【第4回スクール・オブ・サステナビリティ2】実際、他国のエネルギー政策は?再エネ先進国の共通点と、日本に足りないもの

こんにちは、インターンの杉本です!

第4回スクールオブサスティナビリティは、デンマーク大使館上席商務官の田中いずみさんと、コスタリカ政府公認ガイドの上田晋一郎さんをお招きしてお話を伺いました。

デンマークとコスタリカにおける政府の役割や政策、国民の自然環境に対する思いを教えていただきました!

SDGs達成度3位のデンマークの裏には政府の野心的環境政策!

田中さんには最初にデンマークについて少し教えていただきました。デンマークは日本の人口の1/20ほどで、面積は九州ほど。そしてなんと、デンマークは幸福度・働く人の幸福度1位なんだそうです!

デンマークはエネルギー政策として、2012年から2050年までに化石燃料に依存しない社会の構築を長期的に目指しています。この目標は、与野党の国会議員の約9割(170/179)から支持を得て、可能になりました。発端は1973年のオイルショックで、石油代替エネルギーとして原子力発電の建設という、日本と同じような議論になったそうです。しかし、1985年に国とし原子力発電をを使わないと決めました。この理由が個人的にとても驚きだったのですが、政府としては原発を導入したかったが、政府のアドバイザーが「国民に説明しなければいけない」と、国民に原発の利点と欠点をわかりやすく説明した冊子を配った結果、原子力発電所の建設計画は無くなりました。(詳細は「北欧のエネルギーデモクラシー」という本で説明されているそうです。)国民と政府の距離の近く、また国民に寄り添う政府だなと感じました。

また、2019年に新しい気候変動政策として、温室効果ガスの排出量を2030年までに1990年比で70%削減を目標としました。これは同年に行われた「グリーン選挙」で、各政党が環境に関しての目標を掲げ、選挙を制した新政府が定めました。以降、化石燃料に依存せずに温暖化ガス排出量を削減しながら経済成長すること(デカップリング)を、1990年からデンマークは証明しています。

そんな日本は電力生産の16.9%(2018)が再生可能エネルギーに対し、デンマークでは79%(2019)を再エネが占めています。ここに再エネである地熱や水力発電がないのは、デンマークには火山やマグマ活動がなく、また山がないので発電できるような川がないからだそうです。このように、地域の特性によって柔軟に対応していくことも大事だなと気づかされました。

また、地域熱供給状況ついても教えていただきました。私はこの地域熱供給を知りませんでした。というのも私のイメージでは、各自給湯器があり熱を作り使う方法しかないと思っていたからです。しかし、地域熱供給は限定された場所で熱を作り、それを施設や住宅に送り熱源として利用する仕組みになっていて、熱の生産効率をあげることができ、また再生可能エネルギーや廃熱を導入しやすいので省エネや環境保全に優れているそうです。この地域熱供給の熱源も再エネが半数以上占めており、一番使われる燃料がバイオマスで、農業大国デンマークでは、収穫した麦からできた麦わらがその大半を占めます。

そして最後には移動手段としての自転車の利用率や、その町づくりを紹介していただきました。自転車専用の道だったり、自転車を列車に乗せれる車両など、みんなが自転車に乗りやすい環境づくりができているなと感じました。

お金はないけど、再生可能エネルギーが主電力の国!?

続いて、23年コスタリカに在住の上田さんにお話を伺いました。「ジャングルの中を一緒に歩いているような気持ちでコスタリカのお話を聞いてほしい」と、コスタリカのジャングルの写真をzoomの背景にしながらお話くださいました。

コスタリカは北海道の6割程度の面積で、人口は500万人ほどの福岡より少し少な中進国です。先ほどのデンマークで幸福度が高かったことと同様、コスタリカの幸福度は日本が56位に対して16位だそうです。

コスタリカは参加者のイメージで多かったように、軍事を持たない国です。1948年に当時大統領だったホセ・フィゲーレス・フェレールはコスタリカの軍事放棄しました。そして、「兵士の数だけ教師を作ろう」というスピーチしました。軍事費がかからないので、浮いたお金を教育と福祉にあて、無料です。

そんなコスタリカで、平和の根源にあるのは「民主主義・人権・環境」なのだそうです。

民主主義についてコスタリカでは、選挙がお祭りで、自分が支持する政党の旗を振ったりと、とてもオープンな場になっている印象を受けました。日本ではなんだか考えにくいですが、、、。また、子供の時から政治について話し合ったり、子供選挙(模擬選挙)などが行われるそうです。

そして、人権が犯されていると憲法裁判所に各個人が訴えれます。憲法違反で訴訟と聞くと、たくさんのプロセスを通して、手間のかかる印象がありますよね。しかし、コスタリカでは、小学生でも大人もただの紙きれやメールに書いてもいいとのこと。直接国民の声が反映されていて、システム整備されていると感じました。

最後に環境について教えていただきました。

コスタリカのの電力は再生可能エネルギー(水力・風力・太陽光・地熱)が主電力だそうです。上田さん曰く、「お金はそんなにないが、地の利を生かしている」そうで、コスタリカの熱帯森林の雨、火山、貿易風による風、痛いほど強い太陽光によって可能になっているようです。原子力発電所や油田を作ったりしない理由として、万が一事故になった場合、人や環境を汚染してしまいうので開発しないという意志の強さも印象的でした。

また、コスタリカは自然環境を観光資源とするエコツーリズム発祥の地です。

ファストフードなどの普及で1980年代に、牧畜のため多くの国土が森林伐採され国土の森が30%ほどになったが、FONAFIFOという、使っていない私有地を国と契約するとお金がもらえる制度を通して今では森林起伏率が50%ほどだそうです。また、セテナと呼ばれる国家環境技術事務局があり、私有地でも森林伐採の際には木だけでなく、どのくらい周囲の生態系に影響するかなどを調査する機関があり、森林伐採すること自体難しいそうです。このことから言えるように、コスタリカ人は自然に生かされているという認識がとても強いと仰られていました。

終わりに、コスタリカの挨拶を教えていただきました。スペイン語が共通言語と聞いたので、「Hola」だと思いましたが違いました。コスタリカでは挨拶もありがとうも「Pura vida(プーラビーダ)」といい、「自然体で人生を楽しもう」という意味だそうです!日本にはなかなか無いのではないでしょうか。使う言葉で国民性が見えてきますね。

参加者の声

  • 国民と政府が互いに協力し合って国全体で環境問題に取り組む姿勢が素晴らしい一方で日本では二者の障壁を感じた。
  • 幸福度にあまりGDPは関係なく、日本も経済発展を目標にしているが、その目標を考え直すべきではないか

お二人からメッセージ

田中さんからは、「日本がデンマークの環境対策をそのままそっくり日本で実現できるわけではないが、デンマークの情報をデータベースにし、どのような対応をしているかを知ることで、これからの日本に繋げてほしい。そして自分ができる頃からやってみて、知識を蓄えてほしい!」とのことでした。上田さんも「できることから初めて、その活動を続けて成長してほしい。そしてこのコスタリカの話が少しでも刺激になったら」とお話ししてくださいました!

日本の良さを生かして環境保全

私はデンマークとコスタリカ、名前は知っているけど、どちらも小さな国というイメージだけ持っていました。この北欧と南米にある二カ国は一見重なる部分がなさそうに見えますが、実は教育や福祉が無料であったり、環境問題に取り組み、幸福度が高く民主主義が根付いている点で共通点だらけだと感じました。どちらも、国民だけでなく政府もが環境への意識が強い印象がを受けました。それとともに、政府が市民に寄り添う環境が整っており、国民が声をあげることで政府をも変えることできるという思いが作られ、より良い社会になっているんだなと感じました。山があったり島国などの日本の地理的条件を上手に使って水力や洋上風力などの再エネ資源も考えていけるのではないか、そして大都市がある一方素晴らしい自然環境を生かした日本が学べることは沢山あるのではないかと思いました。日本が遅れをとっていると感じる一方で、日本の良さを生かして他国の例から取り入れることはあるはずだと感じました。Pura vida!

