世界遺産の隣では…米軍北部訓練場が「やんばるの森」に与える影響

9月21日、世界自然遺産に登録された沖縄島北部(やんばるの森)に関して、環境省・防衛省と意見交換会を行いました。オンラインで、沖縄から蝶類研究者の宮城秋乃さん、Okinawa Environmental Justice Projectの吉村秀樹さんなどを含め、80名以上の市民が参加しました。

やんばるの森は、奄美大島、徳之島、西表島などとともに、7月26日に世界自然遺産に登録されました。かけがえのない生態系や生物多様性の普遍的な価値が、国際的にも認められたのです。しかし、隣接する米軍北部訓練場がこの地域の自然や人々の脅威となっています。

意見交換会では、北部訓練場における米軍機による訓練による騒音や低周波音などの影響、また、世界遺産登録地に含まれている北部訓練場の返還地に大量に残された米軍廃棄物などについて議論となりました。>事前質問書

訓練場近隣で深刻化する米軍機騒音

北部訓練場の米軍機による訓練が、騒音や低周波音により、世界自然遺産の野生生物や周辺住民の脅威になっていることを指摘し、防衛省、環境省の認識について問いました。
防衛省は、2012年の米軍が実施した環境レビューをもとに、「影響は小さい」という認識を示しました。しかし、この環境レビューはあくまで予測値を用いた簡略なものであり、日本政府として、騒音や低周波などに関して実データをもとにした登録地の生態系に与える評価を行ったわけではありません。

琉球新報の報道(2021年5月11日付「世界自然遺産推薦地のすぐ近く…東村高江周辺では米軍機の騒音が約3・5倍に」)では、周辺集落では頻繁に80デシベル以上の騒音が観測されており、その頻度は、2014年度は80デシベル以上の騒音測定回数は105回だったのが、20年度は368回に増加したことが報じられています。

防衛省は、北部訓練場周辺の集落3か所において常時騒音測定を行っているのですが、いずれもLden値(時間帯補正等価騒音レベル)では、環境基準を超えていないとしました。

一方で、環境省は、「訓練が野生生物に及ぼす影響については、必要に応じて、日米合同委員会のもとにある環境分科委員会で共有していく」としました。

市民側は、騒音レベルは平均値ではなく最大値を重視するべきこと、訓練が世界遺産登録地の野生生物に与える影響を評価するべきこと、また、米軍に対して世界遺産登録地および集落上空での低空飛行や旋回をしないように日本政府として要請してほしいとうったえました。

米軍が自然遺産登録地で訓練? 境界越えを防ぐために

北部訓練場と自然遺産登録地は、地図上では長く曲がりくねった境界線を共有しています。

防衛省・環境省は、米軍が陸伝いに境界線を越えて自然遺産登録地に入ったり、自然遺産登録地を訪れた人が北部訓練場に入ったりすることを防止するような措置はとっていないし、今後とる予定もない、としました。

市民側は、安全上の観点からも、世界遺産登録地への影響を回避するためからも、境界線を越えが起こらないよう、境界線を明示するなどあらゆる対策をとることを要請しました。

Hideki Yoshikawa, Dr. Masami Kawamura, “NGO Evaluation and Recommendations regarding The Nomination of NPOI for World Natural Heritage“(October 05, 2019)

世界遺産に残された米軍廃棄物~「いであ」への委託は十分だったのか?

米軍廃棄物の問題を訴え続けてきた東村に住む蝶類研究者の宮城秋乃さんは、世界遺産登録地に含まれる北部訓練場返還地で、実弾1発を含む不発弾、放射性物質を含む電子部品、その他多くの廃棄物を発見たことを指摘。宮城さんは県警に連絡しましたが、対応はされなかったそうです。

意見交換会にて、防衛省は返還地の廃棄物や土壌汚染について、「いであ株式会社」に委託して調査および廃棄物や汚染除去を行ったと説明。その際、対象範囲は、土壌汚染の蓋然性が高いと考えられる、ヘリパットや過去のヘリ墜落地点などに限定して実施したとのことです。「業務終了の際、防衛省も現場に行き、問題がないこと確認を行った」としました。

しかし、実際には、対象地でも、その他の地域でも多くの米軍廃棄物が見つかっているのです。

防衛省は、「引き渡し後に、廃棄物が発見されたときでも、防衛省として地権者や関係機関と連携をとり適切に処理していく」とし、また、米軍廃棄物が発見されたときは、「地権者である沖縄県森林管理所もしくは沖縄防衛局に連絡してほしい」としました。

