【横須賀石炭訴訟報告 vol.13】ついに結審。判決は11月28日に。

本日、横須賀石炭火力訴訟の第13回期日が開廷されました。

本裁判は、石炭火力発電所を建設するにあたって、環境影響評価手続きが適切にされていないことを指摘し、本建設に係る環境影響評価の確定通知の取り消しを求める裁判です。

(裁判についてのより詳しい説明はこちら:横須賀石炭火力、提訴へ!日本4件目の気候変動訴訟。その背景とは?

今日をもって原告と被告の主張は終わり、結審となりました。判決前最後の審理であるということもあり、雨天にもかかわらず定員50名を超える約60名が会場に集まりました。

結審では、小島弁護士から今回の裁判の要点について、千葉弁護士からは横須賀石炭火力建設に係る環境アセスメントの瑕疵について、改めて提起されました。一方、被告からの陳述はありませんでした。

「気候保護に関する世論や議論が成熟していない」は、原告の訴えを退ける理由にならない

小島弁護士は、結審にあたり、次の5点についてお話ししました。

  1. 原告らの生命・健康・住居などの財産・食料への危険が差し迫っていること。危機は極めて深刻で重大な人権問題。
  2. 地球温暖化・気候変動による人権侵害を防止するためには、排出量の削減が決定的に重要である。
  3. 先進工業国それぞれが、パリ協定及び1.5度特別報告書で求められる排出削減措置を尽くすことが必要であり、それが世界各地の裁判所の共通認識ともなっている。
  4. 司法が自らの責任を果たすことが求められている。
  5. 気候保護に関する社会情勢や議論がまだ成熟していないとの理由で、司法による法的保護を否定するのは3つの意味で間違っている。

1点目について、指摘にあたっては、今年4月26日の神戸石炭火力訴訟の大阪高等裁判所の判決で「もはや地球温暖化対策は国境を超えて人類の喫緊の課題であることは疑いない(中略)」と、気候危機が裁判所でも認められたことを引用し、異常気象や漁業の被害を強調しました。そのほか、昨年ヨーロッパ各地を襲った山火事や、カナダでの49度という異常気温、日本での熱中症被害が頻発し毎年1000人が亡くなるほどになっていること、洪水などの気象災害によって600名が命を落とし3万件もの住居が流されたことに触れました。そのほか、原告尋問でも証言があったように、原告の居住地域である横須賀市内でも土砂崩れが起きたこと、海藻が育たず海の生態系が急速に失われていること、そしてその結果として漁業という生計手段が成り立たなくなりつつあることを再確認しました。

排出量の削減が決定的に重要であるという2点目については、昨今のIPCCの報告を引用し、人間活動によるCO2排出が地球温暖化を引き起こしており、排出量をゼロにしていくことは不可欠であることを訴えました。国際的にも、具体例として、世界エネルギー機関(IEA)は、「2021年以降のCCS(大気中のCO2を回収して貯留する技術)の備えない石炭火力の建設中止」「2030年までに先進国のCCSを備えない石炭火力の廃止」などが示されています。しかし、CCSについては、日本では適切に貯留できる場所が陸域にないことが経済産業省の報告書の中でされており、現在は海域での貯留場所も探索中で確実なものとはいえず、吸収量の増加に頼る対策は極めて困難であることを強調しました(注1)。

(注1)報告会では、北海道苫小牧市におけるCCS実証実験では3年間で30万トンのCO2貯留に成功した一方、横須賀石炭火力発電所が稼働した場合、年間726万トンのCO2が排出されることを比較されました。

次に、近年の世界各地での気候訴訟の判決事例を挙げながら、先進国としての責任、そして裁判所に求められる役割について指摘しました。2015年のハーグ地方裁判所での判決では、「少ない排出量だからやらなくてもいいというのでは、温室効果ガス削減を達成できない。人為的な温室効果ガスの排出は、どんな小さな量でも待機中のCO2濃度の上昇に寄与し、気候変動につながることが立証されている」と判断され、2019年のオランダ最高裁判所の判決でも踏襲されているそうです。また、2020年7月のアイルランドでの裁判、2020年11月のフランスでの裁判、そして2021年3月のドイツでも同様な判断がなされたことも紹介し、「世界的な共同体として、それぞれがちゃんとした責務を果たさなくてはならない」ということが、世界各地の共通認識であることを示しました。

最後の「気候保護に関する社会情勢や議論がまだ成熟していないとの理由で、司法による法的保護を否定するのは3つの意味で間違っている」という点は、前述の神戸高裁判決で、原告の訴えを退けた理由となっています。しかし、今回の裁判では、この点について、1)少数派の権利を保護するという人権保護の理念にそぐわないこと、2)気候変動の被害は全ての人に等しく同じタイミングで及ぶものではなくすでに被害を被っている人々がいること、そして、3)政治参加の権利を持たない未成年など将来世代がより深刻に気候変動による人権侵害を被ることを挙げ、反論しました。

再度提示されるアセスの瑕疵、被告の反論書面への指摘

千葉弁護士からは、「適切な複数案検討がされなかったこと」「環境アセスメントの簡略化」の2点に絞って、再度、横須賀石炭火力発電所建設に係る環境アセスメントの問題点について強調されました。

また、最後に、小島弁護士から、被告の準備書面への指摘がありました。被告の「今回の環境影響評価は『局長級取りまとめ(注2)』にそって行なっている」との主張について、もしそれに基づけば、事業審査の段階でパブリックコメントや専門家による審議が必要となるものの、それらが一切なされていないことを指摘し、仮に今回のアセスメントが『局長級取りまとめ』に沿ったアセスメントだったとしても、手続きに瑕疵があることを取り上げました。

(注2)『局長級取りまとめ』とは、2015年に経済産業省と環境省の局長が、東電が火力発電の入札をする際の扱いをまとめた文書。この文書をもって新規の石炭火力も検討することとされた。従って、電気事業法46-17-1(環境要件)として使い、確定通知に該当する。具体的には、電気事業者が経済産業省に申請するが、行政手続法上では、申請においては、審査基準をもうけ、パブリックコメントなどを実施しなくてはいけない。

判決は11月28日。公正な判断は下されるか

次回は、約半年後の11月28日(月)14:00〜、東京地方裁判所103号法廷です。いよいよ判決になります。

報告会では、判決まで時間があくことについて、小島弁護士は「他の石炭火力訴訟の結果を単に踏襲するのではなく、今までの口頭言論や原告尋問の内容などを踏まえて判断するゆえではないか」と述べました。

また、神戸石炭訴訟にも関わる浅岡弁護士も、「神戸と横須賀の裁判の違うところは、環境アセスメントの瑕疵がより明確であること。ここが横須賀裁判の特徴になっている」と、お話しされました。

先月末に開催されたG7環境・気候・エネルギー会合では、「2035年までに電力部門の大部分を脱炭素化する」ことが合意されました。COP26の合意文書にも書かれた「排出削減対策がなされていない石炭火力発電の削減」をより明確化した形になります。さらに、横須賀市内では4月24日と6月4日に気候マーチが開催され、のべ300人以上が参加し、この横須賀石炭火力の建設中止を訴え、少しずつですが着実に、横須賀市民の中でこの石炭火力建設の問題が共有されつつあります。

一方、日本政府は明確な脱石炭政策を打ち出すどころか、水素やアンモニア混焼に対し、グリーンイノベーション基金を通じて支援しています。燃やしてもCO2が出ないことから「ゼロエミッション燃料」と呼ばれる水素・アンモニアですが、現状、化石燃料で水素・アンモニアを生産することが公表されており、生産の過程でも温室効果ガスが排出されてしまいます。日本は、削減につながらない技術で石炭火力を延命するのではなく、今こそ、再生可能エネルギー社会へと転換すべきです。

日本の脱石炭につながるよう、FoE Japanは引き続き、横須賀石炭火力訴訟に関わる原告や気候変動対策の抜本的な強化を求める市民とともに活動していきます。

横須賀石炭訴訟について:https://yokosukaclimatecase.jp/

過去の訴訟報告ブログはこちら

(髙橋英恵)

G7:日本の置かれている立場と求められる取り組みとは

2022年6月にドイツで第48回G7サミットが開催されます。

議長国ドイツは気候変動分野を重要な議題の一つに据えていますが、「脱石炭」を声明に盛り込む議長案に日本政府だけが反対しているとの事前報道がありました。また、5月25〜27日にかけて気候・環境・エネルギー大臣会合が開催されています。

参考:
朝日新聞「日本に難題、石炭火力「30年廃止」 G7環境相会合声明原案」2022年4月26日
日経新聞「「脱石炭」孤立深まる日本 G7、米独が歩み寄り「全廃」削除要求は1カ国」2022年5月22日

気候変動とG7、そして日本の置かれている状況についてまとめました。

脱石炭の重要性

気候危機を食い止めるためには温室効果ガスの排出が最も多い石炭火力発電所の廃止が求められてきました。昨年のCOP26(気候変動枠組条約締約国会議)でも脱石炭の重要性が再認識され、多くの国が脱石炭を宣言しています。例えば脱石炭火力を目指す国などの連合PPCAには現在48の国が参加しています。

パリ協定の1.5℃目標達成のためには、先進国は2030年までに、それ以外の国も2040年までに脱石炭が求められており、今回のG7会議で議長国のドイツが2030年までの国内石炭火力の全廃をG7各国に打診していると報道されています。

