リニア工事の実態~大鹿村釜沢集落

長野県大鹿村釜沢。標高1000mにある鎌倉時代から続く自然と共生する美しい集落です。畑の脇を人一人通るのがやっとの細い急な坂道を息を切らしながら家にたどり着くと、昔ながらの古民家が出迎えてくれます。自分で手直ししながら大切に使う家、近くの森で取れる薪、斜面の小さな野菜畑。住民達がこの土地を愛し、ここでの暮らしを大切にして生きていることがうかがい知れます。利便性や利益の追求からは得られない豊かさを求め、この集落では県外などから移り住んで来た人々が少なくありません。

静寂と自然の音、人々の丁寧な暮らしから育まれる音のみが存在してきた釜沢集落に、2008年からリニア中央新幹線のトンネル工事のためのボーリング調査が始まり、その後の24時間ボーリング工事の騒音被害を受けて集落を離れて行く人々も出てきました。2017年末にはダイナマイトの発破が始まり、「ドーン」という住民が地震か、雷かと思うほどの振動と騒音が起こりました。これが昼夜を問わず続く中、元々脆弱な地盤の集落内では、落石や石垣の崩壊、コンクリートのひび割れ、雨漏りなどが生じました。しかしリニア工事との因果関係は認めらませんでした。「村の他の集落の人からは、そんなところに住んでいるやつが悪いと言われることもあります。でも、そんなところで発破作業すること自体がどうなのか」と、釜沢集落の前自治会長の谷口昇さんは憤ります。

現在、釜沢にはまた別の音が生じています。トンネル工事から排出される残土を積み重ねる鎮圧する音が響きます。かつて人工物がほとんど見えることのなかった集落の景色の中に、積み重ねられる残土の山、工事現場が見えます。JR東海は南信の自治体各地で発生土置き場受け入れの交渉をしていますが、現在までに長野県内のリニアトンネル工事から発生する970万立米の残土の行き場はほとんど決まってなく、行き場のない土は釜沢にも仮置きされています。田畑が残土で埋め尽くされていく中、いつまで「仮置き」されるのか住民の不安は募ります。住民の内田ボブさんは、以前は上空を飛んでいた「クマタカやイヌワシが見えなくなった」と心配します。谷間に発破音や工事音が響くここ2年ほどの間に生態系も変わってしまった可能性があります。

大鹿村では、リニア工事の影響は釜沢集落の問題だけではありません。2017年には、トンネル掘削の発破が原因で土砂崩落が起こり、大鹿村と村外をつなぐ重要な生活道路が寸断されました。大鹿村にはコンビニもスーパーもないことから、多くの住民は日々の買い物や医療機関受診、通勤等のために村外に通っています。代替ルートとされたのは、両側を崖に挟まれた離合の難しい細い道路。道路が凍結する時期でもあり、高齢者や運転に自信のない方は実質的に陸の孤島に閉じ込められた形になりました。

リニア工事の影響は物理的な影響だけではありません。JR東海が一方的に定めたルールによって、住民説明会から村のリニア対策委員である住民の同席を拒否したり、住民に十分な説明もせず、住民が納得していないまま「理解が得られた」ことになって進められていたりと住民の意思を尊重する姿勢は見られません。リニア工事による道路改良や道の駅の建設等の懐柔策とも取れる事業が持ち込まれることで、地域内に対立や分断も生じています。

これから本格的に工事が始まる青木地区。残土運搬や青木川の水量への影響が懸念されています。青木地区に実家のある紺野 香糸さんは、「山梨を見に行ったとき、本当にこんな風になっちゃうんだって思ったけれど、やっぱり実際自分の村もこんな風になってきちゃったんだって思う」と話します。「始まってしまったから諦めるしかないというのは違う。本当に長いものが始まってしまったから、それに向けて住民がどう感じていたり、どういう影響を受けるのか、私たちは知っておかなければならない。」

明日、6月30日(日)、大鹿村のリニア工事の実態について、都内でリニアの走る大田区で報告会を開催します。ぜひ住民の生の声を聞いてください。沿線では未だ工事が始まっていない場所も、土地収用が進んでいない場所も少なくありません。すでに工事が始まっている地域で何が起きているかを知ることで、今後の開発を止めることも可能かもしれません。

http://www.foejapan.org/aid/doc/evt_190630.html

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山林から恩恵を受けているということ~鴨川市田原地区メガソーラー計画を取材して

○再生可能エネルギーと開発

福島原発事故以来、原発への依存度を下げるべく、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の割合を増やすことが決定されました。固定価格買取制度もあいまって、国内では大規模な開発を必要とするメガソーラーの建設が多く計画されています。

再エネの普及は、気候変動の原因である温室効果ガスを減らすための有効な手段でもあります。しかし現在、再エネの名の下に森林を伐採し、環境を破壊するような開発事例(以下、乱開発)が見られるようになってきました。

FoE Japanは、再エネの普及の名の下で山林を破壊することは、生物多様性の保全の観点から、また、気候変動の観点からも、森林は温室効果ガスの吸収に重要な役割を果たすため看過できないものであると考え、再エネによる乱開発の現場の取材を始めています。(FoE Japanでは北杜市も訪問

その一つとして今回、千葉県鴨川市に計画されている、メガソーラーの建設予定地を訪問しました。 (取材日時:2019年2月15日)

○鴨川市、田原地区、メガソーラー計画の主な問題点

千葉県鴨川市におけるメガソーラーは、田原地区という、鴨川市の玄関と言えるような場所に計画されています。同計画は、千葉県による林地開発許可審査中で、まだ着工はされていません。詳細はこちら

同計画の問題点として挙げられているのは、大規模な土地改変です。東京ドーム32個分にもなる広大な山林を平坦にするため、1,300万立方メートルの山を削り、その土砂で谷を埋め立てる予定であると事業者は言います。10トンのダンプトラック約200万台にもなる土砂も移動するそうで、流れる川や沢も埋め立てられる予定となっています。流れる川や沢が埋め立てられた場合、その川や沢に流れていた水が行き場を無くし、地中に水分が含まれていくため、地盤の脆弱化の恐れが考えられています。また、建設予定地は林野庁により「山地災害危険地区」に指定されている急峻な土地で、開発自体も危険や困難が伴う可能性があります。さらに、10万本以上の木が伐採されるとの意見もあり、この開発による大規模な環境破壊は免れません。

削られる予定地の山なみ
事業計画地映像(鴨川の山と川と海を守る会より)

○山林は漁業にとって必須

「山の緑から海に流れる豊富な栄養分は魚にとって大切だ。それを知らない漁師はいない。生計に関わる問題であり、本事業は反対だ」

とてもシンプルなコメントを述べたのは、年間25億円の販売高、組合員数約1400人の鴨川市漁業協同組合を統括する松本ぬい子組合長(以下、松本さん)。「今回の事業は環境破壊である」とさらに付け加え、山と海の関係を強調する松本さんの言葉からは、鴨川で漁業を営む人々は人間が生きるために長年自然を大切にし、持続可能な環境を作り上げてきたことを感じます。

松本ぬい子組合長

○山林の開発は、地主さんだけの問題ではない、公益性がある

現場で説明をする今西さん

鴨川の海と川と山を守る会(以下「守る会」)代表の勝又さんは、メガソーラー開発に対して、地元民の動きに懸念を示しました。「建設予定地は5区の財産区だったのだが、40数年前にリゾート開発会社へ売却している。その後、転売を重ねてきた山なので愛着がわかないのではないか。これは地主さんだけの問題ではない。そこに暮らして田んぼを耕作する人、川の水を利用する人、魚を取る人、それらを利用し、山の恩恵に浴する鴨川市民全体の問題だ」

勝又さん

同じく守る会の今西さんは「市はほとんどなにもしていない。これだけの規模の山を削り、谷を埋めることは、エネルギー問題とは関係なく通常の人の感覚では実行できないはずだ」と憤ります。

「山に降った雨が山林で浄化され川に流れ、そこに住む動物、生命の多様性が維持されている。これらは公共性があるものであり、都市部の方々も関係している。地主さんの意向で開発を決める筋合いのものではない」と今西さんは言います。

守る会では「エネルギーの問題については多様な意見があるが『この場所とこの規模』はダメという言い方をしている」と、統一見解はあると勝又さんは言います。また、「ようやく2018年2月ころから市民や議員の意識が変わり始めたと感じる。市民の関心が少し出てきたからこそ、未だに林地開発許可の審査に時間がかかっていて下りていないのだと思う」と、市民活動の成果についても分析していました。

◯市議会の雰囲気は?

