住民がパーム油発電を撃退!(京都府舞鶴市)

うれしいお知らせが飛び込んできました。京都府舞鶴市で日立造船が計画していたパーム油発電所。住民の猛反対でカナダの投資会社が撤退していましたが、6月23日日立造船の株主総会で住民に詰め寄られた常務取締役が「パーム油発電は今後しません」と明言しました。

粘り強い住民の反対が、ついに事業中止を勝ち取ったのです。

パーム油の需要拡大に伴うプランテーション開発は東南アジアにおける熱帯林破壊の最大の要因になっています。そればかりか、京都府福知山市で運転中の三恵エナジーのパーム油発電所では、騒音・悪臭で近隣の住民たちが悩まされています。

H.I.S.が宮城県角田市で進めるパーム油発電所はこのまま稼働してしまうのでしょうか? 国際的な注目が集まっています。>署名サイト:H.I.Sさん、熱帯林をこわすパーム油発電やめて!

この件について、日本のバイオマス発電について国際的な情報発信を続けている米NGOのマイティー・アースがプレスリリースを発出しました。地元の住民の方の声やFITの政策まで、全体的な状況をよく伝えていると思いますので、以下に和訳を掲載します。英語のオリジナルはこちらをご覧ください。

プランテーションのために伐採された山(マレーシア・サラワク州)

写真:パーム油生産のプランテーション開発のために皆伐された山(マレーシア・サラワク州)(c)FoE Japan


Mighty Earth
プレスリリース
2020年7月1日

 

日本最大のパーム油燃焼発電所建設計画が中止

環境グループ、政府に対しFITによる再生可能エネルギー促進政策の改革
HISに対しパーム油発電建設計画を中止するよう要請

国内外の環境NGOのグループは、本日、舞鶴市にパーム油を燃料とする発電所を建設するために設立された会社、「舞鶴グリーンイニシアティブス 合同会社」の解散にあたり、歓迎の意を表明する。物議を醸しているこの66メガワットの大規模バイオマス発電所に対しては、地元住民が、日本や国際的な環境団体の支援も得て、9カ月にわたり反対運動を続けてきた。

ウータン・森と生活を考える会」の石崎雄一郎氏は「これは熱帯林と舞鶴市民にとって大きな勝利でです。旅行会社エイチ・アイ・エスが宮城県で、京都府で三恵エナジーがパーム油発電所を進めていますが、両社に対して事業への関与をやめ、日本政府に対しては、気候変動を悪化させるバイオマス発電への補助金を通じた支援をやめるよう求めます」と話す。

舞鶴パーム油発電所はパーム油を燃料としていることが問題視された。日本は主としてインドネシアおよびマレーシアで生産されたパーム油を輸入している。絶滅危惧種オランウータンの生息環境も含む原生の熱帯林が失われつつあり、過去20年間にインドネシアとマレーシアの350万ヘクタールの熱帯雨林がパーム油生産のためのアブラヤシ農園に転換された。日本は年間約75万トンのパーム油を輸入しており、主に食品や製品に使用されている。もし舞鶴パーム油発電所が建設されれば、年間12万トンのパーム油を燃焼することになり、パーム油生産による環境影響はさらに大きくなる。

11,000人の反対署名など住民からの圧力を受けた事業の投資会社であるカナダ・トロントのAMPエナジーは、2020年4月にプロジェクトから撤退した。4月22日のアースデーに送られた書簡 の中で同社代表取締役のポール・エゼキエル氏は「今後、当社及び当社グループはパーム油を燃料とする発電事業の検討は行いません」と述べた。この中で、エゼキエル会長は「地元住民の強い反対」を含むプロジェクトの困難さを引き合いに出した。

AMPは脱退したが、工場の建設・運営を担う予定の日立造船が新しい投資会社を探すかどうか不明であった。しかし、2020年6月23日の定時株主総会で、舞鶴市民グループの森本隆氏が、日立造船の白木敏之常務取締役に同工場の建設計画について質問したところ白木氏は、「今後、パーム油への投資が行われる見込みがないため、日立造船はこのプロジェクトから撤退する」と回答。6月26日には舞鶴市長が同発電所建設の中止を表明した。

「数年間にわたるであろうと思われたこの発電所との戦いのために、私たちは総力を結集しました。たった9カ月で事業中止に追い込めたことは驚きです。地元の草の根活動と経験豊富なNGOからのアドバイスを組み合わせることで勝利を収めることができたと思います。世界はさまざまな問題を抱えていますが、他の地域の人々も社会を良い方向に変えることができると思います」と「舞鶴西地区の環境を考える会」の森本隆氏は述べた。

ゆっこ勝利ポーズ

長期的なトレンド

日本では、政府によるインセンティブが発電用のパーム油の使用を促進している。2012年には、固定価格買取制度(FIT)により、再生可能エネルギーの発電電力を電力会社に固定価格で買い取ることを保証する制度が開始された。それ以降、FITによるバイオマス発電に対する買取価格(主に木質ペレット、パーム核殻(PKS)、パーム油)は、24円/KWhと世界で最も高かった。

バイオマス発電のためにパーム油を燃やせば燃やすほど、世界のパーム油需要は増える。2018年3月時点で、日本のFITで承認されたパーム油発電所プロジェクトの総容量は1700 MWであり、もしすべてが建設されるとすれば、毎年340万トンのパーム油が燃やされることになる。これは、現在の日本のパーム油輸入量のほぼ5倍である。この需要の急増は、環境に大きな影響を与える恐れがある。

