、東電の説明をそのままなぞるだけの文面となっている。

土捨て場の土壌の運びだしに関しては、「敷地内土壌が汚染されている実態が明らかになっていないこと、敷地内の土壌の搬出先、保管方法等についての具体化がなされていないこと、敷地内土壌の最終的な処分方法が決まっていないことから、敷地外へ土壌を持ち出すことは困難であるとの結論に至った」など、小委員会で議論されていないことも含めて、決めつけている(注5)。

 にもかかわらず、小委員会の委員が明確な異論を示さない限り、この事務局主導の「取りまとめ案」が委員会の意思として固まってしまうだろう。

 ALPS小委員会での議論はそろそろ大詰めだ。近日中に小委員会が開催され、「取りまとめ」が確定するだろう。そして、地元の理解を得たことにする何らかのプロセスがはじまると思われる。

 しかし、地元の漁業者は「放出ありき」の議論に、早くも反発を強めている。

 ALPS小委員会は、陸上保管案を真剣に検討し直し、地元も含めた幅広い市民の意見をきくべきだろう。

注1) 2019年11⽉18⽇東電発表資料
注2)原子力市民委員会「ALPS 処理水取扱いへの見解」2019年10月3日
注3) 第14回 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 資料3
注4) 第15回 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会における東電発言
注5)第16回 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 資料4

ICRP「大規模原子力事故後の放射線防護」勧告草案に意見を出そう!(締め切り:10/25)

>締め切りが10月25日に延期になりました!
>FoE Japanでもコメントを出しました!

ICRPの「大規模原子力事故における人々および環境の放射線防護」草案が公開され、ウェブ上でパブコメにかかっています。
草案全文およびパブコメはこちらから(英語)>http://www.icrp.org/consultations.asp

上記のサイトを開き、「submit comment」という緑のボタンを押し、名前、E-mail、団体名およびコメントを書いて、「Submit」ボタンを押してください。コメントはあらかじめ下書きを書き、コピーペーストするのがおすすめです。PDFファイルも添付できます。日本語でも出せます。

ICRP勧告案の主要部分の日本語訳
>その他の部分の日本語訳(市民団体による仮訳)は、市民科学研のページからダウンロードできます。
今回のとりまとめにあたったICRPタスクグループの甲斐座長による説明資料
ICRP勧告は人々を被ばくから守ったか?~東電福島原発事故の経験から~

ICRPが新しい勧告を出すと、日本を含め多くの国で放射線防護関係の法令の見直しが行われます。しかし、多くの人がパブコメを行われていることすら知らないのではないでしょうか? 

FoE Japanも参加する原子力市民委員会が、①日本語版を作成すること②日本において公聴会を開催すること③締め切りを延長することーを要請したところ、8/20付で回答がきました。①については主要部分を翻訳する、②についてはすでに類似のもの(福島ダイアログなど)を開催しちるという回答でした。③については、その後、締め切りが10/25まで延長されました。

さて、ICRPの勧告草案の中では、「参考レベル」という言葉が何度もでてきます。これはとてもわかりづらい言葉ですが、「暫定的な目標値」という言い換えが最も近いでしょう。この「参考レベル」以上の被ばくをしているの人たち(図のグレーの部分)を対象に、放射線防護の対策をとっていき、参考レベル以下にしていく。ある程度その対策が進んで、参考レベル以上の人たちの人数がすくなくなれば、参考レベルもまた下げていくというものです。(下図)。

ICRP Pub.111 「原子力事故または放射線緊急事態後の長期汚染地域に居住する人々の防護に対する委員会勧告の適用」
http://www.icrp.org/publication.asp?id=ICRP+Publication+111

現行のICRPのPub111は「(現存被ばく状況の)参考レベルは、1~20mSvの下方部分から選択すべきである。過去の経験は、長期の事故後の状況における最適化プロセスを拘束するために用いられる代表的な値は1mSv/年であることを示している」としています。
「現存被ばく状況」とは、原発事故直後の混乱がおさまったあとの、回復期を意味します

