日本にもあった違法伐採!! 波紋拡がる宮崎県の盗伐事件(15)

第六回 えびの市大字西長江浦(その3)

 2021(R3)年8月27日、田村貴昭衆議院議員が本稿で紹介している志水惠子さんの被害地を含む宮崎県えびの市の盗伐被害地を視察しました。現場にはえびの市議、高鍋町議など共産党系議員や報道関係者に加え、えびの市役所から2名、そして志水さんをはじめ宮崎県盗伐被害者の会からも3名参加しました。国会再開後、再び農林水産委員会などで論議され、解決に向けてまた一歩前進することを期待します。

 今回も、前回に引き続き、志水惠子さんの事件を紹介します。
 ※今回も被害当事者の志水惠子さんのご了承を得て、実名で記述しております。

紆余曲折の末、えびの警察署による実況見分
 2020(R2)年10月2日、えびの警察署員4名(男性3名、女性1名)による実況見分が実施されました。所要時間は2時間40分でした。
 まず警察は、志水さんの所有地周辺の杭(林道側の3本(宮崎県、えびの市、日本道路公団)、ニンニク畑側の3本(日本道路公団))を確認しました。次に、ニンニク畑周辺の確認作業に入り、伐り株の採寸、伐根の測量を実施しました。
 その後の志水さんの所有地全体の伐り株探しは難航しました。志水さんが2016(H28)年に立木の一部売却を検討すべく下見に行ったとき、林床はとても歩きやすい状態でした。志水さんは警察に「林内にも盗伐されずに残った5~6の伐り株がある」と伝え、警部(課長)A氏から「志水さんも中に入ってください」と促され、伐り株探しに協力し、枝に埋もれて隠れていた大きな伐り株を3つ探し出しました。その後、警部(課長)A氏とM氏とで、追加で3つずつ見つけ、全員が「まだある」と感じたのか、より積極的な伐り株探しになり、最終的に29の伐り株を特定し、採寸しました。
 その作業中、志水さんは警察から「ヒノキとスギの見分け方を教えてくれ」と質問され、「切り株からではわからない」と回答すると、警察は熱心に樹上を見上げて葉を確認したそうです。その結果、警部(課長)A氏は「この山はほとんどヒノキですね」と感想を述べました。

えびの署、あきれたその後の対応
 ようやく実現した警察による実況見分。順当にいけば、その後は警察による捜査が始まるものと期待されたのですが、事は想定外の方向へ進んでいきました。
 10月の実況見分の後、11月5日、えびの警察署から連絡を受け、署に出向くと警部(課長)A氏より「志水さんの件は時効です」と伝えられたのでした。これに納得いくはずもなく、志水さんを含む宮崎県盗伐被害者の会では11月25日、宮崎県警察本部を訪問し、苦情申出を行いました。県警本部監察課警部I氏、警部補K氏と面会し、「文書での回答」を強く要請しました。
 その後、志水さん以外の川越静子さん、川越員さん(それぞれ本ブログ第二回、第三回で紹介)に対しては、宮崎県公安委員会から文書での回答を得ました。ただし内容は「調査の結果、一連の職務執行は適正であった」というものでした。
 業を煮やした志水さんは、2020(R2)年12月21日、えびの警察へ電話で問い合わせたところ、「えびの署では書面での回答はしていない。県警本部監察課からも何も聞いていない」という返答で、書面での回答を断られ、電話上で口頭での回答となりました。以下に志水さんの苦情申出の内容と、えびの署副署長H氏の回答について記します。

苦情1:2020年2月えびの警察署訪問の事実が否定されていること
えびの署の回答:2020年4月21日の訪問が最初で、その際に対応したのは刑事生活安全課のS氏1名。

 志水さんは2020年2月に2度、訪問をしており、複数の人々がその事実を認めています。2020年2月の初めての訪問の際、えびの署S氏から「貴方の山であることを証明できますか」と問われたため、鹿児島県湧水町木場の土地家屋調査士T氏にも相談、調査依頼をしており、T氏もそれを証言しています。さらに2020年4月21日の訪問時の対応者はS氏のみでなく、警部補M氏が加わり2名での対応だったことも捻じ曲げられてしまっています。

 その後、2021年1月8日、電話での回答では聞き逃しがあったため、再度回答についての確認をするためにえびの署を訪問し、副署長H氏に「今日、私が訪問したことは記録に残して貰えますよね?」と確認すると、「記録には残しませんよ。被害届を受け取っていないでしょ?」という回答だった。