(インターン 杉本奈帆子)

▼第4回のプログラム
・自然エネルギー100%の鍵をにぎるデンマークの地域熱供給(田中いずみさん、デンマーク大使館上席商務官)
・カーボン・フリーに一番近い国、コスタリカ(上田晋一郎さん、コスタリカ政府公認ガイド)
※ゲストスピーカーの講演のみ公開しています。


*過去のスクール・オブ・サステナビリティ2の報告ブログや動画はこちらからご覧いただけます。

https://www.foejapan.org/climate/event/school2021.html

【第3回スクール・オブ・サステナビリティ2報告】「それって正しい気候変動政策?」もう騙されないために知っておきたいこと

こんにちは!FoE Japanインターンの増田千紗です!
今回もスクール・オブ・サステナビリティ2のご報告をします。3回目のテーマは「日本の気候変動政策」です。

ゲストスピーカーとして、気候ネットワーク東京事務所長の桃井貴子さん、東北大学東北アジア研究センターの明日香壽川さんのお二人ににお越しいただきました。

桃井さんからは世界に遅れをとっている「日本の石炭火力政策」について、明日香さんからは「日本が目指すべきエネルギーシステムの在り方」についてお話いただきました。

日本は世界に遅れをとっている!?石炭中毒な日本

まず、桃井さんには「エネルギー基本計画」や「省エネ法」など日本のエネルギー政策がどういったものなのか、石炭火力政策は具体的に何が行われているのか、詳しくご説明頂きました。

桃井さんによると、世界的な気温の上昇を産業革命以前とくらべて1.5℃に抑えるという「1.5℃目標」を達成するためには、2030年(あと9年!)までに先進国が「石炭火力」を全廃することが必須とされています。「石炭火力」の全廃が求められているのは、現在の発電方法の中で、最もたくさんのCO2を排出するためです。すでに、英国は2024年、フランスは2022年と、先進国各国が、2030年までの脱石炭を宣言しています。一方で、日本は未だその宣言さえできていません。

現在、エネルギー基本計画見直しの真っ最中ですが、2030年電源構成に19%もの石炭火力が含められていることからも、日本政府は再エネ化を進めたいのかそうでないのか、はっきりしないように感じます。また、驚いたのはエネルギー基本計画やエネルギー政策の詳細を策定するのが経済産業省の官僚であること。国会で審議できるのは大枠を定める法律だけですし、本来、環境政策をリードするべき環境省には、十分な決定権が与えられていないそうです。

気候変動政策について学ぶ度に、「しっかりした政策を掲げる政治家を選びたい」と思うのですが、政策を実行する官僚の裁量がここまで大きいとなると、選挙だけじゃなく、パブリックコメントなどで行政に声を届けることも必要なんだなと考えるようになりました。

*現在、第六次エネルギー基本計画についてのパブリックコメントの募集期間です。締め切りは10月4日まで!ぜひ皆で意見を届けましょう!「何がどのように問題なのか」をまとめたウェブページを紹介いただきましたのでご参考ください。

https://www.kikonet.org/info/press-release/2021-09-08/public-comments-2021

1.5度目標達成のため、日本に必要なこと

次に、明日香さんから1.5℃目標達成には何が必要なのか、日本と世界の「再エネの計画・政策」や「省エネによる削減率の計画・政策」を中心にお話頂きました。

世界中の国々は2030年のCO2削減目標を「1990年比」で設定していますが、日本だけはなぜか「2013年比」なのだそうです。理由は、「2013年が最もCO²排出量が多い年だったから」。46%の削減を表明し、その目標の低さに大バッシングを受けている菅政権ですが、少しでも数値を大きく見せれば私たち国民は騙せると思われているのがとても残念です。信頼できる情報をもとに自分で判断するために、学び続けなくてはと改めて感じました。

そして、1.5℃目標のためには「再生エネルギー」の推進が最も効果的だとされていますが、日本では以下の3つの懸念点が挙げられています。

①電力供給量不足のため脱原発かつ脱石炭火力は不可能なのではないか。

②再エネ化で電気料金が値上がりするのではないか。

③石炭火力発電に関わる労働者の雇用が心配。

一方で、このような課題をすでに克服している国があることが印象的でした。例えば、ベルギーでは既に脱石炭火力と脱原発を実現しています。また、再エネ構成比が9割になっても電気料金はほぼ変わらないことが、各研究所や米国政府からも報告されています。雇用に関しても、日本では再生エネルギー化による影響を受ける労働者の数は比較的少なく、再エネ関連の雇用創出も見込まれることから、石炭火力発電所を温存する理由にはならないように感じました。

米国・EU・中国などによる、大規模な再エネ政策や、政策実行の加速化が見られるなか、日本の政策は「今のところ実現できそうな目標」をとりあえず言っているだけなのでは?と疑ってしまいます。最後に明日香さんには、日本の再エネ政策が遅れている理由として、「恵まれた環境にいて危機感がない」「再エネ化は無理だと思い込んでいる」「政府と企業の時間稼ぎ」「環境省の未成熟」を挙げていただきました。

また、上記の課題を克服しながら、気候危機を脱する方法が「グリーン・ニューディール」とおっしゃっていました。明日香さんを含む日本の科学者による、日本における「グリーン・ニューディール」の詳細は、下記よりご覧いただけます。

「レポート2030〜グリーン・リカバリーと 2050 年カーボン・ニュートラルを実現する 2030年までのロードマップ〜」

https://green-recovery-japan.org/

参加者の声

お二人の話を聞いて、参加者からは以下のような意見が聞かれました。

・再エネ政策が進む国では市民運動に政策を後押しする力があるけど、日本にはまだないように思う。

・日本の教育では、市民の力やアクションに希望が持てない。

・お金儲けのための環境政策をやめよう。

・エネルギー政策の話は難しいが、国民にまで届いていないし、選挙の争点になっていないことは問題だ。

日々考えたい政治のこと

先日、私の地元、横浜市の市長選挙がありました。「直前にいろいろ調べて選んだらいいや」と軽く考えていたのですが、いざ調べてみると全然時間が足りなかったんです。様々な分野の政策がありますし、知りたいことは山ほどありました。今回のウェビナーでも、改めて政策について考える難しさを感じました。日々少しずつでも、政治に関心を持つことが習慣になればいいなと思います。

※今回のウェビナーでは、かなーり詳しく日本のエネルギー政策についてお話いただきました。(石炭火力を延命させるために、「容量市場」や、数字上 “高効率” に見せることを許容した省エネ法の改正など…)

詳しくはYoutubeでチェックできますので、ぜひご覧ください!

(インターン 増田千紗)

▼第3回のプログラム
・世界からブーイングを受ける日本の石炭火力政策(桃井貴子さん、気候ネットワーク東京事務所長)
・日本が目指すべき分散型エネルギーシステム(明日香壽川さん、東北大学教授)
※ゲストスピーカーの講演のみ公開しています。


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【第2回スクール・オブ・サステナビリティ2報告】「気候正義」と聞いてもピンとこない。そんな私が気づいたこと

こんにちは〜!
FoE Japan インターンの増田千紗です。
今回は、連続オンラインセミナー、「スクール・オブ・サステナビリティ2」の第2回「気候正義とは?」の内容を報告します!

第2回は、Asian People Movement on Debt and Development の Claire Mirandaさんと、Friends of the Earth International の Sara Shawさんにお越しいただきました。Claireさんからは、主に「気候正義」とは何か、Saraさんからは、世界中に広がっている「気候訴訟」の運動について詳しくお話しいただきました。

「Climate Justice」「気候正義」と聞いてもピンとこない、なんて方も少なくないでしょう。私もその1人でした。なぜ「正義」を求める声があがっているの?私たちは何をすればいいの?そんな疑問を抱えながら、今回のウェビナーに参加しました。このブログでは、わたしが学んだことを少しだけでもみなさんとシェアできたらいいなと思います!