日本政府は現在、効率の低い石炭火力発電所のみを廃止する方針を掲げており、さらにアンモニアやバイオマス燃料を混焼することで、効率を上げたとみなす方針で、脱石炭とはほど遠い状況です。また横須賀などで、新規の石炭火力発電所の建設も進んでいます。

海外への石炭火力発電の輸出に対する公的支援に関しては、すでに過去のG7首脳コミュニケに原則停止が明記されています。しかし、日本政府は国際協力機構(JICA)の支援で新たに建設が進められようとしているバングラデシュ・マタバリ2石炭火力発電事業およびインドネシア・インドラマユ石炭火力発電事業を例外扱いしており、公的支援を継続する姿勢を崩していません。

写真:既存のインドラマユ石炭火力発電所。この隣接地で新たな発電所の建設計画が進む。

<参考:2021年のG7首脳コミュニケ抜粋

公的資金の流れをグリーンに

石炭以外の化石燃料への補助金や公的支援についても、過去のG7やG20、COPなどで議論されてきており、資金の流れを1.5℃目標に合致したものにシフトしていく重要性は今回のG7でも取り上げられると見られています。

米国のNGOオイル・チェンジ・インターナショナルの調査によると、現在も多額の公的資金がG7諸国から化石燃料に流れており、中でも日本による支援はトップクラスです。

出典:OCI G7ファクトシート

一方、昨年のCOPで「クリーンエネルギーへの移行のための国際的な公的支援に関する声明」が発表され、化石燃料事業への国際的な支援を2022年末までに停止することが明記されました。

この声明には日本を除くG7諸国が署名をしており、この点でも日本政府に対する圧力は高まっています。

ロシアのウクライナ侵攻と化石燃料

ロシアのウクライナ侵攻をうけて、ロシアからの化石燃料の輸入停止がG7やEUなどで、進められています(例えば、EUはロシア産の石炭に続き、石油についても輸入を停止する方針を表明しています。日経新聞2022年5月4日付「EUが対ロシア追加制裁案 年内に石油禁輸へ」)。化石燃料の輸出はロシアの歳入の36%を占めており、プーチン政権を支えてきたと考えられます。欧米企業がロシアでの事業から撤退を決める中、日本の官民の動きは鈍いままです。例えば、日本が官民をあげて推進した「サハリン1」「サハリン2」といった石油・ガス事業に関して、欧米の石油メジャーは撤退を表明しましたが、日本の官民は継続する方針を明らかにしています。

今、日本は一次エネルギーの約9割、電力の75%を化石燃料に依存しています。LNGや石炭、原油など化石燃料の価格は国際的にも2021年から上昇し、ウクライナ侵攻の影響で今後さらに上がる見通しです。それは当然、家計にも影響します。特にコロナ禍ですでに影響を受けている生活困窮者などへの負担増が懸念されます。

このような状況の中「エネルギー安全保障」の議論では、原発再稼働や石炭火力の維持などの声も強くなっています。しかし、原発は、莫大な安全対策費が必要で、燃料も輸入に依存しています。事故やトラブルも多く、戦争やテロの攻撃対象になるリスクもあります。「エネルギー安全保障」とは真逆のものです。海外産の化石燃料への依存こそ、エネルギーコスト上昇に結びついてきました。

気候変動対策のためには化石燃料依存を断ち切らなければなりません。解決不可能な核のごみをはじめ、さまざまな問題を抱える原子力発電の再稼働、新設や新型炉の開発も、行うべきではありません。早急に進めなければならないのは、エネルギー政策の根本的な見直しと、省エネの徹底など短期の需給状況への対策です。

EUは先般RePowerEUという政策パッケージを発表しましたが、これはロシア産化石燃料への依存脱却とともに気候変動対策も追求する内容になっています。

最後に

来年は日本がG7の議長国です。日本政府が、気候変動政策などでG7の中で孤立していると報道されていますが、来年のG7でリーダーシップを発揮するためにも、日本政府には気候変動対策の強化、脱化石燃料に向けた強いコミットメントが求められます。(深草亜悠美)

参考:

EUタクソノミーと原発をめぐる議論

EU域内における2050年カーボンニュートラル達成のための資金を動員するため、ファイナンスに関係するさまざまな取り組みも進めています。その一つのEUタクソノミーをめぐり、年末に一つの重大ニュースが飛び込んできました。タクソノミーに、原発と化石燃料ガス(天然ガス)を含めるというものです。タクソノミーでの原発の扱いはこれまで加盟国内で激しい議論がありましたが、どういうことなのでしょうか。

タクソノミーとはもともと分類法を意味し、環境的に持続可能な投資を促進するために、グリーンな活動を分類する仕組みです。EUタクソノミーでは6つの環境分野に貢献する活動を明確にし(分類し)、いくつかの主要な条件を設けています。

6つの分野:

  1. 気候変動の緩和
  2. 気候変動への適応
  3. 水と海洋資源の持続可能な利用と保全
  4. サーキュラーエコノミーへの移行
  5. 環境汚染の防止と抑制
  6. 生物多様性と生態系の保全と回復

これら6つの分野のどれかもしくは複数に貢献することが条件で、いずれの目標に対しても「著しい害を及ぼさない(Do No Significant Harm、DNSH)」こと、ビジネスと人権に関する指導原則など「最低限のセーフガード」を満たしていること、またEUのサステナブルファイナンスに関する技術専門グループ(TEG)が示す「技術的スクリーニング基準(TSC)」を満たしていることが求められています。

2021年末、欧州委員会がこのタクソノミーに原発と化石燃料ガス(天然ガス)を含める方向性であることがリーク記事により明らかになりました。

2022年1月1日には欧州委員会がプレスリリースを発出し、再生可能エネルギー中心の社会への移行に天然ガスと原発には役割があること、一定の条件(注1)のもとで両エネルギーを認めることを提案し、これら両エネルギーに関する委託法令(注2)のドラフトに関する協議を開始したことを発表しました。委員会は加盟国の専門家グループ等との協議結果を踏まえ、1月中にも採択するとしています。

注1)新規のガス火力について、2030年までに建設許可が出ている事業に関しては、より高排出の施設をリプレースする目的で建設する、排出上限270gCO2e/kWhとすること等が条件。新規の原発については2045年までに建設許可が発行され、放射性廃棄物の管理計画がしっかりと整備されていること等が条件になる。

注2)Delegated Act。欧州委員会が議会から委任をうける形で採択するもので法的拘束力がある。

原発の扱いに関してはEU加盟国内でも意見の対立が続いていました。フランスやフィンランド、東欧諸国などは原発を推進しており、フランスとフィンランドは現在も自国内で新規原発を建設中です。一方、脱原発を決定しているドイツや、オーストリアなどの国はタクソノミーに原発を含めることに反対していました。

オーストリアの環境団体Global2000(FoEオーストリア)はこの動きを批判し、「これまでの議論で、すでに原発は除外されていた。特に今回示された原発に関するスクリーニング基準はこれまで一度も公開で議論されたことがない上に、既存の法令や規制をリストにしただけにすぎない」と批判。またドラフトテキストの中で、原発が「ベースロード電源」とされていることに関しても批判しています。

オーストリアの環境エネルギー大臣も、一連の動きを「グリーンウォッシングである」と批判し、タクソノミーで原発を認めることになれば訴訟も辞さないとしています。

また技術専門家グループ(TEG)のメンバーのDawn Slevin氏は、原発を認めることに対する反対署名を2021年12月21日に開始。この署名にはTEGのメンバーやその他の専門家が賛同しています。

Slevin氏らは、技術専門家グループ (TEG)が原発はEUタクソノミーに含めないことを勧告したのにもかかわらず、原子力技術を促進したいごく少数の国々が政治的な理由から原発に科学的というお墨付きを与えようとしていると批判し、核廃棄物やウラン採掘による環境影響の観点から原発はDNSH原則に反すること、事故のリスクは拭い去れないこと、気候変動による影響が原発を脆弱にさせる(熱波により取水できない、洪水のリスクがあるなど)ことなどを指摘し、原発をタクソノミーに含めることに反対しています。

欧州の原発をめぐっては、前述のようにフランスとフィンランドで原発の建設が進んでいます。また、EUから脱退した英国でも建設が進んでいます。(その他東欧諸国にも原発建設計画あり

フランスのフラマンヴィル3号機(EPR(欧州加圧水型炉)、1600MW)は2007年に建設が開始されました。2012年に完成、2013年に運転開始予定でしたが、技術的問題に見舞われ、運転(送電)開始は10年遅れの2023年とされています。またコストも増加し、当初33億ユーロとされていたものが、約4倍の124億ユーロに膨れ上がっています

フィンランドで建設中のオルキルオト原発3号機(EPR、1600MW)も、当初の完成予定が2009年でしたが、現在も営業運転を開始していません。

英国ではヒンクリーポイントC原発(EPR、1600MW×2基)の建設が進んでいますが、こちらも大幅な遅延とコスト増加に見舞われています。

英国といえば、やや脇道にそれますが、日立製作所が英国ウェールズへの原発輸出を試みましたが頓挫したことはみなさんの記憶にも新しいかもしれません。英国では1995年にサイズウェルB原発が稼働したのを最後に、原発の新設がありませんでした。2010年、英国政府は原発新設の8つの適地を発表しましたが、現在建設が進んでいるのはこのうちヒンクリーポイントCのみです。その他サイズウェルC原発も計画中ですが、それ以外についてはほとんど進んでいません。(なお、英国の国家インフラ委員会は昨年9月、原発が低炭素電源とは認めた上で、建設に時間がかかりすぎることなどからこれ以上大型原発の建設は必要ないとする助言も発出しています。)