 この発言を受けて志水さんは、「ようやくえびの警察署の『被害届を受け取っていないから、訪署記録にも残さない』という“やり方”を理解した」と言います。「11か月もの間、こんなにも悩まされ、苦しめられ、事実無根の様相を漂わされ、2020年2月の訪署に関する証拠集めを余儀なくされ、体調を崩す日々を強いられたのは何だったのか!高齢被害者に対する極まりないえびの警察署の仕打ちで、怒りが抑えきれない」。

苦情2:S警官の発言「木を切った人に残りの木を売ったらどうか」は不適切
えびの署の回答:『被害者救済として、このような方法もある』とS警官は述懐している。

 被害を受けて落胆している被害者にとっては「心の折れる」驚愕の発言でした。合わせて志水さんは、警察官は被害捜査をすべきであり、民事に介入する必要はなく、不適切な発言だったと考えています。

苦情3:容疑者Iは盗伐後にニンニク畑として使用していたことは不動産侵奪罪。なぜ逮捕されないのか?
えびの署の回答:犯人による証拠隠滅の恐れや逃走する可能性がないため逮捕する要件がない。

 志水さん所有の山林が盗伐された跡地がニンニク畑として使用されたことは疑う余地もありません。それにも関わらず「逮捕する要件がない」との認識は理解に苦しむところです。志水さんによると、えびの市婦人部の集まりにおいても、容疑者Iは「他人の木を盗んだり、山を転売している」という話があって悪名高い人物なのです。加えて志水さんの知り合いの土地調査家屋士T氏や、えびの市内の林業者も同様のことを証言しています。

苦情4:えびの署警部(課長)A氏の供述調書作成にかかる強要行為について
えびの署の回答:Aは強要していない。Aの発言は「前日に供述調書を作る」としたもので、「供述調書は今日でないと駄目」とは言っていない。

 志水さんは「前日に供述調書を作る」という発言は聞いていません。これも事実が捻じ曲げられているものです。志水さんが聞いたA氏の発言は「尋ねたいことがある」、「いろいろな書類を作らなければいけない」の2点のみで、「供述調書を作る」とは一言もありませんでした。
 2020年11月5日当日の様子は以下のとおりです。えびの署で警部(課長)A氏とやりとりをしている中で、志水さんは「供述調書は今日でないと駄目です」という発言をA氏より受けた後、その場で携帯電話のショートメールにて宮崎県盗伐被害者の会会長の海老原氏へ相談をしました。ショートメール送信後、すぐに海老原氏から電話があり、A氏にその携帯電話を手渡し、A氏と海老原氏とが直接やりとりをしました。その会話の中で海老原氏は「今日でないと駄目、というのはおかしいのでは?」と問いかけました。大きな声でのやりとりだったゆえ、傍らにいた志水さんにも漏れ聞こえてくるものでした。
 彼らのやりとりが終わり、携帯電話を手元に戻し、海老原氏との会話に戻ると、海老原氏から席を外すよう指示があったため、駐車場まで行って会話を継続しました。そして「すぐに退署したほうがよい」との助言があり、退署する旨をA氏に伝えるべく部屋に戻ると、A氏は「今日でなくても良いですよ」と、手のひらを返したような対応に変わったそうです。
 A氏の対応が急に変わったことに違和感を覚えながらも、志水さんは帰ろうとすると、A氏から「出来上がった供述調書を読み上げますけど聞きますか?」と問われたそうです。一連の対応、および態度の急変など、とてもA氏を信用できる状態になく、且つ調書の内容についても5~6分程度で出来上がるものを信用できるはずもなく、その申し出は断り、帰宅したのでした。

苦情5:不条理な時効について
えびの署の回答:伐採したS社の日報、領収書、供述などの捜査をした結果、伐採は2017年2月下旬に始まり2017年3月28日に終了している。森林法時効は3年ゆえ、このことにより2020年3月28日に時効が成立している。

 志水さんはこの不条理な時効について到底受け入れられません。盗伐を発見したのが2020年1月29日。2020年2月6日にえびの市役所による現場検証が行われ、同じ2月にえびの警察署を被害の訴えのために訪問しました。盗伐被害地一体の土地(1195-9(畑)、1195-21(原野)、1216-1(畑))を所有権がM氏から容疑者Iに移転したのは2017年3月23日であり、2017年2月下旬~3月23日の期間は容疑者Iが合法的に伐採できる術はなく、えびの署の理屈でも、容疑者Iは他人の山を盗伐したことになります。
 また容疑者Iに所有権が移転した2017年3月23日の同日付で伐採届がえびの市役所に提出されていることも変な話であり、さらにその伐採届には「届出提出後、30日以後に伐採する」よう記載されています。加えて容疑者Iが購入した土地は「畑」と「原野」であったにも関わらず、提出された伐採届には樹種や本数まで記載されているのです。

