気候危機解決、本当に必要なものは「システムチェンジ」

こんにちは。FoEでインターンをしている横浜国立大学の佐藤悠香です。

今回は、1月21日に行われたウェビナー「『私たちに必要なのはシステムチェンジだ』~斎藤幸平さんと考える、気候危機を生んだ世界像からの脱却後の世界像~」に参加報告です。
1時間半と短い時間でしたが、とても内容が濃く、個人的に刺さるものが多かった回でした。

このウェビナーではまず、大月書店の岩下さんからナオミ・クラインの著書『地球が燃えている』刊行記念として、この本の概要やナオミ・クラインが提唱するグリーンニューディールについてご説明いただきました。

気候変動を止めるための新しい社会のあり方「グリーンニューディール」とは、単なる環境政策ではなく、気候変動を格差や社会福祉の問題と結び付けて、包括的な解決策を提唱するものです。

ナオミ・クラインさんの著書『地球が燃えている』で詳しい説明がされていますので、みなさんもぜひ読んでみてください。

斎藤幸平さんからのお話:資本主義からの「脱却」

つぎに、斎藤幸平さんから「気候危機を生んだシステムからの脱却を」というテーマでお話いただきました。(投影資料はこちら

2020年は、今までどおりの「普通」が普通でなくなり、新しい「ニューノーマル」を考える転換点になりました。

しかし、ワクチンが広まり、コロナ危機の前の生活に戻ることが果たして本当に正しいのか。
私たちは破局への道を進んではいないか。改めて今の社会システムのあり方の再考が求められること、そして、コロナ危機と気候危機に直面する今だからこそ、新しい社会システムを求めていく「システムチェンジ」のタイミングにいることを強調されました。

この「システムチェンジ」というのは、単に電力システムとか交通システムの話ではなく、資本主義という経済・社会システムを抜本的に変えていくことを意味します。これは現在の社会を「スローダウン・スケールダウン」していくだけでは不十分で、新しいシステムを掲げる必要があるということです。

また、技術革新を頼り、今の生活水準を落とさずにEV車を普及させ、再エネへの転換を進めるだけでは圧倒的に不十分で根本的なところの解決にはなりません。

資本主義の下で進めるグリーンニューディールは、結局無限の経済成長を求めるだけで、自然と弱者からの収奪を強めてしまうのです。そして、これは結局グローバルな格差拡大につながってしまうことを指摘されました。

私たちは、成長主義とは決別し、抜本的なライフスタイルの転換を伴うグリーンニューディールを求めていく必要があります。

この別の社会のあり方を作り上げていくことは、オルタナティブな享楽主義(alternative hedonism)を求めていくチャンスでもあるといいます。現在のライフスタイルを続けることが本当に幸せなのか、そして、資本主義のもとで暮らす私たちの別の生き方・働き方を再考するきっかけになると、「資本主義からの脱却がもたらす新しい可能性」もお話くださいました。

気候正義(climate justice)とは

つづいて、FoE Japanの高橋さんから、気候変動アクションマップの紹介がありました。気候変動アクションマップは、今の社会システムがもたらしている日本が関係する環境破壊・人権侵害の問題についてまとめ描いたものです。

また、資本主義とも密接に関わり、気候危機解決に向けて最も大切であろう概念「気候正義(climate justice)」とは何か、そしてなぜ気候正義が重要なのかを、海外のFoEのメンバーの言葉を引用しながら説明していただきました。

気候変動は「単に科学や環境の問題ではない」
この言葉を聞いてすぐに意味が分かる方はどれほどいらっしゃるのでしょうか。

気候正義とは、気候変動を引き起こしてきた、自然や人間の搾取に基づく社会の仕組みを社会の公平性を実現する形で変えていくことです。

気候正義が何かを知ると、気候変動解決に向けた運動は、「自然を守りたい」「生物を傷つけたくない」人たちの運動ではないことが分かると思います。そして、気候不正義と資本主義は密接に関わっていることが分かると思います。

あくまでも先進国の豊かな生活を実現するための経済成長を続ける限り、その成長からこぼれ落ちる人々・成長実現のために踏みつぶされる人が大多数になります。そして、この経済活動のせいで生じてくる気候危機のツケまでも払わされるのが、CO2をほとんど排出していない途上国の人々です。

このような不正義と格差を目の前にして、私たちはもっと持続可能で公正な社会を求めていくべきではないでしょうか。こういう話をすると、規模が大きすぎて到底無理そうに聞こえるかもしれませんが、この不可能そうに聞こえることを実現しなければいけないほど、気候危機の中にいる私たちには時間がないのです。

変化を起こすのは市民である私たち

これに気が付くと、「マイ〇〇をもっておけばOK」という話では到底済まないことが分かります。個人のライフスタイルを環境に配慮したものに変えていくことはもちろん大切だけれど、消費者としての努力を求めるよりもそれ以上に市民が、

・本当に公正な政治的意思決定を求めていく

・グリーンウォッシュ企業に”NO”を突きつける

といった声を上げて生産のあり方を抜本的に変えていかない限りは、現在の自然破壊と弱者からの収奪が蔓延した社会は変わりません。

そして、FoE Japanの吉田さんから、FoE Japanの考えるシステムチェンジの原則について、ご紹介いただきました。

「国や企業ではなく市民が声を上げていかない限り、システムチェンジは実現できない。
政府や企業や大きな力を持つ人ではなく、私のような普通の市民が声を上げ続けることが実は一番大切で効果的」
というお話は、私自身としても、これからも声を上げ続けるモチベーションになりました。

また、齋藤さんも、「個人の変化」「政治の変化」「企業の変化」をセットで求め実行していくには、私たち一人一人の声とアクションが必要になるとおっしゃいました。

斎藤さんやFoE Japanのお話を聞くと、「現状を変えなくてはいけないことは分かったけれど私は何をすればいいの?」と思う方も多いと思います。

そのような方は、自らもアクションに参加することがネクストステップになります。NPO・NGO・政治活動・社会運動。世の中にはいろんな立場からすでに声を上げて活動している人がたくさんいます。

そんな人たちに話を聞きにいったり、支援をしたり、自分もその活動に加わることで人とのつながりを増やしていくことが重要なのではないでしょうか。

斎藤さんは、このアクションを起こすことのハードルの高さには二つあるとおっしゃっていました。一つは、アクションに対する心理的なハードル。二つ目は労働時間の長さによる時間的ハードルです。

斎藤さんによると、教育・医療・交通機関といった「コモン」を脱商品化し、みんなの共有財産にしてできるだけ安価にアクセスできるようになれば、賃労働に依存しない生活が維持できるようになります。そして、このように労働時間を減らすことで仕事以外のアクティビティに費やす時間を増やすことが可能になるのです。

私は、Fridays For Future Japanでの活動を通して、一つ目のハードル「アクションすることへの心理的ハードル」を下げていきたいと思っています。

同調圧力が強い日本社会でも、年齢や性別、人種に関わらず誰もがおかしいことは堂々と「おかしい」と言っていいこと、自分の声には価値があること、主張は持つだけでなくアクションを通じて示すことは最高にクールであることを特に同世代に伝えていきたいです。

本当の豊かさを見つける

今回のウェビナーを通じて、自分が特に意識せずに生活していた資本主義というシステムの中で、私たちは本当に必要のないものまで広告やメディアの影響を受け、「より早く、新しいものをたくさん」消費しようとしていたことに気が付きました。

資本主義から脱却するには、まず「足るを知る」こと。そして、物質に左右されない自分にとっての本当の幸せを見つめなおすことが大切です。

大量生産・大量消費ではなく、顔の見える消費をすること。地域への貢献を実感すること。このような暮らし方は単に、弱者とか地球環境とかだけだけでなく結局は自分自身の心の豊かさに繋がっていくのではないでしょうか。

スローダウンした社会のあり方は、今よりずっと公正で絶え間ない消費と労働からのプレッシャーから開放され、人々が心の余裕のある暮らし(働く以外の活動の領域が広がる生活)に繋がるのではないかと思います。

経済指標に左右されない「人間らしい」生活を大切にするには、今の社会でおかしいところを探してみる。興味を持つ。そして、自分で調べたりたくさんの人の声を聞きにいくこと。

そして、そこで得た情報や知識に満足するのではなく、次は自分が本当に実現したい社会のために行動して声を上げること。

このようなことが重要なのではないでしょうか。

水素やEV、アンモニア、自然エネルギーなどのイノベーションの前に、まず私たちが、資本主義の下で地球と弱者に負担をかけ続ける社会システムを見直さない限り何も根本的な解決にはなりません。

そのため、気候危機やグローバルな格差・貧困の解決には、個人のライフスタイルの変化は大前提であるものの、これだけでは実は全く足りてなくて、「国の政策と企業のあり方」をより公正で本当の意味で人々の心を豊かにする方向へいくように、私たち一人ひとりが市民の立場からプレッシャーをかけ続けることが重要です。

資本主義のような絶対に誰かをとりこぼすような社会システム、踏みつけられて泣き叫んでいるようなひとがいるシステムがおかしいと思うなら、レジ袋をもらうのをやめたりマイボトルを持つのだけでは到底十分ではなくて、この経済・産業システムの変革を求めてアクションをすることが大事だという斎藤さんとFoE Japanのみなさんから強いメッセージを受け取りました。

最後に

システムチェンジを求めて声を上げ続けること、そしてそれと同時に新しい社会の形成に向けて、「自分の人生には本当は何が必要なのか」という自分自身の考え方(生き方)を考え直すことが必要になります。

be the change you want to see in the world.
世の中で見たい変化があるならば、まずはその変化に自分がなること。

社会とともに、自分自身もこれまでとは違う「新しい豊かさ」を再考していきたいと思います。

(インターン・佐藤悠香)

*斉藤幸平さんの当日の投影資料はこちら

*FoE Japanの気候変動アクションマップの購入はこちら

*FoE Japanが考えるシステムチェンジの五原則「気候危機とコロナ禍からのシステム・チェンジを」はこちら

スタッフインタビュー:村上正子さん

日本の政府機関や企業は「開発支援」や「途上国支援」の名の下に海外で様々な事業を行っていますが、その中には人権侵害や環境破壊につながっているものも少なくありません。FoE Japanの「開発金融と環境チーム」は、日本の官民が関わる開発事業によって犠牲になる人が出ないよう調査提言活動を重ねてきました。村上正子さんは2004年から2007年までFoEの開発金融と環境プログラムに在籍し、ロシアの巨大石油・ガス開発事業に関するキャンペーンを担当。当時のお話や思いを聞きました。(聞き手:深草亜悠美、記事化にあたり話の順序や追加情報などは適宜追加・編集)