佐藤カズユキ議員

鴨川市議会の中で本事業に唯一反対表明している、佐藤カズユキ議員に話を伺いました。

佐藤議員が反対を表明する理由についてお聞きしたところ、

「漁師の家に生まれ、自然を守ることを公約に掲げている。今回の事業は環境破壊である」

と自然破壊の懸念に加え、

「農業、漁業、林業の1次産業、観光が特徴の当市であるが、本事業はいずれにも大打撃を与える可能性がある。一時的な税金収入よりも失うものの方が大きいと思う」

と、経済的な懸念も理由として挙げていました。

これだけの問題のある事業に他の議員はなぜ表立って反対しないのかについて質問したところ、「事業に賛成の議員もいるが、個人的には反対だと言う議員が多い。しかし、個人的には反対としながらも、あくまでこの問題は市に許可権限はなく、国や県の問題であって市の問題ではないと言う議員が多く、個人の事業であることから、市や市議会が賛否を示すものではないという意見も多い。これは鴨川だけの問題ではないが、地方議会の議員の多くは国の方針にそのまま従う傾向がある」

と、議会の中で自らの意見を発することが困難であることを憂慮の声を漏らしました。

鴨川の市議会の構成については、

「鴨川市議会は圧倒的に自民系が多い。どこの政党であっても、漁業、農業、林業の1次産業が基幹産業である鴨川市を守るのは当然であるが、外部からの投資を優先させるなど、地元産業を守る動きにはなっていない」

との回答。

さらに、「良い再エネ、悪い再エネがある。本事業のような悪い再エネが再エネ全体の評判を落とすことになるのを懸念している」と話し、再エネの固定価格買取制度についても「再エネの使い方をしっかり国が制度化すべきだったと思う。再エネは、再エネ賦課金など国民が負担している公共の事業である。民間の事業利益主義だけ考えると今回のようにおかしくなってしまう」と、懸念を示していました。

加えて、「個人の事業だから私たちは何も言えませんという態度を行政がとっているのが問題。議会内での勉強会も進んでいないし、国からの通達がないと動かない。トップの方の意見が大きく左右する」

と、トップダウンでの動きにしか対応しない鴨川市にも問題があるといいます。

○市長のやるべきことはなにか

鴨川市役所訪問
亀田鴨川市長(左)

今回の訪問では、市民団体や市議会議員の他、2017年3月から鴨川市長を務める、亀田郁夫市長(以下、市長)との会合も実施しました。

鴨川市議会が昨年12月20日、国に対して提出した意見書『大規模太陽光発電施設の開発に対する法整備等を求める』には「自然環境、景観への影響・・・土砂災害等自然災害発生の懸念・・・市民生活を脅かす事態となっている」と説明があり、鴨川市としても、市長としても本事業は「自然環境、景観・・・災害の観点から問題である」と考えるのかを問うたところ、市長は以下のように答えました。

「個人的にはいろいろな意見があるが、法令等の基準に則り対応していく」。加えて、「鴨川市の環境破壊は市への大きな打撃となるのでは」との質問に対しては、「制度の範囲内で対応していくしかない。事業者としても法令遵守を前提として申請している。市としては現行法令の中でできることとして、市民の皆様に対して説明会を開催することや、市民の皆様の疑問に文書で答えることを求めたり、事業終了後あるいは災害等に対応するための積立金をするよう事業者に要請してきたところである」と市民との対話を促しつつも、他の地方行政にあるような条例を市として制定するなどの対策をする構えではありませんでした。

本事業のメリットについて市長は、「市としてメリットの有無で判断するものではないが、地域には短い期間経済的メリットはあろう。市内には、太陽光発電事業者によりミニトマトの温室栽培が行われているところもある」とあくまで中立性を強調しました。

一方で、本事業は鴨川市にとって失われるものについては「地域が担保できる積立金をするように事業者と合意を得たい」と事業者との合意形成に関しては積極的な姿勢は示すものの、本事業のデメリットについての言及はしませんでした。

最後に、「市としてそれ以上対応しないのは他に課題があるからか?」と、鴨川市における福祉や経済など他の課題が優先されて、本事業に関連した対応ができないのかという問いに対して市長は、「他の案件によって今回の事業への対応ができないということではない。繰り返しとなるが、法令に則して中立に対応していく」と否定しました。

と、上記のような形で面談は終了しました。市民や事業者との対話は重要視をしつつも、乱開発の規制を求めるような条例の制定や法令以上の対応には否定的でした。本事業は、鴨川市の基幹産業を脅かす課題とは捉えていないようです。

○鴨川市の向かうべき方向

今回は鴨川市のメガソーラー建設計画についての視察でしたが、メガソーラーへの懸念だけではなく、鴨川市の前向きな側面も発見しました。

守る会の勝又さんは、「鴨川市は移住者が多く自分で得られるものを自分で得る暮らしがしたい、自然の中で暮らしたいという方が多い。ジビエ、サーフィンも魅力であり、半分第一次産業、半分他の仕事(半農半X)みたいな生活に興味がある方々に良いまちである」と自然と触れ合いながら、自分の興味のあることに取り組める受け皿が鴨川にはあると強調されていました。

また、漁業組合長の松本さんも、「他地区は苦戦している中で当漁協は13年間黒字、若い方も入れ替わり入ってくるし経験者がやりかたを教えるという雰囲気が次世代を育てているようだ」と、鴨川の漁師も外からの移住者への対応も積極的で、これがモデル化されはじめ、鴨川のように漁師が増えることを「鴨川方式」といわれることがあるといいます。新しい風が吹いている鴨川でメガソーラー開発に対して「次世代のために反対。若い人たちの姿があるからこそ、想像がつく」と松本さんは強調します。

○自然とともに生きるとはなにか

今回の訪問で多くの方にお話を伺い、鴨川市における本事業は、再エネへの悪い印象が市民の間で広まるのではないかという懸念を感じました。国際環境経済研究所前所長の澤昭裕氏によると、ドイツでは太陽光発電の「施設建設に当たって森林等の伐採を行えば、その6倍の植林を行わないといけない」そうです。大規模な開発を伴うメガソーラー建設に頼らずとも、植林など対応が難しい耕作放棄地や一般住宅、工場などに設置する再エネを普及させるなど、やるべきことは他にもあります。

大規模に土地を削り、埋めるような事業は、再エネ事業に関わらず根本的に問題です。今回の訪問で、鴨川の経済を支える漁業組合を始め、一部の議員にも大規模開発に対する問題意識があり、自然環境の大切さが共有されていること強く感じました。長年維持されてきた自然環境は失ってから気づくのでは遅いのです。さらに、これは地域の問題ではなく都市部に住む人々も自然の利益を受けており、責任があると感じます。固定価格買取制度や環境影響評価法などの制度は短い期間の利益や影響は考慮していますが、さらに30年50年以上先を見据えるような長期的な視点が必要です。漁業や農業を支える自然保護の大切さを改めて感じ、行動していく必要があるのではないかと感じた取材となりました。

「計画概要」(鴨川の山と川と海を守る会調べ

場所:千葉県鴨川市、鴨川有料道路西側、清澄山系の山林

面積:事業面積250ha, 伐採面積150ha

発電規模:130mw

事業者:AS鴨川ソーラーパワー合同会社

地権者:Aスタイル

造成:大蓉工業

設計:ユニ設計

発電設備:日立製作所

(2019年2月 高橋英恵、松本光、天野遼太郎、田渕透)

大規模開発から守りたい「暮らし」~インドネシア・インドラマユ火力発電所で奪われるものは?

