原発を退けた人々の力 :韓国江原道・三陟(サムチョク)~「普通の女性たち」が立ち上がったわけとは

IMG_0908三陟(サムチョク)市は韓国江原道南部に位置する。人口は約7万人。美しい海水浴場と石灰岩の洞窟が有名な観光地でもある。

サムチョク市では、前市長が強引にすすめようとした原発誘致に、市民が粘り強い反対運動を展開した。ついには反原発で住民投票を公約にかかげた新しい市長を当選させるに至ったが、この市長が住民投票をやろうとしたが中央の意を受けた選挙管理委員会にはばまれた。それならばと市民が主導して住民投票を実施し、ついには誘致反対を勝ち取った。11月24日、サムチョク市を訪問。この驚異の運動を成功させたコアメンバーの人たちに話をきくことができた。(写真:サムチョク核発電所反対闘争委員会およびサムチョク女子高同窓会のメンバーからの聴き取り風景)

サムチョク市は30年間で核に関するたたかいが3回あったという。
1992年から99年にかけての原発誘致に対する反対運動、2003年から2005年にかけての核廃棄物処分場への反対運動、そして2010年からはじまった再度の原発誘致への反対運動。
「私たちは最初の2回のたたかいに勝利しました」とサムチョク核発電所反対闘争委員会のメンバーで市議でもあるイ・グァンウさんは胸をはる。「そして3回目についても、苦しい局面を乗り越えながらほとんど勝利しました。来月発表される第8次電力基本計画では、サムチョクは原発候補地からはずれるでしょう。それが最終的な勝利です」。

以下3度目の原発誘致への反対運動の概要を、イ・グァンウさんからの聴き取りおよび各種資料をもとにまとめる。

強引に原発誘致を進めた前市長

サムチョク市では、李明博(イ・ミョンバク)政権によるバックアップのもと、2010年からキム・デス前市長が強引に原発誘致を進めようとした。市議会とは「住民投票にかける」という約束をしたが、これは無視。

誘致賛成派は「空がみえないほど」のプラカードを設置し、誘致賛成の署名を集め、2011年3月9日に発表。なんと市の96.6%もの人たちが誘致に賛成しているとしたが、これは信ぴょう性に乏しいものであったという。そしてその2日後に福島第一原発事故が起こった。

サムチョク市の市民やカトリック関係者、教職員組合などが中心となり、「サムチョク核発電所反対闘争委員会」が結成された。キャンドル集会など、さまざまなアクションを展開。一貫して建設に反対。市長に対して、原発の是非を問う住民投票を要求し続けた。原発建設予定地となったサムチョク市クンドク面の住民たちも立ち上がり、「クンドク核発電反対闘争委員会」を組織。2012年1月には、地元の名門校のサムチョク女子高の同窓会も、原発建設反対を決議。運動に合流した。

市長リコール運動に失敗。が、2年後の市長選で圧勝

彼らは一度は韓水原による住民説明会の阻止に成功。さらに市長が住民投票要求を無視し続けると、2012年6月から市長のリコール運動に取り組むこととした。1,500人ものボランティアが参加し、リコールの住民投票に必要な署名は1か月という短期間で集めることができた。この勢いに乗って、勝つと思いきや、10月31日の投票日当日、自治体の末端職員やチンピラたちが投票所の前で投票にきた市民を威嚇。所定の投票率である34%を達成することができず、開票に至らなかった。こうして市長のリコールは失敗した。

しかし、これにもめげずに、彼らは2年後の市長選挙にかけた。水曜日にはミサ、キャンドル集会を継続。一人デモやスタンディング、人々に伝える運動に取り組んだ。そして2014年、「原発の賛否を問う住民投票の実施」を公約をかかげたキム・ヤンホ市長が圧勝。

原発は国家が決めるものなのか?

キム市長は公約通り、議会に住民投票を提案。8月末に住民投票議案が通過した。ところが、中央の意をうけた選挙管理委員会が「原発は国家事務だから、住民投票の対象ではない」と拒否。

ならば、住民がやるしかないと、住民投票管理委員会が組織された。2014年10月9日、有権者の68%が投票し、うち85%もの人たちが原発誘致に反対の意思表示を行った。

一方、市長は、住民投票を行おうとしたことが職権濫用にあたるとして起訴された。しかし、のちに無罪とされる。「投票による意見集約は住民意思の確認手段」とされたのだ。

普通の女性たちが立ち上がったわけ
「地域の未来の問題だと思っていましたが、国家とのたたかいでもありました」

この驚異的な運動の中で、何度も何度もつらい局面があった。リーダーたちの中にはいやがらせや脅迫によって、病気になってしまった人もいたという。

「涙がでるほどうれしかっこと」の一つが、地元の名門校のサムチョク女子高同窓会が、「原発反対に力を注ぎます」と決定し、いままで運動に縁のなかったきわめて普通の女性たちが運動に合流した。のちに「核アングリー・マム」と呼ばれ、脱原発派のキム・ヤンホ市長の誕生にも大きな力となる。

当時、この決定を行ったのが同窓会の第10期会長キム・スクチャさん。

「高校の同窓会で、よく原発反対という政治的な問題に踏み込めましたね」ときいてみた。

「私は、これを政治的な問題とは思わなかったんです。私たち自身の問題、地域の問題だと。じっとしていたら原発が入ってきてしまう。となりのウルチンでは原発が導入されても、地域はさびれるし、農産物も売れなくなった。地域の豊かな富がなくなってしまった。おまけに放射能の問題もある。地域のため、子どもたちのために、反対を決めました」とスクチャさん。

「ところが、反対運動をやってから知りました。これは国家との闘いなのだと」。

「“笑いながらやっていこう。しぶといやつが最後に勝つんだ”。つらくなるたびに、私たちはこのように励ましあいました」と、サムチョク核発電所反対闘争委員会の共同代表のキム・オクリンさん。「そしてこの言葉は本当のことでした」

「核アングリー・マム」たちは、笑顔が素敵な、世話好きのおばさまがただった。

(満田夏花)

👉 報告会「脱原発する国、原発にしがみつく国~韓国、イギリス現地調査報告会(1/9)」

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▲サムチョク女性髙の同窓会のみなさまとともに

「原発反対決起大会24周年」と書かれたバナー

▲原発予定地となっていたサムチョク市のクンドク面河川敷にかかげられた原発反対のバナー

サムチョク市クンドク面「原発白紙記念碑」の前で

▲原発白紙記念碑の前で、クンドク原発反対闘争委員会のジュ・ヘスクさんとともに。記念碑自体は、第一回目の原発誘致を退けたときのもの。ジュ・ヘスクさんは、クンドクの美しい自然を愛し、一貫して原発に反対してきた。

 

 

 

 

