先住民族Wet’suwet’enは、彼らが伝統的に利用してきた土地や水源を守るため、事業に対し反対の声を上げ続けています。先住民族の権利はカナダの最高裁判所でも認められており、Wet’suwet’enの伝統的酋長らがその土地に対し権利を持つと認められています(Delgamuukwケース)。しかし、パイプラインを建設するコースタル・ガスリンク・パイプライン社(CGL社)は先住民族の「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(free, prior and informed consent)」(FPIC)を取得せず、パイプライン建設を続けています。
FPICに関しては、国連人種差別撤廃委員会(Committee on the Elimination of Racial Discrimination)が、2019年12月13日付けで、Wet’suwet’enのFPICが得られるまで、コースタル・ガスリンク・パイプライン事業の建設を即時停止すること、(カナダ王立騎馬警察(RCMP)やその他警察がWet’suwet’enの伝統的土地から退去すること、また殺傷能力のある武器の使用を禁止し、Wet’suwet’enに対するいかなる武力も行使しないことを保証することをカナダ連邦政府に求める決議を発表しています。にもかかわらず、11月にも30名近くの抗議者や先住民族がRCMPによって逮捕されています。また記者も逮捕されました。
図 2. 移行に必要な鉱物資源に関連してコミュニティーが問題解決を求めている一部のサイト 出典:英War on Want報告書「気候変動対策と鉱物:クリーン・エネルギーへの移行に鉱物が果たす役割(A Material Transition: Exploring supply and demand solutions for renewable energy minerals)」(2021年3月)p.16-17
先住民族の権利が侵されている事態に対し、国連人種差別撤廃委員会(Committee on the Elimination of Racial Discrimination)は2019年12月13日付けで、「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(free, prior and informed consent)」が得られるまで、コースタル・ガスリンク・パイプライン事業、トランス・マウンテン・パイプライン事業、サイトCダムの建設を即時中止するようカナダ連邦政府に求める決議を発表しました。
カナダ連邦政府は「先住民族の権利に関する国際連合宣言(United Nations Declaration on the Rights of Indigenous Peoples, UNDRIP)」を2016年に採択しており、BC州も同宣言を実施する決議を行っています。先住民族の土地への権利はカナダの最高裁で認められているにもかかわらず、その反対の声や平和的な抗議活動が武装した警官によって抑圧されているのが現状なのです。
ニジェールデルタの三箇所で発生していた石油汚染については、シェル・ナイジェリアの責任が認められ、同時に親会社であるロイヤル・ダッチ・シェルの注意義務(Duty of care)違反が認められました。また判決では、石油汚染によって生じた損害について4人の原告のうち3名の原告及び影響を受けた村人に対し補償を行うこと、シェルに対してナイジェリアのオイルパイプラインに石油漏れを検出するシステムをもうけることを命じました。今回の判決は、オランダの多国籍企業の海外での活動における注意義務違反を認めた、初めての判決です。
農民とNGO側の弁護士を務めたチャンナ・サムカルデン(Channa Samkalden)は「数年にも及ぶ訴訟の結果、ついに正義がもたらされましたが、Ikot Ada Udo(注:原告の中の一名)の訴訟はまだ続いています。シェルの石油流出への責任だけでなく、原告側が持つ権利が認められました。この訴訟は、ヨーロッパの企業が海外でも責任を持って振舞うべきであることを示しました。」