深草:自己紹介とFoEに入ったきっかけを教えてください。

村上:村上正子といいます。学生時代は自分が何をやりたいのかよく分からず、就職後も事務の仕事をしながら何かを探していたのを覚えています。両親が幼い頃に広島で被爆しているので、私は被爆二世なんです。迷っていた頃、アメリカ人のクエーカー教徒の女性が広島で立ち上げたワールド・フレンドシップ・センターという被爆者支援団体があるのですが、そこが被爆者とともにアメリカに「平和巡礼」にいくメンバーを募集していました。「平和のために何ができる?」というキャッチコピーにひかれ、広島と長崎の被爆者の方々とアメリカを3週間近く旅しました。1998年のことです。これが「核」の問題に向き合った最初で、現在の高木仁三郎市民科学基金の仕事にもつながっています。(注:高木仁三郎市民科学基金(高木基金)は、核・原子力利用への専門的批判に尽力した高木仁三郎(1938-2000)の遺志によって、現代の科学技術がもたらす問題や脅威に対して、科学的な考察に裏づけられた批判のできる「市民科学者」を育成・支援するため設立された)。

深草:なるほど。核の問題から始められているのですね。そこからどのようにNGO職員への道へと進まれたのでしょうか。

村上:そうですね。この旅では、受け入れ側である米国の「市民活動」にとても感銘を受けました。彼らは広島・長崎での被爆の証言活動をコーディネートしてくれたわけですが、小学校から大学、教会、市役所、議会までいたるところで誰からも好意的かつ対等に受け入れられました。アメリカでは市民活動が社会にしっかり根づいていると実感し、自分もその中に飛び込んでみたくなり、2年半ほど米国のNPOでボランティア活動に従事しました。

 最初はテキサス州でホームレスシェルターに住み込み、給仕やホームレスと一緒に生活しながらのボランティア活動。そこで出会う人々からは非暴力不服従運動から貧困をもたらす構造問題など、様々な刺激を受け、社会を根本的に変えるには政治に働きかける必要があると思い、中央政府があってNGOも集まっているワシントンDCに移りました。ワシントンDCでは、先進国と途上国間の経済格差の問題(いわゆる南北問題)に取り組む団体、センター・フォー・エコノミック・ジャスティスで、世界銀行の様々な問題(途上国での構造調整、債務の問題、環境・社会影響の深刻な開発)に取り組むグローバルサウスの市民に連帯する活動のひとつとして、世銀の債権ボイコット運動に取り組みました。(http://www.econjustice.net/wbbb/、今は閉鎖)。その頃、FoEの開発金融と環境プログラムのディレクター(当時)だった松本郁子さんに会い、そのご縁でFoEに入ることになりました。

深草:FoEにいらっしゃった当時、ロシアの巨大ガス開発に関するキャンペーンに携わっていたと聞いています。どんなプロジェクトでしたか?

村上:FoEに入ってすぐに担当となったのが、サハリン2石油・天然ガス開発です。サハリンは、生物多様性豊かな寒冷地の島です。この事業は絶滅危惧種のニシコククジラの唯一の餌場付近に掘削リグを設置したり、島の北東部からサケの遡上する河川を含む1000本以上の河川をパイプラインで横断したり、南部のアニワ湾という浅瀬の生態系豊かな湾岸にプラントと港湾施設をつくり、石油と天然ガスをタンカーで輸送するという大規模なものでした。

写真:2005年12月、サハリン北東部ナビリ湾で先住民族の漁師の人たちと

 開発企業には日本企業(三井物産・三菱商事)が入り、公的融資機関として欧州復興開発銀行(EBRD)などとともに国際協力銀行(JBIC)が融資を検討していました。石油やガスの大半が日本に輸出されるといった日本の開発側での関与の他に、タンカーからの油流出事故による北海道の沿岸地域や漁業への影響、日本との間を行き来する渡り鳥や海洋生物の生息地への開発影響など、日本自体が影響を受ける側にもなるプロジェクトということで、FoE Japanは現地や海外のNGOと協力して行う国際キャンペーンと同時に、北海道の漁業者や油防除の専門家、野生生物の研究者やNPOと協力して行う国内キャンペーンの二つの運動を展開しました。1997年のナホトカ号の油流出事故の記憶も新しい頃だったので、日本でもサハリン開発の危険性がリアルに受けとめられていたのだと思います。

そういえば、漁業者の意見を聞きたくて、北海道のオホーツク海沿岸の漁協を端から順に訪ねて行ったこともありました。みなさん情報を必要としているけれど、ロシアの情報はほとんど入らない。FoE Japanはロシア語から英語になった情報を日本語に訳して伝えることができたので、突然の訪問でも歓迎されたのを覚えています。

深草:ロシア語の情報も翻訳して伝えていたんですね。どのようなところに一番苦労しましたか?

村上:活動で苦労したのは、どのキャンペーンも様々な団体や専門家が関わっていて、両方のコーディネートをするのが大変だったこと、また、私自身思いはあるものの、アドボカシー(政策提言)活動を行うに足る知識も経験もなかったため、霞が関用語(官僚が使う言葉)などもさっぱりわからず、次にどのような手を打つのかといった戦略も立てられず、とにかく未熟だったことでしょうか。ただその分、国内外のキャンペーンに関わった方々からいろんなことを教えてもらったことが今の自分の財産ですね

深草:アドボカシーといえば、今も石炭火力や様々な開発案件でJBICとやり取りすることがあります。サハリン2については、JBICでステークホルダーとの意見交換会が行われるなど、今とは少し違う対応が見られたようですが、どんな経緯だったのですか?

村上:ステークホルダーを広く集めてのJBICとの意見交換の場(環境関連フォーラム)が実施できたのは、JBICが2003年に施行された環境社会配慮ガイドラインを策定する過程で、JBIC内にもステークホルダーの意見を聞くことがグローバルスタンダードだという認識ができつつあったことが背景にあると思います。また、日本に影響がある開発だったので、JBICとしてもこうした場を通して、海上保安庁などを巻き込んで、必要な体制を構築する流れをつくりたかったのかもしれません。ただ、開発による環境社会問題が大きすぎて、そこまで議論が及ばず、ただかみ合わない場になりました。JBICはとにかく早く切り上げたい、NGO側は説明責任を果たせとなり…。すぐに公開されるはずだった環境影響評価(EIA)の補遺版が出ず、融資審査も長引き、結局13回(東京と札幌合わせて)も開催されました。せっかくの場でしたが、ステークホルダーとの対話という面で、後につながるものにならなかったことは心残りです。

 結局、サハリン2第二期工事期間中、次々と開発問題が明るみとなり、それも一要因となって、公的資金の融資を検討していた欧州復興開発銀行と米・英の公的機関が融資から撤退しました。しかしJBICは融資要請から5年後の2008年に37億ドルの融資を実施。日本が国際的な環境NGOから「金融機関が最低限の環境・社会政策を維持するために行ってきた努力を著しく傷つける決定だ」と強く批判されたプロジェクトとなりました。キャンペーンに日本側で関わった者としては、敗北感を感じました。ちょうど中国などの新興国の国外での開発問題が懸念され始めていた頃だったのですが、「日本はアジアで環境面でのリーダーにはなれない」ことを実感した瞬間でした。

深草:私たちは今でも同じような構造の問題に取り組んでいると思うのですが、今と昔、違いはあるでしょうか。

村上:私がFoEに勤務していた頃(2004~2007)は、日本の国際金融機関への拠出金も多く、国際的な環境問題において、よくも悪くもそれなりの存在感や影響力があったように思います。でも今はグローバル社会のプレーヤーが大きく変わり、かつての先進国がOECDなどの枠組みなどを通して作り上げてきた環境基準や行動規範が通用しなくなっているのではないかと思います。日本は特に原発事故以降、国内で抱えている問題が深刻過ぎて、グローバルな視点で物事を見るのがますます難しくなっている一方で、IT、AIなどの技術もあいまって、世界はどんどん小さく密になっているように感じます。国際環境NGOとしても、活動の焦点を絞るのはとても難しい時代だと思います。

深草:今の時代、どのような活動が可能なのか、もしくは求められているのだと思いますか?

村上:これまでのどおりの経済活動(ビジネス)をしていたら、もはや自然環境は守れず、野生生物はおろか人類、つまりは地球上の生物の存続の危機に直面しているという認識は必要だと思います。しかしその分、新しい生き方、生活のあり方、人と自然の関係性をつくりだしてゆける「転換の時代」にきているとも思います。過去の常識や、既存の法律や制度などにしばられず、あたらしい発想を持つ若者が、クリエイティブで挑戦的かつ根源的な活動をし、大人・シニアはそれを支えていければいいなと思います。

深草:FoE40周年を受けて何かメッセージはありますか?

村上:FoEの活動をいつもまぶしく見ています。いま、FoEで若手が育っていることにも期待しています。FoEは以前から被害者に寄り添った活動をしていて、その知見や経験が福島原発事故の対応でも活かされたと思っています。FoEの活動をみて、自分もその一部に関われたことをうれしく思うし、これからもともにがんばりたいと思います。

深草:ありがとうございました。

サハリンⅡ石油・天然ガス開発
サハリンの北東部の2鉱床で、オホーツク海の海底に埋蔵する石油とガスを掘削し、800kmに及ぶパイプラインを通してサハリン南部まで運ぶ事業。輸出先は日本向けが約6割、その他に韓国や米国など。1999年から夏季の原油生産を開始し(フェーズ1)、2008年12月には石油の通年生産、2009年春にはガスの生産が開始された(フェーズ2)。

リニア送電線のために樹齢300年のブナの大木が伐採危機!

