世界遺産の隣では…米軍北部訓練場が「やんばるの森」に与える影響

9月21日、世界自然遺産に登録された沖縄島北部(やんばるの森)に関して、環境省・防衛省と意見交換会を行いました。オンラインで、沖縄から蝶類研究者の宮城秋乃さん、Okinawa Environmental Justice Projectの吉村秀樹さんなどを含め、80名以上の市民が参加しました。

やんばるの森は、奄美大島、徳之島、西表島などとともに、7月26日に世界自然遺産に登録されました。かけがえのない生態系や生物多様性の普遍的な価値が、国際的にも認められたのです。しかし、隣接する米軍北部訓練場がこの地域の自然や人々の脅威となっています。

意見交換会では、北部訓練場における米軍機による訓練による騒音や低周波音などの影響、また、世界遺産登録地に含まれている北部訓練場の返還地に大量に残された米軍廃棄物などについて議論となりました。>事前質問書

訓練場近隣で深刻化する米軍機騒音

北部訓練場の米軍機による訓練が、騒音や低周波音により、世界自然遺産の野生生物や周辺住民の脅威になっていることを指摘し、防衛省、環境省の認識について問いました。
防衛省は、2012年の米軍が実施した環境レビューをもとに、「影響は小さい」という認識を示しました。しかし、この環境レビューはあくまで予測値を用いた簡略なものであり、日本政府として、騒音や低周波などに関して実データをもとにした登録地の生態系に与える評価を行ったわけではありません。

琉球新報の報道(2021年5月11日付「世界自然遺産推薦地のすぐ近く…東村高江周辺では米軍機の騒音が約3・5倍に」)では、周辺集落では頻繁に80デシベル以上の騒音が観測されており、その頻度は、2014年度は80デシベル以上の騒音測定回数は105回だったのが、20年度は368回に増加したことが報じられています。

防衛省は、北部訓練場周辺の集落3か所において常時騒音測定を行っているのですが、いずれもLden値(時間帯補正等価騒音レベル)では、環境基準を超えていないとしました。

一方で、環境省は、「訓練が野生生物に及ぼす影響については、必要に応じて、日米合同委員会のもとにある環境分科委員会で共有していく」としました。

市民側は、騒音レベルは平均値ではなく最大値を重視するべきこと、訓練が世界遺産登録地の野生生物に与える影響を評価するべきこと、また、米軍に対して世界遺産登録地および集落上空での低空飛行や旋回をしないように日本政府として要請してほしいとうったえました。

米軍が自然遺産登録地で訓練? 境界越えを防ぐために

北部訓練場と自然遺産登録地は、地図上では長く曲がりくねった境界線を共有しています。

防衛省・環境省は、米軍が陸伝いに境界線を越えて自然遺産登録地に入ったり、自然遺産登録地を訪れた人が北部訓練場に入ったりすることを防止するような措置はとっていないし、今後とる予定もない、としました。

市民側は、安全上の観点からも、世界遺産登録地への影響を回避するためからも、境界線を越えが起こらないよう、境界線を明示するなどあらゆる対策をとることを要請しました。

Hideki Yoshikawa, Dr. Masami Kawamura, “NGO Evaluation and Recommendations regarding The Nomination of NPOI for World Natural Heritage“(October 05, 2019)

世界遺産に残された米軍廃棄物~「いであ」への委託は十分だったのか?

米軍廃棄物の問題を訴え続けてきた東村に住む蝶類研究者の宮城秋乃さんは、世界遺産登録地に含まれる北部訓練場返還地で、実弾1発を含む不発弾、放射性物質を含む電子部品、その他多くの廃棄物を発見たことを指摘。宮城さんは県警に連絡しましたが、対応はされなかったそうです。

意見交換会にて、防衛省は返還地の廃棄物や土壌汚染について、「いであ株式会社」に委託して調査および廃棄物や汚染除去を行ったと説明。その際、対象範囲は、土壌汚染の蓋然性が高いと考えられる、ヘリパットや過去のヘリ墜落地点などに限定して実施したとのことです。「業務終了の際、防衛省も現場に行き、問題がないこと確認を行った」としました。

しかし、実際には、対象地でも、その他の地域でも多くの米軍廃棄物が見つかっているのです。

防衛省は、「引き渡し後に、廃棄物が発見されたときでも、防衛省として地権者や関係機関と連携をとり適切に処理していく」とし、また、米軍廃棄物が発見されたときは、「地権者である沖縄県森林管理所もしくは沖縄防衛局に連絡してほしい」としました。

市民側からは、「いであ株式会社」への委託は範囲が限定的でありすぎ、また調査や廃棄物除去が十分ではなかったことを指摘。あらためて、包括的な米軍廃棄物除去計画の策定と実施を提案しました。

また、宮城さんは、米国海兵隊北部訓練場ゲート前に、発見した米軍廃棄物を少量置くことにより、抗議の意を示しました。ところが、これが「威力業務妨害」にあたるとして、沖縄県警から捜査を受け、書類送検されたのです。

市民側はこれは不当で威圧行為であるとし、「政府は廃棄物を発見し、問題提起を行った宮城さんにむしろ感謝の意を示すべき」としましたが、防衛省は、捜査中の案件なので回答を差し控えるとするにとどまりました。

主催団体は、北部訓練場の返還地の廃棄物除去に関するいであ株式会社との契約の詳細などについて、防衛省・環境省に追加の質問書を提出しました。

また、今回の会合の報告をIUCNなどに提出するなどのアクションをとっていきたいと考えています。

(満田夏花)

<アーカイブ映像>


0:00:00- Part I: オンライン集会
0:05:55-「やんばるの森の実状ーこれで本当に世界自然遺産?」宮城秋乃さん/蝶類研究者
0:29:15-「世界遺産登録の持つ意味は?」吉川秀樹さん/Okinawa Environmental Justice Project
1:05:08- Part II: 防衛省・環境省との意見交換
1:09:41-北部訓練場での訓練について(低空飛行、騒音など)
1:45:40-北部訓練場と自然遺産登録地の境界について
2:07:30-北部訓練場返還地の米軍廃棄物について

やんばるの森は「多くの固有種が集中して分布する国内最大級の亜熱帯照葉樹林の生態系、雲霧林、渓流植物群落などの河川生態系、石灰岩地特有の動植物、マングローブ生態系といった多様な生態系が複合的に一体となった景観」が評価され、世界遺産に指定された。(写真は環境省資料より)

日本にもあった違法伐採!! 波紋拡がる宮崎県の盗伐事件(15)

第六回 えびの市大字西長江浦(その3)

 2021(R3)年8月27日、田村貴昭衆議院議員が本稿で紹介している志水惠子さんの被害地を含む宮崎県えびの市の盗伐被害地を視察しました。現場にはえびの市議、高鍋町議など共産党系議員や報道関係者に加え、えびの市役所から2名、そして志水さんをはじめ宮崎県盗伐被害者の会からも3名参加しました。国会再開後、再び農林水産委員会などで論議され、解決に向けてまた一歩前進することを期待します。

 今回も、前回に引き続き、志水惠子さんの事件を紹介します。
 ※今回も被害当事者の志水惠子さんのご了承を得て、実名で記述しております。

紆余曲折の末、えびの警察署による実況見分
 2020(R2)年10月2日、えびの警察署員4名(男性3名、女性1名)による実況見分が実施されました。所要時間は2時間40分でした。
 まず警察は、志水さんの所有地周辺の杭(林道側の3本(宮崎県、えびの市、日本道路公団)、ニンニク畑側の3本(日本道路公団))を確認しました。次に、ニンニク畑周辺の確認作業に入り、伐り株の採寸、伐根の測量を実施しました。
 その後の志水さんの所有地全体の伐り株探しは難航しました。志水さんが2016(H28)年に立木の一部売却を検討すべく下見に行ったとき、林床はとても歩きやすい状態でした。志水さんは警察に「林内にも盗伐されずに残った5~6の伐り株がある」と伝え、警部(課長)A氏から「志水さんも中に入ってください」と促され、伐り株探しに協力し、枝に埋もれて隠れていた大きな伐り株を3つ探し出しました。その後、警部(課長)A氏とM氏とで、追加で3つずつ見つけ、全員が「まだある」と感じたのか、より積極的な伐り株探しになり、最終的に29の伐り株を特定し、採寸しました。
 その作業中、志水さんは警察から「ヒノキとスギの見分け方を教えてくれ」と質問され、「切り株からではわからない」と回答すると、警察は熱心に樹上を見上げて葉を確認したそうです。その結果、警部(課長)A氏は「この山はほとんどヒノキですね」と感想を述べました。

えびの署、あきれたその後の対応
 ようやく実現した警察による実況見分。順当にいけば、その後は警察による捜査が始まるものと期待されたのですが、事は想定外の方向へ進んでいきました。
 10月の実況見分の後、11月5日、えびの警察署から連絡を受け、署に出向くと警部(課長)A氏より「志水さんの件は時効です」と伝えられたのでした。これに納得いくはずもなく、志水さんを含む宮崎県盗伐被害者の会では11月25日、宮崎県警察本部を訪問し、苦情申出を行いました。県警本部監察課警部I氏、警部補K氏と面会し、「文書での回答」を強く要請しました。
 その後、志水さん以外の川越静子さん、川越員さん(それぞれ本ブログ第二回、第三回で紹介)に対しては、宮崎県公安委員会から文書での回答を得ました。ただし内容は「調査の結果、一連の職務執行は適正であった」というものでした。
 業を煮やした志水さんは、2020(R2)年12月21日、えびの警察へ電話で問い合わせたところ、「えびの署では書面での回答はしていない。県警本部監察課からも何も聞いていない」という返答で、書面での回答を断られ、電話上で口頭での回答となりました。以下に志水さんの苦情申出の内容と、えびの署副署長H氏の回答について記します。

苦情1:2020年2月えびの警察署訪問の事実が否定されていること
えびの署の回答:2020年4月21日の訪問が最初で、その際に対応したのは刑事生活安全課のS氏1名。

 志水さんは2020年2月に2度、訪問をしており、複数の人々がその事実を認めています。2020年2月の初めての訪問の際、えびの署S氏から「貴方の山であることを証明できますか」と問われたため、鹿児島県湧水町木場の土地家屋調査士T氏にも相談、調査依頼をしており、T氏もそれを証言しています。さらに2020年4月21日の訪問時の対応者はS氏のみでなく、警部補M氏が加わり2名での対応だったことも捻じ曲げられてしまっています。

 その後、2021年1月8日、電話での回答では聞き逃しがあったため、再度回答についての確認をするためにえびの署を訪問し、副署長H氏に「今日、私が訪問したことは記録に残して貰えますよね?」と確認すると、「記録には残しませんよ。被害届を受け取っていないでしょ?」という回答だった。

 この発言を受けて志水さんは、「ようやくえびの警察署の『被害届を受け取っていないから、訪署記録にも残さない』という“やり方”を理解した」と言います。「11か月もの間、こんなにも悩まされ、苦しめられ、事実無根の様相を漂わされ、2020年2月の訪署に関する証拠集めを余儀なくされ、体調を崩す日々を強いられたのは何だったのか!高齢被害者に対する極まりないえびの警察署の仕打ちで、怒りが抑えきれない」。