 これらを考慮すると、隣接する志水さん所有のヒノキ山(ヒノキ200本)を盗伐するためのM氏との土地売買契約、伐採届であったとしか考えられません。

元の土地所有者M氏も何か関与?
 実は、志水さんの林地は、元々は志水さんの父親(故人)がM氏から購入したものでした。それゆえM氏は志水さんの林地の盗伐に関して何か情報を持っているのではないか?と思い、盗伐を発見してから間もなくM氏にコンタクトしたのでした。M氏宅に訪問し、何度も電話をかけ、留守番電話に「盗伐された件に関してお話をお聞きしたい」旨のメッセージを残したものの、何の連絡もありませんでした。
 他方、前回で触れたとおり、えびの警察署はM氏にコンタクトでき、Iに土地を売ったことを確認しています。志水さんとは話ができない何かあるのか?憶測は膨らむばかりです。

 これまで本ブログで紹介してきた盗伐被害の中で、伐採後にニンニク畑として使用していた事例はありませんでした。「盗伐=伐り逃げ」といったイメージがありましたが、本事例から、如何に盗伐犯が堂々と振舞っているかがわかるかと思います。

 志水さんの闘いはまだまだ終わりません。次回、志水さんと宮崎地検とのやりとりを紹介します。(三柴 淳一)

第一回 宮崎市瓜生野ツブロケ谷(その1)
第一回 宮崎市瓜生野ツブロケ谷(その2)
第二回 宮崎市高岡町花見字山口(その1)
第二回 宮崎市高岡町花見字山口(その2)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その1)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その2)
第三回 宮崎市大字吉野字深坪(その3)
第四回 宮崎市田野町字荷物取地乙
第五回 国富町大字木脇(その1)
第五回 国富町大字木脇(その2)
第五回 国富町大字木脇(その3)
第五回 国富町大字木脇(その4)
第六回  えびの市大字西長江浦(その1)
第六回  えびの市大字西長江浦(その2)
第六回  えびの市大字西長江浦(その3)

鉱物資源の需要拡大の先には?――エネルギー基本計画の素案を読む(4)

気候危機への対策として化石燃料からの脱却が急務な中、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)の普及が急速に進められようとしています。こうした動きの中で蓄電池などの原料として需要拡大が見込まれるのがリチウム、コバルト、ニッケルなどの「鉱物資源」。エネルギー基本計画の中でも、その安定確保に関する項目が盛り込まれています。しかし、鉱物資源の開発現場では、これまでも生態系や先住民族の生活・文化の破壊など、さまざまな問題が起きてきました。今回は「カーボンニュートラル」の裏に潜む、もう一つの危機に目を向けてみます。

結局、海外依存の鉱物資源確保?

まず、鉱物資源について、第6次エネルギー基本計画(素案)の中では、一体どのようなことが書かれているのでしょうか。

以下のように、カーボンニュートラルの実現のために再生可能ネルギーやEVへの移行が不可欠であること、そして、その中で鉱物資源の安定供給が重要との認識が示されています

鉱物資源は、あらゆる工業製品の原材料として、国民生活及び経済活動を支える重要な資源であり、カーボンニュートラルに向けて需要の増加が見込まれる再生可能エネルギー関連機器や電動車等の製造に不可欠である。特に、エネルギーの有効利用の鍵となる蓄電池、モーター、半導体等の製造には、銅やレアメタル等の鉱物資源の安定的な供給確保が欠かせない。」(p.82)

一方、以下のように、海外からの輸入に依存せざるを得ない鉱物資源を安定的に確保するには、さまざまなリスクがあることも認識はしているようです。

「鉱種ごとに埋蔵・生産地の偏在性、中流工程の寡占度、価格安定性等の状況が異なり、上流の鉱山開発から下流の最終製品化までに多様な供給リスクが存在している。」(p.82)
「資源ナショナリズムの高まりや開発条件の悪化等により、資源開発リスクは引き続き上昇傾向にある。」(p.82)

しかし、ここに示されたリスクはあくまで日本側の主観によるリスクであり、後述するような開発現場で影響を受ける人びとや自然環境の視点から見たリスクは一切書かれておらず、一面的なものと言えます。

日本側が特定しているリスクの中で、どうやって必要な鉱物資源を確保していくのか――その方策については、以下のようなことが挙げられています。

・特定国に依存しない強靭なサプライチェーン構築
・リサイクル資源の最大限の活用、製錬等のプロセス改善・技術開発による回収率向上等のため投資を促進
・レアメタルの使用量低減技術やその機能を代替する新材料開発に向けた取組の更なる支援(p.83)