樹齢300年以上のブナの木
『あわのうた』・・・若いお母さん達の思いを聴いてください

長野県大鹿村で、リニア中央新幹線に電力を送るために4.1kmの高圧電線と高さ80mもの9基の鉄塔を建てるための山林の伐採工事が始まりました。(※1)

鉄塔1基あたり約 1,000~3,000m2の樹木が伐採されます。伐採対象地には2本の樹齢約300年もの巨木が立っています。中部電力によると、周辺一帯の脆弱な地盤の中、僅かな強い地盤の場所を選んでいるため、ブナの木を避けることが困難ということです。

ブナのある森は、地下水を蓄え、生き物の住みかとなり、地盤を強化することで災害を防ぎ、麓の畜産農家にも多くの自然の恩恵をもたらしてきました。ブナ伐採を知った住民達は、「堪忍袋の緒が切れる」「納得できないことばかり進む」「暮らしが破綻させられていく」と憤りの思いを語ります。リニア推進の立場を取る大鹿村では、リニアに関連する問題に疑問や反対の意見を出すと、村内では「こんなことしたら(村への)反乱だよ」と言われます。本当は疑問を持っていても、声を上げることが出来ない人もたくさんいるようです。それでも「ブナを守ろう!」と住民たち30人ほどが立ち上がり、中部電力に要請書を提出し、署名運動を始めました。

大鹿村では、2016年11月、住民を無視した形でリニア中央新幹線の起工式が行われ、その後、リニアのための工事が村内あちこちで進められています。そしてすでに多くの環境影響が生じているのです。着工翌年の2017年末にはリニア工事が原因でトンネル崩落事故が起こり、住民が村外に往来するための生命線でもある道路が封鎖される事態が起こりました。また、この年に始まった釜沢非常口付近のダイナマイト発破では、住民が地響きを感じるほどの振動や音が集落を襲いました。大量の残土が積み上げられ、集落からの景色も一変しました。猛禽類を見なくなったとの声もあります。交通にも影響が生じています。環境影響評価によると、大鹿村を往来するリニアのトラックの数は1日最大1736台。生活道路である山道は一般車でもすれ違うことすら困難な場所が多くあります。前述の釜沢集落や青木川工区では、トンネルが地下水系・河川の下を通ることから、水源の枯渇や水量の減少が心配されています。

そして、工事は計画通りに進んだとしても、10年間も続きます。さらに生態系や水量に影響が出れば、住民の苦しみは10年でも終わらないのです。

今年7月、南信州を襲った大雨の影響により、釜沢集落へ続く道とリニアの工事現場に向かう道路が地滑り、大陥没が発生しました。トンネル非常口付近、残土置き場周辺も甚大な被害を受けており、工事は当面休止となります。

そのような状況の中で始まった送電線のための伐採工事です。村内の工事も目処が立たない状況、そして静岡では水問題で着工も出来ていない今、300年もこの地を守ってきた巨木を伐らなければならないのかと、住民の方々は疑問の声をあげたのです。8月17日の伐採開始日、中部電力に伐採中止を求めて217筆の署名を提出、現場ではアクションを行いました。住民の働きかけにより、ブナの木2本は環境省の日本の巨木に登録されることになりました。中部電力も、当初今年10月頃伐採予定だったブナの木自体の伐採は来年の7月まで延期すると伝えてきました。近くで牧場を営む土屋道子さんは「最初の一歩を踏み出しただけ。これからもみんなと一緒に運動を続ける。」と話します。伐採を先延ばしにするだけでなく、伐採計画そのものを中止させる必要があります。

大鹿村内だけでなく、全国に署名の協力を呼びかけています。署名、拡散にご協力ください。

オンライン署名 

※第2次集計:9月27日締切り、第3次集計:10月25日締切り

 ※1)送電線概要
区間下伊那変電所~JR東海小渋川変電所
電圧・回線数15万4千V・3回線
距離11.3km(内大鹿村4.1km)
鉄塔30基(内大鹿村9基)

関連:動画「リニアという夢と現実~長野県大鹿村~」

   動画「20190630リニア工事の現場~大鹿村からの報告」

国交省の公平性に欠けたリニア準備工事提案 撤回を求めよう!

IMAG2555~3(写真:山梨実験線)

リニア静岡工区を巡り、大井川の減水を懸念する静岡県と準備工事の早期着工を求めるJR東海の話し合いが膠着状態の中、7月9日付けで国交省が双方に対して「提案」を発表しました。

以下国交省HPから:
「水資源・自然環境への影響の回避・軽減とリニア中央新幹線の早期実現を両立させることが重要であることについて、累次にわたり、静岡県、JR東海とも認識の共有を確認してきたところです。この共通認識の下、国土交通省より、静岡県及びJR東海に対し、大井川の水資源及び自然環境への影響が軽微であると認められる範囲内で、国の有識者会議の議論等と並行して、速やかに坑口の整備等を進めることを提案いたしました。」

国交省提案:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001352937.pdf
報道発表資料:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001352938.pdf

提案:

1.JR東海は、国の有識者会議における議論等、必要な検討・手続きが終わるまで、 トンネル掘削工事に着手しない。

2.静岡県は、坑口等整備の速やかな実施を容認するものとし、7月の早い時期を目途に、必要な手続きを進める。

3.JR東海は記2.の必要な手続きの終了後、坑口等整備を行うが、その際、国の有識者会議の今後の議論等の結果、坑口の位置、濁水処理施設等に変更が必要になった場合には、当該変更を行うことを前提とする

 

トンネル工事等の本体工事に関しては有識者会議の結論を待つとありますが、本体工事のための準備工事(宿舎建設やヤード建設等)を一刻も早く始めたいというJR東海の意向を十二分に汲んだ提案となっています。
本来、国は中立の立場であるべきですが、国交省自らが設置した有識者会議の結論すら出ていない段階にも関わらず、事業有りきの提案を行い、また、有識者会議の結論により計画変更もあるという先の読めない工事の早期着手を促す等、無責任極まりない提案です。

一方、このところの大雨により、リニア工事のための作業用道路等が土砂崩落の影響を受けており復旧の見通しもたたないとの報道もあります。
国交省にとっては流域住民、そして現場の作業員の安全よりも、2027年開業がそれほど重要なのでしょうか。

本日7月10日17:00~国交省が静岡県に提案の説明を行います。
YouTubeの静岡県チャンネル「shizuokapref」または、静岡県のホームページ「ふじのくにネットテレビ」により、リアルタイムで配信予定です。

国交省に公平性に欠けた無責任な提案の撤回を求める声を送りましょう!

FoE Japanの参加するリニア新幹線沿線住民ネットワークでは、国交省に提案撤回を求めるアクションを呼びかけています。
提案撤回を求める声は、以下のFAXやオンラインフォームにて送付することが出来ます。
また、下記に上記住民ネットワーク事務局の参考文例です。

送付先:
国土交通省あて FAX番号 03-5253-1634
静岡県知事室充て 〃   054-254-4032
※静岡県宛てにも激励や国交省に撤回を求める声を届けた旨を添えてコピーを送りましょう。

国交省の「国土交通ホットラインステーション」の「鉄道関係」の「1.新幹線」の意見募集のフォームから意見提出できます。
(※1000字以内)
https://www1.mlit.go.jp:8088/hotline/cgi-bin/u_hotline08011.cgi

リニア新幹線沿線住民ネットワーク参考文例〉—————————————————————
国土交通省鉄道局長殿
国交省は静岡県、JR東海に対する提案を撤回し、
静岡工区有識者会議の審議を冷静に見守るよう求めます

国土交通省は7月9日、リニア中央新幹線の静岡工区の準備工事を認める趣旨の提案を静岡県とJR東海に提示しました。
基本は明らかに、JR東海の早期着工意図を勘案したもので、トンネル本体工事と準備工事は一体なものとして工事着工を認めないとする静岡県の意志を覆そうとするものです。
国交省による静岡工区有識者会議の趣旨について、静岡県は国交省がJR東海に対し指導的な役割を果たすよう期待していると伝えられています。
静岡県知事は先月下旬のJR東海社長とのトップ会談で、準備工事は本体工事と同じものであり、6月中の着工を認めない姿勢を示しました。本来ならば少なくとも中立的な行司役を務めるべき国交省が、JR東海による早期着工をあと押しすることは、静岡県民の意志を曲げるものであり許せません。
静岡県知事が示している有職者会議の結論を待ち、静岡県の同意が得られれば協定を結び着工を図るべきだと考えます。準備工事を済ませればそれを既成事実として位置づけ、本体工事につなげるという進め方は、沿線各地でJR東海が実施しているやり方です。
静岡県内だけでなく沿線各地でリニア中央新幹線の工事が大幅に遅れています。残念ながら、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、岐阜県、愛知県は知事がリニア中央新幹線期成同盟会の会長となり、工事や供用についての沿線住民の不安や疑問を取り上げることなくJR東海の事業推進を後押ししています。
静岡県知事はリニア中央新幹線の実現には反対ではないと明言していますが、それには大井川水系の水問題解決と南アルプスの自然環境の保全が必須条件となっていることと推察します。
このような状況にあっても、工事の手続き的な整理や区分が今先決だという国交省の考え方は、県民の命と貴重な自然を必死に守ろうとしている静岡県の姿勢を甘く見ているとしか言えません。
私たちは国土交通省の提案を撤回するよう強く求めます。

2020年7月10日
飯田リニアを考える会の参考文もこちらにあります。
http://www.nolineariida.sakura.ne.jp/2020-07/2020-0709.html

 

関連:7/11 19:00~【オンラインセミナーのご案内 ~ FoE現地報告会シリーズ4】リニアは止められる?~「大井川」をめぐる静岡県とJR東海の対立とは

環境と人権のためにたたかったFoEインドネシアの活動家、命を落とす - 徹底的な調査と人権保護を

今月6日、インドネシア最大の環境団体、FoEインドネシア(WALHI:インドネシア環境フォーラム)北スマトラ支部のメンバーであったゴルフリッド・シレガール(Golfrid Siregar)が亡くなりました。34歳の若さでした。ゴルフリッドの冥福を祈るとともに、全ての環境・人権活動家の安全が確保されることを切に望みます。

 ゴルフリッドは、10月3日木曜日の早朝、重度の頭部外傷のため、非常に危険な状態で発見され、6日に搬送先の病院で息を引きとりました。現地警察は死因は事故であったとしていますが、損傷は頭部のみで身体は無傷であったこと、彼の所持品が消えていること、彼のバイクは損傷が少なかったことなど、不可解な点も多いため、活動家を狙った暗殺の可能性も非常に高く、WALHIを含む市民団体、およびFoEアジア太平洋グループは、インドネシア政府に対し、迅速かつ透明性の確保された形で彼の死因を調査するよう声明を発出しました。

 ゴルフリッドは様々な環境や人権の保護、特に北スマトラでの活動に人生を捧げました。プランテーション、違法伐採、水力発電ダム、砂採掘会社に対して提訴した漁民への支援など、企業により被害を受けたコミュニティ支援に精力的に取り組んでいました。


 インドネシアでは、環境や人権を守り活動する人々の命が常に危険にさらされています。FoE Japanがともに活動するインドネシア・インドラマユで石炭火力発電事業に反対する農民たちも、一時弾圧としか思えない理由で投獄されました(http://www.foejapan.org/aid/jbic02/indramayu/180924.html)。日本もまったく無関係ではないのです。また、インドネシアだけでなく、世界各地で活動家の人権侵害や生命への脅威が増しており、英国の人権監視団体グローバル・ウィットネスの今年の報告によると、2018年には週に3人のペースで活動家が殺害されています(https://www.globalwitness.org/en/campaigns/environmental-activists/enemies-state/)。

