歴史的勝利!市民がシェルに勝訴

歴史的な勝利です!
FoEオランダと市民が気候変動対策の強化を求めてシェルを訴えていた裁判で、市民側の訴えが認められました。裁判は17,000人以上のオランダ市民が原告として参加し、6つの環境団体も原告として名前を連ねました。裁判所は、シェルに対して、CO2排出量を2019年比45%削減しなければならないことなどを命じました。
多国籍石油企業シェルの気候変動に対する責任が裁判で認められ、具体的な数値まで出してCO2の削減が命じられたことは画期的です。詳しくは以下のFoEインターナショナルによるプレスリリースをご覧ください。


歴史的勝利:シェルに対し、裁判所がCO2排出大幅削減を命じる。-FoEオランダが気候変動訴訟でシェルに勝訴
(英語原文はこちら

2021年5月26日ハーグ – 史上初めて、危険な気候変動を引き起こしたとして企業の責任を認める判決が下されました。本日、FoEオランダ (Milieudefensie) が17,000人の共同原告および他の6団体と共同で起こした訴訟1の判決が言い渡され、ハーグの裁判所はシェルが10年以内にCO2排出を45%削減しなければならないと命じました。この歴史的な判決は、シェルをはじめとする世界中の環境汚染を引き起こしてきた企業に多大な影響を与えるでしょう。

FoEオランダの事務局長であるドナルド・ポルスは、「これは、私たちの地球、私たちの子どもたちのための非常に大きな勝利であり、すべての人のための住みよい未来へのステップです。シェルは危険な気候変動を引き起こしており、今こそ彼らの破壊的な行為を止めなければならないという判決の内容に、疑いの余地はありません。」とコメントしました。

FoEオランダの弁護士ロジャー・コックスは喜びをあらわにし「これは歴史の転換点です。裁判所が環境汚染を引き起こしている大企業にパリ協定の遵守を命じたのは初めてで、他に例を見ない裁判といえるでしょう。この判決は、大規模な環境汚染をもたらしている他の大企業にも大きな影響を与える可能性があります。」とコメントしました。

ハーグの裁判所の判決は国際的に大きな影響を与えるでしょう。FoEインターナショナルのサラ・ショーは 「これは気候正義のための画期的な勝利です。私たちの願いは、この判決が大規模汚染者に対する気候訴訟の波を引き起こし、彼らに化石燃料の採掘と燃焼を止めるよう強く求めることです。この結果は、現在壊滅的な気候変動の影響に直面しているグローバル・サウスの住民等にとっても勝利です。」とコメントしました。

判決の主なポイント:

  1. シェルは、2030年末までに排出量を実質45%削減しなければならない。
  2. シェルは、顧客(スコープ32)およびサプライヤーからの排出についても責任を負う。
  3. 「生きる権利」 と 「平穏な家庭生活」 に対する人権侵害の脅威がある。
  4. シェルの現在の気候政策は十分に具体的ではないため、シェルは直ちにこの判断に従わなければならない。

ドナルド・ポルズは「この判決は、国際的な気候変動ムーブメントにとって大きな前進です。世界最大の汚染者がついに責任をとらされたわけです。今私は未来への希望に満ちています。気候危機は私たちの国境で待ったり止まったりしないとみんなが知っています。だからこそ、判事がシェルに自らの行動に対する責任を負わせることは非常に重要です。これは、他の大規模な汚染者に対する、今行動を起こさなければならないという明確なシグナルでもあります。」と締めくくりました。

補足
1: 共同原告は以下: Action Aid Netherlands, Both ENDS, Fossil Free Netherlands, Greenpeace Netherlands, Young Friends of The Earth Netherlands, the Wadden Sea Association (Waddenvereniging), および17,000人を超えるオランダ市民
2:スコープ3の排出は、スコープ1(直接排出)およびスコープ2(間接排出)以外の、取引先や顧客、従業員の移動手段や、事業からでる廃棄物など、事業にかかわるすべての過程で排出される温室効果ガスを指す。

FoE Japanによる補足:
シェルは、三菱商事他とともにカナダ・ブリティッシュコロンビア州でLNG開発も行なっており、現地先住民族等が反対の声をあげています。なお、本開発で得られる天然ガスについて、現在横須賀市で石炭火力発電所建設事業を行っている株式会社JERAは、2024年度から15年間の購買に基本合意しており(最大約120万㌧/年)、袖ヶ浦ガス火力発電所の新設を計画している東京ガスも2026年度から13年間のLNG購入(最大約60万トン/年)に基本合意しています。詳細はこちら:https://www.foejapan.org/aid/jbic02/lngcanada/index.html

プレスキットはこちら:
オランダ語: https://milieudefensie.nl/actueel/persmap-klimaatzaak-shell
英語: https://en.milieudefensie.nl/news/press-kit-climate-case-against-shell

代表への取材連絡先:
写真やビデオ、FoEオランダ事務局長(ドナルド・ポルズ)および担当弁護士(ロジャー・コックス)へのインタビューリクエストは以下の連絡先にお願いします。

persvoorlichting@milieudefensie.nl 
+31 (0)20 5507 333 / (0)6-46851137

その他の連絡先:
FoEオランダ(Milieudefensie
Arjan de Boer: +31 (0)6 22398887
Jasperine Schupp: +31 (0)6 29593873
Benjamin van Sterkenburg: +31 (0)6 52682416

FoEインターナショナル
Sara Shaw, +44 (0)7974 008 270 (5月27日中)
Sam Cossar +61 413 496 570 / Sam.cossargilbert@foe.org.au (5月28日以降)
Email: press[at]foei.org

イスラエルによるパレスチナへの残虐な攻撃の停止をーFoEIによる声明

原文はこちら:https://www.foei.org/features/internationalist-solidarity-with-palestine

Friends of the Earth Internationalは、女性や子どもたち、民間の建物を標的とした残酷な攻撃、そして人口密集地域をターゲットとした爆撃、また情報の自由に対する国際的権利を脅かすメディアの建物への攻撃など、イスラエルによるパレスチナへの攻撃が続いていることを非難します。

何十年もの間、イスラエルによる占領政策が、パレスチナ人による土地、境界、天然資源へのアクセスや管理を阻害してきました。イスラエルによる占領は、環境汚染・生計手段の破壊・土地や水の収奪・差別的な法律・強制的な立退きや避難など、パレスチナ人に対する深刻な人権・環境侵害の源になっています。エルサレム旧市街のアルアクサ・モスクに対する最近の攻撃と、包囲されたガザ地区へのイスラエルの空爆は、占領下の東エルサレムで進行中の組織的な弾圧と抑圧の一部です。シェイク・ジャラー地区からパレスチナ人を強制的に追放するというイスラエルの計画は、生命、人権、国際法をあからさまに軽視しています。

アルジャジーラは、2021年5月18日、包囲されたガザ地区へのイスラエルの爆撃が2週目に入り、ガザの保健当局の情報によると58人の子どもと35人の女性を含む、少なくとも201人のパレスチナ人が死亡したと伝えました。1,300人以上が負傷しています。イスラエルは、ハマスによって行われたロケット攻撃で、子ども2人を含む少なくとも10人が死亡したと報告しています。

私たちは、民間人及び民間人の命を危険にさらすような標的に対する武器の使用を非難します。

さらに国連によると、ガザの38,000人以上のパレスチナ人が国内避難民となり、沿岸部にある48のUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の学校に避難所を求めています。この数字には、イスラエルの爆撃で家が完全に破壊された少なくとも2,500人の人々が含まれています。食料や水へのアクセスも問題になっています。

これらの攻撃は、世界中でパンデミックが起きている最中に起きています。ガザの医療システムはCOVID-19の感染者数増加に苦しんでいます。包囲されたガザ地区への攻撃により、医療従事者はCOVID-19感染者の治療を減らしたり中断したりすることを余儀なくされています。攻撃による負傷者に病院のベッドを割り当てたり、被害を受けた施設の対処を行なっているからです。

私たちは、国際社会に対し、これらの攻撃を非難すべきと求めます。

  • みなさんの政府に、これらの暴力に反対の声を上げ、イスラエルによる甚だしい不正義を終わらせるよう要求してください。
  • 今も続いているナクバ(注:イスラエル建国に伴って起きた戦争により多くのパレスチナ人が難民となった事態を指す「ナクバ=大惨事」)を、ガザで起きている大量殺戮を止めるため行動を起こしてください。パレスチナ人や連帯運動によって呼びかけられた抗議行動に参加してください。もしまだ何も計画されていないのであれば、抗議活動を企画してください。ガザとシェイク・ジャラーに対する現在の攻撃を非難する横断幕やプラカードを持っていきましょう。
  • SNS上で、連帯のメッセージをシェアし、政府にも連帯を求めましょう。

Friends of the Earth Internationalは、すべての世界の指導者たちに、イスラエルによるパレスチナ人の土地の占領に恒久的な終止符を打つために、外交手段を用いるよう緊急に要請します。イスラエルは、いかなる説明責任も果たさないまま、日常的に国際法に違反しています。私たちは国際社会に対し、イスラエルの犯罪を停止するために直ちに介入するよう求めるとともに, 1949年のジュネーブ第4条約の締約国に対し、その義務を履行するよう改めて求めます。