市民側からは、「いであ株式会社」への委託は範囲が限定的でありすぎ、また調査や廃棄物除去が十分ではなかったことを指摘。あらためて、包括的な米軍廃棄物除去計画の策定と実施を提案しました。

また、宮城さんは、米国海兵隊北部訓練場ゲート前に、発見した米軍廃棄物を少量置くことにより、抗議の意を示しました。ところが、これが「威力業務妨害」にあたるとして、沖縄県警から捜査を受け、書類送検されたのです。

市民側はこれは不当で威圧行為であるとし、「政府は廃棄物を発見し、問題提起を行った宮城さんにむしろ感謝の意を示すべき」としましたが、防衛省は、捜査中の案件なので回答を差し控えるとするにとどまりました。

主催団体は、北部訓練場の返還地の廃棄物除去に関するいであ株式会社との契約の詳細などについて、防衛省・環境省に追加の質問書を提出しました。

また、今回の会合の報告をIUCNなどに提出するなどのアクションをとっていきたいと考えています。

(満田夏花)

<アーカイブ映像>


0:00:00- Part I: オンライン集会
0:05:55-「やんばるの森の実状ーこれで本当に世界自然遺産?」宮城秋乃さん/蝶類研究者
0:29:15-「世界遺産登録の持つ意味は?」吉川秀樹さん/Okinawa Environmental Justice Project
1:05:08- Part II: 防衛省・環境省との意見交換
1:09:41-北部訓練場での訓練について(低空飛行、騒音など)
1:45:40-北部訓練場と自然遺産登録地の境界について
2:07:30-北部訓練場返還地の米軍廃棄物について

やんばるの森は「多くの固有種が集中して分布する国内最大級の亜熱帯照葉樹林の生態系、雲霧林、渓流植物群落などの河川生態系、石灰岩地特有の動植物、マングローブ生態系といった多様な生態系が複合的に一体となった景観」が評価され、世界遺産に指定された。(写真は環境省資料より)

高江ヘリパッド建設をめぐる防衛省・警察庁交渉報告(9/29)

9月29日に、高江ヘリパッド建設をめぐり、防衛省と警察庁との交渉を開催しました。沖縄から、沖縄平和市民連絡会の北上田毅さん、抗議運動の見守りを続けている小口幸人弁護士が駆けつけました。

市民らをロープで縛って拘束

前日の9月28日、市民らが訓練場内の斜面で抗議行動していた際、警察機動隊員らが工事用ロープで市民らの胴体を縛って拘束し、引き上げ、この際、一人が足をひねり、腰をうって救急搬送されるという許しがたい事件が発生しました。

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/64204

これは、身体の自由を奪うというもっとも深刻な人権侵害であり、特別公務員職権濫用罪に該当するかもしれない行為です。交渉の冒頭に、主催者からこの事件について厳重抗議。

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>IWJによる記事および動画はこちら

小口弁護士が警察がこのような行為ができる根拠法は何かと追及すると、警察庁側は「沖縄県警察に確認したところ、北部訓練場のヘリパッドが建設される地区の斜面において、抗議市民が座り込んでいるという状況の中で、ロープは命綱として使ったとのこと。必要な警備措置、現場の安全確保という形で行ったと聞いている」と回答。

警察によるこの行為により、あざがついたり、けが人がでているのに、「安全確保」とは詭弁もはなはだしいものがあります。

小口弁護士からは、特別公務員職権濫用罪として捜査をしないのか、また、北部訓練場の区域内で、警察が警察権を発動するために、米軍との間でどのような合意がなされたのかと問いただしました。警察庁側は「沖縄県警が適切に対応する」「把握していない」とのみ回答しました。

自衛隊ヘリ出動~許可証なし「後日郵送」

防衛省との交渉では、再び9月13日の自衛隊ヘリによる工事用資機材の輸送の違法性が問題となりました。この自衛隊ヘリが自衛隊法に基づかないことは、前回の9月15日の交渉ですでに確認ずみですが、今回の交渉では、それでは航空法に基づく許認可を得ていたのか、ということが問題になりました。

交渉では、実際にヘリが飛んだ9月13日の時点では、電話による口頭伝達のみで許可証がでていなかったことが明らかになりました。

また、福島みずほ参議院議員事務所が確認したところによると、奇妙なことに、許可証は申請書が出される前に交付されたようです。

A:許可証の流れ
①9月14日(水)大阪航空局が近畿中部防衛局に許可証を交付
②同日近畿中部防衛局が防衛省本省に郵送(投函)
③9月15日(木)防衛省本省に配達される
B:申請書の流れ
④9月16日(金)防衛省本省が近畿中部防衛局に申請書を郵送
⑤9月20日(月)近畿中部防衛局が届いていることを確認(土日をはさんだため)
⑥同日中に近畿中部防衛局が大阪航空局に持参