約3年前からFoE Japanが取り組んでいるインドネシア・インドラマユでの石炭火力発電事業・拡張計画問題。本事業は、国際協力機構(JICA)が政府開発援助(ODA)として支援をしています。

私たちは現地NGOであるWALHI(インドネシア環境フォーラム、FoEインドネシア)と協力し合いながら、事業に反対の声を上げている現地住民の支援を続けていますが、12月27日、この反対運動をしている農民3名に対し、彼らの身に覚えのない「国旗侮辱罪」でそれぞれ5ヶ月(2名)と6ヶ月(1名)という実刑判決が言い渡されました。FoE Japanを含む日本の3団体は、これは冤罪であり、国家事業に異を唱える住民への弾圧に他ならないことから、同日、日本政府・JICAに人権状況の改善を求める緊急要請書を提出しました。

本件を担当しているFoE Japanのスタッフは定期的に現地調査をしていますが、今回同スタッフと11月からスタッフに加わった私、杉浦2名で12月に現地調査をしてきました。その時の体験談を踏まえて、本事業のこと、また現地の様子などをご紹介します。

インドネシア・インドラマユ石炭火力発電事業・拡張計画とは

インドネシアの首都であるジャカルタから東に約120~130キロ行ったところに位置する西ジャワ州インドラマユ県。自然に恵まれた環境から、車窓からは見渡す限り農地が広がり、海沿いの村には多くの漁船も見えるなど、農業や漁業が盛んな地域のようでした。

インドネシア・ジャワ島地図(googleマップより)

このインドラマユ県北西部の海沿いに面したスクラ郡とパトロール郡というところに石炭火力発電所の建設が予定されています。発電所の規模は、1,000MWを2基の計2,000MW。東京ドーム約59個分にもおよぶ275.4ヘクタールの広大な敷地が予定地としてとられています。JICAは初めの1基分1,000MWの協力準備調査をすでに行い、現在は基本設計などに対するエンジニアリング・サービス(E/S)借款での貸付17億2,700万円を続けています。また、インドネシア政府の要請を待って、本体工事に対する借款も行う予定になっています(詳しい事業の内容はこちら)。

12月現地調査~事業と闘いつづける住民との村での語らい

今回12月に私たちが訪れたのはムカルサリ村。パトロール郡に位置し、本事業に反対している現地の住民ネットワーク“JATAYU”(インドラマユから石炭の煙をなくすためのネットワーク)の中心地でもあります。実際に私たちもJATAYUメンバーのお家に泊めていただきました。

現地に着いた時には夕方。すでに訪問の連絡をしていたため、その家の皆さんがたくさんのご飯を用意して待ってくれていました。初めて会い、しかもインドネシア語が喋れず、ほぼコミュニケーションがとれない私にも優しい笑顔で「食べな、食べな(現地語でマカン “makan”)」と言ってくれるみなさんの温かさに、緊張がすぐほぐれました。

作ってくださった夜ご飯(2018年12月撮影、FoE Japan)

ご飯を食べながら和やかな雰囲気でお家の方々と話していると、JATAYUのメンバーが続々と家にやって来ました。すると、上述した不当逮捕・勾留されている仲間の農民3名の裁判に関する話題へと移っていきました。和やかな雰囲気がガラッと変わり、みんなの表情も真剣なものになるのがすぐにわかりました。

ここで裁判の内容を説明すると、この3名は、JATAYUが訴訟に勝利し、お祝いをしていたときに、インドネシア国旗を反対に掲げたとして“国旗侮辱罪”で昨年(2017年)12月に逮捕されました。一度は釈放されたものの、今年9月に再逮捕。現在は上述のとおり判決が出ているものの(2名に実刑5ヶ月、1名に実刑6ヶ月)、私たちが訪問した時は裁判の真っ只中でした。この国旗侮辱罪――インドネシア国民だったら国旗の赤白の向きを誰もが知っているなか、3人は「分かっていてそんなバカなことをするわけがない」と罪を否定しています。

インドネシアでは現在、土地・人権・環境といった権利を求め活動する人々への国家による弾圧が高まっており、いくつものケースで反対運動をする人々が犯罪者にしたてあげられています。WALHIによると、現在、本件のような開発事業に伴う環境問題を訴え、「犯罪者扱い」されている住民のケースはインドネシア国内で15件(計63名)にのぼるそうです(参照:FoE アジア太平洋地域の声明「フィリピンとインドネシアは土地権利擁護者に対するテロリストのレッテル貼りや犯罪者扱いを止めよ」(2018年3月) モンガベイ記事「先住民族による抗議を黙らせるため犯罪者扱いや暴力が増加―国連報告書が指摘」(2018年9月))。

本事業も国家プロジェクトのため、私たちは今回の農民3名の「国旗侮辱罪」による不当逮捕もそういった国家の弾圧なのではないかと考えています(26カ国188団体が署名した農民解放を求める要請書も日本政府・JICAに提出)。

捕まっている3人には家族があり、まだ小さなお子さんがいる方もいます。奧さんと子どもと一緒にご飯を食べたり、遊んだり、また仕事をしたり、そんな時間を考えると、自分がやってもいない罪で逮捕・勾留というのは本人にとっても、またご家族にとっても辛く、長い日々だということを今回の現地調査のなかで感じました。

拘束・逮捕されている農民3名(2018年12月撮影、FoE Japan)

村でみなさんの話を聞いていると、JATAYUのメンバーは、ただ自分たちの当然の権利を主張しているだけなのに、仲間・家族がそういう目にあっているということが許せず、怒り、悲しみ、悔しさなど様々な感情が混ざり合っている様子が、彼らの表情、声に出ているのがわかりました。

なんとか仲間の無実を証明し、そして石炭火力発電所の建設を止めたいという意思を改めて確認し、JATAYUとして最後まで闘い抜くという強い思いを感じました。

奪われる生活の基盤

翌日、発電所建設予定地の視察へと向かいました。

村内でバイクに乗り移動。まず、一番初めに驚いたのは民家と建設地の近さ。家が多く立ち並ぶ場所からバイクに乗って2分も経たないうちに、長く続く白いフェンスが目に飛び込んできたのです。

発電所建設予定地を区切るフェンス(2018年12月撮影、FoE Japan)

建設地に一番近い家からは本当に目と鼻の先です。このフェンスを越えると石炭火力発電所の計画地になります。

発電所建設予定地入り口(2018年12月撮影、FoE Japan)

そのゲートをくぐると次に私を驚かせたのは広大な敷地でした。

発電所建設予定地(2018年12月撮影、FoE Japan)

果たしてこんなに広大な敷地が必要なのかというくらいの土地の広さ。東京ドーム59個分なんて、今この記事を読んでいる方もなかなか想像ができないと思います。この大きな土地で農作業を依然として続けている住民の方が何人か見られました。普段はもっと多くの農民が田んぼや畑作業をしているそうですが、みんな仲間の裁判のため忙しく、今はあまり作業ができていないとのこと。

そこには農民たちが休憩できる場所もありました。お昼時にはその辺りの農地で働いている方々がきて、ご飯を食べたり休憩をしながらお話をしたりしている様子が見られました。

発電所建設予定地内の休憩所(2018年12月撮影、FoE Japan)

農地でお話を聞いた方の畑には、トマト・ナス・赤タマネギ・かぼちゃなど、様々な野菜がなっており、今では多くのところで見られる単一栽培とは違う昔ながらの小規模混合栽培方法で野菜を作っていました。