 今日、環境を守るために活動するということは旧来の自然保護の枠を超え、多くの国や地域で強権的な政府や大企業などの既得権益に対し土地や地域社会の権利、人権を守ろうと志す多くの人々の命を賭けた活動となっています。国連の人権擁護者に関する特別報告者のレポートは、問題の背景として、資本主義社会における資源収奪や、市民社会ではなく企業に多くの力が集中したり、本来規制導入を議論・実施すべきはずの政府が企業優遇の姿勢を見せているなどの要因をあげています(https://www.protecting-defenders.org/sites/protecting-defenders.org/files/environmentaldefenders_0.pdf)。

FoEアジア太平洋による声明はこちら(英語)
https://foeasiapacific.org/2019/10/11/friends-of-the-earth-asia-pacific-demands-a-thorough-investigation-into-the-death-of-activist-golfrid-siregar/

市民団体の連合による共同声明は下記(英語原文は翻訳版の下部に記載)

共同声明

ゴルフリッド・シレガールの死に関する徹底調査を

ジャカルタ:人権擁護活動家のための市民社会連合は、WALHI(FoE インドネシア)北スマトラの活動家でもあった環境保護活動家・人権擁護活動家のゴルフリッド・シレガールの死に関し、迅速で透明性の確保された、かつ、実効性のある独立調査を実施するようインドネシア政府に強く要請する。ゴルフリッドは2019年10月3日木曜日の未明、頭蓋の重度の頭部外傷のため、非常に危険な状態で発見された。ゴルフリッドは搬送先の病院で10月6日の日曜日に息を引き取った。

私たちは、警察が、ゴルフリッドの死因が交通事故によるものだと拙速に判断を下したことを遺憾に思っている。彼の死には、(交通事故が死因であると判断するには)多くの不審な点が残っていると考える。例えば、事故の発生現場が不明である。当初、彼の家族は、ジャミン・ギンティングの高架道路で事故が発生したという情報を治安部隊から入手していた。その後、故の発生現場はティティック・クニングの高架下であったと変更された。ゴルフリッドの死は、交通事故が原因ではなく、暴力が原因で死亡したのではないかと疑われる。さらに、マルク州の先住民族の活動家であるヨハネス・バルブンのケースでも、2016年に事故で死亡したと警察が主張した。一方、今年初めにWALHI西ヌサ・トゥンガラ支部の事務局長ムルダニが暗殺未遂事件にあったことも明らかにされていない。

インドネシアやその他の国で発生した、死亡や殺人未遂につながるあらゆる暴力事件と同様に、社会・環境に係る権利のために闘う環境・人権擁護活動家の活動と、住む場所・生計手段の喪失や環境被害といった企業による破壊行為の脅威とを切り離すことはできない。人権団体からの様々な報告によると、環境・人権擁護活動家は、人権侵害の事例や深刻な環境被害を明らかにするために活動している一方で、襲撃や脅威に対して非常に脆弱である。

ゴルフリッドは特に北スマトラにおいて、様々な環境保護活動や人道的活動に人生を捧げた。ゴルフリッドとWALHI北スマトラの仲間が行った様々なアドボカシー活動の中には、シアンタールにあるMitra Beton社の活動により被害を受けたコミュニティへの支援、リンガ・ムダでの森林への不法侵入や違法伐採問題におけるコミュニティへの支援、ラブビーチでの砂採掘会社に対する訴訟のための漁民への支援、そして、NSHE社に対する環境許認可を発行した北スマトラ州知事に対する訴訟のWALHI弁護団のリーダーとしての役割、また環境アセスメントにおける署名偽装に関する調査を中止した北スマトラ州警察の警察官をジャカルタの警察本部に報告したことなどが含まれている。

環境保護活動家や人権擁護活動家の殺害につながる暴挙はこれまでも発生しており、増加している。インドネシアでは、インドラ・プラニ、サリム・カンチル、ヨハネス・バルブン、ポロドゥカが殺害されてきたが、今、ゴルフリッド・シレガールがまた殺害された。同様に、西ヌサ・トゥンガラ州でムルダニが放火により暗殺未遂にあっている。

今回の事件を受けて、環境と人権の擁護者であるゴルフリッドの正義と家族のために、そしてすべての人々の正義のために、私たちは以下を強く要求する:

  1. 1998年12月9日に国連で採択された人権擁護活動家に関する宣言の第9条 (5)に述べられているように、国は、調査を迅速かつ公正に実施し、又はその管轄地域内で人権及び自由の侵害が生じたと信ずるに足りる合理的な根拠がある場合に確実に調査を実施しなくてはならない。
  2. 警察官は、法の執行プロセスの説明責任を果たすため、開かれた形で、ゴルフリッドの死を徹底的に調査すべき。また、北スマトラ州警察には利益相反が存在することから、この事件の処理は警察本部に引き継がれるべきである。
  3. 環境と人権の擁護者に関わる事件であるため、国家人権委員会は直ちに事実調査の独立チームを結成すべき
  4. その緊急性に鑑み、これ以上の冤罪や死につながる暴力が起きないよう、国に対し、環境及び人権の擁護者の保護を確保するための政策(大統領令)を直ちに発出することを求める。
  5. 政府は直ちに人々の命と生態系の持続可能性の保護を主要な前提条件とする開発プログラムを立案し、実施すべき。開発のために、人々の生命と生態系を危機に晒してはいけない。

また、私たちは一般の市民に対しても、ゴルフリッド・シレガールの死に関する法の執行プロセスが適切に実施されるよう、共に監視するよう求める。将来、人々の権利や環境のためにたたかう人々の命がこれ以上奪われないことを切に願う。

Joint Statement of Civil Society Coalition

Investigate Throroughly the Demise of Activist Golfrid Siregar

Present the State to Protect Human Rights Defenders

Jakarta—The Civil Society Coalition for Human Rights Defenders urges the state to conduct an immediate, open, effective and independent investigation related to the demise of environmental and human rights defenders, Golfrid Siregar, SH, who was also an activist from Wahana Lingkungan Hidup Indonesia in North Sumatra (WALHI Sumut). Golfrid was found early on Thursday October 3, 2019 in a very critical condition due to severe head injuries in his cranium. Golfrid was the brought to hospital, until he breathed his last on Sunday, October 6.

The Coalition regrets the Police’s attitude to hastily state the cause of late Golfrid’s demise was due to a traffic accident. The Coalition considers that there are a number of irregularities found from his death. For example, unclear location of the incident (TKP). Initially, the family obtained information from the security forces that the incident happened at Jamin Ginting flyover. Then, the TKP changed underpass Titik Kuning. We suspect that the late Golfid’s demise was not because of a traffic accident however caused by violence that resulted in death. Moreover, the case of Yohanes Balubun, an activist for Indigenous People in Maluku, whose death in 2016 was claimed by the police as a result of an accident. Meanwhile, in West Nusa Tenggara (NTB), an attempt to assassinate WALHI West Nusa Tenggara Executive Director Murdani earlier this year has also not been revealed.

As any other violence cases that lead in demise or attempted murder that happened in Indonesia and other countries, it cannot be separated from the activities of environmental and human rights defenders who fight for the rights of society and environment from threats of destructions by corporations, such as the loss of residential, livelihood, and environmental damage. Various reports from human rights organizations show that environmental and human rights defenders are very vulnerable to attacks/threats while working to expose human rights violations cases and serious environmental damage. 

In the spanning of his life, Golfrid dedicated his life for various environmental advocacy works and humanity, especially in North Sumatra. Various advocacy works carried out by Golfrid and friends in WALHI North Sumatra, amongst other are assisting impacted local community due to the activities of PT. Mitra Beton in Siantar, assisting local community in Lingga Muda from forest encroachment and illegal logging, assisting fishermen in Labu Beach for the lawsuit against sand mining company, and lastly serving as the lead of WALHI legal team of the lawsuit against  Governor of North Sumatra for issuing environmental permits with defendant of PT. NSHE, as well as reporting the police officers in North Sumatra Regional Police (POLDA Sumut) who stopped the investigation of forged signature case in AMDAL to Police Headquarters (Mabes POLRI) in Jakarta. 

The violence that lead to death experienced by environmental and Human Rights Defenders has long happened and been increasing, Indra Pelani, Salim Kancil, Yohanes Balubun, Poroduka, and now Golfrid Siregar, as well as the attempted murder of arson experienced by Murdani in West Nusa Tenggara. 

From the incident experienced by environmental and human rights defender, Golfrid Siregar, for the sake of Golfrid’s justice and his family, and for the sake of everyone’s justice, we urge:

  1. The State must conduct investigation immediately and impartial or ensure that an investigation is conducted in reasonable grounds to believe that violation of human rights and freedom has occurred in its jurisdiction. As stated in Article 9 (5) Declaration of Human Rights Defenders passed by the United Nation on December 9, 1998;
  2. Police officers to thoroughly investigate the demise of Golfrid Siregar, openly to the public to ensure the accountability of law enforcement process. Given the existence of conflict of conflict interest in North Sumatra Regional Office (POLDA Sumut), therefore we urge the handling of this case to be taken over by Police Headquarters (Mabes POLRI);
  3. The National Commission for Human Rights (Komnas HAM) to immediately form fact-finding independent team, because this case was experienced by environmental and human rights defender;
  4. Given its urgency, we also urge the state to immediately issue policies (Presidential Regulation) that ensure the protection for environmental and human rights defenders. Therefore, there won’t be any criminalization and violence act that lead to death;
  5. Government to immediately draft policies and carry the development programs that put protection towards people’s rights to life and ecological sustainability as the main prerequisites. Therefore, for the sake of development, it doesn’t put in line the people life threaten and ecological disaster.

We also invite public in general to jointly guard the law enforcement process towards the death of Golfrid Siregar. In hope in the future there won’t be any live taken for fighting the rights of the people and environment.  

For further information please reach: 

Jakarta, October 10 2019

Human Rights Defenders Coalition

Wahana Lingkungan Hidup Indonesia (WALHI) – KontraS – Amnesty International Indonesia – Human Rights Watch – Yayasan Perlindungan Insani, Greenpeace Indonesia –YLBHI – ELSAM – Kemitraan – Imparsial – KRuHA, LBH Pers – HuMa – JATAM – HRWG – Solidaritas Perempuan

  1. Zenzi Suhadi, Eksekutif Nasional WALHI

Email: zenzi.walhi@gmail.com

  • Papang Hidayat, Amnesty International Indonesia. 