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韓国ムン・ジェイン大統領のもとでの脱原発の道のり~新古里5・6号機の公論化プロセスで問われたものは?~

IMG_0857韓国環境運動連合(KFEM、FoE韓国)の事務所を訪問。ムン・ジェイン大統領のもとでの脱原発政策、特に新古里5・6号機の公論化プロセスについてお話しをうかがった。KFEMは公害被害者救済運動からはじまった韓国を代表する環境団体であり、各地に52か所の地域事務所をもつ。お話ししてくれたのは、メディアに脱原発の論客としてよく登場するというヤンイ・ウォニョンさん(エネルギー部門長)とアン・ジェフンさん(脱原発チーム長)。国際担当のキム・ヘリンさんも同席し、脱原発や反戦をテーマに活動されているキン・ポンニョさんが通訳をしてくださった。(写真上:KFEMの事務所の入っている建物の外観。)

ムン・ジェイン大統領の脱原発公約の内容

韓国には稼働中の原発が24基、建設中のものが4基、計画中のものが6基あり、全発電量の30%を原発が占める。こんな原発大国韓国において、ムン・ジェイン大統領は選挙公約として、脱原発を進めるため、①建設中の原発の建設中断、②計画中の原発の白紙撤回、③設計寿命の延長はしない、④脱原発ロードマップを作成する--などの公約を掲げた。これに従えば、現在建設中の新古里5・6号機は建設中断となるはずであった。

国民の圧倒的な支持で当選したムン・ジェイン大統領は、2017年6月19日、寿命を迎えた古里1号機の停止式典で、脱原発宣言を行ったが、建設中の新古里5・6号機については、「公論化プロセスにより、結論を出す」と公約よりも後退したものであった。

建設30%の新古里5・6号機が公論化プロセスへ

新古里5・6号機は、すでに建設が30%進んでおり、建設を中止するにはもっとも議論をよぶものであった。事実、地元の住民も、建設作業で雇用されていたり、補償金が支払われたりしており、今から中止することに関して抵抗が強かった。地元の造船所も不況であったため、建設中断は、雇用の問題と絡め認識されてしまったという。

IMG_0862「ムン・ジェイン大統領が、住民への補償問題を先に解決してから、公論化プロセスに進んでいたら、話は違っていたかもしれません」とアン・ジェフンさん。

公論化プロセスが発表されたとき、脱原発運動をしている人たちの中でも意見が分かれた。「建設中の原発の建設中断という約束を守るべき」という意見もあったが、「市民たちが参加するプロセスを否定することは難しい」とほとんどの団体は公論化プロセスを尊重するという態度をとった。高い支持率をほこるムン・ジェイン大統領に反対することは分裂を生む、という考えもあった。

建設再開が過半数、しかし原発縮小も過半数

公論化プロセスは、今年7月から3カ月行われた。日本でも2012月夏にエネルギーをめぐる「国民的議論」で行われた討論型世論調査と類似の形式をとった。公論化委員会が形成され、建設の賛否の双方の意見を資料集に記述。2万人の一次世論調査が行われ、回答者の中から、地域・性別・年齢などを考慮されて471人の市民参加団が選出された。(しかし、あとからの発表では、建設賛成派の方が多かったという。)この人たちが、事前学習を行い、総合討論会に参加し、最終アンケート調査に回答した。

結果は、建設中止が40.5%、建設再開が59.5%。(女性では建設中止が52.7%、再開が47.3%、男性では中止が33.7%、再開が66.3%)。

一方、原発を縮小すべきという意見は53.2%を占め、拡大すべき9.7%、維持すべき35.5%を大きく上回った。

建設が再開されることにより、古里5・6号機が運転を開始し廃炉になるまで、最長で2080年代までかかることになるという。

合意された「原発をやめていく」というという方向性

「あまりに長すぎます」とアン・ジェフンさん。

「これで脱原発と言えるのか…。公論化プロセスでは、原発の安全性や事故が起こった時の住民被害よりも、仕事がなくなる、とか、電力需給の問題に焦点があたってしまいました。住民にとっては直接的な雇用の問題と原発建設の問題を切り離すことができなかったのは残念です」

「原発に利害をもつ勢力の力がつよく、マスコミへの影響も強かったのが現実でした」とKFEMのエネルギー部門長のヤンイ・ウォニョンさん。

「原発をやめていくという方向性については多くの人たちが合意したものの、急激な変化については不安があったのでしょう。エネルギー供給を現在数パーセントにすぎない再生可能エネルギーで代替していくことも“現実的でない”と思われてしまった感があります。」

30km圏内に380万人~安全性は論点にならなかったのか?

実は、韓国の原発は人口密集地の近くに立地する。原発30km内の人口は世界1位。なかでも古里原発は30km圏内の人口が380万人にのぼる。釜山、ウルサン、キョンジュなど原発が集中する東南地域には、およそ60の活断層があるという指摘もある。こうした危険性は、公論化プロセスに影響を与えなかったのだろうか?

「もちろん、大きな論点でした。しかし、北朝鮮の核ミサイルや戦争の脅威に比べると、小さく感じられてしまったのかもしれません。原発事故が現実に起こるという実感が薄いのかもしれません」とヤンイ・ウォニョンさん。

「地震が起こるたびに、世論はダイナミックに変化します。キョンジュでの地震のあとには、原発反対が70~80%にまで跳ね上がりました。今は建設再開が強い状況です。

私たちとしては、これからは、原発の危険性に関する問題を提起するだけでなく、原発をやめても十分に電力はまかなえること、そうした代替案への希望を提起していくことが必要とされています」

一方で、ムン・ジェイン大統領は、「原発輸出については継続する」とも発言している。韓国の原発企業は、UAEでの原発事業の受注に加え、英国やサウジアラビアなどへの原発輸出を模索している。「当然反対です。国内での脱原発を目指すのに、原発輸出を継続するのは矛盾しています」とヤンイ・ウォニョンさん。東芝の失敗は、原発ビジネスのリスクを認識させなかったのか?という筆者の問いに対して、アン・ジェフンさんは、「むしろ、東芝が競争力を失ったことで、自分たちが競争力をもつ、と言っている」と苦笑した。

脱原発をいかに進めるか、廃炉をいかに早めるか、再生可能エネルギーをどのように促進していくか、日本の原子力規制委員会にあたる原子力安全委員会をどのように機能させるか、原発輸出に関する議論をどう進めるのか…。悩みはつきないが、それでも脱原発に舵をきったムン・ジェイン大統領の政策を、しっかりと支え、公約を守らせ、後戻りさせないという決意が感じられるお話しだった。

(満田夏花)

(談話) ※近日中に字幕つきでビデオ・アップします。

  • ヤンイ・ウォニョンさん(KFEMエネルギー部門長)