高江では、「工事を年内に終わらせる」という至上命題に向け、防衛局や警察により数々の違法行為・脱法行為が行われていますが、今回の自衛隊ヘリ出動は、自衛隊法にも航空法にも反しており、事後的に、つじつま合わせの申請と許可が行われたものと考えられます。

やんばるの森破壊する工事用道路

防衛省との交渉では、そのほか、以下の点について、北上田毅さんが問いただしました。

・防衛局は9月1日、沖縄森林管理署に国有林野の現状変更、立木伐採の協議書を提出し、同森林管理署は同月12日同意。しかしこれらの文書では、道路延長:1,409m、道路幅員:3.0m、伐採幅:4.0mとされているにもかかわらず、現地の道路幅はほぼ4m前後あり、伐採幅も5.0m~6.0mほどに及んでいる。

・沖縄防衛局が本年7月11日、沖縄県に提出した「環境影響評価検討図書」では、工事用モノレールについて、「下草刈りを行う程度で、地表面の直接改変はない」「撤去後は支柱痕は埋め戻す」など、「自然環境への影響は最小限となるよう配慮する」としていた。しかし、防衛局は工事用モノレールを止め、森林を大きく伐採して工事用道路を造成しています。

防衛省は、「環境への影響は評価している」としましたが、工法の変更により修正した「環境影響評価検討図書」は、いまだに公開されていません。

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やんばるの森を破壊する工事用道路(北上田毅さん資料より)

警察法は形骸化

警察庁との交渉は、高江で行われている機動隊の行動が、警察法第二条第二項に反している問題になりました。

 「不偏不党かつ公正中立を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利および自由の干渉にわたる等その権限を乱用することがあってはならない」

小口弁護士が、警察が工事用の車両を通すために、一般車両を通行止めにしている実態を、実際に映像をみせながら問いただしました。小口弁護士は、工事を進めたい防衛局と工事を止めようとする市民の衝突をさえるためには、市民を排除するという手段と、防衛局側を止めるという手段が二つあるのに、警察が常に市民を排除することをしていないのは、「不偏不党」でも「公正中立」でもないことを指摘。しかし、警察庁側は、「実際に工事用車両が通るときに、衝突が起きないように、市民側の車両を規制した」というような説明を繰り返すだけで、「沖縄県警が適切に対処していることを確認している」と述べました。

FoE Japanは、今後とも、現地の住民たちとも協力しながら、やんばるの森と住民のくらしを守るために、高江におけるヘリパッド建設に反対していきます。

高江ヘリパッド建設をめぐる防衛省・環境省・警察庁交渉(2016/8/22)
高江ヘリパッド建設における自衛隊ヘリ使用をめぐる防衛省交渉(2016/9/15)

 

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On 22nd August, we handed the petition to stop the atrocities and the construction of the helipads to Ministry of Defense.Thank you so much for those who signed on to our petition and for your support! 

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>>You can still sign on!
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写真:宮城秋乃さん デザイン:Kimiko Kawamura

8月22日高江・米軍ヘリパッド建設反対-防衛省・環境省・警察庁との交渉報告

8月22日高江・ヘリパッド建設反対 防衛省・環境省・警察庁との交渉報告

沖縄県東村高江周辺で米軍ヘリパッド建設が強行されている問題について、院内集会・省庁交渉を行いました。
台風の中でしたが、多くのみなさまにご参加いただきまして、ありがとうございます。
沖縄からは堀田千栄子さんがかけつけ、オスプレイのすさまじい騒音被害や住民たちの必死の反対運動、機動隊による暴力などについて映像を交えて語っていただきました。宮城秋乃さんはフライトが欠航したため、会場にくることができなかったのですが、電話でつないで、ヘリパッドの建設で生存が脅かされているやんばるの森の貴重な生き物たちについてご発言いただきました。沖縄環境ネットワークの花輪伸一さんからは、地域一帯の生物多様性の豊かさや防衛局の自主的な環境アセスの問題点についてご指摘いただきました。

高江ヘリパッド反対の共同声明への署名は、61カ国 231団体、14,011人にのぼりました。
全世界からの建設反対の声として防衛省宛てに提出いたしました。署名はまだ継続しています。

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以下、簡単な交渉報告です。交渉には福島みずほ議員、近藤昭一議員も立ち会いました。
省庁宛て事前質問と解説 (PDF)