Email: papang.hidayat@amnesty.id

  • Ainul Yaqin, Yayasan Perlindungan Insani

Email: ainulyaqin@protonmail.com

  • Asep Komarudin, Greenpeace Indonesia

Email: akomarud@greenpeace.org

  • Yati Andriyani, Komisi untuk Orang Hilang dan Korban Tindak Kekerasan (KontraS)

Email: yatiandriyani@kontras.org

リニア工事の実態~大鹿村釜沢集落

長野県大鹿村釜沢。標高1000mにある鎌倉時代から続く自然と共生する美しい集落です。畑の脇を人一人通るのがやっとの細い急な坂道を息を切らしながら家にたどり着くと、昔ながらの古民家が出迎えてくれます。自分で手直ししながら大切に使う家、近くの森で取れる薪、斜面の小さな野菜畑。住民達がこの土地を愛し、ここでの暮らしを大切にして生きていることがうかがい知れます。利便性や利益の追求からは得られない豊かさを求め、この集落では県外などから移り住んで来た人々が少なくありません。

静寂と自然の音、人々の丁寧な暮らしから育まれる音のみが存在してきた釜沢集落に、2008年からリニア中央新幹線のトンネル工事のためのボーリング調査が始まり、その後の24時間ボーリング工事の騒音被害を受けて集落を離れて行く人々も出てきました。2017年末にはダイナマイトの発破が始まり、「ドーン」という住民が地震か、雷かと思うほどの振動と騒音が起こりました。これが昼夜を問わず続く中、元々脆弱な地盤の集落内では、落石や石垣の崩壊、コンクリートのひび割れ、雨漏りなどが生じました。しかしリニア工事との因果関係は認めらませんでした。「村の他の集落の人からは、そんなところに住んでいるやつが悪いと言われることもあります。でも、そんなところで発破作業すること自体がどうなのか」と、釜沢集落の前自治会長の谷口昇さんは憤ります。

現在、釜沢にはまた別の音が生じています。トンネル工事から排出される残土を積み重ねる鎮圧する音が響きます。かつて人工物がほとんど見えることのなかった集落の景色の中に、積み重ねられる残土の山、工事現場が見えます。JR東海は南信の自治体各地で発生土置き場受け入れの交渉をしていますが、現在までに長野県内のリニアトンネル工事から発生する970万立米の残土の行き場はほとんど決まってなく、行き場のない土は釜沢にも仮置きされています。田畑が残土で埋め尽くされていく中、いつまで「仮置き」されるのか住民の不安は募ります。住民の内田ボブさんは、以前は上空を飛んでいた「クマタカやイヌワシが見えなくなった」と心配します。谷間に発破音や工事音が響くここ2年ほどの間に生態系も変わってしまった可能性があります。

大鹿村では、リニア工事の影響は釜沢集落の問題だけではありません。2017年には、トンネル掘削の発破が原因で土砂崩落が起こり、大鹿村と村外をつなぐ重要な生活道路が寸断されました。大鹿村にはコンビニもスーパーもないことから、多くの住民は日々の買い物や医療機関受診、通勤等のために村外に通っています。代替ルートとされたのは、両側を崖に挟まれた離合の難しい細い道路。道路が凍結する時期でもあり、高齢者や運転に自信のない方は実質的に陸の孤島に閉じ込められた形になりました。

リニア工事の影響は物理的な影響だけではありません。JR東海が一方的に定めたルールによって、住民説明会から村のリニア対策委員である住民の同席を拒否したり、住民に十分な説明もせず、住民が納得していないまま「理解が得られた」ことになって進められていたりと住民の意思を尊重する姿勢は見られません。リニア工事による道路改良や道の駅の建設等の懐柔策とも取れる事業が持ち込まれることで、地域内に対立や分断も生じています。

これから本格的に工事が始まる青木地区。残土運搬や青木川の水量への影響が懸念されています。青木地区に実家のある紺野 香糸さんは、「山梨を見に行ったとき、本当にこんな風になっちゃうんだって思ったけれど、やっぱり実際自分の村もこんな風になってきちゃったんだって思う」と話します。「始まってしまったから諦めるしかないというのは違う。本当に長いものが始まってしまったから、それに向けて住民がどう感じていたり、どういう影響を受けるのか、私たちは知っておかなければならない。」

明日、6月30日(日)、大鹿村のリニア工事の実態について、都内でリニアの走る大田区で報告会を開催します。ぜひ住民の生の声を聞いてください。沿線では未だ工事が始まっていない場所も、土地収用が進んでいない場所も少なくありません。すでに工事が始まっている地域で何が起きているかを知ることで、今後の開発を止めることも可能かもしれません。

http://www.foejapan.org/aid/doc/evt_190630.html

山林から恩恵を受けているということ~鴨川市田原地区メガソーラー計画を取材して

○再生可能エネルギーと開発

福島原発事故以来、原発への依存度を下げるべく、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の割合を増やすことが決定されました。固定価格買取制度もあいまって、国内では大規模な開発を必要とするメガソーラーの建設が多く計画されています。

再エネの普及は、気候変動の原因である温室効果ガスを減らすための有効な手段でもあります。しかし現在、再エネの名の下に森林を伐採し、環境を破壊するような開発事例(以下、乱開発)が見られるようになってきました。

FoE Japanは、再エネの普及の名の下で山林を破壊することは、生物多様性の保全の観点から、また、気候変動の観点からも、森林は温室効果ガスの吸収に重要な役割を果たすため看過できないものであると考え、再エネによる乱開発の現場の取材を始めています。(FoE Japanでは北杜市も訪問

その一つとして今回、千葉県鴨川市に計画されている、メガソーラーの建設予定地を訪問しました。 (取材日時:2019年2月15日)

○鴨川市、田原地区、メガソーラー計画の主な問題点

千葉県鴨川市におけるメガソーラーは、田原地区という、鴨川市の玄関と言えるような場所に計画されています。同計画は、千葉県による林地開発許可審査中で、まだ着工はされていません。詳細はこちら

同計画の問題点として挙げられているのは、大規模な土地改変です。東京ドーム32個分にもなる広大な山林を平坦にするため、1,300万立方メートルの山を削り、その土砂で谷を埋め立てる予定であると事業者は言います。10トンのダンプトラック約200万台にもなる土砂も移動するそうで、流れる川や沢も埋め立てられる予定となっています。流れる川や沢が埋め立てられた場合、その川や沢に流れていた水が行き場を無くし、地中に水分が含まれていくため、地盤の脆弱化の恐れが考えられています。また、建設予定地は林野庁により「山地災害危険地区」に指定されている急峻な土地で、開発自体も危険や困難が伴う可能性があります。さらに、10万本以上の木が伐採されるとの意見もあり、この開発による大規模な環境破壊は免れません。

削られる予定地の山なみ
事業計画地映像(鴨川の山と川と海を守る会より)

○山林は漁業にとって必須

「山の緑から海に流れる豊富な栄養分は魚にとって大切だ。それを知らない漁師はいない。生計に関わる問題であり、本事業は反対だ」

とてもシンプルなコメントを述べたのは、年間25億円の販売高、組合員数約1400人の鴨川市漁業協同組合を統括する松本ぬい子組合長(以下、松本さん)。「今回の事業は環境破壊である」とさらに付け加え、山と海の関係を強調する松本さんの言葉からは、鴨川で漁業を営む人々は人間が生きるために長年自然を大切にし、持続可能な環境を作り上げてきたことを感じます。

松本ぬい子組合長

○山林の開発は、地主さんだけの問題ではない、公益性がある

現場で説明をする今西さん

鴨川の海と川と山を守る会(以下「守る会」)代表の勝又さんは、メガソーラー開発に対して、地元民の動きに懸念を示しました。「建設予定地は5区の財産区だったのだが、40数年前にリゾート開発会社へ売却している。その後、転売を重ねてきた山なので愛着がわかないのではないか。これは地主さんだけの問題ではない。そこに暮らして田んぼを耕作する人、川の水を利用する人、魚を取る人、それらを利用し、山の恩恵に浴する鴨川市民全体の問題だ」

勝又さん

同じく守る会の今西さんは「市はほとんどなにもしていない。これだけの規模の山を削り、谷を埋めることは、エネルギー問題とは関係なく通常の人の感覚では実行できないはずだ」と憤ります。

「山に降った雨が山林で浄化され川に流れ、そこに住む動物、生命の多様性が維持されている。これらは公共性があるものであり、都市部の方々も関係している。地主さんの意向で開発を決める筋合いのものではない」と今西さんは言います。

守る会では「エネルギーの問題については多様な意見があるが『この場所とこの規模』はダメという言い方をしている」と、統一見解はあると勝又さんは言います。また、「ようやく2018年2月ころから市民や議員の意識が変わり始めたと感じる。市民の関心が少し出てきたからこそ、未だに林地開発許可の審査に時間がかかっていて下りていないのだと思う」と、市民活動の成果についても分析していました。

◯市議会の雰囲気は?

佐藤カズユキ議員

鴨川市議会の中で本事業に唯一反対表明している、佐藤カズユキ議員に話を伺いました。

佐藤議員が反対を表明する理由についてお聞きしたところ、

「漁師の家に生まれ、自然を守ることを公約に掲げている。今回の事業は環境破壊である」

と自然破壊の懸念に加え、

「農業、漁業、林業の1次産業、観光が特徴の当市であるが、本事業はいずれにも大打撃を与える可能性がある。一時的な税金収入よりも失うものの方が大きいと思う」

と、経済的な懸念も理由として挙げていました。

これだけの問題のある事業に他の議員はなぜ表立って反対しないのかについて質問したところ、「事業に賛成の議員もいるが、個人的には反対だと言う議員が多い。しかし、個人的には反対としながらも、あくまでこの問題は市に許可権限はなく、国や県の問題であって市の問題ではないと言う議員が多く、個人の事業であることから、市や市議会が賛否を示すものではないという意見も多い。これは鴨川だけの問題ではないが、地方議会の議員の多くは国の方針にそのまま従う傾向がある」

と、議会の中で自らの意見を発することが困難であることを憂慮の声を漏らしました。

鴨川の市議会の構成については、

「鴨川市議会は圧倒的に自民系が多い。どこの政党であっても、漁業、農業、林業の1次産業が基幹産業である鴨川市を守るのは当然であるが、外部からの投資を優先させるなど、地元産業を守る動きにはなっていない」

との回答。

さらに、「良い再エネ、悪い再エネがある。本事業のような悪い再エネが再エネ全体の評判を落とすことになるのを懸念している」と話し、再エネの固定価格買取制度についても「再エネの使い方をしっかり国が制度化すべきだったと思う。再エネは、再エネ賦課金など国民が負担している公共の事業である。民間の事業利益主義だけ考えると今回のようにおかしくなってしまう」と、懸念を示していました。