今回の改定草案では、以下のようにしています(パラ80)。

「緊急対応時の後の長期汚染地域に居住する人々については、委員会は、長期に続く現存被ばく状況では、実際に人々がうける被ばくの状況やリスクへの耐久性(tolerability)を考慮して、1-20 mSvのバンドまたはそれ以下で参照レベルを選択することを推奨する。一般に、年間1 mSvのオーダーまで被ばくを段階的に被ばくを減らすため、年間10 mSvを超える必要はないであろう。
Publication 111(ICRP、2009b)で、委員会は1–20-mSv帯域の下部の参照レベルの選択を推奨した。選択された参照レベルが一般に10 mSvを超える必要がないであろうという今回の推奨事項は、この立場を明確にするものである。」

つまり、参考レベルの記述のみをみると、現行の勧告と同じことを言っていると解釈できます。

「参考レベル」というわかりづらい概念を設定し、被ばくの「上限」や「基準」を定めず、結果的に高い被ばくでも許容してしまうの? ということ自体も問われるべきでしょう。「上限」とか「基準」を定めても、事故が起こればそれを簡単に超えてしまう。対策もそうそうとれない。とろうとしても膨大な社会的なコスト、影響が発生する。そうすれば、原子力産業が存続できない、ということなのではないでしょうか。

しかし、日本政府はこのICRPの勧告すら守りませんでした。2011年4月に年20mSvを基準に計画的避難区域などを設定しましたが、その後、避難区域解除のいくつかの条件のうち、放射線に関するものは年20mSvを下回ることとしました。つまり、避難・帰還の基準を20mSvで高止まりさせてしまい、「1~20mSvの下方から参考レベルを選び、それを順次下げていく」というICRPの勧告は採用されなかったのです。

一方で、今回の改定草案では、現行の勧告の「緊急時被ばく状況」と「現存被ばく状況」を、「緊急時対応(早期/中間期)」、「回復プロセス」(長期)に分けなおしていることにも注意が必要です(下図)。

ICRP緊急時、回復期

(出典:ICRP「大規模原子力事故における人々および環境の放射線防護」草案 p.10)

「緊急時」を長くとれば、より長い期間、緊急時を理由にして、より高い参考レベルを採用し、政府が、避難などの防護策をとらずにすませることを可能としているのではないか、気になるところです。

いずれにしても、ICRPの勧告はとても抽象的であり、政府には都合のよい解釈を許すものとなっています。

その他、以下のような問題点もあります。

  • 被ばくを、個人のライフスタイル、個人の行動によるものとし、結果的に「被ばく」を個人の責任に帰しているのではないか。
  • 避難区域や避難勧告の設定や土地利用のゾーニングなど、「場の管理」の重要性を軽視している。
  • 避難による健康被害や死亡については触れているが、避難できないことによる葛藤や被ばくリスク、避難者に対する賠償や支援が適切に行われないことによる避難者の窮乏についてはふれられていない。避難の有用性を、「緊急時」の早期に限っているようにも読める。
  • 住民が被ばくを避ける選択を行う権利についてふれていない。

東電福島原発事故を描写している付属書Bについても、多くの問題があります。たとえば、以下のような重要な事実がふれられていません。

  • 避難区域外からも多くの人たちが避難を強いられたのにもかかわらず、2011年12月までは区域外からの避難者に対する賠償はなく、2011年11月に決まった中間指針でも、とても少額であった。その後、避難者に対する住宅提供も次々に落ち切りになり、区域外避難者の困窮、社会的・経済的な圧迫につながった。
  • 避難・被ばく防護の政策、避難区域の再編、避難解除の基準に関して、人々の意見が反映されなかった。例えば、避難解除について、説明会は開かれ、多くの住民が「解除は時期尚早」と意見をいっても、これらの声は無視されてしまった。
  • 避難者・居住者・帰還者を等しく支援するという「子ども・被災者支援法」が満足に実施されなかったが、それについても記載がない。
  • 福島県県民健康調査において、見出された甲状腺がんについて、「事故後の放射線被曝の結果である可能性は低い」とのみ記載し、「甲状腺がんが多く発生している」こと(検討委員会も認めている)、多くのもれがあることなど、重要な事実を記載していない。