苦情2:S警官の発言「木を切った人に残りの木を売ったらどうか」は不適切
えびの署の回答:『被害者救済として、このような方法もある』とS警官は述懐している。

 被害を受けて落胆している被害者にとっては「心の折れる」驚愕の発言でした。合わせて志水さんは、警察官は被害捜査をすべきであり、民事に介入する必要はなく、不適切な発言だったと考えています。

苦情3:容疑者Iは盗伐後にニンニク畑として使用していたことは不動産侵奪罪。なぜ逮捕されないのか?
えびの署の回答:犯人による証拠隠滅の恐れや逃走する可能性がないため逮捕する要件がない。

 志水さん所有の山林が盗伐された跡地がニンニク畑として使用されたことは疑う余地もありません。それにも関わらず「逮捕する要件がない」との認識は理解に苦しむところです。志水さんによると、えびの市婦人部の集まりにおいても、容疑者Iは「他人の木を盗んだり、山を転売している」という話があって悪名高い人物なのです。加えて志水さんの知り合いの土地調査家屋士T氏や、えびの市内の林業者も同様のことを証言しています。

苦情4:えびの署警部(課長)A氏の供述調書作成にかかる強要行為について
えびの署の回答:Aは強要していない。Aの発言は「前日に供述調書を作る」としたもので、「供述調書は今日でないと駄目」とは言っていない。

 志水さんは「前日に供述調書を作る」という発言は聞いていません。これも事実が捻じ曲げられているものです。志水さんが聞いたA氏の発言は「尋ねたいことがある」、「いろいろな書類を作らなければいけない」の2点のみで、「供述調書を作る」とは一言もありませんでした。
 2020年11月5日当日の様子は以下のとおりです。えびの署で警部(課長)A氏とやりとりをしている中で、志水さんは「供述調書は今日でないと駄目です」という発言をA氏より受けた後、その場で携帯電話のショートメールにて宮崎県盗伐被害者の会会長の海老原氏へ相談をしました。ショートメール送信後、すぐに海老原氏から電話があり、A氏にその携帯電話を手渡し、A氏と海老原氏とが直接やりとりをしました。その会話の中で海老原氏は「今日でないと駄目、というのはおかしいのでは?」と問いかけました。大きな声でのやりとりだったゆえ、傍らにいた志水さんにも漏れ聞こえてくるものでした。
 彼らのやりとりが終わり、携帯電話を手元に戻し、海老原氏との会話に戻ると、海老原氏から席を外すよう指示があったため、駐車場まで行って会話を継続しました。そして「すぐに退署したほうがよい」との助言があり、退署する旨をA氏に伝えるべく部屋に戻ると、A氏は「今日でなくても良いですよ」と、手のひらを返したような対応に変わったそうです。
 A氏の対応が急に変わったことに違和感を覚えながらも、志水さんは帰ろうとすると、A氏から「出来上がった供述調書を読み上げますけど聞きますか?」と問われたそうです。一連の対応、および態度の急変など、とてもA氏を信用できる状態になく、且つ調書の内容についても5~6分程度で出来上がるものを信用できるはずもなく、その申し出は断り、帰宅したのでした。

苦情5:不条理な時効について
えびの署の回答:伐採したS社の日報、領収書、供述などの捜査をした結果、伐採は2017年2月下旬に始まり2017年3月28日に終了している。森林法時効は3年ゆえ、このことにより2020年3月28日に時効が成立している。

 志水さんはこの不条理な時効について到底受け入れられません。盗伐を発見したのが2020年1月29日。2020年2月6日にえびの市役所による現場検証が行われ、同じ2月にえびの警察署を被害の訴えのために訪問しました。盗伐被害地一体の土地(1195-9(畑)、1195-21(原野)、1216-1(畑))を所有権がM氏から容疑者Iに移転したのは2017年3月23日であり、2017年2月下旬~3月23日の期間は容疑者Iが合法的に伐採できる術はなく、えびの署の理屈でも、容疑者Iは他人の山を盗伐したことになります。
 また容疑者Iに所有権が移転した2017年3月23日の同日付で伐採届がえびの市役所に提出されていることも変な話であり、さらにその伐採届には「届出提出後、30日以後に伐採する」よう記載されています。加えて容疑者Iが購入した土地は「畑」と「原野」であったにも関わらず、提出された伐採届には樹種や本数まで記載されているのです。

 これらを考慮すると、隣接する志水さん所有のヒノキ山(ヒノキ200本)を盗伐するためのM氏との土地売買契約、伐採届であったとしか考えられません。

元の土地所有者M氏も何か関与?
 実は、志水さんの林地は、元々は志水さんの父親(故人)がM氏から購入したものでした。それゆえM氏は志水さんの林地の盗伐に関して何か情報を持っているのではないか?と思い、盗伐を発見してから間もなくM氏にコンタクトしたのでした。M氏宅に訪問し、何度も電話をかけ、留守番電話に「盗伐された件に関してお話をお聞きしたい」旨のメッセージを残したものの、何の連絡もありませんでした。
 他方、前回で触れたとおり、えびの警察署はM氏にコンタクトでき、Iに土地を売ったことを確認しています。志水さんとは話ができない何かあるのか?憶測は膨らむばかりです。

 これまで本ブログで紹介してきた盗伐被害の中で、伐採後にニンニク畑として使用していた事例はありませんでした。「盗伐=伐り逃げ」といったイメージがありましたが、本事例から、如何に盗伐犯が堂々と振舞っているかがわかるかと思います。

 志水さんの闘いはまだまだ終わりません。次回、志水さんと宮崎地検とのやりとりを紹介します。(三柴 淳一)

第一回 宮崎市瓜生野ツブロケ谷(その1)
第一回 宮崎市瓜生野ツブロケ谷(その2)
第二回 宮崎市高岡町花見字山口(その1)
第二回 宮崎市高岡町花見字山口(その2)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その1)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その2)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その3)
第四回 宮崎市田野町字荷物取地乙
第五回 国富町大字木脇(その1)
第五回 国富町大字木脇(その2)
第五回 国富町大字木脇(その3)
第五回 国富町大字木脇(その4)
第六回  えびの市大字西長江浦(その1)
第六回  えびの市大字西長江浦(その2)
第六回  えびの市大字西長江浦(その3)

バイオマス発電は大丈夫?――エネルギー基本計画の素案を読む(3)

再生可能エネルギーの一つとして導入が進められてきたバイオマス発電ですが、木質ペレットなど、燃料の多くは海外から輸入されています。需要の急増にともなって、貴重な天然林が伐採されたり、生物多様性が破壊されたりすることが問題となっています。気候変動対策という点からいっても、長い時間をかけて形成され、地上部にも地下部にも大量の炭素を貯留している森林を破壊してしまっては、かえって大気中の二酸化炭素を増やすことにもつながってしまいます。これでは本末転倒ではないでしょうか? 

地域の間伐材・未利用材では足りず、海外から燃料輸入…

バイオマス発電は、固定価格買取制度(FIT)により、促進されてきました。2012年のFIT施行前の導入量は231万kWでした。これにFITで認定されたものを加えた量は、2015年度末に601万kW、2019年12月には1,085万kWにまで急増しています(図1)。うち747万kWが「一般木質バイオマスおよび農産物残さ」(輸入木質ペレット・木質チップ、パーム椰子殻(PKS)など)およびバイオマス液体燃料(パーム油など)による発電で、その多くを海外に依存しているのです。

図 1. バイオマスのFIT認定量
出典:第6回バイオマス持続可能性ワーキンググループ(2020年8月4日)資料1

それでは、第6次エネルギー基本計画素案では、バイオマス発電についてはどのように書かれているのでしょうか?

「木質バイオマスを始めとしたバイオマス発電は、災害時のレジリエンスの向上、森林整備・林業活性化などの役割を担い、地域の経済・雇用への波及効果が大きいなど、地域分散型、地産地消型のエネルギー源として多様な価値を有するエネルギー源である。」(p.34)

確かに、FITの導入時には、地域の間伐材や未利用材を上手にバイオマス発電に使えば、林業が活性化し、森林整備にお金が流れ、「疲弊した山間地が活性化する!」という期待が大きかったことは理解できます。しかし、現状はそう甘くはありませんでした。

そもそも、地域の間伐材、未利用材の量には限界があります。5,000kW級のバイオマス発電所を稼働させるのには、年間約60,000トンの燃料(約10万立方メートル相当)が必要とされていますが、これは一つの県の木材生産量にも匹敵します(注1)。つまり、中規模以上のバイオマス発電所を稼働させるためには、地域の間伐材・未利用材ではまったく足りないのです。

また、林地残材は林地からの搬出コストが高く、大量に調達するためには広範囲から収集する必要があるため、運搬費がかさみます。

このため、ほとんどの大規模なバイオマス発電所は、安定的かつ大量に調達できる輸入バイオマス燃料を前提にして計画されているのです。

経済産業省にもそのような認識はあるようで、前述の続きとして、

「一方、エネルギー利用可能な木質や廃棄物などバイオマス資源が限定的であること、持続可能性の確保、そして発電コストの高止まり等の課題を抱えることから、森林・林業施策などの各種政策を総動員して、持続可能性の確保を大前提に、バイオマス燃料の安定的な供給拡大、発電事業のコスト低減等を図っていくことが必要である。」(p.34)

というようなことが書いてあります。しかし、ここで大前提としている「持続可能性の確保」は具体的には何をさすのでしょうか? また、どのように担保するのでしょうか? 

さらに、「持続可能」であるバイオマス燃料は、どの程度、存在しているのでしょうか? これが大問題です。

「持続可能性」はあいまいなまま

「持続可能性」というからには、少なくとも森林減少・劣化を引き起こしたり、生物多様性を破壊したり、人権侵害や労働問題などを引き起こしたりしてはいけないはずです。

しかし、現在、輸入されているバイオマス燃料の多くは、この点があいまいなまま残されています。

たとえば、日本の主要商社は、バイオマス発電用に年間数百万トンもの木質ペレットを、北米やベトナムから輸入しています。

図 2. 日本の木質ペレット輸入量
出典:財務省 普通貿易統計「品別国別表(HSコード4401.31.000)」よりFoE Japanが作成

日本の商社は、アメリカの大手ペレットメーカーであるエンビバ社、カナダのパシフィック・バイオエナジー社やピナクル・リニューアブル・エナジー社などと木質ペレットの長期売買契約を結んでおり、今後数年以内に輸入量はさらに数百万トン以上上積みされそうです(注2)。

しかし、アメリカやカナダで森林保全に取り組むNGOからは、これらの木質ペレット生産用の木材を得るため、湿地林や天然林が皆伐され、貴重な生態系が破壊されたことが報告されています。企業は「もっとも持続可能な原料を利用している」などと説明していましたが、ペレット工場に次々に丸太が運び込まれている様子が写真入りで報告されています。

貴重なカリブー(トナカイ)の生息地である森林にも伐採が及んでいます。

写真:パシフィック・バイオエナジー社のペレット工場に丸太を運び込むトラック © Dominick DellaSala

写真:木質ペレットの原料生産のために伐採された湿地林(アメリカ・東南部)©Dogwood Alliance

マレーシアやインドネシアから輸入したパーム油も、バイオマス燃料として、発電所で燃やされています。パーム油の需要急増は、原料となるアブラヤシ生産のための農園拡大により、熱帯林減少の原因になるのに加え、先住民族や地域住民の土地や森林を農園にしてしまったり、農園における労働問題が発生したりといった社会的な問題も指摘され続けています。持続可能性が確認されたRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証油を使うとしている企業もありますが、RSPO認証油は供給量に限界があり、食品など従来用途の需要を満たすのに精いっぱいではないでしょうか。

現在、FITの事業計画策定ガイドラインでは、燃料の持続可能性については触れられているものの、具体性がなく、とりわけ木質バイオマスに関しては、第三者機関による認証制度だけではなく、事業者団体による認定や、企業の独自による確認でも足りることになってしまっています(注3)。

そもそもCO2を削減できるのか?