私たちは、PENGON/FoEパレスチナ及びパレスチナの人々に対し、国際的な連帯を示し、パレスチナの土地の占領の永続的な終結及びこの理不尽な暴力の終結を求めます。

#GazaUnderAttack#SaveSheikhJarrah

ナイジェリアの農民ら、シェルに対する訴訟で勝訴 – 多国籍企業に対する画期的な判決

2021年1月29日、ナイジェリアの農民らがFoEオランダ(Milieudefensie)とともにオランダ・ハーグの裁判所で提起していたシェルに対する訴訟で、農民側とFoEの訴えが認められ勝訴しました。

ニジェールデルタの三箇所で発生していた石油汚染については、シェル・ナイジェリアの責任が認められ、同時に親会社であるロイヤル・ダッチ・シェルの注意義務(Duty of care)違反が認められました。また判決では、石油汚染によって生じた損害について4人の原告のうち3名の原告及び影響を受けた村人に対し補償を行うこと、シェルに対してナイジェリアのオイルパイプラインに石油漏れを検出するシステムをもうけることを命じました。今回の判決は、オランダの多国籍企業の海外での活動における注意義務違反を認めた、初めての判決です。

この数十年、ニジェールデルタでは大規模な石油汚染による被害で数百万人もの人が苦しんできました。毎年汚染により16,000の乳児が死亡しており、デルタエリアの人々はそれ以外のナイジェリアの地域と比べ、10年も寿命が短くなっています。FoEオランダの訴訟は、シェルの石油流出の影響を受ける3つの村での被害を中心に提起されました。流出した石油は、今でも十分に回収されてはおらず、新たな石油流出が定期的に発生している状況です。

原告の一人で、ゴイ村の農民のエリック・ドー(Eric Dooh)は、「ついに、シェルの石油流出で苦しむ人々にいくらかの正義がもたらされました。しかしこれはほろ苦い勝利でもあります。原告に参加していた私の父を含む二名は、生きてこの訴訟の結果を見ることが叶いませんでした。しかし、この結果はニジェールデルタの将来に希望をもたらしました。」

農民とNGO側の弁護士を務めたチャンナ・サムカルデン(Channa Samkalden)は「数年にも及ぶ訴訟の結果、ついに正義がもたらされましたが、Ikot Ada Udo(注:原告の中の一名)の訴訟はまだ続いています。シェルの石油流出への責任だけでなく、原告側が持つ権利が認められました。この訴訟は、ヨーロッパの企業が海外でも責任を持って振舞うべきであることを示しました。」

FoEオランダの事務局長であるドナルド・ポールズ(Donald Pols)は「これは影響を受ける農民にとって素晴らしいニュースです。シェルが損害を補償しなければならないことは非常に大きなことです。これは、世界各地で不正に関与しているすべてのオランダの多国籍企業に対する警告でもあります。環境汚染、土地の奪取、搾取の犠牲者が、企業との法廷闘争で勝つ可能性が高まりました。発展途上国の人々が、多国籍企業を前に権利を失っている状況ではもうないのです。」とコメントしました。

多国籍企業への規制が必須

この訴訟はほぼ13年続き、多国籍企業の活動によって損害を受ける被害者が正義を得ることがいかに難しいかを示しています。FoEグループは、企業に対して海外事業で引き起こした損害への責任を負わせるための野心的なヨーロッパおよび国際的な法整備を求めています。すでに多くの市民が、拘束力のあるデューデリジェンス法を導入するよう欧州委員会に求めるオンラインアクションに参加しています。

企業に対し責任ある行動を求め活動しているFoEヨーロッパのジル・マカードル(Jill McArdle)は次のように述べています。「今日は、石油会社の汚染と人権侵害の犠牲者すべてにとって希望に満ちた日です。しかし、正義がなされるのに被害者が13年も待たされるべきではありません。欧州企業にサプライチェーンで起こったことに対して責任を負わせるために、今より良いEU法が必要です。何千人ものヨーロッパの市民がEUに対し、企業に説明責任を負わせる新しい法律の提案を要求しています。」

ナイジェリアでの日常的な油流出

何十年にもわたりかわされた約束や、プロジェクト、報告、訴訟にもかかわらず、ニジェールデルタはひどく汚染されたままです。油流出は今も毎日おきているのです。ナイジェリア政府やシェルが行うと約束した浄化作業も、10年間が約束と準備についやされたままで、まだ行われていません。シェルの従業員がサボタージュしているというFoEオランダとナイジェリアによる報告もあります。

プレスリリース原文はこちら:https://www.foei.org/press_releases/victory-oil-shell-nigeria

気候危機解決、本当に必要なものは「システムチェンジ」

こんにちは。FoEでインターンをしている横浜国立大学の佐藤悠香です。

今回は、1月21日に行われたウェビナー「『私たちに必要なのはシステムチェンジだ』~斎藤幸平さんと考える、気候危機を生んだ世界像からの脱却後の世界像~」に参加報告です。
1時間半と短い時間でしたが、とても内容が濃く、個人的に刺さるものが多かった回でした。

このウェビナーではまず、大月書店の岩下さんからナオミ・クラインの著書『地球が燃えている』刊行記念として、この本の概要やナオミ・クラインが提唱するグリーンニューディールについてご説明いただきました。

気候変動を止めるための新しい社会のあり方「グリーンニューディール」とは、単なる環境政策ではなく、気候変動を格差や社会福祉の問題と結び付けて、包括的な解決策を提唱するものです。

ナオミ・クラインさんの著書『地球が燃えている』で詳しい説明がされていますので、みなさんもぜひ読んでみてください。

斎藤幸平さんからのお話:資本主義からの「脱却」

つぎに、斎藤幸平さんから「気候危機を生んだシステムからの脱却を」というテーマでお話いただきました。(投影資料はこちら

2020年は、今までどおりの「普通」が普通でなくなり、新しい「ニューノーマル」を考える転換点になりました。

しかし、ワクチンが広まり、コロナ危機の前の生活に戻ることが果たして本当に正しいのか。
私たちは破局への道を進んではいないか。改めて今の社会システムのあり方の再考が求められること、そして、コロナ危機と気候危機に直面する今だからこそ、新しい社会システムを求めていく「システムチェンジ」のタイミングにいることを強調されました。

この「システムチェンジ」というのは、単に電力システムとか交通システムの話ではなく、資本主義という経済・社会システムを抜本的に変えていくことを意味します。これは現在の社会を「スローダウン・スケールダウン」していくだけでは不十分で、新しいシステムを掲げる必要があるということです。

また、技術革新を頼り、今の生活水準を落とさずにEV車を普及させ、再エネへの転換を進めるだけでは圧倒的に不十分で根本的なところの解決にはなりません。

資本主義の下で進めるグリーンニューディールは、結局無限の経済成長を求めるだけで、自然と弱者からの収奪を強めてしまうのです。そして、これは結局グローバルな格差拡大につながってしまうことを指摘されました。

私たちは、成長主義とは決別し、抜本的なライフスタイルの転換を伴うグリーンニューディールを求めていく必要があります。

この別の社会のあり方を作り上げていくことは、オルタナティブな享楽主義(alternative hedonism)を求めていくチャンスでもあるといいます。現在のライフスタイルを続けることが本当に幸せなのか、そして、資本主義のもとで暮らす私たちの別の生き方・働き方を再考するきっかけになると、「資本主義からの脱却がもたらす新しい可能性」もお話くださいました。

気候正義(climate justice)とは

つづいて、FoE Japanの高橋さんから、気候変動アクションマップの紹介がありました。気候変動アクションマップは、今の社会システムがもたらしている日本が関係する環境破壊・人権侵害の問題についてまとめ描いたものです。

また、資本主義とも密接に関わり、気候危機解決に向けて最も大切であろう概念「気候正義(climate justice)」とは何か、そしてなぜ気候正義が重要なのかを、海外のFoEのメンバーの言葉を引用しながら説明していただきました。

気候変動は「単に科学や環境の問題ではない」
この言葉を聞いてすぐに意味が分かる方はどれほどいらっしゃるのでしょうか。

気候正義とは、気候変動を引き起こしてきた、自然や人間の搾取に基づく社会の仕組みを社会の公平性を実現する形で変えていくことです。

気候正義が何かを知ると、気候変動解決に向けた運動は、「自然を守りたい」「生物を傷つけたくない」人たちの運動ではないことが分かると思います。そして、気候不正義と資本主義は密接に関わっていることが分かると思います。

あくまでも先進国の豊かな生活を実現するための経済成長を続ける限り、その成長からこぼれ落ちる人々・成長実現のために踏みつぶされる人が大多数になります。そして、この経済活動のせいで生じてくる気候危機のツケまでも払わされるのが、CO2をほとんど排出していない途上国の人々です。

このような不正義と格差を目の前にして、私たちはもっと持続可能で公正な社会を求めていくべきではないでしょうか。こういう話をすると、規模が大きすぎて到底無理そうに聞こえるかもしれませんが、この不可能そうに聞こえることを実現しなければいけないほど、気候危機の中にいる私たちには時間がないのです。

