「分断ではなく共生を」地域住民抜きの事業に声をあげる、徳島県陸上風力発電所を視察して

6月20日、徳島県那賀町、上勝町、神山町周辺の陸上風力発電所を視察しました。

お話を伺ったのは、徳島県那賀町の「風力発電とまちづくり(共生)を考える会」を立ち上げた桑高仁志さんです。桑高さんは群馬県出身ですが、新潟県の地域復興支援員を経て、8年前に徳島県那賀町の地域おこし協力隊に。現在は古民家ゲストハウスを営む傍ら地域づくりの活動をされています。

桑高さんが風力発電事業に関心を持ったのは、2018年、隣町の方から徳島西部・天神丸での陸上風力事業-(仮称)天神丸風力発電事業について相談を受けてからでした。一杯のそばで買収されたと、冗談を交えながら、そのきっかけを話してくださいました。

「天神丸の事業について話を聞いて、で、環境影響評価書の配慮書が縦覧開始されるというのを町の広報誌で知って、調べてみてインターネットで見てみたら、300ページくらいある。こんなもの地元の爺さん婆さん見ないと思って。だから、要約してわかりやすいリーフレットみたいにしないと地元の人はどこで何が起こるのかがわからない。それで勉強会の資料を作って、公民館押さえても町は周知をさせてくれない。中立ですといっても、公民館や役場の掲示板をつかわせてもらえず、移住者がこうした話題を取り上げることにタブーを感じた。」

きっかけとなった天神丸での計画は2021年5月末に見送りとなりましたが[1]、2020年、徳島南部の那賀町での計画が持ち上がりました。新型コロナによる一回目の緊急事態宣言期間中の縦覧は町広報での事前周知もありませんでした。オンライン縦覧こそ行われましたが、桑高さんは、オンライン中心の縦覧だと地域のお年寄りは取り残されるという問題を指摘します。

とはいえ、県内では、風力発電に疑問を持つ人はとても少ないといいます。

「風力を問題視できる人が少ない。やっぱりメリットとして、雇用が生まれるんじゃないかとか、土木が潤うとか。再生可能エネルギーじたい必要なんだし。たぶん電気代安くなるんでしょとか。あと、考えることをやめてしまっている人たち。何もないところにやって来てくれる。そこに期待してしまう。町としての戦略はずっと林業。今までの産業を、どう守っていくかという考え方だからなかなか新しい雇用が生まれてこない。」

そのほかにも、住民や行政積極的になりづらい理由があるようです。

「那賀町の木頭地区[2]ってところが、過去にダムを「作る」「作らない」で二分された。分断のせいで、村の助役が自殺するようなことも起きた。住民運動の結果、ダムは作らないことになったけれど、そのせいで県にずっと睨まれ、道路の拡張工事とかをしてもらえなかった。村が賛成反対で二分されたという過去があるところに、風力でまた賛成反対の議論になってしまうと。またいざこざが起きると。でも、俺からしたら、声をあげなかったら議論が始まらない。だったら、中立でいいから、事業者からどうやってメリットを引き出すかという知識をつけていきましょうよ、ということをずっと言っているんですけどね。どうしても、登山家とか自然の愛好家とか外部の人から「反対」の声が先に上がってしまう。でも、風力が建つ山を持っている山主はお年寄りで、山が売れないという後ろめたさや、少しでもお金になるんだったらという淡い期待をもってしまう。地元の人は賛成も反対も言わないオロオロしている状態のときに周りの意識高い系の人たちが反対って言っちゃうんですよ。移住者もそうだけど。そうなると地元は、賛成したい人もいるのに反対って言えなくなっちゃう。神山は実際風力が立つにあたって立て看板で「絶対反対」って言っている。海陽町の方は、県議を巻き込んで運動しているが賛成反対の構図ではまた分断が生まれてしまう。」

また、徳島県那賀町の立体地図を見せながら、徳島の風力発電の状況をお話くださいました。

「今稼働中のところは佐那河内(大川原ウインドファーム[3])。今建設中なのがこの上勝神山あたり(上勝・神山ウインドファーム[4])。あと、天神丸ってところで計画されたけど2021年撤回になって(天神丸風力発電事業[5]、オリックス株式会社、144,900kW、42基)、JAG国際エナジーがあたらしくやろうとしているのが木沢から鷲敷までのこの黒い尾根(那賀・勝浦風力発電事業[6])と海陽町(那賀・海部・安芸風力発電事業[7])。天神丸あたりは四国の中でも1000m超えで、ブナの原生林もあって、この辺で風力発電建てられるんだったら、四国はどこでも建てられるでしょって話になるんですよ。だから、那賀町が毅然とした態度で挑めば、建てていい場所、建てちゃいけない場所の基準が出てくると思うんです。また四国で20数頭しかいない絶滅危惧種のツキノワグマ生息域もあるため、ゾーニング(事業適地の絞り込み)をちゃんとやってほしい。クマなんかいらないという地元の人もいれば、クマがいるってことはそれだけ生態系が豊かであるということだから残した方がいいっていう人もいる。」

上勝・神山ウインドファームの建設現場へ

桑高さんにお話を伺ったのち、桑高さんと一緒に、現在建設中の上勝・神山ウインドファームに向かいました。自然観察指導員でもあり森林活動ガイドでもある登山家の坪内強さんが現場を案内くださいました。

左:ヤマツツジ、右:鹿が木の皮を食べた跡

上の写真は、T1の設置場所の脇にある登山道を進んでいった時の風景です。写真を撮った場所と写真の赤丸で囲ったところは本来繋がった登山道だったそうで、陸上風力の部品を運び込むために山が削られ、上記の写真のような形となったそうです。「再エネの主旨はわかる。でも、自然のかたちをここまで変えて発電所を作る必要があるのか?」と案内くださったお二人は漏らします。

風力発電事業への住民の思い

上勝神山ウインドファームの建設現場視察後、意見交換を行いました。

大川原ウインドファームの発電基を見上げながら、坪内さんは、大川原ウインドファームでは、冬の期間、風車のブレードが凍ること、その氷を取り除く作業を時々やっていることをお話くださいました。タワーのブレード上部に届く60m位の高さのクレーンで氷を除去している。現在建設が進む(上勝神山ウインドファームの)高さ80mの風車は、冬期の積雪期には現在のメンテナンス方法では厳しいのではと懸念していました。

また、事業と地域の関わりについても、地域で得たエネルギーなら、電源交付金のように地元にお金を落とすべきところ、風力にはそんな仕組みはなく、何か地元に利益が還元する仕組みがあればよいのですがと話していました。

年に20回は、この尾根を歩いている。ある時、巨大な風速計が山の中に立った。それでなんやろと思っていたら、土質調査のボーリングが始まった。その後重機が入って大規模に山を削り、自然林を伐採して建設用地と作業道が造られた。その結果、家内と四季折々山野草を楽しみながら歩いた尾根筋は通行できなくなってしまった。自然を楽しんで歩く「四国のみち」も尾根道から林道に変更されてしまった。那賀町の建設予定地はサラサドウダン絶滅危惧2類などの珍しい植物が自生していて建設による絶滅が心配される。造形物と自然の美しさ、どちらを残したいか。私は反対って立場ではない。ただ、現場をみて皆に考えてもらいたい。

また、今回一緒に建設現場を視察した、勝浦町の農村体験型宿泊施設や上勝町のキャンプ場で働きながら地域自家発電の研究に携わる新居彗香さんは、

「風力発電事業は桑高さんのSNSの投稿を通じて事業に興味を持った。風力の何が問題なのか分からず、いい点、悪い点を知りたかった。地元では、大川原高原はとても流行っていて、いいじゃんという人が多い。」

