横須賀石炭火力、提訴へ!日本4件目の気候変動訴訟。その背景とは?

今週月曜日の5月27日、東京電力と中部電力の合弁会社である株式会社JERA(以下、JERA)が、現在建設を進めている横須賀石炭火力発電所新1・2号機130万kW(65万kW☓2基)について、発電所の周辺住民等45人が経済産業省に対し、2018年11 月30日に発行した環境影響評価書の確定通知の取り消しを求め、東京地方裁判所に提訴しました(以下、横須賀石炭火力行政訴訟)。

日本における気候変動訴訟は、2017年9月の仙台PS差止裁判、神戸石炭火力発電所計画における2018年9月の民事訴訟および同年11月の行政訴訟に続く、3地域4件目になります。

本記事では、横須賀石炭火力行政訴訟の背景や訴状の内容を、解説します。

5月27日昼過ぎ、提訴のために東京地方裁判所へ。
日差しの強い中、横須賀、千葉から原告が集まりました。

どんな訴訟?

世界では、地球温暖化対策や大気汚染の防止の観点から、パリ協定のもとで石炭火力発電からの脱却が求められ、産業界を含め脱石炭火力発電の動きが続いています。

しかし、JERAは、このような世界の流れに逆行して、横須賀市久里浜に石炭火力発電所を新設する計画を進めています。

新設発電所を建設する場合、電気事業法と環境影響評価法等に基づく環境影響評価手続(以下、環境アセスメント)において適正な環境影響評価をし、経済産業省からの承認を得なければなりません。しかし経済産業省は、JERAが適正な環境アセスメントを実施せず、環境の保全について適正な配慮も十分に検討されていないにもかかわらず、環境影響評価書の変更を要しないとして、環境アセスメントの結果である環境影響評価書の確定通知を発し、環境アセスメント手続を終了させました。

この新設発電所が稼働した場合、発電所の近隣住民は二酸化炭素(以下、CO2)や大気汚染物質等の排出に伴う被害を受けるおそれがあります。そこで、この新設発電所による健康被害等を危惧する原告らが、経済産業大臣が発した環境影響評価書の確定通知を取り消すことを求めて起こしたのが、今回の行政訴訟です。

訴訟における争点は?

訴訟における争点は、

  1. 新設発電所は環境アセスメントの簡略化が許される案件でないにも関わらず、事業者JERAは簡略化した環境アセスメントにて手続きを終え、この状況に対し経済産業省が変更を命じなかった点。かつ、アセスメントの簡略化に伴い、以下の通り環境影響評価法等を十分に満たしていない点。
    • 新設発電所のCO2削減対策内容とその評価の誤り、燃料種の検討の欠如。
    • SOx、NOx、PM2.5、水銀等の石炭火力における環境汚染にかかる検討が不十分。
    • 温排水の影響の検討が不十分。
  2. CO2の排出量が大きく、国際的な枠組みであるパリ協定に反する。

という点です。

今回の環境アセスメントで何が問題だったのか?

東日本大震災での福島第一原発事故後の電力需給の逼迫を契機に、環境省は2012年3月、「火力発電所リプレースに係る環境影響評価手法の合理化に関するガイドライン」(以下、合理化ガイドライン)を取りまとめました。合理化ガイドラインとは、既設発電所の老朽化に伴い施設を更新(以下、リプレース)する際、温室効果ガスや大気汚染物質による環境負荷の低減が図られる事例が多いことを理由に、一定の条件を満たす場合には環境アセスメント手法を簡略化することを認めるものです。

この合理化ガイドラインについて、環境省と経済産業省は、2012年9月に環境アセスメントの迅速化を検討する「発電所設置の際の環境アセスメント迅速化等に関する連絡会議」を設置し、同年11月、以下の2点に該当する案件を合理化ガイドラインの適用対象として定めました。

  • リプレース後に発電所からの温室効果ガス排出量、大気汚染物質排出量等の低減が図られる。
  • 対象事業実施区域が既存の発電所の敷地内または隣接地である。

そのほか、2013年3月、環境省は合理化ガイドラインの適用対象案件は、環境アセスメント完了前に旧発電所の撤去を行うことができると改定しました。

今回の横須賀の発電所新設計画は、この合理化ガイドラインが適用されるとして環境アセスメントが実施されました。横須賀の発電所新設計画は、本当にこの合理化ガイドラインの適用対象であったのか、という点が最大の争点です。では、横須賀火力発電所の適正について考えてみたいと思います。

横須賀新設計画は合理化ガイドラインの適用対象案件?

今回の訴訟の契機となった横須賀石炭火力発電所計画。

新設発電所の建設予定地は、1960年以来、火力発電所(以下、旧横須賀火力発電所)がありました。

具体的には、1960年に1号機、1962年に2号機と、2つの石炭専焼火力発電所が設置されました。その後、1970年までに重油/原油混焼の3~8号の6機が順次設置、1972年には1号機・2号機いずれも重油火力に転換され、計8機の火力発電所が稼動していました。また、1971年には動力をガスタービンとする石油火力発電機が設置・稼動されました。

 しかし、1、2、5、6号機は2000年末に稼働停止、7、8号機及び2号ガスタービンも2001年末で稼働停止し、新潟中越地震などの臨時の稼働しかしない長期計画停止の状態でした。そして、2004年12月20日に1号機が廃止、2号機も2006年3月27日に廃止され、2010年4月には、すべての発電所が稼働停止(長期計画停止)となりました。  その後、東日本大震災による福島第一原発事故により、供給電力が不足した影響で稼働が図られましたが、3号機、4号機、2号ガスタービン以外は稼働できず、2014年以降は再びすべての発電所が稼動停止の状態にありました。つまり、旧横須賀火力発電所の温室効果ガスや大気汚染物質の排出量は2014年以降、既にゼロと評価されるべき状態であるわけです。

建設予定地近くの公園、くりはま花の国から。計画では遠くに見える海を隠すように、発電所が建設される予定となっている。(2018年11月筆者撮影)

合理化ガイドラインは、稼働中もしくは稼働可能な火力発電所のリプレースの場合のみ適用されるべきものです。稼働停止が長く続き、稼働可能とはみなし得ない旧横須賀火力発電所には、この合理化ガイドラインは適用されないものであると言えます。また、アセスメントの簡略化に伴い、

  • 新設発電所のCO2削減対策内容とその評価の誤り、燃料種の検討の欠如。
  • SOx、NOx、PM2.5、水銀等の石炭火力における環境汚染にかかる検討が不十分。
  • 温排水の影響の検討が不十分。