みなさまも、ぜひチェックしてみてください。

▼改定の中心となったICRP TG93座長甲斐倫明氏によるプレゼン資料
https://drive.google.com/file/d/12k7NDfkE47iKHGy8XXYyl_G-4O2ctvf_/view

▼満田プレゼン資料

本件に関して、ぜひ日本からも声をあげていきましょう。
FoE Japanでも引き続き発信をしていきます。     (満田 夏花)

「オリンピック、どう思う?」 避難者の声をききました。~優先すべきことは何?

東京オリンピックまであと1年となりました。「復興五輪」とも呼ばれていますが、原発事故の避難者の方々はどのように感じているのでしょうか? これについて、海外のメディアから問い合わせがあり、福島から東京に避難している方々の「声」を集めました。いろいろ考えさせられる内容であったため、ご本人たちの了解を得られたものについて、FoE Japanのブログでも紹介させていただきます。
避難者の方からすると、「もっと優先すべきことがあるのではないか」というご意見が多かったようです。福島県在住の方、近隣の方、避難された方のご意見を今後集めていきたいと思います。
———
オリンピックについては私個人としては実は複雑です(^_^;)
オリンピック自体にはなんの偏見も無いのですが東京に誘致する際の安倍総理の発言やオリンピック開催が決まってから避難している事自体が変!って感じになり地元へ帰れるのに帰らない!って目で見られるように持って行かれた感が半端ない気がしました。
避難者を切り捨て嘘で塗り固めたオリンピックには正直怒りさえ覚えます。復興オリンピックみたいなイメージですが全くその復興のふの字もない空っぽのオリンピックにしか見えていません。
無理矢理住宅を追い出して全世界に日本の再生をアピールするよりも避難者や弱者にも優しいオリンピックであって欲しかったかな
———
わたしの人生においてオリンピックには、そもそも興味がありませんでした。 応援したい人はいつも身近な存在の人です。
一時の為に莫大な予算を掛けて、会場や宿泊施設を作り終わったら破壊するというのは無駄でしかないと思います。
そんなことをするならば、福島の子供達の為に国が保養施設を作って、クラス単位で毎年決まった日数を過ごすようにして欲しいです。
家族でいつでも使える保養施設を作って欲しいと思います。
原発は国策で作られたのですから、安全神話を信じてそれを容認していた私達にも問題はあったと思いますが、個人では経済的にも時間的にも精神的にも負担がありすぎるので、国の援助がほしいです。
民間でもやっていますが、それは抽選であり行きたくても行けない人がたくさんいると思います。
そして年々保養をやってくれている団体が減ってきていると聞いています。
福島はアンダーコントロールと総理大臣がいいましたが、まだ福島は汚染されていますし、福島第一原発は事故当時のままに何も解決してないでしょう。今も放射能を撒き散らしているでしょう。汚染マップにある通り放射能汚染は福島だけにとどまってないでしょう。
(それでもできるだけ遠くホットスポットを避けて今よりも汚染されてない場所へ大切な人と離れることなく、多くの人が避難してほしいと願っています。)
国に放射能汚染を認めてほしいです。 今も危ないのだと。 みんな気をつけて生活してほしいと。 絶えず真実を公表して国も出来ることをすると。
そして、避難したい人には避難するためのバックアップをするシステムを作ってほしいです。
できたら、コミニュティを壊すことなく地区ごとに避難できたらいいです。 新しい町をどこかに作ってほしいです。
過疎化が進んだ地域はいたるところにあるのですから、不可能な事ではないと思います。
たった数日の熱狂のためより、たくさんの人が安心して幸せに暮らせるような、そういうことに税金を使ってほしいと思います。
しかし、もうオリンピックの予算はつけられて、箱物も作られてもう完成したのでしょうか。 オリンピックはどうして既存の施設を使わないのでしょうか?
あるものを使えばいいだけではないですか? 日本は格差が広がり、また消費税の増税が決まっており、どんどん生きづらくなっていると思います。
弱者を作らない政策を、穏やかな日々を。 そう。ただ一時期の熱狂より、穏やかな日々を望んでいます。 子どもを社会全体が守るように。
子どもが世の中を冷めた目で見るようなことがないように。 子どもがこの世はいいところだと思い、未来を信じられるような世の中になってほしいです。
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東京オリンピックの時は、まだ、3歳なので、東京オリンピックが、決まりますようにと、お祈りして、決まった時の感動🥺一人夜中に、拍手👏良かった!
でも、安倍晋三さんの原発は、コントロールされている発言は、無責任な言動!
それでも、オリンピックに向けて多くの人が、頑張ってあと一年になるのは、素晴らしいなぁと若い選挙を応援したいです📣。
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日本全国的には勇気付けられると思うけど、新しく建てている国立競技場の姿を見ると、未だに仮設住宅暮らしの人とか自宅がないも同然の人にすべきことの方が重要性と早急性は高いんじゃないかな、とは思ってます。