バイオマス発電の促進により、本当にCO2削減ができるのかどうかにも疑問があります。

前述の通り、バイオマス燃料の生産段階において、森林減少・劣化が生じることも多く、その場合、森林や土壌に貯蔵されていた炭素が、CO2の形で大気中に排出されてしまいます。つまり、バイオマス発電の促進が、地表での重要な炭素ストックである森林や土壌を破壊し、むしろCO2排出の原因となってしまうのです。

破壊された森林が元の状態に回復しないこともありますし、回復したとしても、数十年以上かかることが多く、それまでは森林・土壌に固定されていた炭素が燃焼により大気中に放出されるため、大気中のCO2が増加した状態となります(注4)。

バイオマス事業がある場合、ない場合双方における、
一定期間後のCO2の蓄積変化の概念図

森林は森林のまま、「炭素の貯蔵庫」として、また、生物多様性保全のために、そのまま維持していくことが重要なのではないでしょうか?

森林を破壊せず、地域の間伐材・未利用材や廃棄物系によるバイオマス発電がどのくらい可能なのか。これについては慎重に検討する必要があります。

また、バイオマス発電の発電効率は化石燃料と比べても低いため、発電よりも熱利用の方を追求するべきではないでしょうか?

現在のエネルギー基本計画は、2030年における電源構成目標としてバイオマス発電を6-7GWとしています。第6次のエネルギー基本計画においては、さらに拡大して8GW+αとしています。しかし、上記の観点から、バイオマス発電は、廃棄物系、地域の間伐材・未利用などでまかなえる規模とし、熱利用を検討すべきでしょう。

(満田夏花、小松原和恵)

参考)バイオマス発電のFIT認定容量(2021年3月末時点)
メタン発酵ガス:107,807kW
未利用材:561,384kW
建設廃材:94,210kW
一般廃棄物・木質以外:460,251kW
上記合計 1,223,652 kW (1.2GW)
一般木質・農作物残さ:6,738,709kW(6.7GW)「一般木質・農作物残さ」の多くが輸入燃料と考えられます。農作物残渣は、PKS(パーム椰子種子殻)です。

注1)田中淳夫(2019)「絶望の林業」

注2)商社等の木質ペレットの主な長期購入契約は下表参照。

出典:サプライヤー等のウェブサイトよりFoE Japanが作成

注3)FITの「事業計画策定ガイドライン」においては、パーム油、PKSなどの農産物の収穫に伴って生じるバイオマス燃料については、主産物・副産物を問わず、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)、RSB(持続可能なバイオマスのための円卓会議)といった第三者認証制度によって持続可能性が認証されたものでなければならないとしています。一方で、木質バイオマスについては、具体的な認証については記述されておらず、詳細は、林野庁による「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」を参照することとしており、当該ガイドラインでは、第三者認証のみならず「関係団体による認定」「個別企業の独自の取組」も併記しています。

注4)IPCCの報告書の著者をはじめとする科学者796名は、バイオマスエネルギーのために木を伐採すると、森林に貯留されている炭素が放出されること、たとえ森林が再生したとしても、大気中の炭素が数十年から数世紀にわたって増加することを指摘。さらに世界のエネルギーの3%を木材によって発電するとなると、世界の商業伐採量を現在の2倍にしなければ賄えないと警告しています。

“Letter From Scientists to the EU Parliament Regarding Forest Biomass”, 9 January 2018

日本にもあった違法伐採!! 波紋拡がる宮崎県の盗伐事件(14)

第六回 えびの市大字西長江浦(その2)

 林野庁は2021年3月30日の宮崎県盗伐被害者の会からの要請を受け、5月中旬に盗伐被害地視察を予定していましたが、緊急事態宣言の延長を受け、延期となりました。

 今回は、前回に引き続き、志水惠子さんの事件を紹介します。
 ※今回も被害当事者の志水惠子さんのご了承を得て、実名で記述しております。

宮崎県盗伐被害者の会を伴い再び現場検証
 残念な結果に終わった2020(R2)年4月27日のえびの警察署による被害地の現場検証。志水さんはこれに納得できず、宮崎県盗伐被害者の会の海老原会長に相談し、現場を見てもらうことになりました。5月5日、志水さん、ご友人ご夫妻、そして海老原会長とで再び現場検証を実施。この検証で海老原会長によって志水さんの林地の境界杭が確認されたのでした。多くの被害地を見てきた海老原会長は「志水さんの山は境界が公有地(日本道路公団、宮崎県、えびの市)に隣接しているため、被害者の中でも一番わかりやすい」。

えびの市役所との折衝、広範な「無届伐採」が判明
 5月8日に申請した情報開示請求の結果が5月18日に得られました。入手できたのは「公文書非公開決定通知書」で「公文書不存在」との記載のみでした。3筆(1195-1、1195-20、1216-2)とも同じ結果でした。いわゆる「無届伐採」であることが判明しました。
 志水さんらは、本件についてはすでに「無届伐採」であることが判明し、容疑者も明らかであり、市の責任が問われる問題であることや、海老原会長の被害事件「ツブロケ谷」のときのように宮崎市から刑事告発すべき案件なのではないか、伐採業者名を明らかにしてくれ、といった対応を求めました。しかしそれでも煮え切らない態度に対して、「市の責任を問うべく、志水さんからえびの市を訴えてもよい」と被害者側の強い意志を示すと、S氏が10分ほど席を外し、「立木所有者」と「造林者」の欄が黒塗りされた、伐採業者名のみわかる「伐採届」を持ってきました。黒塗りの理由は「伐採業者名を教えてくれとの依頼でしたゆえ」。その伐採届の写しを入手すべく、5月27日、再びえびの市役所を訪れ、二度目の情報開示請求を行いました。
 またこの新たな情報を逐一伝えるべく、5月28日、志水さん、海老原会長とでえびの警察署を訪問しました。対応者は前回同様、警部補M氏と現場検証で「伐った人に残りの木を売ったらどうですか?」と三度打診してきたS氏。この訪問は盗伐被害者の会としては初訪問だったゆえ、挨拶代わりでもありました。

 6月4日、志水さんの手元に「公文書一部公開決定通知書」が届きました(図1)。図2には志水さんの被害林地周辺の概略図を示します。開示された伐採届は2017(H29)年2月15日付けで申請され、3月23日付のえびの市農林整備課印が押されたものでした。これから幾つか重要なことが明らかになりました。(1)地番1195-21を伐採した業者名、(2)志水さんの林地3筆に隣接するその他の地番(1216-1、1195-9)の伐採届が出されていない、つまり「無届伐採」であること、そして(3)伐採期間です。
 まず(1)からこの伐採届が容疑者Iに関連していることがわかります。立木所有者欄は黒塗りですが、志水さんが入手している字図や土地登記簿から地番1195-21の所有者はIで、Mから2017(H29)年3月23日に購入したものであることは確認できています。(2)はIがMから購入した3筆のうち2筆が無届伐採だったことを意味し、志水さんの3筆を加えれば5筆の林地が無届伐採でした。1筆のみ伐採届を出して「合法化」し、広範に盗伐する行為の典型です。(3)は2017(H29)年3月30日~12月20日と記載されていました。志水さんが気付いたのは2020(R2)年1月29日でしたので、森林窃盗(盗伐)罪の時効3年の関係で実際に伐採されたのがいつだったのかがとても重要になります。

土地家屋調査士から有益な情報
 志水さんとT氏は商工会の会員で顔見知りでしたので、すぐに足を運ぶことにしました。志水さんが「市役所から言われたので」と切り出すと、T氏は繰り返し何度も「Iは悪いことばかりやっているのであいつは逮捕してもらわなければならない」、「木があっちこっちで伐られている。志水さんのすぐ近くのすごく大きな山も伐られている。その山主も相当怒っている」という情報を得ました。
 6月25日、今度はえびの警察署警部補M氏より電話がありました。M氏は「山を売ったMに話を聞きに行き、『何十年も山には行っておらず、境界が分からず、山には行かずIに売った』とのことゆえ、境界が分からない以上、事件として成り立たない」との見解でした。志水さんが「時効は2020年12月20日までですか」と問うと「時効は警察では調べようがない、分からない」。「伐採業者S社を調べれば分かりませんか?」と質問すると「S社はまだ調べていない」との回答でした。

警察の執拗な確認行為
 この頃からえびの警察署は志水さんに対して執拗に質問を繰り返すようになりました。それまで窓口になっていたのは警部補M氏とS氏でしたが、2020年8月から警部(課長)A氏から志水さんに連絡がくるようになりました。A氏は何やら2017年2月と4月に強いこだわりを示していました。なぜえびの警察署は急に動き出したのか、なぜ2017年2月と4月にこだわるのか、A氏から明確な説明もなく、その真意ははかりかねますが、森林窃盗(盗伐)罪の時効期限と関連があるであろうことは容易に推測されるところです。
 本来であれば法に基づき捜査権が与えられている警察が入手すべきと考えられる情報について、その情報を知りようもない被害者の志水さんに一度ならず何度も問う行為は、被害当事者からすれば「嫌がらせ」でしかありません。実際、警察からの執拗な問い合わせや、呼び出しを受け、警察の行為は「志水さんを犯人扱い」しているように感じました。これによって志水さんは心身のバランスを崩し、体調不良に見舞われました。