等、環境影響評価法等を十分に満たしていないとの問題点も指摘されています。

国際的な気候変動対策の枠組みにも逆行する横須賀計画

2015年12月、パリ協定が採択されました。日本も2016年11月8日に、パリ協定を批准しました。

パリ協定は、世界の平均気温の上昇を産業革命前から2℃を十分に下回る水準、できる限り1.5℃まで抑制することを目的とした国際条約です。締約国は、今世紀後半の早い時期に世界全体で温室効果ガスの排出を実質ゼロとする長期目標を定め(第4条第1項)、各国に削減目標と政策措置を立案し条約事務局に提出、措置を実施することが義務付けられています(第4条第2項)。また、国内法である環境基本法第5条においても、国際協調のもとで地球環境の保全に積極的に推進すべきとされています。

そこで、気候変動の防止について重要な鍵を握るのは石炭火力発電からの早期の脱却です。 火力発電所は、燃料の燃焼に伴い、大量のCO2や大気汚染物質を排出します。燃料によって含有する成分が異なるため、石炭、石油、天然ガスのそれぞれの排出量は大きく異なりますが、石炭火力発電はたとえ高効率設備であっても、発電電力1単位当たりの石炭火力発電からのCO2排出量は、天然ガス火力発電の約2倍にあたります。そのため、CO2排出を実質ゼロとしていくためには、石炭火力からの早期の脱却が不可欠です。

Don’t Go Back to the 石炭HP(https://sekitan.jp)より

実際、世界の流れを見てみると、フランスは2021年、イギリスとイタリアは2025年、カナダは2030年に石炭火力発電をゼロとすることを宣言して、ドイツも2038年までに石炭火力発電から脱却する方針を明らかにしています。

脱石炭の潮流の背景には、再生可能エネルギーを普及させていく上での戦略も関係しています。太陽光や風力発電等の再生可能エネルギーは出力変動が大きいため、火力発電の出力調整によって供給量をコントロールする必要があります。一方、石炭火力発電所は、一旦石炭を燃焼させると石炭自体が燃焼し続けるという性質上、短時間での負荷変動に対応した出力調整運転が他の燃料に比べて難しい発電方法です。 したがって、再生可能エネルギーを主力電源化するうえで、機敏な供給量の調整に向かない石炭火力は有用性を欠くとして、先進諸国においては新設を止める方向に向かっており、2020年代には既設発電所についても順次廃止の流れにあります。

国として脱石炭の舵きりを!

東京湾岸では、東日本大震災以降、福島第一原発事故後の電力需給の逼迫を契機に、市原市、千葉市、袖ヶ浦市、横須賀市で計画されました。しかし、ダイベストメントの動きや地元住民の粘り強い活動もあり、2018年12月末には千葉市の計画、翌月の2019年1月末には袖ヶ浦市の計画が中止となりました。

日本国内でも脱石炭の流れが確立しつつある状況にも関わらず、国は不十分な環境アセスメントを確定し、8月1日には新設工事を着工しようとしています。横須賀の新設発電所の建設がこのまま進行した場合、2023年に一号機が、2014年に2号機が稼働する予定となっています。 この新規発電所が稼働した場合、年間排出量は726万t-CO2/年が排出されるとされており、2016年度における日本のエネルギー起源CO2排出量(約11.3億t-CO2)の0.64%、一般家庭150万世帯分にあたります。横須賀市内には15.6万世帯が住んでおり、この新規発電所が運転するだけで、横須賀市民の10倍ものCO2排出がなされることになります。

世界的に石炭火力からの脱却が進められ、日本にも同様の対策が求められている中、その流れに逆行するのが今回の横須賀石炭火力建設です。今回の行政訴訟のように、国民が司法の力を借り、国に対して訴えるまでになってきています。国は国民からのメッセージを真摯に受け止め、脱石炭へと舵きりをしなければならないはずです。

石炭火力を考える東京湾の会は、同訴訟を支援するサポーターを募集します。

(高橋英恵)

<訴訟サポーター募集のお知らせ>

石炭火力を考える東京湾の会は、同訴訟を支援するサポーターを募集します。詳細は追ってご連絡します。

なお、最初の口頭弁論は8月中旬頃と見込まれています。詳細の日程につきましては、確定次第お知らせします。ぜひ初回の口頭弁論の傍聴にいらしてください。

<参考>

・訴状:https://nocoal-tokyobay.net/wp-content/uploads/2019/05/press_release_20190527_yokosuka_coa_lawsuit_.pdf

・神奈川新聞「横須賀石炭火力計画「アセス不備」 住民が行政訴訟提訴」(2019年5月27日):https://www.kanaloco.jp/article/entry-170552.html

・産経「『アセス不備』国提訴へ 横須賀の住民ら、石炭火力発電所めぐり」(2019年5月25日):https://www.sankei.com/region/news/190525/rgn1905250008-n1.html

・FoE Japan横須賀インタビュー:http://www.foejapan.org/climate/nocoal/yokosuka.html

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《台湾の脱原発情勢》来年も国民投票? 原発推進の揺り戻しと脱原発の秘策とは?

4月18~21日、台湾を訪問しました。台湾の環境団体「緑色公民行動連盟」のお招きです。台北と高雄にて、「8年後の福島の今と日本のエネルギー政策」という題で、とくに原発事故被害が「見えない化」されている現状についてお話しをさせていただきました。

さて、台湾の脱原発の状況です。台湾では第1~第3原発までそれぞれ2基、合計6基の原発がありますが、第一原発1号機は昨年12月に40年の期限を迎えました。残る原子炉も2025年までに40年の期限を迎えます。総発電量に占める原発の割合は11%。

2017年、脱原発政策をかかげる民進党の蔡英文政権のもとで、いったん2025年までの脱原発が電気事業法に書き込まれました。

しかし、2018年11月、この条文削除を問う国民投票で賛成が多数を占め、削除が決まりました。なぜ、このような揺り戻しが起こったのでしょうか。また、来年再度、国民投票が行われるというのですが、その争点は?

脱原発運動を引っ張る「緑色公民行動連盟」の事務局長の崔愫欣(ツイ・スーシン)さんや、高雄での講演会をホストしてくださった「地球公民基金会」の理事の邱花妹(チウ・ファメイ)さんや研究員の陳威志(ダン・ウィジ)さんにお話しをうかがいました。

台北での講演会の後、緑色公民行動連盟のみなさんと。前列、左から2番目の方が、崔さん。

来年の国民投票の争点は?

台湾では、来年1月に総統選挙が予定されており、原発推進派が、以下の3つの議題での国民投票を提案しているそうです。

①第四原発の工事再開
②2030年までに電力供給に占める原発の割合を火力よりも大きくする
③原子力規制機関の審査に合格できたら、既存原子炉の20年の延長運転を認める

①の第四原発は、日立と東芝が原子炉を製造することになっていたため、「日の丸原発」とも呼ばれていました。しかし根強い反対運動が続けられており、2014年にそれまで原発を推進してきた国民党の馬英九政権下で「凍結」が決定されたという経緯があります。それをまた進めようという案です。

②については、一見不思議な設問ですが、理由をきくと納得しました。

「台湾では、石炭火力発電による公害にみんなが悩まされており、脱石炭の民意が強い。原発推進派は、その民意を利用して、石炭火力を減らすには原発を進めるしかない、というプロパガンダを行っている」とのことでした。

ちなみに、緑色公民行動連盟など、反原発をけん引する環境団体は、石炭火力の公害問題にも熱心に取り組んでいます。

崔さんたちは、国民投票の乱立には反対のようでしたが、推進派に対抗するために、以下のような設問を提案しようとしているそうです。

④第四原発を廃止
⑤高レベル廃棄物の最終処分場が運営を開始するまで、原発の運転期間を延長させたり、新規の原発の運転を開始したりしてはいけない

④については説明するまでもありませんね。崔さんたち曰く、これについては、賛否は五分五分でどちらに転ぶかわからない、とのこと。

⑤はどうでしょう? 