と、地域の多くの住民の様子を教えてくださいました。

それに付け加えるように、桑高さんも、風力発電のできる地域は住民が普段来るようなところではなく、地元の人すら行ったことのない山で事業を計画されるから関心持ちづらいと、住民の関心をあげる難しさを教えてくださいました。とはいえ、桑高さんが考えていきたいことは、「風力発電と共生する地域づくり」だといいます。最後に、桑高さんに、徳島での陸上風力発電事業(那賀町と海陽町の事業)について、どのように関わっていこうと考えているのかお聞きしました。

今は準備書前の現地調査をする段階。考えているのは、この間にうまく事業者を引っ張り出せないかと考えている。事業者は、地元が反対していたとしても調査はさせてほしいと言っている。その結果、できるかできないかを協議させてほしいという立場。だから、事業者にうまいこと「じゃぁどういう共生を考えているんですか?地元の小学生中学生と一緒に考えませんか?地元の人が何をしたいのかを聞く場面を設けますんで、よかったらきませんか?」というのをやりたい。子どもとの共生WSとかだったら向こうも断りづらいだろうし。僕は風力発電を、自分たちの町の未来を前向きに考えるテーマとして積極的に捉えようってスタンスなんです。僕は、町のみんなが自分の町の未来を考えるお手伝いをしたい。

一呼吸あって、桑高さんはこう続けました。

「共生というのは一つのキーワードのはず。いいもの悪いものってのはやっぱり皆で議論して初めてわかるもの。事業者のベストの形もあるし、行政のベストな形もあれば、住民のベストな形もあるので、そのすり合わせはやっぱりしないとダメなんです。

僕は、風は地域の資源だと思っている。便利な言葉で、『7つの風』という言葉がある。風土とか風味とか風習とか、風がつくる7つの景観があると。風によって地域は形作られているんだから、その風を使うなら地元が一番その恩恵を受けられるよう対話をしていく必要があるのではないかと思う。」

エネルギーを考えるうえで大切なこととは

今回の視察を通じて、改めて、生活のためであるはずの電力なのに利益追求のための電力になっていること、事業への賛成/反対の議論が地域の分断をもたらしてしまうこと、その分断を恐れ何もいえなくなっている状況を目の当たりにしました。

脱原発や気候変動の防止の観点から、再エネは重要なエネルギー源です。再生可能エネルギーのポテンシャルが高い地域から、大消費地に送電する方法もあります。しかし、事業を誘致すれば自治体にお金がはいるような仕組みができたとしても、それは地域の内発的な活動を阻害したり、地域の人々の分断を生んでしまったりするようなものは、再生可能エネルギーであったとしても許されないはずです。

建設現場の一部をみていても、本当に必要な伐採だったのか、排水や廃棄物の影響をどのように考えているのか、工事で出てきた作業土はどこに行くのか、山に生きる動植物への影響などの疑問が残りました。事業のライフサイクルにわたった環境・社会影響の調査、評価、予測、対策の強化の必要性を感じます。

また、陸上風力発電の建設が進む神山町では、戦前は地域や各戸の小水力発電があり、コミュニティベースで管理していたそうです。しかし、大規模供給にあたり、小水力発電で発電したものを電線に繋げようとすると不具合が生じることから、四国電力は住民の水車を買い上げたり水車を閉じさせたりして、今では住民の中で小水力発電のノウハウがなくなっているということもあるようです。

一方、桑高さんとお話する中で、事業の進め方によっては、住民を巻き込んだ民主的な地域づくりの可能性を感じました。

化石燃料依存社会から脱炭素社会への移行は、単なる「エネルギー・チェンジ」ではなく、発電所周辺の住民の声が無視されたり、発電機の製造に必要な資源や燃料を搾取されたりすることのない電力システムへの「システム・チェンジ」であってほしいと思います。

(高橋英恵)

*再生可能エネルギーの持続可能性に関するFoE Japanの見解はこちら


[1] 2021/5/29、徳島新聞「オリックス、風力発電計画の事業化見送り 美馬、神山、那賀の3市町境

[2] 2005年、鷲敷町、相生町、上那賀町、木沢村、木頭村が合併し、那賀町となった。

[3] 株式会社ユーラスエナジーホールディングス、最大19,500kW(1,300kW x 15基)

[4] 株式会社ユーラスエナジーホールディングス、最大34,500kW(2,300kW x 15基)

[5] オリックス株式会社、最大144,900kW(42基)

[6] JAG国際エナジー、最大96,000kW程度

[7] JAG国際エナジー、最大96,000kW

500名以上の科学者が日本政府に書簡を提出:森林バイオマスを使った発電はカーボンニュートラルではない

2月11日(米国時間)、42の国と地域の500名を超える科学者が日本政府に対し、木質バイオマスを使った発電はカーボンニュートラル(炭素中立)ではないと主張する書簡を提出しました。書簡は米国政府、欧州連合(EU)及び韓国政府にも同時に送付されました。

書簡では、バイオマスの発電利用により森林が伐採され、森林に蓄えられている炭素が大気中に放出されること、森林の再生には時間がかかり、数十年から数百年にわたって気候変動を悪化させること、バイオマスの発電利用は化石燃料を使用した場合の2〜3倍の炭素を放出する可能性があることが指摘されています。また、各国政府は「気候変動対策」として、バイオマスを燃焼することに対する補助金やインセンティブにより、実際は気候変動を悪化させていること、そして真の排出削減のためには、森林を燃やすのではなく、保全と再生に努めるべきことが述べられています。

日本では、2012年にFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)が開始されて以降国内のバイオマス発電事業が急増しています。

FIT認定量は、2020年9月には821.5万kWで、そのうち747万kWが一般木質バイオマスおよび農作物残さ(輸入木質ペレット・木質チップ、PKSなど)やバイオマス液体燃料(パーム油など)による発電となっています。同時点で、FIT制度下で稼働している発電事業数は446件、認定されている事業数は709件にのぼります。

大規模バイオマス発電事業は、輸入燃料に頼っています。例えば木質ペレットの輸入量は、2012年には約7.2万トンでしたが、2019年には161.4万トンに急増しています。

書簡は、日本のFIT制度について「日本は、木材を燃やす発電所への補助金をやめる必要がある」と言及しています。

以下、日本語の仮訳です(原文はこちら)。


森林のバイオマスエネルギー利用に関する書簡<仮訳>

2021年2月11日

米国大統領 バイデン様、
欧州委員会委員長 フォン・デア・ライエン様、
欧州理事会議長 ミシェル様、
日本国内閣総理大臣 菅様、
大韓民国大統領 文様

下記に署名した科学者および経済学者は、米国、欧州連合、日本、韓国が、2050年までにカーボンニュートラルを達成するために野心的な目標を発表したことに称賛の意を表します。森林の保全と再生こそが、この目標を達成するための重要な手段であり、同時に地球規模の生物多様性の危機への対処に役立つものです。私たちは、エネルギー生産のための燃料を化石燃料から木質燃料に転換することにより、気候目標と世界の生物多様性の双方が損われることがないよう、強く求めます。

何十年もの間、紙や木材製品の生産者は副産物として各工程の廃棄物を電気や熱を生成してきました。この利用は木材の新たな伐採につながるものではありません。しかし近年では、バイオマスエネルギーのために樹木を伐採し、木材の大部分を燃料に転用することで、森林に蓄えられるはずの炭素を放出させてしまう誤った動きが見られます。