発電所建設地内にある農地1(2018年12月撮影、FoE Japan)
発電所建設地内にある農地2(2018年12月撮影、FoE Japan)

こんなに立派な畑――もちろん発電所の建設工事が本格的に始まれば、全て潰されてしまいます。農家の方々が大切に使い育ててきた土壌だってきっとコンクリートが流し込まれる。彼らの生活手段だって無くなります。作物の補償金はもらっている(もしくはこれからもらうはずである)ものの、そんなの一生分もらえるわけではなく、ほんの少し。

お話を聞いた農家の方は、これからどうすればいいかわからないと言います。「建設地外の農地に移るといったって、他の農家だって農地を使いたいだろうから取り合いになる。もともとそんなに土地だって余っていない。」

「今後の生活、本当にどうすればいいかわからない。」

そんな話をきいて、私はすごく胸が苦しくなりました。

作業をする農民(2018年12月撮影、FoE Japan)

この開発予定地の中には、浜辺も含まれています。ここでは小規模漁民が現地の名産である小エビをとって、生計の一つとしています。私たちが沿岸を歩いていると、現地の漁民1名が網を使い小エビ獲りに精を出していました。

海で小エビを獲る漁民(2018年12月撮影、FoE Japan)

こんな浜辺も、全て立ち入り禁止になり、いままで家からすぐだった場所ではなく、しばらく歩く、もしくはバイクで遠くまで行かないと小エビが獲れなくなる。発電所から排出される温排水だって海水の温度を上げ、海洋生態系を壊しかねません。今まで獲れた小エビが獲れなくなってしまうかもしれないのです。

小エビ漁用の網(2018年12月撮影、FoE Japan)

“Livelihood”が壊されるという意味

私は今回のインドネシア訪問が開発現場の初めての現地調査となりました。大学で政治学を学ぶ中で開発学を少し学び、大学院では開発学を専攻しさらに専門性を身につけました。しかし、今回まで実際に現場を見るという機会がなく、今まで机上で勉強してきた“Livelihood”が壊される現状というのを初めてちゃんと理解することができました。

“Livelihood”という言葉は、日本語で「生計・暮らし」と訳されます。しかし、その言葉にはもっと深い意味があり、それは彼らの生活の基礎となる水・土・空気など全てを含む自然環境が欠かせないものであり、また人々が集まって意見を交換したり、話をして笑ったり泣いたりする生活環境も含まれるものなのだと思います。今回の現地訪問で、多くの人々に出会いました。畑仕事をしている農家のご夫婦、魚を網でとる漁民の人、羊を連れて歩き草を食べさせている羊飼いの人、バイクに乗って楽しんでいる若者、元気に田んぼ道を走り回っている子供たち、外で椅子に座って話している畑仕事終わりの方々、家事をしているお母さん方――そんな彼らの当たり前の生活全てが”Livelihood”であり、それがいま壊されようとしています。

そんなことがわかったら、反対の声が出るのは当たり前です。しかし、その反対の声さえも政府の弾圧によって抑えられようとしているのです。

私たちはそんな状況を決して許せないと思いました。私たちができるあらゆることをしながら、現在捕まっている3名の農民の解放を訴え、またこの石炭火力発電事業を中止させたい。そう固く決意した現地調査になりました。

(開発と環境・森林担当 杉浦 成人)

住友商事・スミフルは今すぐ対応を!血に染まるバナナ―現場からの緊急報告

バナナプランテーションの実態

庶民の食べ物として広く流通するバナナ。日本のコンビニやスーパーなどで見ないことはありません。日本におけるバナナの購入数量は生鮮菓物のなかで2004年以降、みかんを抜き、13年連続1位。その需要の高さが伺えます。その日本のバナナのうち、金額・数量をそれぞれ85%、83%占めるのがフィリピン産[1]。そして、国内販売量No.1を謳(うた)うスミフル(旧住友フルーツ)は、大手金融機関による投融資も受け、住友商事が株を49%保有しています。しかし、スミフルが事業を展開するフィリピンのバナナ農園を巡って、農薬による野菜・環境の被害や深刻な健康被害が告発されてきました

フィリピンにおけるバナナプランテーションへの批判の歴史は日本では長く、故・鶴見良行氏の『バナナと日本人』(1982年、岩波新書)に始まります。しかし、問題は残念ながら解決されていません。今、正当な権利を勝ち取ろうと声をあげるバナナプランテーションの労働者を狙い、軍や警察、私兵などによる脅迫・暴力行為が起き、銃撃・放火事件も相次ぐなか、死傷者が出るなど深刻な事態となっています。 その深刻な人権侵害の状況把握と背景を調査するため、12月にフィリピンのミンダナオ島コンポステラ・バレー州をPARC(アジア太平洋資料センター)と訪問しました。

現場からの緊急報告(コンポステラ・バレー州)

ドゥテルテ大統領が2016年まで市長を務めていた南部の大都市ダバオに到着。翌日、早朝の目覚めとともに衝撃的な一報が入りました。スミフルの労働組合NAMASUFA(Nagkahiusang  Mamumuo  sa  Suyapa  Farm)の現地事務所と組合のリーダーの家など4棟が未明に放火されたというのです。急いで支度し、出発。ダバオから北東へ車でおよそ2時間、コンポステラ・バレー州に入りバナナのプランテーションが視界に入ってきました。途中スミフル専用の港やトラック、バナナを梱包する工場を横目にしながら現場に到着。数十人 の人々が集まっているその奥に煙が見えました。

道の両脇に広がるバナナプランテーション(2018年12月撮影、FoE Japan)

スミフルの労働者から聞取りをするため、使用させてもらう予定だったNAMASUFAの事務所が未だに煙を上げていました。衝撃を隠せませんでした。幸いなことに死傷者はいませんでしたが、リーダーの家や組合事務所を含む4棟、そしてNAMASUFAが所有していたという重要書類が全焼。現場には消防や警察、メディア関係者などはおらず、周辺住民が燻(くすぶ)る炎に水をかけていました。

スミフルの労働組合NAMASUFAのリーダー宅焼け跡(2018年12月撮影、FoE Japan)
バケツで水をかけ火消し(2018年12月撮影、FoE Japan)

NAMASUFAの事務所の焼け跡には、スミフルの備品と思われる焼け焦げた机もありました。日本へ出荷されるバナナの農園・梱包工場で働く労働者たちへの弾圧と理不尽さを目の当たりにし、気持ちの整理がつかないまま、その人たちへのインタビューを開始。根深く、深刻な実態を聞くことになります。

事務所焼け跡からスミフルの備品(2018年12月、FoE Japan)

なぜ、このような事態になってしまったのか。2017年6月に、スミフルの正社員であることを訴えてきた労働者側が最高裁判決で勝利を収めてから事態が悪化したと言います。判決の内容は労働組合NAMASUFAをスミフルの正式な労働組合と認定し、訴えていた従業員をスミフルの労働者と認めるというものでした。ところが、スミフル側がこれを無視。バナナプランテーション及び梱包工場等の操業を変わらずに続けたことにより、今年10月、フィリピン・ミンダナオ島南東部コンポステラ・バレー州におけるバナナプランテーションの主に梱包工場で働く従業員900余名による大規模なストライキが決行されました。しかし、ストライキに参加した900人は事実上の解雇となっています。暴行・放火・銃撃事件が相次ぎ、今回の組合リーダー宅への放火も二度目でした。

11月30日に組合代表の家に撃込まれた8発中2発の銃弾(2018年12月、FoE Japan)

訴訟やストライキを決行した理由には梱包工場での過酷な労働環境や不当な労働契約、有毒な薬の使用などがあります。毎日23時間、身体がボロボロになるまで働かされたという証言。過大なノルマを課せられ、最低賃金を大きく下回り、辞めた女性もいました。