利益と成長のため OR 次世代のため あなたはどっち?

はじめにClaireさんからは、気候変動における南北問題に触れながら、気候正義を考える際の要点を教えていただきました。

気候変動は、主にグローバル・ノース(先進国)の政府や企業により引き起こされていますが、その被害を受けやすいのはグローバル・サウス(途上国)の国々、人々だと言われています。このような国家間の公平性みならず、性別間、世代間の公平性を確保しつつ気候変動に対処することが「Cliamte Justice(気候正義)」の考え方です。

もう一つの重要なキーワードが「共通だが差異ある責任(Common But Differenciated Responsibilities, CBDR)」です。この考え方に基づき、先進国は気候変動の緩和策の実行に加え、賠償(資金や技術の提供)を行うことが求められています。

しかし、COP15(2009年)で約束された毎年1000億ドルの先進国から途上国への支援は、未だその半額ほどにしか達していないのです。一方で、化石燃料に対する融資は増え続けており、全く誤った分野に資金が集中してしまっていることが分かります。三菱UFJ銀行やみずほ銀行といった見慣れた名前が、「世界で最も化石燃料に融資をする10社」に並んでいるんです。個人的にメインバンクとしてお世話になっている企業だけれど、これからはどうしようかな、とモヤモヤとしてきました。

そして、1番印象的だったのは「日本は偽りの気候変動対策に加担しないで」というClaireさんの訴えでした。先進国の一員である日本は、豊富な資金や技術を持っているのに、なぜこんなにも気候変動に鈍感なのかと思うのと同時に、やはり政治家を選ぶ選挙って大事だなと再確認しました。次回のスクール・オブ・サステナビリティでは、日本の気候変動政策は実際どうなってるの?というところを考えていきたいと思います。

気候訴訟という闘い方

続いてSaraさんからは、環境汚染を引き起こす企業や政府を訴える「気候訴訟」について、オランダの事例とともに教えていただきました。

ここで登場するのがBig Polluters(大規模汚染者)です。Big Pollutersとは、環境汚染に貢献する大企業のことを指します。実際、過去30年間の温室効果ガスの排出量の半分はたった25の企業が占めていて、また排出量の71%は100の企業の責任です。Big Polluters は莫大な資金を利用し、気候政策を妨害してきました。特に、5大石油ガス会社(シェル、BP、エクソン、シェブロン、もう一個なんだっけ?)は、気候変動の誤解を招くようなロビー活動に何十億ドルもの資金を費やしていたのです。

また、大企業は「大きなウソ」をつきます。
大企業の広告や主張にただ流されるだけの消費者になっていないだろうか、彼らは本当に言っていることを実行しているのか、その方法は本当に正しいのか、など我々が意識すること、暴いていかなければならない事が多いのだなと痛感しました。

そんな大企業と「闘う」方法の一つが気候訴訟です。
2021年5月、オランダにて、石油会社シェルに対する気候訴訟で市民側が歴史的な勝利を収めました。この裁判のポイントは3つです。

①市民に対する「人権侵害」を訴え、それが認められた。

②賠償ではなく、「気候変動対策」と「排出への責任」を企業に求めた。

③FoEオランダに加え、1万7千人のオランダ市民、複数の環境団体が原告となり、世界中からは100万人を超える署名が集まった。

これまで、政府に対する気候訴訟では市民側が勝訴するケースが増えてきました。今後は、このシェル訴訟を前例として、企業に対する気候訴訟の世界的な拡がりが見られそうです。英国、スリランカでは政府を相手にした気候訴訟、オーストラリアでも山火事の被害者と共に化石燃料企業に融資している銀行に対しての訴訟が検討されているようですが、海外の事だから…と聞き流すのではなく、署名で意思表示をしたり、国内で同じような事例がないか考えたり、と私たちにも様々なアクションが起こせそうです。

参加者の声

気候正義という概念を学び、SYSTEM CHANGEの重要性を感じる声があがりました。一方で、いざ自国の社会システムが変えられそうになれば自分も反発してしまうかもしれない、利益や成長の追求は抑えられるのか?という不安や疑問も多くありました。そんな中、参加者からは以下のような意見が聞かれました。

・裁判など第三者の声がないとシステムは変えられない。

・GDPの成長率などで評価される仕組み自体が変わらなければならないのではないか。

・企業のnet zero 計画の問題点を多くの人に分かりやすく示し、市民からの圧力を大きくしたい。

・環境問題にも南北格差があることを知り、先進国に住む者としてより責任を感じた。

・日本は資金や技術がある国でもあることを忘れていたので、企業や政府にも期待したくなった。

今までの発展による恩恵を受けてきたからこそ

資本主義の世の中では、絶対的な力を持っている大企業。自国の発展が企業に支えられてきたことは事実です。私たちは彼らの事業による利益を消費してきたかもしれません。でも、その責任のある市民だからこそ、今声をあげることが必要なのではないでしょうか。

また、目先の利益ではなく、本質的な豊かさを求めることもひとつのアクションなのかなと思います。気候正義に則った政策決定を求めるだけでなく、自分の消費行動など身の回りから見直していきたいと思います。

最後に、Claire さんとSaraさんのお二方がスライドに使っていたメッセージです。

“Which side are you on?(あなたはどっち?)”

“Stand with people, not polluters!(汚染者ではなく人々の味方に!)”

(インターン 増田千紗)

▼第2回のプログラム
・途上国の人々が先進国に伝えたい” Climate Justice”とは?(Claire Miranda, Asian People Movement on Debt and Development)

・気候変動への企業の責任〜世界中で広がる気候訴訟〜(Sara Shaw, Friends of the Earth International)


※ゲストスピーカーの講演のみ公開しています。

「地元の石炭火力のこと、もっと多くの人に知ってほしい」横須賀市民アンケート(後編)

今年4月、横須賀市と三浦市内の6つの地域で、それぞれの地域に住む住民の方の手によって、気候変動や石炭火力建設についての意識を調査するアンケートが行われました。

今回は、アンケートに関わった大木さん(野比在住)、竹渕さん(岩戸在住)にお時間をいただき、なぜアンケート活動を実施しようと考えたのか、アンケート活動を進める中でのエピソード、そしてこのアンケートに込める思いを伺いました。

(アンケートの結果については、「横須賀市民アンケート(前編)「約64%の方が石炭火力建設反対」をご覧ください。)

アンケート活動のきっかけを教えてください

大木さん

「2020年11月、コンビニの中でばったり、2年ぶりくらいに岸さんという友人に会ったんです。そこで10-15分立ち話をして。その時に、彼女から石炭火力が新しく作られていることを知ったんです。大昔に石炭火力があったのは知っていたんですが、新しい石炭火力がたつとは知らなかった。そのあと、新聞などで自分で調べていくうちに、石炭火力を止めるための訴訟をやっていることとか、全国の石炭火力発電所のあるところでアクションがあることを知ったんです。グレタの言葉も知って、なんとかしないと、と。あと、私はずっと楽器店で働いていて、音楽教室の運営をしていたのですが、コロナの影響で仕事がなくなってしまって。今年に入って仕事を探していたけれど、なかなか見つからない。でも、この石炭火力のことをもっと多くの人に知って欲しいという気持ちも強くて、とりあえず多くの人に知ってもらうために時間を使おうと思ったんです。。というのも、自分が岸さんから石炭火力の話を聞いたとき自分が石炭火力を知らない人間だったので、知らない人がいっぱいいるのではと。

竹渕さん

「石炭火力については、前から横須賀火力建設を考える会(横須賀石炭火力問題について活動している団体)の内藤さんからよく話を聞いていて、逗子でのイベントにも参加したりしていました。何か力になりたいと思い、途中から原告にもなっています。でも、石炭火力についての危機感をもっと強くしたのは、2020年1月の野比での気候変動の勉強会。COP(気候変動に関する国際会議)やグレタの話を聞いて、本当に止めないといけないんだと感じたんです。何かできないかと色々考えていた時に、ハイランド(横須賀石炭火力発電所の建設地の近くの地域)での石炭火力についての意識調査アンケートを知って。でも、このアンケートがハイランドだけで終わったらまずいと思い、アンケートを広げないかと仲間に相談して、そこでやろうということになりました。」

どのようにアンケートを進めたのでしょうか?