現状、欧州での原発建設には10年の歳月がかかっており、コストも大幅に増加しています。

冒頭で説明したようにタクソノミーの目的は、環境的に持続可能な投資(environmentally sustainable investment)を促進することで、掲げられた6つの分野に対して「著しい害を及ぼさない(Do No Significant Harm、DNSH)」ことが求められています。

気候変動対策の観点からいえば、英国の国会インフラ委員会も指摘するように、原発は時間がかかりすぎて、2030年までに排出半減、2050年にはネットゼロを求める気候変動対策に間に合いません。原発にかける資金があれば別の低炭素電源の開発や省エネ技術に回すべきでしょう。

また原発は気候変動に適応できないことも指摘されています。これまでも、温暖化による冷却水不足で原発の出力制限が行われるケースが実際に発生しています。昨年発表された研究によれば、台風やハリケーンによる影響も今後より受けることが指摘されています。気候災害に備えた設備の強化も行い得ますが、さらに追加のコストがかかります。

そしてウラン採掘から稼働まで、被爆による健康被害や放射性廃棄物を生み出します。環境汚染の抑制と防止もできないのです。

事故がおきれば、その影響は甚大です。東電福島原発事故の影響は今でも続いています。なによりチェルノブイリ原発事故の影響もまだ続いています。

今月中にも欧州委員会はこのガス・原発を認める委託法令を採択するとみられていますが、ドイツやオーストリアなどは今も強い反対の姿勢を示しており、行方が注目されます。

★1月27日のオンラインセミナーにもぜひご参加ください。

オンラインセミナー:1/27 原発は気候変動対策?最新の議論を追う

(深草亜悠美)

東電による汚染水「放射線影響評価」から読み取れること、読み取れないこと~放出される64の放射性物質の総量は?

東京電力は福島第一原発の「ALPS処理水の海洋放出に係る放射線影響評価報告書」を公開し、国内外からの意見を募集しています(12月17日23:59まで)。

東電は放射性物質の海洋拡散シミュレーションを行い、3つのタンク群と、仮想のALPS 処理水の核種組成(炭素14、銀110m、カドミウム113mなど人への被ばく影響が大きい9つの核種を選定)の 4つのケースについて人への影響を評価し、「すべてのケースで一般公衆の線量限度および国内の原子力発電所に対する線量目標値のいずれも下回った」としています。また、海洋生物への影響評価も行い、問題のないレベルと結論づけています。

ところがこの「放射線影響評価」は問題だらけ。たとえば…

  • 放出は30年以上続くはずであるが、それについての記述がありません。
  • 海洋拡散シミュレーションをしているが、いつの時点での評価なのか、放出を開始して1年後なのか、10年後なのか、30年後なのか不明です。
  • 年間および 10km×10km の「平均濃度」により評価を行っています。季節ごと、また場所によって放射性物質の濃度が高い部分が生じたとしても、「平均」をとることによって薄めてしまうことになります。
  • 外部被ばくも、内部被ばくも、年単位での被ばく評価となっています。つまり、累積的な影響が評価されていないのです。

一方、この評価報告書から読み取れることもあります。
私が注目したのはp.50以降の、実際に64核種について測定を終えている3つのタンク群の水を、計画どおりトリチウムが年間22兆べくれる1年間放出し続けたとした場合の64核種の年間放出総量です(東電報告書p.50以降)。

たとえばK4タンク群の水を1年間流す場合の、いくつかの放射性物質の年間放出総量は

ストロンチウム90 2500万ベクレル
カドミウム113m 210万ベクレル
ヨウ素129 2億4,000万ベクレル
セシウム137 4,900万ベクレル
プルトニウム238 7万3000ベクレル
プルトニウム239 7万3000ベクレル
プルトニウム240 7万3000ベクレル
プルトニウム241 320万ベクレル

となります(トリチウムが年間22兆ベクレルになるように放出するという前提です)。告示濃度比総和1以下(つまり全体として規制基準以下)とはいえ、なにせ放出量が多いので、膨大です。いくら薄めても、総量は変わらないのです。つまり濃度でのみ規制をかけることの限界といえます。

プルトニウムに着目しましょう。同じくそれぞれのタンク群の水を、トリチウム年間22兆ベクレルとなるような放出を行うという前提です。

年間放出量(ベクレル)
K4タンク群 J1-C タンク群 J1-G タンク群
Pu-238 73,000 890,000 2,300,000
Pu-239 73,000 890,000 2,300,000
Pu-240 73,000 890,000 2,300,000
Pu-241 3,200,000 32,000,000 81,000,000

K4タンク群の水を1年間放出すると、プルトニウム238、239、240、241の合計で341万9,000ベクレル、J1-Cタンク群の水の場合、プルトニウム238、239、240、241の合計で3,467万ベクレル放出、J1-Gタンクの水の場合、年間8,790万ベクレル放出ということになります。

まだ、すべてのタンク群の核種ごとの濃度や容量が公開されていないため、不明なところがありますが、この3つのタンク群が特殊なものでない限り、このレベルの放出が30年以上続くことになります。

しかし、このような数字も、限定的なものに過ぎません。いままで東電は、放射性物質の濃度のみを公開してきており、放出の総量については示してきていませんでした。私たちは、いったい何が、どれくらい放出されるのかわからないままにいるのです。さらに、東電が測定・公開の対象としている64核種というのは、ALPSで処理の対象となっている62の放射性物質とトリチウム、ALPSの対象ではないがあとから存在することがわかった炭素14のみです。

技術者や研究者も含む、原子力市民委員会のメンバーが、パブコメを公開しています。

http://www.ccnejapan.com/wp-content/20211215CCNE.pdf

領域海洋モデルの再現性に関しての批判、有機トリチウムによる内部被ばくが過小評価されている件など、かなり具体的な指摘がならんでいます。
また、原子力市民委員会では、12月16日に開催したオンラインセミナーの「“東京電力「ALPS処理水の海洋放出に係る放射線影響評価報告書」の問題点”」の資料および録画をYouTubeにアップしています。(冒頭の私のところはイントロなので飛ばしてください)

ご参考にしていただければ幸いです。(満田夏花)

今さら石炭火力の延命計画!?「GENESIS松島計画」の環境アセス配慮書に意見を提出しました

こんにちは。FoE Japanの高橋です。

9月28日、電源開発株式会社(以下、J-POWER)が、長崎県西海市の松島石炭火力発電所の一部の設備を、石炭ガス化複合発電の設備を備え付けるという計画について、計画段階環境配慮書への意見募集を開始しました。

この計画は、1981年から稼働してきた旧式(超臨界圧)石炭火力2機のうち第2号機に、石炭をガス化する設備をつけ、今後も使い続けるというものです。

この事業者であるJ-POWERは、昨年10月の菅前首相によるカーボンニュートラル宣言以降、加速化するカーボンニュートラルの流れを受け、2021年2月に「J-POWER “BLUE MISSION 2050”」を発表しました。そして、立て続けに、2021年4月には、J-POWERの中期計画において、既存設備にガス化設備を付加することにより、水素を利用した高効率な発電システムへの「アップサイクル」を進めるという「J-POWER GENESIS Vision」を発表しました。今回の松島火力発電所での計画は、その「アップサイクル」の第一号の計画です。

気候危機が加速する中、これ以上の気候変動による深刻な被害を防ぐためには、迅速かつ確実に温室効果ガスの削減につながる対策が求められています。今年の8月には、IPCCの第6次評価報告書 第1作業部会報告書(自然科学的根拠)が公表され、それを受け、国連事務総長アントニオ・グテーレス氏は、

「2021年以降、石炭火力発電所は新設されるべきではないこと」

「経済協力開発機構(OECD)加盟国は2030年までに、他のすべての国々も2040年までに、既存の石炭火力発電所を段階的に廃止しなければならないこと」

「各国は化石燃料の新たな探査と生産をすべて中止し、化石燃料への補助金を再生可能エネルギーに振り替えるべきであること」

を訴えています。

また、いよいよ来週からのCOP26の議長国英国のジョンソン首相も、10月13日の電話会議にて、岸田首相に対し国内の石炭火力をやめるよう要求しています。

このような背景も踏まえ、FoE Japanもこの「GENESIS松島計画」に対し、下記の通り意見を提出しました。

PDFはこちらです。

1. 石炭火力事業はそもそもおこなうべきではない。パリ協定1.5℃目標の達成を遠ざける。

気候変動による深刻な被害が広がりつつある現在、気候変動によるこれ以上の損害を防ぎ、パリ協定の1.5˚C目標達成のためには、迅速かつ確実に温室効果ガスの削減につながる対策が求められている。今年6月に開催されたG7では、G7各国の首相は石炭火力を最大の温室効果ガス排出源として認め、国内電力システムの大幅な脱炭素化や、石炭火力輸出に対する公的支援の停止にコミットしたさらに、2021年8月に公表されたIPCCの第6次評価報告書 第1作業部会報告書(自然科学的根拠)を受け、国連事務総長アントニオ・グテーレス氏は下記のことを訴えている

  • 2021年以降、石炭火力発電所は新設されるべきではないこと。
  • 経済協力開発機構(OECD)加盟国は2030年までに、他のすべての国々も2040年までに、既存の石炭火力発電所を段階的に廃止しなければならないこと
  • 各国は化石燃料の新たな探査と生産をすべて中止し、化石燃料への補助金を再生可能エネルギーに振り替えるべきであること。

石炭火力発電所からの脱却は、世界の要請である。石炭ガス化複合発電という形であっても、石炭を使用し続けることにはかわりなく、気候危機をさらに加速させるものであると言わざるをえない。

2. 同事業はJ-POWERのカーボンニュートラル方針と矛盾する。

2050年カーボンニュートラルを約束した「J-POWER “BLUE MISSION 2050”」の名の下、新たな化石燃料の探査と生産を伴う同事業は、「ゼロエミッションウォッシュ」そのものである。真にカーボンニュートラルを目指すのであれば、石炭の使用を前提とした石炭ガス化複合発電や、石炭由来の「CO2フリー水素」の製造、新たな化石燃料の探査と生産を伴うアンモニアに依存したゼロエミッション火力ではなく、再生可能エネルギーによって2050年にCO2ゼロエミッションを目指すべきである。

3. 設備の「アップサイクル」による温室効果ガス排出削減量の定量的データが示されていない.