また、バナナ農園においても、親が土地をバナナ栽培用に契約し、再契約をさせてもらえずに子どもにそのまま受け継がれてしまうケースも深刻で、自分たちが聞き取りしたその契約内容は、23年間も納品単価の据置きを可能にするものでした。自分の土地について、「Intervention Contract(介入契約)」を結ばされた男性は多額の借金を抱えていました。その聞き取りの内容は衝撃的なもので、10年間の契約が切れた後、バナナ農園の運営をスミフルが担うという名目上、スミフルに対し、年間1ヘクタールあたり35,000ペソ(約73,500円)を支払う必要があるという再契約を結ばされたというものでした。さらに、その契約書のコピーは手渡されることもありませんでした。当初の契約内容も、現在の契約内容も、スミフルのみぞ知るところで、自分たちには確認する術がないのです。現在その男性は500,000ペソ(約105万円)の借金があると言います。この地域の最低賃金が1日365ペソ(約767円)であることを考えると、とても払える額ではありません。

地元コンポステラ町での人権状況の悪化とスミフルが交渉を拒否しつづけている現状から、11月下旬、ストライキをしている900余名のうち、およそ330人はコンポステラ・バレー州から遠く離れたフィリピンの首都マニラに乗り込むことを決断し、大統領府前や労働雇用省前、日本大使館前などでのデモ活動を繰り返しています。コンポステラでの聞き取りを終え、マニラに戻ってから、早速その労働者たちが拠点にしている野外テントを訪れました。

その労働者へも聞き取りを行ない、明らかになったのは2014年から施行された『圧縮労働週間制度(Compressed work week)』が悪用されている実態でした。それは週に6日48時間働く代わりに、週に3日36時間ないし4日で48時間働くというものでした。そうすると1日12時間までが日払い(365ペソ=約767円)となり、残業代(1時間あたり52ペソ=約109円)は12時間労働した後に払われるというものです。つまり、同じ賃金(365ペソ)でも1日の労働時間を4時間長く設定できるので、事業者からすると支払いを抑えることができる=従業員は同じ時間を働いているのにもかかわらず収入が減ります。結果として、労働者たちは以前4時間分の残業を得ていた分を、追加で残業しなければ生活できないので、1日20時間以上も働くことになってしまうのです。

マニラでのデモ(2018年11月撮影、FoE Japan)

加えて、「数種類の農薬が使われている。最近では無臭のものになり、農薬を過剰に吸いやすくなり、深刻な健康被害になる恐れがある」と農薬の調合を担当していた男性は危惧しました。今回、梱包工場の労働者への調査では、PARC制作ビデオ『甘いバナナの苦い現実』で登場するような失明のような深刻な被害を受けた人はいませんでしたが、多くの人が皮膚病をはじめ、腹痛、高熱、アレルギーを訴えており、防具も十分に支給されなかったそうです。

マニラでの聞取り(2018年12月撮影、FoE Japan)

これらの事例は氷山の一角であり、こうした労働環境はスミフルに限ったことではなく、他のバナナブランドでも同じようなことが起きているという証言もありました。また、12月4日のTBSラジオで立教大学異文化コミュニケーション学部教授の石井正子さんが「バナナの大量廃棄処分の実態もあるが全容が明らかでない」と話されていたように、バナナには、他にも様々な問題があります。

朝ごはんやおやつにバナナを食べている方、チョコバナナやバナナパフェが好きな人も多いかと思います。栄養価が高く、健康にも良いとされるバナナを食べるなとは言えません。ついつい安いバナナ、黒い点のない黄色いバナナに手が伸びることでしょう。しかし、その安さや黒い点のないバナナを作っている人たちのことを忘れないでほしいと願っています。そのバナナは血に染まっているかもしれません。

なお、ストライキをするスミフルの従業員の方々は現在、収入がない状況で、募金などの支援により自分たちの正当な権利を勝ち取るための活動を続けています。マニラでピケを張る皆さんは、依然よい結果を得られていないことから、フィリピン人にとって家族と過ごすとても重要なクリスマスや年末年始も地元コンポステラ・バレーに戻ることができませんでした。様々なサポートを必要としている労働者の皆さんのため、カンパを呼びかけています。日本の皆さんからもぜひご協力をお願いします。

[1]財務省貿易統計のデータをもとに計算

※スミフル労働者の問題の詳細や経緯は、こちらもご参照ください。

※スミフル労働組合メンバーへ支援のカンパのお願い

現在、マニラでスミフルへの抗議の声を上げ続けているNAMASUFA(スミフル労働組合)のメンバーが、食料・薬などの生活支援と活動支援を必要としています。ぜひ、カンパのご協力をお願いします。

下記要項を事務局までお知らせの上、銀行口座にお振り込みください。
お名前/ご住所/お電話番号/ご支援金額/用途指定寄付(バナナ)であること

カンパ入金口座:

1)ゆうちょ銀行 〇一九支店(019) 当座口座 0163403
名義: アジア太平洋資料センター

2)郵便振替口座 00160-4-163403 アジア太平洋資料センター

※寄付に関するお問い合わせ

特定非営利活動法人 アジア太平洋資料センター(PARC)/担当:田中

〒101-0063 東京都千代田区神田淡路町1-7-11 東洋ビル3F

TEL:03-5209-3455

E-mail:office (@) parc-jp.org


日本の官民が進めるニッケル開発現場で深刻な被害


日本のフィリピン・ニッケル鉱山/製錬開発の環境・健康影響

日常の中で何気なく使っているスマホやパソコンのリチウムイオン電池。近年、電気自動車などの普及とともに、益々欠かせない電池となっています。その電池の原料として欠かせないのがレアメタル(希少金属)の一つ、ニッケルという鉱物。フィリピンは、現在世界最大のニッケル鉱石生産国で、日本が官民でその開発・製錬に深く関わっています。住友金属鉱山をはじめ、大平洋金属、双日、三井物産が現地企業などに出資し、また国際協力銀行(JBIC)が融資、日本貿易保険(NEXI)が付保しています。

日本が関わるフィリピンのパラワン州や北スリガオ州におけるニッケル鉱山・製錬所周辺地域の河川水や湧水などで、これまで日本の環境基準を超える六価クロムが検出されてきました。天然で存在することがほとんどない六価クロムは東京築地などでも基準値以上が検出され、話題となった毒性の高い物質です。皮膚の腐食、臓器障害、癌、DNA損傷の可能性もあると言います

2018年12月の現地調査(北スリガオ州)

この12月、FoEのスタッフになってから初めて、北スリガオ州タガニートでの現地調査に同行しました。成田空港を離陸してからおよそ16時間、3つのフライトを乗り継ぎ到着したスリガオ空港は美しい緑の山林に囲まれており、雨季の湿気を含んだ暑さと、空気の良さを感じながらプロペラ機を降りました。翌日、車で東岸沿いを2時間ほど南下したところにあるタガニート鉱山付近に到着。グーグルマップでも確認できますが、赤茶になった山肌が幹線道路からもちらほらと目視できるようになりました。しかし、PARC制作ビデオ『スマホの真実』で撮影された鉱山開発の現場が最もよく見える場所には立ち入りができませんでした。

今回、メインの水質調査は、タガニート鉱山/製錬所からの排水が流れ込むタガニート川、ハヤンガボン川にて二日間行われました。六価クロム簡易検知管の検査では引き続き複数地点で環境基準値(0.05 mg/L)を超えており、周辺地域の住民への健康被害や水生生物への悪影響などが懸念される状況でした。1日目の調査では、タガニート川とハヤンガボン川でそれぞれ0.1 mg/L、0.075 mg/Lと、基準値以上の六価クロムが検出され、2日目にもタガニート川で基準値以上の0.15mg/Lが検出。今後、採取した水は専門家に精密に分析してもらう予定です。