変化を起こすのは市民である私たち

これに気が付くと、「マイ〇〇をもっておけばOK」という話では到底済まないことが分かります。個人のライフスタイルを環境に配慮したものに変えていくことはもちろん大切だけれど、消費者としての努力を求めるよりもそれ以上に市民が、

・本当に公正な政治的意思決定を求めていく

・グリーンウォッシュ企業に”NO”を突きつける

といった声を上げて生産のあり方を抜本的に変えていかない限りは、現在の自然破壊と弱者からの収奪が蔓延した社会は変わりません。

そして、FoE Japanの吉田さんから、FoE Japanの考えるシステムチェンジの原則について、ご紹介いただきました。

「国や企業ではなく市民が声を上げていかない限り、システムチェンジは実現できない。
政府や企業や大きな力を持つ人ではなく、私のような普通の市民が声を上げ続けることが実は一番大切で効果的」
というお話は、私自身としても、これからも声を上げ続けるモチベーションになりました。

また、斎藤さんも、「個人の変化」「政治の変化」「企業の変化」をセットで求め実行していくには、私たち一人一人の声とアクションが必要になるとおっしゃいました。

斎藤さんやFoE Japanのお話を聞くと、「現状を変えなくてはいけないことは分かったけれど私は何をすればいいの?」と思う方も多いと思います。

そのような方は、自らもアクションに参加することがネクストステップになります。NPO・NGO・政治活動・社会運動。世の中にはいろんな立場からすでに声を上げて活動している人がたくさんいます。

そんな人たちに話を聞きにいったり、支援をしたり、自分もその活動に加わることで人とのつながりを増やしていくことが重要なのではないでしょうか。

斎藤さんは、このアクションを起こすことのハードルの高さには二つあるとおっしゃっていました。一つは、アクションに対する心理的なハードル。二つ目は労働時間の長さによる時間的ハードルです。

斎藤さんによると、教育・医療・交通機関といった「コモン」を脱商品化し、みんなの共有財産にしてできるだけ安価にアクセスできるようになれば、賃労働に依存しない生活が維持できるようになります。そして、このように労働時間を減らすことで仕事以外のアクティビティに費やす時間を増やすことが可能になるのです。

私は、Fridays For Future Japanでの活動を通して、一つ目のハードル「アクションすることへの心理的ハードル」を下げていきたいと思っています。

同調圧力が強い日本社会でも、年齢や性別、人種に関わらず誰もがおかしいことは堂々と「おかしい」と言っていいこと、自分の声には価値があること、主張は持つだけでなくアクションを通じて示すことは最高にクールであることを特に同世代に伝えていきたいです。

本当の豊かさを見つける

今回のウェビナーを通じて、自分が特に意識せずに生活していた資本主義というシステムの中で、私たちは本当に必要のないものまで広告やメディアの影響を受け、「より早く、新しいものをたくさん」消費しようとしていたことに気が付きました。

資本主義から脱却するには、まず「足るを知る」こと。そして、物質に左右されない自分にとっての本当の幸せを見つめなおすことが大切です。

大量生産・大量消費ではなく、顔の見える消費をすること。地域への貢献を実感すること。このような暮らし方は単に、弱者とか地球環境とかだけだけでなく結局は自分自身の心の豊かさに繋がっていくのではないでしょうか。

スローダウンした社会のあり方は、今よりずっと公正で絶え間ない消費と労働からのプレッシャーから開放され、人々が心の余裕のある暮らし(働く以外の活動の領域が広がる生活)に繋がるのではないかと思います。

経済指標に左右されない「人間らしい」生活を大切にするには、今の社会でおかしいところを探してみる。興味を持つ。そして、自分で調べたりたくさんの人の声を聞きにいくこと。

そして、そこで得た情報や知識に満足するのではなく、次は自分が本当に実現したい社会のために行動して声を上げること。

このようなことが重要なのではないでしょうか。

水素やEV、アンモニア、自然エネルギーなどのイノベーションの前に、まず私たちが、資本主義の下で地球と弱者に負担をかけ続ける社会システムを見直さない限り何も根本的な解決にはなりません。

そのため、気候危機やグローバルな格差・貧困の解決には、個人のライフスタイルの変化は大前提であるものの、これだけでは実は全く足りてなくて、「国の政策と企業のあり方」をより公正で本当の意味で人々の心を豊かにする方向へいくように、私たち一人ひとりが市民の立場からプレッシャーをかけ続けることが重要です。

資本主義のような絶対に誰かをとりこぼすような社会システム、踏みつけられて泣き叫んでいるようなひとがいるシステムがおかしいと思うなら、レジ袋をもらうのをやめたりマイボトルを持つのだけでは到底十分ではなくて、この経済・産業システムの変革を求めてアクションをすることが大事だという斎藤さんとFoE Japanのみなさんから強いメッセージを受け取りました。

最後に

システムチェンジを求めて声を上げ続けること、そしてそれと同時に新しい社会の形成に向けて、「自分の人生には本当は何が必要なのか」という自分自身の考え方(生き方)を考え直すことが必要になります。

be the change you want to see in the world.
世の中で見たい変化があるならば、まずはその変化に自分がなること。

社会とともに、自分自身もこれまでとは違う「新しい豊かさ」を再考していきたいと思います。

(インターン・佐藤悠香)

*斉藤幸平さんの当日の投影資料はこちら

*FoE Japanの気候変動アクションマップの購入はこちら

*FoE Japanが考えるシステムチェンジの五原則「気候危機とコロナ禍からのシステム・チェンジを」はこちら

スタッフインタビュー:村上正子さん

日本の政府機関や企業は「開発支援」や「途上国支援」の名の下に海外で様々な事業を行っていますが、その中には人権侵害や環境破壊につながっているものも少なくありません。FoE Japanの「開発金融と環境チーム」は、日本の官民が関わる開発事業によって犠牲になる人が出ないよう調査提言活動を重ねてきました。村上正子さんは2004年から2007年までFoEの開発金融と環境プログラムに在籍し、ロシアの巨大石油・ガス開発事業に関するキャンペーンを担当。当時のお話や思いを聞きました。(聞き手:深草亜悠美、記事化にあたり話の順序や追加情報などは適宜追加・編集)

深草:自己紹介とFoEに入ったきっかけを教えてください。

村上:村上正子といいます。学生時代は自分が何をやりたいのかよく分からず、就職後も事務の仕事をしながら何かを探していたのを覚えています。両親が幼い頃に広島で被爆しているので、私は被爆二世なんです。迷っていた頃、アメリカ人のクエーカー教徒の女性が広島で立ち上げたワールド・フレンドシップ・センターという被爆者支援団体があるのですが、そこが被爆者とともにアメリカに「平和巡礼」にいくメンバーを募集していました。「平和のために何ができる?」というキャッチコピーにひかれ、広島と長崎の被爆者の方々とアメリカを3週間近く旅しました。1998年のことです。これが「核」の問題に向き合った最初で、現在の高木仁三郎市民科学基金の仕事にもつながっています。(注:高木仁三郎市民科学基金(高木基金)は、核・原子力利用への専門的批判に尽力した高木仁三郎(1938-2000)の遺志によって、現代の科学技術がもたらす問題や脅威に対して、科学的な考察に裏づけられた批判のできる「市民科学者」を育成・支援するため設立された)。

深草:なるほど。核の問題から始められているのですね。そこからどのようにNGO職員への道へと進まれたのでしょうか。

村上:そうですね。この旅では、受け入れ側である米国の「市民活動」にとても感銘を受けました。彼らは広島・長崎での被爆の証言活動をコーディネートしてくれたわけですが、小学校から大学、教会、市役所、議会までいたるところで誰からも好意的かつ対等に受け入れられました。アメリカでは市民活動が社会にしっかり根づいていると実感し、自分もその中に飛び込んでみたくなり、2年半ほど米国のNPOでボランティア活動に従事しました。

 最初はテキサス州でホームレスシェルターに住み込み、給仕やホームレスと一緒に生活しながらのボランティア活動。そこで出会う人々からは非暴力不服従運動から貧困をもたらす構造問題など、様々な刺激を受け、社会を根本的に変えるには政治に働きかける必要があると思い、中央政府があってNGOも集まっているワシントンDCに移りました。ワシントンDCでは、先進国と途上国間の経済格差の問題(いわゆる南北問題)に取り組む団体、センター・フォー・エコノミック・ジャスティスで、世界銀行の様々な問題(途上国での構造調整、債務の問題、環境・社会影響の深刻な開発)に取り組むグローバルサウスの市民に連帯する活動のひとつとして、世銀の債権ボイコット運動に取り組みました。(http://www.econjustice.net/wbbb/、今は閉鎖)。その頃、FoEの開発金融と環境プログラムのディレクター(当時)だった松本郁子さんに会い、そのご縁でFoEに入ることになりました。

深草:FoEにいらっしゃった当時、ロシアの巨大ガス開発に関するキャンペーンに携わっていたと聞いています。どんなプロジェクトでしたか?