 ここで簡単に整理しておきます。志水さんが盗伐被害に気付いたのは2020年1月29日。えびの警察署にはじめて相談に行ったのは2020年2月のことで6日から14日の間に1回、その後2月中にもう1回、計2回訪問しています。そして3回目の訪問が4月21日。容疑者Iが1筆だけ「合法化」した伐採届が受理されたのは2017(H29)年3月23日で、記載されていた伐採時期は2017(H29)年3月30日~12月20日。伐採届が正式に受理された日付から法的に伐採が認められるとすれば、その日付から3年後の2020年3月23日までが森林窃盗(盗伐)罪の時効期限と考えられます。
 現在えびの警察署は、志水さんの初回の訪問、つまりS氏が対応し、志水さんをほぼ門前払い扱いをした2020年2月中の2回の訪問のことを完全に無視し、3回目の訪問で警部補M氏とS氏の両名が対応した2020年4月21日を「志水さんが初めて警察に相談にきた日」という事実無根の主張を繰り返し、志水さんにそれを認めるよう強要しています。これについては次回、詳細について説明します。

打開策として告訴状を送付
 体調の優れないなかでも、志水さんの盗伐被害事件解明に向けた確固たる信念は揺らぎませんでした。事態の打開策の一つとして被害者の会の海老原会長の支援を得ながら8月24日、告訴状を作成し、宮崎地検検事正、宮崎地裁所長判事、宮崎県警本部長、えびの市長、宮崎日日新聞本社に宛て送付しました。その「告訴状」は「告発状」に修正されて9月14日に正式にえびの警察署に受理されたのですが、紆余曲折あったその経緯を説明します。
 告訴状送付の翌8月25日、宮崎地検M氏から告訴状受領の電話がありました。「えびの警察署に捜査をして貰えていますか?」と問われ、志水さんは「被害当初は捜査してもらえなかったが、最近は電話連絡がくるようになりました」と回答しました。
 8月27日にはえびの警察署警部(課長)A氏から連絡があったため、同署へ出向いて宮崎地検検事正、宮崎地裁所長判事、宮崎県警本部長、えびの市長宛てに告訴状を送付したことを伝えました。その足でえびの市役所農林整備課主任主事S氏も訪ね、同様の報告をしました。
 8月29日、再び、えびの警察署警部(課長)A氏より来署依頼があり、「提出されたのは“告訴状”だが、地権者は志水さんの母親であり地権者本人でないと“告訴”はできず、娘の惠子さんによるものであれば“告発状”であるべき」という説明を受けました。そこでA氏の指示に従い、「告訴状」を「告発状」に修正し、再びA氏に提出すると「新たな“告発状”の内容を再度検討し、受理の可否については追って返事する」との対応でした。これを受け9月2日、志水さんは念のために「告発状」を再び宮崎地検検事正、宮崎地裁所長判事、宮崎県警本部長、宮崎日日新聞本社に宛てて送付。さらに各所を訪問し「告発状」としての再送付したことを伝え、適切に受理してもらえるよう依頼をしました。その結果、えびの警察署A氏から「告発状を受理させて貰います」との電話連絡を受けました。このことは宮崎地検M氏にも報告しました。
 9月4日、その日体調を崩していた志水さんに、えびの警察署から電話があり「ご自宅にお伺いしてもよいですか?」。えびの警察署警部(課長)A氏、F氏が志水さん宅を訪れ、“告発状”は受理、“告訴状”は不受理とする旨、説明を受け告訴状が返却されました。その後9月14日、告発状に不備があったため、えびの警察署へ出向き、その修正後、差し替えたものが受理されたのでした。

 志水さんは「しばらく続いたえびの警察署の執拗な確認行為は9月4日を境に“ピタッと”止まり、態度も急変した」と精神的に厳しかったこの時期を振り返ります。

 告発状が受理され、ようやくえびの警察署が本格的に動き出しました。9月28日、えびの警察署警部(課長)A氏より実況見分実施の知らせがあったのです。次回は実況見分の様子とそれ以降も続く志水さんにとって不本意なえびの警察署のとのやりとりを紹介します。(三柴淳一)

第一回 宮崎市瓜生野ツブロケ谷(その1)
第一回 宮崎市瓜生野ツブロケ谷(その2)
第二回 宮崎市高岡町花見字山口(その1)
第二回 宮崎市高岡町花見字山口(その2)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その1)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その2)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その3)
第四回 宮崎市田野町字荷物取地乙
第五回 国富町大字木脇(その1)
第五回 国富町大字木脇(その2)
第五回 国富町大字木脇(その3)
第五回 国富町大字木脇(その4)
第六回  えびの市大字西長江浦(その1)
第六回  えびの市大字西長江浦(その2)

気候変動対策と生態系保全に向け、早急なFITガイドラインの改善を

 こんにちは。バイオマス担当の小松原です。新年度を迎え、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(通称FIT)の「事業計画策定ガイドライン(バイオマス発電)」(以下、ガイドライン)が改訂されました。私たちFoE Japanは、気候変動対策や生態系保全の観点から不十分であるとし、政府への提言やパブリックコメントなどを通して問題点を指摘してきましたが、今回の改訂でも多くの問題は残されたままです。そこで、国内外の環境NGO25団体と一緒に、改訂に対する共同コメントを4月13日に発表しました。今日は、その内容をご紹介します。

温室効果ガス排出量の評価も制限もない                                  木質ペレットやパーム椰子殻(PKS)などの生物由来の燃料を燃やすバイオマス発電は、火力発電であり、燃料を燃やせば当然CO2を排出します。発生したCO2は、植物が成長する過程で吸収して相殺するとし、バイオマス発電はカーボンニュートラルと言われますが、森林が再び成長するまでには長い年月を要します。さらに、輸入バイオマス燃料を利用する発電所は、輸送でも多くのCO2を排出します。排出量を早急かつ大幅に削減できなければ、気候危機を止めることができなくなる瀬戸際に立たされている今、CO2の排出源となるようなバイオマス発電は再生可能エネルギーにそぐわないと、私たちは考えます。ガイドラインは、再エネにそぐわない事業を排除できるように、ライフサイクル全体における温室効果ガス排出量を評価し、厳しい排出量制限を課すものでなければなりませんが、FITが導入してから9年経った今でも、GHG排出量の上限や評価の義務もありません。

パーム油はFITの対象から除外すべき                                     バイオマス発電の燃料の種類の一つに、「農産物の収穫に伴って生じるバイオマス」というものがあり、主産物と副産物に分けられます。農産物を利用するため、食料との競合やバイオマス燃料生産のための農地拡大による森林破壊などが懸念されます。現在は、主産物はパーム油、副産物はパーム椰子殻(PKS)とパームトランクに限って利用が認められていますが、それ以外の新規燃料に関して、今回の改訂で「非可食かつ副産物のバイオマス種を食料競合の懸念がないものとする」ことが明記されました。このこと自体は歓迎すべきことですが、パーム油は可食かつ主産物にもかかわらず、認められてしまっています。ご存知のとおり、パーム油の生産は、最大の熱帯林破壊と称されるほど気候危機を加速させ、生物多様性を脅かすリスクを抱えており、また第三者認証を取得すれば解決できるという単純なものではありません。「非可食かつ副産物」をすでにFITの対象として認められていることを理由にパーム油に適用しないことは、問題です。また、「環境負荷を減少させる」という再エネの目的と相反するものです。これらの理由から、私たちは、ガイドラインは新規・既存問わずに全てのバイオマス燃料を非可食に限定すること、つまりパーム油をFITの対象から除外すべき、と考えます。

持続可能性の確認期限が1年延長された                                     農産物の収穫に伴って生じるバイオマスのうち、主産物は2021年3月末まで、副産物は2022年3月末までに第三者認証(RSPO2013、RSPO2018、RSB、GGL)によって持続可能性を証明することが定められていましたが、新型コロナウイルスの影響や想定より認証取得に時間を要することを理由に、確認の猶予期間がそれぞれ1年延長されました。いかなる理由があっても、持続可能性が担保されていない燃料を使うことは、そもそも再生可能エネルギーに資さないため、制度がそれを容認することはあってはならないことです。また、この猶予は、持続可能性の確保に関する「自主的取組」を行い、かつ取組の内容及び農園等の情報を自社のホームページ等で公開した事業者にのみ許されるはずですが、FoE Japanの調べでは、事業者の多くが情報を開示していません。ガイドラインを守らない事業者がFITの支援を受け続けていることや、こうした事業者を是正する体制がないことも非常に問題です。

木質バイオマスにも厳格な持続可能性基準を                                 FITの認定を受けた多くのバイオマス発電所が、木質ペレットや木質チップを燃料としていますが、ガイドラインには非持続可能な森林伐採や生物多様性への脅威を確実に排除するための厳しい基準がありません。ガイドラインでは、輸入木質バイオマスを利用する際には、「森林認証制度や CoC認証等における認証が必要」と記載するのみで、「詳細は林野庁の「木材・木材製品の合法性、持続可能性の照明のためのガイドライン」を参照すること」としています。林野庁のガイドラインでは、森林認証制度及びCoC認証制度制度のほかに、関係団体による認定と企業による独自の取り組みの3つの方法が認められているため、実質なんでもありの状態です。森林認証は、認証ラベルを貼った木材製品を流通する際の持続可能性を保証するものであり、木質ペレット等の燃料としての利用を想定していないため、それだけでは持続可能性や合法性を担保できない可能性があります。また、関係団体や企業による独自の取り組みでは、第三者性の確保ができません。さらに、2021年2月にFoE Japanが実施したアンケート調査では、CoC認証しか確認していない事業者がいることもわかっており、ガイドラインで定められた方法によって持続可能性を確認したバイオマス燃料のみが発電に使われているかも疑わしいのです。

 このように、FIT導入から9年経った今も、ガイドラインでは気候危機や生物多様性保全に関するリスクを排除できないままです。私たちは、上記の問題を含むガイドラインの改善を訴えるとともに、バイオマス発電が抱える環境・社会影響について情報発信と問題提起を続けていきます。誰もが使う電気は、一番身近な環境問題のひとつ。次回の改訂でもパブリックコメントがあると思いますので、皆さんも一緒に参加してみませんか?