大木さん

「1月半ば、アンケートをやりたい人たちで集まりました。その時は、野比、岩戸、佐原の3地域から集まり、まずは自分たちの住んでいる地域で広めようと。でも、地元の知り合いに声をかけてみたら、他にもやりたいという人が増えてきて、バラバラでやるのはもったいないと思ったので、まとまってやろうということになりました。2月半ばには、横須賀火力建設を考える会とも一緒にやろうということになって。アンケートを始めようとした時は3地域30人くらいだったのに、進めていくうちに6つの地域(野比、岩戸、佐原、長沢・津久井・グリーンハイツ、三浦、その他横須賀市内)で112人になったんです。たくさんの人が関わってくれるのはとても嬉しくて。」

アンケート活動の中での苦労はありましたか?

竹渕さん

「私は岩戸に住んでいるので、岩戸でのアンケート活動をしていました。石炭をどうにかしたいと、自発的に25人くらいが集まったんです。10代も3人いたし、80代の方も孫のためになんとかしたいと主体的に関わってくれました。また、初めてこのような活動をするという人も2人加わってくださったんです。とはいえ、アンケート用紙を地元でポスティングすることは、みんなにとってハードルの高いものでした。2つのハードルがあったと思っていて、一つは高齢化。体力的な問題で、階段の多くある世帯などにはポスティングをあきらめました。

もう一つは人の目。「出るくいは打たれる」でないけど、周りがやっていないことへの抵抗は大きかったのだろうなと思います。どれほど彼女たちにとってチャレンジングだったか。」

アンケート活動中の思い出は?

大木さん

「地元のパン屋に買い物に言った時、『アンケートお疲れ様。絶対反対。協力します』とパン屋のオーナーさんがコメントしてくれたこと。あ、見てくれている人がいるんだ!って思ったんです。」

竹渕さん

「直接手渡しできた人には対話ができて、思いが同じとわかったときは嬉しかった。もっとこのアンケートを大きくしなきゃ、と大きなモチベーションになった。知らなかった人に知ってもらえるっていうのはやりがいとして大きかった。」

4000通以上もの回答がありましたが、集計中に気づいたことや感じたことはありますか?

大木さん

「自由記述が多かったのが印象的でした。野比のあるアンケートには、筆圧強く「がんばれ」とかいてくれている人もいたんです。また、アンケートの回答用紙と一緒にカンパもくださる方も。読みながらうるうるしてしまいました。見てくれている人がいる、このアンケートの声を国まで届けに行かなくちゃと。横須賀出身の小泉大臣に直接読んで欲しい。あと、アンケートを配っていない地域でも、アンケートの結果を伝えたい、世論を作りたい、国が無視できないくらいに。」

竹渕さん

「岩戸では高齢者が多く、パソコン作業をあまりやったことがない人が多かったけれど、パソコンでの打ち込み作業を紹介し体験もしてもらいました。そして出来上がった集計結果と自由記述はアンケートを配って回ったみなさんと共有しました。自由記述のコメントの中には、元気の出るコメントもある反面、凹むコメントもありました。懸念していることは、『ゼロカーボンになるからいいじゃない』という考えが広がること。とても怖く感じています。解決策は自然エネルギーだということを伝えたい。2050年にCO2排出ゼロになっていればいいというのは遅い。どうにかしたいと思いましたね。」

横須賀は将来、どのようになっていくことを希望しますか?

大木さん

「私は横須賀で生まれ育った。故郷なので、住み続けられる海とか山とか、自然の恵みを未来の子どもたちに引き継ぎたい。横須賀は自然が豊富。横須賀や三浦半島にあった自然エネルギーの方法を探して、地産地消や地域産業として成り立つような使い方があるはず。」

竹渕さん

「大木さんの言う通り、今のままだと横須賀のいいところが活かしきれていないと思う。野比には研究開発の先端地域として大企業の研究機関が来ているけれど、自然エネルギーの研究開発拠点になれば、自然エネルギーのモデル都市にもなれるはず。そうすれば、誰もが住みたくなるのでは。」

最後に

新型コロナウイルスの感染拡大予防のために大きな集会などが実施できない中、一人一人が地域の各戸に自分の足で歩いてアンケート用紙を配っていくという改めて地域で運動することで生まれる連帯感の強さを感じました。

大木さん、竹渕さんのお話を伺う中で、「地元で作られている石炭火力について、皆で考えたい」という思いが伝わってきました。行動が制限される中であるにもかかわらず、自らの足で配布した122人に敬意を評したいと思います。

FoE Japanでは引き続き、石炭火力の建設中止を地域住民の方と共に求めていきます。

(高橋英恵)

「約64%が石炭火力建設反対」横須賀市民アンケート(前編)

今年4月、横須賀市と三浦市の6つの地域で、それぞれの地域に住む地元住民の方の手によって、気候変動や石炭火力建設についての意識を調査するアンケートが行われました。

今回は2回にわたって、第一回はアンケートの結果を、第二回はアンケートに関わった地元の方の声を紹介します。

回答者の3割、いまだ石炭火力新設を知らず。

アンケートは3月下旬から4月上旬にかけて配布され、4月20日が回収締め切りでした。

配布地域は建設地に近い久里浜、野比、北下浦、岩戸を中心に横須賀市全域と三浦市です。

配布数は 25,620 枚、回収数は 4,074 枚、回収率 15.9%でした。

アンケートの質問は、下記の5点です。

1. 久里浜で石炭火力発電所が建設されていることをご存知ですか?(知っていた/噂程度に知っていた/知らなかったから3択)

2.石炭火力による、温暖化や気候変動への影響をどうお考えでしょうか?(影響ない/影響あり/わからないから3択)

3.石炭火力による、健康や生活環境への影響をどうお考えでしょうか?(影響ない/影響あり/わからないから3択)

4. 石炭火力発電所建設についてどうお考えでしょうか?(建設すべき/やむをえない/建設反対/わからないから4択)

5. 将来の望ましいエネルギー源は?(原子力/石炭、LNG、石油/再生可能エネルギー/わからないから複数回答可)

結果、久里浜で石炭火力発電所が建設されていることを知っていたのは45.2%、噂程度に知っていたのは25.1%、知らなかったと回答したのは29.7%でした。建設を知らなかったとの回答が3割弱あり、周知の徹底ができていなかったことが伺えます。

また、石炭火力が気候変動に影響があると考えている方も80%近くおり、健康や生活環境への影響についても、影響があると考える方が約75%いらっしゃいました。

気候変動や生活環境への影響を聞いた上で、石炭火力発電所の建設の可否について考えを尋ねたところ、4.7%の方が建設すべき、約20%の方がやむをえない、約64%の方が建設反対、残りの約11%はわからないとの回答でした。

最後の将来の望ましいエネルギーについては、再生可能エネルギーが全体の約77%、化石燃料や原発を選んだ方それぞれ全体の約8%いらっしゃいました。

自由記述欄の記入数が 1755 通

また、自由記述欄への記入数が 1755 通、回収数の 43.1% と半数に近くもあり関心の高さが示されました。

例えば、問4で「建設すべき」と回答された189名中120名から自由記述に記入があり、「原発が信頼を失った以上、火力発電のほかない。再エネですべて賄えない」「再エネに頼るのはダメ。分散してリスクを低減すべき」「原子力よりましであると思う」「火力発電がなくては便利な生活を出来ない」といった意見が見られました。

一方、「建設反対」と回答された2568人中1166名と約45%の方が自由記述に記入があり、「世界の潮流に逆行」「アレルギーがあり大変不安。建設されたら横須賀から引っ越しを考える」「小泉環境大臣のお膝元このような計画が進行中とは嘆かわしい」「市民の知らないとことで工事が進んでいることに疑問を感じる。ショック。市民として悲しい。」などの意見でした。