台湾には、2014年9月時点で約3,400トンの使用済み核燃料があり、敷地内で使用済み燃料を貯蔵できるスペースは限界が近づいています。通常運転40年が経つと5000トンの使用済み核燃料が溜まるそうです。最終処分場は、候補地すらきまっていない状況とのこと。

崔さんたちの意図としては、「トイレなきマンション」状態について、国民の目を向けさせ、このような状況で原発を動かすことの愚を訴えていきたい、ということでした。

前回の国民投票で、反原発派が負けたわけは?

前述のとおり、2018年11月、台湾の国民投票で2025年までの脱原発を定めた電気事業法の条項を削除することへの賛成が多数を占めました。

タン・ウィジさんは、「反原発の負け、というよりも保守勢力の巻き返しが、民進党の批判となってあらわれた」とみています。

崔さんは以下のように説明していました。

「いくつかの理由があると思う。福島第一原発事故の記憶が薄らいだこと、民進党への批判が、民進党がかかげる反原発政策への批判に結びついてしまったこと。国民投票の設問が10以上もあり、有権者が自ら考えるのではなく、 “第一問は〇、第二問は×…”というような単純な宣伝にのってしまったのではないか。また、私たち脱原発運動側が、もう勝ったと思い、脱石炭への運動に比重を移してしまったこともある。」

ちなみに、緑色公民行動連盟は、石炭火力発電所からのPM2.5の問題や、放射性廃棄物の問題にも熱心に取り組んでいます。

邱さんは、「ネット上で発信される原発推進派による宣伝」をあげました。

「とりわけ、『原子力のデマを終わらせる会』(核能流言終結者)という2013年から結成されたグループの力は大きく、若い人たちの支持も獲得していきました。彼らは、自分たちこそが、科学的・理性的であるとし、脱原発派を非科学的・感情的と攻撃しました。福島第一原発事故で直接死んだ人はいない、原子力災害は大きな事故とはならない、原子力に頼らなければ化石燃料は減らせない、太陽光は不安定、LNGは高い、などなどです。
彼らは、停電に対する恐怖心をあおり、原発をやめるのは時期尚早と訴えました。しかし、彼らは台湾に20基も原発をつくりたい、とも言っています」

国民投票の功罪

民意が無視されることが多い日本の現状と比較すると、このように国民投票で直接民意を問える台湾は、うらやましいでようにも思います。

しかし、それにしても、こんなにホイホイ国民投票をやることは、行き過ぎではないでしょうか。

この点を聞いてみると、崔さんは、「民進党になってから、国民投票のハードルを下げた。」と説明してくれました。また、通訳を務めてくれた、とある日系企業の方も、「確かに行き過ぎ。〇か×かで重要な政治的課題を決めることはできないこともあるし、政治の首尾一貫性も重要だし。人権に反することなど、たとえ国民投票で決まっても、守らなければならないこともある」とのご意見でした。私もこれには賛成です。

確かに、単純に真っ向から対立し、議論の多い政治的イシューの場合、ある時点での「民意」は、表面的なポピュリズムに左右されたり、宣伝するための資金が多い側が有利になるかもしれません。同じ土俵の上で、十分に情報を共有し、双方が議論し、お互いの質問に応えたうえで社会的合意を形成し、それを政策につなげていくのにはどうしたらよいのか。

日本の状況を考えると、やや暗たんたる気持ちになりますが、それでも熟議民主主義を確立するためには、不可欠の課題ですね。

2019年4月27日に台北で行われた脱原発を訴えるデモ(提供:緑色公民行動連盟)

※私の「8年後の福島の今と日本のエネルギー政策」の講演について台湾のメディアが報じてくれました。中国語ですが…。

福島核災已八年 日環團:傷害持續只是災民「隱形化」了

福島核災真的無人死亡??日本環團?露災民與死一樣難承受的人生

 

冒頭、「福島原発事故で直接的に死んだ人はいない、という人がいますが、“震災関連死”として亡くなった方は福島県で2,267人。自殺された方も約100人いらっしゃいます。長期化する避難生活の中で、絶望し、心身を病んでしまわれた方が多いのです。直接か間接かは問わず、原発さえなければ、ふるさとで豊かな生活を送っていた方々です。作業員の方々も過酷な労働を強いられています。作業員の労災認定は白血病で3人、肺がんで1人、亡くなった方もいらっしゃいます」ということを申し上げたところがハイライトされているようです。

(満田夏花)

山林から恩恵を受けているということ~鴨川市田原地区メガソーラー計画を取材して

○再生可能エネルギーと開発

福島原発事故以来、原発への依存度を下げるべく、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の割合を増やすことが決定されました。固定価格買取制度もあいまって、国内では大規模な開発を必要とするメガソーラーの建設が多く計画されています。

再エネの普及は、気候変動の原因である温室効果ガスを減らすための有効な手段でもあります。しかし現在、再エネの名の下に森林を伐採し、環境を破壊するような開発事例(以下、乱開発)が見られるようになってきました。

FoE Japanは、再エネの普及の名の下で山林を破壊することは、生物多様性の保全の観点から、また、気候変動の観点からも、森林は温室効果ガスの吸収に重要な役割を果たすため看過できないものであると考え、再エネによる乱開発の現場の取材を始めています。(FoE Japanでは北杜市も訪問

その一つとして今回、千葉県鴨川市に計画されている、メガソーラーの建設予定地を訪問しました。 (取材日時:2019年2月15日)

○鴨川市、田原地区、メガソーラー計画の主な問題点

千葉県鴨川市におけるメガソーラーは、田原地区という、鴨川市の玄関と言えるような場所に計画されています。同計画は、千葉県による林地開発許可審査中で、まだ着工はされていません。詳細はこちら

同計画の問題点として挙げられているのは、大規模な土地改変です。東京ドーム32個分にもなる広大な山林を平坦にするため、1,300万立方メートルの山を削り、その土砂で谷を埋め立てる予定であると事業者は言います。10トンのダンプトラック約200万台にもなる土砂も移動するそうで、流れる川や沢も埋め立てられる予定となっています。流れる川や沢が埋め立てられた場合、その川や沢に流れていた水が行き場を無くし、地中に水分が含まれていくため、地盤の脆弱化の恐れが考えられています。また、建設予定地は林野庁により「山地災害危険地区」に指定されている急峻な土地で、開発自体も危険や困難が伴う可能性があります。さらに、10万本以上の木が伐採されるとの意見もあり、この開発による大規模な環境破壊は免れません。