このような新たな伐採の結果、当初は炭素排出量が大幅に増加し「炭素負債」が発生します。バイオマスエネルギー利用のために伐採される木が増えれば増えるほど、炭素負債は増加します。森林を再生し化石燃料を代替することで、最終的にはこの炭素負債が解消されるかもしれません。しかし、森林再生には時間がかかり、世界が気候変動を解決するためにはその時間的猶予がありません。数多くの研究が示しているように、このような木材の燃焼は数十年から数百年にわたって温暖化を悪化させることになります。木材が石炭や石油、天然ガスに取って代わる場合も同様です。

その理由は基本的なことです。森林は炭素を蓄えているからです。乾燥した木材の重量の約半分は炭素です。木材が伐採されて燃やされる場合、エネルギーを供給する前に伐採と加工の過程で、伐採された樹木の多く、しばしば半分以上は、化石燃料を代替することもなく炭素を大気に追加しながら、失われます。また、木材の燃焼は炭素効率が悪く、エネルギーとして燃やされる木材は、化石燃料よりも多くの炭素を排出します。全体的にみて、木材の燃焼により1キロワット時の熱や電気を生成に対して、化石燃料を使用した場合の2~3倍の炭素が大気中に放出される可能性が高いです。

今後数十年の地球温暖化の悪化は危険です。この温暖化は、増加する森林火災や海面上昇、猛暑などによる、より直接的な被害を意味します。また、氷河の急速な消失と永久凍土の融解、世界の海の温度上昇と酸性化により、さらに永続的な被害がもたらされることを意味します。これらの被害は、今から数十年後に炭素を除去したとしても、元に戻ることはありません。

木材を燃やすための政府の補助金は、二重の気候問題を引き起こしています。なぜなら、この誤った解決策が本当の炭素排出量削減策に取って代わっているからです。企業は、化石エネルギーの使用を、真に温暖化を減少させる太陽光や風力に転換する代わりに、温暖化を悪化させる木材に転換しています。

日本やフランス領ギアナなどでは、木材を燃やして電気を作るだけでなく、パーム油や大豆油を燃やす案も出ています。これらの燃料を生産するためには、パーム油や大豆の生産を拡大する必要があり、その結果、炭素密度の高い熱帯林が皆伐され、その炭素吸収量が減少し、大気中に炭素が放出されます。

森林や植物油の管理に関する「持続可能性の基準」では、これらの結果を変えることはできません。持続可能な管理とは、木材の伐採後に最終的に炭素負債が返済されることを可能にしますが、それまでの数十年、あるいは数百年の温暖化の進行を変えることはできません。同様に、植物油の需要が増加すれば、食糧需要の高まりによってすでに発生している世界的な森林伐採の圧力にさらに拍車がかかるでしょう。

土地利用変化に起因する排出について、国が責任を負うことは望ましいことではありますが、それだけでは木材を燃やすことをカーボンニュートラルとみなす法律による問題を解決できません。なぜなら、発電所や工場で木材を燃やすための法律で定められたインセンティブを変えるものではないからです。同様に、ディーゼル燃料の使用からの排出について各国が責任を負っているという事実は、ディーゼルがカーボンニュートラルであるという誤った理論に基づいており、トラックがより多くのディーゼルを燃やすことを奨励する法律を是正することにはなりません。国家の気候変動に関する責任を定める条約も、それを果たすための各国のエネルギー関連法も、それらが奨励する諸活動が気候に与える影響を正確に捉えたものでなければなりません。

今後の皆様のご決断は、世界の森林に大きな影響を与えます。もし世界のエネルギー需給量のさらに2%を木材から供給するとしたら、木材の商業伐採量を2倍にする必要があるからです。ヨーロッパでのバイオマスエネルギーの増加は、すでに欧州における森林の伐採量の大幅な増加につながっていることを示す十分な証拠があります。これらのアプローチは、熱帯諸国に森林をもっと伐採するよう促すモデルを作り出し、世界が目指してきた森林に関する合意を台無しにします。既に数か国は森林伐採を増加させると表明しています。

このような悪影響を回避するために、各国政府は、自国産であれ他国産であれ、木材を燃焼させることに対する既存の補助金やその他のインセンティブを廃止しなければなりません。欧州連合は、再生可能エネルギー基準や排出量取引制度において、バイオマスの燃焼をカーボンニュートラルとみなすのをやめる必要があります。日本は、木材を燃やす発電所への補助金をやめる必要があります。また、米国では、新政権が気候変動に関するルールを作り、地球温暖化を抑制するためのインセンティブを生み出す中で、バイオマスをカーボンニュートラルまたは低炭素として扱わないようにする必要があります。

樹木は、生きているものの方がそうでないものより気候と生物多様性の両方にとって価値があります。将来のネット・ゼロ・エミッション目標を達成するために、貴政府は森林を燃やすのではなく、森林の保全と再生に努めるべきです。

ピーター・レイヴン(ミズーリ植物協会 名誉会長、米国ミズーリ州セントルイス)

その他の主唱者:

(*原文をご参照ください)

「木質ペレットをFITの対象とすべきではない」17の米国環境団体が日本政府にレター

米国の17のNGOが、経済産業省 (METI)、林野庁などに対して、木質ペレットをFITの対象から外すよう求める書簡を提出しました。

書簡では、アメリカ南部において、天然林を伐採して木質ペレットが生産されていることを指摘。「森林は木や土壌に膨大な量の炭素を貯蔵し、洪水や嵐といった災害の影響からコミュニティを守っている」として、CO2排出量の削減、生物の生息地保護、洪水調整機能の維持のためには、森林を保全するべきであり、木質ペレットを利用するバイオマスを対象から除外しなければならないと主張しています。

アメリカ南部では、木質ペレットの生産のために、端材ではなく、樹木全体が使われたり、天然林が皆伐されたりする状況が報告されています。エンビバ・パートナーズLP社がノースカロライナ州におけるペレット製造工場の原料を得るため、ロアノーク川流域の樹齢100年以上の貴重な湿地広葉樹林の皆伐を行っていることがたびたび報道されてきました。これらの湿地林は、河川の沖積地に発達し、生物多様性に富む森林であるとともに、洪水制御、炭素の貯留といった意味でも重要な意味をもちます。

書簡に署名したDogwood Alliance(ドッグウッド・アライアンス)のキャンペーンディレクターのリタ・フロストさんは、「気候変動に真剣に取り組むのなら、森林を燃料として燃やすことは奨励できない。日本政府にとって、本来は森林、気候、コミュニティを保護するはずである『再生可能エネルギー』の定義から木質ペレットバイオマスを除外するよい機会ではないでしょうか。」とコメントしています。

現在、日本は主として、ベトナム、カナダなどから木質ペレットを輸入していますが、大手商社がアメリカの大手バイオマス企業エンビバ・パートナーLP社と大口の長期契約を結んでおり、今後、アメリカからの木質ペレットの輸入が急増するのではないかとみられています。