加えて、「個人の事業だから私たちは何も言えませんという態度を行政がとっているのが問題。議会内での勉強会も進んでいないし、国からの通達がないと動かない。トップの方の意見が大きく左右する」

と、トップダウンでの動きにしか対応しない鴨川市にも問題があるといいます。

○市長のやるべきことはなにか

鴨川市役所訪問
亀田鴨川市長(左)

今回の訪問では、市民団体や市議会議員の他、2017年3月から鴨川市長を務める、亀田郁夫市長(以下、市長)との会合も実施しました。

鴨川市議会が昨年12月20日、国に対して提出した意見書『大規模太陽光発電施設の開発に対する法整備等を求める』には「自然環境、景観への影響・・・土砂災害等自然災害発生の懸念・・・市民生活を脅かす事態となっている」と説明があり、鴨川市としても、市長としても本事業は「自然環境、景観・・・災害の観点から問題である」と考えるのかを問うたところ、市長は以下のように答えました。

「個人的にはいろいろな意見があるが、法令等の基準に則り対応していく」。加えて、「鴨川市の環境破壊は市への大きな打撃となるのでは」との質問に対しては、「制度の範囲内で対応していくしかない。事業者としても法令遵守を前提として申請している。市としては現行法令の中でできることとして、市民の皆様に対して説明会を開催することや、市民の皆様の疑問に文書で答えることを求めたり、事業終了後あるいは災害等に対応するための積立金をするよう事業者に要請してきたところである」と市民との対話を促しつつも、他の地方行政にあるような条例を市として制定するなどの対策をする構えではありませんでした。

本事業のメリットについて市長は、「市としてメリットの有無で判断するものではないが、地域には短い期間経済的メリットはあろう。市内には、太陽光発電事業者によりミニトマトの温室栽培が行われているところもある」とあくまで中立性を強調しました。

一方で、本事業は鴨川市にとって失われるものについては「地域が担保できる積立金をするように事業者と合意を得たい」と事業者との合意形成に関しては積極的な姿勢は示すものの、本事業のデメリットについての言及はしませんでした。

最後に、「市としてそれ以上対応しないのは他に課題があるからか?」と、鴨川市における福祉や経済など他の課題が優先されて、本事業に関連した対応ができないのかという問いに対して市長は、「他の案件によって今回の事業への対応ができないということではない。繰り返しとなるが、法令に則して中立に対応していく」と否定しました。

と、上記のような形で面談は終了しました。市民や事業者との対話は重要視をしつつも、乱開発の規制を求めるような条例の制定や法令以上の対応には否定的でした。本事業は、鴨川市の基幹産業を脅かす課題とは捉えていないようです。

○鴨川市の向かうべき方向

今回は鴨川市のメガソーラー建設計画についての視察でしたが、メガソーラーへの懸念だけではなく、鴨川市の前向きな側面も発見しました。

守る会の勝又さんは、「鴨川市は移住者が多く自分で得られるものを自分で得る暮らしがしたい、自然の中で暮らしたいという方が多い。ジビエ、サーフィンも魅力であり、半分第一次産業、半分他の仕事(半農半X)みたいな生活に興味がある方々に良いまちである」と自然と触れ合いながら、自分の興味のあることに取り組める受け皿が鴨川にはあると強調されていました。

また、漁業組合長の松本さんも、「他地区は苦戦している中で当漁協は13年間黒字、若い方も入れ替わり入ってくるし経験者がやりかたを教えるという雰囲気が次世代を育てているようだ」と、鴨川の漁師も外からの移住者への対応も積極的で、これがモデル化されはじめ、鴨川のように漁師が増えることを「鴨川方式」といわれることがあるといいます。新しい風が吹いている鴨川でメガソーラー開発に対して「次世代のために反対。若い人たちの姿があるからこそ、想像がつく」と松本さんは強調します。

○自然とともに生きるとはなにか

今回の訪問で多くの方にお話を伺い、鴨川市における本事業は、再エネへの悪い印象が市民の間で広まるのではないかという懸念を感じました。国際環境経済研究所前所長の澤昭裕氏によると、ドイツでは太陽光発電の「施設建設に当たって森林等の伐採を行えば、その6倍の植林を行わないといけない」そうです。大規模な開発を伴うメガソーラー建設に頼らずとも、植林など対応が難しい耕作放棄地や一般住宅、工場などに設置する再エネを普及させるなど、やるべきことは他にもあります。

大規模に土地を削り、埋めるような事業は、再エネ事業に関わらず根本的に問題です。今回の訪問で、鴨川の経済を支える漁業組合を始め、一部の議員にも大規模開発に対する問題意識があり、自然環境の大切さが共有されていること強く感じました。長年維持されてきた自然環境は失ってから気づくのでは遅いのです。さらに、これは地域の問題ではなく都市部に住む人々も自然の利益を受けており、責任があると感じます。固定価格買取制度や環境影響評価法などの制度は短い期間の利益や影響は考慮していますが、さらに30年50年以上先を見据えるような長期的な視点が必要です。漁業や農業を支える自然保護の大切さを改めて感じ、行動していく必要があるのではないかと感じた取材となりました。

「計画概要」(鴨川の山と川と海を守る会調べ

場所:千葉県鴨川市、鴨川有料道路西側、清澄山系の山林

面積:事業面積250ha, 伐採面積150ha

発電規模:130mw

事業者:AS鴨川ソーラーパワー合同会社

地権者:Aスタイル

造成:大蓉工業

設計:ユニ設計

発電設備:日立製作所

(2019年2月 高橋英恵、松本光、天野遼太郎、田渕透)

大規模開発から守りたい「暮らし」~インドネシア・インドラマユ火力発電所で奪われるものは?

約3年前からFoE Japanが取り組んでいるインドネシア・インドラマユでの石炭火力発電事業・拡張計画問題。本事業は、国際協力機構(JICA)が政府開発援助(ODA)として支援をしています。

私たちは現地NGOであるWALHI(インドネシア環境フォーラム、FoEインドネシア)と協力し合いながら、事業に反対の声を上げている現地住民の支援を続けていますが、12月27日、この反対運動をしている農民3名に対し、彼らの身に覚えのない「国旗侮辱罪」でそれぞれ5ヶ月(2名)と6ヶ月(1名)という実刑判決が言い渡されました。FoE Japanを含む日本の3団体は、これは冤罪であり、国家事業に異を唱える住民への弾圧に他ならないことから、同日、日本政府・JICAに人権状況の改善を求める緊急要請書を提出しました。

本件を担当しているFoE Japanのスタッフは定期的に現地調査をしていますが、今回同スタッフと11月からスタッフに加わった私、杉浦2名で12月に現地調査をしてきました。その時の体験談を踏まえて、本事業のこと、また現地の様子などをご紹介します。

インドネシア・インドラマユ石炭火力発電事業・拡張計画とは

インドネシアの首都であるジャカルタから東に約120~130キロ行ったところに位置する西ジャワ州インドラマユ県。自然に恵まれた環境から、車窓からは見渡す限り農地が広がり、海沿いの村には多くの漁船も見えるなど、農業や漁業が盛んな地域のようでした。

インドネシア・ジャワ島地図(googleマップより)

このインドラマユ県北西部の海沿いに面したスクラ郡とパトロール郡というところに石炭火力発電所の建設が予定されています。発電所の規模は、1,000MWを2基の計2,000MW。東京ドーム約59個分にもおよぶ275.4ヘクタールの広大な敷地が予定地としてとられています。JICAは初めの1基分1,000MWの協力準備調査をすでに行い、現在は基本設計などに対するエンジニアリング・サービス(E/S)借款での貸付17億2,700万円を続けています。また、インドネシア政府の要請を待って、本体工事に対する借款も行う予定になっています(詳しい事業の内容はこちら)。

12月現地調査~事業と闘いつづける住民との村での語らい

今回12月に私たちが訪れたのはムカルサリ村。パトロール郡に位置し、本事業に反対している現地の住民ネットワーク“JATAYU”(インドラマユから石炭の煙をなくすためのネットワーク)の中心地でもあります。実際に私たちもJATAYUメンバーのお家に泊めていただきました。

現地に着いた時には夕方。すでに訪問の連絡をしていたため、その家の皆さんがたくさんのご飯を用意して待ってくれていました。初めて会い、しかもインドネシア語が喋れず、ほぼコミュニケーションがとれない私にも優しい笑顔で「食べな、食べな(現地語でマカン “makan”)」と言ってくれるみなさんの温かさに、緊張がすぐほぐれました。

作ってくださった夜ご飯(2018年12月撮影、FoE Japan)

ご飯を食べながら和やかな雰囲気でお家の方々と話していると、JATAYUのメンバーが続々と家にやって来ました。すると、上述した不当逮捕・勾留されている仲間の農民3名の裁判に関する話題へと移っていきました。和やかな雰囲気がガラッと変わり、みんなの表情も真剣なものになるのがすぐにわかりました。

ここで裁判の内容を説明すると、この3名は、JATAYUが訴訟に勝利し、お祝いをしていたときに、インドネシア国旗を反対に掲げたとして“国旗侮辱罪”で昨年(2017年)12月に逮捕されました。一度は釈放されたものの、今年9月に再逮捕。現在は上述のとおり判決が出ているものの(2名に実刑5ヶ月、1名に実刑6ヶ月)、私たちが訪問した時は裁判の真っ只中でした。この国旗侮辱罪――インドネシア国民だったら国旗の赤白の向きを誰もが知っているなか、3人は「分かっていてそんなバカなことをするわけがない」と罪を否定しています。

インドネシアでは現在、土地・人権・環境といった権利を求め活動する人々への国家による弾圧が高まっており、いくつものケースで反対運動をする人々が犯罪者にしたてあげられています。WALHIによると、現在、本件のような開発事業に伴う環境問題を訴え、「犯罪者扱い」されている住民のケースはインドネシア国内で15件(計63名)にのぼるそうです(参照:FoE アジア太平洋地域の声明「フィリピンとインドネシアは土地権利擁護者に対するテロリストのレッテル貼りや犯罪者扱いを止めよ」(2018年3月) モンガベイ記事「先住民族による抗議を黙らせるため犯罪者扱いや暴力が増加―国連報告書が指摘」(2018年9月))。

本事業も国家プロジェクトのため、私たちは今回の農民3名の「国旗侮辱罪」による不当逮捕もそういった国家の弾圧なのではないかと考えています(26カ国188団体が署名した農民解放を求める要請書も日本政府・JICAに提出)。

捕まっている3人には家族があり、まだ小さなお子さんがいる方もいます。奧さんと子どもと一緒にご飯を食べたり、遊んだり、また仕事をしたり、そんな時間を考えると、自分がやってもいない罪で逮捕・勾留というのは本人にとっても、またご家族にとっても辛く、長い日々だということを今回の現地調査のなかで感じました。