<参考>                                                             ・国内外26の環境NGOによる共同声明 https://www.foejapan.org/forest/biofuel/210413.html                                         ・経産省 事業計画策定ガイドライン(バイオマス発電)https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fit_2017/legal/guideline_biomass.pdf

日本にもあった違法伐採!! 波紋拡がる宮崎県の盗伐事件(13)

第六回 えびの市大字西長江浦(その1)

 2021年1月28日、宮崎県盗伐被害者の会の海老原会長は田村貴昭衆議院議員秘書らとともに林野庁と面会し、実態調査や有罪判決を受けた事業者に出された補助金返還を求めることなどを要請しました*1。さらに3月30日、被害者の会会員3名で再び林野庁と面会し、被害地視察や被害者への聞き取りによる実態把握を要請しました。林野庁からは2020年9月に懲役1年(執行猶予4年)の刑が確定した伐採業者の黒木達也被告に対して拠出された補助金の返還を現金で求めていることや、5月頃に被害地視察を予定していることなどの回答を得ました。
 また宮崎の現場では、最近、検察、警察の動きにやや変化が見られ、国富町、えびの市、都城市で県警による実況見分が続々と実施されています。こうした案件がすべて適切に起訴され、司法による判断が下されることで「盗伐は犯罪」であることが周知・徹底、盗伐行為の撲滅につながることを切に願うところです。

 今回は宮崎県盗伐被害者の会会員の志水惠子さんの事件を紹介します。
※今回も被害当事者の志水惠子さんのご了承を得て、実名で記述しております。

被害林地の概要
 志水さんが被害に遭われた林地は、えびの市大字西長江浦字川内の地番1195-1、1195-20、1216-2の3筆で合計約0.33[ha](3反3畝)、土地の名義は志水さんの母親です。九州縦貫自動車道と宮崎自動車道が交わる「えびのJCT」のすぐ側に位置しており、林地は宮崎自動車道沿いです。実際、志水さんの父親(故人)は宮崎自動車建設用地として林地の一部を提供・売却したそうです。
 ヒノキが多かったこの林地には志水さんは幼少の頃から馴染みがあり、当時、家を建てるために伐採し、その後、父親に連れられて植林の手伝いをしたそうです。父親の逝去後は故人を偲んで毎週のように墓参りをしていた頃もあり、その都度、墓に供えた花の一部を林地にも手向けていたそうです。
 樹齢は55~60年生くらいで、筆者が被害地を見せていただいた際に残っていた切り株の年輪を数えたら72年生のものもありました。

被害前、立木の一部伐採を計画
 実は志水さん、2016(H28)年に立木の一部の伐採、売却を検討したことがあり、友人を誘って立木確認のために林地を訪れています。「他人の木を伐ってはいけない」と思い、小林市の西諸地区森林組合で字図を入手し、事前に林地、立木を確認しようとしたのでした。
 当日、友人はタケノコ採り、ご自身は立木を数えました。よく育ったヒノキが40本、一回り小さなものが70本あり、まっすぐきれいに植えられていて、足場もよかったことを記憶しています。そのうちの100本売却すべく西諸地区森林組合に見積もりを依頼。志水さんは立木のみの販売を想定していたのですが、予想外に森林組合側は林地込みでの買取りを希望し、双方で折り合いが付かず、交渉妥結には至りませんでした。

盗伐発覚、ヒノキの山がニンニク畑に!?
 志水さんが盗伐被害に気付いたのは2020(R2)年1月29日。陸上自衛隊霧島演習場にオスプレイが来るということで、演習場から5kmほどで高台に位置する林地からそれを見に行ったときでした。林道に入ると空が見えているのに違和感を覚え、山中に入ると「木がない」。驚くことにそこにはニンニク畑が広がっていたのです。また掘り起こされた無数の伐根はまだ土が付いている状態で重なり合い、ゴロゴロしている状態でした。
 志水さんはすぐに妹さんに連絡し、えびの市役所農林整備課に連絡を入れてもらいました。その日の午後、えびの市役所農林整備課主任主事S氏、他1名、および志水さん姉妹の計4名で盗伐被害現場を確認。えびの市役所Sからは、志水さんの母親名義の山林であることの証明や境界を明確にすることの必要性を伝えられました。

現場検証で平然と嘘をつく盗伐犯
 それから間もない2020(R2)年2月6日、えびの市役所の呼びかけで関係者が現場で一堂に会しました。志水さんご本人、妹さん、ご友人、えびの市役所農林整備課係長K氏、主任主事S氏、そして盗伐犯のIでした。この日も現場には無数の起こされた伐根が積まれていて、「すごいことになっていた」そうです。
 現場検証がはじまると、Iは「Mさんに聞いて伐採木にはピンクのリボンをたくさんつけていた」と説明し、さらに志水さん本人の面前にもかかわらず平然と「境界についてもMさんに聞いて確認し、志水さんにも立ち会ってもらいました」と言ったそうです。それを聞いた志水さんは冷静に「ここに妹もいますし、私達で立ち会ったものはおりません。Iさん、嘘はいけませんよね」と切り返しました。これにはIも二の句が継げず、その後は一切口を開かなかったようです。なお、MとはIが志水さんの林地に隣接する土地3筆を2017(H29)年3月23日に譲り受けた元の所有者です*2
 ニンニク畑のところで志水さんは法務局等から入手した図面をIにも見せるように広げて、えびの市役所のK、Sに説明しました。「ここはうちの山ですよ。こんな形ではありませんでした。こんなうすっぺらな山ではありませんでした」。Kは字図を見ながら周辺を走り回り境界を確認。K、S、Iとのやりとりの中で、Iは「ここを間違って伐ったかもしれない」とニンニク畑がIの土地でないことを一部認めたのでした。

 志水さんは、このときのことを振り返り、「Iに伐られてとてもショックでした。立木のときをよく知っていたので、山の形が変わってしまったことに本当に驚き、警察に『どこからどこまでが所有林ですか』と問われても『こんなに変わっていたら分かりません』と答えるしかありませんでした。お金の問題などではありません」。
 
 後日、家族の間で記憶を辿ってみたところ、2017(H29)年1月頃、Iが志水さんの母親宅を売買交渉と思われる目的で訪ねてきていたことを、応対した妹さんが思い出しました。そのときIは「山を30万円で売ってくれませんか」と言ったそうです。妹さんも林地についてはよく把握していて「大きなヒノキが沢山あるでしょう。ヒノキ一本が30万円ですか?」と聞き返すと、Iは5分も経たないうちに帰ったそうです。

えびの警察署を訪問、「あなたの山であると証明できますか?」
 2020(R2)年2月6日、盗伐犯Iと現場で遭遇した後、志水さんはえびの警察署へ盗伐被害の相談に行きました。応対者はえびの警察署S氏。志水さん自身で宮崎地方法務局小林出張所から取寄せた一連書類を見せながら被害概要を説明し、警察の対応を求めました。しかしSからは「あなたの山であると証明できますか」との問いかけのみで、志水さんの連絡先等を確認することもなく、また志水さんが「資料を受け取ってください」と懇願したにもかかわらず、それを彼の手元に預かることもありませんでした。
 この対応に憤慨した志水さんは2月14日、鹿児島県湧水町の土地家屋調査士に相談しました。しかし「作業道ができていて山の形がかわっている状態では測量はできない」との回答でした。
 その回答を得た後、間を置かずにえびの署を再訪問。前回と同じSにそのことを伝えましたが「境界がわからないなら捜査はできない」。志水さんは「警察で測量はしてくれないのか」と食い下がりましたが、「警察はやらない。捜査はできない」の一点張り。それでも志水さんはひたすら「ニンニク畑は私の山です」と訴えましたが、一切聞き入れてもらえませんでした。

 「警察が頼りにならない、助けてもらえない」。想定外の状況に直面し、志水さんは大きなショックを受け途方に暮れていたところ、知人から宮崎県盗伐被害者の会の存在を聞き、すぐさま電話でコンタクトをしました。このやりとりで少し元気を得た志水さん、あきらめずに2020年4月21日、三回目の訪問をしました。応対者は前回のSに加え、その上役の警部補M氏でした。志水さんは前回同様、字図など一連の書類を見せて被害の状況を熱心に説明をし、幸いにもえびの署による現地調査の確約を得ました。

えびの署による現場検証
 2020年4月27日、えびの警察署による被害地の現場検証が実現。えびの署からはM、S、および他1名、えびの市役所農林整備課からKとS、そして志水さん、妹さん、ご友人の3名。志水さんはえびの市役所による現場検証の時同様、熱心に説明をしました。
 ところが警察の反応は市役所のものとは大きく異なるもので、特にSからは「木を伐った人に、残りの山を売ったらどうですか」という打診が三度もありました。この言葉には強い憤りを覚え、被害者に寄り添う気持ちがまったくないと感じ、Sに対して強い不信感を抱いたのでした。

 そうした不信感を抱きながらの警察とのコミュニケーションはとてもストレスがかかり、他の多くの被害者がうつなど心身状態を悪くする経験をしており、志水さんも例外なく一時期、心身状態を崩されました。そして、このストレスフルなえびの警察署とのやりとりは現在も続いています。志水さんの事件は目下、森林法違反(森林窃盗)の3年の時効を迎えているのか否かが争点になっています。

 次回以降、想像を絶するえびの署の対応について、そしてそうした対応にも辛抱強くやり取りを続ける志水さんの取り組みを紹介します。(三柴淳一)

*1 しんぶん赤旗2021年1月29日紙面.
*2 IはMから地番1195-21(10,118m2)1216-1(238m2)、1195-9(297m2)の3筆、計10,653m2(1.06[ha]、約10反)を2017(H29)年3月23日に購入。

第一回 宮崎市瓜生野ツブロケ谷(その1)
第一回 宮崎市瓜生野ツブロケ谷(その2)
第二回 宮崎市高岡町花見字山口(その1)
第二回 宮崎市高岡町花見字山口(その2)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その1)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その2)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その3)
第四回 宮崎市田野町字荷物取地乙
第五回 国富町大字木脇(その1)
第五回 国富町大字木脇(その2)
第五回 国富町大字木脇(その3)
第五回 国富町大字木脇(その4)
第六回  えびの市大字西長江浦(その1)

500名以上の科学者が日本政府に書簡を提出:森林バイオマスを使った発電はカーボンニュートラルではない

2月11日(米国時間)、42の国と地域の500名を超える科学者が日本政府に対し、木質バイオマスを使った発電はカーボンニュートラル(炭素中立)ではないと主張する書簡を提出しました。書簡は米国政府、欧州連合(EU)及び韓国政府にも同時に送付されました。

書簡では、バイオマスの発電利用により森林が伐採され、森林に蓄えられている炭素が大気中に放出されること、森林の再生には時間がかかり、数十年から数百年にわたって気候変動を悪化させること、バイオマスの発電利用は化石燃料を使用した場合の2〜3倍の炭素を放出する可能性があることが指摘されています。また、各国政府は「気候変動対策」として、バイオマスを燃焼することに対する補助金やインセンティブにより、実際は気候変動を悪化させていること、そして真の排出削減のためには、森林を燃やすのではなく、保全と再生に努めるべきことが述べられています。

日本では、2012年にFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)が開始されて以降国内のバイオマス発電事業が急増しています。

FIT認定量は、2020年9月には821.5万kWで、そのうち747万kWが一般木質バイオマスおよび農作物残さ(輸入木質ペレット・木質チップ、PKSなど)やバイオマス液体燃料(パーム油など)による発電となっています。同時点で、FIT制度下で稼働している発電事業数は446件、認定されている事業数は709件にのぼります。

大規模バイオマス発電事業は、輸入燃料に頼っています。例えば木質ペレットの輸入量は、2012年には約7.2万トンでしたが、2019年には161.4万トンに急増しています。

書簡は、日本のFIT制度について「日本は、木材を燃やす発電所への補助金をやめる必要がある」と言及しています。

以下、日本語の仮訳です(原文はこちら)。


森林のバイオマスエネルギー利用に関する書簡<仮訳>

2021年2月11日

米国大統領 バイデン様、
欧州委員会委員長 フォン・デア・ライエン様、
欧州理事会議長 ミシェル様、
日本国内閣総理大臣 菅様、
大韓民国大統領 文様

下記に署名した科学者および経済学者は、米国、欧州連合、日本、韓国が、2050年までにカーボンニュートラルを達成するために野心的な目標を発表したことに称賛の意を表します。森林の保全と再生こそが、この目標を達成するための重要な手段であり、同時に地球規模の生物多様性の危機への対処に役立つものです。私たちは、エネルギー生産のための燃料を化石燃料から木質燃料に転換することにより、気候目標と世界の生物多様性の双方が損われることがないよう、強く求めます。