これらを見ると、海外からの調達が前途多難であることから、日本国内での循環型社会の重要性を認識しているようにも見えなくはありません。ただ、今後の技術開発にかかっているという点で不確実性があることは否めず、海外の、ひいては地球の資源をいつまで採掘し続けるのか――という疑問が生まれてきます。

具体的な数値としては、以下のようなものも挙げられています。

・ベースメタル(銅、亜鉛、鉛、アルミニウムなど)の自給率を2018年度の50.1%から2030年までに80%%以上に引上げる。そして、2050年までに日本企業が権益をもつ海外の鉱山等からの調達を合わせて国内需要量相当にする。(p.83)(下線は筆者による)

一見、自給率をほぼ100%まで引き上げるのかと歓迎したくなりますが、下線部はすなわち、日本のカーボンニュートラル社会を実現するため、2050年まで海外での採掘を続けますと言っているのと同じです。
なお、レアメタル(リチウム、ニッケル、クロム、コバルトなど)に至っては、自給率について一律の目標は設けず、「鉱種ごとに安定供給確保に取り組む」(p.83)とされており、具体策は示されていません。

こう見ると、これから需要が急増する鉱物資源の大部分を結局は海外からの調達に頼る、つまりは、海外で資源を掘り続けて日本に運んでくることになってしまいそうです。しかし、それで鉱物資源の採掘現場の環境や人びとの生活、そして私たちの住まいである地球は持続可能なのでしょうか。

2050年に必要な鉱物資源は倍増以上?!

日本だけではなく、世界が現在取り組んでいる気候変動対策の中でどれだけの鉱物資源が必要となるのか――世界銀行グループが2020年5月に発表した報告書「気候変動対策と鉱物:クリーン・エネルギーへの移行に鉱物が果たす役割」では、パリ協定の2度目標達成のため、太陽光や風力等への移行とその蓄電技術に必要とされる鉱物について、2050年時点での予測年間生産量が示されています。(図1)

図 1.  2度シナリオ達成のために求められるエネルギー技術に必要とされる2050年の年間鉱物需要予測(左:2018年生産レベルとの比較(%)/右:2050年の生産量予測(百万トン))
出典:世界銀行グループ報告書「気候変動対策と鉱物:クリーン・エネルギーへの移行に鉱物が果たす役割」(2020年5月)p.73

この左側のグラフの中で目を引くのは、グラファイト、リチウム、コバルト(左1~3本目の棒)の年間生産量が2050年までに2018年比で450%以上になるとの予測が出されていることでしょう。これは、リチウムイオン電池の需要増加が見込まれ、その構成材料として必要なためです。

一方、同じくリチウムイオン電池の材料として欠かせないニッケル(左から6本目の棒)は、2018年比で99%の生産量となっています。この99%というニッケルの生産増加割合については、他の鉱物より小さいからと言って、安心できるものではないという点に注意が必要です。

2050年のニッケル年間生産量は226.8万トン(右側グラフを参照。左側から3本目の棒)と予測されており、2018年時の生産量230万トンとほぼ同量のニッケルの生産が求められるということになります。世銀の同報告書(p.82)によれば、2050年までに使用済み製品からニッケルを100%回収し、新しい製品向けにリサイクル利用ができるようになったとしても、必要とされる一次ニッケル(鉱石を製錬所等で処理した後の生産物)の量は23%しか抑えることができないと予測しています。

このような予測から懸念されるのは、気候変動対策が進められていく中で、どの鉱物資源であれ、開発が継続・拡張され、これまで開発現場で地域コミュニティが経験してきた被害が繰り返し起こる、あるいは、むしろひどくなる可能性です。

土地、環境、生活、命を奪ってきた鉱山開発

下の地図は、2021年3月に英の市民グループが出した報告書に掲載されているもので、太陽光や風力発電、蓄電等に必要な鉱物資源の開発に関連して、地域コミュニティが問題の解決を求めている現場をプロットしたものです。すべてをプロットしたものではありませんが、森林伐採、生物多様性の喪失、土壌浸食、水問題、大気汚染、鉱山廃棄物といった環境問題から、児童・強制労働、地域紛争、汚職、健康被害、ジェンダーへの影響、軍事化、労働問題といった社会問題まで、世界各地でさまざまな問題が引き起こされていることが見て取れます。

図 2. 移行に必要な鉱物資源に関連してコミュニティーが問題解決を求めている一部のサイト
出典:英War on Want報告書「気候変動対策と鉱物:クリーン・エネルギーへの移行に鉱物が果たす役割(A Material Transition: Exploring supply and demand solutions for renewable energy minerals)」(2021年3月)p.16-17