また、「やむをえない」「わからない」と回答した人の自由記述は、「もう建設が進んでいる。今更反対しても止まらない」「具体的にどんな問題があるかわからない」というようなものでした。

現実とアンケート結果のギャップ

横須賀市内の石炭火力発電所の建設地域付近の地域や三浦市内の6つの地域で実施した今回のアンケートは回収率は約16%であるものの、回答者全体の6割以上が建設反対という結果となりました。また、石炭火力と気候変動の関係、石炭火力と生活環境や健康との関係に影響があると認識されている方も7割以上ということもわかり、住民の中にはこの事業に懸念を持っていることが明確になったことは、とても大きな成果です。

アンケートの自由記述にも、「環境大臣はなぜ地元の石炭火力を止めようとしないのか」「世界に逆行している石炭火力をなぜ今更作るのか」という声が多く見られました。一方、「再生可能エネルギーだけでは不安定なのでは」「建設が進んでいる以上もう止められない」と悲観的なコメントもありました。地域住民の声を聞かずに建設を進め、諦めを感じさせるやり方には、憤りを覚えます。

また、横須賀石炭火力発電所の事業者であるJERAは昨年10月に「JERAゼロエミッション2050」をうちだし、2030年までに発電原単位あたりのCO2排出量を20%減、2040年までにアンモニア専焼を目指すとしていますが、この横須賀石炭火力発電所をどのようにゼロエミッションにしていくのかは公開されていませんし、そもそもJERAが検討している化石燃料からアンモニアを製造する方法は、炭素回収貯留(CCS)という不確実な技術に頼ったもので、真の脱炭素燃料とは言えません。

さらに、今年6月に開催されたG7首脳会合においては、「石炭火力発電が温室効果ガス排出の唯一最大の原因である」ことを認識し、「国内的には、我々は、2030年代の電力システムの最大限の脱炭素化を達成すること、また、それを更に加速させる行動にコミットする」と明記しています。気候変動をさらに加速させる石炭火力を建設・稼働する余裕はどこにもないはずです。

後編では、アンケート活動に関わった方に、アンケートに至った経緯、活動に込めた想いを伺います。

(高橋英恵)

「分断ではなく共生を」地域住民抜きの事業に声をあげる、徳島県陸上風力発電所を視察して

6月20日、徳島県那賀町、上勝町、神山町周辺の陸上風力発電所を視察しました。

お話を伺ったのは、徳島県那賀町の「風力発電とまちづくり(共生)を考える会」を立ち上げた桑高仁志さんです。桑高さんは群馬県出身ですが、新潟県の地域復興支援員を経て、8年前に徳島県那賀町の地域おこし協力隊に。現在は古民家ゲストハウスを営む傍ら地域づくりの活動をされています。

桑高さんが風力発電事業に関心を持ったのは、2018年、隣町の方から徳島西部・天神丸での陸上風力事業-(仮称)天神丸風力発電事業について相談を受けてからでした。一杯のそばで買収されたと、冗談を交えながら、そのきっかけを話してくださいました。

「天神丸の事業について話を聞いて、で、環境影響評価書の配慮書が縦覧開始されるというのを町の広報誌で知って、調べてみてインターネットで見てみたら、300ページくらいある。こんなもの地元の爺さん婆さん見ないと思って。だから、要約してわかりやすいリーフレットみたいにしないと地元の人はどこで何が起こるのかがわからない。それで勉強会の資料を作って、公民館押さえても町は周知をさせてくれない。中立ですといっても、公民館や役場の掲示板をつかわせてもらえず、移住者がこうした話題を取り上げることにタブーを感じた。」

きっかけとなった天神丸での計画は2021年5月末に見送りとなりましたが[1]、2020年、徳島南部の那賀町での計画が持ち上がりました。新型コロナによる一回目の緊急事態宣言期間中の縦覧は町広報での事前周知もありませんでした。オンライン縦覧こそ行われましたが、桑高さんは、オンライン中心の縦覧だと地域のお年寄りは取り残されるという問題を指摘します。

とはいえ、県内では、風力発電に疑問を持つ人はとても少ないといいます。

「風力を問題視できる人が少ない。やっぱりメリットとして、雇用が生まれるんじゃないかとか、土木が潤うとか。再生可能エネルギーじたい必要なんだし。たぶん電気代安くなるんでしょとか。あと、考えることをやめてしまっている人たち。何もないところにやって来てくれる。そこに期待してしまう。町としての戦略はずっと林業。今までの産業を、どう守っていくかという考え方だからなかなか新しい雇用が生まれてこない。」

そのほかにも、住民や行政積極的になりづらい理由があるようです。

「那賀町の木頭地区[2]ってところが、過去にダムを「作る」「作らない」で二分された。分断のせいで、村の助役が自殺するようなことも起きた。住民運動の結果、ダムは作らないことになったけれど、そのせいで県にずっと睨まれ、道路の拡張工事とかをしてもらえなかった。村が賛成反対で二分されたという過去があるところに、風力でまた賛成反対の議論になってしまうと。またいざこざが起きると。でも、俺からしたら、声をあげなかったら議論が始まらない。だったら、中立でいいから、事業者からどうやってメリットを引き出すかという知識をつけていきましょうよ、ということをずっと言っているんですけどね。どうしても、登山家とか自然の愛好家とか外部の人から「反対」の声が先に上がってしまう。でも、風力が建つ山を持っている山主はお年寄りで、山が売れないという後ろめたさや、少しでもお金になるんだったらという淡い期待をもってしまう。地元の人は賛成も反対も言わないオロオロしている状態のときに周りの意識高い系の人たちが反対って言っちゃうんですよ。移住者もそうだけど。そうなると地元は、賛成したい人もいるのに反対って言えなくなっちゃう。神山は実際風力が立つにあたって立て看板で「絶対反対」って言っている。海陽町の方は、県議を巻き込んで運動しているが賛成反対の構図ではまた分断が生まれてしまう。」

また、徳島県那賀町の立体地図を見せながら、徳島の風力発電の状況をお話くださいました。

「今稼働中のところは佐那河内(大川原ウインドファーム[3])。今建設中なのがこの上勝神山あたり(上勝・神山ウインドファーム[4])。あと、天神丸ってところで計画されたけど2021年撤回になって(天神丸風力発電事業[5]、オリックス株式会社、144,900kW、42基)、JAG国際エナジーがあたらしくやろうとしているのが木沢から鷲敷までのこの黒い尾根(那賀・勝浦風力発電事業[6])と海陽町(那賀・海部・安芸風力発電事業[7])。天神丸あたりは四国の中でも1000m超えで、ブナの原生林もあって、この辺で風力発電建てられるんだったら、四国はどこでも建てられるでしょって話になるんですよ。だから、那賀町が毅然とした態度で挑めば、建てていい場所、建てちゃいけない場所の基準が出てくると思うんです。また四国で20数頭しかいない絶滅危惧種のツキノワグマ生息域もあるため、ゾーニング(事業適地の絞り込み)をちゃんとやってほしい。クマなんかいらないという地元の人もいれば、クマがいるってことはそれだけ生態系が豊かであるということだから残した方がいいっていう人もいる。」

上勝・神山ウインドファームの建設現場へ

桑高さんにお話を伺ったのち、桑高さんと一緒に、現在建設中の上勝・神山ウインドファームに向かいました。自然観察指導員でもあり森林活動ガイドでもある登山家の坪内強さんが現場を案内くださいました。

左:ヤマツツジ、右:鹿が木の皮を食べた跡

上の写真は、T1の設置場所の脇にある登山道を進んでいった時の風景です。写真を撮った場所と写真の赤丸で囲ったところは本来繋がった登山道だったそうで、陸上風力の部品を運び込むために山が削られ、上記の写真のような形となったそうです。「再エネの主旨はわかる。でも、自然のかたちをここまで変えて発電所を作る必要があるのか?」と案内くださったお二人は漏らします。