日本の環境NGOは、宮城県角田市に建設中である、舞鶴発電所に次ぐ規模のパーム油発電所とたたかっている。これまでに20万人の反対署名を集めた。この発電所は、日本の大手旅行会社H.I.S.の子会社であるH.I.S. SUPER電力によって建設されている。

「H.I.S.は旅行会社として、従来からボルネオなどでエコツアーを行い、大自然の魅力を体験しようと宣伝してきました。電気を作るために大規模に森林を破壊するパーム油を燃やすビジネスになぜ乗り出すのか、どうやって顧客に説明するのでしょう。私たちは、H.I.S.に対し、日立造船の先例に倣い、パーム油発電所への関与を放棄するよう求めています」と、FoE Japan、満田夏花氏は言う。

泥炭地(西カリマンタン)

写真:プランテーション開発のために開発された泥炭地。蓄えられていた膨大な量の炭素を二酸化炭素として放出する(インドネシア・西カリマンタン州)(c)FoE Japan

環境を破壊するバイオマス発電への補助が、気候変動を悪化させる

残念なことに、日本政府のバイオマス発電促進政策は、森林破壊や著しい温室効果ガス排出につながる燃料源を避けるためのセーフガードを設けていない。経済産業省が2019年に行った分析によると、パーム油の栽培、加工、輸送を含むライフサイクルを通しての排出量は天然ガスと同程度である。しかし、熱帯林が伐採されると、排出量は5倍になる。泥炭地が開発されると排出量は139倍にもなる。
パーム油の燃焼に加えて、日本のバイオマス政策は、森林の伐採や木材の燃焼も促進している。伐採後の森林の成長と炭素の再吸収は遅いため、気候変動に対する取り組みを妨げる。日本で燃やされる木材のほとんどは、ベトナムや北米から輸入される。
舞鶴パーム油発電所に国際的批判が集まる
日本のバイオマス発電所の急増に環境グループが警戒感を示す中、舞鶴パームオイル発電所は、国際的な注目を集めた。国内外の44の金融機関にあてた共同書簡では、8カ国25団体がこのプロジェクトおよびパーム油発電に反対した。
「気候変動を止めるための時間はあと数年ほどしか残されていない中、間違った気候変動対策に時間を浪費することはできません」と、マイティー・アースのシニア・キャンペーン・ディレクター、デボラ・ラピダス氏は言う。「パーム油を燃やすと、炭素を吸収するために必要な森林の破壊が加速します。木質バイオマスを燃やすと、何年分もの炭素の蓄えが、文字どおり煙になってしまいます。舞鶴のパーム油発電所を停止することは、バイオマスの誤った約束を終わらせるための重要なステップであり、真に再生可能な電力のソリューションに焦点を当てるのに役立つでしょう。」

FITの改革が急務

2020年4月、経済産業省は、環境団体の働きかけ応じて、固定価格買取(FIT)制度のもとで、新規に導入されるバイオマス燃料については温室効果ガスの評価を求めることとした。パーム油、木質ペレット、PKS(パーム核殻)などの従来から認められてきた燃料についても、温室効果ガスの排出を厳しく制限するよう求められる。

「日本の再生可能エネルギー促進政策を通じて、気候変動を悪化させる燃料に補助金を出すべきではありません」と、地球・人間環境フォーラムの飯沼佐代子氏は言う。「温室効果ガスの排出量が高いパーム油は固定価格買取制度から除外されるべきであり、経済産業省は木質バイオマスについても厳しい排出枠を採用する必要がありますあります。」

舞鶴パーム油発電所キャンペーン・ウェブサイト
https://maizuru-palm.org/

コンタクト:ウータン・森と生活を考える会 石崎雄一郎 contact-hutan@hutangroup.org

※参考サイト:
Q&A 何が問題?H.I.S.のパーム油発電
https://www.foejapan.org/forest/palm/190609.html

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写真上:パーム油生産のためのアブラヤシ農園(c)FoE Japan

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写真上:アブラヤシの実 (c)FoE Japan

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※パーム油生産のためのアブラヤシ農園開発は、大量に炭素が蓄積されている泥炭地をも開発し、インドネシアでたびたび発生する森林火災の原因とも指摘されている。(c)WALHI リアウ(FoEインドネシア・リアウ支部)

第4回期日を迎えた横須賀石炭訴訟。国からの回答弁論はなく。

6月26日、横須賀石炭火力訴訟第4回期日が、東京地方裁判所で執り行われました。

新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、傍聴者数を定員の約1/4に制限して開催された今回の裁判では、前回に引き続き「裁判の正当性」について議論されました。

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裁判所に向かう原告、訴訟サポーターたち。

法廷では、原告代理人より、裁判の正当性として、(1)処分性、(2)原告の適格性、について、再度強調した形で主張されました。主張は15分以内にという裁判官からの要請があり、限られた時間の中ではありましたが、上記2点の妥当性として、下記のように論点を整理されました。

 

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法廷での原告代理人の主張をもとに、筆者作成。

 