村上:FoEに入ってすぐに担当となったのが、サハリン2石油・天然ガス開発です。サハリンは、生物多様性豊かな寒冷地の島です。この事業は絶滅危惧種のニシコククジラの唯一の餌場付近に掘削リグを設置したり、島の北東部からサケの遡上する河川を含む1000本以上の河川をパイプラインで横断したり、南部のアニワ湾という浅瀬の生態系豊かな湾岸にプラントと港湾施設をつくり、石油と天然ガスをタンカーで輸送するという大規模なものでした。

写真:2005年12月、サハリン北東部ナビリ湾で先住民族の漁師の人たちと

 開発企業には日本企業(三井物産・三菱商事)が入り、公的融資機関として欧州復興開発銀行(EBRD)などとともに国際協力銀行(JBIC)が融資を検討していました。石油やガスの大半が日本に輸出されるといった日本の開発側での関与の他に、タンカーからの油流出事故による北海道の沿岸地域や漁業への影響、日本との間を行き来する渡り鳥や海洋生物の生息地への開発影響など、日本自体が影響を受ける側にもなるプロジェクトということで、FoE Japanは現地や海外のNGOと協力して行う国際キャンペーンと同時に、北海道の漁業者や油防除の専門家、野生生物の研究者やNPOと協力して行う国内キャンペーンの二つの運動を展開しました。1997年のナホトカ号の油流出事故の記憶も新しい頃だったので、日本でもサハリン開発の危険性がリアルに受けとめられていたのだと思います。

そういえば、漁業者の意見を聞きたくて、北海道のオホーツク海沿岸の漁協を端から順に訪ねて行ったこともありました。みなさん情報を必要としているけれど、ロシアの情報はほとんど入らない。FoE Japanはロシア語から英語になった情報を日本語に訳して伝えることができたので、突然の訪問でも歓迎されたのを覚えています。

深草:ロシア語の情報も翻訳して伝えていたんですね。どのようなところに一番苦労しましたか?

村上:活動で苦労したのは、どのキャンペーンも様々な団体や専門家が関わっていて、両方のコーディネートをするのが大変だったこと、また、私自身思いはあるものの、アドボカシー(政策提言)活動を行うに足る知識も経験もなかったため、霞が関用語(官僚が使う言葉)などもさっぱりわからず、次にどのような手を打つのかといった戦略も立てられず、とにかく未熟だったことでしょうか。ただその分、国内外のキャンペーンに関わった方々からいろんなことを教えてもらったことが今の自分の財産ですね

深草:アドボカシーといえば、今も石炭火力や様々な開発案件でJBICとやり取りすることがあります。サハリン2については、JBICでステークホルダーとの意見交換会が行われるなど、今とは少し違う対応が見られたようですが、どんな経緯だったのですか?

村上:ステークホルダーを広く集めてのJBICとの意見交換の場(環境関連フォーラム)が実施できたのは、JBICが2003年に施行された環境社会配慮ガイドラインを策定する過程で、JBIC内にもステークホルダーの意見を聞くことがグローバルスタンダードだという認識ができつつあったことが背景にあると思います。また、日本に影響がある開発だったので、JBICとしてもこうした場を通して、海上保安庁などを巻き込んで、必要な体制を構築する流れをつくりたかったのかもしれません。ただ、開発による環境社会問題が大きすぎて、そこまで議論が及ばず、ただかみ合わない場になりました。JBICはとにかく早く切り上げたい、NGO側は説明責任を果たせとなり…。すぐに公開されるはずだった環境影響評価(EIA)の補遺版が出ず、融資審査も長引き、結局13回(東京と札幌合わせて)も開催されました。せっかくの場でしたが、ステークホルダーとの対話という面で、後につながるものにならなかったことは心残りです。

 結局、サハリン2第二期工事期間中、次々と開発問題が明るみとなり、それも一要因となって、公的資金の融資を検討していた欧州復興開発銀行と米・英の公的機関が融資から撤退しました。しかしJBICは融資要請から5年後の2008年に37億ドルの融資を実施。日本が国際的な環境NGOから「金融機関が最低限の環境・社会政策を維持するために行ってきた努力を著しく傷つける決定だ」と強く批判されたプロジェクトとなりました。キャンペーンに日本側で関わった者としては、敗北感を感じました。ちょうど中国などの新興国の国外での開発問題が懸念され始めていた頃だったのですが、「日本はアジアで環境面でのリーダーにはなれない」ことを実感した瞬間でした。

深草:私たちは今でも同じような構造の問題に取り組んでいると思うのですが、今と昔、違いはあるでしょうか。

村上:私がFoEに勤務していた頃(2004~2007)は、日本の国際金融機関への拠出金も多く、国際的な環境問題において、よくも悪くもそれなりの存在感や影響力があったように思います。でも今はグローバル社会のプレーヤーが大きく変わり、かつての先進国がOECDなどの枠組みなどを通して作り上げてきた環境基準や行動規範が通用しなくなっているのではないかと思います。日本は特に原発事故以降、国内で抱えている問題が深刻過ぎて、グローバルな視点で物事を見るのがますます難しくなっている一方で、IT、AIなどの技術もあいまって、世界はどんどん小さく密になっているように感じます。国際環境NGOとしても、活動の焦点を絞るのはとても難しい時代だと思います。

深草:今の時代、どのような活動が可能なのか、もしくは求められているのだと思いますか?

村上:これまでのどおりの経済活動(ビジネス)をしていたら、もはや自然環境は守れず、野生生物はおろか人類、つまりは地球上の生物の存続の危機に直面しているという認識は必要だと思います。しかしその分、新しい生き方、生活のあり方、人と自然の関係性をつくりだしてゆける「転換の時代」にきているとも思います。過去の常識や、既存の法律や制度などにしばられず、あたらしい発想を持つ若者が、クリエイティブで挑戦的かつ根源的な活動をし、大人・シニアはそれを支えていければいいなと思います。

深草:FoE40周年を受けて何かメッセージはありますか?

村上:FoEの活動をいつもまぶしく見ています。いま、FoEで若手が育っていることにも期待しています。FoEは以前から被害者に寄り添った活動をしていて、その知見や経験が福島原発事故の対応でも活かされたと思っています。FoEの活動をみて、自分もその一部に関われたことをうれしく思うし、これからもともにがんばりたいと思います。

深草:ありがとうございました。

サハリンⅡ石油・天然ガス開発
サハリンの北東部の2鉱床で、オホーツク海の海底に埋蔵する石油とガスを掘削し、800kmに及ぶパイプラインを通してサハリン南部まで運ぶ事業。輸出先は日本向けが約6割、その他に韓国や米国など。1999年から夏季の原油生産を開始し(フェーズ1)、2008年12月には石油の通年生産、2009年春にはガスの生産が開始された(フェーズ2)。

モーリシャス重油流出事故にみる国際的な賠償制度の欠陥 ――事故を二度と繰り返さないために

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 モーリシャス沖合で日本の大型貨物船「WAKASHIO」が2020年7月25日に座礁してからひと月余りが過ぎた。座礁から8月6日に燃料油が流出し始めるまでの13日間、なぜここまでの被害を食い止めることができなかったのだろうか。その全貌はいまだ不明であり、徹底かつ独立した事故の検証が待たれる。

 そして今、新たな疑問が加わった。二つに分断された船体の前方部分が、「モーリシャス政府からの指示」で8月24日に海洋に投棄されたという。なぜ船体の海洋投棄という方法を選んだのか。報道によると、15キロ沖合まで曳航して沈めたというが、それであれば解体が可能な場所まで曳航することもできたのではないか。廃棄物の海洋投棄を禁止するロンドンダンピング条約への違反も指摘されている[1]

 島では、環境中に拡散された油を回収するために、多くの住民が命がけの作業を続けている。彼らはこのような選択を望んだだろうか。事故を発生させた船舶の関係者と事故対応にあたる当局は、流出油の除去や環境回復の過程で、住民、漁業者、観光業者、NPOなどの声を十分に反映した判断をする必要がある。そうしなければ、後々まで禍根を残すことになる。

 私はかつてFoE Japanのスタッフとして、「ロシア・サハリン2石油天然ガス開発」による環境・社会問題に取り組んだが、開発の大きな懸念のひとつが、油流出事故リスクの増大であった。サハリン2の通年生産が始まった2008年以降、石油タンカーは4日に1度、LNGタンカーは2日に1度、年間約240隻の大型船が新たにオホーツク海を南下し、北海道周辺を通過し、日本海や太平洋へ向けて航行することとなった。幸い、大規模事故は起きていないものの、今もそこにリスクはある。

 油流出事故が発生した際、環境保全の観点から迅速に保護すべき沿岸域を判別するための「環境脆弱性指標図(ESIマップ)」というものがある[2]。今回、油が漂着したモーリシャスの沿岸は、珊瑚礁やマングローブ林のある湿地が広がり、ESIマップの脆弱度が最高ランクに位置づけられる場所だ。このような場所では、汚染の影響が長期に渡り、回収方法にも細かな配慮が必要となる。そして、長期にわたる環境回復への取り組みが必要となる。事故を起こした当事者はその責任を負わなければならない。