オリンピック成功のため、都合の悪い避難者は排除されたと思っている、勇気付けられる事など一つもない。自主避難者現状を世界に知って欲しいし私達への仕打ちを非難して欲しい。
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選挙応援のスピーチで、福島県にまで足を伸ばした安倍総理が言った。「福島県の復興がない限り、日本の明日はありません。」 本当か?
私はこう思います。その「復興」をかかげる陰に、どれだけの犠牲者が出たことか、悲惨な毎日を今も送っていることか、真実をよく見てほしい。全体主義のために、母子家庭の暮らしや社会的弱者を踏みつけながら、オリンピックに沸く国に、本当の復興はまだ訪れません。
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巨額の原子力賠償は国が負担? 賠償措置額が1200億円で据え置かれる理由とは? 原子力損害賠償法見直しにパブコメを!(9月10日まで)

>原子力委員会・文科省との会合報告はこちら

原発事故の賠償の枠組みを定めた「原子力損害賠償法」の改定案が、9月10日まで、一般からの意見公募(パブリック・コメント)にかけられています。しかし、この案では、原子力事業者が事故前に保険などで備える賠償金(賠償措置額)が1200億円にすえおかれることになっています。

東電福島第一原発事故では、現時点で見積もられているだけで7兆円をこす賠償金が発生し、この賠償措置額を大きく上回りました。

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要賠償額の推移

除染や事故収束にかかる費用も入れれば政府試算で21.5兆円とされており、この額はさらに上振れするとみられています。

事故後、東京電力を救済するため、国は「原子力損害賠償・廃炉支援機構」を設立し、国債発行による公的資金や、他の電力事業者からの負担金(もともとは私たちの電気料金)を「機構」経由で東電に流し込んでいる状況です。

支援機構

これでは、事故を引き起こした原子力事業者の負担はほんのわずかですみ、結局は国民が負担するということになりかねません。
利益は企業へ、事故が起きたときの費用は大部分は国民へ…?
そんなことは許されませんし、事故のリスクも含めた原発のトータルなコストが認識されないことにもつながります。

ぜひ、みなさんからもパブコメを出してください。

>パブコメはこちらから(9/10まで)

>(参考)原子力損害賠償法の概要
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/songai/siryo01/siryo1-6.pdf