また、原告代理人は、被告の反論書類の提出が遅れており、それが裁判の進行に支障をきたしていることを指摘。被告は、提出書類の遅れの理由として、新型コロナウィルスによる業務形態のやむを得ざる変更をあげましたが、原告側は同様の状況下にもかかわわず、今回の期日への準備を進めてきたこと、そして、緊急事態宣言が発令された中においても横須賀石炭火力の新設工事は通常通り進行していた点をあげ、被告の主張の妥当性を問いました。しかし、原告側の主張は虚しく、書類提出の期限の前倒しはかないませんでした。

 

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閉廷後、手短に原告代理人の小島弁護士より、今回の裁判についてお話いただきました。

 

7月8日(水)14:00〜15:00に、オンラインにて、過去4回の期日を含めた横須賀石炭火力訴訟の報告会を実施します。参加ご希望の方は、こちらよりお申し込みください。

また、次回期日は、10月14日(水)14時から、東京地方裁判所で開催の予定です。

 

気候変動は待ったなしの状態です。「気候危機」という言葉が閣議決定に盛り込まれ、今月12日には、環境省も気候危機を宣言したばかりです。また、次回期日までの4ヶ月の間では、昨年や一昨年同様、巨大台風による被害も予想されます。10年後、20年後に、多くの命が失われたり、財産が奪われたりするような深刻な被害の増加を食い止めるには、「締め切りまでに間に合えば良い」というような悠長な概念は通用しないはずです。

FoE Japanは引き続き、横須賀で建設が進む石炭火力発電所の建設中止を求める人々とともに、石炭火力に依存する社会からの脱却のために尽力していきます。

(高橋 英恵)

*横須賀石炭訴訟についてはこちら:https://yokosukaclimatecase.jp/

*「石炭火力の電気はいらない!」事業者JERA(東京電力・中部電力の合弁会社)へのアクションはこちら!

→おうちのでんきから未来を変える!パワーシフト・キャンペーン

→横須賀の石炭火力発電所建設計画の中止を求める署名

 

*横須賀石炭火力の中止を求める若者たちFridays For Future Yokosukaも活躍中!最近の活躍についてはこちら

2020/6/8 「Fridays For Future Yokosukaからの手紙に小泉環境大臣が言及」東京新聞、朝日新聞

2020/6/26「小泉環境相、学生と意見交換 横須賀の火力中止要望には…」神奈川新聞

コロナ危機をどう乗り越えるか 〜システムチェンジに向けた連帯を〜

先月末、FoE ドイツの呼びかけで、このコロナ危機について意見交換や情報交換をする機会がありました。

ヨーロッパだけでなく、アフリカやラテンアメリカ、米国、アジアから40人近くのFoEのメンバーが集まって、「このコロナ危機をどう捉えるか」という話から始まり、途上国や先進国で起きていることの共有、そして、私たち市民が持続可能な社会のために目指すべき経済復興対策はどのようなものかという問題提起がありました。

話の中で出たのは、

・コロナ危機は、今まで見えないふりをしてきた気候変動による甚大な被害、生物多様性の損失、所得格差の拡大などの延長線上にあるもの。コロナ危機は、これらの社会問題・環境問題の原因である今の社会の仕組みが、限界であることを教えてくれている。

・コロナ危機の中で、不安定な雇用や家庭内暴力等に苦しむ人々、社会のセーフティーネットから溢れてしまう人々の存在など、社会の脆弱性が顕在化し、人々がこれらに気がつくようになった。その中で、お互いを気遣いあう人々が増えてきていたり、人間活動の低下による自然の回復を目にして自然との関係を見直そうという議論が盛んになってきたりしていることも事実である。

・南アフリカ(途上国で起きていること):多くの人々が電気など、基本的なニーズへのアクセスが困難な状況。すでに気候変動等の影響を被っている人ほどコロナ危機対策の網の目からこぼれ落ちている。今の状況は、もはや気候危機が起きたようなもの。

・米国(先進国で起きていること):政府から化石燃料産業や航空産業など、気候変動を加速させるような産業へ多くの補助金が渡されている。

 

会の後半は、今後、この危機を乗り越え、私たち市民で持続可能な社会をつくるための経済復興対策はどのようなものであるべきかという話になりました。話の中で出てきたのは、まずは経済の目的を考え直すこと、つまり人々や地球の健康の価値を見直すことが必要であるという話になりました。

そして、人々や地球の健康を大切にする経済の条件として、税の公平性の実現、公共サービスの提供、地産地消とフェアトレードの推奨、協同組合などを中心とした経済活動の拡大、利益追求の名の下に自然や人権を搾取するような企業に対する、拘束力のあるルールの確保、といった案が出ました。

 

また、全体を通してのキーワードは、”Just Recovery”という言葉。

”Just Recovery”とは、この危機による経済的打撃から回復する方法として、環境破壊や所得の格差を広げてしまうような過去の社会・経済の仕組みを繰り返すのではなく、社会的公正・環境に配慮しながら、回復しようという考え方です。

具体的には、気候変動の原因となる化石燃料ではなく、再生可能エネルギー普及をはじめとした脱炭素社会構築のための補助金や仕組みづくり、また、脱炭素社会に向けた仕事を増やし、すべての人々が人間らしい仕事と生活ができるような雇用支援をしていくことで、これ以上の自然破壊を止め、人々の公平性を実現していこうという考え方です。

