「日印原子力協定」ここが問題!

現在、日印原子力協定批准に関する審議が国会で行われています。
問題点を整理しました。見やすいパワーポイントでのまとめはこちら→日印原子力協定の問題点

IMG_0051

<現在の状況>
2016年11月に日印両政府が日印原子力協定に署名
2017年4月より国会にて批准可否の審議中

<論点>
二国間原子力協定は、「核物質,原子炉等の主要な原子力関連資機材及び技術を移転するに当たり,移転先の国からこれらの平和的利用等に関する法的な保証を取り付けるために締結するもの」とされています(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/atom/topics/jyoyaku.html)。つまり原発を輸出する際、日本には輸出国として、輸出した資機材が相手国によって軍事転用をされないようにする責任があると言えます。
さらに、現在の制度では、原発輸出にの際には「原子力施設主要資機材の輸出等に係る安全配慮等確認」を内閣府が実施することになっています(http://wwwa.cao.go.jp/oaep/)。つまり、相手国側が原発を運用する際、適切に安全配慮を行なっているかどうかを、確認する責任があるのです。

何世代にも及び核のゴミを残し、一度事故が起これば取り返しがつかない原発を利用することは、そもそも倫理的にも社会的にも問題です。それでなくても、現在議論されている日印協定及びそれを取り巻く状況は「インドが原発運用に関し安全に配慮し、かつ軍事転用しないことを保証する」ものではありません。簡単に解説していきます。

問題点その1:軍事転用を防げない
そもそも、インドは核兵器開発を行っており、核不拡散条約(NPT)にも加盟をしていません。日本はこれまで、中国を除き(現在は加盟国)、核不拡散条約に加盟していない国との原発協定を結んだことはありませんでした。核廃絶を国是とする日本が、事実上核兵器国のインドと原子力協定を結ぶことには被爆地からも強い反対の声がありました。
また、インドはもともとカナダの原子力協力より得た、技術や核物質を使って核開発を行ったという経緯があり、そこから原子力技術の輸出側は、軍事転用を防ぐためにの紳士協定を取り決め(原子力供給国グループ、NSG)、NPTに加盟していない国との協力は原則行わないというルールをもっていました。(この背景については→http://www.foejapan.org/energy/export/pdf/India_Nuclear_FS_Short_Revised.pdf

協定を結ぶ上で大きな論点となったのは「インドが核実験を行った場合、協定を停止する」ことを条文に盛り込むかどうか、そして再処理を認めるかどうかでした。後者の再処理については認めてしまいました。そして、そもそも、(核実験を行ったときに行動を起こすのではすでに遅いのですが…)現在議論されている原子力協定の14条(http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000202918.pdf)にはこう書いてあります。

14条「…協定の下での協力の停止をもたらし得る状況が、安全保障上の環境の変化についての一方の締約国政府の重大な懸念 から、又は国家安全保障に影響を及ぼすおそれのある他の国による同様の行為への対応として、生じたものであるか否かについて考慮を払うことを合意する。」

協定には「核実験したら停止」とは明確に書いていないばかりか、実験の理由によっては停止しないような含みさへ持っているのです。たとえば、インドとパキスタンは軍拡競争を行っており、二国間関係も良好ではありません。パキスタンが核実験を行った場合、インドがこれは重大な安全保障条の環境変化だと主張することは大いに考えられるのではないでしょうか。

さらに、協定の本文とは別の付属文書である「公文」
(i) 2008年9月5日のインド外務大臣の声明(「民生用原子力イニシアティブに関するプラナーブ・ムガジーインド外務大臣の声名」)が基礎
(ii) この基礎になんらかの変更があった場合停止手続き可能
(iii)この声名からの深刻な逸脱がみられる場合、再処理停止

としています。このiにある、インド外務大臣による声明には、核実験のモラトリアムだけでなく核軍備競争を含むいかなる軍備競争にも参加しないこと、核の先制不使用、なども含まれていますが、日本政府は「インドが核実験を行った場合には協定を終了する」と説明しており、非常に曖昧で不安定な協定であると言わざるをえません。

なお、いままでトルコ、ヨルダン、ベトナムなどとの原子力協定においては、日本が協力した施設等からの核廃棄物の再処理は、基本的には認めておらず、両国の合意が必要としており、トルコの原子力協定をめぐる国会での答弁では、日本は同意しないとしていました。これは再処理によって、軍事転用可能なプルトニウムが取り出されることによるものです。