風力発電事業への住民の思い

上勝神山ウインドファームの建設現場視察後、意見交換を行いました。

大川原ウインドファームの発電基を見上げながら、坪内さんは、大川原ウインドファームでは、冬の期間、風車のブレードが凍ること、その氷を取り除く作業を時々やっていることをお話くださいました。タワーのブレード上部に届く60m位の高さのクレーンで氷を除去している。現在建設が進む(上勝神山ウインドファームの)高さ80mの風車は、冬期の積雪期には現在のメンテナンス方法では厳しいのではと懸念していました。

また、事業と地域の関わりについても、地域で得たエネルギーなら、電源交付金のように地元にお金を落とすべきところ、風力にはそんな仕組みはなく、何か地元に利益が還元する仕組みがあればよいのですがと話していました。

年に20回は、この尾根を歩いている。ある時、巨大な風速計が山の中に立った。それでなんやろと思っていたら、土質調査のボーリングが始まった。その後重機が入って大規模に山を削り、自然林を伐採して建設用地と作業道が造られた。その結果、家内と四季折々山野草を楽しみながら歩いた尾根筋は通行できなくなってしまった。自然を楽しんで歩く「四国のみち」も尾根道から林道に変更されてしまった。那賀町の建設予定地はサラサドウダン絶滅危惧2類などの珍しい植物が自生していて建設による絶滅が心配される。造形物と自然の美しさ、どちらを残したいか。私は反対って立場ではない。ただ、現場をみて皆に考えてもらいたい。

また、今回一緒に建設現場を視察した、勝浦町の農村体験型宿泊施設や上勝町のキャンプ場で働きながら地域自家発電の研究に携わる新居彗香さんは、

「風力発電事業は桑高さんのSNSの投稿を通じて事業に興味を持った。風力の何が問題なのか分からず、いい点、悪い点を知りたかった。地元では、大川原高原はとても流行っていて、いいじゃんという人が多い。」

と、地域の多くの住民の様子を教えてくださいました。

それに付け加えるように、桑高さんも、風力発電のできる地域は住民が普段来るようなところではなく、地元の人すら行ったことのない山で事業を計画されるから関心持ちづらいと、住民の関心をあげる難しさを教えてくださいました。とはいえ、桑高さんが考えていきたいことは、「風力発電と共生する地域づくり」だといいます。最後に、桑高さんに、徳島での陸上風力発電事業(那賀町と海陽町の事業)について、どのように関わっていこうと考えているのかお聞きしました。

今は準備書前の現地調査をする段階。考えているのは、この間にうまく事業者を引っ張り出せないかと考えている。事業者は、地元が反対していたとしても調査はさせてほしいと言っている。その結果、できるかできないかを協議させてほしいという立場。だから、事業者にうまいこと「じゃぁどういう共生を考えているんですか?地元の小学生中学生と一緒に考えませんか?地元の人が何をしたいのかを聞く場面を設けますんで、よかったらきませんか?」というのをやりたい。子どもとの共生WSとかだったら向こうも断りづらいだろうし。僕は風力発電を、自分たちの町の未来を前向きに考えるテーマとして積極的に捉えようってスタンスなんです。僕は、町のみんなが自分の町の未来を考えるお手伝いをしたい。

一呼吸あって、桑高さんはこう続けました。

「共生というのは一つのキーワードのはず。いいもの悪いものってのはやっぱり皆で議論して初めてわかるもの。事業者のベストの形もあるし、行政のベストな形もあれば、住民のベストな形もあるので、そのすり合わせはやっぱりしないとダメなんです。

僕は、風は地域の資源だと思っている。便利な言葉で、『7つの風』という言葉がある。風土とか風味とか風習とか、風がつくる7つの景観があると。風によって地域は形作られているんだから、その風を使うなら地元が一番その恩恵を受けられるよう対話をしていく必要があるのではないかと思う。」

エネルギーを考えるうえで大切なこととは

今回の視察を通じて、改めて、生活のためであるはずの電力なのに利益追求のための電力になっていること、事業への賛成/反対の議論が地域の分断をもたらしてしまうこと、その分断を恐れ何もいえなくなっている状況を目の当たりにしました。

脱原発や気候変動の防止の観点から、再エネは重要なエネルギー源です。再生可能エネルギーのポテンシャルが高い地域から、大消費地に送電する方法もあります。しかし、事業を誘致すれば自治体にお金がはいるような仕組みができたとしても、それは地域の内発的な活動を阻害したり、地域の人々の分断を生んでしまったりするようなものは、再生可能エネルギーであったとしても許されないはずです。

建設現場の一部をみていても、本当に必要な伐採だったのか、排水や廃棄物の影響をどのように考えているのか、工事で出てきた作業土はどこに行くのか、山に生きる動植物への影響などの疑問が残りました。事業のライフサイクルにわたった環境・社会影響の調査、評価、予測、対策の強化の必要性を感じます。

また、陸上風力発電の建設が進む神山町では、戦前は地域や各戸の小水力発電があり、コミュニティベースで管理していたそうです。しかし、大規模供給にあたり、小水力発電で発電したものを電線に繋げようとすると不具合が生じることから、四国電力は住民の水車を買い上げたり水車を閉じさせたりして、今では住民の中で小水力発電のノウハウがなくなっているということもあるようです。

一方、桑高さんとお話する中で、事業の進め方によっては、住民を巻き込んだ民主的な地域づくりの可能性を感じました。

化石燃料依存社会から脱炭素社会への移行は、単なる「エネルギー・チェンジ」ではなく、発電所周辺の住民の声が無視されたり、発電機の製造に必要な資源や燃料を搾取されたりすることのない電力システムへの「システム・チェンジ」であってほしいと思います。

(高橋英恵)

*再生可能エネルギーの持続可能性に関するFoE Japanの見解はこちら


[1] 2021/5/29、徳島新聞「オリックス、風力発電計画の事業化見送り 美馬、神山、那賀の3市町境

[2] 2005年、鷲敷町、相生町、上那賀町、木沢村、木頭村が合併し、那賀町となった。

[3] 株式会社ユーラスエナジーホールディングス、最大19,500kW(1,300kW x 15基)

[4] 株式会社ユーラスエナジーホールディングス、最大34,500kW(2,300kW x 15基)

[5] オリックス株式会社、最大144,900kW(42基)

[6] JAG国際エナジー、最大96,000kW程度

[7] JAG国際エナジー、最大96,000kW

福島にて第1回ご当地エネルギー会議に参加

11月3-4日に、福島市で開催された「第1回 世界ご当地エネルギー会議」に、FoE Japanも参加しました。アフリカやアジア、ヨーロッパや南米からも参加があり、2日間での参加者は640人以上。世界各地で再エネ産業やまちづくりのうねりが起きていることがあらわされるような、熱気ある会議でした。

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4日午前の3-Bセッションは、「都市公社・地域電力」がテーマ。こちらでパワーシフト・キャンペーンについて報告しました。

みやまスマートエネルギーの磯部達さんからは、高齢者の見守りサービスなど、エネルギーだけでない地域のサービスにどうつなげていくかの試みが紹介されました。

パルシステム電力の野津秀男さん、2016年の再エネFIT電源(予定)割合は89%。はがきの請求書で、電源構成や地域の情報を伝えたいとのこと。

デンマーク大使館の田中いずみさんからは、再生可能熱利用を中心に、地域での再エネシフトとCO2削減が現実化していることが具体的に示されました。

ドイツ・オスナブリュックの都市公社(シュタットヴェルケ)のヘルマン・ブランデブーゼマイヤーさんは、風力発電を中心に、将来的には再エネ100%の電気を住民に届けたいと語りました。

スペインの前欧州再エネ連合代表、ジョン・ファジス氏からは、スペインでも再エネ固定価格買取制度によって大きく導入が進んだが、一方で2013年政策変更により新規導入にブレーキがかかっているとのこと。