本事業は、カーボンニュートラルに向けた流れの加速化に伴い、発電方法を改善するものとして計画されているが、どれほど温室効果ガス排出量が削減されるのかの具体的数値が示されていない。現状の温室効果ガス排出量のほか、設備の「アップサイクル」による温室効果ガス排出削減量の定量的データを記載するべきである。

4. 温室効果ガスの排出量が、配慮事項として考慮されていない。

配慮書では、「アップサイクルにより効率の向上を図り、発電量あたりの二酸化炭素排出量を低減することから、配慮事項として選定しない」との理由から、計画段階配慮事項から温室効果ガス等の項目を削除している。気候変動が加速する中、どのような事業であれ、温室効果ガスの測定が求められているため、温室効果ガスの排出量も、計画段階配慮事項に選定すべきである。

5. 複数案の検討結果が明記されていない。

配慮書では、「複数案の設定を検討したが、環境影響に有意な差がある複数案はなく、計画段階環境配慮書における事業計画案は単一案とした」と記載されているが、太陽光や風力、潮力などの再生可能エネルギーによる発電方法を検討すべきである。なお、気候変動が加速する中、温室効果ガスの更なる増加をもたらす化石燃料やバイオマスによる発電方法や、放射性廃棄物の問題がある原子力発電については、検討案として入れるべきでない。

6. 事業想定区域の動物の生息調査について、現地確認がなされていない。

事業想定区域の動物の生息調査について、文献その他の資料調査に留まっている。事業区域内の動物の生息調査は、現地確認もすべきである。

7. 事業で検討されている技術はいずれも環境負荷の高いものである。

本計画は、1981年に石炭火力発電所として稼働していた松島2号機(出力50万kW)を、石炭ガス化設備を新設し、また、アンモニアやバイオマスも燃料として活用しながら、将来的には石炭由来の「CO2フリー水素」をつくってカーボンニュートラルと目指すというものである。しかし、同計画で予定されている技術には、どれも問題が多い。それぞれの問題点について以下に示す。

  • ガス化施設

2012年以降大崎クールジェンにて実証実験されてきたガス化技術を、今回初めて商用化するとしている。しかし、石炭をガス化して効率を高めたとしても、発電時にCO2を排出することにはかわりないため、問題である。

  • CCS

「ガス化技術は、CCUS/カーボンリサイクルと高い親和性を持つ」と書かれているが、本配慮書において、発電所から排出されたCO2の分離回収設備については新設設備の一覧に記載されておらず、また、温室効果ガスの回収率はどの程度なのか、回収したCO2をどこに貯留するのか、どのように再利用するのかの記述が一切見当たらない。そもそも、CCSは、回収した炭素を埋めるために広大な土地を必要とする。さらに、仮に石炭火力発電所にCCSを設置しても、温室効果ガスの回収率は9割程度と完全ではなく、回収に際しては莫大なエネルギーが必要となる上に、現時点では実用化には高いコストがかかるため、商用化は現実的でない。

  • アンモニア混焼

カーボンニュートラルを実現するために、将来的にはカーボンフリー燃料である燃料アンモニアの混焼をあげている。しかし、水素、燃料アンモニアについては、現状、化石燃料から生成される予定であることが、官民協働燃料アンモニア協議会の中間取りまとめ資料にて記載されている。化石燃料から水素や燃料アンモニアを生産する際には、化石燃料採掘時や水素やアンモニア生成時多くの温室効果ガスを排出する。この時に排出された温室効果ガスを回収した「ブルー水素」「ブルーアンモニア」も検討されているが、回収時に莫大なエネルギーを使うため、石炭よりもブルー水素・ブルーアンモニアの方がカーボンフットプリントが多くなるという研究もある。また、海外で燃料アンモニアや水素を生産し、それを輸送することになると考えられるが、現時点では輸送時にも温室効果ガスが発生する。以上の観点から、ライフサイクル全体で見た際に、温室効果ガスを低減できていない燃料アンモニアは、発電の燃料として使用すべきでない。

  • バイオマス

混焼のための燃料として、アンモニアの他にもバイオマスがあげられている。バイオマス発電は、燃料となる植物の燃焼段階でのCO2排出と、植物の成長過程における光合成によるCO2の吸収量が相殺されるとされ、「カーボン・ニュートラル」であると説明されることが多いが、これは「燃焼」という一つの段階のみをとりあげ、燃料を生産した植生が元通り再生されるという前提にたっている。バイオマス発電は、燃料の栽培、加工、輸送といったライフサイクルにわたるCO2排出を考えれば、実際には、「カーボン・ニュートラル」とは言えない。また、燃料の生産にあたり、森林減少など土地利用変化を伴う場合がある。その場合、森林や土壌に貯蔵されていた大量の炭素が、CO2の形で大気中に排出されることになる。つまり、バイオマス発電の促進が、地表での重要な炭素ストックである森林や土壌を破壊し、むしろCO2排出の原因となってしまうこともある。さらに、燃料生産のために伐採した森林が、もとの状態に回復したとしても、回復には数十年以上かかることが多く、それまでは森林に固定化されていた炭素が燃焼により大気中に放出されるため、大気中のCO2の増加に寄与していることになる。 

  • “ネガティブエミッション”の認識の誤り

配慮書では、「バイオマスの使用に加えて、CCSを実施した場合、光合成を通じて大気中のCO2を固定したバイオマス燃料により発生するCO2を分離・回収して地中に埋めることになるため、発電所の運用によりCO2排出量を実質ゼロにする”ネガティブエミッション”が可能」書かれている。しかしこの考え方は、数万年単位の時間をかけて作られた化石燃料を燃焼することによって排出されたCO2は、数時間〜数百年の時間のサイクルで循環する大気・海洋・陸地における生態系による炭素循環とは違う時間軸での排出であり、生態系による炭素循環の中に組み込まれないという重要な性質を見落としている。

*カーボンニュートラルの問題点については、次を参照されたい。
・FoE Japan, 「“カーボンニュートラル”のまやかし」, 2021/10/18
・FoE Japan, 翻訳レポート発行『カーボンユニコーンを追いかける〜炭素市場と「ネットゼロ」のまやかし〜』」, 2021/10/25

8. その他、意見募集のあり方について

意見提出のあり方について、今回の配慮書への意見提出方法は、郵送のみを想定したものとなっている。より広範な市民からの意見を募集する観点から、郵送だけでなく、電子メール、電子フォーム等を活用することが望ましい。方法書以降の手続きでは、意見募集方法を改善することを要望する。

締切は10月29日!皆で意見を出そう!

本件について、気候変動に取り組むたくさんの仲間が意見を出しています。

意見提出の期限は今週金曜日です。提出方法は、今回郵送のみと限られており、期限までの時間はわずかですが、実際に配慮書に目を通したり、他の団体の意見もぜひ参考にしたりして、意見を届けましょう!

事業者が公表した計画段階環境配慮書はこちら

環境アセスメント GENESIS松島計画(J-POWERのHP)

他団体の提出意見等についてはこちら

・気候ネットワーク:「GENESIS松島計画」に対する環境アセスへの意見提出を(2021/10/15)

・350 New ENEration:https://www.instagram.com/350neweneration/

(高橋英恵)

鉱物資源の需要拡大の先には?――エネルギー基本計画の素案を読む(4)

気候危機への対策として化石燃料からの脱却が急務な中、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)の普及が急速に進められようとしています。こうした動きの中で蓄電池などの原料として需要拡大が見込まれるのがリチウム、コバルト、ニッケルなどの「鉱物資源」。エネルギー基本計画の中でも、その安定確保に関する項目が盛り込まれています。しかし、鉱物資源の開発現場では、これまでも生態系や先住民族の生活・文化の破壊など、さまざまな問題が起きてきました。今回は「カーボンニュートラル」の裏に潜む、もう一つの危機に目を向けてみます。

結局、海外依存の鉱物資源確保?