しかしインドとの原子力協定においては、再処理を認めてしまっています。

問題点その2:インドの原子力安全体制は不十分 日本の安全確認の仕組み形式的
日本は、福島の原発事故を防げませんでした。インドはどうでしょうか。
インドでは現在20基ほどの原発が稼働していますが、1998~2010年の間に少なくとも年間21回から54回に及ぶ事故件数(Ramana 194)があると報告されています。

また、日本の原発事故の反省でも大きな焦点だった、原子力を規制する組織の独立性についてですが、インドの原子力規制委員会(AERB)は原子力省から独立していないと指摘されています。IAEAのレビューでも、AERBの独立性が問題視され、改善が促されています。

さらに、日本が原発を輸出する際に、3・11前から原子力安全保安院が「安全確認」を行っていました。3・11以降、原子力安全保安院がなくなりましたが、原子力規制委員会はこの業務を引き継ぐことを断り、結果的に内閣府に「「原子力施設主要資機材の輸出等に係る公的信用付与に伴う安全配 慮等確認に関する検討会議」が設けられました。
新たに設けられた検討会議は、以下の点を確認するとしています。(>要綱

1 相手国・地域が安全規制を適切に行える体制等を整備していること
2 国際取り決め等を受け入れ、遵守して いること
3 輸出する機器等の製造者が、品質確保や保守補修および関連研修サービスを適切に行っていくこと

しかしこの調査は、イエス・ノー方式で質問票を埋めるもので、主体的に安全性を確認するものになっておらず、質問票の内容も原子力安全条約やIAEAの総合規制評価サービスの受け入れなどをきくのみで、極めて表面的なものです。また核不拡散条約(NPT)や包括的核実験禁止条約(CTBT)など、核不拡散を担保するような条約が質問票の項目にはいっていません。
また、事業ごとの立地や事業特性などを確認するようなものにはなっていません。公開は、事後的に「議事要旨」のみで、透明性にも問題があります。さらに、インフラシステム輸出戦略を所管する、つまり原発を推進する主体である内閣府を中心とする体制では中立性は担保されません。

ちなみに、この確認内容は、3・11前に原子力安全保安院が行っていた内容とほぼ同等ですが、一定の専門性を有していた原子力安全保安院ではなく、内閣府が行うこと、15億円以上の事業は対象外にすることなど、実質は後退しています。

 

それ以外の重要な論点
FoE Japanでは2015年にインドを訪問し環境活動家や原発に反対する地域住民、ジャーナリストらと意見交換を行いました。インドでは情報公開も進んでおらず、原子力技術が核兵器技術と密接に関わっていることから、情報公開を要求してもほとんど情報が得られないそうです。

原発が立地する各地では、市民が命がけの反対運動を展開しています。私たちがあった人々も日本にはインドへの原発輸出をして欲しくないと話していました。

また、原子力などの大型インフラを輸出する際には、公的資金の動員も予想されます。国際協力銀行(JBIC)および日本貿易保険(NEXI)は現在、原発輸出にかかる指針を策定している最中ですが、その指針の内容は情報開示のみに限定され、事業における安全配慮確認については前述のように内閣府の確認は「ざる」であるのにもかかわらず、政府まかせになりそうです。

私たちの税金が、こういった持続可能でなく地元の人が反対しているようなプロジェクトに使われるのは問題ですし、なにより福島事故が収束していない中、日本が原発輸出を進めることは非倫理的であると言わざるをえません。

私たちは強くこの協定に反対していきます。

ジャイタプール

(ジャイタプールの女性らによる原発反対集会)

 

広告

日インド原子力協定にNO!

Amirtharaj Stephen (0)

Coast guard aero plane was flown too low over the protesting villagers who ventured into the sea as a part of their Jal Sathyagraha. (C) Amir Stephen

複数の報道によると、インドのモディ首相が来日中の11月に日本とインドが原子力協定に署名するのではと言われています。

FoE Japanはかねてより原発輸出に反対していますが、特にNPT(核不拡散条約)に加盟せず核実験も行っているインドとの協定締結は日本の核不拡散の姿勢とまったく矛盾し、核拡散のリスクを拡大させることから反対してきました。

今回は日インド原子力協定の問題点を改めて整理したいと思います。

【背景】
1975年、インドがカナダによる民生協力をもとに核実験を行った事からNSG(原子力供給国グループ)が設立され、NPTに加盟していない/IAEAの査察を受け入れない国との原子力貿易を制限(但し拘束力は無い)しました。これにより長らくインドは世界の核市場の外にありました。しかし、アメリカを含む様々な国がインドとの「例外的」な原子力協定を結びだし、日本も締結交渉を開始。