実際にどのような環境社会問題が起きているのか、事例を見てみましょう。

下の写真は、FoE Japanが調査を行なってきたフィリピンのニッケル鉱山の様子を遠目から見たものです。

そして、この鉱山周辺をGoogle Earthで見ると、このように黄土色の広がりが確認でき、森林が伐採されて山肌が露出しているのがわかります。(中央に見える茶色は製錬所の鉱滓ダム)

このニッケル鉱山が面している海岸沿いの風景は、こちらです。

このフィリピンのタガニート・ニッケル鉱山(4,862.75 haの採掘許可。2034年まで)では、1987年から大平洋金属と双日が出資する日系企業が採掘を開始。その後、中国や台湾の企業も進出してきたため、どんどん採掘現場は広がるばかりです。そして、2013年からは住友金属鉱山と三井物産が出資する日系企業が国際協力銀行(JBIC)の支援を受けて、製錬所の稼働も始めました。

この開発の波の中で企業が鉱山サイトを拡張する度、20年以上もの間に少なくとも5回は居住地から追い立てられてきたのが先住民族ママヌワの人びとです。鉱山企業が移転地を用意したのは2011年になってからでした。

「これが最後(の移転)と言われている。ここの生活はコンクリートの家で、電気やテレビもあって、よく見えるかもしれないね。でも、決して自分たちが望んでいた(発展の)形ではないんだ。ここでは農業ができないし、木も山に行かないとない。海は(鉱山サイトから流出した)赤土で汚れてしまって魚も獲れない。生活の糧が近くになく、交通費が必要だろう?」

2012年に移転地での生活の様子をこう語ってくれたママヌワの若きリーダーだった”ニコ”ことヴェロニコ・デラメンテさんは、当時、これ以上の開発で自分たち先住民族の土地が奪われていくことにも懸念を示していました。
「最初にこの地での鉱山活動を許した自分たちの年長者を責めはしない。でも、もしチャンスがあるのであれば、企業が鉱山のために先祖の土地を使うのを止めさせたい。

ニコさんはその5年後の2017年1月、移転地近くでオートバイに乗ってやってきた2人組によって射殺されました。27歳でした。ニコさんはこの時、中国系の企業が同地域で計画していた鉱山開発の拡張に反対の声をあげており、生前から死の脅迫を受けていたとのことです。

このように、自分たちの土地の権利や生活を守ろうと声をあげてきた先住民族や住民が殺害されるという超法規的処刑(Extrajudicial killings)は、さまざまな開発現場で起きています。国際NGOグローバル・ウィットネスの報告書「明日を守ること(Defending Tomorrow)」 (2020年7月)によれば、2019年に殺害された土地・環境擁護者は世界で212人にのぼるとのことです。そして、その犠牲者の数が一番多かったのが鉱山問題に関係するケースでした(50名)。

図3. 2019年に殺害された土地・環境擁護者の人数(左:国別/右:セクター別)
出典:グローバル・ウィットネス報告書「明日を守る(Defending Tomorrow)」 (2020年7月)p.9

資源集約的でない解決策を!

第6次エネルギー基本計画(素案)の中では、「気候変動や周辺環境との調和など環境適合性の確保」という項目があり、以下のようなことが書かれています。

「エネルギーの脱炭素化に当たっては、発電所の建設のための土木・建設工事のための掘削や建設機械の使用等に加え、EVや蓄電池、太陽光パネルなどの脱炭素化を支える鉱物の採掘・加工や製品の製造過程におけるCO2排出を考慮する必要もあり、エネルギー供給面のみならず、サプライチェーン全体での環境への影響も評価しながら脱炭素化を進めていく観点が重要である。」
「気候変動のみならず、周辺環境との調和や地域との共生も重要な課題であり、エネルギー関連設備の導入・建設、運用、廃棄物の処理・処分に際して、これらへの影響も勘案していく必要がある。」(p.18)

昨今、サプライチェーン全体で「責任ある鉱物調達」を目指すという方針やスローガンは、鉱山開発を行う川上の企業から、製品を組立て販売する川下の企業まで、大手の企業であれば、どこでも取り入れてきており、環境・社会・人権配慮が行われ、負の影響は回避あるいは低減される前提で開発が進められてきました。

しかし、上述のように既存の鉱山開発の現場では環境・社会・人権問題が解決されておらず、地域の環境と人びとが多大な犠牲を強いられてきた実態をみると、こうした素案の文言があったからと言って、「周辺環境との調和や地域との共生」が実現できるだろうと楽観的な気分にはなれません。今後、需要が高まる鉱物資源の確保を海外に依存し続け、さらに開発の場所を広げるのであれば尚更です。

