COP21報告会 Climte Justice Now!

スタッフの深草です。先週2月18日に Climate Justice Now! パリ合意で気候と人々の生活は守られるのか?を東京で開催しました。ウェブサイトに資料も掲載しています。

昨年2015年12月にパリ協定が合意され、ポスト京都の新しい法的枠組みが生まれました。
このパリ協定や気候変動を巡る動きなどについて、東北大学の明日香寿川先生とFoE小野寺ゆうりから気候の公平性や気候の正義という観点から報告がありました。私からはフィリピンで調査した気候変動影響による損失と被害の様子を報告しました。動く→動かすの稲場雅紀さんからはSDGsとCOPの関わりや、SDGsの最新情報について報告がありました。

Climate Justice (気候の公平性)とは、先進国に暮らす人々が化石燃料を大量消費してきたことで引き起こした気候変動への責任を果たし、すべての人々の暮らしと生態系の尊さを重視した取り組みを行う事によって、化石燃料をこれまであまり使ってこなかった途上国の方が被害を被っている不公平さを正していこうという考え方です。

気候の公平性の観点から、今回のパリ合意が人々や気候を守る事ができるのか?
今回パリ協定において、気候変動の影響、いわゆる「損失と被害(loss and damage)」については、独立した条項が設けられました。気候変動による損失や被害そのものは認められたものの、その損失や被害に対する’補償’に関しては、協定内には盛り込まれませんでした。その背景にはアメリカの強固な反対があり、決定文(合意文の方とはちがい法的拘束力はない)の中では「この協定が損失と被害に対し、補償の根拠になるものではない」と付け加えられました。ただし決定文の中の話なので、今後の交渉によってはかわっていく可能性があります。

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明日香先生は、パリ合意は残念ながら「自主的」な取り組みにまかされた部分が多いが、ビジネスや司法へのインパクトは大きいと評価されていました。
興味深かったのは、気候変動による被害によって生じている人権侵害が訴訟に発展し、実際に勝訴しているケースもあるという事です(例えばオランダの市民団体が温室効果ガスの削減目標が低すぎるということでオランダ政府を訴えたケース。一審で市民側が勝訴し、政府は上告しているそう)。こういったケースが増えてくると、今後気候変動と訴訟リスクといった観点の補償の議論もすすむかもしれません。
ビジネスにおいては、ここ数年化石燃料関連に投資されていたお金からを撤退させる(ダイベストメント)が進んでいます。たとえば、ノルウェーやオランダの政府年金基金はダイベストメントに賛同して化石燃料セクターへの投資からの撤退を表明しています。年金基金だけでなく、大学や保険会社、銀行もダイベストメントに賛同するところが増えています。

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FoE小野寺から、パリ合意にいたるプロセスにおいてもアメリカの意向が大きく反映されたものであったと報告がありました。アメリカの合意は不可欠ですが、米国議会で拒否されてはアメリカの参加がなくなってしまいます。ということで、議会に否決裁決させないような合意内容にするため、という名目で駆け引きがあったようです。
二国間クレジットや炭素取引のスキームがパリにも引き継がれていることに注意が必要だという指摘もありました。このままでは、日本の原発や高効率石炭火力が’温室効果ガス削減に役立つ’として、クレジットのために輸出されてしまう可能性がありますので、要注意です。
さらに過去には、バイオエネルギーのために穀物用農地をエネルギー用に転換したことから、穀物価格が高騰し、食糧安全保障が脅かされるという事態にも発展しています。

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私からは昨年行ったフィリピン調査の報告を行いました。
フィリピンではカテゴリー4や5(5はスーパー台風とも呼ばれ、家屋が倒壊したり甚大な被害がでるレベル。4も浸水や家屋被害などがでる威力の強い台風です)の台風が増えており、繰り返し被害を受けるので、なかなか回復できず貧困の連鎖から抜け出せない人も多くいます。
たとえば、2013年にフィリピンを襲った台風ハイヤンですが、その時に家を失った人がいまだに仮住まいにすんでいたり、住宅補償や生活手段再建の支援がない状態にあります。(詳しくはこちらで報告しています)