拘束・逮捕されている農民3名(2018年12月撮影、FoE Japan)

村でみなさんの話を聞いていると、JATAYUのメンバーは、ただ自分たちの当然の権利を主張しているだけなのに、仲間・家族がそういう目にあっているということが許せず、怒り、悲しみ、悔しさなど様々な感情が混ざり合っている様子が、彼らの表情、声に出ているのがわかりました。

なんとか仲間の無実を証明し、そして石炭火力発電所の建設を止めたいという意思を改めて確認し、JATAYUとして最後まで闘い抜くという強い思いを感じました。

奪われる生活の基盤

翌日、発電所建設予定地の視察へと向かいました。

村内でバイクに乗り移動。まず、一番初めに驚いたのは民家と建設地の近さ。家が多く立ち並ぶ場所からバイクに乗って2分も経たないうちに、長く続く白いフェンスが目に飛び込んできたのです。

発電所建設予定地を区切るフェンス(2018年12月撮影、FoE Japan)

建設地に一番近い家からは本当に目と鼻の先です。このフェンスを越えると石炭火力発電所の計画地になります。

発電所建設予定地入り口(2018年12月撮影、FoE Japan)

そのゲートをくぐると次に私を驚かせたのは広大な敷地でした。

発電所建設予定地(2018年12月撮影、FoE Japan)

果たしてこんなに広大な敷地が必要なのかというくらいの土地の広さ。東京ドーム59個分なんて、今この記事を読んでいる方もなかなか想像ができないと思います。この大きな土地で農作業を依然として続けている住民の方が何人か見られました。普段はもっと多くの農民が田んぼや畑作業をしているそうですが、みんな仲間の裁判のため忙しく、今はあまり作業ができていないとのこと。

そこには農民たちが休憩できる場所もありました。お昼時にはその辺りの農地で働いている方々がきて、ご飯を食べたり休憩をしながらお話をしたりしている様子が見られました。

発電所建設予定地内の休憩所(2018年12月撮影、FoE Japan)

農地でお話を聞いた方の畑には、トマト・ナス・赤タマネギ・かぼちゃなど、様々な野菜がなっており、今では多くのところで見られる単一栽培とは違う昔ながらの小規模混合栽培方法で野菜を作っていました。

発電所建設地内にある農地1(2018年12月撮影、FoE Japan)
発電所建設地内にある農地2(2018年12月撮影、FoE Japan)

こんなに立派な畑――もちろん発電所の建設工事が本格的に始まれば、全て潰されてしまいます。農家の方々が大切に使い育ててきた土壌だってきっとコンクリートが流し込まれる。彼らの生活手段だって無くなります。作物の補償金はもらっている(もしくはこれからもらうはずである)ものの、そんなの一生分もらえるわけではなく、ほんの少し。

お話を聞いた農家の方は、これからどうすればいいかわからないと言います。「建設地外の農地に移るといったって、他の農家だって農地を使いたいだろうから取り合いになる。もともとそんなに土地だって余っていない。」

「今後の生活、本当にどうすればいいかわからない。」

そんな話をきいて、私はすごく胸が苦しくなりました。

作業をする農民(2018年12月撮影、FoE Japan)

この開発予定地の中には、浜辺も含まれています。ここでは小規模漁民が現地の名産である小エビをとって、生計の一つとしています。私たちが沿岸を歩いていると、現地の漁民1名が網を使い小エビ獲りに精を出していました。

海で小エビを獲る漁民(2018年12月撮影、FoE Japan)

こんな浜辺も、全て立ち入り禁止になり、いままで家からすぐだった場所ではなく、しばらく歩く、もしくはバイクで遠くまで行かないと小エビが獲れなくなる。発電所から排出される温排水だって海水の温度を上げ、海洋生態系を壊しかねません。今まで獲れた小エビが獲れなくなってしまうかもしれないのです。

小エビ漁用の網(2018年12月撮影、FoE Japan)

“Livelihood”が壊されるという意味

私は今回のインドネシア訪問が開発現場の初めての現地調査となりました。大学で政治学を学ぶ中で開発学を少し学び、大学院では開発学を専攻しさらに専門性を身につけました。しかし、今回まで実際に現場を見るという機会がなく、今まで机上で勉強してきた“Livelihood”が壊される現状というのを初めてちゃんと理解することができました。

“Livelihood”という言葉は、日本語で「生計・暮らし」と訳されます。しかし、その言葉にはもっと深い意味があり、それは彼らの生活の基礎となる水・土・空気など全てを含む自然環境が欠かせないものであり、また人々が集まって意見を交換したり、話をして笑ったり泣いたりする生活環境も含まれるものなのだと思います。今回の現地訪問で、多くの人々に出会いました。畑仕事をしている農家のご夫婦、魚を網でとる漁民の人、羊を連れて歩き草を食べさせている羊飼いの人、バイクに乗って楽しんでいる若者、元気に田んぼ道を走り回っている子供たち、外で椅子に座って話している畑仕事終わりの方々、家事をしているお母さん方――そんな彼らの当たり前の生活全てが”Livelihood”であり、それがいま壊されようとしています。

そんなことがわかったら、反対の声が出るのは当たり前です。しかし、その反対の声さえも政府の弾圧によって抑えられようとしているのです。

私たちはそんな状況を決して許せないと思いました。私たちができるあらゆることをしながら、現在捕まっている3名の農民の解放を訴え、またこの石炭火力発電事業を中止させたい。そう固く決意した現地調査になりました。

(開発と環境・森林担当 杉浦 成人)

住友商事・スミフルは今すぐ対応を!血に染まるバナナ―現場からの緊急報告

バナナプランテーションの実態

庶民の食べ物として広く流通するバナナ。日本のコンビニやスーパーなどで見ないことはありません。日本におけるバナナの購入数量は生鮮菓物のなかで2004年以降、みかんを抜き、13年連続1位。その需要の高さが伺えます。その日本のバナナのうち、金額・数量をそれぞれ85%、83%占めるのがフィリピン産[1]。そして、国内販売量No.1を謳(うた)うスミフル(旧住友フルーツ)は、大手金融機関による投融資も受け、住友商事が株を49%保有しています。しかし、スミフルが事業を展開するフィリピンのバナナ農園を巡って、農薬による野菜・環境の被害や深刻な健康被害が告発されてきました

フィリピンにおけるバナナプランテーションへの批判の歴史は日本では長く、故・鶴見良行氏の『バナナと日本人』(1982年、岩波新書)に始まります。しかし、問題は残念ながら解決されていません。今、正当な権利を勝ち取ろうと声をあげるバナナプランテーションの労働者を狙い、軍や警察、私兵などによる脅迫・暴力行為が起き、銃撃・放火事件も相次ぐなか、死傷者が出るなど深刻な事態となっています。 その深刻な人権侵害の状況把握と背景を調査するため、12月にフィリピンのミンダナオ島コンポステラ・バレー州をPARC(アジア太平洋資料センター)と訪問しました。

現場からの緊急報告(コンポステラ・バレー州)

ドゥテルテ大統領が2016年まで市長を務めていた南部の大都市ダバオに到着。翌日、早朝の目覚めとともに衝撃的な一報が入りました。スミフルの労働組合NAMASUFA(Nagkahiusang  Mamumuo  sa  Suyapa  Farm)の現地事務所と組合のリーダーの家など4棟が未明に放火されたというのです。急いで支度し、出発。ダバオから北東へ車でおよそ2時間、コンポステラ・バレー州に入りバナナのプランテーションが視界に入ってきました。途中スミフル専用の港やトラック、バナナを梱包する工場を横目にしながら現場に到着。数十人 の人々が集まっているその奥に煙が見えました。

道の両脇に広がるバナナプランテーション(2018年12月撮影、FoE Japan)

スミフルの労働者から聞取りをするため、使用させてもらう予定だったNAMASUFAの事務所が未だに煙を上げていました。衝撃を隠せませんでした。幸いなことに死傷者はいませんでしたが、リーダーの家や組合事務所を含む4棟、そしてNAMASUFAが所有していたという重要書類が全焼。現場には消防や警察、メディア関係者などはおらず、周辺住民が燻(くすぶ)る炎に水をかけていました。

スミフルの労働組合NAMASUFAのリーダー宅焼け跡(2018年12月撮影、FoE Japan)
バケツで水をかけ火消し(2018年12月撮影、FoE Japan)

NAMASUFAの事務所の焼け跡には、スミフルの備品と思われる焼け焦げた机もありました。日本へ出荷されるバナナの農園・梱包工場で働く労働者たちへの弾圧と理不尽さを目の当たりにし、気持ちの整理がつかないまま、その人たちへのインタビューを開始。根深く、深刻な実態を聞くことになります。

事務所焼け跡からスミフルの備品(2018年12月、FoE Japan)

なぜ、このような事態になってしまったのか。2017年6月に、スミフルの正社員であることを訴えてきた労働者側が最高裁判決で勝利を収めてから事態が悪化したと言います。判決の内容は労働組合NAMASUFAをスミフルの正式な労働組合と認定し、訴えていた従業員をスミフルの労働者と認めるというものでした。ところが、スミフル側がこれを無視。バナナプランテーション及び梱包工場等の操業を変わらずに続けたことにより、今年10月、フィリピン・ミンダナオ島南東部コンポステラ・バレー州におけるバナナプランテーションの主に梱包工場で働く従業員900余名による大規模なストライキが決行されました。しかし、ストライキに参加した900人は事実上の解雇となっています。暴行・放火・銃撃事件が相次ぎ、今回の組合リーダー宅への放火も二度目でした。

11月30日に組合代表の家に撃込まれた8発中2発の銃弾(2018年12月、FoE Japan)

訴訟やストライキを決行した理由には梱包工場での過酷な労働環境や不当な労働契約、有毒な薬の使用などがあります。毎日23時間、身体がボロボロになるまで働かされたという証言。過大なノルマを課せられ、最低賃金を大きく下回り、辞めた女性もいました。

また、バナナ農園においても、親が土地をバナナ栽培用に契約し、再契約をさせてもらえずに子どもにそのまま受け継がれてしまうケースも深刻で、自分たちが聞き取りしたその契約内容は、23年間も納品単価の据置きを可能にするものでした。自分の土地について、「Intervention Contract(介入契約)」を結ばされた男性は多額の借金を抱えていました。その聞き取りの内容は衝撃的なもので、10年間の契約が切れた後、バナナ農園の運営をスミフルが担うという名目上、スミフルに対し、年間1ヘクタールあたり35,000ペソ(約73,500円)を支払う必要があるという再契約を結ばされたというものでした。さらに、その契約書のコピーは手渡されることもありませんでした。当初の契約内容も、現在の契約内容も、スミフルのみぞ知るところで、自分たちには確認する術がないのです。現在その男性は500,000ペソ(約105万円)の借金があると言います。この地域の最低賃金が1日365ペソ(約767円)であることを考えると、とても払える額ではありません。