何十年もの間、紙や木材製品の生産者は副産物として各工程の廃棄物を電気や熱を生成してきました。この利用は木材の新たな伐採につながるものではありません。しかし近年では、バイオマスエネルギーのために樹木を伐採し、木材の大部分を燃料に転用することで、森林に蓄えられるはずの炭素を放出させてしまう誤った動きが見られます。

このような新たな伐採の結果、当初は炭素排出量が大幅に増加し「炭素負債」が発生します。バイオマスエネルギー利用のために伐採される木が増えれば増えるほど、炭素負債は増加します。森林を再生し化石燃料を代替することで、最終的にはこの炭素負債が解消されるかもしれません。しかし、森林再生には時間がかかり、世界が気候変動を解決するためにはその時間的猶予がありません。数多くの研究が示しているように、このような木材の燃焼は数十年から数百年にわたって温暖化を悪化させることになります。木材が石炭や石油、天然ガスに取って代わる場合も同様です。

その理由は基本的なことです。森林は炭素を蓄えているからです。乾燥した木材の重量の約半分は炭素です。木材が伐採されて燃やされる場合、エネルギーを供給する前に伐採と加工の過程で、伐採された樹木の多く、しばしば半分以上は、化石燃料を代替することもなく炭素を大気に追加しながら、失われます。また、木材の燃焼は炭素効率が悪く、エネルギーとして燃やされる木材は、化石燃料よりも多くの炭素を排出します。全体的にみて、木材の燃焼により1キロワット時の熱や電気を生成に対して、化石燃料を使用した場合の2~3倍の炭素が大気中に放出される可能性が高いです。

今後数十年の地球温暖化の悪化は危険です。この温暖化は、増加する森林火災や海面上昇、猛暑などによる、より直接的な被害を意味します。また、氷河の急速な消失と永久凍土の融解、世界の海の温度上昇と酸性化により、さらに永続的な被害がもたらされることを意味します。これらの被害は、今から数十年後に炭素を除去したとしても、元に戻ることはありません。

木材を燃やすための政府の補助金は、二重の気候問題を引き起こしています。なぜなら、この誤った解決策が本当の炭素排出量削減策に取って代わっているからです。企業は、化石エネルギーの使用を、真に温暖化を減少させる太陽光や風力に転換する代わりに、温暖化を悪化させる木材に転換しています。

日本やフランス領ギアナなどでは、木材を燃やして電気を作るだけでなく、パーム油や大豆油を燃やす案も出ています。これらの燃料を生産するためには、パーム油や大豆の生産を拡大する必要があり、その結果、炭素密度の高い熱帯林が皆伐され、その炭素吸収量が減少し、大気中に炭素が放出されます。

森林や植物油の管理に関する「持続可能性の基準」では、これらの結果を変えることはできません。持続可能な管理とは、木材の伐採後に最終的に炭素負債が返済されることを可能にしますが、それまでの数十年、あるいは数百年の温暖化の進行を変えることはできません。同様に、植物油の需要が増加すれば、食糧需要の高まりによってすでに発生している世界的な森林伐採の圧力にさらに拍車がかかるでしょう。

土地利用変化に起因する排出について、国が責任を負うことは望ましいことではありますが、それだけでは木材を燃やすことをカーボンニュートラルとみなす法律による問題を解決できません。なぜなら、発電所や工場で木材を燃やすための法律で定められたインセンティブを変えるものではないからです。同様に、ディーゼル燃料の使用からの排出について各国が責任を負っているという事実は、ディーゼルがカーボンニュートラルであるという誤った理論に基づいており、トラックがより多くのディーゼルを燃やすことを奨励する法律を是正することにはなりません。国家の気候変動に関する責任を定める条約も、それを果たすための各国のエネルギー関連法も、それらが奨励する諸活動が気候に与える影響を正確に捉えたものでなければなりません。

今後の皆様のご決断は、世界の森林に大きな影響を与えます。もし世界のエネルギー需給量のさらに2%を木材から供給するとしたら、木材の商業伐採量を2倍にする必要があるからです。ヨーロッパでのバイオマスエネルギーの増加は、すでに欧州における森林の伐採量の大幅な増加につながっていることを示す十分な証拠があります。これらのアプローチは、熱帯諸国に森林をもっと伐採するよう促すモデルを作り出し、世界が目指してきた森林に関する合意を台無しにします。既に数か国は森林伐採を増加させると表明しています。

このような悪影響を回避するために、各国政府は、自国産であれ他国産であれ、木材を燃焼させることに対する既存の補助金やその他のインセンティブを廃止しなければなりません。欧州連合は、再生可能エネルギー基準や排出量取引制度において、バイオマスの燃焼をカーボンニュートラルとみなすのをやめる必要があります。日本は、木材を燃やす発電所への補助金をやめる必要があります。また、米国では、新政権が気候変動に関するルールを作り、地球温暖化を抑制するためのインセンティブを生み出す中で、バイオマスをカーボンニュートラルまたは低炭素として扱わないようにする必要があります。

樹木は、生きているものの方がそうでないものより気候と生物多様性の両方にとって価値があります。将来のネット・ゼロ・エミッション目標を達成するために、貴政府は森林を燃やすのではなく、森林の保全と再生に努めるべきです。

ピーター・レイヴン(ミズーリ植物協会 名誉会長、米国ミズーリ州セントルイス)

その他の主唱者:

(*原文をご参照ください)

気候危機解決、本当に必要なものは「システムチェンジ」

こんにちは。FoEでインターンをしている横浜国立大学の佐藤悠香です。

今回は、1月21日に行われたウェビナー「『私たちに必要なのはシステムチェンジだ』~斎藤幸平さんと考える、気候危機を生んだ世界像からの脱却後の世界像~」に参加報告です。
1時間半と短い時間でしたが、とても内容が濃く、個人的に刺さるものが多かった回でした。

このウェビナーではまず、大月書店の岩下さんからナオミ・クラインの著書『地球が燃えている』刊行記念として、この本の概要やナオミ・クラインが提唱するグリーンニューディールについてご説明いただきました。

気候変動を止めるための新しい社会のあり方「グリーンニューディール」とは、単なる環境政策ではなく、気候変動を格差や社会福祉の問題と結び付けて、包括的な解決策を提唱するものです。

ナオミ・クラインさんの著書『地球が燃えている』で詳しい説明がされていますので、みなさんもぜひ読んでみてください。

斎藤幸平さんからのお話:資本主義からの「脱却」

つぎに、斎藤幸平さんから「気候危機を生んだシステムからの脱却を」というテーマでお話いただきました。(投影資料はこちら

2020年は、今までどおりの「普通」が普通でなくなり、新しい「ニューノーマル」を考える転換点になりました。

しかし、ワクチンが広まり、コロナ危機の前の生活に戻ることが果たして本当に正しいのか。
私たちは破局への道を進んではいないか。改めて今の社会システムのあり方の再考が求められること、そして、コロナ危機と気候危機に直面する今だからこそ、新しい社会システムを求めていく「システムチェンジ」のタイミングにいることを強調されました。

この「システムチェンジ」というのは、単に電力システムとか交通システムの話ではなく、資本主義という経済・社会システムを抜本的に変えていくことを意味します。これは現在の社会を「スローダウン・スケールダウン」していくだけでは不十分で、新しいシステムを掲げる必要があるということです。

また、技術革新を頼り、今の生活水準を落とさずにEV車を普及させ、再エネへの転換を進めるだけでは圧倒的に不十分で根本的なところの解決にはなりません。

資本主義の下で進めるグリーンニューディールは、結局無限の経済成長を求めるだけで、自然と弱者からの収奪を強めてしまうのです。そして、これは結局グローバルな格差拡大につながってしまうことを指摘されました。

私たちは、成長主義とは決別し、抜本的なライフスタイルの転換を伴うグリーンニューディールを求めていく必要があります。

この別の社会のあり方を作り上げていくことは、オルタナティブな享楽主義(alternative hedonism)を求めていくチャンスでもあるといいます。現在のライフスタイルを続けることが本当に幸せなのか、そして、資本主義のもとで暮らす私たちの別の生き方・働き方を再考するきっかけになると、「資本主義からの脱却がもたらす新しい可能性」もお話くださいました。

気候正義(climate justice)とは

つづいて、FoE Japanの高橋さんから、気候変動アクションマップの紹介がありました。気候変動アクションマップは、今の社会システムがもたらしている日本が関係する環境破壊・人権侵害の問題についてまとめ描いたものです。

また、資本主義とも密接に関わり、気候危機解決に向けて最も大切であろう概念「気候正義(climate justice)」とは何か、そしてなぜ気候正義が重要なのかを、海外のFoEのメンバーの言葉を引用しながら説明していただきました。

気候変動は「単に科学や環境の問題ではない」
この言葉を聞いてすぐに意味が分かる方はどれほどいらっしゃるのでしょうか。

気候正義とは、気候変動を引き起こしてきた、自然や人間の搾取に基づく社会の仕組みを社会の公平性を実現する形で変えていくことです。

気候正義が何かを知ると、気候変動解決に向けた運動は、「自然を守りたい」「生物を傷つけたくない」人たちの運動ではないことが分かると思います。そして、気候不正義と資本主義は密接に関わっていることが分かると思います。

あくまでも先進国の豊かな生活を実現するための経済成長を続ける限り、その成長からこぼれ落ちる人々・成長実現のために踏みつぶされる人が大多数になります。そして、この経済活動のせいで生じてくる気候危機のツケまでも払わされるのが、CO2をほとんど排出していない途上国の人々です。

このような不正義と格差を目の前にして、私たちはもっと持続可能で公正な社会を求めていくべきではないでしょうか。こういう話をすると、規模が大きすぎて到底無理そうに聞こえるかもしれませんが、この不可能そうに聞こえることを実現しなければいけないほど、気候危機の中にいる私たちには時間がないのです。

変化を起こすのは市民である私たち

これに気が付くと、「マイ〇〇をもっておけばOK」という話では到底済まないことが分かります。個人のライフスタイルを環境に配慮したものに変えていくことはもちろん大切だけれど、消費者としての努力を求めるよりもそれ以上に市民が、

・本当に公正な政治的意思決定を求めていく

・グリーンウォッシュ企業に”NO”を突きつける

といった声を上げて生産のあり方を抜本的に変えていかない限りは、現在の自然破壊と弱者からの収奪が蔓延した社会は変わりません。

そして、FoE Japanの吉田さんから、FoE Japanの考えるシステムチェンジの原則について、ご紹介いただきました。

「国や企業ではなく市民が声を上げていかない限り、システムチェンジは実現できない。
政府や企業や大きな力を持つ人ではなく、私のような普通の市民が声を上げ続けることが実は一番大切で効果的」
というお話は、私自身としても、これからも声を上げ続けるモチベーションになりました。