タンカーでなく、「貨物船」であることが意味すること

 今回流出事故を起こした「WAKASHIO」は、主に鉄鉱石を輸送する「ばら積み貨物船」だが、貨物船のような一般船舶と、石油等を運ぶタンカーとでは、損害賠償に関する国際条約の枠組みが異なる。仮に、タンカーが油濁事故を起こし、その賠償額が船主等の責任限度額の上限を超えた場合、追加的に被害者に補償を行う国際的な基金がある(FC条約、SF議定書)。しかし、貨物船などの一般船舶の場合、そのような補償基金はない[3]

「WAKASHIO」(貨物船)の事故に適用されるバンカー条約では、船舶所有者は無過失責任を負うが、やはり責任には一定限度の制限が認められている(LLMC条約)。モーリシャスは、責任限度額を約70億円に引き上げたLLMC条約1996年議定書を批准していないので、古い限度額の約20億円が適用されるようだ[4]。このいずれであっても、今回の被害に対してあまりに不十分な額である。(船主の故意・過失による場合、責任制限は認められないようだが、今後の情報を待ちたい)。

早急にタンカーと同様の規制と補償基金の整備が必要

上記のように、タンカーと、貨物船のような一般船舶における損害賠償制度には大きな「格差」が存在するが[5]、「WAKASHIO」は、総トン数10万トンを超える大型船舶である。驚くことに、一般船舶だからという理由で、被害者への補完的な基金はないにもかかわらず、10万トンクラスの巨大な船舶が航行しているのだ。WAKASHIOから流出した千トン余りという量は、過去の大規模事故と比較すれば最大級とは言えないかもしれないが、今、モーリシャスの事例で目の当たりしているように、油流出事故は発生する場所によっては、取りかえしのつかない惨事を自然環境や地域社会にもたらす。この事故を機に、早急に、貨物船などの一般船舶に対し、タンカーと同様の規制や国際的な補償条約の制定を進める必要がある。

責任主体の複雑さからくる「責任逃れ」は許されない

この間のメディアの報道で気になっていることに、責任主体の問題がある。もっぱら「賠償責任は船主の長鋪汽船にあり、(運航者である)商船三井にはない」とする記事が多くみられるが、そんなに単純な話ではないはずだ。バンカー条約も、船舶所有者を「船舶の所有者(登録所有者を含む)、管理人及び運航者並びに裸傭船者」と定義しており、長鋪汽船、商船三井ともに責任主体である。

 船舶の世界は複雑で、今回のケースでは船主と運航者は異なるが、「船舶所有者」として一体となって海運業を営んでいる。その先には、鉄鉱石などを売る荷主がいる。これら複数の企業の経済活動の一環として、「WAKASHIO」は航行していた。船舶所有者がさらに複数となるケースもあり、「登録所有者」が賠償義務を負う理由のひとつには、被害者救済の観点から賠償請求の相手を明確にすることがあげられている。つまり、運航者などその他の船舶所有者が免責されているわけではない。この点、エクソン・バルディーズ号の油流出事故の反省の下に米国で制定された油濁法(OPA90)では、明確に責任当事者を「船舶を所有、運航、借用しているもの」として、連帯責任を負わせている。

 さらに、荷主も賠償責任を負うべきという考えから、前述のタンカー事故の補償基金は荷主によって拠出されている。船やその運航の質を高めるためには、当然、一般船舶の荷主もその責任を負うべきである。登録所有者のみに「上限つきの責任」を負わせればよいという考えでは、事故を防ぐことは決してできない。

日本が国として果たすべき役割

 日本の船の経済活動が起こした環境汚染を目の当たりにし、忸怩たる思いにかられる人は多いだろう。その一方で、日本の国としての動きは後手後手である。安倍首相が今回のモーリシャスでの重油流出事故に対し、「関係省庁で連携して支援するよう指示した」と報じられたのは8月26日だ。これまでに派遣された人員や届けられた油防除資機材などの物資も十分には程遠い。「民間企業の話」として高をくくっているのであれば[6]、海洋国家の名折れである。

船の世界には「便宜置籍船」という悪法としか言いようのない制度があり、「WAKASHIO」もご多分にもれず、船主の国は日本でありながら、法律や税制面で「優遇」されるパナマに船籍を置いていた。結局は、安価が求められ、規制が緩められ、安全性が二の次になるシステムがある。日本に船籍を置く船であれば、日本政府には、船舶の安全性を審査し、違反を取り締まる権限と責任が生じていた。また、日本籍の船であれば、船長、機関長などの資格の必要な船員は日本人でなければならなかった。事故調査にあたっては、これらの点がどのように影響したのかの検証も徹底的になされるべきである。

世界の海運会社、海洋国家としての矜持を保つ

海に囲まれる日本は、船舶事故の被害を受ける国でもあり、これまでにも国際海事機関(IMO)の理事国として、「主要海運・造船国としての知見を活かして、各種条約を始めとしたルール策定の審議」に貢献してきた経緯がある[7]。今回の事故を受け、日本政府は、悪法の上にあぐらをかくのではなく、まずモーリシャスでの油回収・環境回復に全面的にかかわり、十全な賠償を見届けたうえで、今後の船舶における国際的な条約や枠組みの改善に向けた役割を担う必要がある。そして、これまでも大規模な事故が起こるたびに責任範囲の拡大や賠償上限額の引き上げ、基金の設立などがなされてきたが、もはやそれだけでは十分ではない。あらためて、化石燃料に依存する暮らしの見直しを私たち一人ひとりが成し遂げていかなければならない。それが、青い海にかがやくサンゴ礁や湿地帯、マングローブ林をすみかとする生物たち、そこに生業をたてて暮らす人々に対するつぐないではないか。

(高木仁三郎市民科学基金 アジア担当プログラムオフィサー 村上正子)

参考図書:

  • 海洋工学研究所出版部編(1998)「重油汚染・明日のために — 「ナホトカ」は日本を変えられるか」
  • 除本理史(2007)「環境被害の責任と費用負担」

[1] グリーンピース・アフリカとジャパンが連名で、同条約違反を指摘するレターを、曳航船の所有国であるマルタ共和国や日本を含む関係国に8月24日に提出している。

https://www.greenpeace.org/africa/en/publications/12002/sinking-of-the-mv-wakashio-wreck-letter-to-malta/

https://www.greenpeace.org/japan/nature/press-release/2020/08/20/18048/

[2] ESIについて(海上保安庁)https://www1.kaiho.mlit.go.jp/JODC/ceisnet/esi.htm

ESIマップとは(環境省)http://www.env.go.jp/water/esi/esi_title.html

[3]上谷田 卓「海洋汚染損害に対する責任及び補償等に係る国際ルール ―バンカー条約及び難破物除去ナイロビ条約の概要―」立法と調査 2019. 4 No. 411

https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2019pdf/20190415041.pdf

[4] ロイター「情報BOX:モーリシャス沖座礁事故、日本船の賠償が焦点に」2020年8月14日

https://jp.reuters.com/article/mauritius-environment-idJPKCN25A0AK

[5] タンカーによる油濁事故を対象とする国際条約(CLC条約、FC条約)は、貨物として積載される油のみならず、今回のような燃料油による汚染にも適用される。

[6] 日本経済新聞「モーリシャス沖重油回収、日本は後手『民間事故』で消極姿勢 仏が全面支援で存在感」 2020年8月27日

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63136020X20C20A8EA1000/

[7] 外務省「国際海事機関の概要」

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/imo/

コロナ危機をどう乗り越えるか 〜システムチェンジに向けた連帯を〜

先月末、FoE ドイツの呼びかけで、このコロナ危機について意見交換や情報交換をする機会がありました。

ヨーロッパだけでなく、アフリカやラテンアメリカ、米国、アジアから40人近くのFoEのメンバーが集まって、「このコロナ危機をどう捉えるか」という話から始まり、途上国や先進国で起きていることの共有、そして、私たち市民が持続可能な社会のために目指すべき経済復興対策はどのようなものかという問題提起がありました。

話の中で出たのは、

・コロナ危機は、今まで見えないふりをしてきた気候変動による甚大な被害、生物多様性の損失、所得格差の拡大などの延長線上にあるもの。コロナ危機は、これらの社会問題・環境問題の原因である今の社会の仕組みが、限界であることを教えてくれている。

・コロナ危機の中で、不安定な雇用や家庭内暴力等に苦しむ人々、社会のセーフティーネットから溢れてしまう人々の存在など、社会の脆弱性が顕在化し、人々がこれらに気がつくようになった。その中で、お互いを気遣いあう人々が増えてきていたり、人間活動の低下による自然の回復を目にして自然との関係を見直そうという議論が盛んになってきたりしていることも事実である。

・南アフリカ(途上国で起きていること):多くの人々が電気など、基本的なニーズへのアクセスが困難な状況。すでに気候変動等の影響を被っている人ほどコロナ危機対策の網の目からこぼれ落ちている。今の状況は、もはや気候危機が起きたようなもの。

・米国(先進国で起きていること):政府から化石燃料産業や航空産業など、気候変動を加速させるような産業へ多くの補助金が渡されている。

 