地元コンポステラ町での人権状況の悪化とスミフルが交渉を拒否しつづけている現状から、11月下旬、ストライキをしている900余名のうち、およそ330人はコンポステラ・バレー州から遠く離れたフィリピンの首都マニラに乗り込むことを決断し、大統領府前や労働雇用省前、日本大使館前などでのデモ活動を繰り返しています。コンポステラでの聞き取りを終え、マニラに戻ってから、早速その労働者たちが拠点にしている野外テントを訪れました。

その労働者へも聞き取りを行ない、明らかになったのは2014年から施行された『圧縮労働週間制度(Compressed work week)』が悪用されている実態でした。それは週に6日48時間働く代わりに、週に3日36時間ないし4日で48時間働くというものでした。そうすると1日12時間までが日払い(365ペソ=約767円)となり、残業代(1時間あたり52ペソ=約109円)は12時間労働した後に払われるというものです。つまり、同じ賃金(365ペソ)でも1日の労働時間を4時間長く設定できるので、事業者からすると支払いを抑えることができる=従業員は同じ時間を働いているのにもかかわらず収入が減ります。結果として、労働者たちは以前4時間分の残業を得ていた分を、追加で残業しなければ生活できないので、1日20時間以上も働くことになってしまうのです。

マニラでのデモ(2018年11月撮影、FoE Japan)

加えて、「数種類の農薬が使われている。最近では無臭のものになり、農薬を過剰に吸いやすくなり、深刻な健康被害になる恐れがある」と農薬の調合を担当していた男性は危惧しました。今回、梱包工場の労働者への調査では、PARC制作ビデオ『甘いバナナの苦い現実』で登場するような失明のような深刻な被害を受けた人はいませんでしたが、多くの人が皮膚病をはじめ、腹痛、高熱、アレルギーを訴えており、防具も十分に支給されなかったそうです。

マニラでの聞取り(2018年12月撮影、FoE Japan)

これらの事例は氷山の一角であり、こうした労働環境はスミフルに限ったことではなく、他のバナナブランドでも同じようなことが起きているという証言もありました。また、12月4日のTBSラジオで立教大学異文化コミュニケーション学部教授の石井正子さんが「バナナの大量廃棄処分の実態もあるが全容が明らかでない」と話されていたように、バナナには、他にも様々な問題があります。

朝ごはんやおやつにバナナを食べている方、チョコバナナやバナナパフェが好きな人も多いかと思います。栄養価が高く、健康にも良いとされるバナナを食べるなとは言えません。ついつい安いバナナ、黒い点のない黄色いバナナに手が伸びることでしょう。しかし、その安さや黒い点のないバナナを作っている人たちのことを忘れないでほしいと願っています。そのバナナは血に染まっているかもしれません。

なお、ストライキをするスミフルの従業員の方々は現在、収入がない状況で、募金などの支援により自分たちの正当な権利を勝ち取るための活動を続けています。マニラでピケを張る皆さんは、依然よい結果を得られていないことから、フィリピン人にとって家族と過ごすとても重要なクリスマスや年末年始も地元コンポステラ・バレーに戻ることができませんでした。様々なサポートを必要としている労働者の皆さんのため、カンパを呼びかけています。日本の皆さんからもぜひご協力をお願いします。

[1]財務省貿易統計のデータをもとに計算

※スミフル労働者の問題の詳細や経緯は、こちらもご参照ください。

※スミフル労働組合メンバーへ支援のカンパのお願い

現在、マニラでスミフルへの抗議の声を上げ続けているNAMASUFA(スミフル労働組合)のメンバーが、食料・薬などの生活支援と活動支援を必要としています。ぜひ、カンパのご協力をお願いします。

下記要項を事務局までお知らせの上、銀行口座にお振り込みください。
お名前/ご住所/お電話番号/ご支援金額/用途指定寄付(バナナ)であること

カンパ入金口座:

1)ゆうちょ銀行 〇一九支店(019) 当座口座 0163403
名義: アジア太平洋資料センター

2)郵便振替口座 00160-4-163403 アジア太平洋資料センター

※寄付に関するお問い合わせ

特定非営利活動法人 アジア太平洋資料センター(PARC)/担当:田中

〒101-0063 東京都千代田区神田淡路町1-7-11 東洋ビル3F

TEL:03-5209-3455

E-mail:office (@) parc-jp.org


日本の官民が進めるニッケル開発現場で深刻な被害


日本のフィリピン・ニッケル鉱山/製錬開発の環境・健康影響

日常の中で何気なく使っているスマホやパソコンのリチウムイオン電池。近年、電気自動車などの普及とともに、益々欠かせない電池となっています。その電池の原料として欠かせないのがレアメタル(希少金属)の一つ、ニッケルという鉱物。フィリピンは、現在世界最大のニッケル鉱石生産国で、日本が官民でその開発・製錬に深く関わっています。住友金属鉱山をはじめ、大平洋金属、双日、三井物産が現地企業などに出資し、また国際協力銀行(JBIC)が融資、日本貿易保険(NEXI)が付保しています。

日本が関わるフィリピンのパラワン州や北スリガオ州におけるニッケル鉱山・製錬所周辺地域の河川水や湧水などで、これまで日本の環境基準を超える六価クロムが検出されてきました。天然で存在することがほとんどない六価クロムは東京築地などでも基準値以上が検出され、話題となった毒性の高い物質です。皮膚の腐食、臓器障害、癌、DNA損傷の可能性もあると言います

2018年12月の現地調査(北スリガオ州)

この12月、FoEのスタッフになってから初めて、北スリガオ州タガニートでの現地調査に同行しました。成田空港を離陸してからおよそ16時間、3つのフライトを乗り継ぎ到着したスリガオ空港は美しい緑の山林に囲まれており、雨季の湿気を含んだ暑さと、空気の良さを感じながらプロペラ機を降りました。翌日、車で東岸沿いを2時間ほど南下したところにあるタガニート鉱山付近に到着。グーグルマップでも確認できますが、赤茶になった山肌が幹線道路からもちらほらと目視できるようになりました。しかし、PARC制作ビデオ『スマホの真実』で撮影された鉱山開発の現場が最もよく見える場所には立ち入りができませんでした。

今回、メインの水質調査は、タガニート鉱山/製錬所からの排水が流れ込むタガニート川、ハヤンガボン川にて二日間行われました。六価クロム簡易検知管の検査では引き続き複数地点で環境基準値(0.05 mg/L)を超えており、周辺地域の住民への健康被害や水生生物への悪影響などが懸念される状況でした。1日目の調査では、タガニート川とハヤンガボン川でそれぞれ0.1 mg/L、0.075 mg/Lと、基準値以上の六価クロムが検出され、2日目にもタガニート川で基準値以上の0.15mg/Lが検出。今後、採取した水は専門家に精密に分析してもらう予定です。

dav
タガニート川検査結果
(2018年12月撮影、FoE Japan)

今回、何度も現場で検査を行なってきたスタッフからも驚きの声が上がったのは、先住民族ママヌワの移転地近くに暮らすビサヤの人びと数軒が主に利用している湧水の検査結果。簡易検知管の検査で基準値の20倍である1.0 mg/Lが計測されました。湧水をホースで導水し、煮沸などの処理もせぬまま飲料水としても利用しているとのことでした。移転地での水不足の際は先住民族ママヌワの人びとも利用し、この地域の住民の重要な水源になっているようでした。

先住民族ママヌワの移転地近くにあるビサヤ住民の住宅(2018年12月撮影、FoE Japan)

六価クロムの簡易検知管は、汲んだ水を試薬の入った透明なプラスティック製のチューブに吸い取り、六価クロムに反応した場合、1〜2分経過するとピンク色に変化します。この湧水は、チューブで吸い取った直後からみるみるうちに色が変わり始め、その事態の深刻さを人々にどう伝えるのがいいのか、複雑な心境を覚えました。先住民族ママヌワの人びとにとっては、そもそも、鉱山開発によって余儀なくされた移転。移転先で十分な水がなく、このような危険な水を利用することになっている実態――日本の官民が多額の出資・融資をして進める事業によって、住民の人びとが深刻な汚染状態にある水の利用を押し付けられていると自分は感じました。

先住民族ママヌワの移転地近くに暮らす住民が主に利用する湧水の検査結果(2018年12月撮影、FoE Japan)
先住民族ママヌワの移転地近くに暮らす住民らが主に利用している湧水。ホースで導水している(2018年12月撮影、FoE Japan)

FoE Japanは、パラワン州リオツバでも六価クロムがニッケル開発・製錬所の周辺から検出され続けていることから、2016年に製錬事業の最大の出資者である住友金属鉱山に水質調査に関する要請書を提出しました。事業者は、2012年から、鉱石置き場のシート掛け、沈砂池の掘削、また、河川につづく沈砂池の出口付近における活性炭の設置を対策として行っているといいます。しかし、FoEに長年協力してくださっている専門家の大沼淳一氏(金城学院大学元非常勤講師、中部大学元非常勤講師、元愛知県環境調査センター主任研究員)は、その対策は十分ではないと指摘をしてきました。現に六価クロムは検出され続けているのです。

さらに、深刻な人権侵害も起きています。2017年1月、自分たちの土地・生活の権利を訴えてきた先住民族ママヌワのリーダーであるヴェロニコ・デラメンテ氏が殺害され、住民たちは事業に対する懸念の声を上げにくい状況となっています。また、今回、私たちが水質調査を行ったミンダナオでは、フィリピン政府により戒厳令が敷かれており、周辺の町では軍によるチェックポイントが点在するなど緊張感の高さを肌で感じました。

日々の暮らしに欠かせないリチウムイオン電池に含まれるニッケル。その開発は、深刻な水質汚染や住民リーダーの殺害といった人権侵害にも加担するものであり、多大な犠牲の上になりたっている――今回の訪問で、そのことを改めて痛感しました。

現代社会において、パソコンやスマホを手放すことは困難ですが、まだ使えるのに新しい機種を購入するといった行動は疑問を感じざるを得ません。大量生産・大量消費のひずみの一端を引き続き発信し続け、日本から遠く離れた出来事をより身近に感じてもらえるよう、そして、スマホやパソコンをはじめ、モノを大事に扱う大切さを改めて伝えられるよう、FoE Japanで活動を続けていきたいと思います。 (松本 光)