まず、鉱物資源について、第6次エネルギー基本計画(素案)の中では、一体どのようなことが書かれているのでしょうか。

以下のように、カーボンニュートラルの実現のために再生可能ネルギーやEVへの移行が不可欠であること、そして、その中で鉱物資源の安定供給が重要との認識が示されています

鉱物資源は、あらゆる工業製品の原材料として、国民生活及び経済活動を支える重要な資源であり、カーボンニュートラルに向けて需要の増加が見込まれる再生可能エネルギー関連機器や電動車等の製造に不可欠である。特に、エネルギーの有効利用の鍵となる蓄電池、モーター、半導体等の製造には、銅やレアメタル等の鉱物資源の安定的な供給確保が欠かせない。」(p.82)

一方、以下のように、海外からの輸入に依存せざるを得ない鉱物資源を安定的に確保するには、さまざまなリスクがあることも認識はしているようです。

「鉱種ごとに埋蔵・生産地の偏在性、中流工程の寡占度、価格安定性等の状況が異なり、上流の鉱山開発から下流の最終製品化までに多様な供給リスクが存在している。」(p.82)
「資源ナショナリズムの高まりや開発条件の悪化等により、資源開発リスクは引き続き上昇傾向にある。」(p.82)

しかし、ここに示されたリスクはあくまで日本側の主観によるリスクであり、後述するような開発現場で影響を受ける人びとや自然環境の視点から見たリスクは一切書かれておらず、一面的なものと言えます。

日本側が特定しているリスクの中で、どうやって必要な鉱物資源を確保していくのか――その方策については、以下のようなことが挙げられています。

・特定国に依存しない強靭なサプライチェーン構築
・リサイクル資源の最大限の活用、製錬等のプロセス改善・技術開発による回収率向上等のため投資を促進
・レアメタルの使用量低減技術やその機能を代替する新材料開発に向けた取組の更なる支援(p.83)

これらを見ると、海外からの調達が前途多難であることから、日本国内での循環型社会の重要性を認識しているようにも見えなくはありません。ただ、今後の技術開発にかかっているという点で不確実性があることは否めず、海外の、ひいては地球の資源をいつまで採掘し続けるのか――という疑問が生まれてきます。

具体的な数値としては、以下のようなものも挙げられています。

・ベースメタル(銅、亜鉛、鉛、アルミニウムなど)の自給率を2018年度の50.1%から2030年までに80%%以上に引上げる。そして、2050年までに日本企業が権益をもつ海外の鉱山等からの調達を合わせて国内需要量相当にする。(p.83)(下線は筆者による)

一見、自給率をほぼ100%まで引き上げるのかと歓迎したくなりますが、下線部はすなわち、日本のカーボンニュートラル社会を実現するため、2050年まで海外での採掘を続けますと言っているのと同じです。
なお、レアメタル(リチウム、ニッケル、クロム、コバルトなど)に至っては、自給率について一律の目標は設けず、「鉱種ごとに安定供給確保に取り組む」(p.83)とされており、具体策は示されていません。

こう見ると、これから需要が急増する鉱物資源の大部分を結局は海外からの調達に頼る、つまりは、海外で資源を掘り続けて日本に運んでくることになってしまいそうです。しかし、それで鉱物資源の採掘現場の環境や人びとの生活、そして私たちの住まいである地球は持続可能なのでしょうか。

2050年に必要な鉱物資源は倍増以上?!

日本だけではなく、世界が現在取り組んでいる気候変動対策の中でどれだけの鉱物資源が必要となるのか――世界銀行グループが2020年5月に発表した報告書「気候変動対策と鉱物:クリーン・エネルギーへの移行に鉱物が果たす役割」では、パリ協定の2度目標達成のため、太陽光や風力等への移行とその蓄電技術に必要とされる鉱物について、2050年時点での予測年間生産量が示されています。(図1)

図 1.  2度シナリオ達成のために求められるエネルギー技術に必要とされる2050年の年間鉱物需要予測(左:2018年生産レベルとの比較(%)/右:2050年の生産量予測(百万トン))
出典:世界銀行グループ報告書「気候変動対策と鉱物:クリーン・エネルギーへの移行に鉱物が果たす役割」(2020年5月)p.73

この左側のグラフの中で目を引くのは、グラファイト、リチウム、コバルト(左1~3本目の棒)の年間生産量が2050年までに2018年比で450%以上になるとの予測が出されていることでしょう。これは、リチウムイオン電池の需要増加が見込まれ、その構成材料として必要なためです。

一方、同じくリチウムイオン電池の材料として欠かせないニッケル(左から6本目の棒)は、2018年比で99%の生産量となっています。この99%というニッケルの生産増加割合については、他の鉱物より小さいからと言って、安心できるものではないという点に注意が必要です。

2050年のニッケル年間生産量は226.8万トン(右側グラフを参照。左側から3本目の棒)と予測されており、2018年時の生産量230万トンとほぼ同量のニッケルの生産が求められるということになります。世銀の同報告書(p.82)によれば、2050年までに使用済み製品からニッケルを100%回収し、新しい製品向けにリサイクル利用ができるようになったとしても、必要とされる一次ニッケル(鉱石を製錬所等で処理した後の生産物)の量は23%しか抑えることができないと予測しています。

このような予測から懸念されるのは、気候変動対策が進められていく中で、どの鉱物資源であれ、開発が継続・拡張され、これまで開発現場で地域コミュニティが経験してきた被害が繰り返し起こる、あるいは、むしろひどくなる可能性です。

土地、環境、生活、命を奪ってきた鉱山開発

下の地図は、2021年3月に英の市民グループが出した報告書に掲載されているもので、太陽光や風力発電、蓄電等に必要な鉱物資源の開発に関連して、地域コミュニティが問題の解決を求めている現場をプロットしたものです。すべてをプロットしたものではありませんが、森林伐採、生物多様性の喪失、土壌浸食、水問題、大気汚染、鉱山廃棄物といった環境問題から、児童・強制労働、地域紛争、汚職、健康被害、ジェンダーへの影響、軍事化、労働問題といった社会問題まで、世界各地でさまざまな問題が引き起こされていることが見て取れます。

図 2. 移行に必要な鉱物資源に関連してコミュニティーが問題解決を求めている一部のサイト
出典:英War on Want報告書「気候変動対策と鉱物:クリーン・エネルギーへの移行に鉱物が果たす役割(A Material Transition: Exploring supply and demand solutions for renewable energy minerals)」(2021年3月)p.16-17

実際にどのような環境社会問題が起きているのか、事例を見てみましょう。

下の写真は、FoE Japanが調査を行なってきたフィリピンのニッケル鉱山の様子を遠目から見たものです。

そして、この鉱山周辺をGoogle Earthで見ると、このように黄土色の広がりが確認でき、森林が伐採されて山肌が露出しているのがわかります。(中央に見える茶色は製錬所の鉱滓ダム)

このニッケル鉱山が面している海岸沿いの風景は、こちらです。

このフィリピンのタガニート・ニッケル鉱山(4,862.75 haの採掘許可。2034年まで)では、1987年から大平洋金属と双日が出資する日系企業が採掘を開始。その後、中国や台湾の企業も進出してきたため、どんどん採掘現場は広がるばかりです。そして、2013年からは住友金属鉱山と三井物産が出資する日系企業が国際協力銀行(JBIC)の支援を受けて、製錬所の稼働も始めました。

この開発の波の中で企業が鉱山サイトを拡張する度、20年以上もの間に少なくとも5回は居住地から追い立てられてきたのが先住民族ママヌワの人びとです。鉱山企業が移転地を用意したのは2011年になってからでした。

「これが最後(の移転)と言われている。ここの生活はコンクリートの家で、電気やテレビもあって、よく見えるかもしれないね。でも、決して自分たちが望んでいた(発展の)形ではないんだ。ここでは農業ができないし、木も山に行かないとない。海は(鉱山サイトから流出した)赤土で汚れてしまって魚も獲れない。生活の糧が近くになく、交通費が必要だろう?」

2012年に移転地での生活の様子をこう語ってくれたママヌワの若きリーダーだった”ニコ”ことヴェロニコ・デラメンテさんは、当時、これ以上の開発で自分たち先住民族の土地が奪われていくことにも懸念を示していました。
「最初にこの地での鉱山活動を許した自分たちの年長者を責めはしない。でも、もしチャンスがあるのであれば、企業が鉱山のために先祖の土地を使うのを止めさせたい。

ニコさんはその5年後の2017年1月、移転地近くでオートバイに乗ってやってきた2人組によって射殺されました。27歳でした。ニコさんはこの時、中国系の企業が同地域で計画していた鉱山開発の拡張に反対の声をあげており、生前から死の脅迫を受けていたとのことです。

このように、自分たちの土地の権利や生活を守ろうと声をあげてきた先住民族や住民が殺害されるという超法規的処刑(Extrajudicial killings)は、さまざまな開発現場で起きています。国際NGOグローバル・ウィットネスの報告書「明日を守ること(Defending Tomorrow)」 (2020年7月)によれば、2019年に殺害された土地・環境擁護者は世界で212人にのぼるとのことです。そして、その犠牲者の数が一番多かったのが鉱山問題に関係するケースでした(50名)。

図3. 2019年に殺害された土地・環境擁護者の人数(左:国別/右:セクター別)
出典:グローバル・ウィットネス報告書「明日を守る(Defending Tomorrow)」 (2020年7月)p.9

資源集約的でない解決策を!