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動く→動かすの稲場さんからはSDGs(持続可能な開発目標)の話がありました。
SDGsもパリ協定と同じ2015年に国連で採択されました。これまでのMDGs(ミレニアム開発目標)にかわる新たな枠組みです。持続可能な社会にむけて17の大きなゴールを定めています。
17の目標のうち、目標13が「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策をとる」です。基本的に気候変動問題はUNFCCC-COP(国連気候変動枠組条約締約国会議。所謂COP21パリ会議など。)の場で決められるので、SDGsにおいて気候変動に対して何か具体的に決まったりする事はありません。
SDGsの主題は「我々の世界を変革する Transforming our world」でした。
印象的だったのは、SDGsでスローガンであった’leave no one behind(誰も取り残さない)’が裏を返せば自分が取り残されないために、このままじゃ自分が取り残されるという方向で推進力にもなっているという話でした。これでは自国中心・競争原理から抜け出せていない、変革にはつながりません。稲場さんのまとめの中で「SDGsをオルタナティブとして、国レベルでの格差と貧困の解消、誰も取り残さない原則にこだわる」必要性と、オルタナティブ思考の市民社会を構築する必要性があげられました。市民社会の重要性は確かですが、強固な市民社会を構築するためにはNGOの役割が重要になってくるのではないでしょうか。

会場の方に回答していただいたアンケートをみると「FoEの見方は悲観的すぎる」「代替案の提示にかけるのでは」といった意見を頂きました。確かにそうかもしれません…COP21やパリ合意に対しFoEグループは厳しい見方をしています。ただ、合意が結ばれたことで完全に満足している環境団体や活動家はいないのではないかというのも私の実感です。協定の細部を検証し、評価出来る点はのばし、不十分な点は変えていく必要があります。気候変動の被害を被って来た人々が補償されるような仕組みづくりの為には政策提言や、被害の可視化といった活動を続ける必要があると感じます。

ただし、明日香さんのお話にもあったように、ビジネスや金融セクターの中で、気候変動をリスクとして捕らえる動きは確実にあるように思います。
パリ協定は始まりにすぎません。

(文責:スタッフ深草)

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広がる格差とClimate Justice

こんにちは。スタッフの深草です。昨年12月、気候変動の損失と被害の調査のためにフィリピンに行って来ました。今回はフィリピンで調査してきたことについて報告します。

フィリピンといえば、2013年のCOP19ワルシャワ会議でのフィリピン代表団サノ氏のスピーチがとても印象的でした。皆さんは覚えていらっしゃるでしょうか(注1)。2013年11月、スーパー台風と呼ばれる非常に勢力の強い台風ハイアンがフィリピンに上陸。フィリピンではハイアンにより6000人を越える方が亡くなりました。台風が襲来したちょうどその頃、COP19が開催されており、フィリピン代表団のサノ氏は「気候変動による狂気をとめよう」と呼びかけました。
それから2年、現在のフィリピンは台風被害から回復しているのだろうか?気候変動による狂気は止めることができているのだろうか?そういった疑問を持ちながら、台風ハイアンによる被害が最も大きかったレイテ島タクロバン市周辺の農村を訪れました。

IMG_3419.JPG(台風により壊れたままの教会)

台風ハイアンにより、多くの方が生計手段や家を失いました。例えば、ココナツ収穫はフィリピンの重要な生計手段の一つですが、強風の影響でココヤシが壊滅。現地団体東ビサヤ地域農村補助プログラム(EVRAP)の調査によるとハイアンの影響を受けた地域の90%近くのココナツが被害を受けています。訪れた村では、2年経った今でもココヤシの生産力は戻らず、収穫は減ったまま、もしくはゼロだそうです。
また、台風により約100万戸以上がダメージを受けました (注2)。フィリピン政府は住宅を失った人々のために公営住宅建設を急いでいますが、タクロバン市で計画されている1万3千戸のうち、2015年9月時点で300戸程の公営住宅の建設しか終了していません(注3)。一部の人々は未だに緊急支援物資として供給されたブルーシートに覆われた住まいで居住しています。

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(ブルーシートの壁で覆われた家と住人)

気候変動が広げる格差
気候変動によって海水温度が上昇すると台風の威力が増す(注4)とされています。異常気象による災害が原因で難民の発生率が高まる事 (注5)や、食糧安全保障への影響等、多岐に及ぶ被害が報告されています。近年の国際気候変動交渉では、気候変動への適応の限界を超え‘損失と被害(ロス&ダメージ)’が世界各地で起きていることが認識され、そういった被害にどの様に対応するか、支援していくかが課題となっています。