1.防衛省交渉…焦点となったテントの撤去と「Fルート」

ゲート前のテント撤去の法的根拠が主に問題となりました。
7月22日のN1表ゲートのテント撤去について、防衛省側からは、①テントが工事の妨害になっていること、②所有者は名乗り出るよう張り紙をしたが、名乗り出るものがいなかったため、所有権は放棄されたとみなした――旨の説明がありました。しかし、これらは県道にあるテントを防衛省が撤去できる法的根拠とはなりません。再度たずねると、防衛省が挙げたのは、道路法第32条第1項と防衛省設置法第4条第19項でした。

第32条第1項は、「道路に次の各号のいずれかに掲げる工作物、物件又は施設を設け、継続して道路を使用しようとする場合においては、道路管理者の許可を受けなければならない。」というものでした。そこで私たちは以下の点を問い質しました。

(1)N1表ゲート前テントが張られていた県道70号線の道路管理者は沖縄県であり、防衛省ではない。なぜ防衛省が撤去できるのか

(2)撤去されたものは所有者が現に存在しており、所有権は放棄されていない。そのことを防衛省自身が認識していることは、沖縄防衛局が撤去後にこれを廃棄せず、所有者に返還している事実からも明らかではないか。

(3)たとえ所有権が放棄されていたとしても撤去できる根拠にはならない。経産省前テントの撤去では、管理者の経産省ですら裁判を経る手続きを踏んでいる。なぜ手続きを踏まないのか。

いずれについても、防衛省は答えることができず、同じ説明を繰り返すだけでした。
また、防衛省設置法第4条第19項は、以下のようなものです。

第四条 防衛省は、次に掲げる事務をつかさどる。
十九 条約に基づいて日本国にある外国軍隊(以下「駐留軍」という。)の使用に供する施設及び区域の決定、取得及び提供並びに駐留軍に提供した施設及び区域の使用条件の変更及び返還に関すること。」

これは、防衛省の所掌事務を列挙してあるだけの条項で、これは明らかに、強制措置の根拠とはなりえません。テント撤去に法的根拠がないことを改めて確認しました。

N1裏のテントについて、防衛省側は、「いまのところ撤去の計画はない」と述べましたが、村道から先は国有林で、防衛省が林野庁から使用許可を得ているとも述べました。
私たちは、N1裏のテントについては所有権は主張されていて現に使用されてもいることを指摘。法を侵しての撤去をしないよう強く求めました。

N1の表から裏に通ずる防衛省が「Fルート」と呼ぶ道について、防衛省は、既存の道路に砂利を敷いて補強し、N1裏までつなぐこと、工事が終わっても復帰する予定はなく、輸送用道路として米軍が使用する可能性があることを明らかにしました。
「幅はどれだけか」との質問に対し、「現在も補強後も約3メートル」との回答。
しかし、既に道路脇の樹木伐採が行われており、幅員が同じであるとは言えないこと、補強ではなく拡張と考えられます。
であれば、環境への影響が変化することから、環境アセスをやり直す必要があるのではないかと指摘しましたが、防衛省は、アセスは自主的なものであり、やり直す必要はない、事後確認で十分足りると回答しました。これについても、参加者から強く抗議しました。

Fルート後の工事予定については、明らかにしませんでしたが、G地区やH地区への砂利や資材の搬入を考えると、N1裏からG、H地区に向かう村道を使わせないことが重要になってくると思われます。また仮にFルートの途中から新たにH、Gへ通じるルートを開くとしたら、環境アセスが必要になるものと考えられ、この点も注意して確認していく必要があります。
(※既にG,H地区周辺の樹木伐採も行われている形跡があります)

N1、H、G位置図(辺野古浜通信より)

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さらに、住民が避難せざるをえないほどの、オスプレイの騒音被害について、実際にオスプレイの離発着の映像を再生して抗議。防衛省が自ら測定しているデータの提出を求めました。

2.環境省交渉…「人々のくらしと生態系を守るために、役割果たせ」

環境省交渉では、「住民が隣村に避難せざるをえないほどのオスプレイの騒音被害について環境省としても対応をとるべきでないかとただしました。
さらに、琉球大学環境建設工学部准教授の渡嘉敷健氏による測定図を手渡し、約2時間の間に28回ほど80デシベル以上の騒音が夜間も続いていることを指摘しました。

オスプレイ騒音

出典:オスプレイ 騒音データ 琉球大学工学部 環境建設工学科 准教授 渡嘉敷健

環境省からは、「防衛省などの関係省庁から情報収集を行うことに努める」という回答にとどまりました。
オスプレイなしで行われた防衛局の環境アセスに関しては、「沖縄県環境影響評価条例が適用されない中で、防衛省が自主的に行ったものなので、環境省としていちいち意見をいうことはできない」とのことでした。野生生物保護に関しても同様の回答でした。私たちからは、「住民の暮らしと、世界でも貴重な生態系を守るために、環境省はその役割を果たしてほしい」と要請しました。

3.警察庁交渉…「不偏不党且つ公平中正」?