気候危機への対処が急務で、化石燃料に依存した社会からの急速な脱却が必要であることは言うまでもありません。しかし、大量の電気を使い続けることが前提であれば、結果的に際限なく鉱物資源を掘り続け、そこで土地、環境、生活、命を奪うような開発を繰り返すことになるでしょう。

今、私たちが考えていかなくてはならないのは、エネルギーや電力需要自体を削減し、鉱物資源への依存を拡大する方向ではない社会システムへの移行ではないでしょうか。

  (波多江秀枝)

こちらも注目!
「STOP!ニッケル鉱山拡張 in フィリピン」

今、フィリピンのパラワン島で日系企業が関わるニッケル鉱山の拡張計画が進もうとしています。水質汚染、自然保護区の解除など多くの問題が指摘されています。

企業の株主総会で気候変動アクション!

近年、企業に対し気候変動対策の強化を求めて株主が行動を起こすケースが増えています。機関投資家の動きはこれまで注目されてきましたが、海外ではNGOが自ら株主となり、企業に対し気候変動対策の強化を株主提案し、可決されるケースも出てきています。

日本でも、昨年気候ネットワークがみずほ銀行に対し株主提案を、今年はマーケットフォースが住友商事に、そしていくつかのNGOが合同で三菱UFJフィナンシャルグループに株主提案をしています。

参考:株主総会ピーク 気候変動問題へ取り組み強化求める提案相次ぐ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210629/k10013109341000.html

FoEJapanは他のNGOとともに株主総会会場近くで、企業の関係者や総会に参加する株主に対し、アピールを行いました。

住友商事は2050年に住友商事グループのカーボンニュートラル化を目指すことや、原則として新規の発電事業・建設工事請負には取り組まないとしています。しかし、実際には今も新規石炭火力発電所への関与を完全には否定していません。バングラデシュ・マタバリ石炭火力発電事業はその一つ。住友商事はすでに建設中のマタバリ1&2号機に関与していますが、新規の3&4号機ついては、今も「参画の是非を検討する」としています。

マーケットフォースの株主提案は否決されてしまいましたが、日本の大手商社に対して気候変動の観点で出された初めての株主提案としては一定以上の賛成票を集められたのではないかと評価する声もあります(参考:東洋経済オンライン「住友商事、気候変動の株主提案「賛成2割」の重圧 「脱石炭」に遅れ、石炭火力完全撤退は2040年代」https://toyokeizai.net/articles/-/436303)。

みずほ銀行の株主総会でのアクションの様子

脱石炭ポリシーを掲げている三菱商事、新規石炭火力のEPCに参画

三菱商事に対しては、すでに脱石炭方針を掲げているにもかかわらず、今でも新規石炭火力発電事業に参画を続けていること、カナダで進めているLNGカナダ事業に関連して先住民族の反対や人権侵害が発生していること、またミャンマーの軍に利する可能性のあるガス事業に参画している問題点などを指摘し、三菱商事に対しては問題ある事業からの撤退を、そして株主総会に参加する株主たちに三菱商事に対し気候変動・人権ポリシー強化を求める質問等を行なうようアピールしました。

今後も企業に対し様々な形で気候危機対策や、脱化石燃料を求めていきます。

(深草亜悠美・杉浦成人)

先住民族の権利や豊かな自然を破壊するガス開発 – 日本の官民は撤退を

日本の官民が関わるガス開発に反対し、弾圧されている先住民族がカナダにいることをご存知ですか?

温室効果ガスの排出が石炭と比べ少なく、再生可能エネルギーが普及するまでの「つなぎ」とみなされることが多いガス。しかし、ガスも化石燃料であることから、気候変動対策にはなり得ません。それ以外にも、たくさんの課題があります。

カナダのブリティッシュ・コロンビア(BC)州で進められている大規模な新規ガス開発現地には、人権や環境を脅かすこの開発に長年反対してきた先住民族がいます。「太古の昔から、私たちは大地と調和のとれた関係を保ってきました。私たちは大地に生かされており、大地を守る責任があるのです。…彼らは私たちを私たちの土地から抹消しようとしています。」2019年4月、国連先住民族問題に関する常設フォーラムで先住民族のフレダ・ヒューソンさんはそう演説しました。現地で何が起きているのでしょうか。

カナダ最大規模の大型LNG事業

カナダはこれまで、採掘したガスの多くをアメリカに輸出してきました。しかし、アメリカ国内でガス生産が増加していることに加えアジアでのガス需要の増大を見越して、液化天然ガス(LNG)をアジアに輸出するカナダ初の大型LNG事業が進んでいます。この事業は主に3つの部分で構成されています。