以下にレターの本文を掲載します。


2020年9月30日

経済産業大臣 梶山弘志 様
林野庁長官 本郷 浩二 様
バイオマス持続可能性ワーキンググループ委員 各位

私たち、日本の新たな木質ペレットバイオマス市場の供給地である米国の17のNGOは、森林由来の木質ペレットバイオマスを「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」から除外し、森林を燃料とする再生可能エネルギーへの直接的・間接的な補助金を廃止するよう日本政府に求めます。私たちは、世界最大の木質ペレット生産地である地域にくらし、その生産と消費が気候、森林、コミュニティに悪影響を及ぼすことを見てきました。木質ペレットのバイオマスを「再生可能エネルギー」の名の下で生産消費することはグリーンウォッシュに他なりません。
米国南部はエンビバ・パートナーズ社の木質ペレット生産の主要な原料供給地であり、同社はFIT制度のインセンティブにより住友商事を含む日本企業に木質ペレットを大量に供給しています。Dogwood Alliance(ドッグウッド・アライアンス)の現地調査は、木質ペレットバイオマス産業がペレットを天然林から調達している様子を詳細に描きだしました。多くの現地調査により、エンビバ社がペレット製造のために、丸太全体を利用するとともに、天然林の伐採に関わっていることを明らかにしました 。これは、エンビバ社が事業を展開している地域において責任ある行動をとることができていないことを示しています。持続可能性の保証を与えられたことにより、グリーンウォッシュをしているのです。
エンビバ社の工場の多くはノースカロライナ州で操業しています。ノースカロライナ州政府は最近、独自のクリーンエネルギー計画の中で、ノースカロライナ州の森林を外国市場で大規模に利用することは「国内・国際的なレベルで再検討されるべきだ」と述べており、公式文書では、木質ペレット産業が伐採、加工、輸送を通じて同州の炭素排出量を増加させていることを明確に認めています 。ノースカロライナ州のこれらの発言は、バイオマスエネルギーの生産と消費は有害であり、将来的には州がバイオマスエネルギー施設の操業を制限する措置を取る可能性があるということを示しています。
木質ペレットの生産と消費による炭素排出についても深刻な懸念があります。木質ペレットバイオマスは炭素排出量が大きいため、気候変動への効果的な緩和策にはならない、という科学的なコンセンサスが形成されてきています。したがって、再生可能エネルギーの目標を達成するために木質ペレットをバイオマス発電に利用することには大きなリスクがあると言えます。科学者は、木材の原料(パルプ、全木等)に関係なく、木材を使ってペレットを製造すると、数十年から数世紀にわたって大気中の炭素が増加すると示しています。

木質ペレットバイオマス産業は、すでに森林資源が過剰に利用されている地域にさらなる負荷を与えています。米国南部の森林面積は世界全体のわずか2%にすぎませんが、世界の丸太の12%、パルプ・紙製品の19%を生産しています 。言い換えれば、米国南部の木材製品産業は、世界のどの森林よりも生産性が高いということになります。米国南部における工業規模の木質ペレットバイオマス生産は、木質ペレットが低品質の木材製品であるために、より多くの森林伐採を引き起こしています。かつては経済的価値のなかった森林が、木質ペレット産業の急成長によって伐採され、利益を生むようになったのです。
米国南部の森林は、南米の熱帯雨林が伐採される速度の4倍ものスピードで伐採されています。さらに、木質ペレットのために皆伐が行われることは、従来の伐採方法よりもはるかに多くの木質繊維の除去をもたらします。これは、炭素貯蔵や、生態系サービス、および野生生物にさらなる悪影響を及ぼします。
エンビバ社が主導する木質ペレットバイオマス産業は、洪水などの気候変動影響に対するレリジリエンスへの影響だけでなく、大気や水質などコミュニティ全体に直接の影響を及ぼします。研究によると、木質ペレットバイオマス産業は、何百万トンもの温室効果ガスの排出に繋がるだけでなく、喘息や心臓発作を引き起こす可能性のある何トンもの粉塵や、発癌物質やスモッグを形成する汚染物質も排出しています 。このような影響は、主に非白人人口が多く、貧困レベルの中央値を超えているコミュニティで起きています 。工場から1~3 km以内に住む地域住民は、日々目に見える形のチリや埃に覆われて生活しているのです。
米国南部の森林は、樹木や土壌に大量の炭素を蓄積し、洪水や嵐といった災害の影響からコミュニティを守っており、気候変動対策に重要な役割を果たしています。気候変動に関連した大規模な洪水は、何年にもわたって甚大な被害をもたらしており、その経済コストは数百億ドルに上ると推定されています。 エンビバ社のような木質ペレット企業がクリーンエア法(大気浄化法)のガイドラインや規則に従わないで操業を続けた場合、このような気候変動の影響はさらに増幅します。 生きた森林を手付かずのままに残すことで、天然の洪水対策になるのです。
日本政府の目標が発電における温室効果ガスの削減であるなら、再生可能エネルギーとして木質ペレットを使用することは目的に合いません。木質ペレットバイオマスによる排出を米国の土地利用・土地利用変化及び林業(LULUCF)部門の「責任」と仮定するのは難しいでしょう。なぜなら、米国はパリ協定を採択しようとしていないし、京都議定書の締約国でもないからです。したがって、米国は日本で発電に使用される木質ペレットバイオマスからのLULUCF排出量を国際的に計上しないことになります。そうなれば、木質ペレットバイオマスによる排出量がどこの会計にも計上されないということになるのです。温室効果ガスの排出を削減しようとするならば、このような重大な抜け穴に頼るべきではありません。実際、温室効果ガスは大気中に排出されており、文書上だけから消えてしまっているのです。気候変動に関する政府間パネル (IPCC) は、科学者や市民とともに、木質ペレットのバイオマスをカーボンニュートラルとして計算することについて、「バイオエネルギーのためのバイオマスの生産と利用は、土地劣化のリスク、温室効果ガス排出、およびその他の環境開発目標について、マイナスの影響を与えうる。」と警告しました。
我々は、日本政府が気候変動の解決策を模索していることを称賛いたします。しかし、私たちが住むコミュニティのすぐそばで行われている木質ペレット産業を目撃する中で、森林を燃料として燃やすことを促進する政策は間違っているとわかりました。電気のために木を燃やすと大気中により多くの炭素が放出されます。つまりクリーンエネルギーへの道を進むのではなく、後退していくことになります。我々は、日本に対し、再生可能エネルギーの定義及び「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」から木質ペレット森林系バイオマスを除外することを求めます。

賛同団体:

Dogwood Alliance
Natural Resources Defense Council
John Muir Project
Center for Biological Diversity
Southern Forests Conservation Coalition
Earth Action, Inc.
Environmental Protection Information Center
Wild Heritage
Fern
Pivot Point
Partnership for Policy Integrity
North Carolina Climate Justice Collective
350 Triangle
Clean Air Carolina
Restore: The North Woods
Coastal Plain Conservation Group
Spruill Farm Conservation Project

関連情報)
バイオマス発電をめぐる要請書提出ー環境負荷が大きい事業はFIT対象外に
https://www.foejapan.org/forest/biofuel/200714.html

住民がパーム油発電を撃退!(京都府舞鶴市)

うれしいお知らせが飛び込んできました。京都府舞鶴市で日立造船が計画していたパーム油発電所。住民の猛反対でカナダの投資会社が撤退していましたが、6月23日日立造船の株主総会で住民に詰め寄られた常務取締役が「パーム油発電は今後しません」と明言しました。

粘り強い住民の反対が、ついに事業中止を勝ち取ったのです。

パーム油の需要拡大に伴うプランテーション開発は東南アジアにおける熱帯林破壊の最大の要因になっています。そればかりか、京都府福知山市で運転中の三恵エナジーのパーム油発電所では、騒音・悪臭で近隣の住民たちが悩まされています。

H.I.S.が宮城県角田市で進めるパーム油発電所はこのまま稼働してしまうのでしょうか? 国際的な注目が集まっています。>署名サイト:H.I.Sさん、熱帯林をこわすパーム油発電やめて!