例えば、政府からのお金が化石燃料産業などを維持するために使われてしまったら、短期的に求められる必要な緊急対策や、長期的な視野が求められる脱炭素社会のための技術や雇用の保護に十分なお金が行き届来ません。

 

繰り返しになりますが、私たちは今、気候変動、生物多様性の損失、所得格差の拡大、ジェンダーの不平等など、社会的問題と環境問題が複雑に絡み合った世界にいます。これらの問題を後回しにし、その悪影響が顕在化したのが、今回の危機と言えます。

だからこそ、私たちは個々の問題に個別に対処するのではなく、コロナ危機の影響を最も受けている人々の声を聞きながら今まで複数の危機に立ち向かってきた人同士で連帯し、すべての人が尊厳を持って生きることができる経済・社会を目指す必要があります。

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持続可能な社会とはどのような社会なのか、そして政府の打ち出す政策が持続可能な社会につながるものなのかを私たち市民がしっかり確認し、政府に訴えていくことが求められているように感じます。

(高橋英恵)

 

参考:

Friends of the Earth international, 2020/5/6 “Solidarity with peoples affected by coronavirus crisis – Friends of the Earth International”

https://youtu.be/DDrGl1rxtzg

 

Friends of the Earth international, 2020/4/15 ”COVID-19 crisis is a wake up call for system change”

https://www.foei.org/news/covid-19-coronavirus-crisis-system-change

 

Friends of the Earth Europe 2020/4/20 “Coronavirus: Choices lie ahead for how we build back our broken economies”

http://foeeurope.org/coronavirus-choices-lie-ahead-070420

 

Friends of the Earth APAC, 2020/4/26 “COVID-19: An Opportunity for System Change”

https://foeasiapacific.org/2020/04/26/covid-19-an-opportunity-for-system-change/

 

Friends of the Earth US, 2020/4/15 “New Report: Big Oil’s Money Pit to Reap Stimulus Billions”

https://foe.org/news/new-report-big-oils-money-pit-to-reap-stimulus-billions/

デジタルストライキに参加して

こんにちは。インターンの鷹啄です。

コロナの影響で様々な活動が停止となってしまい、モヤモヤしている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

しかし、誘惑の予定がないこんな時だからこそオンラインセミナーに沢山参加できたり、自分の生活について考え直したり、いつもとは違うことができて楽しいなと個人的には思います。

 

さて、4月24日にFridays For Futureが開催したオンラインストライキですが、皆さんも参加しましたか?ツイッターで「#気候も危機」というハッシュタグが無事トレンド入りしたのを見たときはとても嬉しかったです。インスタグラムでもタグを追うと、大学で見かけたことのある人の投稿があったり、仲間がこんな身近にいたんだなぁと、新しい発見もありました。

#気候も危機

他の参加者からは、「プラカードの画像を投稿してくれた友達が15人もいた!」「友達が私の投稿をシェアしてくれた!」など、嬉しい報告がありました。

まだまだ気候変動に対して危機感を持つ人は多くありませんが、確実に増えてきているのではないでしょうか?

気候変動も人々の命を脅かす大問題。

コロナ渦でもこのことを忘れずに活動を続けていきましょう!

 

みなさんも健康にはお気をつけくださいね。

「自然を元に戻してほしい」横須賀の漁業者を取材して

1月21日、横須賀石炭火力訴訟の原告団長と弁護士とともに、裁判への意見陳述の準備のため、横須賀で漁業を営む方を訪問しました。

その漁師さんは視突漁(箱メガネで海の中を覗きながら、銛や網を用いて魚介を獲る漁法)を営んでおり、今回、その漁場の一部を案内くださいました。

船で漁場に向かい、海底を箱メガネで覗いたところ、海底の砂がよく見え、ところどころにウニが見られるような状況。

海底の皆で交互に見ている中、「何も見えないでしょ?」と漁師さん。

彼の言葉に戸惑う私達に、漁師の方はこう続けました。

「昔は、この時期になるとカジメやアラメとか、海藻の芽がこの辺り一帯に芽吹いていたんです。でも、10年くらい前から少なくなって、この2年で激減。今年なんか、このように、もう100%なくなってしまった。」

アラメやカジメなどの海藻の芽吹いていた時は、岩場が真っ黒になっていたそうです。しかし、現在は、海藻のようなものは一切見当たらず、岩肌が見え、ウニしか生息しないような状態に。地上で例えると、土地が砂漠化し、木が生えてこなくなってしまう状態と一緒だとおっしゃっていました。つまり、東京湾では既に、”海の干ばつ”が起きているともいえます。

海藻がなくなることは、貝や魚の住む所が失われることと同じです。

また、そのような環境で生息しているウニにとっても十分な食糧が無いため身は無く、商品にできないとのこと。ウニもギリギリで生きているので、海藻の種を植えても、ウニに食べられてしまうそうです。

天気の変化においても、この地域では今まで冬になると西風が吹き、それによって岩場が洗われ、海藻が芽吹く土壌が形成されるとのこと。しかし、風が吹かず、そのサイクルがなくなってしまったのではと漁師さんは言います。