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タガニート川検査結果
(2018年12月撮影、FoE Japan)

今回、何度も現場で検査を行なってきたスタッフからも驚きの声が上がったのは、先住民族ママヌワの移転地近くに暮らすビサヤの人びと数軒が主に利用している湧水の検査結果。簡易検知管の検査で基準値の20倍である1.0 mg/Lが計測されました。湧水をホースで導水し、煮沸などの処理もせぬまま飲料水としても利用しているとのことでした。移転地での水不足の際は先住民族ママヌワの人びとも利用し、この地域の住民の重要な水源になっているようでした。

先住民族ママヌワの移転地近くにあるビサヤ住民の住宅(2018年12月撮影、FoE Japan)

六価クロムの簡易検知管は、汲んだ水を試薬の入った透明なプラスティック製のチューブに吸い取り、六価クロムに反応した場合、1〜2分経過するとピンク色に変化します。この湧水は、チューブで吸い取った直後からみるみるうちに色が変わり始め、その事態の深刻さを人々にどう伝えるのがいいのか、複雑な心境を覚えました。先住民族ママヌワの人びとにとっては、そもそも、鉱山開発によって余儀なくされた移転。移転先で十分な水がなく、このような危険な水を利用することになっている実態――日本の官民が多額の出資・融資をして進める事業によって、住民の人びとが深刻な汚染状態にある水の利用を押し付けられていると自分は感じました。

先住民族ママヌワの移転地近くに暮らす住民が主に利用する湧水の検査結果(2018年12月撮影、FoE Japan)
先住民族ママヌワの移転地近くに暮らす住民らが主に利用している湧水。ホースで導水している(2018年12月撮影、FoE Japan)

FoE Japanは、パラワン州リオツバでも六価クロムがニッケル開発・製錬所の周辺から検出され続けていることから、2016年に製錬事業の最大の出資者である住友金属鉱山に水質調査に関する要請書を提出しました。事業者は、2012年から、鉱石置き場のシート掛け、沈砂池の掘削、また、河川につづく沈砂池の出口付近における活性炭の設置を対策として行っているといいます。しかし、FoEに長年協力してくださっている専門家の大沼淳一氏(金城学院大学元非常勤講師、中部大学元非常勤講師、元愛知県環境調査センター主任研究員)は、その対策は十分ではないと指摘をしてきました。現に六価クロムは検出され続けているのです。

さらに、深刻な人権侵害も起きています。2017年1月、自分たちの土地・生活の権利を訴えてきた先住民族ママヌワのリーダーであるヴェロニコ・デラメンテ氏が殺害され、住民たちは事業に対する懸念の声を上げにくい状況となっています。また、今回、私たちが水質調査を行ったミンダナオでは、フィリピン政府により戒厳令が敷かれており、周辺の町では軍によるチェックポイントが点在するなど緊張感の高さを肌で感じました。

日々の暮らしに欠かせないリチウムイオン電池に含まれるニッケル。その開発は、深刻な水質汚染や住民リーダーの殺害といった人権侵害にも加担するものであり、多大な犠牲の上になりたっている――今回の訪問で、そのことを改めて痛感しました。

現代社会において、パソコンやスマホを手放すことは困難ですが、まだ使えるのに新しい機種を購入するといった行動は疑問を感じざるを得ません。大量生産・大量消費のひずみの一端を引き続き発信し続け、日本から遠く離れた出来事をより身近に感じてもらえるよう、そして、スマホやパソコンをはじめ、モノを大事に扱う大切さを改めて伝えられるよう、FoE Japanで活動を続けていきたいと思います。 (松本 光)

【COP24】サイドイベント報告:Reclaiming Power 〜化石燃料からのフェーズアウトを目指して〜

12月4日、Friends of the Earth インターナショナル(FoEI) は、他のNGOとともにCOP24の会場でサイドイベント「“Reclaiming Power: The People’s Global Movement to Phase Out Fossil Fuels for Real Climate Action(パワーを取り戻そう!真の気候アクションのための世界的な脱化石燃料の動き)」実施しました。同イベントで発せられた、世界各地の仲間からのメッセージを紹介します。

 

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Philippine Movement for Climate Justice(フィリピン)の代表イアン・リベラ氏は「中国、韓国、日本の石炭火力プロジェクトへの融資は、誰も望んでいない。」と発言。

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FoE EWNI(England, Wales, North Ireland)のレイチェル・カナーリー 氏は「脱石炭だけでは安心はできない。石油、LNGといった化石燃料も採掘時の環境への大きな悪影響、採掘場付近ではパイプラインの設営を巡っての問題がある」と発言。FoE EWNIはフラッキング(ガスの採掘方法の一種で、多大な環境負荷が発生する)に対するキャンペーンを展開しています。

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FoE ナイジェリアのワリ・オバワンジュ氏からは「地産地消の、再生可能なエネルギーが必要だ。LNGは利権争いなど紛争を地域にもたらしている。」とのメッセージがありました。

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また、参加者から化石燃料への代替案として、原発利用が提案されましたが「原発は、その建設過程から運営に至るまで非民主的に進められる。また、放射能に対する対処法がまだない。原発国フランスでは放射能漏れによって、何日も水が飲めないということが起きた。」との回答が登壇者からありました。

イベントでは、石炭をはじめとする石油や天然ガスといった化石燃料、原発、メガソーラー等、環境に悪影響を与え、人々の生活を脅かすエネルギーを“Dirty Energy(汚いエネルギー)”として批判。FoE グループは非民主的で、環境負荷が大きく、気候変動を加速させるエネルギーを”汚いエネルギー”であるとして反対しており、もちろん原発にも反対しています。

日本が直面しているエネルギーの問題は、今、世界のどの国でも直面している問題なのだと肌で感じます。

みなさん、これでも石炭を、化石燃料を、原発を進めますか?

これら“Dirty Energy”を「必要悪」と捉える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、誰かの犠牲の上に成り立つエネルギーは、本当に必要なのでしょうか?

危険で有害なエネルギーに拠らない経済の仕組みや社会のあり方に、私たちは正面から向き合わなければならないと感じました。

(高橋英恵)

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<参加報告>全国メガソーラ問題シンポジウム

「全国メガソーラ問題シンポジウム」に参加したので報告します。

日にち:2018年10月8日
場所:長野県茅野市茅野市民館
主催:全国メガソーラー問題シンポジウム実行委員会、NPO法人地球守

参加者(筆者推定):約500人
参加者層(筆者推定):地元市民、関係者

□講演内容

「FIT法の何が問題か?」佐久裕司さん

「現代土木の限界と災害、大地環境の仕組みから、メガソーラの何が問題を診る」高田宏臣さん

「メガソーラーをやっつけろ!闘う住民のための十訓」梶山正三さん

 

□各地報告とパネルディスカッション

①長野県諏訪市四賀ソーラー事業
②千葉県鴨川池田地区(田原地区)メガソーラー事業
③静岡県伊豆高原メガソーラーパーク発電所
④愛知県知多郡東浦町メガソーラー計画
⑤三重県四日市足見川メガソーラー計画

 

・伊豆高原案件では、林地開発許可の審議会を4回も実施したものの、許可されてしまった。現状では不許可となることはありえない許可制度である。その中で4回の審議回数になったのは活動の成果ではないか。

 

・太陽光発電事業に関わる規制、条例、法律は以下①~④である。

①環境アセスメント

・全国で太陽光を対象にしている県は長野県、山形県、大分県の3件のみ

・その他なんらかの対象としている都道府県は29ある

・事業者自らが実施するため、都合の悪いチェック等は実施しないという問題点がある。

②林地開発許可

・通常許可されてしまう制度となっている

③市条例(ある場合)