会の後半は、今後、この危機を乗り越え、私たち市民で持続可能な社会をつくるための経済復興対策はどのようなものであるべきかという話になりました。話の中で出てきたのは、まずは経済の目的を考え直すこと、つまり人々や地球の健康の価値を見直すことが必要であるという話になりました。

そして、人々や地球の健康を大切にする経済の条件として、税の公平性の実現、公共サービスの提供、地産地消とフェアトレードの推奨、協同組合などを中心とした経済活動の拡大、利益追求の名の下に自然や人権を搾取するような企業に対する、拘束力のあるルールの確保、といった案が出ました。

 

また、全体を通してのキーワードは、”Just Recovery”という言葉。

”Just Recovery”とは、この危機による経済的打撃から回復する方法として、環境破壊や所得の格差を広げてしまうような過去の社会・経済の仕組みを繰り返すのではなく、社会的公正・環境に配慮しながら、回復しようという考え方です。

具体的には、気候変動の原因となる化石燃料ではなく、再生可能エネルギー普及をはじめとした脱炭素社会構築のための補助金や仕組みづくり、また、脱炭素社会に向けた仕事を増やし、すべての人々が人間らしい仕事と生活ができるような雇用支援をしていくことで、これ以上の自然破壊を止め、人々の公平性を実現していこうという考え方です。

例えば、政府からのお金が化石燃料産業などを維持するために使われてしまったら、短期的に求められる必要な緊急対策や、長期的な視野が求められる脱炭素社会のための技術や雇用の保護に十分なお金が行き届来ません。

 

繰り返しになりますが、私たちは今、気候変動、生物多様性の損失、所得格差の拡大、ジェンダーの不平等など、社会的問題と環境問題が複雑に絡み合った世界にいます。これらの問題を後回しにし、その悪影響が顕在化したのが、今回の危機と言えます。

だからこそ、私たちは個々の問題に個別に対処するのではなく、コロナ危機の影響を最も受けている人々の声を聞きながら今まで複数の危機に立ち向かってきた人同士で連帯し、すべての人が尊厳を持って生きることができる経済・社会を目指す必要があります。

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持続可能な社会とはどのような社会なのか、そして政府の打ち出す政策が持続可能な社会につながるものなのかを私たち市民がしっかり確認し、政府に訴えていくことが求められているように感じます。

(高橋英恵)

 

参考:

Friends of the Earth international, 2020/5/6 “Solidarity with peoples affected by coronavirus crisis – Friends of the Earth International”

https://youtu.be/DDrGl1rxtzg

 

Friends of the Earth international, 2020/4/15 ”COVID-19 crisis is a wake up call for system change”

https://www.foei.org/news/covid-19-coronavirus-crisis-system-change

 

Friends of the Earth Europe 2020/4/20 “Coronavirus: Choices lie ahead for how we build back our broken economies”

http://foeeurope.org/coronavirus-choices-lie-ahead-070420

 

Friends of the Earth APAC, 2020/4/26 “COVID-19: An Opportunity for System Change”

https://foeasiapacific.org/2020/04/26/covid-19-an-opportunity-for-system-change/

 

Friends of the Earth US, 2020/4/15 “New Report: Big Oil’s Money Pit to Reap Stimulus Billions”

https://foe.org/news/new-report-big-oils-money-pit-to-reap-stimulus-billions/

地球環境と社会のために私たちにできること…代表理事ランダル・ヘルテン インタビュー(その2)

2020年、FoE Japanは設立40年目を迎えます。人生で言えば40歳は不惑と言いますが、日々目まぐるしく変化する社会や環境の中で、私たちがすべきことや考えることも変化し、目の前の課題や目指す社会を達成する取り組みについて、私たちは常に模索しているとも言えます。

 一方で、FoE Japanが40年かけて蓄積してきた知恵や活動実績、市民の皆さまからのサポートも、今のFoE Japanの礎となっていることは確かです。

 これまでの数十年、そしてこの先10年、そのまた先を見据え、私たちに何ができるか。2020年は、少し立ち止まって考えながらも、着実に前に進む一年にしたいと思います。

 さて、40周年の最初に、FoE Japanの代表理事であり、長くFoE Japanを知るランダル・ヘルテンに、これまでのFoEの歩みや、ここ数年の環境問題を取り巻く社会情勢、海外から見た日本の状況についてインタビューしました。

パート1はこちら

――

深草)環境・社会問題の構造的な原因を解決しない限り、課題は生成され続けるのかもしれないですね。でも、継続もいつまで…?と考えてしまいます。私はスタッフになって4年です。これまでも市民の力の勝利といえることもたくさんあり、FoEもそれに貢献したといえることはあると思いますが、根本的なシステム・チェンジにどれくらいFoEが貢献できているのか…。個人的には、既存のシステムの前に大きな壁を感じています。

ランディ)環境問題は基本的に人間活動が起こしていると思います。社会全体を見れば、産業、政府、市民社会、様々なステークホルダーがいます。NGOは社会の中の一つの存在で、草の根の声として、FoEが社会で果たしている役割は大きいと思います。カナダに帰国して20年くらい経ちましたが、2〜3年に一度日本にきて、FoEのみんなに会うと、組織として確実に成長していると思います。

 日本の場合、今の政権の中で変化を起こすのが難しいというのはわかります。80年代〜90年代は日本にあまり環境NGOが存在せず、市民の声もなかなか政府にとどかなかった時代だったと思います。北米では、リベラルデモクラシーが成長して、オバマ前大統領の時代は市民社会といい関係があった。日本にも90年代後半に、いい空気が醸成されていた。今は壁がある。だからこそ、どのように影響を与えるか、40周年の今、戦略を考える時期かもしれません。

(写真)COP25でのアクションの様子。2010年代の後半は特に気候危機の激化を体感した時期でもあった。

 私も、FoE Japanで5年以上、南極海洋保全の活動していますが、日本政府の担当者はほとんどASOC(注:南極・南極海連合)とFoEの声を無視していますね。漁業関係者と水産庁が世界の会議にでて、日本を代表しています。日本政府は市民のための組織なのに、なぜ漁業セクターだけが国際会議で日本を代表しているのか。社会の中で一緒に行動できる仲間をもっと探さないといけないです。

 個人的に、過去経験の30年を振り返ると、最初のインスピレーションー地球環境を守る、地球と人類を守っていく、という動機は正しいと思います。NGOとして、お金も人材も限られているけれど、やろうとしていることは正しい。

 一方、例えば化石燃料企業はお金も政治的影響力もあるけれど、これまでわかっていることとして、化石燃料企業は60年代からすでに気候変動について知っていたにも関わらず、利益のために間違った情報を流していました。これに立ち向かうには市民としてやはり活動を継続するしかない。

深草)これまで、システムに問題があり根本的な部分を解決しないといけないという話がありましたが、システムは変わりつつあると思いますか?

ランディ)日本の場合、残念ながら今の政権では難しいだろうと思います。世界の政治でも、ナショナリズムが台頭し、排他的な考え方が増え、富と力がより一握りの人間に集中するようになってきました。それを考えると暗い気持ちになります。

一方で、FoE Japanの仲間たち、人権・環境を保護しようとしている人たち、持続可能な社会を実現しようとする価値観を持っている人たち・組織・企業・政治家が前より確かに増えています。そう考えると、いろんな新しい可能性も出てきていると思います。それをプラスと考えて、チャンスを掴むべきですね。

また、環境運動や気候変動の活動の黎明期と比べると、現在は科学的な根拠がたくさん見出されてきています。それも追い風であると思います。

深草)最後に、40周年を迎えるFoE Japanとそれを支えて下さっているみなさまへメッセージをお願いします。

(写真)私たちに必要なのは現在のシステムの抜本的変革だ。COP24にて。

ランディ)2020年の新年、2020代の新年代、FoE Japanの40周年のタイミングで、今からの10年はまたとても大事な10年ですよね。IPCCは今から10年が勝負と言っています(注:パリ協定の1.5℃目標達成のためには、2030年までに2010年比で温室効果ガス45%排出削減が必要)。SDGs(持続可能な開発目標)も2030年までの目標です。気候変動目標、そして持続可能な開発目標の達成のためにFoE Japanに何ができるのか今考えなくてはいけませんね。化石燃料企業や原発推進企業など産業界はお金もパワーを持っています。彼らは解決を遅らせようとしています。しかし地球は希望もあります。Fridays for Futureにはとてもパワーを感じます。市民もパワーと希望を持って進んでいきましょう。

(写真)気候マーチに参加する日本の若者

地球環境と社会のために私たちにできること…代表理事ランダル・ヘルテン インタビュー(その1)

 2020年、FoE Japanは設立40年目を迎えます。人生で言えば40歳は不惑と言いますが、日々目まぐるしく変化する社会や環境の中で、私たちがすべきことや考えることも変化し、目の前の課題や目指す社会を達成する取り組みについて、私たちは常に模索しているとも言えます。

 一方で、FoE Japanが40年かけて蓄積してきた知恵や活動実績、市民の皆さまからのサポートも、今のFoE Japanの礎となっていることは確かです。

 これまでの数十年、そしてこの先10年、そのまた先を見据え、私たちに何ができるか。2020年は、少し立ち止まって考えながらも、着実に前に進む一年にしたいと思います。

(聞き手:スタッフ深草)

深草)最初に自己紹介をお願いします。

ランディ)ランダル・ヘルテンと言います。カナダで生まれ、若い頃はキャンプやハイキングなど、自然の中で過ごすのが好きでした。親が航空会社に勤めていたこともあり、若い頃にいろんな国を見ることができました。高校を卒業し、日本から電気製品を輸入しアメリカで販売する仕事につきました。その後、大学でマーケティングを勉強して、卒業後の1988年秋に来日しました。最初はビジネスコンサルティングの会社にいたのですが、環境問題について大変な危機感も抱いていて、ボランティアできる団体を探したところ、FoE Japanを見つけました。最初はハイキングプログラムに参加し、その後オフィスでのボランティアもしました。その時は「地球の友」という名前で活動していました。1989年からなので、もう30年の付き合いになりますね。

(写真)ランダル・ヘルテン

深草)当時はどのような課題に取り組んでいたのでしょうか?