IMG_0890新古里原発5・6号機の公論化の議論を通じて、原発を減らすべきだというのが大多数の総意であることは確認できた。

しかし、建設中である原発を続けようというのは、現実的な電力供給に関して懸念があったせいだと思う。私たちは原発の危険性に関して提起を行うのみならず、原発を減らしても十分に電力の需給バランスをとることが可能だという希望と対案を積極的に提起していくことが大事だと考えている。

  • アン・ジェフンさん(KFEM 脱原発チーム長)

Image-1ムンジェイン政府が脱原発政策を推進してエネルギー転換のきっかけをつくったことは画期的だ。

しかし、脱原発が実現するのは(このままでは)あまりにも遠い先であるので、心配であることも事実だ。

脱原発へ向かうスピードを速めて、24基の原発をどれほど早く閉鎖できるかが、われわれに問われている。たとえば、再生可能エネルギーを増やしたり、エネルギー効率を高めたり、省エネを実現したりして、脱原発を早期に実現できることを示していく必要がある。

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山形県雇用促進住宅の8人の自主避難者が訴えられる!

山形県の雇用促進住宅の運営法人である高齢・障害・求職者雇用支援機構が、住宅の無償提供が終了した4月以降も住み続けている8人の区域外避難者(自主避難者)に対して、退去と家賃の支払いを求める訴えを起こしました(注1)。

「家賃を払わないのなら、退去するのが当たり前」--。そう思う人もいるかもしれません。しかし、ちょっと待ってください。8人の方々が、なぜ退去を拒まれているのか、その背景を知っていただきたいのです。

この背景には、原発事故による自主避難者が正当に扱われてこなかったこと、「子ども・被災者支援法」が制定されたのにもかかわらず、十分実施されてこなかったこと、結果として避難者の声が政策に反映されることなく、一方的に住宅提供が打ち切られ、避難者の窮乏を招いたことなどがあるのです。☞ 表 原発事故による区域外避難者をめぐる経緯

国と福島県は、今年3月に災害救助法に基づく住宅提供を終了。12,239世帯への住宅提供を打ち切りました(福島県資料による)。
代替として、福島県による家賃補助がはじまり、自治体によっては公営住宅への専用枠などを設定したところもありましたが、十分なものではなかった上に、対象が限定的で、多くの人たちがこうした支援からすらこぼれ落ちてしまいました。

多くの避難者は避難継続を選択し、多くの人たちが引っ越しを迫られました。
中には生活が立ちいかず、家賃負担が重くのしかかり、困窮してしまった避難者もいます。FoE Japanが事務局を務める「避難の協同センター」のもとには、いまもたくさんの方々から、多くの痛切なSOSがよせられています。

「原発事故子ども・被災者支援法」は2012年に制定されました。避難した人もとどまった人も帰還する人も、自らの意思で選択できるように、国が住宅の確保や生活再建も含めて、支援を行うように定めた法律です。被災者の意見を政策に取り入れることも定めています。

国と福島県が、この法律を適切に運用し、避難者や支援者の声に耳を傾け、避難者の生活再建のための具体的な施策を打ち出し、住宅提供を延長していれば、現在のような事態を回避できたはずです。

しかし、残念ながら、国は、帰還促進、復興の名のもとに、次々と避難指示を解除し、避難者への支援を打ち切りました。

福島県の発表によれば、県内外の避難者数は54,579人(今年9月時点)。しかし、引っ越しを機に自治体が把握をしなくなるケースも多く、この数に含まれていない人たちもたくさんいるとみられ、避難者の数すら把握できていない状況です。ましてや、避難者がおかれている状況については、定量的な把握ができていませんが、母子避難や高齢者の一人暮らし、生活困窮者などが少なからずいる模様です。

たとえば10月11日に公表された東京都のアンケート調査では、月収10万円未満の人が回答者の2割を占める、誰にも相談できない人が15%以上いるなど、深刻な状況をうかがわせます。

今年4月4日、「避難は自己責任」という趣旨の発言で問題となった、今村復興大臣(当時)は、4月14日の東日本大震災復興特別委員会において、山本太郎議員の質問に答え、「意に反する追い出しはさせない」と答弁しています。しかし、そうであるのであれば、国として避難者の現状把握と、追い出しを防ぐための具体的な措置を講ずるべきだったのではないでしょうか?

8人(世帯)の方々は、原発事故さえなければ、ふるさとを後にすることはありませんでした。ある方は「数万円の家賃負担が発生すれば、母子避難者の生活は成り立たない。経済的窮状は深刻だ」としています(注2)。この方々は、引っ越しをせざるをえなかった人々の分も含めて、理不尽な政策への抗議と自分たちの権利を主張し、避難者の置かれている深刻な現状を訴えるために退去をしなかったのではないでしょうか。なお、この8世帯には母子避難をしている方々も含まれています。(注3)。

私たちは、避難者のみなさまとともに、何度も、国や福島県に対して、「子ども・被災者支援法」に基づく抜本的な住宅保障や生活再建策を講じること、それまでは避難者に対する住宅提供を打ち切らないように求めてきました。また、住宅提供が打ち切られた後も、避難者の現状把握と対策を求めてきました。しかし、残念ながら、これらは実現されるには至りませんでした。

国は、原発事故子ども・被災者支援法に基づき、原発事故避難者の「住まい」「暮らし」を保障すること、またそのための現状把握と抜本的な法制度の整備を急ぐべきです。(満田夏花)

注1)自主避難8人の退去求める=住宅の運営法人が提訴-山形(時事通信 2017年10月25日)

注2)避難者住宅、退去拒否 山形の8世帯(毎日新聞)2017年6月3日

注3)同上

原発事故避難者の強制立ち退きに反対する署名サイトが立ち上がりました!

強制立ち退き反対バナー2


<原発事故による区域外避難者をめぐる経緯>
住宅打ち切り_主な出来事

▼原発事故避難者への住宅提供の延長を求める避難当事者と支援者たち(2015年6月)

150610


福島県からの避難者に対するアンケート調査の結果について(東京都)

以下、概要版より。

東京都アンケート1

東京都アンケート2

東京都アンケート3

北杜市・ソーラー乱開発で、こわされる自然と暮らし ~「これでも、環境にやさしい?」憤る住民

北杜市ソーラー(増冨)山梨県北杜市で太陽光発電事業の乱開発が問題になっている。中には、山林を伐採した急斜面にソーラーパネルを設置するケースや、水源地の元牧草地を開発するケース、住民の何の説明もなく、周りの森林が切られてパネルが設置するようなケースもある。
「豊かな自然を子孫に残したいと思っています。それなのに山を崩し、水を汚して、ソーラーパネルだらけにして、“環境にやさしい”なんて言えますか」と住民たちは憤る。

FoE Japanは、2017年9月13日、北杜市のいくつかの太陽光発電事業の事業地を訪問し、住民のみなさんと意見交換を行った。以下にその概要をまとめた。

山腹が一面ソーラーに?