(地図出典:Coastal Link Gas Pipeline)

1)ガスを採掘するためのモントニー・シェールガス開発事業(地図右上部、Dawson Creekあたり。)

2)採掘場から輸出ターミナルにガスを運ぶためのコースタル・ガスリンク・パイプライン事業(CGL事業)

3)ガスを液化、貯蔵、そして輸出するためのLNGカナダプロジェクト(地図左側、Kitimatエリア)

三菱商事、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、国際協力銀行(JBIC)がモントニーでシェールガス開発事業に関与し、同じく三菱商事が出資するLNGカナダプロジェクトに対してもJBICが融資の検討を行っています。また、BC州で新規の大型ダム(サイトCダム)の建設も進んでおり、この事業はガス開発に電力を供給するために進められているとも言われています。

先住民族の権利を無視した開発

この大型ガス開発では、特に670キロメートルのパイプライン敷設事業に関して強い反対の声が上げられてきました。パイプライン事業は、先住民族Wet’suwet’enの土地を通過する計画ですが、Wet’suwet’enの伝統的酋長らは同パイプライン事業に合意してません。

2019年1月7日、BC州最高裁判所が先住民族の反対運動を違法とみなし、パイプライン建設を認める判決を下しました。この判決は、先住民族の土地に関する決定権は先住民族にあるという過去の判例をそもそも無視しているとの指摘もありました。しかし、この判決を根拠に建設を進めようと、数十名の武装した警官が反対運動を続ける先住民族に弾圧行為を加えたのです。警官はチェーンソーで障害物を破壊して強制的に土地に侵入し、14名を逮捕しました。

先住民族の権利が侵されている事態に対し、国連人種差別撤廃委員会(Committee on the Elimination of Racial Discrimination)は2019年12月13日付けで、「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(free, prior and informed consent)」が得られるまで、コースタル・ガスリンク・パイプライン事業、トランス・マウンテン・パイプライン事業、サイトCダムの建設を即時中止するようカナダ連邦政府に求める決議を発表しました。

しかし、翌年の2020年2月6日現地時間朝3時すぎ、再び数十名の武装した警官が非暴力行動を続ける先住民族を強制退去させようとし、28人を逮捕しました。この件はカナダ全土で大きく報じられ、カナダ国内外70都市以上で先住民族の人々への連帯を示すアクションが行われました。こうした状況をうけ、連邦政府・BC州・先住民族(Wet’ensuwet’en)の間で、「Wet’ensuwet’enの土地に係る権利を認める」とする覚書が結ばれました。それにもかかわらず、この覚書には一連のガス事業についての言及はなく、その後も、パイプライン建設は継続されてしまっています。

カナダ連邦政府は「先住民族の権利に関する国際連合宣言(United Nations Declaration on the Rights of Indigenous Peoples, UNDRIP)」を2016年に採択しており、BC州も同宣言を実施する決議を行っています。先住民族の土地への権利はカナダの最高裁で認められているにもかかわらず、その反対の声や平和的な抗議活動が武装した警官によって抑圧されているのが現状なのです。

環境負荷の高いシェール開発

フラッキングという手法を使って採掘されるシェールガスには多大な環境影響が伴うことも問題です。シェールガスは地下数百から数千メートルに存在する頁岩(けつがん)層に含まれます。その採掘のために頁岩層まで掘削を行い、岩に割れ目(フラック)を作り高圧で水を注入し破砕する(水圧破砕法またはフラッキング)必要があり、高い環境負荷が生じます。地震誘発、フラッキングのために注入する水による水質汚染、大気汚染、メタン排出による地球温暖化などのリスクが指摘されています。このような問題のため、フラッキングは2011年にフランスで禁止され、2012年にはブルガリア、その後ドイツやアイルランドでも禁止されています。モントニーでも過去にフラッキングが誘発したと見られる地震が発生し、一部で操業の一時的停止措置がとられています。

ガスはつなぎのエネルギー?