まず高江に全国(警視庁、千葉県警、神奈川県警、愛知県警、大阪府警、福岡県警)から機動隊が派遣された経緯を聞きました。以下の回答がありました。

(1)7月12日付の沖縄県公安委員会から、各都府県の公安委員会宛ての派遣要請に基づき、派遣された。

(2)7月11日付の警察庁警備部から各警察本部宛てに通知がだされている。同じ7月11日に沖縄県警察本部から警察庁に対し、このような派遣要請をしたいという問合せがあり、それを流しただけ。派遣期間や派遣人数を決めたのは沖縄県警察本部である。同じ7月11日に沖縄防衛局から沖縄県警察本部に対して、警備の具体的な要請があり、それを受けての一連の対応。

(3)派遣人数や期間は警備状況が明らかになると業務に支障をきたすおそれがあり、明らかにできない。

(4)派遣費用については、給与は各都府県から、日当、宿泊費、交通費、車両の移送費などは国費による。千葉県で2800万円という数字が何を意味するか不明だが、国費の千葉県分かもしれない。

左:沖縄県公安委員会から、各県公安委員会宛ての派遣要請文書(平成28年7月12日付)
右:警察庁警備局警備課長から、関係管区警察局広域調整部長、警視庁警備部長、関係府県警察本部長宛ての文書「沖縄県警察への特別派遣について(通知)」(平成28年7月11日付)

警察庁・沖縄公安委員会からの文書

派遣人数や期間などを決めたのはあくまで沖縄県警察本部であり、警察庁は関与していないと一点張りでした。7月11日に沖縄防衛局から沖縄県警察本部に対して出されている警備要請の文書を開示させ、沖縄防衛局と沖縄県警察本部との間でどのようなやり取りがあったかを明らかにさせなければと思います。(防衛省は「ノグチゲラ営巣期が開ける7月には毎年警備の要請を行っている」としていますが、今年は例年とは明らかに異なるはずです)

続いて、高江での7月19日以降の、機動隊による検問、道路封鎖、抗議者に対する暴力によりけが人が発生している実態、人権侵害を伴う強制排除の法的根拠について、山本太郎議員の質問主意書に対する答弁書をもとに尋ねました。

交渉の場で警察庁が挙げていたのが警察法第2条第1項でした。検問については、警察職務法という法律に、条件などが具体的に記されているのに、それではなく、警察法第2条だというのです。
警察法第2条第一項はは以下のとおりです。

第二条 警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。

これは、警察の責務を一般に並べているだけで、どこをどうみても、検問や強制排除の根拠にはなりえません。
警察法第二条第2項には以下のように書いてあります。

2 警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。

これはまさに、高江で行わているような、警察の一般的な責務を盾に強制的な行為を行うような濫用はだめですよと言っている条文です。

交渉ではこれを読み上げ、憲法21条で保障された表現の自由を行使している抗議者の権利を著しく侵害しているではないかと指摘しました。

さらに、沖縄防衛局の工事に対し多くの人が反対し抗議に来ている中で、一方的に抗議者を排除して工事の遂行を手助けし、不偏不党でも公正中立でもなく、現場をさらに危険な状況にしているのは、警察の責務にも反するのではないかと指摘しました。

警察庁側は、「憲法で保障された人権には留意しなければならない」と回答しました。

現場から駆けつけた人から、警察による暴力行為、報道記者を長時間拘束し連絡がとれないようにする、公務執行妨害で逮捕するぞと脅したり、暴力ざたをでっちあげて逮捕するなど、さまざまな人権侵害行為について具体的に指摘があり、「警察法第2条を挙げるのなら、まずは個人の生命と身体を守ってほしい。機動隊はそれに反することをやっている」と指摘がありました。
警察庁は、現場での状況については、沖縄県警察にも確認をして把握に努めたいと述べました。

最後に、市民側から、警察庁として、現地で行われた暴力行為について把握を行うこと、また、全国からの機動隊をすぐに引き上げるようにと要請しました。

IWJによるハイライト映像(テントの撤去について、ほか)