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写真左:県下最大のソーラー事業が計画されている大平牧場跡地(写真提供/ころぼっくる会議)

県下最大の太陽光発電事業が計画されているのが増冨地区の大平牧場は、山梨県の百名山の横尾山の山腹に位置する。広い地域の水がめとなっているみずがき湖(塩川ダム)の集水域でもある。1969年に開墾され、牛や馬の牧草地として使われていた。周辺は保安林にもなっていて、山菜とりでも親しまれてきた。この牧草跡地で計画されている事業は、29ヘクタール、太陽光パネル6万枚、14.7MWという大規模なものだ。景観・生態系、水源・水質への影響などが懸念されている。

また、増冨地区の別の事業では、道に面した山腹の裸地にソーラーパネルを設置している。周辺には山林も隣接するが、そこも伐採してソーラーパネルを設置する計画となっている。

「太陽光発電事業とは知らずに売った」と元地権者。地元の不動産業者から土地の売却を持ち掛けられたという。山を持っていても高齢化で山林の管理ができずに持て余し、不動産業者からの話にとびつく人もいる。

「道をはさんで下には別荘もある。山林の伐採による土砂崩れが心配。地区全体の問題として話あう必要がある」と住民は語る。

「眺望権」「平穏生活権」求め、提訴

写真下:人家に迫る太陽光パネルと反対の看板 (写真提供:ころぼっくる会議)

コロボックル_ソーラーに反対看板小淵沢町に住むWさんは、南アルプスと八ヶ岳の素晴らしい眺望と緑豊かな土地が気に入り、10年前に移住した。しかし、一昨年、隣地での太陽光発電の事業が持ち上がった。庭の境界のぎりぎりまで高さ2.8mにも達するソーラーパネルが並べられ、楽しみにしていた眺望も遮られた上、通風や日照の阻害、パネルによる熱輻射などの被害を受けているという。Wさんは、眺望権と財産権、平穏生活権が侵害されたとして、昨年1月、事業者を訴えた。

乱開発規制できるか?「条例案」は審議未了

北杜市ソーラー(道端) 山梨県北杜市は八ヶ岳と南アルプス、瑞牆山や金峰山などの秩父山地に囲まれた風光明媚な土地。76%が森林だ。豊かな自然にあこがれた移住者も多い。国内有数の日照時間の長さもあり、太陽光発電事業が乱立するようになった。

現在稼働中の太陽光事業が1,468件、認定済みで今後稼働が予定されている事業が3,529件ある。ソーラーの乱開発に憤る市民たちが議員を動かし、今年6月、議員有志が「太陽光発電設備に関する条例案」を発議。しかし、審議未了になった。市も放置できず、事業者、市民も参加した検討会を立ち上げようとしている。

「これは原発と同じ」

「このままでは、豊かな自然が破壊され、北杜市はソーラーパネルの海になってしまう」

北杜市ソーラー(意見交換)と懸念する住民は多い。

「都市の電気を賄うために、立場が弱い地方でソーラー事業をやる。これは原発と同じ」と指摘する声もある。

「森を切っていたり、整地していたりするのを見るたびに、ああ、またソーラーかと胸が痛くなる。北杜市では市に届けられた事業で、すでに100万枚以上のパネルがあるとの試算がある。事業が終わったらあとのパネルの処理はどうするのかも解決していない。これでは環境にやさしい、とはとても言えない」と地元住民団体「北杜市の自然を未来(あした)につなぐ~ころぼっくる会議」のメンバーは憤る。「太陽光は決して原発の代替にはならない」。

3・11後、FoE Japanは、他の環境団体とともに、脱原発およびエネルギーの需要削減や再生可能エネルギーへのシフトを提唱してきた。しかし、「再生可能エネルギー」であっても、このような自然や住民の暮らしを破壊するような事業は容認できないだろう。

現在のところ、安易な答えは存在しない。乱開発の規制とともに、現に被害を受けている人たちの声に耳を傾け、状況を知り、住民や事業者も交えた場で議論を行うことが必要とされている。

(満田夏花)

※本視察には、「北杜市の自然を未来(あした)につなぐ~ころぼっくる会議」のみなさんにお世話になりました。厚く御礼申し上げます。

NEXIが日立・英国原発を全額補償!?~貸し倒れリスクを国が肩代わり

9月2日付の日経新聞(注1)で、日立製作所が英国英中部ウィルファに建設を予定している原子力発電所(注2)の建設資金への融資を、国が日本貿易保険(NEXI)を通じて全額補償する方針である旨が報じられました。
地図_イギリスにおける既存および計画中の原発
これにより三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行の融資の貸し倒れリスクを、全て国が引き受けることになります。

また、日本政策投資銀行や国際協力銀行(JBIC)が投融資を行う見込みと報じられています。NEXIも、日本政策銀行も、JBICも、政府100%出資の政府系金融機関。
これが事実だとすると大問題です。

1.判断をゆがめる

記事では、「三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行も貸し倒れリスクが大きいと判断しNEXIの全額補償を条件にしていた」とされています。

福島第一原発事故の膨れ上がる事故処理費用や被害者への賠償は、東電が払いきれず公的資金を注入している状況で、さらに託送料金を通じて、将来世代も原発事故被害者も、原発からの電気を使わないことにした消費者も含めて、広く徴収される仕組みがつくられようとしています。東芝も原発ビジネスにのめりこんだがゆえに解体し、優良分野であった半導体を切り売りせざるをえない状況に追い込まれました。

原子力事業が経済的にきわめてリスクが高いことはもはや誰の目からも明らかです。
「貸し倒れリスクが大きい」というメガバンクの判断はもっともなのです。
であるのであれば、貸さないという判断となるはずでしょう。

しかし、ここで国の機関であるNEXIが全額補償することにより、たとえ事故や建設費用の高騰や、反対運動などで事業が破たんしても、三菱東京UFJやみずほはそのリスクを負わず、全額公的資金によってカバーされるということになります。通常であれば融資判断がなされず、淘汰されていくはずのリスクの高い事業を、公的支援によって無理やり支える、いわば公的介入によって金融市場の判断をゆがめるものと言ってよいでしょう。

2.公的資金を使う正当性なし

実際には、日本企業が関与する海外インフラ事業などについては、現在までも「日本の国益」にかなうという理由で、JBIC/NEXIによる公的資金を使った投融資や保険の付与、保証が行われてきました。これらの中には、環境破壊や人権侵害を伴うものもあり、私たちは個別具体的に警鐘を鳴らしてきました。

しかし、今回の日立の英国原発への「全額補償」が事実とすれば、いままでにも増して、桁外れの問題を含んでいます。

イギリスにおける原発建設は、本当に「日本の国益」にかなうのでしょうか?