・伊東市の例では、市長の同意が必要としているが、罰則規定がないと無視されてしまうという問題がある

④改正FIT法

・2016年改正FIT法では接続契約をしていないと許可が降りなくなった

・28GWが失効し、22GWが残っている

・法令違反が見つかれば経産省が調査し、取り消しできることになった。伊豆では市長の不同意のままに実行することは違法である、とする活動を実施している

 

パネルディスカッションのまとめでは、このようなメガソーラ問題は原発と同じ構図であり、それは大手資本、海外資本によるものであること、地方にお金は落ちないこと、自然は破壊されること、土地問題があることとした。

 

□聴講した所感

このシンポジウムで報告された5つの事例は環境破壊型、地元非同意型ソーラ発電として許されるものではない。太陽光発電事業で問題を抱える事例はこの他に多数あるが、地元住民の同意が得られていない計画はなんらかの問題があると考える。まず真っ先に改善すべきところは事業者による正確な情報開示と丁寧な説明であり、その上で何が問題かを議論すべきである。しかし現状では情報がないのに問題点を指摘しなくてはならないという不条理を感じる。そんな中、各地の活動では地道に情報収集を行い、整理をしているのは大変なことである。

 

パネルディスカッションでは、現状の太陽光発電事業に関係する制度の整理をしていただき、「環境破壊型」ソーラー発電計画を止めるためのヒントや力の入れどころを示していただいたのが良かった。

 

FoE Japanとしては引き続き、持続可能なエネルギーとはなにかを考えて活動していきたい。

 

<プログラム:主催者HP>
https://megasolarsympo.wixsite.com/-solar-sympo/blank-2

 

(2018年10月 田渕)

誰のための「開発」?破壊ではなく共存の社会実現のための開発を

こんにちは。FoE Japanで約2か月間インターンシップをさせて頂いた、河西です。

インターンシップに応募したきっかけは、実家周辺の再開発です。幼い頃から慣れ親しんだ自然がどんどん失われていくのを見て、環境保護に興味を持ちました。しかし、環境保護やその政策について詳しく専門的に勉強したことはなく、ネットで得られる程度の知識しか持っていませんでした。そこで、FoE Japanでインターンシップをすることで知識を深められるだけでなく、日本の置かれている現状を知り視野を広げることが出来ると思い応募しました。

私は気候変動・エネルギーチームに所属し、4月にはアースデイ2018に参加しました。季節外れの暑い日の中、学生から年配のご夫婦までチラシ片手にブースを回り、積極的に話を聞いている姿があちらこちらで見受けられました。今回がアースデイへの初参加でしたが、国籍を問わない老若男女が多く参加していることに大変驚き、環境保護は世界的にも注目度が高いテーマなのだと改めて感じました。

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アースデイでは去年に引き続きパワーシフトアンケートも実施しました。そこで感じたことは、依然としてパワーシフトの手続きが大変そう・どの会社を選択すれば良いのか分からないといった意見が多いことでした。この点については、作成しているリーフレットをより有効活用し広めていく必要があると考えます。しかしその一方で、広報でパワーシフト体験談やパワーシフト宣言を扱うことが多く、少しずつではありますが着実にこの活動が広まっていることも感じました。

6月2日にはFoE Japan主催のシンポジウム・総会「環境と民主主義」に参加しました。世界で活動家に対する圧力が強まっているとのことですが、突然逮捕され長期にわたり拘束されている人がいるということは、ショッキングなものでした。また、インドネシアやフィリピンで大規模開発が行われ、住民の生活基盤が奪われていく様子が映像の中から伝わり、何とも言い表せない気持ちになりました。豊かだった農地は埋め立てられ、これまで生活用水として利用していた川からは生き物が消えて、白濁した死の川へと変貌しています。そして、そうして建てられた施設から作られたものが日本にも入ってきている事実も、考えさせられるものがありました。

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秋からはドイツ・フライブルクへ留学します。フライブルクは環境都市として積極的に環境保護に取り組んでいることで知られています。ごみの分別や、市街地での自然との共存に注目している点に興味を抱きました。さらに、政策で取り締まる一方で環境保護に関する教育にも力を入れており、市民一人一人の意識改革をしている点も興味深いです。期間は長くはありませんが、ドイツの取り組みを体感し濃い留学にしたいと思います。

環境保護は経済・産業などと比べ、すぐに目に見える成果が得にくい分野かもしれません。しかし、自然は私達の生活の基盤であり、地球環境が守られてこそ私たちの活動があります。社会が100年後、200年後も持続可能であるために、開発=共存の社会へと解決に向けた取り組みが出来たらと思います。

(インターン 河西)

北杜市・ソーラー乱開発で、こわされる自然と暮らし ~「これでも、環境にやさしい?」憤る住民

北杜市ソーラー(増冨)山梨県北杜市で太陽光発電事業の乱開発が問題になっている。中には、山林を伐採した急斜面にソーラーパネルを設置するケースや、水源地の元牧草地を開発するケース、住民の何の説明もなく、周りの森林が切られてパネルが設置するようなケースもある。
「豊かな自然を子孫に残したいと思っています。それなのに山を崩し、水を汚して、ソーラーパネルだらけにして、“環境にやさしい”なんて言えますか」と住民たちは憤る。

FoE Japanは、2017年9月13日、北杜市のいくつかの太陽光発電事業の事業地を訪問し、住民のみなさんと意見交換を行った。以下にその概要をまとめた。

山腹が一面ソーラーに?

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写真左:県下最大のソーラー事業が計画されている大平牧場跡地(写真提供/ころぼっくる会議)

県下最大の太陽光発電事業が計画されているのが増冨地区の大平牧場は、山梨県の百名山の横尾山の山腹に位置する。広い地域の水がめとなっているみずがき湖(塩川ダム)の集水域でもある。1969年に開墾され、牛や馬の牧草地として使われていた。周辺は保安林にもなっていて、山菜とりでも親しまれてきた。この牧草跡地で計画されている事業は、29ヘクタール、太陽光パネル6万枚、14.7MWという大規模なものだ。景観・生態系、水源・水質への影響などが懸念されている。

また、増冨地区の別の事業では、道に面した山腹の裸地にソーラーパネルを設置している。周辺には山林も隣接するが、そこも伐採してソーラーパネルを設置する計画となっている。

「太陽光発電事業とは知らずに売った」と元地権者。地元の不動産業者から土地の売却を持ち掛けられたという。山を持っていても高齢化で山林の管理ができずに持て余し、不動産業者からの話にとびつく人もいる。

「道をはさんで下には別荘もある。山林の伐採による土砂崩れが心配。地区全体の問題として話あう必要がある」と住民は語る。

「眺望権」「平穏生活権」求め、提訴

写真下:人家に迫る太陽光パネルと反対の看板 (写真提供:ころぼっくる会議)

コロボックル_ソーラーに反対看板小淵沢町に住むWさんは、南アルプスと八ヶ岳の素晴らしい眺望と緑豊かな土地が気に入り、10年前に移住した。しかし、一昨年、隣地での太陽光発電の事業が持ち上がった。庭の境界のぎりぎりまで高さ2.8mにも達するソーラーパネルが並べられ、楽しみにしていた眺望も遮られた上、通風や日照の阻害、パネルによる熱輻射などの被害を受けているという。Wさんは、眺望権と財産権、平穏生活権が侵害されたとして、昨年1月、事業者を訴えた。

乱開発規制できるか?「条例案」は審議未了

北杜市ソーラー(道端) 山梨県北杜市は八ヶ岳と南アルプス、瑞牆山や金峰山などの秩父山地に囲まれた風光明媚な土地。76%が森林だ。豊かな自然にあこがれた移住者も多い。国内有数の日照時間の長さもあり、太陽光発電事業が乱立するようになった。

現在稼働中の太陽光事業が1,468件、認定済みで今後稼働が予定されている事業が3,529件ある。ソーラーの乱開発に憤る市民たちが議員を動かし、今年6月、議員有志が「太陽光発電設備に関する条例案」を発議。しかし、審議未了になった。市も放置できず、事業者、市民も参加した検討会を立ち上げようとしている。