また、斎藤さんも、「個人の変化」「政治の変化」「企業の変化」をセットで求め実行していくには、私たち一人一人の声とアクションが必要になるとおっしゃいました。

斎藤さんやFoE Japanのお話を聞くと、「現状を変えなくてはいけないことは分かったけれど私は何をすればいいの?」と思う方も多いと思います。

そのような方は、自らもアクションに参加することがネクストステップになります。NPO・NGO・政治活動・社会運動。世の中にはいろんな立場からすでに声を上げて活動している人がたくさんいます。

そんな人たちに話を聞きにいったり、支援をしたり、自分もその活動に加わることで人とのつながりを増やしていくことが重要なのではないでしょうか。

斎藤さんは、このアクションを起こすことのハードルの高さには二つあるとおっしゃっていました。一つは、アクションに対する心理的なハードル。二つ目は労働時間の長さによる時間的ハードルです。

斎藤さんによると、教育・医療・交通機関といった「コモン」を脱商品化し、みんなの共有財産にしてできるだけ安価にアクセスできるようになれば、賃労働に依存しない生活が維持できるようになります。そして、このように労働時間を減らすことで仕事以外のアクティビティに費やす時間を増やすことが可能になるのです。

私は、Fridays For Future Japanでの活動を通して、一つ目のハードル「アクションすることへの心理的ハードル」を下げていきたいと思っています。

同調圧力が強い日本社会でも、年齢や性別、人種に関わらず誰もがおかしいことは堂々と「おかしい」と言っていいこと、自分の声には価値があること、主張は持つだけでなくアクションを通じて示すことは最高にクールであることを特に同世代に伝えていきたいです。

本当の豊かさを見つける

今回のウェビナーを通じて、自分が特に意識せずに生活していた資本主義というシステムの中で、私たちは本当に必要のないものまで広告やメディアの影響を受け、「より早く、新しいものをたくさん」消費しようとしていたことに気が付きました。

資本主義から脱却するには、まず「足るを知る」こと。そして、物質に左右されない自分にとっての本当の幸せを見つめなおすことが大切です。

大量生産・大量消費ではなく、顔の見える消費をすること。地域への貢献を実感すること。このような暮らし方は単に、弱者とか地球環境とかだけだけでなく結局は自分自身の心の豊かさに繋がっていくのではないでしょうか。

スローダウンした社会のあり方は、今よりずっと公正で絶え間ない消費と労働からのプレッシャーから開放され、人々が心の余裕のある暮らし(働く以外の活動の領域が広がる生活)に繋がるのではないかと思います。

経済指標に左右されない「人間らしい」生活を大切にするには、今の社会でおかしいところを探してみる。興味を持つ。そして、自分で調べたりたくさんの人の声を聞きにいくこと。

そして、そこで得た情報や知識に満足するのではなく、次は自分が本当に実現したい社会のために行動して声を上げること。

このようなことが重要なのではないでしょうか。

水素やEV、アンモニア、自然エネルギーなどのイノベーションの前に、まず私たちが、資本主義の下で地球と弱者に負担をかけ続ける社会システムを見直さない限り何も根本的な解決にはなりません。

そのため、気候危機やグローバルな格差・貧困の解決には、個人のライフスタイルの変化は大前提であるものの、これだけでは実は全く足りてなくて、「国の政策と企業のあり方」をより公正で本当の意味で人々の心を豊かにする方向へいくように、私たち一人ひとりが市民の立場からプレッシャーをかけ続けることが重要です。

資本主義のような絶対に誰かをとりこぼすような社会システム、踏みつけられて泣き叫んでいるようなひとがいるシステムがおかしいと思うなら、レジ袋をもらうのをやめたりマイボトルを持つのだけでは到底十分ではなくて、この経済・産業システムの変革を求めてアクションをすることが大事だという斎藤さんとFoE Japanのみなさんから強いメッセージを受け取りました。

最後に

システムチェンジを求めて声を上げ続けること、そしてそれと同時に新しい社会の形成に向けて、「自分の人生には本当は何が必要なのか」という自分自身の考え方(生き方)を考え直すことが必要になります。

be the change you want to see in the world.
世の中で見たい変化があるならば、まずはその変化に自分がなること。

社会とともに、自分自身もこれまでとは違う「新しい豊かさ」を再考していきたいと思います。

(インターン・佐藤悠香)

*斉藤幸平さんの当日の投影資料はこちら

*FoE Japanの気候変動アクションマップの購入はこちら

*FoE Japanが考えるシステムチェンジの五原則「気候危機とコロナ禍からのシステム・チェンジを」はこちら

日本にもあった違法伐採!! 波紋拡がる宮崎県の盗伐事件(12)

第五回 国富町大字木脇(その4)

 2017年11月から翌年4月の間に宮崎県西都市内のスギ計179本を伐採させて盗み、2020年7月に逮捕、9月に起訴され、森林法違反(森林窃盗)の罪に問われていた宮崎市の伐採業者「朝日商事」元代表、現在無職の中原朝男被告に対して、宮崎地裁は12月15日、懲役1年、執行猶予3年(求刑懲役1年)の判決を言い渡しました。角田康洋裁判官は「被害者に誤伐と言うなど犯情は良くない」としました*1
 なお11月24日の論告求刑公判で、検察側は「根こそぎ伐採し、ばれたら弁償すればいいと考えており、動機に酌量の余地はない」と指摘し実刑を求刑、弁護側は「被害弁償を進めている。息子の支援を受け、林業から引退する」と情状酌量を求めていました*2

 今回は、これまで三回に渡って紹介した高野恭司さんの隣の林地の所有者で、同様に黒木林産の盗伐被害に遭われたTさんの事例を紹介します。

被害林地の概要
 Tさんの林地は国富町大字木脇2532番地。面積は700m2(0.07[ha])で500m2は平坦です。その理由は戦時中、兵舎が建っていたとのこと。土地入手の経緯は27年前、いとこから「林地を買ってくれ」との依頼を受け、購入したのだそうです。
 被害の状況については、第五回 国富町大字木脇(その2)で触れましたが、被害本数77本、警察による実況見分によって認められたのは13本です。

 Tさんの林地には2007(H19)年に境界調査が入り、境界は明確でした。さらに被害を受ける前、2014(H26)年に森林組合に依頼して「しっかり太らせていく」という計画の下、間伐してもらったばかりでした。Tさんは生まれも育ちも国富町で、現在も居住しています。頻繁に現場に足を運び山を見るのが楽しみだったそうです。したがって、一般論として盗伐被害の要因にあげられる「不在地主」、「経営意欲の低い所有者」、「地籍調査が及んでいない境界が不明確な林地」といったことには該当しない事例であり、そのような所有者でも被害に遭ってしまう、ということを強調しておきます。

まさか自分の山が被害に遭うとは?
 2018(H30)年5月に国富町役場では町の広報誌で見開き2ページの盗伐の注意喚起の記事を掲載しました。Tさんもこれを読み、「盗伐行為が横行している」ことを認識していましたが、さすがに自分の山が被害に遭うとは夢にも思いませんでした。しかもTさんは6月2日に現場を車で通ったそうです。そのとき伐採準備は進んでいて、H鋼で水路に橋を架けている様子を含め、準備作業を目撃していたのですが、自分の林地の被害と結び付かなかったようです。Tさんは「だから材を出されてしまってからではわからないのでしょうね」と振り返ります。「盗伐は人が入らない裏山とか奥山とか、見えないところでやるものだと思っていた。だから白昼堂々と作業を進めていって、ばれた場合は『誤って伐りました。ごめんなさい。示談金を払います』としてやっていたのだろう」。

「無届伐採」が判明
 2018(H30)年9月13日、Tさんも高野さんに続き国富町役場に情報開示請求をしました。結果は9月14日に交付され、「該当する関係書類は存在しません。理由は当該申請地における伐採及び伐採後の造林の届出書が提出なされていないため」というもので、いわゆる無届伐採が判明しました。
 その後、Tさんも国富町役場に「現場に来てくれ」と働きかけ、役場の担当者数名の現場視察が実現しました。その時、Tさんは台風24号の豪雨によりすでに崩れはじめている盗伐跡地を指しながら、その補償の可能性について役場職員に問うと「自然災害は補償の対象にはならない」との回答だったそうです。さらに「林地に盗まれずに残っている数本の樹木が倒れた場合はどうなるのか?」という問いに対しては「話し合いしかないのでは?」と完全に他人事のような回答で、親身になって考えてくれているような様子は微塵も見られませんでした。
 高野さんが警察とのやりとりをする中で、2018(H30)9月30日にTさんの林地でも警察の実況見分が実施されました。その後2回、計3回かかり、Tさんも都度立ち会い、切り株を指さした写真の撮影を警察から要求されることなどもあったそうです。

 ところが役場や警察の対応は遅々として進まなくなり、問い合わせをしても「難しいのですよね・・・」といった回答が続いたため、Tさんは宮崎日日新聞の「窓」に盗伐被害について投書もしました。

Tさんにも届いた「示談書」
 第五回(その2)で触れた高野さんに届いたN弁護士から内容証明での「示談書」は、Tさんの手元にも届きました。記載内容は77本、315,000円の支払いを明記した「詫び状」でした。高野さん同様、Tさんもこの通知には対応しませんでした。

刑事が終わったら民事で
 Tさんにお話をお聞きしたのは、まだ黒木林産の刑が確定する前のことでしたが、Tさんは刑事裁判が決着した後は、民事裁判で損害賠償を求めていくつもり、との考えを話してくれました。「黒木林産は裁判になっても、一度も挨拶にも詫びにもこない」。Tさんも誠意のかけらも見られない盗伐業者を許すつもりはないようです。

最後に
 本稿冒頭で触れた中原朝男被告が代表を務めていた「朝日商事」は、現在も宮崎県森林組合連合会が認定する合法木材供給事業者です。つまり黒木林産に続き宮崎県内で2件目の「合法木材供給事業者」が関与した盗伐事件の有罪判決となります。
 一方、宮崎県盗伐被害者の会の会員家族数は現在120で、これも「氷山の一角に過ぎない」と同会会長の海老原さんは言います。「黒木林産は国富町木脇の盗伐現場以外でも盗伐を繰り返している。朝日商事も同様」。

 このような状況下で生産された「合法木材」、その信頼性は極めて低いと言わざるを得ません。その信頼性の低い「合法木材」は、製材、集成材、合板などに加工され、「合法木材」として日本全国へ出荷されています。さらには宮崎県産スギも含め、近隣県の原木が鹿児島県志布志港から中国、韓国、台湾などに「合法木材」として輸出されています。現状の制度と取り組み状況において、「その中に盗伐材が含まれていない」と断言できるだけのトレーサビリティが確保されているとは、とても思えません。