イギリスに原発を建設することに、あるいは事業が破たんしたときのカバーに、日本の公的資金が使われることに関して、国民は納得しているのでしょうか?

日立製作所など限られた企業を、公的資金で支える正当性はあるのでしょう?

いずれも答えは「ノー」でしょう。

3.JBIC/NEXIの審査を蔑ろに

JBIC/NEXIは、その融資・付保に関して、公的金融機関として独自の審査を行います。審査の内容は、財務リスクを含めた事業全体のリスク、環境・社会配慮なども含みます。

さらに、現在、JBIC,NEXIは、原発輸出関連事業に対する支援を行う際の「情報公開指針」を策定中です。私たちNGOは、両機関に対して、そもそも、原発事業を支援すべきではないこと、指針をつくるのであれば、情報公開のみならず実質的に事業の安全性を確認する内容を明記すべきであること、情報公開は原発事業に関して具体的で詳細な情報を含めることなど、さまざまな提言を行ってきているところです(注3)。

国が先走って、JBIC、NEXIなどによる支援を約束することは、こうした機関が行う審査を蔑ろにすることになります。


注1)政府、原発融資を全額補償~まず英の2基 貿易保険で邦銀に(2017/9/2付日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGKKASFS01H5T_R00C17A9MM8000/


注2)イギリス・ウェールズの沿岸地域のウィルファに日立の子会社であるホライズンニュークリアパワーが建設する。プロジェクト総額は2兆7千億円。
本事業の概要は、FoE Japan作成の「ファクトシート:イギリス・ウィルファにおける新規原発計画について」を参照のこと。
http://www.foejapan.org/energy/export/pdf/161222.pdf


注3)【プレスリリース】JBIC/NEXIの「原発指針」に対してNGO4団体が共同提言を提出
http://www.foejapan.org/energy/news/160128.html

原発輸出案件への公的信用付与の際の情報開示についてJBIC/NEXIに要請 ~少なくとも日本なみの情報開示を
http://www.foejapan.org/energy/export/170816.html

【パブコメ書こう】電気事業法施行規則令案の改正で、「原発事故費用・廃炉費用を託送料金に」が実現!?― 東京電力が責任を取らないまま、国民負担でい いの??

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今回の電気事業法施行規則の改正案は、東京電力福島第一発電所事故の賠償費用の一部および玄海原発1号機、美浜原発1・2号機、敦賀原発1号機、島根原発1号機など、原子力事業者がかかえる老朽原発の廃炉費用を、託送料金を通じて、徴収することができるようにしようというものです。福島第一原発事故の責任をあいまいにし、原発事業者を不当に保護するものです。

パブコメのポイントはこちら   これまでの経緯はこちら
8月18日に学習会を開催! わかりやすく解説してもらいます。13:00から参議院議員会館にて 詳しくはこちら

パブコメ提出方法 (締め切り:2017年8月26日夜12時まで!)1)オンラインフォーム(e-Gov)>http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620117032&Mode=0

意見提出用紙に氏名、連絡先及び本件への御意見を御記入の上、メール、郵送、ファックスで提出することもできます。郵送の場合は、8/26当日必着となりますのでご注意ください。

2)メールアドレス:denryokusangyo-pub@meti.go.jp

3)郵送:〒100-8931 東京都千代田区霞が関1-3-1
経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部電力産業・市場室 パブリックコメント(「電気事業法施行規則」等の一部改正)担当 宛

4)ファックス::03-3580-8485


★パブコメのポイント

1.東京電力の経営陣、株主、債権者の責任が問われていない

東電救済のために、すでに「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」が設立され、交付金などの形で多くの公的資金が東京電力に流し込まれています。今回の制度改革で、さらに託送料金を通じて、賠償費用を 広く電力利用者に担わせることが可能になります。

福島第一原発事故の賠償・事故処理は、東京電力が一義的に責任を負うべきであり、その結果、債務超過に陥るのであれば、破たん処理を行うのが順当です。いままで株主・債権者が利益のみを享受し、経済的な責任から免れるのは、資本主義のルールに反するばかりか、事故を引き起こした東電の責任を国民が広く肩代わりすることは、「汚染者負担の法則」にも反します。東電の法的処理の上で、はじめて不足分を税金等から補てんするべきでしょう。

2.経済産業省令だけで決めるのではなく、国会で議論すべき問題です。

今回の省令の改正は、すべての国民から電気料金の形で、賠償と廃炉費用を徴収できるようにするものです。省令で決められる問題ではありません。国会でしっかりと議論すべき問題です。

3.「事故に備えて積み立てておくべきだった過去分」という考え方は非合理であり、常識的には考えられません。

今回、原発事故の賠償費用として、「過去にさかのぼって積み立てておくべきだった」という、商取引上、通常考えられない論理により、「過去分負担金(3.8兆円)」の回収が提案されました。しかし、事故のリスクを過小評価し、積み立てておかなかったのは東電であり、それを許したのは経済産業省です。一般の電力消費者が、経営判断・政策判断の誤りのツケを負わされるのは非合理です。

5.廃炉費用をも託送料金を通じて徴収できるようにすることは、原子力事業者を不当に優遇するものです。

廃炉費用は、原子力事業者が当然に負うべきコストであり、託送料金を通じてすべての電力利用者が広く負担するしくみを作ることは、原子力を不当に保護することになります。電力自由化の趣旨に反しています。発電事業者が費用を負担しきれないような発電方法は、当然排除されるべきです。

6.「原子力はコストが低廉」は撤回すべき

今回の議論は、原発の事故処理・廃炉費用が莫大であることを、国も認めざるを得ないくなった事態であると言うことができます。「原子力はコストが低廉」とし、原発を保護し温存していく政策の撤回・変更なくして制度改革のみを議論することは許されません。

7.今後の原発事故についても、同様に国民負担にすることができてしまいます

今回の制度変更を「前例」として、今後事故が起こった際にも同様に託送料金での回収が可能となってしまいます。



★これまでの経緯

2016年の9月から年末にかけて、原発事故の賠償費用の一部、廃炉費用の一部を「託送料金で負担」という議論があり、大きな論戦となりました。
年末のパブリックコメントに取り組んだかたも多いかと思います。
FoE Japanも、パワーシフト・キャンペーンやeシフトと連携し、新電力の声を伝える署名提出パブリックコメントの呼びかけなど活動しました。

その後、2月9日に開催された「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」でこのパブコメを受けて「中間とりまとめ」が出されました。(託送料金への上乗せに反対する意見はまったく反映されていません。)

▼「電力システム改革貫徹のための政策小委員会 中間とりまとめ」
http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/20170209002.html