削られる予定地の山なみ
事業計画地映像(鴨川の山と川と海を守る会より)

○山林は漁業にとって必須

「山の緑から海に流れる豊富な栄養分は魚にとって大切だ。それを知らない漁師はいない。生計に関わる問題であり、本事業は反対だ」

とてもシンプルなコメントを述べたのは、年間25億円の販売高、組合員数約1400人の鴨川市漁業協同組合を統括する松本ぬい子組合長(以下、松本さん)。「今回の事業は環境破壊である」とさらに付け加え、山と海の関係を強調する松本さんの言葉からは、鴨川で漁業を営む人々は人間が生きるために長年自然を大切にし、持続可能な環境を作り上げてきたことを感じます。

松本ぬい子組合長

○山林の開発は、地主さんだけの問題ではない、公益性がある

現場で説明をする今西さん

鴨川の海と川と山を守る会(以下「守る会」)代表の勝又さんは、メガソーラー開発に対して、地元民の動きに懸念を示しました。「建設予定地は5区の財産区だったのだが、40数年前にリゾート開発会社へ売却している。その後、転売を重ねてきた山なので愛着がわかないのではないか。これは地主さんだけの問題ではない。そこに暮らして田んぼを耕作する人、川の水を利用する人、魚を取る人、それらを利用し、山の恩恵に浴する鴨川市民全体の問題だ」

勝又さん

同じく守る会の今西さんは「市はほとんどなにもしていない。これだけの規模の山を削り、谷を埋めることは、エネルギー問題とは関係なく通常の人の感覚では実行できないはずだ」と憤ります。

「山に降った雨が山林で浄化され川に流れ、そこに住む動物、生命の多様性が維持されている。これらは公共性があるものであり、都市部の方々も関係している。地主さんの意向で開発を決める筋合いのものではない」と今西さんは言います。

守る会では「エネルギーの問題については多様な意見があるが『この場所とこの規模』はダメという言い方をしている」と、統一見解はあると勝又さんは言います。また、「ようやく2018年2月ころから市民や議員の意識が変わり始めたと感じる。市民の関心が少し出てきたからこそ、未だに林地開発許可の審査に時間がかかっていて下りていないのだと思う」と、市民活動の成果についても分析していました。

◯市議会の雰囲気は?

佐藤カズユキ議員

鴨川市議会の中で本事業に唯一反対表明している、佐藤カズユキ議員に話を伺いました。

佐藤議員が反対を表明する理由についてお聞きしたところ、

「漁師の家に生まれ、自然を守ることを公約に掲げている。今回の事業は環境破壊である」

と自然破壊の懸念に加え、

「農業、漁業、林業の1次産業、観光が特徴の当市であるが、本事業はいずれにも大打撃を与える可能性がある。一時的な税金収入よりも失うものの方が大きいと思う」

と、経済的な懸念も理由として挙げていました。

これだけの問題のある事業に他の議員はなぜ表立って反対しないのかについて質問したところ、「事業に賛成の議員もいるが、個人的には反対だと言う議員が多い。しかし、個人的には反対としながらも、あくまでこの問題は市に許可権限はなく、国や県の問題であって市の問題ではないと言う議員が多く、個人の事業であることから、市や市議会が賛否を示すものではないという意見も多い。これは鴨川だけの問題ではないが、地方議会の議員の多くは国の方針にそのまま従う傾向がある」

と、議会の中で自らの意見を発することが困難であることを憂慮の声を漏らしました。

鴨川の市議会の構成については、

「鴨川市議会は圧倒的に自民系が多い。どこの政党であっても、漁業、農業、林業の1次産業が基幹産業である鴨川市を守るのは当然であるが、外部からの投資を優先させるなど、地元産業を守る動きにはなっていない」

との回答。

さらに、「良い再エネ、悪い再エネがある。本事業のような悪い再エネが再エネ全体の評判を落とすことになるのを懸念している」と話し、再エネの固定価格買取制度についても「再エネの使い方をしっかり国が制度化すべきだったと思う。再エネは、再エネ賦課金など国民が負担している公共の事業である。民間の事業利益主義だけ考えると今回のようにおかしくなってしまう」と、懸念を示していました。

加えて、「個人の事業だから私たちは何も言えませんという態度を行政がとっているのが問題。議会内での勉強会も進んでいないし、国からの通達がないと動かない。トップの方の意見が大きく左右する」

と、トップダウンでの動きにしか対応しない鴨川市にも問題があるといいます。

○市長のやるべきことはなにか

鴨川市役所訪問
亀田鴨川市長(左)

今回の訪問では、市民団体や市議会議員の他、2017年3月から鴨川市長を務める、亀田郁夫市長(以下、市長)との会合も実施しました。

鴨川市議会が昨年12月20日、国に対して提出した意見書『大規模太陽光発電施設の開発に対する法整備等を求める』には「自然環境、景観への影響・・・土砂災害等自然災害発生の懸念・・・市民生活を脅かす事態となっている」と説明があり、鴨川市としても、市長としても本事業は「自然環境、景観・・・災害の観点から問題である」と考えるのかを問うたところ、市長は以下のように答えました。

「個人的にはいろいろな意見があるが、法令等の基準に則り対応していく」。加えて、「鴨川市の環境破壊は市への大きな打撃となるのでは」との質問に対しては、「制度の範囲内で対応していくしかない。事業者としても法令遵守を前提として申請している。市としては現行法令の中でできることとして、市民の皆様に対して説明会を開催することや、市民の皆様の疑問に文書で答えることを求めたり、事業終了後あるいは災害等に対応するための積立金をするよう事業者に要請してきたところである」と市民との対話を促しつつも、他の地方行政にあるような条例を市として制定するなどの対策をする構えではありませんでした。

本事業のメリットについて市長は、「市としてメリットの有無で判断するものではないが、地域には短い期間経済的メリットはあろう。市内には、太陽光発電事業者によりミニトマトの温室栽培が行われているところもある」とあくまで中立性を強調しました。

一方で、本事業は鴨川市にとって失われるものについては「地域が担保できる積立金をするように事業者と合意を得たい」と事業者との合意形成に関しては積極的な姿勢は示すものの、本事業のデメリットについての言及はしませんでした。

最後に、「市としてそれ以上対応しないのは他に課題があるからか?」と、鴨川市における福祉や経済など他の課題が優先されて、本事業に関連した対応ができないのかという問いに対して市長は、「他の案件によって今回の事業への対応ができないということではない。繰り返しとなるが、法令に則して中立に対応していく」と否定しました。

と、上記のような形で面談は終了しました。市民や事業者との対話は重要視をしつつも、乱開発の規制を求めるような条例の制定や法令以上の対応には否定的でした。本事業は、鴨川市の基幹産業を脅かす課題とは捉えていないようです。