これには、広島・長崎市長をはじめ、多くの反対の声にもかかわらず昨年、覚書が取り交わされ、日インド共同声明の中で“両首脳は,日印民生用原子力協力協定に関し,両国政府間で合意に達したことを歓迎し,必要な国内手続に関するものを含む技術的な詳細が完成した後に署名されることを確認した”と記されました。

安倍総理は2016年1月7日の参議院本会議において
(以下要約)日印協定は、インドが核の平和利用に責任ある行動をとらせるものであり、実質的に核無き世界に向けた日本の姿勢に合致する。仮にインドが核実験を行った場合、日本からの協力は停止する。核実験モラトリアムが協定の前提になる事は、インド側も認識しており、そのうえで原則合意に至った。米仏がインドと締結したもの以上の協定を目指す。

と発言していますが、NPTやCTBTには触れていません。

【焦点】
協定締結交渉の焦点は
ーインドに日本が輸出した原発から発生する使用済み燃料の再処理を認めるかどうか
ーインドが核実験を行った場合に日本が原子力協力を停止する事を明記できるかどうか
と言われています。

しかし、日本はこれまで‘NPT’を中心とした不拡散レジームの維持を主張してきました。
日本政府側の言い訳としては
「インドはほかの非NPT国と違う…核実験をおこなうようなことがあれば、日本からの協力は停止」(12月14日内外情勢調査会)

としていますが、核実験をさせない枠組みや方法が明確でなく、またNPTに入らずとも原子力協定を結べるのなら、むしろNPT加盟へのインセンティブを損ないます。
また日印原子力協定によってインドが不拡散体制に組み込まれるとしていますが、どのように民生利用が転用されていないと確かめるのか、そのことをどのように担保するのかがまったく不明です。

その他、インドの原発事情や原発輸出が抱える問題点はこちらにまとめてありますのでご覧ください。
くわしくはこちら→
ファクトシート

★No Nukes Asia Forumとりまとめ
日インド原子力協定反対署名にご協力お願いします!
→https://goo.gl/x7ijUp

遠のく「核なき世界」 インドの原子力供給グループ(NSG)入りの動きを後押しするアメリカ

先日オバマ大統領が現職のアメリカ大統領として広島を訪問し、話題になりました。
ですが、私たちは核の脅威なき世界に近づいているのでしょうか?

今週、アメリカを訪れていたインド・モディ首相とアメリカ・オバマ大統領の間で、米・ウエスティングハウスがインドで6基の原発を建てる事を確認。早期の建設開始に向け合意しました。ホワイトハウス発表の共同声明によると、原発の建設にあたってはアメリカの公的な輸出銀行である米輸出入銀行(US EX-IM)が融資協力等を行うことも示しています。

FoE Japanがかねてより反対している日インド原子力協定ですが、インドの原子力を巡ってはアメリカとインドの動きはとても重要です。

実は、インドの原子力供給国グループ(以下NSG)入りをめぐって、アメリカとインドの間で様々な動きが見られます。インドは核不拡散条約に入らず核実験を行った国で、核実験のために使われた機材や技術はもともと民生利用として支援を受けたものでした。
これをうけて、原発輸出を行う限られた国同士でNSGをつくり、民生利用の為に輸出された原子力技術が軍事転用されないためのルールを定めました。
インドは原子力技術に関して経済制裁を受けており、原発の技術や資材を輸出する事も輸入する事も出来ない状態でした。
ですが、インドの大きな原子力市場を狙って、また様々な政治的思惑により、インドへの経済制裁が一部解除され、インドへの原発輸出が可能となりました。本来、核不拡散条約に加盟していない国に原発輸出しないというNSGのルールがあったのですが、インドは例外扱いとなりました。
これを受け、アメリカやフランス、オーストラリア等の国が次々とインドと原子力協定をむすんでいったのです。
*インドの原子力協定について詳しくはこちら>日インド原子力協定

アメリカもインドとは原子力協定を締結しており、ウェスティングハウスによる原発計画がかねてより進行中で、モディ首相のふるさとでもあるグジャラート州に6つの原発を建設予定でした。しかし現地の果物農家の反対により移転を余儀なくされました。さらにインドには原発が事故等を起こしたときに、メーカーに責任を定める原子力賠償法(Nuclear Liability Law)があり、それがインドへの原子力輸出のハードルを上げていたとされています。

今回の共同声明の中では、インドのCSC条約(事故の際、メーカーではなく事業者が責任を負う)批准を含むいくつかのステップで、関係が強化されたとも触れられています。

現在、アメリカのオバマ大統領はインドのNSG入りを後押ししており、日本もNSGのメンバー国の1つとして安倍首相は前回の日インド首脳宣言で、インドのNSG入りを支持しています。ですが、核不拡散条約にも包括的核実験禁止条約にも入らず、IAEAの査察も完全には受け入れていないインドをNSGのフルメンバーとして認める事は、核不拡散体制の形骸化に他なりません。