これをもとに、具体的な経済産業省令案となったのが、今回のパブコメ対象です。

▼「電気事業法施行規則」等の一部改正に対する意見の募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620117032&Mode=0

資料は、省令案のため67ページ、読みにくいものですが、ポイントは以前と変わりません。

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締め切りは8月26日(土)!ぜひ一言でも出してみましょう。

*「パブコメくん」ウェブページ。(今回も内容は同様なのでご覧ください。)
https://publiccomment.wordpress.com/2016/12/20/baisyohairo/

*FFTV218 許すな東電救済~託送料金で全ユーザーに負担/ゲスト:堀江鉄雄さん 20170803
https://www.youtube.com/watch?v=0w1F0ESxNx0

* 議論の経緯(2017年5月時点)についてはこちら
https://foejapan.wordpress.com/2017/05/15/hairobaisyo/

FoE韓国(KFEM)声明:韓国の脱原発社会への第一歩を歓迎する

韓国環境運動連盟(KFEM、FoE韓国)は、文大統領の脱原発方針をうけ、以下の声明を発表しました。(翻訳 FoE Japan)

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韓国の脱原発社会への第一歩を歓迎する

KFEM(Korea Federation for Environmental Movements)

KFEM_2

写真提供:KFEM

・文大統領の脱原発方針を具体化する迅速な施策実行が伴われることを期待する
・円満な社会的合意形成に向け、コリ原発5号機、6号機の新規建設は直ちに中止すべき
・犠牲を強いられてきた原発周辺地域の住民に配慮する対策づくりを行なうべき

6月19日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、韓国国内初の原発である古里(コリ)原発1号機の永久運転停止の記念式典で演説し、原子力中心の発電政策を廃止し、脱原子力社会への転換を図るとの考え方を示した。それに必要な対策として、
(1)進行中の新規原子力発電所建設計画の全面的な白紙化
(2)原発の稼働年数の延長禁止及び月城(ウォルソン)原発1号機の廃止
(3)古里原発の5号機と6号機新設に関し、安全性・工程率・投入コスト・補償コスト・電力設備の供給予備率などを考慮した社会的合意形成
(4)原子力安全委員会の大統領直属委員会への昇格及び同機関の多様性・代表性・独立性の強化
(5)脱原発ロードマップの迅速な策定
(6)再生可能エネルギー関連税制の整備
(7)エネルギー消費構造の効率化及び産業用電気料金の見直し
などを示した。

本日の文大統領の演説内容は、これまで40年間に渡り進められてきた原子力中心のエネルギー政策からの脱却を示し、脱原発エネルギー社会へ第一歩を踏み出した点で、心を躍らせるようなものである。安全かつ持続可能なエネルギー社会を念願してきた民意を大統領がしっかりと受け止めたことを心から支持し、歓迎の意を表したい。

ただ、文大統領が選挙期間の間公約として掲げていた古里原発5号機と6号機の新規建設の中止に直接触れていない点は残念に思う。しかし、演説全体を通し、脱原発・エネルギーシフトの意志が強く流れていたことははっきりと読み取れた。社会的合意形成に向け、産業通商資源部と韓国水力・原子力発電会社は、古里原発5号機と6号機の新規建設を中止に向かわせるべきである。古里原発5号機・6号機を手始めに原発建設の新規案件も中止手続きを踏むことになれば、新たなエネルギー時代が切り開かれるだろう。

今日は、大韓民国が古里原発1号機の廃炉を機に脱原発社会へ第一歩を踏み出した記念すべき日である。文大統領の音頭取りで提示された脱原発・エネルギーシフト政策について、これから政府が具体的な施策を打ち出すことを期待したい。原発建設や稼働によりこれまで被害を被ってきた原発周辺地域の住民を支援する対策についても丁寧な気配りが必要になる。

KFEMは、これからも韓国が脱原発・エネルギー改革を達成するために、尽力する。

2017年 6月 19日
Korea Federation for Environmental Movements(KFEM/FoE韓国)
共同代表 권태선 박재묵 장재연
事務総長 염형철

参考リンク
http://kfem.or.kr/?p=167530

 

KFEM

写真提供:KFEM

台湾・エネルギーシフトの現場を訪ねて(その3)

台湾報告 その1 その2

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原発・石炭火力に反対する市民の声をお伝えしてきましたが、台湾はどのようにエネルギーシフトをしようとしているのでしょうか。

今回はエネルギーシフトのキーとなる、再生可能エネルギーの拡大とエネルギーシフトへの道筋についてまとめたいと思います。

台湾の再エネ

2016年10月、蔡英文政権は「2025年までに再生可能エネルギー発電量を20%とする目標」を閣議決定しました。

台湾が2025年までに脱原発する根拠となっている改正電業法(2017年)は、再エネ市場の開放(注:発電部門はすでに民間参入可能)と送配電網へのオープンアクセスを促進することが目的の一つに掲げられています。これには将来的には一般の電力自由化、地元レベルやコミュニティベースの発電会社の設立も可能することが含まれています。

現在、台湾で再エネが発電に占める割合は5パーセント(2015年)ですが、注目される太陽光と風力についてそれぞれ見ていきます。

★太陽光
太陽光に関しては2025年までに20GW(うち3GWがルーフトップ)に増やす計画ですが、直近の2カ年計画では、2018年までに1.52GW(プラスして)増やす計画になっています。

しかし、限られた領土と山勝ちな地形、そして台風が多いことなどから地滑りのリスクもあり、太陽光パネルの設置場所の確保が課題となっています。

そのため前政権下ではMillion Solar Rooftop プロジェクト(2012~)を通じ、補助金の導入や技術支援などで、屋根への太陽光パネル設置を促しました。

現政権は新しく10000ヘクタールの農地を太陽光発電用にすると発表しています(6GW分に相当)。

台湾は太陽電池の生産量が世界で2番目に多い国ですが、国内の太陽光設備はこれからで、ソーラーシェアリングの取り組みや、引き続き屋根のポテンシャルマッピングなども行われています。

★風力
実は台湾滞在中、タイミングよくEUと台湾の合同で開催された風力開発のシンポジウムに参加することができました。現在台湾政府は洋上発電開発に積極的に乗り出しています。

シンポジウムでは台湾の風力開発計画の進捗や、ヨーロッパの経験共有、大手グローバル銀行などが台湾で風力開発に投資する際のポイントなどについて解説。多くのグローバル企業が台湾でのビジネスチャンスを狙っていること、そして台湾政府も積極的に投資を呼び込もうとしている姿勢が見て取れました。

現状では、陸上風力は国営が294MW、民営が388MWで、全再エネ発電の14.4%を占めています。
洋上風力のポテンシャルが望まれている台湾海峡では、開発のためのゾーニングが行われ、2025年までに3GWを目標にしています。しかし様々な課題もあります。