「海が死んでいる」

漁師さんはそうおっしゃっていました。

東京に住んでいると、気候変動や環境汚染の影響は分かりにくいと思います。

しかし、自然を相手にする漁師さん。天候や海の状況、すべてが昔と同じ感覚では考えられないとのこと。

このような変化の原因が気候変動によるものかはまだ解明されていません。しかし、海の環境が年々悪化しており、そのせいで、江戸時代から受け継がれてきた方法で海藻をとり、生活をしてきた漁師さんの生きる術が失われつつあることは確かです。

「自然を元に戻してほしい」

それが彼の願いでした。

横須賀石炭火力新設を問う行政訴訟は2019年5月に提訴。2019年10月2日2019年12月23日と裁判が行われました。

次回期日は3月23日(月)14:00~、場所は東京地方裁判所(東京・霞ヶ関)です。裁判後、同裁判の報告会を会場近くの日比谷図書館にて開催します。

法廷に入廷できなかった場合も、裁判の様子はこちらの会にて裁判の報告をさせていただきますので、ぜひご参加ください。

報告会の申込みは、下記webサイトに掲載の予定です。
https://yokosukaclimatecase.jp/

FoE Japanは、引き続き、原告および訴訟サポーターのみなさまとともに、石炭火力の新設計画中止を求めて活動してまいります。

   (鷹啄りな・高橋英恵)

   

【COP25 Vol.7】 COP25閉幕―主要議題で合意に至らず。評価できる点も

12月13日に交渉最終日を迎える予定だったCOP25。土曜深夜も交渉が続いた後、日曜昼過ぎに閉幕しました。気候変動がもはや目の前の危機として認識される中、先進国は気候危機の現実から目をそらし、国際市場メカニズムなど「誤った気候変動対策」を推進していることをFoEグループは批判してきました。

 会議終盤、主要議題であった国際市場メカニズムや目標引き上げは合意に至らず、これらの論点は来年の中間会合に持ち越されることになりました。しかし、既に発生・拡大している損失や被害に対応するため、途上国提案を基にした支援制度の強化が盛り込まれました。また、温室効果ガス排出の賠償責任を負わないとする文言を求めた米国の主張は途上国によって拒否されました。国際市場メカニズムに合意がなかったことは、むしろ多くの排出を許すルール決定に至らなかったという意味であり、今後も国際市場メカニズムをめぐる戦いは続くことになります。

FoEグループは、温室効果ガス削減に対する拘束力を持たないパリ協定では1.5℃目標達成は難しく、そもそもパリ協定自体がとても弱い枠組みになってしまったことを批判してきました。

私たちに残された「カーボン・バジェット(炭素予算。温度目標達成と整合する、温室効果ガスの累積排出量の上限値)」はほとんどありません。一刻も早く、社会全体の脱炭素化を行わなくてはいけません。しかし、温室効果ガスの排出は増え続けています。1.5℃目標達成のためには、2030年前でに2018年比で55%の排出削減を行わなくてはいけません(UNEP Emissions Gap Report 2019)。

現在の気候危機に対する責任が大きく、資金や技術を持つ先進国にこそ大きな削減義務があるはずですが、目標引き上げや次回の長期資金目標に関する交渉結果は乏しく、途上国にとって残念な結果に終わりました。

 一方で損失と被害の賠償責任を認めないという文言をどうしても含めたかった米国の主張は日本を含む先進国に支持されたものの、途上国の強い反対で最終的に落とされました。今回のCOPで損失と被害に関する支援強化のための専門家グループとサンティアゴネットワークの設立も決定され、それは評価できる点といえます。

来年のCOP26はスコットランド・グラスゴーで開催される予定で、4年連続ヨーロッパでCOPが行われることになります。特にアジアやラテンアメリカの途上国や市民社会の参加への負担は大きくなるので、参加の機会確保が課題です。また来年は京都議定書が終わり、パリ協定が始まる年でもあります。この10年は「(再び)失われた10年」と表現されることもあります。排出は増え続け、被害は拡大しています。パリ協定の実施はそれぞれの国にかかっていますが、各国が公平性をもって削減に取り組むためルールや、1.5℃目標達成のためにどのように各国目標を引き揚げさせるのか、国際市場メカニズムなどの誤った対策を推進させないためにもCOPの場での戦いも重要です。

FoEグループはこれからも現場でたたかう人々とともに、グラスルーツの取り組みを進めるとともに、国際レベル・国内レベルの政策をウォッチしていきます。

*COP25の交渉結果・合意内容に関する詳細な報告は後日掲載予定。

(深草亜悠美・高橋英恵・小野寺ゆうり)

【COP25 vol.6】市民の警鐘は会場に響くか? 参加権利剥奪を伴った大規模抗議

12月11日14時40分、各国閣僚が交渉を実施する会場の前で、笛の音が響き渡りました。この合図の下、気候正義を求める市民団体、若者グループ、女性団体、先住民族団体、労働組合等の多くの市民団体と人々が連帯し、先進国に対して野心の引き上げ、気候危機に対しての行動を求める大規模なアクションを起こしました。

一週間以上にわたったこれまでの交渉では、重要な議題にほぼ進展はありませんでした。重要な議題に中には、歴史的に気候変動の原因を作り続けてきた先進国や企業に求められている、すでに深刻化しつつある損失と被害を受けているコミュニティへの資金提供も含まれます。その代わりに交渉の場から聞こえてくるのは、交渉のグリーンウォッシュ化、間違った気候変動対策、そして抜け穴だらけの市場メカニズム等、気候危機をさらに加速させるような内容です。