第6次エネルギー基本計画(素案)の中では、「気候変動や周辺環境との調和など環境適合性の確保」という項目があり、以下のようなことが書かれています。

「エネルギーの脱炭素化に当たっては、発電所の建設のための土木・建設工事のための掘削や建設機械の使用等に加え、EVや蓄電池、太陽光パネルなどの脱炭素化を支える鉱物の採掘・加工や製品の製造過程におけるCO2排出を考慮する必要もあり、エネルギー供給面のみならず、サプライチェーン全体での環境への影響も評価しながら脱炭素化を進めていく観点が重要である。」
「気候変動のみならず、周辺環境との調和や地域との共生も重要な課題であり、エネルギー関連設備の導入・建設、運用、廃棄物の処理・処分に際して、これらへの影響も勘案していく必要がある。」(p.18)

昨今、サプライチェーン全体で「責任ある鉱物調達」を目指すという方針やスローガンは、鉱山開発を行う川上の企業から、製品を組立て販売する川下の企業まで、大手の企業であれば、どこでも取り入れてきており、環境・社会・人権配慮が行われ、負の影響は回避あるいは低減される前提で開発が進められてきました。

しかし、上述のように既存の鉱山開発の現場では環境・社会・人権問題が解決されておらず、地域の環境と人びとが多大な犠牲を強いられてきた実態をみると、こうした素案の文言があったからと言って、「周辺環境との調和や地域との共生」が実現できるだろうと楽観的な気分にはなれません。今後、需要が高まる鉱物資源の確保を海外に依存し続け、さらに開発の場所を広げるのであれば尚更です。

気候危機への対処が急務で、化石燃料に依存した社会からの急速な脱却が必要であることは言うまでもありません。しかし、大量の電気を使い続けることが前提であれば、結果的に際限なく鉱物資源を掘り続け、そこで土地、環境、生活、命を奪うような開発を繰り返すことになるでしょう。

今、私たちが考えていかなくてはならないのは、エネルギーや電力需要自体を削減し、鉱物資源への依存を拡大する方向ではない社会システムへの移行ではないでしょうか。

  (波多江秀枝)

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「STOP!ニッケル鉱山拡張 in フィリピン」

今、フィリピンのパラワン島で日系企業が関わるニッケル鉱山の拡張計画が進もうとしています。水質汚染、自然保護区の解除など多くの問題が指摘されています。

バイオマス発電は大丈夫?――エネルギー基本計画の素案を読む(3)

再生可能エネルギーの一つとして導入が進められてきたバイオマス発電ですが、木質ペレットなど、燃料の多くは海外から輸入されています。需要の急増にともなって、貴重な天然林が伐採されたり、生物多様性が破壊されたりすることが問題となっています。気候変動対策という点からいっても、長い時間をかけて形成され、地上部にも地下部にも大量の炭素を貯留している森林を破壊してしまっては、かえって大気中の二酸化炭素を増やすことにもつながってしまいます。これでは本末転倒ではないでしょうか? 

地域の間伐材・未利用材では足りず、海外から燃料輸入…

バイオマス発電は、固定価格買取制度(FIT)により、促進されてきました。2012年のFIT施行前の導入量は231万kWでした。これにFITで認定されたものを加えた量は、2015年度末に601万kW、2019年12月には1,085万kWにまで急増しています(図1)。うち747万kWが「一般木質バイオマスおよび農産物残さ」(輸入木質ペレット・木質チップ、パーム椰子殻(PKS)など)およびバイオマス液体燃料(パーム油など)による発電で、その多くを海外に依存しているのです。

図 1. バイオマスのFIT認定量
出典:第6回バイオマス持続可能性ワーキンググループ(2020年8月4日)資料1

それでは、第6次エネルギー基本計画素案では、バイオマス発電についてはどのように書かれているのでしょうか?

「木質バイオマスを始めとしたバイオマス発電は、災害時のレジリエンスの向上、森林整備・林業活性化などの役割を担い、地域の経済・雇用への波及効果が大きいなど、地域分散型、地産地消型のエネルギー源として多様な価値を有するエネルギー源である。」(p.34)

確かに、FITの導入時には、地域の間伐材や未利用材を上手にバイオマス発電に使えば、林業が活性化し、森林整備にお金が流れ、「疲弊した山間地が活性化する!」という期待が大きかったことは理解できます。しかし、現状はそう甘くはありませんでした。

そもそも、地域の間伐材、未利用材の量には限界があります。5,000kW級のバイオマス発電所を稼働させるのには、年間約60,000トンの燃料(約10万立方メートル相当)が必要とされていますが、これは一つの県の木材生産量にも匹敵します(注1)。つまり、中規模以上のバイオマス発電所を稼働させるためには、地域の間伐材・未利用材ではまったく足りないのです。

また、林地残材は林地からの搬出コストが高く、大量に調達するためには広範囲から収集する必要があるため、運搬費がかさみます。

このため、ほとんどの大規模なバイオマス発電所は、安定的かつ大量に調達できる輸入バイオマス燃料を前提にして計画されているのです。

経済産業省にもそのような認識はあるようで、前述の続きとして、

「一方、エネルギー利用可能な木質や廃棄物などバイオマス資源が限定的であること、持続可能性の確保、そして発電コストの高止まり等の課題を抱えることから、森林・林業施策などの各種政策を総動員して、持続可能性の確保を大前提に、バイオマス燃料の安定的な供給拡大、発電事業のコスト低減等を図っていくことが必要である。」(p.34)

というようなことが書いてあります。しかし、ここで大前提としている「持続可能性の確保」は具体的には何をさすのでしょうか? また、どのように担保するのでしょうか? 

さらに、「持続可能」であるバイオマス燃料は、どの程度、存在しているのでしょうか? これが大問題です。

「持続可能性」はあいまいなまま

「持続可能性」というからには、少なくとも森林減少・劣化を引き起こしたり、生物多様性を破壊したり、人権侵害や労働問題などを引き起こしたりしてはいけないはずです。

しかし、現在、輸入されているバイオマス燃料の多くは、この点があいまいなまま残されています。

たとえば、日本の主要商社は、バイオマス発電用に年間数百万トンもの木質ペレットを、北米やベトナムから輸入しています。

図 2. 日本の木質ペレット輸入量
出典:財務省 普通貿易統計「品別国別表(HSコード4401.31.000)」よりFoE Japanが作成

日本の商社は、アメリカの大手ペレットメーカーであるエンビバ社、カナダのパシフィック・バイオエナジー社やピナクル・リニューアブル・エナジー社などと木質ペレットの長期売買契約を結んでおり、今後数年以内に輸入量はさらに数百万トン以上上積みされそうです(注2)。

しかし、アメリカやカナダで森林保全に取り組むNGOからは、これらの木質ペレット生産用の木材を得るため、湿地林や天然林が皆伐され、貴重な生態系が破壊されたことが報告されています。企業は「もっとも持続可能な原料を利用している」などと説明していましたが、ペレット工場に次々に丸太が運び込まれている様子が写真入りで報告されています。

貴重なカリブー(トナカイ)の生息地である森林にも伐採が及んでいます。

写真:パシフィック・バイオエナジー社のペレット工場に丸太を運び込むトラック © Dominick DellaSala

写真:木質ペレットの原料生産のために伐採された湿地林(アメリカ・東南部)©Dogwood Alliance

マレーシアやインドネシアから輸入したパーム油も、バイオマス燃料として、発電所で燃やされています。パーム油の需要急増は、原料となるアブラヤシ生産のための農園拡大により、熱帯林減少の原因になるのに加え、先住民族や地域住民の土地や森林を農園にしてしまったり、農園における労働問題が発生したりといった社会的な問題も指摘され続けています。持続可能性が確認されたRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証油を使うとしている企業もありますが、RSPO認証油は供給量に限界があり、食品など従来用途の需要を満たすのに精いっぱいではないでしょうか。

現在、FITの事業計画策定ガイドラインでは、燃料の持続可能性については触れられているものの、具体性がなく、とりわけ木質バイオマスに関しては、第三者機関による認証制度だけではなく、事業者団体による認定や、企業の独自による確認でも足りることになってしまっています(注3)。

そもそもCO2を削減できるのか?

バイオマス発電の促進により、本当にCO2削減ができるのかどうかにも疑問があります。

前述の通り、バイオマス燃料の生産段階において、森林減少・劣化が生じることも多く、その場合、森林や土壌に貯蔵されていた炭素が、CO2の形で大気中に排出されてしまいます。つまり、バイオマス発電の促進が、地表での重要な炭素ストックである森林や土壌を破壊し、むしろCO2排出の原因となってしまうのです。

破壊された森林が元の状態に回復しないこともありますし、回復したとしても、数十年以上かかることが多く、それまでは森林・土壌に固定されていた炭素が燃焼により大気中に放出されるため、大気中のCO2が増加した状態となります(注4)。

バイオマス事業がある場合、ない場合双方における、
一定期間後のCO2の蓄積変化の概念図

森林は森林のまま、「炭素の貯蔵庫」として、また、生物多様性保全のために、そのまま維持していくことが重要なのではないでしょうか?

森林を破壊せず、地域の間伐材・未利用材や廃棄物系によるバイオマス発電がどのくらい可能なのか。これについては慎重に検討する必要があります。

また、バイオマス発電の発電効率は化石燃料と比べても低いため、発電よりも熱利用の方を追求するべきではないでしょうか?