そのうちの一つは、漁業者に対する補償です。洋上風力を建設することにより、操業に影響を受ける漁業者やコミュニティに対しての補償金については今も一部で話し合いが続いているそうです。

他にも台湾海峡には白イルカの生息地があり保護団体が風力開発に反対していることです。シンポジウムの最中にも、反対派の団体がイルカ保護を呼びかけ風力に反対するリーフレットを会場内で配布していました。

課題を乗り越え、エネルギーシフトの達成を

持続可能でないエネルギーに頼らない世界に向かっていくために、どのような変革をえがくのか?台湾で様々な方とお話をしましたが、その中の多くの方が言っていたのは「原発・石炭に頼らないという共通認識(consensus)があり、台湾はそれに向かう途中(in transition)だ」という言葉です。

国立台湾大学の林子倫教授は、政治学の教授ですが、温暖化対策の専門家として委員会にも参加されています。

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中央が林教授。台湾国立大学にて

台湾は国連に正式に加盟しておらず、日本とも国交はありません。そのため、国際的な気候変動の会議においてはオブザーバーとしての参加しか認められていませんが、政府は温室効果ガスの削減目標も定めており(数値目標は、2050年に2005年比50パーセント削減)、台湾でもすでに11の都市が、気候変動に対してコミットすることを宣言し、グローバルなネットワークに参加しています。

林教授は、現状の台湾のシナリオだと2020年までは排出量が増え続け、2025年には減少に転じるだろうと話します。またエネルギーシフトを達成するためには、まだまだ議論や技術が必要で、今後、台湾政府は市民も巻き込んで「エネルギー変革白書」を作成する予定とのことです。これは、新しい民主的で政治的な取り組みでもあり、林教授が中心となって進めています。2017年7月から議論が始められるとのことです。

また、脱原発に関しても2025年というゴールが定められましたが、詳細なプランができているわけではないので、政府の高いレベルで脱原発特別タスクフォースが立ち上げられるとのことでした。

林教授は政治や公共政策の専門家で、エネルギーの問題を市民の政治参加の問題としても捉え、いかに市民がエネルギー政策への意思決定に参加できるか研究と実践を行っているそうです。(上記の委員会や市民を巻き込んでの白書作りも林教授が大きな役割を果たしています)

林教授はエネルギーシフトの一つの課題として「public acceptance(市民による同意、理解)」の問題を挙げます。

林教授曰く、過去4050年、台湾の人々はほとんど政府を信用していませんでした。その国民感情は今も根強く残っていて、政策決定プロセスへの参加を促すためにも丁寧な信頼回復が必要で、そのためにどう対話の場をデザインしていくか、政府と共に取り組んでいるとのことでした。

前回のブログで登場した、リャオさんは、政府の政策が本当に市民の利益になっているのか、そして本当に必要な電力量がどれくらいなのか、その議論が必要だといいます。「政府の風力開発計画は、海外企業や大手企業しか参入できず、コミュニティに資するものになっていない。電力開発の補助金は企業には資するかもしれないが、もっと包括的で透明性の高い再エネのポテンシャルのマッピングが必要。」

また、Air Clean Taiwanのリーダーの楊さんは「(風力開発の影響を受ける)漁業者が補助金をもらっても持続可能でなく、もし風力発電をそこでやるなら、その地域の人がシェアホルダー(本来は株主という意味ですが、ここでは利益を共有する人々)になるような仕組みにするべきだ。今後はコミュニティ発電にも取り組みたい。」と話していました。

もちろん、エネルギーシフトを達成する道のりは短くはなく、課題も山積しています。しかし、脱原発を達成するという政治的な意思と、市民による継続した取り組み、若者もたくさん巻き込んでの活動、草の根の活動から政策決定プロセスに積極的に参加していく市民の存在、「どうやって脱原発・脱石炭への道筋をデザインしていくか」という問いに課題を理解しつつも前向きに取り組む台湾の市民社会の一面が見られた気がします。

他にもお話を伺った方や団体がたくさんありますが、詳しくはセミナーで報告したいと思います。→報告会:台湾エネルギー革命~脱原発方針をかちとった人々の力(7/6)

台湾・エネルギーシフトの現場をたずねて(その2)

台湾報告その1はこちら

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台湾中西部に位置する台中市。台中でもっとも大きな産業は農業だそうですが、工業地区も存在します。脱原発を決めた台湾ですが、台湾の発電量の15%程度を原発が占める一方、8割程度を化石燃料(石炭・天然ガス・石油など)で賄っています。大気汚染の問題も非常に深刻で、石炭火力発電所に反対する市民運動も起きています。

台湾エネルギー

IEAのデータを元に作成

石炭火力をめぐる市民運動を視察するため、雲林と台中の市民団体を訪ねました。

雲林で迎えてくれたのは、この地域で活動している現地の方です。
雲林では2015年に(低品質)石炭の使用を制限する決定がされたにもかかわらず2017年に環境当局がこの方向性に反する(石炭の燃焼可能量の引き上げ)決定を行いました。大気汚染の改善を求めている市民らは、これに抗議しており、雲林の庁舎の前での座り込み、情報発信、デモなどの活動を行っているそうです。

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雲林役所前での座り込み

抗議活動に参加している王さんは、自ら立ち上げているSitster Radioというインターネットラジオを活用し、工場による汚染や石炭火力の問題点について情報発信をしています。
王さんらによると、未だに地元の関心はまだ低く、戸別訪問をして問題を訴えたり、学校を訪問して健康問題などについて情報共有を行っているそうです。

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王さん。女性の権利の活動家でもある

具体的に彼らが問題視しているのは、フォルモサペトロケミカルの工場と隣接する麥寮(Mai Liao)発電所です。工場から発生する排気により、周辺のPMの値が高く、近隣の幼稚園は2度の移転を余儀なくされました。

 

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フォルモサの工場

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新しい小学校。しかしこちらもすでに閉鎖された。工場地帯から車で2、3分のところにある

脱原発・脱石炭運動に関わるLiao(リャオ)さんは、廃棄物の問題も独自に調査しています。
石炭灰の処理に関する明確なルールがなく、クロムなどとても毒性の高い物質を含んだ廃棄物が投棄されているとのこと。しかし違法とはいえず、法の抜け穴になっているそうで、規制の必要性を話していました。

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不法投棄の問題について説明するリャオさん

 

次に訪れたのは台中。台中ではAir Clean Taiwan(ACT)の皆さんと意見交換を行いました。ACTは幾つかの団体があつまってできた大気汚染の改善と脱石炭を訴えるネットワーク組織で、もともと脱原発団体や環境団体、青年団体のあつまりだったものが、最近一つ組織として独立したそうです。