歴史的に見れば、日本やアメリカ、イギリス、フランス等の先進国が化石燃料を縦横無尽に消費して発展を遂げて来た事が、今の気候変動問題の原因となっていると言っても過言ではありません。ですが、フィリピンなどの途上国や、赤道に近い国々がより気候変動の影響を受けているという非対称性、不公平さが存在します。災害対策のインフラが未整備もしくは不十分であるために、災害に脆弱で異常気象に対処する能力が限られた途上国では、先進国との貧富の差、そして国内の貧困の連鎖がさらに広がっていきます。こういった観点から、気候の公平性、Climate Justiceを訴えていく必要があるのです。

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(フィリピンのアクションの写真、写真提供:People Surge)

パリ協定は気候と人々の生活を守れるのか?

フィリピンでは台風ハイアンの影響からの回復もままならない状況がありました。それだけでなく、近年カテゴリー4や5(カテゴリー5はスーパー台風ともいわれ、家屋の倒壊などが発生する一番強いレベルの台風)に分類される強い台風が何度も襲来しており、復興が遅れています(注6)。2015年12月にも台風メーローが上陸し、多くの被害を残しました。

貧困地域では、台風によりさらに貧困の度合いが強まります。私たちのインタビューに答えてくださった方の多くは、2年前から回復していない、状況は良くなっていないと話します。

公営住宅も見に行きましたが、農業に頼って暮らしている人々や漁業をしている人々が、コンクリートの小さな家に移住したら、それまでの生活を維持するのは難しくなっていくでしょう。もちろん、家をもらえて嬉しいという人もいました。ですが、どんな支援が適切なのかは、今後も考えていく必要があります。

また、フィリピン政府は高潮対策の為にタクロバン−パロ−タナウアンを結ぶ27kmに及ぶ巨大な堤防建設を推進しています(注7)が、現地のNGOや住民らは、依然として生活再建に苦しんでいる被災住民を立ち退かせるような巨大堤防の前に、生計手段回復のための支援を優先するよう求めています。

気候変動といえば、二酸化炭素を含む温室効果ガスの削減や数値目標ばかりが目に見えがちですが、実際に現実として被害が起きている事をもっと認識し、それを補償する資金の流れや気候変動の責任について、考えていく必要があります。

FoEグループは、気候変動問題における格差や不正義の問題を長年訴えつづけてきました。
気候変動の被害者を救済する資金的枠組みをはじめ、メカニズムを作っていく必要があります。

報告:緊急寄付に協力ありがとうございました!
今回私たちがフィリピン調査を行ったその2、3日後、フィリピンを非常に勢力の強い台風メーローが襲いました。そこで、フィリピン調査のときに現地でお世話になった団体が現地で緊急支援を行うための緊急寄付を呼びかけ、2月18日までに164,430円のご寄付を集める事が出来ました。
このお金は現地で緊急支援・災害人道支援を行っているTabangに送られます(一部既に送金しています)。

2月18日に『COP21報告会 Climate Justice Now!パリ合意は気候と人々の生活を守る事ができるか?』を東京で開催しました。

※このブログ記事は動く→動かすさんのブログに投稿した物を改変して再投稿しています。

参考文献
1.“「この気候変動は狂気だ」フィリピン政府代表がCOP19で涙の演説” 2013年11月12日、ハフィントンポスト、http://www.huffingtonpost.jp/2013/11/11/cop19-philippines_n_4256950.html
2. National Disaster Risk Reduction and Management Council, “Updates re the Effects of Typhoon “Yolanda” (Haiyan)”, 2014年4月17日
3. タクロバン市, “Tacloban City Housing Updates As of 18 September 2015”、 http://tacloban.gov.ph/shelter/
4. IPCC, 第五次報告、Chapter 14 “Climate Phenomena and their Relevance for Future Regional Climate Change” p1220
5. UNHCR, The Environment and Climate Change, 2015. P5
6. Chris Dolce, “2015 Sets a New Record for Category 4 and 5 Hurricanes and Typhoons”, 2015年10月18日、https://weather.com/storms/hurricane/news/record-most-category-4-or-5-hurricanes-typhoons
7. “P7.9-billion embankment to be built in Tacloban, nearby areas”, Philipino Star News, 2015年9月5日