パワーシフト・キャンペーンの吉田明子からは、日本でも再エネ電力会社や再エネ・シュタットヴェルケを目指す電力会社が多数現れていること、一方で「価格の安さ」が追求されると石炭火力・原発推進につながってしまう懸念を報告しました。

司会の山下紀明さんからは、今時点の安さなのか、どの時点での安さを考えるかという視点も重要とコメントいただきました。

日本の「パワーシフト」の現状(厳しい状況もふくめ)についてオスナブリュックで再エネ市民共同組合に取り組む方から、まるで以前のドイツの状況を見ているようだ、と激励を頂きました。

ドイツ連邦環境省のハラルド・ナイツェル氏も、日本もいずれは変わらざるを得なくなるだろうが、市民からの働きかけは必要だ、と暖かいコメントをくださいました。

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<3-B. 都市公社・地域電力・地域ユーティリティ>
http://www.wcpc2016.jp/program/session3-b/
(動画・資料は後日アップされる予定です)

このセッションでは、都市公社や地域電力の役割について議論します。エネルギー構造の分散化の潮流を背景に、地方自治体や企業が地域にエネルギーサービスの提供を担いはじめており、その役割について議論を進めます。

司会: 山下紀明(環境エネルギー政策研究所)
磯部達(みやまスマートエネルギー)
吉田明子(パワーシフトキャンペーン/FoE Japan)
野津 秀男(パルシステム電力)
田中いずみ(デンマーク王国大使館)
ヘルマン・ブランデブーゼマイヤー(オスナブリュック電力公社)
ジョアン・ファジェス(前 欧州再生可能エネルギー連合代表)

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写真のオレンジの手はドイツの「市民エネルギーを市民の手に」キャンペーンのもの。これ、まさに今の日本でも必要です。
ぜひ、日本でもやりましょう!  (吉田 明子)

気候変動とたたかうアジアの人々

8月1日、アジア各国のFoE(Friends of the Earth)メンバー団体が東京に集い、各国で起きている深刻な気候変動影響や、大規模開発の影響をうったえました。

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アジア太平洋地域は、世界人口の55%にあたる40億人がくらしています。その中には世界有数の経済大国もあれば、最貧国もあり、そして生物多様性の宝庫でもある熱帯雨林もあれば、絶滅の危機に瀕している生物種も存在します。そして、アジア太平洋地域が抱える気候変動と、格差の問題。アジア各国のFoEメンバーがどのような課題と向き合っているのか、どのように取り組んでいるのか報告しました。

●ネパール(プラカシュ・ブサルさん)
ネパールの温室効果ガス排出は、全世界の排出量合計の0.027%だが、深刻な影響を受けている。特に、ヒマラヤの氷河融解による氷河湖決壊洪水のリスクが大きい。すでに12回(の洪水が)報告されており、人命も失われ、甚大な被害を受けている。また、ネパールだけでなく下流域の国々にも洪水影響は広がる。

●スリランカ(ヘマンサ・ウィサネージさん)
2016年5月、インドのラジャスターン州では、気温51℃が記録された。スリランカの首都コロンボでは、ケラニ川流域で洪水が発生し、30万人以上が家屋を奪われ、上流の地滑りでは150人以上が死亡した。世界各地のこのような災害は、気候変動を原因とする難民を日々増加させている。人口密集地域であるアジアは、今後の鍵を握っている。

●インドネシア(カリサ・カリッドさん)
インドネシア政府は、温室効果ガスを大量に排出するにもかかわらず、石炭を安い燃料として依存し続けており、35,000MWもの発電容量増大計画のうち65%が石炭である。石炭火力発電所の付近では、漁獲量の減少や生態系への影響もみられる。また、バタン、チレボン、インドラマユなどの石炭火力への日本の金融機関も融資しようとしている。現地では人権侵害も起きている。日本のみなさんとこれを止めたい。

●パレスチナ(マルワン・ガーネムさん)
ヨルダン川西岸のすべての水資源と、ガザ地区の重要な水資源は、イスラエルによって支配されており、イスラエルとパレスチナとの間で水資源の配分に大きな差異・不公平がある。パレスチナ人は、イスラエル国営水道会社(メコロット)から高い値段で水を買わねばならない。ガザ地区では特に、安全な上水へのアクセスが脅かされている。

●ピーター・ボシップさん(パプア・ニューギニア)
550万ヘクタールもの原生林がアブラヤシ農園に転換されたり、皆伐されたりしている。農民の土地収奪と森林破壊が深刻である。住民の慣習的土地所有の権利を守ることが急務である。原生林の破壊は、水質汚染と環境破壊、さらに気候変動による太平洋の海面上昇にもつながっている。

▼ユープランさんによる動画はこちら
前半 https://www.youtube.com/watch?v=CoZy93w-a40
後半 https://www.youtube.com/watch?v=PNvPwX1l3eo

▼資料はこちら(掲載予定)
http://www.foejapan.org/climate/lad/160801.html

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脱原発活動の新たな歴史

先日お伝えした、アメリカ・カリフォルニア州脱原発のニュース。経済規模も大きく、人口も多いカリフォルニアが脱原発するというのは、世界にも、そして日本にもとても意味がある事だと思います。
脱原発を勝ち取るに至った経緯をFoE USのスタッフ、ミシェルが語っています。

新たな歴史:ディアブロ原発閉鎖の道のり

By ミシェル・チャン

昨日(注:2016年6月21日)、PG&Eはディアブロキャニオン原発を閉鎖する計画であると発表しました。まさに歴史的でした。私はことの「重要さ」を示すだけに 「歴史的」という言葉を使っているのではありません。もちろん、本日発表された合意はとても重要です。

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ディアブロキャニオン前での反原発デモ、1979年6月30日(写真:Jessica Collett)

反対運動の歴史

本日発表された合意は、何十年もディアブロキャニオン原発に反対し続けた人々の声の上に成り立っているという意味で、とても歴史です。
ここ数ヶ月、PG&E(注:ディアブロキャニオンを有する事業者)との交渉が進む中、私は1985年に解散したカリフォルニアの主要な反原発グループ、アバロンアライアンスの膨大なオンラインアーカイブを読み込んでいました。
過去の新聞記事や、写真、個人の証言などを見返しながら、特に70年代や80年代に活動した何千人もの活動家達が成し遂げた事に私は感動し、そして謙虚な気持ちにもなりました。

1979年6月29日、どうやって5万人もサンルイスオビスポのデモに集めたのか、1981年、1960人の活動家が逮捕されながらも、どうやって建設予定地を何週間も封鎖したのか。

最近のキーストーン反対運動(注:アメリカとカナダを結ぶパイプライン建設計画反対運動。環境団体等の強い反対により中止となった。)と当時の反原発活動を比べると、キーストーンの活動が控えめにも見えてきました。

カリフォルニアでの反原発活動が、確固たる勝利を得て、今日の合意を可能にしたということは火を見るよりあきらかです。1976年からの新規原発建設モラトリアム(注:1976年にカリフォルニア州が定めたモラトリアム。連邦政府が最終処分場を決定しない・再処理施設を稼動させない限りは新規原発を建設しないとした。)、1989年のランチョセコ原発に市民達が反対の票を投じたサクラメントでの住民投票、そういった活動が今日の合意を可能にしたのです。2030年までに原発を含まない再生可能エネルギーからの調達の割合を50%にするという、2015年に可決されたカリフォルニアの法律まで、その歴史は続いています。

今日の合意は、これらの長年の、そして懸命な脱原発活動がなければ不可能だったでしょう。

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ブレーキングスルーパワー(注:アメリカで行われたイベント)で発言するデイヴ・フリーマン。2016年5月26日 写真:Slowking4

歴史との対話

このキャンペーンを通し、別の形で歴史を感じたのは、ディアブロ原発交渉で(また、2013年のサンオノフレ原発のキャンペーンでも)一緒に活動したキーパーソン、デイヴ・フリーマンの存在です。