ガスは、石炭火力よりもCO2排出が少ないことから、再エネに転換されるまでの「つなぎのエネルギー」と言われることがありますが、大きな間違いです。

気候変動に関する国際条約であるパリ協定は、地球の平均気温の上昇を1.5℃までに抑える努力目標を掲げており、これを達成するためには2050年までに世界の温室効果ガスの排出を実質ゼロにする必要があります。つまり新たなガス田の開発や採掘、ガス関連施設を建設することは、新たな温室効果ガスの排出を長期にわたり固定(「ロックイン」)することに繋がり、パリ協定の目標とも合致しないのです。LNGカナダプロジェクトは2024年度中から40年稼働が計画されており、計画通り進めば2050年を超えて運転することになり、パリ協定と整合しません。

さらに最近国際エネルギー機関(IEA)が発表したレポート(「Net Zero by 2050 A roadmap for the global energy sector」)は、パリ協定の達成のために新規のガス開発投資もやめるべきであると示し、大きな注目を集めました。

三菱商事を含む企業、そして融資に参加する銀行は、今すぐ先住民族の権利侵害への加担をやめ、事業から撤退すべきです。

★事業の詳細はこちら
★先住民族グループからJBICに対して送付された書簡はこちら

写真は全て(C) Michael Toledano

(深草亜悠美)

イスラエルによるパレスチナへの残虐な攻撃の停止をーFoEIによる声明

原文はこちら:https://www.foei.org/features/internationalist-solidarity-with-palestine

Friends of the Earth Internationalは、女性や子どもたち、民間の建物を標的とした残酷な攻撃、そして人口密集地域をターゲットとした爆撃、また情報の自由に対する国際的権利を脅かすメディアの建物への攻撃など、イスラエルによるパレスチナへの攻撃が続いていることを非難します。

何十年もの間、イスラエルによる占領政策が、パレスチナ人による土地、境界、天然資源へのアクセスや管理を阻害してきました。イスラエルによる占領は、環境汚染・生計手段の破壊・土地や水の収奪・差別的な法律・強制的な立退きや避難など、パレスチナ人に対する深刻な人権・環境侵害の源になっています。エルサレム旧市街のアルアクサ・モスクに対する最近の攻撃と、包囲されたガザ地区へのイスラエルの空爆は、占領下の東エルサレムで進行中の組織的な弾圧と抑圧の一部です。シェイク・ジャラー地区からパレスチナ人を強制的に追放するというイスラエルの計画は、生命、人権、国際法をあからさまに軽視しています。

アルジャジーラは、2021年5月18日、包囲されたガザ地区へのイスラエルの爆撃が2週目に入り、ガザの保健当局の情報によると58人の子どもと35人の女性を含む、少なくとも201人のパレスチナ人が死亡したと伝えました。1,300人以上が負傷しています。イスラエルは、ハマスによって行われたロケット攻撃で、子ども2人を含む少なくとも10人が死亡したと報告しています。

私たちは、民間人及び民間人の命を危険にさらすような標的に対する武器の使用を非難します。

さらに国連によると、ガザの38,000人以上のパレスチナ人が国内避難民となり、沿岸部にある48のUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の学校に避難所を求めています。この数字には、イスラエルの爆撃で家が完全に破壊された少なくとも2,500人の人々が含まれています。食料や水へのアクセスも問題になっています。

これらの攻撃は、世界中でパンデミックが起きている最中に起きています。ガザの医療システムはCOVID-19の感染者数増加に苦しんでいます。包囲されたガザ地区への攻撃により、医療従事者はCOVID-19感染者の治療を減らしたり中断したりすることを余儀なくされています。攻撃による負傷者に病院のベッドを割り当てたり、被害を受けた施設の対処を行なっているからです。

私たちは、国際社会に対し、これらの攻撃を非難すべきと求めます。

  • みなさんの政府に、これらの暴力に反対の声を上げ、イスラエルによる甚だしい不正義を終わらせるよう要求してください。
  • 今も続いているナクバ(注:イスラエル建国に伴って起きた戦争により多くのパレスチナ人が難民となった事態を指す「ナクバ=大惨事」)を、ガザで起きている大量殺戮を止めるため行動を起こしてください。パレスチナ人や連帯運動によって呼びかけられた抗議行動に参加してください。もしまだ何も計画されていないのであれば、抗議活動を企画してください。ガザとシェイク・ジャラーに対する現在の攻撃を非難する横断幕やプラカードを持っていきましょう。
  • SNS上で、連帯のメッセージをシェアし、政府にも連帯を求めましょう。

Friends of the Earth Internationalは、すべての世界の指導者たちに、イスラエルによるパレスチナ人の土地の占領に恒久的な終止符を打つために、外交手段を用いるよう緊急に要請します。イスラエルは、いかなる説明責任も果たさないまま、日常的に国際法に違反しています。私たちは国際社会に対し、イスラエルの犯罪を停止するために直ちに介入するよう求めるとともに, 1949年のジュネーブ第4条約の締約国に対し、その義務を履行するよう改めて求めます。

私たちは、PENGON/FoEパレスチナ及びパレスチナの人々に対し、国際的な連帯を示し、パレスチナの土地の占領の永続的な終結及びこの理不尽な暴力の終結を求めます。

#GazaUnderAttack#SaveSheikhJarrah