○鴨川市の向かうべき方向

今回は鴨川市のメガソーラー建設計画についての視察でしたが、メガソーラーへの懸念だけではなく、鴨川市の前向きな側面も発見しました。

守る会の勝又さんは、「鴨川市は移住者が多く自分で得られるものを自分で得る暮らしがしたい、自然の中で暮らしたいという方が多い。ジビエ、サーフィンも魅力であり、半分第一次産業、半分他の仕事(半農半X)みたいな生活に興味がある方々に良いまちである」と自然と触れ合いながら、自分の興味のあることに取り組める受け皿が鴨川にはあると強調されていました。

また、漁業組合長の松本さんも、「他地区は苦戦している中で当漁協は13年間黒字、若い方も入れ替わり入ってくるし経験者がやりかたを教えるという雰囲気が次世代を育てているようだ」と、鴨川の漁師も外からの移住者への対応も積極的で、これがモデル化されはじめ、鴨川のように漁師が増えることを「鴨川方式」といわれることがあるといいます。新しい風が吹いている鴨川でメガソーラー開発に対して「次世代のために反対。若い人たちの姿があるからこそ、想像がつく」と松本さんは強調します。

○自然とともに生きるとはなにか

今回の訪問で多くの方にお話を伺い、鴨川市における本事業は、再エネへの悪い印象が市民の間で広まるのではないかという懸念を感じました。国際環境経済研究所前所長の澤昭裕氏によると、ドイツでは太陽光発電の「施設建設に当たって森林等の伐採を行えば、その6倍の植林を行わないといけない」そうです。大規模な開発を伴うメガソーラー建設に頼らずとも、植林など対応が難しい耕作放棄地や一般住宅、工場などに設置する再エネを普及させるなど、やるべきことは他にもあります。

大規模に土地を削り、埋めるような事業は、再エネ事業に関わらず根本的に問題です。今回の訪問で、鴨川の経済を支える漁業組合を始め、一部の議員にも大規模開発に対する問題意識があり、自然環境の大切さが共有されていること強く感じました。長年維持されてきた自然環境は失ってから気づくのでは遅いのです。さらに、これは地域の問題ではなく都市部に住む人々も自然の利益を受けており、責任があると感じます。固定価格買取制度や環境影響評価法などの制度は短い期間の利益や影響は考慮していますが、さらに30年50年以上先を見据えるような長期的な視点が必要です。漁業や農業を支える自然保護の大切さを改めて感じ、行動していく必要があるのではないかと感じた取材となりました。

「計画概要」(鴨川の山と川と海を守る会調べ

場所:千葉県鴨川市、鴨川有料道路西側、清澄山系の山林

面積:事業面積250ha, 伐採面積150ha

発電規模:130mw

事業者:AS鴨川ソーラーパワー合同会社

地権者:Aスタイル

造成:大蓉工業

設計:ユニ設計

発電設備:日立製作所

(2019年2月 高橋英恵、松本光、天野遼太郎、田渕透)

日立の英ウィルヴァ原発、断念まであと一歩~署名にご協力を

※FoE JapanとPAWBは、日英両政府および日立に対して、ウィルヴァ原発の中止を求める国際署名を行っています(オンラインおよび)。
1月8日に第一次提出を行う予定です。

日立製作所が進めるイギリスでのウィルヴァ原発建設計画が岐路を迎えている。
12月10日のテレ朝の報道(注1)によれば、複数の関係者が「建設費のさらなる増大が見込まれる中、資金の調達先が決まらず計画を断念する方向で検討している」とのことだ。

この報道をうけ、日立の株価は上昇した。市場では「不採算事業への投資を見送り、利益下振れへの警戒感が和らぐ」と評価されたもようだ(注2)。

日立は12月12日に取締役会を開催。この問題について議論を行ったとみられる。
12月16日になって、共同通信が、日立がウィルヴァ原発の計画を「凍結する方向で調整している」「日立は事業継続の可能性を残すが、現状では事実上、撤退する公算が大きい」と報じた(注3)。翌日の17日、中西会長は、「(今の枠組みでは)もう限界だと英政府に伝えた」と発言(注4)。しかし、撤退に向けた最終決定ではなく、依然として継続の余地を残す。日立は2019年内にも最終投資判断をするとしていたが、年度内に早まる可能性がある(注1)。

ウィルヴァ原発は、日立の100%子会社のホライズン・ニュークリア・パワー社がイギリス・ウェールズ北部アングルシー島で進める。ABWR型の原発2基の建設を行うもの。
日立は以前より、ウィルヴァ原発事業を継続する条件として、自社の出資比率を50%以下に縮小するとしていたが、投資パートナーは見つかっていない。日立は東電や中部電、日本原電のほか、国際協力銀行(JBIC)や日本政策投資銀行(DBJ)などに出資を求めてきたが、十分な出資を得るのは難しい情勢となっている(注5)。

東芝も長らくイギリスにもつ原発会社ニュージェンの売却先を探していたが見つからず、今年11月7日にニュージェンの解散を決めた。原発という危険なビジネスに手を出す企業はなかなかいないということだ。

それはそうだ。イギリスでは電力需要は減少している上、風力発電などの再生可能エネルギーの価格がめざましく低下している。先行して計画が進むヒンクリーポイントC原発からの買取電力価格は、市場価格の倍で、その差額は国民負担となる。原発の建設費用は国際的に増加し、この事業でも3兆円にはねあがった。どうみても、原発建設が経済的に成り立つ環境にはない。

一方、日英両政府は、ウィルヴァ原発事業を進めるため、投融資や政府保証などの支援を行おうとしてきた。

ウェールズの住民団体PAWB(People against Wylfa B=ウィルヴァ原発に反対する人々)は、日立が取締役会を開催する前日の12月11日、日立宛てに手紙を送付し、改めて原発計画に反対した。手紙の中で、「イギリス政府によるウィルヴァ原発に対する補助は不公正であり、イギリスの消費者に大きな負担を押し付けることになる。日立にとっても評判を損ねることになる」「日立は、高価で時代遅れで危険で不必要な原発を推進するのではなく、未来のための投資してほしい」と訴えた。

アングルシー島は、美しい海岸線が有名な観光地で、EU保護種であるキョクアジサシも生息する。反対する住民は、原発事故の危険性、核廃棄物が将来にわたり残されること、事業によって自然のみならず、地元に残されているウェールズの文化が破壊されることを恐れている。

ウィルヴァ原発の建設が予定されているアングルシー島の風景(写真提供:PAWB)
事業地周辺にはEUの保護種であるキョクアジサシも生息する
(写真提供:PAWB)

日本政府は、原発輸出政策を国策として進めており、第二次安倍政権になってからはなりふり構わぬトップセールスを展開してきた。しかし、ベトナム、リトアニア、トルコなどで原発輸出が相次いで頓挫(下表)。