この件について、日本のバイオマス発電について国際的な情報発信を続けている米NGOのマイティー・アースがプレスリリースを発出しました。地元の住民の方の声やFITの政策まで、全体的な状況をよく伝えていると思いますので、以下に和訳を掲載します。英語のオリジナルはこちらをご覧ください。

プランテーションのために伐採された山(マレーシア・サラワク州)

写真:パーム油生産のプランテーション開発のために皆伐された山(マレーシア・サラワク州)(c)FoE Japan


Mighty Earth
プレスリリース
2020年7月1日

 

日本最大のパーム油燃焼発電所建設計画が中止

環境グループ、政府に対しFITによる再生可能エネルギー促進政策の改革
HISに対しパーム油発電建設計画を中止するよう要請

国内外の環境NGOのグループは、本日、舞鶴市にパーム油を燃料とする発電所を建設するために設立された会社、「舞鶴グリーンイニシアティブス 合同会社」の解散にあたり、歓迎の意を表明する。物議を醸しているこの66メガワットの大規模バイオマス発電所に対しては、地元住民が、日本や国際的な環境団体の支援も得て、9カ月にわたり反対運動を続けてきた。

ウータン・森と生活を考える会」の石崎雄一郎氏は「これは熱帯林と舞鶴市民にとって大きな勝利でです。旅行会社エイチ・アイ・エスが宮城県で、京都府で三恵エナジーがパーム油発電所を進めていますが、両社に対して事業への関与をやめ、日本政府に対しては、気候変動を悪化させるバイオマス発電への補助金を通じた支援をやめるよう求めます」と話す。

舞鶴パーム油発電所はパーム油を燃料としていることが問題視された。日本は主としてインドネシアおよびマレーシアで生産されたパーム油を輸入している。絶滅危惧種オランウータンの生息環境も含む原生の熱帯林が失われつつあり、過去20年間にインドネシアとマレーシアの350万ヘクタールの熱帯雨林がパーム油生産のためのアブラヤシ農園に転換された。日本は年間約75万トンのパーム油を輸入しており、主に食品や製品に使用されている。もし舞鶴パーム油発電所が建設されれば、年間12万トンのパーム油を燃焼することになり、パーム油生産による環境影響はさらに大きくなる。

11,000人の反対署名など住民からの圧力を受けた事業の投資会社であるカナダ・トロントのAMPエナジーは、2020年4月にプロジェクトから撤退した。4月22日のアースデーに送られた書簡 の中で同社代表取締役のポール・エゼキエル氏は「今後、当社及び当社グループはパーム油を燃料とする発電事業の検討は行いません」と述べた。この中で、エゼキエル会長は「地元住民の強い反対」を含むプロジェクトの困難さを引き合いに出した。

AMPは脱退したが、工場の建設・運営を担う予定の日立造船が新しい投資会社を探すかどうか不明であった。しかし、2020年6月23日の定時株主総会で、舞鶴市民グループの森本隆氏が、日立造船の白木敏之常務取締役に同工場の建設計画について質問したところ白木氏は、「今後、パーム油への投資が行われる見込みがないため、日立造船はこのプロジェクトから撤退する」と回答。6月26日には舞鶴市長が同発電所建設の中止を表明した。

「数年間にわたるであろうと思われたこの発電所との戦いのために、私たちは総力を結集しました。たった9カ月で事業中止に追い込めたことは驚きです。地元の草の根活動と経験豊富なNGOからのアドバイスを組み合わせることで勝利を収めることができたと思います。世界はさまざまな問題を抱えていますが、他の地域の人々も社会を良い方向に変えることができると思います」と「舞鶴西地区の環境を考える会」の森本隆氏は述べた。

ゆっこ勝利ポーズ

長期的なトレンド

日本では、政府によるインセンティブが発電用のパーム油の使用を促進している。2012年には、固定価格買取制度(FIT)により、再生可能エネルギーの発電電力を電力会社に固定価格で買い取ることを保証する制度が開始された。それ以降、FITによるバイオマス発電に対する買取価格(主に木質ペレット、パーム核殻(PKS)、パーム油)は、24円/KWhと世界で最も高かった。

バイオマス発電のためにパーム油を燃やせば燃やすほど、世界のパーム油需要は増える。2018年3月時点で、日本のFITで承認されたパーム油発電所プロジェクトの総容量は1700 MWであり、もしすべてが建設されるとすれば、毎年340万トンのパーム油が燃やされることになる。これは、現在の日本のパーム油輸入量のほぼ5倍である。この需要の急増は、環境に大きな影響を与える恐れがある。

日本の環境NGOは、宮城県角田市に建設中である、舞鶴発電所に次ぐ規模のパーム油発電所とたたかっている。これまでに20万人の反対署名を集めた。この発電所は、日本の大手旅行会社H.I.S.の子会社であるH.I.S. SUPER電力によって建設されている。

「H.I.S.は旅行会社として、従来からボルネオなどでエコツアーを行い、大自然の魅力を体験しようと宣伝してきました。電気を作るために大規模に森林を破壊するパーム油を燃やすビジネスになぜ乗り出すのか、どうやって顧客に説明するのでしょう。私たちは、H.I.S.に対し、日立造船の先例に倣い、パーム油発電所への関与を放棄するよう求めています」と、FoE Japan、満田夏花氏は言う。

泥炭地(西カリマンタン)

写真:プランテーション開発のために開発された泥炭地。蓄えられていた膨大な量の炭素を二酸化炭素として放出する(インドネシア・西カリマンタン州)(c)FoE Japan

環境を破壊するバイオマス発電への補助が、気候変動を悪化させる

残念なことに、日本政府のバイオマス発電促進政策は、森林破壊や著しい温室効果ガス排出につながる燃料源を避けるためのセーフガードを設けていない。経済産業省が2019年に行った分析によると、パーム油の栽培、加工、輸送を含むライフサイクルを通しての排出量は天然ガスと同程度である。しかし、熱帯林が伐採されると、排出量は5倍になる。泥炭地が開発されると排出量は139倍にもなる。
パーム油の燃焼に加えて、日本のバイオマス政策は、森林の伐採や木材の燃焼も促進している。伐採後の森林の成長と炭素の再吸収は遅いため、気候変動に対する取り組みを妨げる。日本で燃やされる木材のほとんどは、ベトナムや北米から輸入される。
舞鶴パーム油発電所に国際的批判が集まる
日本のバイオマス発電所の急増に環境グループが警戒感を示す中、舞鶴パームオイル発電所は、国際的な注目を集めた。国内外の44の金融機関にあてた共同書簡では、8カ国25団体がこのプロジェクトおよびパーム油発電に反対した。
「気候変動を止めるための時間はあと数年ほどしか残されていない中、間違った気候変動対策に時間を浪費することはできません」と、マイティー・アースのシニア・キャンペーン・ディレクター、デボラ・ラピダス氏は言う。「パーム油を燃やすと、炭素を吸収するために必要な森林の破壊が加速します。木質バイオマスを燃やすと、何年分もの炭素の蓄えが、文字どおり煙になってしまいます。舞鶴のパーム油発電所を停止することは、バイオマスの誤った約束を終わらせるための重要なステップであり、真に再生可能な電力のソリューションに焦点を当てるのに役立つでしょう。」

FITの改革が急務

2020年4月、経済産業省は、環境団体の働きかけ応じて、固定価格買取(FIT)制度のもとで、新規に導入されるバイオマス燃料については温室効果ガスの評価を求めることとした。パーム油、木質ペレット、PKS(パーム核殻)などの従来から認められてきた燃料についても、温室効果ガスの排出を厳しく制限するよう求められる。