 なお、無断伐採に関する国の調査(2020)*3によれば、2018年1月~2019年12月において市町村等へ相談のあった件数は、全国で95件、そのうち警察への相談件数は32件でした。その内訳において「伐採業者や伐採仲介業者が故意に伐採した疑いがあるもの」は7件で、うち警察への相談件数が3件となっています。その7件は全国を6ブロックに分けたうちの、北海道・東北、中国・四国、九州・沖縄で確認されています。また「境界の不明確または当事者の認識違いにより無断で伐採されたもの」については66件あり、全国6ブロックすべてで確認されています。本調査は本ブログ第三回(その2)で紹介したとおり、2017年12月の国会衆議院農林水産委員会における田村貴昭衆議院議員の質問に端を発するもので、2018年3月にされて以来、毎年継続的に調査されているものです。
 したがって、無断伐採や盗伐は宮崎県のみで起こっていることではなくて、全国規模で起こっていることは明らかです。人の良い、物言わぬ高齢者を狙う盗伐業者や仲介業者に対して、ようやく司法が「犯罪者」として認めるようになり、「盗伐=犯罪」と断言できるようになりましたが、行政による対応には、未だ大きな動きは見られません。特に宮崎県においては「宮崎県と県警は盗伐を擁護している。県警は被害者の言うことに耳を貸さない」と被害者の会会長の海老原さんは切り捨てます。
 こうした行政の対応について、2020(R2)年11月18日の衆議院農林水産委員会において、田村貴昭衆議院議員は「盗伐業者、こういう違法操業をしている犯罪企業に対して国の補助金が流れておったんですよ。そして、こういう司直の判断をもってやっと補助金の返還請求ですか。ちょっと生ぬるいんじゃないんですか。こういうことが今いろいろ起こっているわけですよ。それをずっと私は三年間言ってきた。林野庁、農水省の対応としては極めて甘いと言わざるを得ないと思います」と指摘しています*4

 これまで看過されてきた国内の「盗伐」問題。今後は、警察組織の「被害者に寄り添った」真摯で適切な対応、国、県、市町村による「より厳しい対応」が求められています。(三柴淳一)

*1 毎日新聞2020年12月16日 地域面
*2 宮崎日日新聞2020年11月25日 紙面
*3 林野庁(2020). 無断伐採に係る都道府県調査結果について(令和2年6月23日)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/press/keikaku/attach/pdf/200623-1.pdf
*4 衆議院農林水産委員会議事速報(未定稿)(令和2年11月18日)

第一回 宮崎市瓜生野ツブロケ谷(その1)
第一回 宮崎市瓜生野ツブロケ谷(その2)
第二回 宮崎市高岡町花見字山口(その1)
第二回 宮崎市高岡町花見字山口(その2)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その1)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その2)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その3)
第四回 宮崎市田野町字荷物取地乙
第五回 国富町大字木脇(その1)
第五回 国富町大字木脇(その2)
第五回 国富町大字木脇(その3)
第五回 国富町大字木脇(その4)

EU科学者団体がバイオマス持続可能性ワーキンググループへ書簡提出ー森林バイオマスはカーボンニュートラルではないと主張

欧州連合(EU)の科学者団体である「European Academies’ Science Advisory Council」、通称EASACが日本のバイオマス持続可能性ワーキンググループに対し、森林バイオマスはカーボンニュートラルではなく、持続可能ではないことを示す書簡を提出いたしました。

現在ヨーロッパでは、再生可能エネルギー源のかなりの部分をバイオマスが占めており、森林バイオマスを「再生可能」エネルギー源と見なす基準が疑問視されています。  EASACは、特に発電における石炭の代替としての森林バイオマスの使用について多くの研究を行ってきました。

書簡では、伐採された木は再び成長するのでバイオマスはカーボンニュートラルだと主張されてきたが、伐採後の森林の再成長に時間がかかり、実際は排出量を増加させること、サプライチェーン(伐採、輸送、乾燥、ペレット化、長距離輸送)における排出量を組み合わせると、バイオマスは、発電量(kWh)当たり、代替する石炭よりも遥かに多くのCO2を排出すること、また炭素会計のルールにおいて、排出量が林業部門で記録されていると想定されるため、燃焼時のバイオマスによる排出量をゼロ評価にすることを許し、それが間違った認識を生んでいることなどが述べられています。

以下、書簡の本文です(日本語仮訳、英語原本はこちら)。


2020年10月22日

森林バイオマス・エネルギーに関する最近の問題とEUにおける科学的議論

バイオマス持続可能性ワーキンググループ委員 各位

経済産業省(METI)の省エネルギー・新エネルギー部は、ヨーロッパの動向に合わせて、日本のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギー(RE)のシェアを拡大することを目指していると伺っております。 その一環として、木質バイオマス原料の持続可能性基準と、風力、太陽光、地熱などの再生可能エネルギー源と比較してバイオマス・エネルギーに与えられる優先順位の再検討も行われていると聞いております。 特に、2030年生物多様性戦略において、「EUで生産されたものであれ輸入されたものであれ、エネルギー生産のための立木、食用および飼料作物の使用を最小限に抑えるべきである」と公約された後、これはヨーロッパで非常に活発に議論されている領域です。 その結果、既存の持続可能性基準と再生可能エネルギー指令が現在再検討されています。 私は、現在議論されている主要な科学的側面、特に欧州アカデミー科学諮問委員会(EASAC)によって導き出された証拠と結論の要約を提供するように求められました。 

バイオマスはヨーロッパの再生可能エネルギー源のかなりの部分を占めており、森林バイオマスを「再生可能」エネルギー源と見なす基準が疑問視されています。  EASACは、特に発電における石炭の代替としての森林バイオマスの使用について多くの研究を行ってきました(参考文献リストを参照)。本文書に要約した結論は、ヨーロッパの28の科学アカデミーすべての総意を示すものです。

再生可能エネルギーの基本的な目的は、全体的な温室効果ガス排出レベルを削減することであると一般的に考えられています。 太陽光と風力では、その運転による温室効果ガス排出量が非常に少ないため、この目的は迅速に達成されます。 しかし、バイオマス・エネルギーの場合、CO2は大量に排出され続け、大気中のCO2レベルと気候への正味の影響を評価するには、関連する炭素の流れを慎重に検討する必要があります。

EASACが精査した広範な科学的研究は、現在の慣行と規制が気候への影響を適切に評価できていないことを示しています。特に、木質ペレットの国際貿易を通じてもたらされる森林バイオマスの大規模な使用は、実際には長期間にわたって排出量を増加させることを発見しました。これは、再生可能エネルギーの目的と相反します。 森林バイオマスが気候変動の緩和に貢献できるという考えは、従来、伐採された木は再び成長するのでバイオマスは「カーボンニュートラル」と見なすことができるという仮定に基づいていました。 しかし、現在では、炭素循環の目に余るほどの過度な単純化であり、関連する相当なタイムラグを無視していると認められています。 したがって、カーボンニュートラルは間違った、誤解を招く概念であり、前提とされるべきではありません。  

木材がよりエネルギー含有量が少ないことと、サプライチェーン(伐採、輸送、乾燥、ペレット化、長距離輸送)における排出量を組み合わせると、バイオマスは、発電量(kWh)当たり、代替する石炭よりも遥かに多くのCO2を排出することを多くの研究が示しています。したがって、発電所で化石燃料からバイオマスに切り替えることによる初期影響は、大気への正味排出量を増やすことです。 伐採後のバイオマスの想定される再成長がこの初期増加を相殺できるようになる前に、かなりの「タイムラグ」(炭素回収期間)があります。  したがって、気候への初期影響は、再生可能エネルギーに期待されるものとは正反対です。

この逆効果が多くの規制当局にとって明らかでない理由は、炭素会計のルールにあります。 ルールでは、排出量が林業部門で記録されていると想定されるため、燃焼時のバイオマスによる排出量をゼロ評価にすることを許します。 したがって、IPCCが認めているように、現在の気候への排出量に関する会計ルールは、誤った印象を与えます。  気候への影響を適切に評価するには、サプライチェーン上のすべての排出量と森林の炭素蓄積量の変化を記録する完全なライフサイクルアセスメントが不可欠です。 

したがって、適切な炭素会計は、バイオマスの気候への影響を評価するための極めて重要な要素です。それにより、初期の炭素負債と炭素回収期間を計算できます。 これは、いかなる「持続可能性」基準においても基本的な要素であるべきです。 ヨーロッパで活発に議論されているのは、気温上昇を1.5〜2度に抑制するというパリ協定に基づく約束と両立する回収期間の長さです。 現在、世界の気温が1.5度目標に近づいているので、短い回収期間(10年未満)に限り、加盟国のパリ協定の約束に合致すると見なすことができるとEASACは主張します。したがって、より長い回収期間を伴うバイオマスの使用は、補助金を支給されたり、「再生可能」と見なされたりするべきではありません。

これらの論点は、査読付き雑誌「Global Change Biology-Bioenergy」に掲載された私たちの論文に述べられています。その中で、EU 15か国の科学者らが「過剰な排出量は、パリ協定に定められた目的に準拠するために排出量を削減することの緊急性と両立しない」と主張しています。 日本の政策目標もパリ協定の目標を達成することですので、政策の最良の基盤として、科学に基づくライフサイクルCO2会計を使用することが極めて重要であることに注目しています。 

最後に強調したい点は、EUの規制(および他の規制)において、原料の性質、そして合法、違法、または「持続可能」かどうかに関する規則が策定されたことです。しかしながら、これは気候の観点からすれば、関係ないことです。 CO2の増加による大気への影響は、炭素がどこから来たとしても同じであるため、そのような基準は、排出量の適切な計算の代わりにはなりません。 国家がバイオマスにより気候変動の緩和に真に貢献することを望むなら、完全なライフサイクル会計を義務付けるとともに、補助金は回収期間が短い案件に限定しなければなりません。これを適用した場合、本論文は、気候に適した森林バイオマスは、地元で供給される既存の森林経営からの残さに限定されるであろうことを強く示しています。

上記の論点でEUの議論を説明しましたが、各国のバイオマス・エネルギー政策も審査中です。 英国は、持続可能性基準においてサプライチェーンからの許容排出量を大幅に削減しました(参照:「再生可能エネルギー義務:持続可能性基準」https://www.ofgem.gov.uk/system/files/docs/2018/04/ro_sustainability_criteria.pdf)。  オランダ社会経済評議会は、バイオマスの燃焼は持続可能ではなく、最小限に抑えるべきと結論付けました(https://www.euractiv.com/section/energy/news/the-dutch-have-decided-burning-biomass-is-not-sustainable/)。スロベニアでは、バイオマス・エネルギーの使用は森林残さに厳しく限定されており、デンマークとスウェーデンでも活発な議論が行われています。

上記のヨーロッパにおける重要な問題の要約がお役に立てば幸いです。さらに情報が必要でしたら、いつでもご提供いたします。

敬具

参考文献

関連情報)
バイオマス発電をめぐる要請書提出ー環境負荷が大きい事業はFIT対象外に
https://www.foejapan.org/forest/biofuel/200714.html