日本もアメリカも、インドのNSG入りを反対すべきです。さらに、インドがNSGのメンバーとなれば。パキスタンとの対立や緊張関係がさらに悪化する事も予想されます。

ウエスティングハウスを有するのは日本の東芝ですが、日本とインドはまだ原子力協定を結んでいません。
今後、日本とインドの原子力協定締結に向けて加速していくでしょう。(forbes紙は、アメリカの技術を使うので、日インド原子力協定は障害にならないとのコメントもありますが、原子力資料情報室の方によると多くの原発関係機材を最早アメリカではつくらず日本などから輸入しているとの事。)

そもそもインドの原発を巡っては土地収奪、人権侵害、非民主的弾圧、核開発など様々な問題があります。インドでは太陽光の伸びが大きく、また巨大な国土でエネルギーアクセスを確保するために原発が向いているとは言えません。
現地の反対運動も活発です。

核なき世界を目指すオバマ大統領は、原発も核拡散の脅威であるという事を強く認識するべきです。

151212_2

日インド原子力協定反対官邸前アクションの様子(2015.12)

(スタッフ:深草)

参考:
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/71167174-2acb-11e6-a18d-a96ab29e3c95.html#axzz4Asi1Xu00
http://timesofindia.indiatimes.com/india/US-based-Westinghouse-to-build-6-nuclear-power-plants-in-India/articleshow/52644065.cms
http://www.armscontrol.org/ACT/2016_06/Focus/Obamas-India-Nuclear-Blind-Spot
http://in.reuters.com/article/india-usa-nuclearpower-modi-idINKCN0YU07U?feedType=RSS&feedName=topNews

インド・エネルギー民主主義に迫る

3月26日に特別イベント「Power from the People〜インド・エネルギー民主主義に迫る」を開催しました。

DSC_6060

Photo by R. Kataoka

インド出身の写真家で活動家であるアミタラジ・ステファンをお招きし、インドで起きている脱原発活動について彼の写真作品を通じてお話しいただきました。
ステファン氏は、非常に力強い脱原発活動が行われているインド南部クダンクラム原発の近くの生まれ。クダンクラムにはロシアが出資した原発があり、周辺住民が反対運動を繰り広げています。

原発の近くの村人は主に漁業収入に頼って暮らしていますが、原発から出る温排水の影響や、汚染の問題から原発に反対してきました。また、津波のリスク等もあることから、原発停止を求めてきました。

クダンクラムでは20年以上、原発に反対する市民運動がありました。ですが、2011年の福島事故を機に、運動が拡大。警察による暴力的な弾圧も始まりました。警察は村を包囲して、村を出入りする人々の動きを封じようとしました。

Amirtharaj Stephen (0)

’水の抗議’(非暴力運動の一種)で、海に入って抗議を行う村人の頭上すれすれを海上保安の飛行機が飛んでいる (Amirtharaj Stephen)

 

Napolean, a resident of Idinthakarai, runs after being attacked by the police.

警察による弾圧を受ける村人たち (A. Stephen)

インドは’世界最大の民主主義国家’と言われています。
しかし、その’民主主義’とは何なのか問われているとステファン氏は語ります。

ガンジーの教えや非暴力不服従(アヒームサ、サティアーグラハ)の理念が人々の中に共有されているという点も興味深い点でした。
一方で、人々がどれだけ非暴力不服従を貫いても警察が暴力的なのも印象的でした。

ステファン氏は「私たちが暴力を始めたら、武器をとったら、政府はもっと大きな武器を持つだろう」と話します。

 

日本政府は日インド原子力協定の交渉を続けています。
FoE Japanは、ステファン氏も報告してくださったように、インドの民主主義の現状や、福島事故が収束しない中での原発輸出などを理由に、この協定に反対しています

(原発輸出相手国である)トルコやベトナムもそうですが、こういった現場の声や非民主主義的な状況が無視されて政府と政府で原子力協定が結ばれても良いのでしょうか?
原発だけでなく、ダムや石炭火力発電所などでも住民が土地への権利や環境を守ることを求めて反対活動をしている例は少なくありません。日インド原子力協定に関しては、先日覚書が取り交わされましたが、インドはNPT(核不拡散条約)に加盟せずに核実験を行った国でもあります。
さらには、原発を輸出するとなると、多額の金額が必要となるため、公的資金が使われる可能性があります。

日インド原子力協定を含む様々な原子力協定に対し、FoE Japanは政策提言などを行っています。

スタッフ・深草