さらに、先進国は人権保護メカニズム、ジェンダーアクションプランを市場メカニズムから取り除こうとしています。このような状況に危機感を覚えた市民社会がアクションを企画。当初、参加者は会場内でスピーチを試みましたが、会場の警備の強い指示の下、外へ移動。

外に出てもなお、人々の口から発せられたのは、気候危機の回避に欠かせない社会公正実現の必要性、女性への不公正や妹(姉)が受けた暴力への怒りと悲しみ、先住民族が先祖代々管理してきた土地・森林・水を利益のために奪われつつある現状、未来への危機感、そしてそれでも立ち上がるという市民の歌。このように、スピーチをした気候正義のためにたたかっている人々は皆、口を揃えて「ここで発せられている言葉は抗議の場に集まった人々たちのものだけではなく、自分は世界で苦しむ何百万もの人々を代表している」と訴えました。

当初、参加者らは交渉会場の前で、 “cacerolazo(カスロラゾ)”という、本来の開催国であったチリを含む南米等で頻繁に採用される、鍋やフライパン、その他の道具を叩いて注意を引く抗議スタイルに倣い、手もちのカップやCOP会場で配られたカトラリーを使って音を鳴らしながら、最後の交渉に向かう各国大臣たちに、パリ協定下での市場メカニズム導入への反対、損失と被害への資金援助の強化、そして人権尊重を訴える予定でした。

同時に、交渉会場の外で開催されていた市民サミットに参加していた人々も、交渉会場の入り口まで押し寄せ、会場内でのアクションと同時のメッセージを発信すべく、手持ちの道具を使って音を鳴らしていたそうです。

総参加者数は約320人。しかし、アクションに参加したしていないにも関わらず、イエローバッヂ(交渉の傍聴団体)の参加者は、この日の会場の出入りを禁じられることになりました。

行動の実施が伴わないスピーチが続いてきた25年間。

すでに途上国の何十億人もの人々は、気候危機によって荒廃した生活をすでに目にしています。

市民社会はそのような空虚な言葉へのあきれを通り越して、必死になって「Climate Justice(気候正義)」の実現を、各国政府に訴えています。

交渉の場に叫ばれた人々の声、先進国が行動を起こさないことに対する市民からの警鐘とも言えるカセロラゾの音が、各国代表に届いていることを望みます。

(高橋英恵)

【COP25 Vol.5】COP25は2週目へ

COP 2週目に突入しました。2週目からは各国の閣僚級が集まり、ハイレベル交渉が始まります。1週目の金曜日には気候マーチが開催され、50万人があつまり(主催者発表)、気候正義を求めました。ゴールに設置されたステージにはグレタの姿もあり、希望はCOPではなくマーチに集まっている人々の中にあると訴えました。

 10日火曜から閣僚級会合が始まりますが、いくつかの議題に関する実務レベルの交渉は遅れを見せており、補助機関会合の結論は9日の夜にまでもつれ込む見込みです。FoE グループが注目する交渉の状況はどうなっているのか、そして今週の交渉の行方について、まとめました。

 損失と被害

 気候変動への適応が限界を迎え、すでに各国で損失と被害が生じています。損失と被害に関しては、条約のもとにあるワルシャワ国際メカニズム(WIM, Warsaw International Mechanism)というメカニズムが、専門的アドバイスや損失と被害に関する情報収集などを行なっていますが、今回のCOPでWIMのレビューが行われており、WIMの機能やガバナンスについて議論が行われています。

 「損失と被害」は米国がもっとも強固に懸念を示す議題でもあります。アメリカの強い主張で、COP21の決定文書に、パリ協定の損失と被害に関する第8条を損失と被害の責任の所在を追求する根拠とはしないとする文言がもりこまれました(注1)。

 今回のWIMのレビューにおいて、米国は損失と被害の責任や賠償について、COP21の決定文書に挿入されたものと同じ文言を挿入しようと強い姿勢を示しており、パリ協定でも損失と被害への先進国の責任追及を避けようとするアメリカの強い主張が反映されてしまうことになります。

 国際市場メカニズム

 市場メカニズムに関する交渉は遅れています。

 月曜日の早朝現在、いまだ様々な国が求める主要な主張は残ったまま交渉文書が出てきており、本格的な交渉は明日からのハイレベル会合に決着が持ち越される見通しです。(市場メカニズムについて詳しくはこちら)

 2週目に向けて

 2週目はハイレベル会合に入り、市民社会参加者はほとんどの交渉を傍聴できなくなります。とくに市場メカニズムの議論は、さらなる大型排出を許してしまう抜け穴のあるルールが交渉に含まれており、市民社会は非常に大きな危機感を抱いています。

 また、議長国が、Climate Ambition Alliance(気候野心連合)を呼びかけており、野心(気候変動目標)の引き上げを宣言する国を集めています。水曜日にオフィシャルイベントが企画されていますが、視点は公平性に欠けており、「宣言」や「イニシティブ」にとどまり、具体的な行動に結びついているのか市民社会がしっかりと監視する必要があります。

また、第一週目の交渉の様子、第二週目の交渉への期待に関する解説についてはこちらもご覧ください。

(小野寺ゆうり・高橋英恵・深草亜悠美)


注1: CP21.52 Agrees that Article 8 of the Agreement does not involve or provide a basis for any liability or compensation 

【COP25 vol.4】 国際排出取引市場にNOを!気候正義に基づいたルールにYESを!