「これは原発と同じ」

「このままでは、豊かな自然が破壊され、北杜市はソーラーパネルの海になってしまう」

北杜市ソーラー(意見交換)と懸念する住民は多い。

「都市の電気を賄うために、立場が弱い地方でソーラー事業をやる。これは原発と同じ」と指摘する声もある。

「森を切っていたり、整地していたりするのを見るたびに、ああ、またソーラーかと胸が痛くなる。北杜市では市に届けられた事業で、すでに100万枚以上のパネルがあるとの試算がある。事業が終わったらあとのパネルの処理はどうするのかも解決していない。これでは環境にやさしい、とはとても言えない」と地元住民団体「北杜市の自然を未来(あした)につなぐ~ころぼっくる会議」のメンバーは憤る。「太陽光は決して原発の代替にはならない」。

3・11後、FoE Japanは、他の環境団体とともに、脱原発およびエネルギーの需要削減や再生可能エネルギーへのシフトを提唱してきた。しかし、「再生可能エネルギー」であっても、このような自然や住民の暮らしを破壊するような事業は容認できないだろう。

現在のところ、安易な答えは存在しない。乱開発の規制とともに、現に被害を受けている人たちの声に耳を傾け、状況を知り、住民や事業者も交えた場で議論を行うことが必要とされている。

(満田夏花)

※本視察には、「北杜市の自然を未来(あした)につなぐ~ころぼっくる会議」のみなさんにお世話になりました。厚く御礼申し上げます。

インドネシア 海に沈む農村

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ショートムービー『浸水する生活-インドネシア、プカロンガンの気候変動影響』(約5分・英語)

 

インドネシア、ジャワ海に面するプカロンガン市のバンドゥンガン村。
市街地から沿岸の方に進むと、屋根も窓もやけに低い家々が目立ち始めます。

村は稲作とジャスミン栽培を中心にした小さな農村でした。
2006年頃から徐々に海水が内陸に向けて侵入しはじめ、現在では100ヘクタールほどあった稲作地はすべて100cm~150cmもの深さの海水の下にあります。農民の中には行政の勧めもあり、魚やエビの養殖業へと転換した人もいますが、網を使った養殖場でも海面上昇に対応できず、全く収獲できない年も出てきています。
300戸以上の家屋と生活道路にも浸水し、井戸やトイレ、お風呂も使えません。浸水が始まった当初、住民の避難場所となっていた学校やモスクも今では冠水しています。
水の侵入を防ぐため、毎年のように50cmほど床を高くせざるを得ない家も少なくありません。冒頭の屋根や窓が低い家々は、床を何度も高くしていった結果です。
収入減を失っている住民たちには、このような家屋の改築等も大きな負担となっています。行政からは、一部の限定的な支援が突発的にあるだけで、住民は水の来ない場所に移住することもできず、悪化し続ける環境に耐え続けています。

FoE Japanは、プカロンガン市を含むジャワ海沿岸のコミュニティで2008年からマングローブの浸食防止作用を活用した適応対策を導入してきています。
しかし、バンドゥンガン村の状況には、マングローブだけでは対応しきれません。2015年よりプカロンガン市及び隣接するプカロンガン県の沿岸コミュニティの被害状況と行政プログラムの調査を行っています。現在、急速な環境変化によって住民が直面している様々な生活環境の問題と、地方行政の既存のプログラムを整理して結びつけることで、すぐにでも改善・支援を開始できる部分を明らかにしていってます。将来的には、住民ニーズに沿った新たな支援プログラム及び、効果的な支援メカニズムを地方行政の下に構築することを目指しています。

この度、FoE Japanの現地のパートナー団体であるBINTARI財団からスタッフ2名が来日し、2/23(木)、2/24(金)に、活動報告会とシンポジウムで、それぞれこれまでFoEとBINTARIが実施してきた適応対策の成果、そしてプカロンガン市等の被害の現状を報告します。ぜひ、ご参加ください。

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2/23(木)活動報告会「気候変動影響の中で生きる~インドネシア 海面上昇の村、水不足の農村の人々の挑戦」
 
インドネシアでは、気候変動が人々の暮らしに大きな影響を及ぼしています。農村では、降雨パターンが変化し、伝統的な農法や特産物の栽培ができなくなり、また深刻な水不足が生じています。一方で沿岸部では、海面上昇により広大な農地や養殖場が失われ、家屋や道路への浸水が慢性化しています。 FoE Japanは、現地NGOや大学と連携し、2008年からスマラン市、ウンガラン郡、プカロンガン市の農村や漁村にて、コミュニティ主体で気候変動影響に適応していくためのサポートを続けてきました。 本報告会では、住民理解の促進から、適応対策導入のための組織化、行政の能力強化、そして気候変動により収入減を失ったコミュニティの自立化までの経験、成果をご報告します。さらに、適応対策の可能性と限界について考えます。
日時: 2017年 2月23日(木)18:30~20:30
場所東京ウィメンズプラザ 第一会議室
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-53-67
参加費: 500円 (FoE Japanサポーター・学生無料)
申込み: http://www.foejapan.org/aid/community/mangrove/170223.html
主催・問合せ: FoE Japan 担当:柳井
プログラム
1.イントロダクション インドネシアの気候変動影響
2.農村の気候変動影響とアグロフォレストリーを通じた適応対策
スピーカー:Amalia Wulansari氏(BINTARI財団)
3.海面上昇の被害を受ける沿岸コミュニティのマングローブ保全を通じた適応対策
スピーカー:Arief Khristanto氏 (BINTARI財団ディレクター)
4.ディスカッション コミュニティの適応対策の可能性と限界
※逐次通訳あり
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2月24日開催「シンポジウム:アジアの気候変動の現実とClimate Justice(気候正義)」

http://www.foejapan.org/climate/lad/170224.html

洪水、熱波、渇水などの異常気象や海面上昇、農作物への被害…気候変動による被害は各地で見られています。アジアの途上国の貧困層は特に、農業や漁業に頼って生活していたり、住居が脆弱であることから気候変動の影響は特に甚大です。
2016 年、パリ協定が発効し、気温上昇を1.5 度までに抑える努力が書き込まれました。 その目標を達成するためにも、すでに被害を受けている人々を救うためにも、持続可能で公正な解決策をいますぐ実施していかなくてはいけません。歴史的に温室効果ガスを大量排出して発展を遂げてきた日本の責任は重大です。
同シンポジウムでは、国立環境研究所地球環境研究センターの江守正多氏を迎えて国際交渉や科学の動向を、実際に現地で影響を受けながらも対策に取り組むインドネシアの方々をお招きしてアジアで広がる気候変動の被害についてお聞きします。ぜひ、ご参加ください。

プログラム(予定)
【基調講演】
「気候変動の科学とClimate Justice」
…江守正多/国立環境研究所地球環境研究センター気候変動リスク評価研究室室長
▼COP22交渉のポイントと、COP23に向けて
…小野寺ゆうり/FoE Japan
▼COP22と気候正義を求める市民社会の声
…深草亜悠美/FoE Japan
▼インドネシアにおける被害の現状と取り組み
…Arief Khristanto 氏/BINTARI 代表
柳井真結子/FoE Japan
◆言語:日本語日 時 2017年2月24日(金)14:00~16:30(開場13:30)
場 所 文京シビック スカイホール(26階)(東京都文京区春日1‐16‐21)
参加費 1000円(FoEサポーター・学生500円)
定 員 80名
申 込 http://www.foejapan.org/climate/lad/170224.html
問合せ FoE Japan 担当:深草 (info@foejapan.org
★★こちらも御覧ください
動画「気候変動 スリランカの声」
動画「気候変動 フィリピン〜巨大台風の傷跡〜」

(柳井 真結子)