「日本の再生可能エネルギー促進政策を通じて、気候変動を悪化させる燃料に補助金を出すべきではありません」と、地球・人間環境フォーラムの飯沼佐代子氏は言う。「温室効果ガスの排出量が高いパーム油は固定価格買取制度から除外されるべきであり、経済産業省は木質バイオマスについても厳しい排出枠を採用する必要がありますあります。」

舞鶴パーム油発電所キャンペーン・ウェブサイト
https://maizuru-palm.org/

コンタクト:ウータン・森と生活を考える会 石崎雄一郎 contact-hutan@hutangroup.org

※参考サイト:
Q&A 何が問題?H.I.S.のパーム油発電
https://www.foejapan.org/forest/palm/190609.html

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写真上:パーム油生産のためのアブラヤシ農園(c)FoE Japan

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写真上:アブラヤシの実 (c)FoE Japan

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※パーム油生産のためのアブラヤシ農園開発は、大量に炭素が蓄積されている泥炭地をも開発し、インドネシアでたびたび発生する森林火災の原因とも指摘されている。(c)WALHI リアウ(FoEインドネシア・リアウ支部)

山林から恩恵を受けているということ~鴨川市田原地区メガソーラー計画を取材して

○再生可能エネルギーと開発

福島原発事故以来、原発への依存度を下げるべく、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の割合を増やすことが決定されました。固定価格買取制度もあいまって、国内では大規模な開発を必要とするメガソーラーの建設が多く計画されています。

再エネの普及は、気候変動の原因である温室効果ガスを減らすための有効な手段でもあります。しかし現在、再エネの名の下に森林を伐採し、環境を破壊するような開発事例(以下、乱開発)が見られるようになってきました。

FoE Japanは、再エネの普及の名の下で山林を破壊することは、生物多様性の保全の観点から、また、気候変動の観点からも、森林は温室効果ガスの吸収に重要な役割を果たすため看過できないものであると考え、再エネによる乱開発の現場の取材を始めています。(FoE Japanでは北杜市も訪問

その一つとして今回、千葉県鴨川市に計画されている、メガソーラーの建設予定地を訪問しました。 (取材日時:2019年2月15日)

○鴨川市、田原地区、メガソーラー計画の主な問題点

千葉県鴨川市におけるメガソーラーは、田原地区という、鴨川市の玄関と言えるような場所に計画されています。同計画は、千葉県による林地開発許可審査中で、まだ着工はされていません。詳細はこちら

同計画の問題点として挙げられているのは、大規模な土地改変です。東京ドーム32個分にもなる広大な山林を平坦にするため、1,300万立方メートルの山を削り、その土砂で谷を埋め立てる予定であると事業者は言います。10トンのダンプトラック約200万台にもなる土砂も移動するそうで、流れる川や沢も埋め立てられる予定となっています。流れる川や沢が埋め立てられた場合、その川や沢に流れていた水が行き場を無くし、地中に水分が含まれていくため、地盤の脆弱化の恐れが考えられています。また、建設予定地は林野庁により「山地災害危険地区」に指定されている急峻な土地で、開発自体も危険や困難が伴う可能性があります。さらに、10万本以上の木が伐採されるとの意見もあり、この開発による大規模な環境破壊は免れません。

削られる予定地の山なみ
事業計画地映像(鴨川の山と川と海を守る会より)

○山林は漁業にとって必須

「山の緑から海に流れる豊富な栄養分は魚にとって大切だ。それを知らない漁師はいない。生計に関わる問題であり、本事業は反対だ」

とてもシンプルなコメントを述べたのは、年間25億円の販売高、組合員数約1400人の鴨川市漁業協同組合を統括する松本ぬい子組合長(以下、松本さん)。「今回の事業は環境破壊である」とさらに付け加え、山と海の関係を強調する松本さんの言葉からは、鴨川で漁業を営む人々は人間が生きるために長年自然を大切にし、持続可能な環境を作り上げてきたことを感じます。

松本ぬい子組合長

○山林の開発は、地主さんだけの問題ではない、公益性がある

現場で説明をする今西さん

鴨川の海と川と山を守る会(以下「守る会」)代表の勝又さんは、メガソーラー開発に対して、地元民の動きに懸念を示しました。「建設予定地は5区の財産区だったのだが、40数年前にリゾート開発会社へ売却している。その後、転売を重ねてきた山なので愛着がわかないのではないか。これは地主さんだけの問題ではない。そこに暮らして田んぼを耕作する人、川の水を利用する人、魚を取る人、それらを利用し、山の恩恵に浴する鴨川市民全体の問題だ」

勝又さん

同じく守る会の今西さんは「市はほとんどなにもしていない。これだけの規模の山を削り、谷を埋めることは、エネルギー問題とは関係なく通常の人の感覚では実行できないはずだ」と憤ります。

「山に降った雨が山林で浄化され川に流れ、そこに住む動物、生命の多様性が維持されている。これらは公共性があるものであり、都市部の方々も関係している。地主さんの意向で開発を決める筋合いのものではない」と今西さんは言います。

守る会では「エネルギーの問題については多様な意見があるが『この場所とこの規模』はダメという言い方をしている」と、統一見解はあると勝又さんは言います。また、「ようやく2018年2月ころから市民や議員の意識が変わり始めたと感じる。市民の関心が少し出てきたからこそ、未だに林地開発許可の審査に時間がかかっていて下りていないのだと思う」と、市民活動の成果についても分析していました。

◯市議会の雰囲気は?

佐藤カズユキ議員

鴨川市議会の中で本事業に唯一反対表明している、佐藤カズユキ議員に話を伺いました。

佐藤議員が反対を表明する理由についてお聞きしたところ、

「漁師の家に生まれ、自然を守ることを公約に掲げている。今回の事業は環境破壊である」

と自然破壊の懸念に加え、

「農業、漁業、林業の1次産業、観光が特徴の当市であるが、本事業はいずれにも大打撃を与える可能性がある。一時的な税金収入よりも失うものの方が大きいと思う」

と、経済的な懸念も理由として挙げていました。

これだけの問題のある事業に他の議員はなぜ表立って反対しないのかについて質問したところ、「事業に賛成の議員もいるが、個人的には反対だと言う議員が多い。しかし、個人的には反対としながらも、あくまでこの問題は市に許可権限はなく、国や県の問題であって市の問題ではないと言う議員が多く、個人の事業であることから、市や市議会が賛否を示すものではないという意見も多い。これは鴨川だけの問題ではないが、地方議会の議員の多くは国の方針にそのまま従う傾向がある」

と、議会の中で自らの意見を発することが困難であることを憂慮の声を漏らしました。

鴨川の市議会の構成については、

「鴨川市議会は圧倒的に自民系が多い。どこの政党であっても、漁業、農業、林業の1次産業が基幹産業である鴨川市を守るのは当然であるが、外部からの投資を優先させるなど、地元産業を守る動きにはなっていない」

との回答。

さらに、「良い再エネ、悪い再エネがある。本事業のような悪い再エネが再エネ全体の評判を落とすことになるのを懸念している」と話し、再エネの固定価格買取制度についても「再エネの使い方をしっかり国が制度化すべきだったと思う。再エネは、再エネ賦課金など国民が負担している公共の事業である。民間の事業利益主義だけ考えると今回のようにおかしくなってしまう」と、懸念を示していました。