この2月、ACTはその他のNGOや市民団体とともに大規模なデモを計画。
数万人がデモに参加し、脱石炭やパワーシフトを訴えました。

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デモの様子写真:350.org Taiwanウェブサイトより

ACTの特徴は多くのお医者さんが参加している点です。ACTの代表も医者で、大気汚染が原因とみられる疾病を多く診てきたそうです。また、台湾ではお医者さんが社会的にとても尊重されるので、市民運動を盛り上げる上で、たくさんの医者が関わったことは重要だったと話していました。

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ACTや主婦連の方と意見交換

台中には台中石炭火力発電所という台湾で一番大きな発電所があります。
1986年に建設が開始され、1991年から稼働しています。

実は、ちょうど台中を訪れた日に環境当局(EPA)が大気汚染対策に関する公聴会を開催しており、傍聴することができました。大気汚染は台湾全土で大きな問題となっており、政府も対応を迫られています。

会場からは、EPAの用意したデータではPMの3割ほどが中国から来ているとしているがそれの裏付けはなにかといった質問や、透明性が不十分、これまでの市民からの要望に答えていない、詳細な政策施工のタイムラインがない、移動汚染源(車など)への比重が大きく発電所などの固定汚染源への対策に欠けるなど、さまざまな意見が飛び交いました。
(公聴会はこちらで視聴できます→https://www.youtube.com/watch?v=28gCT_IvlCQ

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公聴会の資料

台湾は、大気汚染対策のための14(+N)の政策を今年発表しています。

その3に続く…

台湾・エネルギーシフトの現場をたずねて(その1)

2017年1月、台湾は脱原発を政策的に決定しました。アジアにはもともと原発のエネルギーを使っていない国も、使おうとしていたけれど導入を見送った国もありますが、台湾のようにこれまで原発を利用していて、今後使用を止めると政策的に決めたのは、アジアでは台湾が初めてではないでしょうか。

FoE Japanは2017年4月に、脱原発をきめた台湾を訪問し、脱原発を求めていた市民や、今も活動している環境団体にヒアリングを行いました。幾つかに分けてブログで報告します。

台湾では、これまで保守派の国民党が原発を推進し、最大野党の民進党(民主進歩党)が原発に反対してきました。2016年、政権交代がおきて民進党政権になり、政策的に原発が廃止されることが決まりました。ただし2016年の選挙では、与野党両候補ともが原発廃止を公約に掲げていたそうです(第4原発の凍結も2014年で前政権の時です)。脱原発が政策として決定的になったのは、2017年1月の電業法の改正案の可決です。この改正は2025年までに原発を廃止することだけでなく、これまで台湾電力公社が独占していた電力市場を自由化させる内容も含んでいます。

まずはじめにお話を聞いたのは、台湾北部で活動をしている郭さんです。
郭さんは北部最大の環境連合の一つ「北海岸反核行動聯盟」のリーダーで、芸術家でもあります。

郭さんは小さい頃遊んでいた場所が第2原発のために接収され、思い出の場所が失われた経験から、地元に戻ったときに地域の歴史や文化を学び直して将来世代に残そうと思ったとのこと。その過程で、原発に関する多くの問題点を発見したそうです。

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プレゼン中の郭さん(右)

第2原発の計画が始まったのは郭さんが7歳だった1962年(注:着工開始は1975年)。父親は炭鉱労働者で、季節によっては農業も行っていたそうです。第2原発がある場所の近くで休みの時は友達と遊んでいた、と郭さんは回想します。そのあたりには3、400名ほどが住むコミュニティがありましたが原発建設に伴い、みな移転をしたそうです。この地域のお茶産業は完全になくなり、漁業も大きな影響を受けました。第二原発は新北市北部(台湾最北部)に位置します。

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第一原発の目の前で解説してくれる郭さん

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第一原発からの温排水

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第一核能発電蔽とかいてあるのが見える

当時は政府による原発計画に対する反対運動はほとんどなかったと郭さんはいいます。というのも台湾では戒厳令が1987年まで続いていており、市民活動に大きな制限があったからです。1993年、第二原発の汚染水が原因でとみられる奇形魚が大量に発見されました。それ以外にも資材を運ぶトラックの事故など「公式に記録されている原発施設・周辺の事故」が複数報告されています。しかし人々は原発についてほとんど情報を持たず、政府のプロパガンダを信じていたとのことでした。

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第2原発の排水口ちかくの看板。危険と書いてありましたが、釣りをしている人が何組かいました

戒厳令が解消された後、1989年から大きな脱原発運動が起こり始めたと郭さんは言います。よく第4原発に関する市民の行動が報道されるが、脱原発運動はこの北部と、蘭嶼島(先住民族の島で、放射性廃棄物の貯蔵施設がつくられ健康被害などが発生している)の二箇所が国内でもっとも大きいと思う、と話していました。

現地で活動している他の方々にもお話を聞きましたが、やはり東京電力福島第一原子力発電所の事故がおよぼした影響は大きかったとのことで、文化的にも地理的にも近い日本での事故は他人事には感じられなかったそうです。台湾の大きさはだいたい九州と同じくらい。二つの原発を抱える北部の人々は逃げる場所がないと感じ、311のあとに大きな反原発デモが起きました。第1・第2原発から台北までは車で1時間、距離にして40キロほど。台北の人口だけでも200万人です。

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気候変動に取り組む台湾ユースと一緒にヒアリングを行いました。筆者中央。

郭さんに台湾の脱原発政策について尋ねてみました。郭さんは、「喜ばしいことではあるが、台湾が脱原発をするといったのは初めてではない。2000年も2008年もそういった動きがあったが、実現しなかった。」他に話をきいた現地の方(写真のピンクのシャツの方と青いシャツの方は現地で脱原発活動に参加している方)も「政治家は野心的な目標(脱原発)を掲げているのに、行動が謙虚すぎる。政策は正しいが、もっと積極的に行動してほしい」と話していました。

さらに郭さんは「台湾には将来的に脱原発・脱石炭という同意(コンセンサス)があり、原発に関わっている市民・石炭に関わっている市民はその目標を共有している。」と話します。

脱原発と脱石炭一緒に掲げるのは現実的でないと批判があるのでは?との質問に対し、「どちらかをやめたらどちらかが必要なのではないかという意見や、批判をいうのは、運動の外にいる人たちが言っていることだ。今必要なのは、このエネルギーの未来にむけてどのような変革をするか考えていくことだ。そのためには対話が一番大事だ。そして今政策に働きかける形で活動している」と話していました。

郭さんは、現在政府のエネルギーや持続可能な開発を考える委員会の委員に市民として就任しています。

実は脱原発を決めた台湾には、石炭火力に反対する市民運動も存在します。それについては次回報告します。

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みなさんありがとうございました!

(続く)