ランディ)まずは設立経緯について。1980年当時はもちろん自分はいませんでしたが、FoE Japanの創設者の一人である田中幸夫さんが、アメリカでFoEの創設者であるデイビッド・ブラウアーに会ったところ、日本にもFoEを作ってはどうかと提案されたことがきっかけで、FoE Japanが創設されたそうです。FoE Japanとしての一番最初の活動は、エイモリー・ロビンスを日本に招いて、スピーキングツアーをすることでした。彼の1978年の著作である”Soft Energy Paths: Toward a Durable Peace”を読むと、彼の話は今も重要であることがわかります。彼は、原発は危険であり、再生可能エネルギーこそ私たちが選ぶべき道であると述べています。また、エネルギーと平和のつながりを語っています。

 1990年代のFoE Japanも、今と同じく森林の問題や、エネルギー問題、気候変動、開発金融の問題に取り組んでいました。そういう意味では一貫性がありますね。特に、90年ごろに大きかったのは「金融と環境」と熱帯林保護です。当時のFoE Japanのやり方として、海外のFoEとの繋がりを生かしつつ、日本国内でキャンペーンやネットワークを作って活動するパターンが大きかった。熱帯林行動ネットワーク(JATAN)がFoE Japanの中にできて、その後はサラワク・キャンペーン委員会ができました。また、90年代半ば、日本湿地ネットワークの創設に貢献しました。90年代は、ロシアの森林に関するキャンペーンも規模が大きかったですね。シベリアトラの保護活動などもしていました。80年代には国内の環境団体がとても数少なく、海外のマスコミは(日本の環境活動に関する)情報が得がたかったと聞いています。そのため、海外からの問い合わせがたくさんきました。当時、日本の情報を海外に流す、そして海外の情報を国内に流す、というのはFoE Japanの大きな役割だったと思います。

深草)90年代に、開発金融や森林問題についての活動が大きかったとのことですが、その当時社会的にも大きく認知された問題だったのでしょうか?当時のFoE Japanがそれに注力した背景には何があったのでしょうか?

ランディ)1989年に500人くらいのアマゾン地域先住民族等が、ブラジルで大規模ダムの反対キャンペーンのための集会を行いました。アルタミラ集会(The Altamira Gathering)と呼ばれています。日本からは、田中幸夫さんがこの会議に参加し、インスピレーションを受けたのではないかと思います。

 その後、90年代に今も協力関係が続くPARCなど他団体と協力してインドのナルマダダム建設に反対するキャンペーンを行いました。ナルマダダムは世界銀行の融資によるプロジェクトで、世界銀行が環境破壊や人権侵害しているとして国際的な反対キャンペーンがあり、日本の窓口がFoE Japanでした。FoEのスタッフもインドに行って調査を行い、91年ごろに日本で大きな会議もやりました。その時、OECF(注:注:海外経済協力基金。国際協力銀行(JBIC)を経て、現在は国際協力機構(JICA)の円借款部門)の関与するプロジェクトでの環境人権問題に関する問題提起をかなりやりました。日本政府はびっくりしたと思います。FoE Japanの活動のインパクトはあったのではないでしょうか。その流れが2000年代初めにJBIC環境社会配慮ガイドラインを作成させるという活動につながりました。

(写真)奇跡的に残っていた1997年のニュースレターより。2001年以前のニュースレターをお持ちの方ぜひFoEにコピーを送っていただけると嬉しいです!

深草)今も日本の公的資金や開発金融が引き起こす問題は解決していませんし、むしろ金融機関による人権侵害や環境破壊の状況は悪くなっている気がします…。

ランディ)20代のころから、人口が増え環境破壊がどんどん進み、人類が危機にあるという感覚がありました。80年代後半に日本に来て、これからの人生を考えた時に、人類に貢献したいという気持ちがありました。FoE Japanを見つけて、魅力を感じたのは、国際的なネットワークを持っているけれども、草の根の活動をしていること。それは今も変わってないですよね。もう30年関わっていますが、今も毎日ニュースを見て、気候変動やマイクロプラスチック、海面上昇、生物多様性の問題など、すべて悪い方向に向かっている…。だらこそ、FoEのネットワークの効果を期待しています。こういう仕事は終わりがないと思います。継続することがとても大事。一つの成功があっても、「システム」に問題があるので、それを変えるためには、活動を継続しないといけないと思います。

(写真)2001年のニュースレター。坂本龍一さんの寄稿が!

次へ続く


環境と人権のためにたたかったFoEインドネシアの活動家、命を落とす - 徹底的な調査と人権保護を

今月6日、インドネシア最大の環境団体、FoEインドネシア(WALHI:インドネシア環境フォーラム)北スマトラ支部のメンバーであったゴルフリッド・シレガール(Golfrid Siregar)が亡くなりました。34歳の若さでした。ゴルフリッドの冥福を祈るとともに、全ての環境・人権活動家の安全が確保されることを切に望みます。

 ゴルフリッドは、10月3日木曜日の早朝、重度の頭部外傷のため、非常に危険な状態で発見され、6日に搬送先の病院で息を引きとりました。現地警察は死因は事故であったとしていますが、損傷は頭部のみで身体は無傷であったこと、彼の所持品が消えていること、彼のバイクは損傷が少なかったことなど、不可解な点も多いため、活動家を狙った暗殺の可能性も非常に高く、WALHIを含む市民団体、およびFoEアジア太平洋グループは、インドネシア政府に対し、迅速かつ透明性の確保された形で彼の死因を調査するよう声明を発出しました。

 ゴルフリッドは様々な環境や人権の保護、特に北スマトラでの活動に人生を捧げました。プランテーション、違法伐採、水力発電ダム、砂採掘会社に対して提訴した漁民への支援など、企業により被害を受けたコミュニティ支援に精力的に取り組んでいました。


 インドネシアでは、環境や人権を守り活動する人々の命が常に危険にさらされています。FoE Japanがともに活動するインドネシア・インドラマユで石炭火力発電事業に反対する農民たちも、一時弾圧としか思えない理由で投獄されました(http://www.foejapan.org/aid/jbic02/indramayu/180924.html)。日本もまったく無関係ではないのです。また、インドネシアだけでなく、世界各地で活動家の人権侵害や生命への脅威が増しており、英国の人権監視団体グローバル・ウィットネスの今年の報告によると、2018年には週に3人のペースで活動家が殺害されています(https://www.globalwitness.org/en/campaigns/environmental-activists/enemies-state/)。

 今日、環境を守るために活動するということは旧来の自然保護の枠を超え、多くの国や地域で強権的な政府や大企業などの既得権益に対し土地や地域社会の権利、人権を守ろうと志す多くの人々の命を賭けた活動となっています。国連の人権擁護者に関する特別報告者のレポートは、問題の背景として、資本主義社会における資源収奪や、市民社会ではなく企業に多くの力が集中したり、本来規制導入を議論・実施すべきはずの政府が企業優遇の姿勢を見せているなどの要因をあげています(https://www.protecting-defenders.org/sites/protecting-defenders.org/files/environmentaldefenders_0.pdf)。

FoEアジア太平洋による声明はこちら(英語)
https://foeasiapacific.org/2019/10/11/friends-of-the-earth-asia-pacific-demands-a-thorough-investigation-into-the-death-of-activist-golfrid-siregar/

市民団体の連合による共同声明は下記(英語原文は翻訳版の下部に記載)

共同声明

ゴルフリッド・シレガールの死に関する徹底調査を

ジャカルタ:人権擁護活動家のための市民社会連合は、WALHI(FoE インドネシア)北スマトラの活動家でもあった環境保護活動家・人権擁護活動家のゴルフリッド・シレガールの死に関し、迅速で透明性の確保された、かつ、実効性のある独立調査を実施するようインドネシア政府に強く要請する。ゴルフリッドは2019年10月3日木曜日の未明、頭蓋の重度の頭部外傷のため、非常に危険な状態で発見された。ゴルフリッドは搬送先の病院で10月6日の日曜日に息を引き取った。