トルコ・シノップ原発については、事業費の倍増などから、三菱重工業なども含めた官民連合が撤退に向けた最終調整に入ったと報じられている。FoE Japanは2014年、現地訪問を行い、住民たちと交流。日本の「脱原発をめざす首長会議」から、シノップ周辺で反対の声を上げる首長たちへの応援レターを届けた。また、シノップ原発の地質調査に関して、経済産業省から日本原電の委託調査の不透明さについて、問題提起。日トルコ原子力協定に反対し、シノップの住民の手紙を日本の国会議員に届けたりなどの活動を行ってきた。

トルコ・シノップの美しい漁港(2014年撮影)

日本政府肝いりで進められた原発輸出政策。いまや残るはこのウィルヴァ原発のみだ。日立が国との関係で、ウィルヴァ原発を継続せざるをえないのではないかという懸念もきかれる。日立が現時点でこの事業を中止すれば最大約2700億円の損失が生じるとされているが、撤退判断が遅れればこの額はさらに膨らむだろう。日立には、日本政府に忖度することなく、正しい経営判断を行うことを望みたい。(満田夏花)

注1)日立が英原発建設計画「断念も視野」 建設費増大で(テレ朝、2018年12月10日)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000142690.html
注2)<東証>日立が上昇に転じる 「英原発建設、断念視野」と伝わる(日経、2018年12月10日)
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL10HJL_Q8A211C1000000/
注3)日立、英原発計画を凍結へ(共同、2018年12月16日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181216-00000040-kyodonews-bus_all
注4)日立の英原発計画「もう限界」採算見通し厳しく(共同、2018年12月17日)
https://this.kiji.is/447329326390936673?c=39550187727945729
注5)日立の英原発事業、電力大手との出資交渉難航(日経、2018年12月16日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39012980W8A211C1TJC000/

【参加報告】東京湾石炭火力問題サミット in千葉「声を上げ続けることが状況を変える」

2018年10月27日午後、東京湾岸で進められている石炭火力発電所について考える、東京湾石炭火力問題サミットinが開催されました。

参加者は100人以上と会場がほとんど満席となる盛況。

会は東北大学の長谷川公一教授による基調講演、気候ネットワークの平田仁子氏による報告に続き、東京湾の会のメンバーである蘇我石炭火力を考える会、袖ヶ浦市民の望む政策研究会、そして横須賀火力を考える会それぞれのメンバーによる各地域の活動事例の報告がありました。

以下、各報告の概要です。

<基調講演>「石炭火力発電所問題と市民活動の意義」長谷川公一教授

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  • 2017年に提訴された仙台発電所(以下、仙台PS)の運転差止裁判は、石炭火力発電所単体の差止を求める日本初の訴訟。
  • 仙台PSの請求理由は「大気汚染による人格権侵害」「気候変動による人格権侵害」「干潟への影響等、環境権侵害」。このうち、最も有効なのは「大気汚染による人格権侵害」。
  • 訴訟および石炭火力に反対する署名活動を受け、被告(住友商事)が石炭火力発電からバイオマス発電に計画を変更。
  • 仙台の運動の特徴は、事業者が完全なよそ者であったこと。
  • 仙台運動の今後の課題として、個別被害をどのように立証するのか、その対策として、NOxの自主測定や地域での学習会等の実施。
  • 石炭火力の「訴訟リスク」を健在化させたという点に、この訴訟の意義がある。

 

<総論>「石炭火力発電がなぜ問題か〜推進し続ける日本の問題〜」平田仁子氏

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  • パリ協定をはじめとした、温暖化対策に関する国際的な流れと日本の取り組みの概要。脱石炭は国際的な流れであり、日本の取り組みのレベルには大きな差がある。
  • パリ協定での気温上昇を2℃未満に抑えるためには、新規の石炭火力発電所を建設する余裕は一切なく、今動いているものも止めていかないといけない。
  • G7の主要国は脱石炭を宣言。COP23では、イギリス、カナダを中心に脱石炭を目指すPowering Past Coal Alliance(PPCA)が結成された。これに対し、日本は石炭火力を猛烈に推進。50基もの新計画を策定し、うち19基が建設開始。パリ協定のトレンドと全く逆な方向に動いている。
  • 東京湾の3つの発電所計画について。5の排出シミュレーションによれば、東京湾沿岸のみならず、伊豆半島から栃木県、茨城県、太平洋まで影響が及ぶ。もっとも大きな健康影響の受けるのは千葉県。
  • 金融機関の投資方針にも変更が相次いだ。しかし、「慎重に対応」「新規融資はしない」と表明した金融機関はそもそも石炭火力に対する融資は全くやっておらず、現状投資している金融機関は「政府援助の分は検討」とあまり意味はない。
  • 東京湾の案件はアセスが終わりかかっているものの、訴訟、裁判、市民運動等の運動で今まで6基止まってきた。まだまだ私たちは止められる可能性がある。

 

<現地からの報告>

◆蘇我(蘇我石炭火力発電所を考える会/小西さん)

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  • 蘇我は、「あおぞら裁判」のまち。1970年代から川崎製鉄に対する裁判を起こした過去のある、今でも粉塵問題が深刻な地域。
  • 蘇我石炭火力発電所計画を考える会は、2016年から活動を開始。今まで勉強会を開いたり、裁判を傍聴したりと様々な取組をしてきた。
  • 現在計画中の石炭火力発電所は中国電力とJFEスチールによるもの。原発一基分の電力を発電予定であり、最新の超超臨界を予定している。
  • 建設予定地のすぐ横には、双葉電子アリーナを始め、市民の健康のためにテニスコートや公園等、たくさんのスポーツ施設がある。また、防災の視点からも、災害の際は自衛隊の臨時基地ともなる場所でもある。また周囲には、たくさんの働く世代がすむ。
  • 千葉県の発電・消費電力については、発電量の75%を千葉県外に売電。千葉市においても、75%を市外に消費しており、市内の消費分のうち、半数は産業部門である(2013年度統計年鑑)。自分達の使用する電力が足りなくなるのではとの心配の声もあるがそんなことはなく、自分達CO2排出量を抑えるためには、トイレおふたを閉めたりこまめに電気を消したりといった市民の涙ぐましい節電よりも、新たに石炭火力発電所を作らないこと。
  • 住民の声としては、粉塵問題をどうにかしてほしいというものがもっとも大きい。アンケートのうち331名の回答という高い回答率であり、そのうちの2/3は住所・氏名を明かしている。
  • アンケートで寄せられた意見としては、子どもの健康への心配、におい、汚れ等。中には車の上に鉄粉が積もり錆びるとの声も。
  • 関心のない方にこそ、知ってほしい。力も足りない。残念に思うのは、住民も敵であること。建設計画者であるJFEからは町内会や祭りにお金をもらっていたり、議員や町内会にJFEのOBであったりことが多く、仙台の事例(建設計画者がよそ者であったため、地域住民が結束しやすかった)は羨ましい。計画者が“うちわ“であることが非常に難しくしている。なんとか外から、中からやっていきたい。