◆パブコメ文例

  • 1200億円の賠償措置額は引き上げるべき。支援機構を介しての支援を前提にしては、最終的には国民にしわ寄せが行き、モラル・ハザードを引き起こす。
  • 原子力事業者を国が支援することを定めた原賠法第16条は削除すべき。
  • 原賠法の目的(第1条)から「原子力事業の健全な発達に資する」は削除し、被害者の保護のみとすべき。

原子力委員会・文科省との会合報告
本日(9月5日)、国会議員や議員秘書、eシフト有志やこの原賠法の見直しについて、とりわけ、賠償措置額の引き上げをなぜ行わなかったかについて、原子力委員会事務局の内閣府、および原賠法を所管する文科省からご説明いただきました。以下、要点のみまとめました。

内閣府…原子力政策担当室
文部科学省…研究開発局 原子力損害賠償対策室
      原賠法改正準備室

◆原賠法の見直しの経緯・スケジュール
<内閣府からの説明>
原子力損害賠償支援機構法附則第6条第1項に、原賠法見直しについて書かれている。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/songai/siryo01/siryo1-3.pdf
これをうけ、副大臣会議において検討が進められたが、平成27年1月22日の会合で、専門的な検討を原子力委員会に要請することとなった。
これをうけ、原子力委員会では、「原子力損害賠償制度専門部会」を設け、20回の検討を行ってきた。
原子力損害賠償制度専門部会設置について・名簿
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/songai/siryo01/siryo1-1.pdf
現在、そのとりまとめを行い、パブコメにかけているところ。
公聴会については考えていない。委員・オブザーバーの中には、被害者を代表している人もいる。福島県副知事からのヒアリングも行った。
原子力委員会として、課題を整理し、今後、文科省に法改正の議論を引き継ぐ。原賠法の当面の改正においては、1200億円については改正しないという方向。

<文科省からの説明>
原子力委員会からの提言を受け、原賠法の改定案を作成する。国会にかける。原子力委員会の案がパブコメにかかっており、それをもとに改正案をつくるので、改正案のパブコメは考えていない。

◆なぜ、賠償措置額をあげなかったのか
<原子力委員会>
・専門部会において、あげたほうがよいであろう、というのが一応のコンセンサス。しかし、だれの責任でどういう負担するのかというコンセンサスは得られなかった。
・賠償は、事故を起こした事業者が担うべきであるが、その資力を超えた場合、どうするのか。支援機構による相互扶助により捻出するのか、もしくは一般税で補てんすべきという意見もあった。
・現在の賠償措置額1200億円は、民間の保険で措置している。しかし、大幅にこの額を引き上げられないのが現状。引受能力を超えている。国際的には、ほぼ最高レベル。
Q:引き上げられない理由は?
→保険会社に査定を依頼したわけではない。「日本原子力保険プール」からも委員になってもらっていただき、「引き上げられない」という意見をいただいた。
Q:保険料を引き上げても?
→通常の責任保険とは違う。原子力事故では保険金支払い額が巨額になるため、国内損害保険20社によって日本原子力保険プールが結成された。原子力保険はすべて「日本原子力保険プール」を通じて契約される。国際的なシンジケートがあり、そこでどこまでの金額を引き受けられるのかが検討されている。
Q:政府補償契約をあげるべきでは?
→民間保険でカバーできないものを政府が、という考え方。むしろ、そちらの方がモラルハザードになるという意見が多かった。
Q:第16条は事故を起こした原子力事業者を救うための仕組みとなっている。撤廃すべきでは?
→法的整理を行い、賠償額を捻出するというのもありうるが、議論としては、むしろ企業を存続させて、賠償させる方が被害者救済に資するという感じであった。
Q:支援機構の資金源は東電の特別負担金、電力各社の負担金。しかし、22兆円規模の賠償を支払うとなるとざっくり95年かかる。新たに同規模の事故がおきても、対応できないだろう。
→(明確な答えはなし)
Q:支援機構経由で東電に支払われている金額のかなりの部分は国債。これは国民負担では?
→国債については、返済されていくことが前提。確かに利子分は、国庫負担ではあるが…。
Q:原子力委員会の「賠償資力確保のための新たな枠組みの検討について」で挙げられている「第2レイヤー」の「保険的スキームの活用」「資金的な手当」とは何を想定しているのか?
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/songai/siryo18/siryo18-1.pdf#page=12
→「保険的スキーム」は、あらかじめ保険料をとる現行の保険的スキームの拡大。「資金的な手当て」は、賠償措置額を超える部分を国が支払い、あとから回収するというもの。
いずれも委員からは、ピンとくるという意見がなかった(から、パブコメの案にはのせなかったらしい)