現在のエネルギー基本計画は、2030年における電源構成目標としてバイオマス発電を6-7GWとしています。第6次のエネルギー基本計画においては、さらに拡大して8GW+αとしています。しかし、上記の観点から、バイオマス発電は、廃棄物系、地域の間伐材・未利用などでまかなえる規模とし、熱利用を検討すべきでしょう。

(満田夏花、小松原和恵)

参考)バイオマス発電のFIT認定容量(2021年3月末時点)
メタン発酵ガス:107,807kW
未利用材:561,384kW
建設廃材:94,210kW
一般廃棄物・木質以外:460,251kW
上記合計 1,223,652 kW (1.2GW)
一般木質・農作物残さ:6,738,709kW(6.7GW)「一般木質・農作物残さ」の多くが輸入燃料と考えられます。農作物残渣は、PKS(パーム椰子種子殻)です。

注1)田中淳夫(2019)「絶望の林業」

注2)商社等の木質ペレットの主な長期購入契約は下表参照。

出典:サプライヤー等のウェブサイトよりFoE Japanが作成

注3)FITの「事業計画策定ガイドライン」においては、パーム油、PKSなどの農産物の収穫に伴って生じるバイオマス燃料については、主産物・副産物を問わず、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)、RSB(持続可能なバイオマスのための円卓会議)といった第三者認証制度によって持続可能性が認証されたものでなければならないとしています。一方で、木質バイオマスについては、具体的な認証については記述されておらず、詳細は、林野庁による「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」を参照することとしており、当該ガイドラインでは、第三者認証のみならず「関係団体による認定」「個別企業の独自の取組」も併記しています。

注4)IPCCの報告書の著者をはじめとする科学者796名は、バイオマスエネルギーのために木を伐採すると、森林に貯留されている炭素が放出されること、たとえ森林が再生したとしても、大気中の炭素が数十年から数世紀にわたって増加することを指摘。さらに世界のエネルギーの3%を木材によって発電するとなると、世界の商業伐採量を現在の2倍にしなければ賄えないと警告しています。

“Letter From Scientists to the EU Parliament Regarding Forest Biomass”, 9 January 2018

「カーボンニュートラル」は現状追認?!ーエネルギー基本計画の素案を読む(1)

現在、経済産業省の審議会で「エネルギー基本計画」の改訂が議論されています。「エネルギー基本計画」は3年に一度改訂されるもので、先日第6次計画の「素案」が発表されました。今後「原案」が作成され、その後国民から広く意見を募るパブリックコメントのプロセスが開始されるとみられます。

このブログでは第6次エネルギー基本計画(素案)について、「カーボンニュートラル」というテーマでその中身や問題点をみていきます。

2050年カーボンニュートラル

素案の前文には、「第六次のエネルギー基本計画は、気候変動問題への対応と日本のエネルギー需給構造の抱える課題の克服という二つの大きな視点を踏まえて策定する」と書かれています。また「世界的な状況も踏まえ、我が国は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を目指すことを宣言するとともに、2021年4月には、2030年度の新たな温室効果ガス削減目標として、2013年度から46%削減することを目指し、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けるとの新たな方針を示した。」とあります。

FoE Japanも含め多くの環境NGOは、先進国たる日本は、2030年に少なくとも60%の温室効果ガスの削減、2050年よりも早期に排出ゼロに近づけていくことを求めていますが、それでは、どのようにカーボンニュートラルを達成するのでしょうか?

化石燃料を脱炭素化?!

注目されるのは火力発電の扱い、特に石炭です。パリ協定の、世界の平均気温上昇を産業革命前に比べて1.5℃までに抑える目標を達成するためには、先進国は2030年までに石炭火力発電所を廃止しなくてはならないとされています(注1)。

しかし素案では、「火力発電から大気に排出されるCO2排出を実質ゼロにしていくという、火力政策の野心的かつ抜本的な転換を進めることが必要である。(p.25)」「脱炭素型の火力発電への置き換えに向け、アンモニア・水素等の脱炭素燃料の混焼やCCUS/カーボンリサイクル等の火力発電からのCO2排出を削減する措置(アベイトメント措置)の促進(中略)に取り組む。(中略)非効率な石炭火力については、(中略)最新鋭のUSC(超々臨界)並みの発電効率(事業者単位)をベンチマーク目標として設定する。」(下線部筆者、p.74)

としています。つまり、化石燃料を使い続けながら、CO2排出を削減するとしているのです。化石燃料を脱炭素化する、という言い方も矛盾する表現ではないでしょうか。石炭に関しては、バイオマス混焼やCCS付きの石炭火力(発電所から出る温室効果ガスを回収し利用もしくは貯留する技術)の存続を許しているのみならず、非効率と定義したものだけを廃止する計画です。バイオマス発電はカーボンニュートラルとみなされがちですが、現状日本で利用されている多くのバイオマス燃料は海外からの輸入に頼っており、運輸の面で見てもカーボンニュートラルではありません(詳しい解説は下記動画もご覧ください)。またCCSはコストも高く、全ての温室効果ガスを回収できるわけでもないため気候変動対策としてまったく不十分です。

また、アンモニアや水素への過度の期待も気になります。素案の別の箇所を見ると、天然ガスに関する記述の中に「将来的には、燃焼してもCO2を排出しない水素・アンモニアの原料としての利用拡大が期待され、カーボンニュートラル社会の実現後も重要なエネルギー源である」(p.35)と書かれています。

しかし、実際、現在世の中に流通しているアンモニアの多くは天然ガスから作られています。「燃焼時」には温室効果ガスを排出しないかもしれませんが、生成時や運搬時には温室効果ガスを発生させます。実際、水素生産により年間8億3,000万トンのCO2が排出されており、アンモニア生産には約4億2,000万トンが排出されています。これを合わせると世界の温室効果ガス(GHG)年間排出量の約2%を占めます(注2)。

素案ではまた、「余剰の再生可能エネルギー電力等から水素・アンモニアを製造することで、脱炭素電源のポテンシャルを最大限活用することを可能とするだけでなく、CCUSと組み合わせることで、化石燃料をクリーンな形で有効活用することを可能とする。」(p.36)としていますが、現状ではいわゆる天然ガスから作る水素・アンモニアが供給の多数をしめる中で、再エネだけでつくるグリーン水素の供給はあってもごくわずかです。そもそも、アンモニア混焼や水素を石炭と混焼させて発電する技術は開発段階で、実用化されているわけではありません。CCS/CCUS(二酸化炭素回収貯留・利用)も、回収した二酸化炭素を貯留する場がないことやコストが見合わないことなどから日本で実用化の可能性は低いと言われています(注3)。水素・アンモニアの推進は化石燃料のフェーズアウトを遅らせかねません。

事例:JERAが進める「ゼロエミッション火力」

中部電力と東京電力の合弁会社であるJERAは日本最大の石炭火力発電事業者です。水素・アンモニアを「ゼロエミッション火力」として推進する動きは、昨年10月のJERA(東京電力と中部電力の合弁会社)が2020年10月に公表した「JERAゼロエミッション2050」でも明らかです。この構想の中でJERAは、2050年までのネットゼロを目指し、ゼロエミッション火力の普及と洋上風力発電事業を柱とする計画を打ち出しています。また、「2050年時点で専焼化できない発電所から排出されるCO2はオフセット技術やCO2フリーLNG等を活用」としています。

アンモニア火力については、2040年代にアンモニアによる専焼を開始、2030年代前半から既存の石炭火力への20%混焼を達成、そして2030年までに排出源単位あたりのCO2排出量を20%減らす、という計画です。

この戦略の一環として、2024年より、愛知県碧南市の火力発電所で既存の石炭火力発電所1、2号機(いずれも100万kW)の発電基に20%のアンモニア混焼の実証実験が行われますが、100万kWの発電機で20%のアンモニア混焼の場合、50万トンものアンモニアが必要になります(実証実験では100万kW2基なので、合計100万トン)。つまり、碧南での実証実験基を100%アンモニア専焼にするだけでも500万トンのアンモニアが必要になります。また、もしJERAの石炭火力すべてを2030年代にアンモニア20%混焼とする場合は516万トン(USCのみの場合446万トン)のアンモニア、2040年までにアンモニア専焼とする場合2580万トン(USCのみの場合2230万トン)のアンモニアが必要となります。しかし、現状日本でのアンモニアの消費量は100万トンであり、碧南での実証実験で必要なアンモニア量に匹敵します。仮にJERAが石炭火力全機をアンモニア専焼を実現するには、現状の22〜25倍のアンモニアが必要になるのです。

また、この「ゼロエミッション2050」の影で進められているのが、横須賀石炭火力発電所の建設です。同事業は、2023年に新1号機、2024年に新2号機が稼働開始が予定されていますが、JERAに説明を求めても、「実証実験の結果次第、順次アンモニア混焼を進める」という説明で、横須賀火力発電所がいつゼロエミッション火力になるのかは明確に説明されていないままですし、同混焼技術が商業的に確立していない技術であることも伺えます。また、仮に商業的に今後確立されたとしても、化石燃料由来のアンモニア燃料である限り、ゼロエミッション火力とはいえません。

この「JERAゼロエミッション2050」は、まさに解決を先送りにさせる「ネットゼロ」の典型例といえます。

ネットゼロはノットゼロ

カーボンニュートラルやネットゼロとは、人為的な温室効果ガスの純排出量(絶対量)から森林などによる吸収源による吸収量を引いた量を指します。

すでに大気の二酸化炭素の濃度が420ppm近くになっています(注4)。人類にとって安全とされるCO2濃度は350ppmまでとされます。CO2は排出されるとしばらく大気に留まることを考えれば、気候危機を食い止めるためには「人為的な温室効果ガスの追加排出量」をいかに抑えるかが問題です。