加えて、「個人の事業だから私たちは何も言えませんという態度を行政がとっているのが問題。議会内での勉強会も進んでいないし、国からの通達がないと動かない。トップの方の意見が大きく左右する」

と、トップダウンでの動きにしか対応しない鴨川市にも問題があるといいます。

○市長のやるべきことはなにか

鴨川市役所訪問
亀田鴨川市長(左)

今回の訪問では、市民団体や市議会議員の他、2017年3月から鴨川市長を務める、亀田郁夫市長(以下、市長)との会合も実施しました。

鴨川市議会が昨年12月20日、国に対して提出した意見書『大規模太陽光発電施設の開発に対する法整備等を求める』には「自然環境、景観への影響・・・土砂災害等自然災害発生の懸念・・・市民生活を脅かす事態となっている」と説明があり、鴨川市としても、市長としても本事業は「自然環境、景観・・・災害の観点から問題である」と考えるのかを問うたところ、市長は以下のように答えました。

「個人的にはいろいろな意見があるが、法令等の基準に則り対応していく」。加えて、「鴨川市の環境破壊は市への大きな打撃となるのでは」との質問に対しては、「制度の範囲内で対応していくしかない。事業者としても法令遵守を前提として申請している。市としては現行法令の中でできることとして、市民の皆様に対して説明会を開催することや、市民の皆様の疑問に文書で答えることを求めたり、事業終了後あるいは災害等に対応するための積立金をするよう事業者に要請してきたところである」と市民との対話を促しつつも、他の地方行政にあるような条例を市として制定するなどの対策をする構えではありませんでした。

本事業のメリットについて市長は、「市としてメリットの有無で判断するものではないが、地域には短い期間経済的メリットはあろう。市内には、太陽光発電事業者によりミニトマトの温室栽培が行われているところもある」とあくまで中立性を強調しました。

一方で、本事業は鴨川市にとって失われるものについては「地域が担保できる積立金をするように事業者と合意を得たい」と事業者との合意形成に関しては積極的な姿勢は示すものの、本事業のデメリットについての言及はしませんでした。

最後に、「市としてそれ以上対応しないのは他に課題があるからか?」と、鴨川市における福祉や経済など他の課題が優先されて、本事業に関連した対応ができないのかという問いに対して市長は、「他の案件によって今回の事業への対応ができないということではない。繰り返しとなるが、法令に則して中立に対応していく」と否定しました。

と、上記のような形で面談は終了しました。市民や事業者との対話は重要視をしつつも、乱開発の規制を求めるような条例の制定や法令以上の対応には否定的でした。本事業は、鴨川市の基幹産業を脅かす課題とは捉えていないようです。

○鴨川市の向かうべき方向

今回は鴨川市のメガソーラー建設計画についての視察でしたが、メガソーラーへの懸念だけではなく、鴨川市の前向きな側面も発見しました。

守る会の勝又さんは、「鴨川市は移住者が多く自分で得られるものを自分で得る暮らしがしたい、自然の中で暮らしたいという方が多い。ジビエ、サーフィンも魅力であり、半分第一次産業、半分他の仕事(半農半X)みたいな生活に興味がある方々に良いまちである」と自然と触れ合いながら、自分の興味のあることに取り組める受け皿が鴨川にはあると強調されていました。

また、漁業組合長の松本さんも、「他地区は苦戦している中で当漁協は13年間黒字、若い方も入れ替わり入ってくるし経験者がやりかたを教えるという雰囲気が次世代を育てているようだ」と、鴨川の漁師も外からの移住者への対応も積極的で、これがモデル化されはじめ、鴨川のように漁師が増えることを「鴨川方式」といわれることがあるといいます。新しい風が吹いている鴨川でメガソーラー開発に対して「次世代のために反対。若い人たちの姿があるからこそ、想像がつく」と松本さんは強調します。

○自然とともに生きるとはなにか

今回の訪問で多くの方にお話を伺い、鴨川市における本事業は、再エネへの悪い印象が市民の間で広まるのではないかという懸念を感じました。国際環境経済研究所前所長の澤昭裕氏によると、ドイツでは太陽光発電の「施設建設に当たって森林等の伐採を行えば、その6倍の植林を行わないといけない」そうです。大規模な開発を伴うメガソーラー建設に頼らずとも、植林など対応が難しい耕作放棄地や一般住宅、工場などに設置する再エネを普及させるなど、やるべきことは他にもあります。

大規模に土地を削り、埋めるような事業は、再エネ事業に関わらず根本的に問題です。今回の訪問で、鴨川の経済を支える漁業組合を始め、一部の議員にも大規模開発に対する問題意識があり、自然環境の大切さが共有されていること強く感じました。長年維持されてきた自然環境は失ってから気づくのでは遅いのです。さらに、これは地域の問題ではなく都市部に住む人々も自然の利益を受けており、責任があると感じます。固定価格買取制度や環境影響評価法などの制度は短い期間の利益や影響は考慮していますが、さらに30年50年以上先を見据えるような長期的な視点が必要です。漁業や農業を支える自然保護の大切さを改めて感じ、行動していく必要があるのではないかと感じた取材となりました。

「計画概要」(鴨川の山と川と海を守る会調べ

場所:千葉県鴨川市、鴨川有料道路西側、清澄山系の山林

面積:事業面積250ha, 伐採面積150ha

発電規模:130mw

事業者:AS鴨川ソーラーパワー合同会社

地権者:Aスタイル

造成:大蓉工業

設計:ユニ設計

発電設備:日立製作所

(2019年2月 高橋英恵、松本光、天野遼太郎、田渕透)

脱原発活動の新たな歴史

先日お伝えした、アメリカ・カリフォルニア州脱原発のニュース。経済規模も大きく、人口も多いカリフォルニアが脱原発するというのは、世界にも、そして日本にもとても意味がある事だと思います。
脱原発を勝ち取るに至った経緯をFoE USのスタッフ、ミシェルが語っています。

新たな歴史:ディアブロ原発閉鎖の道のり

By ミシェル・チャン

昨日(注:2016年6月21日)、PG&Eはディアブロキャニオン原発を閉鎖する計画であると発表しました。まさに歴史的でした。私はことの「重要さ」を示すだけに 「歴史的」という言葉を使っているのではありません。もちろん、本日発表された合意はとても重要です。

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ディアブロキャニオン前での反原発デモ、1979年6月30日(写真:Jessica Collett)

反対運動の歴史

本日発表された合意は、何十年もディアブロキャニオン原発に反対し続けた人々の声の上に成り立っているという意味で、とても歴史です。
ここ数ヶ月、PG&E(注:ディアブロキャニオンを有する事業者)との交渉が進む中、私は1985年に解散したカリフォルニアの主要な反原発グループ、アバロンアライアンスの膨大なオンラインアーカイブを読み込んでいました。
過去の新聞記事や、写真、個人の証言などを見返しながら、特に70年代や80年代に活動した何千人もの活動家達が成し遂げた事に私は感動し、そして謙虚な気持ちにもなりました。

1979年6月29日、どうやって5万人もサンルイスオビスポのデモに集めたのか、1981年、1960人の活動家が逮捕されながらも、どうやって建設予定地を何週間も封鎖したのか。

最近のキーストーン反対運動(注:アメリカとカナダを結ぶパイプライン建設計画反対運動。環境団体等の強い反対により中止となった。)と当時の反原発活動を比べると、キーストーンの活動が控えめにも見えてきました。