 

◆袖ヶ浦(袖ヶ浦市民が望む政策研究会/富樫さん)

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  • 袖ヶ浦で予定されている石炭発電所の計画について。計画者は東京ガスと九州電力。2015年の計画当初の電源は石炭火力だったが、2018年9月にLNG(液化天然ガス)へと燃料転換することを発表した。
  • 立地の理由としては、東京湾に面し電力大消費地である東京に近いこと、東電袖ヶ浦火力の送電線の接続が容易なこと、そして石炭灰の処分先が近いことがあげられる。
  • 袖ヶ浦の取り組みとして、「東京ガスを励ます会」という形で、建設計画者である出光興産を批判するのではなく“応援”する取り組みをしている。
  • 具体的に、出光興産へは手紙を出している。手紙の内容は、石炭は気候変動的にも経営的にも衰退の可能性が高いこと、次世代の再エネルギーとして再生可能エネルギーに転換していくことが企業の繁栄に繋がるとのメッセージ。
  • 手紙は社長のみならず、地域の所長にも出している。社長のみに提出した場合捨てられてしまったらそこで終わってしまうが、所長等にも提出し、読み手を増やすことで、自分たちが直面している問題を計画者内で取り上げてもらうきっかけを増やすことができたらと考えている。
  • そのほか、ブログ、チラシ配布を実施してきた。
  • 今後の課題は、若手を巻き込むこと。

 

◆横須賀(横須賀火力発電所建設問題を考える会/鈴木さん)

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  • 抱えている問題は蘇我、袖ヶ浦と全く一緒。ただし、横須賀は新規建設計画ではなく、以前から立地していた石炭火力発電所を立て直す(リプレイス)計画ため、合理化ガイドラインが適用されている。袖ヶ浦より後に計画が立ち上がったのに、今は袖ヶ浦を追い越し、今もアセスなしで解体が進んでいる。
  • リプレイス合理化ガイドラインの影響により実態調査は全くされず、ペーパー調査がまかり通っている。経産省の審査の場合も、「これはリプレイスですね」と、作るということを前提で、その場所に石炭火力発電所が運転されることによって生じる問題については触れられない。
  • そもそもなぜ止まっていたはずの横須賀の火力発電所を立て直すことになったかというと、横須賀は既存の港湾施設があるため、石炭の施設や送電線等、インフラ投資は不要であることが理由としてあげられる。
  • もう一点の理由として、横須賀の地域経済の衰退がある。大きな工場の海外進出、造船業の衰退により人口減少が進み、石炭であっても経済を活性化させてくれたらありがたいという声がある。
  • 課題は、準備所の事業者説明会にいかに住民に参加してもらうかが課題。今まで実施した2回のうち、両方合わせて410名が参加した。地元としては相当集まった方と思う。とくに、事業者が会場を設置した2回目は262名が参加し、参加者からの質問が絶えず、事業者が予定した時間の倍以上の時間を要するほど盛り上がった。
  • そのほかの取組みとしては、学習会に注力している。火力発電所ができたらどのような経済効果があるのかという問題を取り上げた。横須賀市だけでなく逗子市からの参加者もおり、隣市の逗子市には固定資産税は入らないけれど、5はちゃんと降るという事実を逗子の人は知らないということから、9月16日(日)に逗子で勉強会を開催した。参加者が集まるかとの不安もあったが、会場満杯(50名の参加のうち、20名は高校・大学生)となった。
  • 11月4日(日)は三浦市で新たな勉強会を開催予定。逗子での勉強会に参加した高校生が、農業も温暖化の影響があるのではという疑問をもったことがきっかけ。そのほか、11月28日(水)に鎌倉で、近日中に葉山でも勉強会を開催予定。横須賀市だけでなく、三浦半島の4市1町でセミナーが開催されることとなる。
  • また、11月10日(土)に横須賀火力発電建設中止を求める署名定期集会を予定。

 

参加者からの感想としては、

  • 石炭火力をめぐる訴訟や課題等について、改めて俯瞰的に捉えることのできる良い機会となった。市民活動があるからこそ、計画が中止になったり、次の計画を断念させることができているとわかって、元気をもらえた。
  • 温暖化防止で2℃まで抑えるには1基たりとも石炭火力は新設できないという現実をもっと多くの人に知らせないといけない。
  • 石炭火力発電の粉塵発生・空気汚染。なぜ東電が脇にあるのにJFEで行うのか。
  • 袖ヶ浦の活動は単に直球の反対運動だけでなく、多角的な活動を組み立てているところが素晴らしいと思った。
  • 横須賀の解体もアセスメントなしでスピードアップされ建設計画が進んでいると聞いてびっくりした。
  • 難しいけれど、住民市民の声を集めてぜひ中止を勝ち取りたい。

といった声が多くありました。

以上にように、今回のサミットの各登壇者の報告は「市民活動があるからこそ、石炭火力発電所建設計画を断念させることができる、また、その可能性を信じている」という想いにあふれたものでした。横須賀ではすでに住民による自主的な勉強会が連鎖的に広がり、大きな流れをうみ出す可能性があると感じています。

着実に進行している石炭火力発電所建設計画ですが、まだまだ止められる可能性があると信じ、FoE Japanとして、引き続き石炭火力発電所建設計画の撤回を求める運動を支援していきます。

 

<今後のイベント>

11月4日(日)【三浦セミナー】温暖化でどうなる?三浦の農業 -横須賀の石炭火力発電所建設から考える−

11月10日(土)【横須賀】横須賀火力発電建設中止を求める署名提起集会

(高橋)

<参加報告>全国メガソーラ問題シンポジウム

「全国メガソーラ問題シンポジウム」に参加したので報告します。

日にち:2018年10月8日
場所:長野県茅野市茅野市民館
主催:全国メガソーラー問題シンポジウム実行委員会、NPO法人地球守

参加者(筆者推定):約500人
参加者層(筆者推定):地元市民、関係者

□講演内容

「FIT法の何が問題か?」佐久裕司さん

「現代土木の限界と災害、大地環境の仕組みから、メガソーラの何が問題を診る」高田宏臣さん

「メガソーラーをやっつけろ!闘う住民のための十訓」梶山正三さん

 

□各地報告とパネルディスカッション

①長野県諏訪市四賀ソーラー事業
②千葉県鴨川池田地区(田原地区)メガソーラー事業
③静岡県伊豆高原メガソーラーパーク発電所
④愛知県知多郡東浦町メガソーラー計画
⑤三重県四日市足見川メガソーラー計画

 

・伊豆高原案件では、林地開発許可の審議会を4回も実施したものの、許可されてしまった。現状では不許可となることはありえない許可制度である。その中で4回の審議回数になったのは活動の成果ではないか。

 