COP25開幕以来、今回の交渉の大きな論点の1つであるパリ協定第6条の「国際排出取引市場(Carbon market)」に対し、市民社会が強く反対の声を上げています。

そもそも国際排出取引市場とは?

国際排出取引市場の仕組みとしては主に「キャップ・アンド・トレード(cap and trade)」と「カーボン・オフセット(Carbon offsetting)」の2種類があります。

「キャップ・アンド・トレード(cap and trade)」とは、国や地域レベルで排出できる温室効果ガスの排出総量枠(キャップ)を定め、その排出量を排出者(企業・事業等)に分配し、それぞれの排出者が余剰排出枠を売買(トレード)する仕組みのことを言います。

2つめの「カーボン・オフセット(Carbon offsetting)」は、吸収量もしくは排出削減量で他者の排出量の一部を相殺できる仕組みです(例:温室効果ガスを“排出”した代わりに、埋め合わせとして植林・森林保護等を行い、温室効果ガスを“吸収”する)。また、吸収もしくは排出削減できた分を削減クレジットとして、他の排出者に販売することができます。

国際炭素取引はなぜ問題?

一見、国際排出取引市場は温室効果ガスの排出量削減につながるように見えますが、全体としては排出する場所が変わるだけで削減にはならず、抜け穴を通じて逆に排出量の増加につながります。温室効果ガスの継続的な排出を認めることになるため、大規模な温室効果ガスの絶対量削減を遅らせるという大きな欠陥があります。

例えば「キャップ・アンド・トレード」は、排出者Aが自らの割り当てられた排出量より少ない排出で済んだ場合、余った量を他の排出者Bに売ることができ、排出者Bはもともと定められた排出量を超えて温室効果ガスを排出できることになります。

「カーボン・オフセット」の場合、前述のように、「カーボン・オフセット」によって生成された排出権は取引可能なため、キャップ・アンド・トレード同様、売り先の排出者に継続的な排出を認めることになります。また、同じ量の温室効果ガス排出を削減するにしても、先進国を中心とした多くの事業者は、費用を抑えるために途上国等で実施する事例が多く、そのほとんどが実質的な削減となっていなかったり、環境破壊や人権侵害が生じていたりしています。例えば、森林保全を行い、温室効果ガス吸収源を確保した分に見合う金銭的付加価値をつける森林劣化減少を抑えるREDD+(Reducing Emissions from deforestation and forest Degradation )という国際制度がありますが、この制度によって先住民族が住む土地の囲い込みが発生するなどの問題も発生しています。

(カーボン・オフセットについてのFoE Japanの見解はこちら

このような問題点を指摘するため、FoE グループはAsian People Movement on Debt and Development(APMDD, アジアの途上国市民グループ)やIndigenous Environmental Network(IEN, 先住民族グループ)、La Via Campesina(小農民連合)とともに記者会見を開催しました。

アジアの途上国市民グループのメンバーからは、

「(今までは京都議定書の下で国際排出取引市場の仕組みがあり、現在、パリ協定の下で京都議定書の国際排出取引市場に代わる仕組みについて議論されているが)私たちに必要なのは、新たな国際排出取引市場ではなく、国際排出取引市場の廃止です。 化石燃料は地中に留め、使用を減らし、自然と調和する形で環境を回復させていかなければなりません。」

とのコメント。

先住民族グループのメンバーも、

「パリ協定第6条は単に人権保護の観点が欠如しているだけではない。このまま(の6条の議論の流れ)だと気候変動対策が遅れ、破壊と企業による土地収奪につながってしまう。」

と訴えました。

また、La via Campesinaのメンバーは、国際排出取引市場に頼らない方法への舵きりの必要性が強調されました。

「国際炭素取引はむしろ気候変動を促進するだけでなく、小農民から土地を引き剥がす世界最大の犯罪。私たちはこの動きに対抗するために連帯し、アグロエコロジーを進めなければなりません。」

一方の交渉の動きは

COP25においては、今年6月のボン会合で合意した交渉ドラフトがありましたが、水曜日朝、議長により更新された交渉ドラフトが出てきた程度で、一週目は各国・各交渉グループの要求に大きな変化や議論の進展は見られていません。

国際排出取引市場における各国の考え方について、インド、中国、ブラジルは、京都議定書の下で実施されたクリーン開発メカニズム(CDM)で発生したクレジット(温室効果ガス排出権)をパリ協定の下でも使用できるようにすることを求めています。しかし、彼らの保有するクレジットの量はEUの年間排出量に相当する量で、さらなる大量排出が可能になってしまうことから、小島嶼国連合や途上国グループはもちろん、炭素取引を推進したいと考えているEU、日本なども強く反対しています。

また、一部の先進国は、人権とジェンダー保護をルールから除外するよう求めています。 もしこの要求が通過してしまった場合、人権を尊重するための措置が、事業が実施される国の制度にのみ委ねられることになってしまいます。

そのほか、米国等は国際民間航空機関(ICAO)で準備中のカーボン・オフセット制度(CORSIA, Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation)との接続を主張していますが、航空業界からの排出量は莫大で、それを相殺しようとするとパーム油など大規模バイオマス燃料の推進などにつながり、森林破壊や土地収奪につながる可能性も高いと指摘されています。