私たちは、警察が、ゴルフリッドの死因が交通事故によるものだと拙速に判断を下したことを遺憾に思っている。彼の死には、(交通事故が死因であると判断するには)多くの不審な点が残っていると考える。例えば、事故の発生現場が不明である。当初、彼の家族は、ジャミン・ギンティングの高架道路で事故が発生したという情報を治安部隊から入手していた。その後、故の発生現場はティティック・クニングの高架下であったと変更された。ゴルフリッドの死は、交通事故が原因ではなく、暴力が原因で死亡したのではないかと疑われる。さらに、マルク州の先住民族の活動家であるヨハネス・バルブンのケースでも、2016年に事故で死亡したと警察が主張した。一方、今年初めにWALHI西ヌサ・トゥンガラ支部の事務局長ムルダニが暗殺未遂事件にあったことも明らかにされていない。

インドネシアやその他の国で発生した、死亡や殺人未遂につながるあらゆる暴力事件と同様に、社会・環境に係る権利のために闘う環境・人権擁護活動家の活動と、住む場所・生計手段の喪失や環境被害といった企業による破壊行為の脅威とを切り離すことはできない。人権団体からの様々な報告によると、環境・人権擁護活動家は、人権侵害の事例や深刻な環境被害を明らかにするために活動している一方で、襲撃や脅威に対して非常に脆弱である。

ゴルフリッドは特に北スマトラにおいて、様々な環境保護活動や人道的活動に人生を捧げた。ゴルフリッドとWALHI北スマトラの仲間が行った様々なアドボカシー活動の中には、シアンタールにあるMitra Beton社の活動により被害を受けたコミュニティへの支援、リンガ・ムダでの森林への不法侵入や違法伐採問題におけるコミュニティへの支援、ラブビーチでの砂採掘会社に対する訴訟のための漁民への支援、そして、NSHE社に対する環境許認可を発行した北スマトラ州知事に対する訴訟のWALHI弁護団のリーダーとしての役割、また環境アセスメントにおける署名偽装に関する調査を中止した北スマトラ州警察の警察官をジャカルタの警察本部に報告したことなどが含まれている。

環境保護活動家や人権擁護活動家の殺害につながる暴挙はこれまでも発生しており、増加している。インドネシアでは、インドラ・プラニ、サリム・カンチル、ヨハネス・バルブン、ポロドゥカが殺害されてきたが、今、ゴルフリッド・シレガールがまた殺害された。同様に、西ヌサ・トゥンガラ州でムルダニが放火により暗殺未遂にあっている。

今回の事件を受けて、環境と人権の擁護者であるゴルフリッドの正義と家族のために、そしてすべての人々の正義のために、私たちは以下を強く要求する:

  1. 1998年12月9日に国連で採択された人権擁護活動家に関する宣言の第9条 (5)に述べられているように、国は、調査を迅速かつ公正に実施し、又はその管轄地域内で人権及び自由の侵害が生じたと信ずるに足りる合理的な根拠がある場合に確実に調査を実施しなくてはならない。
  2. 警察官は、法の執行プロセスの説明責任を果たすため、開かれた形で、ゴルフリッドの死を徹底的に調査すべき。また、北スマトラ州警察には利益相反が存在することから、この事件の処理は警察本部に引き継がれるべきである。
  3. 環境と人権の擁護者に関わる事件であるため、国家人権委員会は直ちに事実調査の独立チームを結成すべき
  4. その緊急性に鑑み、これ以上の冤罪や死につながる暴力が起きないよう、国に対し、環境及び人権の擁護者の保護を確保するための政策(大統領令)を直ちに発出することを求める。
  5. 政府は直ちに人々の命と生態系の持続可能性の保護を主要な前提条件とする開発プログラムを立案し、実施すべき。開発のために、人々の生命と生態系を危機に晒してはいけない。

また、私たちは一般の市民に対しても、ゴルフリッド・シレガールの死に関する法の執行プロセスが適切に実施されるよう、共に監視するよう求める。将来、人々の権利や環境のためにたたかう人々の命がこれ以上奪われないことを切に願う。

Joint Statement of Civil Society Coalition

Investigate Throroughly the Demise of Activist Golfrid Siregar

Present the State to Protect Human Rights Defenders

Jakarta—The Civil Society Coalition for Human Rights Defenders urges the state to conduct an immediate, open, effective and independent investigation related to the demise of environmental and human rights defenders, Golfrid Siregar, SH, who was also an activist from Wahana Lingkungan Hidup Indonesia in North Sumatra (WALHI Sumut). Golfrid was found early on Thursday October 3, 2019 in a very critical condition due to severe head injuries in his cranium. Golfrid was the brought to hospital, until he breathed his last on Sunday, October 6.

The Coalition regrets the Police’s attitude to hastily state the cause of late Golfrid’s demise was due to a traffic accident. The Coalition considers that there are a number of irregularities found from his death. For example, unclear location of the incident (TKP). Initially, the family obtained information from the security forces that the incident happened at Jamin Ginting flyover. Then, the TKP changed underpass Titik Kuning. We suspect that the late Golfid’s demise was not because of a traffic accident however caused by violence that resulted in death. Moreover, the case of Yohanes Balubun, an activist for Indigenous People in Maluku, whose death in 2016 was claimed by the police as a result of an accident. Meanwhile, in West Nusa Tenggara (NTB), an attempt to assassinate WALHI West Nusa Tenggara Executive Director Murdani earlier this year has also not been revealed.

As any other violence cases that lead in demise or attempted murder that happened in Indonesia and other countries, it cannot be separated from the activities of environmental and human rights defenders who fight for the rights of society and environment from threats of destructions by corporations, such as the loss of residential, livelihood, and environmental damage. Various reports from human rights organizations show that environmental and human rights defenders are very vulnerable to attacks/threats while working to expose human rights violations cases and serious environmental damage. 

In the spanning of his life, Golfrid dedicated his life for various environmental advocacy works and humanity, especially in North Sumatra. Various advocacy works carried out by Golfrid and friends in WALHI North Sumatra, amongst other are assisting impacted local community due to the activities of PT. Mitra Beton in Siantar, assisting local community in Lingga Muda from forest encroachment and illegal logging, assisting fishermen in Labu Beach for the lawsuit against sand mining company, and lastly serving as the lead of WALHI legal team of the lawsuit against  Governor of North Sumatra for issuing environmental permits with defendant of PT. NSHE, as well as reporting the police officers in North Sumatra Regional Police (POLDA Sumut) who stopped the investigation of forged signature case in AMDAL to Police Headquarters (Mabes POLRI) in Jakarta. 

The violence that lead to death experienced by environmental and Human Rights Defenders has long happened and been increasing, Indra Pelani, Salim Kancil, Yohanes Balubun, Poroduka, and now Golfrid Siregar, as well as the attempted murder of arson experienced by Murdani in West Nusa Tenggara. 

From the incident experienced by environmental and human rights defender, Golfrid Siregar, for the sake of Golfrid’s justice and his family, and for the sake of everyone’s justice, we urge:

  1. The State must conduct investigation immediately and impartial or ensure that an investigation is conducted in reasonable grounds to believe that violation of human rights and freedom has occurred in its jurisdiction. As stated in Article 9 (5) Declaration of Human Rights Defenders passed by the United Nation on December 9, 1998;
  2. Police officers to thoroughly investigate the demise of Golfrid Siregar, openly to the public to ensure the accountability of law enforcement process. Given the existence of conflict of conflict interest in North Sumatra Regional Office (POLDA Sumut), therefore we urge the handling of this case to be taken over by Police Headquarters (Mabes POLRI);
  3. The National Commission for Human Rights (Komnas HAM) to immediately form fact-finding independent team, because this case was experienced by environmental and human rights defender;
  4. Given its urgency, we also urge the state to immediately issue policies (Presidential Regulation) that ensure the protection for environmental and human rights defenders. Therefore, there won’t be any criminalization and violence act that lead to death;
  5. Government to immediately draft policies and carry the development programs that put protection towards people’s rights to life and ecological sustainability as the main prerequisites. Therefore, for the sake of development, it doesn’t put in line the people life threaten and ecological disaster.

We also invite public in general to jointly guard the law enforcement process towards the death of Golfrid Siregar. In hope in the future there won’t be any live taken for fighting the rights of the people and environment.  

For further information please reach: 

Jakarta, October 10 2019

Human Rights Defenders Coalition

Wahana Lingkungan Hidup Indonesia (WALHI) – KontraS – Amnesty International Indonesia – Human Rights Watch – Yayasan Perlindungan Insani, Greenpeace Indonesia –YLBHI – ELSAM – Kemitraan – Imparsial – KRuHA, LBH Pers – HuMa – JATAM – HRWG – Solidaritas Perempuan

  1. Zenzi Suhadi, Eksekutif Nasional WALHI

Email: zenzi.walhi@gmail.com

  • Papang Hidayat, Amnesty International Indonesia. 

Email: papang.hidayat@amnesty.id

  • Ainul Yaqin, Yayasan Perlindungan Insani

Email: ainulyaqin@protonmail.com

  • Asep Komarudin, Greenpeace Indonesia

Email: akomarud@greenpeace.org

  • Yati Andriyani, Komisi untuk Orang Hilang dan Korban Tindak Kekerasan (KontraS)

Email: yatiandriyani@kontras.org