・太陽光発電事業に関わる規制、条例、法律は以下①~④である。

①環境アセスメント

・全国で太陽光を対象にしている県は長野県、山形県、大分県の3件のみ

・その他なんらかの対象としている都道府県は29ある

・事業者自らが実施するため、都合の悪いチェック等は実施しないという問題点がある。

②林地開発許可

・通常許可されてしまう制度となっている

③市条例(ある場合)

・伊東市の例では、市長の同意が必要としているが、罰則規定がないと無視されてしまうという問題がある

④改正FIT法

・2016年改正FIT法では接続契約をしていないと許可が降りなくなった

・28GWが失効し、22GWが残っている

・法令違反が見つかれば経産省が調査し、取り消しできることになった。伊豆では市長の不同意のままに実行することは違法である、とする活動を実施している

 

パネルディスカッションのまとめでは、このようなメガソーラ問題は原発と同じ構図であり、それは大手資本、海外資本によるものであること、地方にお金は落ちないこと、自然は破壊されること、土地問題があることとした。

 

□聴講した所感

このシンポジウムで報告された5つの事例は環境破壊型、地元非同意型ソーラ発電として許されるものではない。太陽光発電事業で問題を抱える事例はこの他に多数あるが、地元住民の同意が得られていない計画はなんらかの問題があると考える。まず真っ先に改善すべきところは事業者による正確な情報開示と丁寧な説明であり、その上で何が問題かを議論すべきである。しかし現状では情報がないのに問題点を指摘しなくてはならないという不条理を感じる。そんな中、各地の活動では地道に情報収集を行い、整理をしているのは大変なことである。

 

パネルディスカッションでは、現状の太陽光発電事業に関係する制度の整理をしていただき、「環境破壊型」ソーラー発電計画を止めるためのヒントや力の入れどころを示していただいたのが良かった。

 

FoE Japanとしては引き続き、持続可能なエネルギーとはなにかを考えて活動していきたい。

 

<プログラム:主催者HP>
https://megasolarsympo.wixsite.com/-solar-sympo/blank-2

 

(2018年10月 田渕)

声明:第5次エネルギー基本計画の閣議決定に抗議する

2018年7月3日
国際環境NGO FoE Japan

本日(7月3日)、第5次エネルギー基本計画が閣議決定されました。私たちは、民意からも、現実からも乖離した今回の決定に強く抗議します。

1.非民主的な決定プロセス

エネルギー政策の立案に関しては、多くの市民団体が繰り返し要請したのにもかかわらず、公聴会などは開かれず、パブリック・コメントについても「集めた」だけであり、締め切りから2週間あまりで閣議決定してしまいました。パブリック・コメントを踏まえた公開の場での議論や、多少の文言の追加はあるにしろ、内容への反映は行われませんでした。 パブリック・コメントの対応表を見る限り、論拠を上げて脱原発の必要性を指摘する意見が多かったのに対して、それに対するまともな回答はありません。

策定のプロセスにおいて、審議会メンバーのほとんどは、脱原発を願う一般市民の声をほとんど考慮することなく、世論から乖離した発言を繰り返しました。「ご意見箱」によせられた意見についても分析や検討等はされませんでした。

このようなプロセスは、我が国のエネルギー政策の非民主的性格をあらわすものです。エネルギー基本計画の中では、繰り返し「国民の信頼の回復」という言葉が使われ、また、「一方的に情報を伝えるだけでなく、丁寧な対話や双方向型のコミュニケーションを充実することにより、一層の理解促進を図る」としていますが、まったくの空文です。これが是正されない限り、エネルギー政策に対して、国民の信頼を得ることはできません。

2.「ファクト」のねじまげと、
無視された重要な「ファクト」

本計画では、原発は「運転コストが廉価」である、原発は「安定供給に優れている」、原発は「準国産」、再生可能エネルギーは「火力に依存している」、「世界で最も厳しい水準の規制基準」など、明らかに誤りが繰り返し記述され、原発維持を正当化するような誘導が行われています。一方で、以下のような重要なファクトは無視されてしまっています。

  • 東京電力福島第一原発事故はいまだ継続中で、甚大で回復不可能な被害が広範囲にわたり生じている。ふるさとや文化、自然や人々のつながりが失われた。いままでの暮らしが失われた。各地で住宅の提供を打ち切られた避難者が困窮し、貧困化している。人々は分断されてしまっている。被ばくによる健康リスクと不安が生じているが、それを口にすることすらだきない空気となっている。事故原因の究明は終わっていない。廃炉・除染・賠償等の費用が膨れ上がり、政府試算でさえ5兆円、さらに上振れするといわれている。大量の除染土は行きどころがなく、公共事業で使うというような方針が出されている。
  • 原発をめぐる根本的な問題:解決できない核のゴミ問題、事故リスク、コスト、被ばく労働、大規模集中型の電源ゆえの脆弱性…
  • 国民の多くが原発ゼロを望んでいる。2012年に行われたエネルギーの未来に関する「国民的議論」においては、検証委員会は、「少なくとも過半の国民は原発に依存しない社会にしたいという方向性を共有している」と結論づけ、政府は、原発ゼロの方向性を盛り込んだ革新的エネルギー・環境戦略を策定した。世論の傾向はその後も大きな変化は見られない。
  • 原発の建設費用が激増している。たとえばトルコで三菱重工などが計画しているシノップ原発(2基)当初2兆円が4兆円に。イギリスで日立が計画するウィルヴァ原発(2基)は3兆円に倍増。
  • 東芝が、原発事業が原因で、経営破綻しかけた。
  • 東京電力は、福島第一原発事故により実質破たんしたが、「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」を経由した公的資金や各地の電力会社からの資金により、延命している。それにもかかわらず、東電は原発事故被害者への賠償を値切り、ADRの和解勧告を拒否し続けている。
  • 現行の原子力規制基準やその運用は原発の安全を保障するものではない。
  • 核燃料サイクルは破たんしており、まったく実現のめどがたっていない。

3.再処理の放棄を

プルトニウムの削減をプルサーマルの推進に求めることは、まったく本末転倒です。これ以上、プルトニウムを増やさないためにも、再処理・核燃料サイクルの破たんをみとめ、撤退すべきです。

4.抜本的なエネルギー政策の見直しを

私たちは、東電福島第一原発事故への深い反省や解決不可能な核のゴミ問題など、原発をとりまく厳しい情勢、気候変動はまったなしの課題であること、また近年のエネルギー情勢の変化を踏まえ、抜本的で民主的なエネルギー政策の見直しを行うべきだと考えています。

1)早期の脱原発を明記すべき
2)すでに破たんしている核燃料サイクルを中止すべき
3)原発輸出は撤回・中止すべき
4)石炭火力推進はパリ協定に逆行、新増設・輸出は中止すべき
5)持続可能な再生可能エネルギーの推進と、エネルギー需要削減を
6)地産地消で小規模分散型のエネルギー構造を

以 上

※第5次エネルギー基本計画はこちら
※パブリック・コメントの結果はこちら

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