カリフォルニアでの反原発活動が、確固たる勝利を得て、今日の合意を可能にしたということは火を見るよりあきらかです。1976年からの新規原発建設モラトリアム(注:1976年にカリフォルニア州が定めたモラトリアム。連邦政府が最終処分場を決定しない・再処理施設を稼動させない限りは新規原発を建設しないとした。)、1989年のランチョセコ原発に市民達が反対の票を投じたサクラメントでの住民投票、そういった活動が今日の合意を可能にしたのです。2030年までに原発を含まない再生可能エネルギーからの調達の割合を50%にするという、2015年に可決されたカリフォルニアの法律まで、その歴史は続いています。

今日の合意は、これらの長年の、そして懸命な脱原発活動がなければ不可能だったでしょう。

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ブレーキングスルーパワー(注:アメリカで行われたイベント)で発言するデイヴ・フリーマン。2016年5月26日 写真:Slowking4

歴史との対話

このキャンペーンを通し、別の形で歴史を感じたのは、ディアブロ原発交渉で(また、2013年のサンオノフレ原発のキャンペーンでも)一緒に活動したキーパーソン、デイヴ・フリーマンの存在です。

未だに精力的で頭の切れる頑固者、そしてチャーミングな90歳のデイヴは、サクラメント都市工学適用地域、TVA(テネシー川流域開発公社)、ニューヨークパワーオーソリティ(注:ニューヨーク州の公共電力)、そしてロサンゼルス水・電力局の職を歴任。

彼は、我々のシニア戦略アドバイザー、デイモン・モグレンと二人三脚で働いた、チームの一員でした。

カリフォルニア大学バークレー校で行われたConversations with History(注:アメリカのテレビ番組。カリフォルニア大学が制作している。)のインタビューで、デイヴは「TVAで働いていたとき、彼らはさらに原発を建てようとしていた。彼らはすべての電力を原発でまかなうつもりだった」と話しました。

TVAでは、デイヴは‘実用的環境主義者’としての評判を高め、エネルギー効率化プロジェクトに投資する一方、8基の原発を停止、もしくは中止させました。

デイヴは、原発を停止する事は可能であると、様々な方法で、何十年も前から示していたのです。

彼はサクラメントにいた頃、1989年に住民投票で脱原発側が勝利したランチョセコ原発の閉鎖も監督しました。なので、PG&Eとの交渉の間、「この部屋にいる人間の中で、原発を停止・解体した経験がある唯一の人間が自分だ」と、デイヴは述べる事ができました。
我々が今関心を持っている原発で、デイヴがかつて監督したニューヨーク州のインディアンポイント原発という原発があります。デイヴは、そのアメリカの中でも最も危険な原発の一つを閉鎖するために働き続けるでしょう。

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Friends of the Earth創設者 デイヴィッド・ブラウアー

歴史は巡る

今日という日は、フレンドオブジアース(FoE)にとっても歴史的な日です。なぜなら、ディアブロキャニオン原発こそ、約50年前にFoEが出来たきっかけになったからです。
デイヴィッド・ヴラウアーが1969年にFoEを創設したとき、ディアブロキャオン原発はFoEの最初の取り組むべき課題であり、そして我々はそれ以来、ずっとたたかい続けてきました。
トーマス・レイモンド・ウィロックは彼の著書(『クリティカルマス:カリフォルニアにおける原発反対、1958-1978』)の中で、組織の創設期や反原発活動についてこう説明しています:

ブラウアーは、アメリカのエネルギーへの執着は、人間性の否定につながっていると考えた。そこで彼はFoEという組織に倫理性の側面をもたせようと決心した。

ブラウアーの何にも妥協しないというヴィジョンと、我々は環境問題に対して倫理的な立場を取らなくてはいけないという信条(例えば、ビジネス的に合理的だから、というような理由だけで環境活動をするのではない、ということ)は、今でもFoEのアプローチの中に根付いています。ブラウアーはこう言いました;

皆が違った考え方を持つ多元的な社会では、妥協して生きていかなくてはいけません。なので我々は妥協が出来る人を選んで、議会に送り込んでいます。ですが、環境の運動の中では妥協をすることは間違いです。我々が立ち上がっている物のために、発言していくべきなのです。—Living on Earth broadcast

私の20年のFoEでの活動の中で、何が政治的に合理的かよりも、正しい事の為に、立場を譲らずに戦って来た事は何度もありました。こういったアプローチをとる事で、ワシントンの政治的な動きの中では、孤立を感じることも多いです。

我々はよく、化石燃料、クリーンコール、原発、バイオ燃料、廃棄物エネルギー等、そういたすべての物に反対する団体だと批判されてきました。
では、我々は何のためにあるのか?そしてもし、私たちがこういった産業すべてに反対するのだとしたら、雇用はどうなるのか?実際に解決方法を推進していくために私たちは活動できるのか?もしかしたら、私たちは現実の世界で働くにはナイーヴすぎるのだろうか?

だからこそ、妥協せず、むしろさらに志を高めつつ、実際の世界(それも経済規模世界第6位のカリフォルニアで)で、取り組めた事はとても嬉しいことでした。

原発を閉鎖させるだけでなく、私たちは再生可能エネルギーや、エネルギー効率化、エネルギー貯蓄によって代替させるという約束をとりつけました。それはコミュニティーや労働者にとっても公平な変革や転換をもたらす事、Just Transition (公平な変革)を達成する手助けをする事もできたのです。

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サンオノフレ原発(写真:Shutter stock)

私たちの過去と未来

トーマス・ジェファソンは「過去の歴史より、未来の夢の方が好きだ」と述べています。
私は、カリフォルニアにおける反原発活動の歴史から多くの事学びました。同時に、今日の合意は、これから訪れる未来に対して、沢山の希望をもたらしてくれました。
私がそう感じる理由は、再生可能エネルギーと‘just transition’(公平な変革)です。

2013年にサンオノフレ原発閉鎖を達成したときに学んだ事の一つは、原発の閉鎖が順序だって達成されなかったために、その穴を埋めるために「汚い天然ガス」が導入されたことです。
私たちはディアブロキャニオン原発を閉鎖するための効果的なキャンペーンを始めるため、ディアブロキャニオン原発で発電されている電力が、再生可能エネルギーや、電力効率の改善、蓄電によって、(さらにそれらは経済的で温室効果ガスを出さないエネルギーでもあります)まかなう事ができるという事を示した、プランBを作成しました。

そのレポートを、2015年12月のPG&Eとの交渉に場に持っていきました。
さらにこの計画は、3億5千万ドルの保証金と、原発作業員のための再雇用教育がパッケージとなっていたことで、それによってこの共同合意に、国際電気工組合と、カリフォルニア公共事業労働者連合の参加を得る事ができました。
さらに、5千万ドル程の資金が、(つまり、原発が停止することによって失われる税収をやわらげることが可能になる)地元の政府に支払われることになり、地域が経済的に適合していく事を手助けしました。
公平な変革を確実にすることは、政治的に重要だけでなく、また倫理的にも必要不可欠です。

この合意は、原発だけでなく化石燃料から変革する時の青写真を、他の国々にも示したのです。
今日の声明は、一つの原発の終わりを意味するだけでなく、カリフォルニア全体の原子力エネルギーの終わりを示しています。

サンフランシスコクロニクル(注:地元の新聞)は‘原発時代の終わり’と報道しました。
労働者や地域が一緒になって、再生可能エネルギーとエネルギー効率が原発と石炭火力を代替する新しい日を描きました。
これはとても歴史的なことです。

著:ミシェル・チャン(プログラム部長)、翻訳:深草亜悠美

原文はこちら→
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