国際排出取引市場に関する本格的な交渉については、2週目の閣僚級会合に委ねられることになりそうです。

NO to Carbon Market, YES to Real Solutions

FoE グループは、記者会見を共催した市民団体とともに、国際炭素市場の問題点をまとめています(”CARBON MARKETS AT COP25, MADRID – A threat to people, politics, and planet –

また、気候正義や企業の責任追及等に取り組んでいる市民団体の1つであるCorporate Accountability International(CAI)によって、パリ協定第6条8項にて提案されている非市場制度(国際炭素取引や市場メカニズムに頼らない気候変動対策)も提案されています。”Real Solutions, Real Zero: How Article 6.8 of the Paris Agreement Can Help Pave the Way to 1.5°”

気候変動による損失や被害が顕在化する現在、気候変動対策は迅速かつ確実なものであるべきであり、炭素市場への依存は取り返しのつかない事態をもたらしかねません。

パリ協定実施期間においては、パリ協定の1.5˚C目標達成のために温室効果ガスの追加的な排出を許す余裕はなく、自らの温室効果ガスの排出は自分で削減することが重要です。そして絶対的な温室効果ガスの削減につながるルールの策定が求められています。

(高橋英恵、深草亜悠美、小野寺ゆうり)

【COP25 vol.3】Final Call? Sayonara Coal 再び

  COPで気候変動に対する取り組みが議論される中、日本の石炭火力支援に抗議する声が再び会場の外で響きました。気候危機の影響を受ける途上国のメンバーを中心に、日本の石炭支援はこれまでもCOPの会場やその他の主要な国際会議の場等で批判されてきました。

 抗議に参加した途上国メンバーの一人は「このCOPが、私たちが“Sayonara coal”と声を上げる最後のCOPになるだろう」とコメント。日本に対する期待というよりは、もう後はない、このまま石炭を推進し続ければ、日本も気候変動によりさらなる影響を受けるだろうことを思ってのコメントでした。

 実際、日本にも気候危機が迫っています。今年も多くの災害が発生し、尊い命が失われました。

 そんな中、日本の梶山経産大臣は石炭温存を明言。「脱石炭」は国際的な常識となってきている中、この発言を受けCOP初日に日本は“化石賞”(気候変動に後ろ向きな国に対し、国際的な気候変動NGOのネットワークClimate Action Network,CANから贈られる賞)を受賞しています。

 日本の石炭支援が批判される理由は気候変動だけではありません。石炭火力発電所の開発が進む地元では、土地収奪や反対派住民のレッテル貼、ハラスメント、生計手段の喪失など様々な問題が報告されています

 日本の国際協力銀行(JBIC)による公的資金支援が行われているインドネシアのチレボン石炭火力発電事業では、地元で住民による環境許認可に係る法廷闘争が続いているなか、許認可発行に係る贈収賄事件が浮上しています。建設を請負う韓国・現代建設の元幹部が地元の前県知事に賄賂を渡したとして、インドネシアの捜査機関が両名をすでに容疑者認定しました。また、これに絡み、丸紅とJERA(東電と中部電力の合弁)が出資する事業者の元取締役社長など上級幹部2名も、同贈収賄事件に絡んで、海外渡航禁止措置を受けています。 

 これまで、同事業の影響を受ける住民は、生計手段の喪失や健康被害を懸念し、同事業への融資を続けるJBICに異議申立てを行なってきました。また今般、JBICとともに融資を続ける3メガ銀行(みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行)が、同事業において国際CSR規範の66項目を遵守していないことが、日本NGO 「Fair Finance Guide Japan」が新しく発表した調査報告書「腐敗にまみれたインドネシア石炭発電」でも明らかになっています。

 現在、日本が関わるものとしては、ベトナムで2つの石炭火力発電所(ブンアン2石炭火力発電所、ビンタン3石炭火力発電所)の計画が進んでいます。さらにインドネシアでは、インドラマユ石炭火力発電所が国際協力機構(JICA)の支援で進んでいます。

 フィリピンの市民団Philippines Movement for Climate JusticeのIan Riveraは、

「これまでも「さよなら石炭!」と声を上げてきたにも関わらず、日本政府は過去の過ちから学ぼうとしていない。台風は威力を増し、フィリピンだけでなく、日本、そしてアジア各国に甚大な被害を及ぼしている。“高効率石炭”を売り込み、日本は気候変動対策よりも利益を優先している。ただちにやめるべきだ。世界有数の経済大国としてリソースがあるのだから、日本はクリーンエネルギー中心社会へのシフトを牽引して欲しい。まずは化石燃料支援を止めることから始めて欲しい。」とコメント。

気候変動は、特に途上国や貧しい地域では、すでに生存の問題に差し掛かっています。交渉の場でも、気候変動への適応の限界を迎え生じ始めている損失と被害について議論が行われています。損失と被害は往々にして経済的損失として数値で表されがちですが、貧しい国々ではまさに日々の生存の問題です。生計手段や文化の喪失でもあります。

多くの国々が気候変動の緊急性と重要性を理解し、脱石炭を進めています。

日本には一刻も早い脱石炭と、社会の脱炭素化のためのロードマップづくりが求められます。(深草亜悠美・波多江秀枝)