未だに精力的で頭の切れる頑固者、そしてチャーミングな90歳のデイヴは、サクラメント都市工学適用地域、TVA(テネシー川流域開発公社)、ニューヨークパワーオーソリティ(注:ニューヨーク州の公共電力)、そしてロサンゼルス水・電力局の職を歴任。

彼は、我々のシニア戦略アドバイザー、デイモン・モグレンと二人三脚で働いた、チームの一員でした。

カリフォルニア大学バークレー校で行われたConversations with History(注:アメリカのテレビ番組。カリフォルニア大学が制作している。)のインタビューで、デイヴは「TVAで働いていたとき、彼らはさらに原発を建てようとしていた。彼らはすべての電力を原発でまかなうつもりだった」と話しました。

TVAでは、デイヴは‘実用的環境主義者’としての評判を高め、エネルギー効率化プロジェクトに投資する一方、8基の原発を停止、もしくは中止させました。

デイヴは、原発を停止する事は可能であると、様々な方法で、何十年も前から示していたのです。

彼はサクラメントにいた頃、1989年に住民投票で脱原発側が勝利したランチョセコ原発の閉鎖も監督しました。なので、PG&Eとの交渉の間、「この部屋にいる人間の中で、原発を停止・解体した経験がある唯一の人間が自分だ」と、デイヴは述べる事ができました。
我々が今関心を持っている原発で、デイヴがかつて監督したニューヨーク州のインディアンポイント原発という原発があります。デイヴは、そのアメリカの中でも最も危険な原発の一つを閉鎖するために働き続けるでしょう。

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Friends of the Earth創設者 デイヴィッド・ブラウアー

歴史は巡る

今日という日は、フレンドオブジアース(FoE)にとっても歴史的な日です。なぜなら、ディアブロキャニオン原発こそ、約50年前にFoEが出来たきっかけになったからです。
デイヴィッド・ヴラウアーが1969年にFoEを創設したとき、ディアブロキャオン原発はFoEの最初の取り組むべき課題であり、そして我々はそれ以来、ずっとたたかい続けてきました。
トーマス・レイモンド・ウィロックは彼の著書(『クリティカルマス:カリフォルニアにおける原発反対、1958-1978』)の中で、組織の創設期や反原発活動についてこう説明しています:

ブラウアーは、アメリカのエネルギーへの執着は、人間性の否定につながっていると考えた。そこで彼はFoEという組織に倫理性の側面をもたせようと決心した。

ブラウアーの何にも妥協しないというヴィジョンと、我々は環境問題に対して倫理的な立場を取らなくてはいけないという信条(例えば、ビジネス的に合理的だから、というような理由だけで環境活動をするのではない、ということ)は、今でもFoEのアプローチの中に根付いています。ブラウアーはこう言いました;

皆が違った考え方を持つ多元的な社会では、妥協して生きていかなくてはいけません。なので我々は妥協が出来る人を選んで、議会に送り込んでいます。ですが、環境の運動の中では妥協をすることは間違いです。我々が立ち上がっている物のために、発言していくべきなのです。—Living on Earth broadcast

私の20年のFoEでの活動の中で、何が政治的に合理的かよりも、正しい事の為に、立場を譲らずに戦って来た事は何度もありました。こういったアプローチをとる事で、ワシントンの政治的な動きの中では、孤立を感じることも多いです。

我々はよく、化石燃料、クリーンコール、原発、バイオ燃料、廃棄物エネルギー等、そういたすべての物に反対する団体だと批判されてきました。
では、我々は何のためにあるのか?そしてもし、私たちがこういった産業すべてに反対するのだとしたら、雇用はどうなるのか?実際に解決方法を推進していくために私たちは活動できるのか?もしかしたら、私たちは現実の世界で働くにはナイーヴすぎるのだろうか?

だからこそ、妥協せず、むしろさらに志を高めつつ、実際の世界(それも経済規模世界第6位のカリフォルニアで)で、取り組めた事はとても嬉しいことでした。

原発を閉鎖させるだけでなく、私たちは再生可能エネルギーや、エネルギー効率化、エネルギー貯蓄によって代替させるという約束をとりつけました。それはコミュニティーや労働者にとっても公平な変革や転換をもたらす事、Just Transition (公平な変革)を達成する手助けをする事もできたのです。

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サンオノフレ原発(写真:Shutter stock)

私たちの過去と未来

トーマス・ジェファソンは「過去の歴史より、未来の夢の方が好きだ」と述べています。
私は、カリフォルニアにおける反原発活動の歴史から多くの事学びました。同時に、今日の合意は、これから訪れる未来に対して、沢山の希望をもたらしてくれました。
私がそう感じる理由は、再生可能エネルギーと‘just transition’(公平な変革)です。

2013年にサンオノフレ原発閉鎖を達成したときに学んだ事の一つは、原発の閉鎖が順序だって達成されなかったために、その穴を埋めるために「汚い天然ガス」が導入されたことです。
私たちはディアブロキャニオン原発を閉鎖するための効果的なキャンペーンを始めるため、ディアブロキャニオン原発で発電されている電力が、再生可能エネルギーや、電力効率の改善、蓄電によって、(さらにそれらは経済的で温室効果ガスを出さないエネルギーでもあります)まかなう事ができるという事を示した、プランBを作成しました。

そのレポートを、2015年12月のPG&Eとの交渉に場に持っていきました。
さらにこの計画は、3億5千万ドルの保証金と、原発作業員のための再雇用教育がパッケージとなっていたことで、それによってこの共同合意に、国際電気工組合と、カリフォルニア公共事業労働者連合の参加を得る事ができました。
さらに、5千万ドル程の資金が、(つまり、原発が停止することによって失われる税収をやわらげることが可能になる)地元の政府に支払われることになり、地域が経済的に適合していく事を手助けしました。
公平な変革を確実にすることは、政治的に重要だけでなく、また倫理的にも必要不可欠です。

この合意は、原発だけでなく化石燃料から変革する時の青写真を、他の国々にも示したのです。
今日の声明は、一つの原発の終わりを意味するだけでなく、カリフォルニア全体の原子力エネルギーの終わりを示しています。

サンフランシスコクロニクル(注:地元の新聞)は‘原発時代の終わり’と報道しました。
労働者や地域が一緒になって、再生可能エネルギーとエネルギー効率が原発と石炭火力を代替する新しい日を描きました。
これはとても歴史的なことです。

著:ミシェル・チャン(プログラム部長)、翻訳:深草亜悠美

原文はこちら→
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カリフォルニア州が脱原発州に!

今月21日、FoE USはアメリカ・カリフォルニア州が原発ゼロになると発表しました。

カリフォルニア州最後の原発・ディアブロキャニオン原発を有するパシフィックガス&エレクトロニック(PG&E)社は、同原発の運転許可期間が終わる2025年までに原発をやめ、再生可能エネルギーを導入すると決定。

世界で6番目の経済規模を誇るカリフォルニア州が、再生可能エネルギーを導入しながら原発ゼロになるというのは、歴史的なニュースです。

原発をやめ再生可能エネルギーを導入するというのは、FoE USをはじめとする様々な環境団体が、長年提案して来たものです。こうした経緯をふまえ、PG&E社および環境団体、労働者の団体、による合同声明の形で、発表されたことも注目されます。

さらに共同声明のなかで、PG&Eは、2031年までに同社の供給するエネルギーの55%以上を再生可能エネルギーにすることを約束しています。

なお、ディアブロキャニオン原発の反対運動こそ、1969年にFoE USが出来たきっかけとのことです。

FoE USのプレスリリースはこちら (英語)

参考
California’s Last Nuclear Power Plant
米加州最後の原発閉鎖へ、再生エネに置き換え 2025年までに閉鎖、コスト増分の電気料金上乗せが条件

FoEUS_photo

Photo courtesy:FoE US
(写真はFoE USのツイッターより転載)

(スタッフ 深草亜悠美)