◆最後に、私たちから第16条による国による支援は削除すべきと考えていること、第1条の原賠法の目的から、「原子力事業の健全な発達に資する」を削除すべきこと、また、国民的議論を行うために、公聴会を開いてほしいことを、重ねて申し入れました。

原発事故避難者の住宅をめぐる政府交渉報告~「国の責任」はどこへ?

2月20日、「避難の協同センター」「原発事故被害者の救済を求める全国運動」の主催で、原発事故避難者の住宅をめぐる政府交渉が行われました。復興庁、内閣府、総務省、財務省、厚生労働省、国土交通省が出席。

この交渉で復興庁が、避難者の数や実態について正確に把握をしていなかったことが明らかになりました。

都道府県別や住宅種別(公営住宅、民間賃貸等)の避難者数については、「把握していない」と回答。また、「福島県によれば、3月で住宅提供を打ち切られる避難者(12,363世帯)のうち、4月以降の住居が決まっていない避難者は2158世帯」と回答。2158世帯といえば、全体の17%。

「えっ!? そんなに少ないわけない」

この問題に取り組んできた関係者の多くがそう思いました。

実際には、4月以降の住居がきまっていない人は、もっと多いと思われます。

というのは、福島県は(4月以降の住居が)「確定」「ほぼ確定」「未確定」という3つのカテゴリーを設けており、「ひだんれん」が福島県に確認した結果、このうち「ほぼ確定」については、「退去のみが決まっており、転居先が決まっていない人も含まれている」ことを認めています。復興庁は、この「退去のみが決まっており、転居先が決まっていない人も含まれている」という相当数の人たちを「4月以降の住居が確定」しているとカウントしてしまっているのです。くわしくは、こちらの報告をご覧ください(PDF

福島県による区域外避難者の戸別訪問

%e7%a6%8f%e5%b3%b6%e7%9c%8c%e8%a8%aa%e5%95%8f%e8%aa%bf%e6%9f%bb「ある程度」とは、退去が決まっており、引っ越し先が決まっていない数が含まれている。

これでは、事態を過小評価することにもなります。

大きなポイントになったのが「国の責任」です。

多くの自治体が、住宅提供の打ち切りにあたり、人道的立場から独自の避難者支援策を打ち出しているのですが、自治体ゆえの限界や、自治体間の格差が明らかになっています。主催側は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の事例を一つ一つあげ、現場情報に基づいて国の認識をただしたのですが、国の回答は、「福島県によれば」「避難先の状況に応じて」など、責任を福島県や避難先自治体に転嫁させているのではないかと思えるようなものが多かったのは残念です。

避難者の窮状、たとえば、民間賃貸住宅の避難者における、管理会社の事実上の「追い出し」事例についても、まったく把握していませんでした。

復興庁は、都道府県・住宅種別の避難者数についても把握していませんでした。それでは対策のとりようがありません。

「原発事故子ども・被災者支援法」では、原発政策を推進してきた国の責任として、被災者が居住・避難・帰還の選択を自分の意思で行えるように支援することを明記。そのひとつとして「住宅の確保」についても挙げられています。

主催団体側からは、被災者のおかれているリアルな状況について口々に指摘。

私たちは、改めて、国として主体的に対策をとること、現行の住宅提供を継続させることを求めました。(満田夏花)

(具体的な質疑はこちらから)

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