ネットゼロシナリオでは、どれだけ吸収量を見込むかによって、どれくらいの追加排出量が許されるのかが変わってきます。10-10も100-100もゼロですが、100の温室効果ガスを回収するより10の温室効果ガスを回収する方がはるかに楽でコストがかかりません。大規模植林は、土地の確保や生物多様性の面から懸念があります。CCS・DACなどの実用化されていない技術によって大気中の温室効果ガスの除去を見込んでいるのであれば(本当に除去できるのかにかかわらず)、それだけ排出量も追加的に増やせることになってしまいます。温室効果ガスの排出量をなるべく早く、真の意味で可能な限りゼロに近づけていく努力が求められている中、アンモニアや水素、CCSを使ってネットゼロを達成しようというシナリオは気候変動対策にならず、むしろ解決策を先送りにし、既存の化石燃料依存社会を維持してしまうことになります。

「ネットゼロ」政策で問われるべき点

  • いつまでに、どの種類の温室効果ガスを(絶対量で)どれだけ減らすのか?
  • 達成のためにどのくらいの量の温室効果ガスを除去するつもりなのか、またどのような技術に依存しているか?
  • 現在から「ネットゼロ」の目標達成日までに、累積の追加排出量は合計いくらと想定されるのか?
  • 企業や政府はどうなったらネットゼロが達成されたと宣言できるのか?
  • ネットゼロシナリオに「オーバーシュート(気候変動が不可逆的に加速する1.5°Cを超えてしまうこと)」を想定しているか?
    ( ”NOT ZERO: How ‘net zero’ targets disguise climate inaction”を参考に作成)

今、私たちに求められているのは、実用化の目処も立たずコストも高い技術への投資や拡大ではなく、化石燃料の確実なフェーズアウトと、省エネや大量消費・大量生産を軸とした社会からの転換ではないでしょうか。

(深草亜悠美・高橋英恵)

「地元の石炭火力のこと、もっと多くの人に知ってほしい」横須賀市民アンケート(後編)

今年4月、横須賀市と三浦市内の6つの地域で、それぞれの地域に住む住民の方の手によって、気候変動や石炭火力建設についての意識を調査するアンケートが行われました。

今回は、アンケートに関わった大木さん(野比在住)、竹渕さん(岩戸在住)にお時間をいただき、なぜアンケート活動を実施しようと考えたのか、アンケート活動を進める中でのエピソード、そしてこのアンケートに込める思いを伺いました。

(アンケートの結果については、「横須賀市民アンケート(前編)「約64%の方が石炭火力建設反対」をご覧ください。)

アンケート活動のきっかけを教えてください

大木さん

「2020年11月、コンビニの中でばったり、2年ぶりくらいに岸さんという友人に会ったんです。そこで10-15分立ち話をして。その時に、彼女から石炭火力が新しく作られていることを知ったんです。大昔に石炭火力があったのは知っていたんですが、新しい石炭火力がたつとは知らなかった。そのあと、新聞などで自分で調べていくうちに、石炭火力を止めるための訴訟をやっていることとか、全国の石炭火力発電所のあるところでアクションがあることを知ったんです。グレタの言葉も知って、なんとかしないと、と。あと、私はずっと楽器店で働いていて、音楽教室の運営をしていたのですが、コロナの影響で仕事がなくなってしまって。今年に入って仕事を探していたけれど、なかなか見つからない。でも、この石炭火力のことをもっと多くの人に知って欲しいという気持ちも強くて、とりあえず多くの人に知ってもらうために時間を使おうと思ったんです。。というのも、自分が岸さんから石炭火力の話を聞いたとき自分が石炭火力を知らない人間だったので、知らない人がいっぱいいるのではと。

竹渕さん

「石炭火力については、前から横須賀火力建設を考える会(横須賀石炭火力問題について活動している団体)の内藤さんからよく話を聞いていて、逗子でのイベントにも参加したりしていました。何か力になりたいと思い、途中から原告にもなっています。でも、石炭火力についての危機感をもっと強くしたのは、2020年1月の野比での気候変動の勉強会。COP(気候変動に関する国際会議)やグレタの話を聞いて、本当に止めないといけないんだと感じたんです。何かできないかと色々考えていた時に、ハイランド(横須賀石炭火力発電所の建設地の近くの地域)での石炭火力についての意識調査アンケートを知って。でも、このアンケートがハイランドだけで終わったらまずいと思い、アンケートを広げないかと仲間に相談して、そこでやろうということになりました。」

どのようにアンケートを進めたのでしょうか?

大木さん

「1月半ば、アンケートをやりたい人たちで集まりました。その時は、野比、岩戸、佐原の3地域から集まり、まずは自分たちの住んでいる地域で広めようと。でも、地元の知り合いに声をかけてみたら、他にもやりたいという人が増えてきて、バラバラでやるのはもったいないと思ったので、まとまってやろうということになりました。2月半ばには、横須賀火力建設を考える会とも一緒にやろうということになって。アンケートを始めようとした時は3地域30人くらいだったのに、進めていくうちに6つの地域(野比、岩戸、佐原、長沢・津久井・グリーンハイツ、三浦、その他横須賀市内)で112人になったんです。たくさんの人が関わってくれるのはとても嬉しくて。」

アンケート活動の中での苦労はありましたか?

竹渕さん

「私は岩戸に住んでいるので、岩戸でのアンケート活動をしていました。石炭をどうにかしたいと、自発的に25人くらいが集まったんです。10代も3人いたし、80代の方も孫のためになんとかしたいと主体的に関わってくれました。また、初めてこのような活動をするという人も2人加わってくださったんです。とはいえ、アンケート用紙を地元でポスティングすることは、みんなにとってハードルの高いものでした。2つのハードルがあったと思っていて、一つは高齢化。体力的な問題で、階段の多くある世帯などにはポスティングをあきらめました。

もう一つは人の目。「出るくいは打たれる」でないけど、周りがやっていないことへの抵抗は大きかったのだろうなと思います。どれほど彼女たちにとってチャレンジングだったか。」

アンケート活動中の思い出は?

大木さん

「地元のパン屋に買い物に言った時、『アンケートお疲れ様。絶対反対。協力します』とパン屋のオーナーさんがコメントしてくれたこと。あ、見てくれている人がいるんだ!って思ったんです。」

竹渕さん

「直接手渡しできた人には対話ができて、思いが同じとわかったときは嬉しかった。もっとこのアンケートを大きくしなきゃ、と大きなモチベーションになった。知らなかった人に知ってもらえるっていうのはやりがいとして大きかった。」

4000通以上もの回答がありましたが、集計中に気づいたことや感じたことはありますか?

大木さん

「自由記述が多かったのが印象的でした。野比のあるアンケートには、筆圧強く「がんばれ」とかいてくれている人もいたんです。また、アンケートの回答用紙と一緒にカンパもくださる方も。読みながらうるうるしてしまいました。見てくれている人がいる、このアンケートの声を国まで届けに行かなくちゃと。横須賀出身の小泉大臣に直接読んで欲しい。あと、アンケートを配っていない地域でも、アンケートの結果を伝えたい、世論を作りたい、国が無視できないくらいに。」

竹渕さん

「岩戸では高齢者が多く、パソコン作業をあまりやったことがない人が多かったけれど、パソコンでの打ち込み作業を紹介し体験もしてもらいました。そして出来上がった集計結果と自由記述はアンケートを配って回ったみなさんと共有しました。自由記述のコメントの中には、元気の出るコメントもある反面、凹むコメントもありました。懸念していることは、『ゼロカーボンになるからいいじゃない』という考えが広がること。とても怖く感じています。解決策は自然エネルギーだということを伝えたい。2050年にCO2排出ゼロになっていればいいというのは遅い。どうにかしたいと思いましたね。」

横須賀は将来、どのようになっていくことを希望しますか?

大木さん

「私は横須賀で生まれ育った。故郷なので、住み続けられる海とか山とか、自然の恵みを未来の子どもたちに引き継ぎたい。横須賀は自然が豊富。横須賀や三浦半島にあった自然エネルギーの方法を探して、地産地消や地域産業として成り立つような使い方があるはず。」

竹渕さん

「大木さんの言う通り、今のままだと横須賀のいいところが活かしきれていないと思う。野比には研究開発の先端地域として大企業の研究機関が来ているけれど、自然エネルギーの研究開発拠点になれば、自然エネルギーのモデル都市にもなれるはず。そうすれば、誰もが住みたくなるのでは。」

最後に

新型コロナウイルスの感染拡大予防のために大きな集会などが実施できない中、一人一人が地域の各戸に自分の足で歩いてアンケート用紙を配っていくという改めて地域で運動することで生まれる連帯感の強さを感じました。

大木さん、竹渕さんのお話を伺う中で、「地元で作られている石炭火力について、皆で考えたい」という思いが伝わってきました。行動が制限される中であるにもかかわらず、自らの足で配布した122人に敬意を評したいと思います。

FoE Japanでは引き続き、石炭火力の建設中止を地域住民の方と共に求めていきます。

(高橋英恵)

「約64%が石炭火力建設反対」横須賀市民アンケート(前編)

今年4月、横須賀市と三浦市の6つの地域で、それぞれの地域に住む地元住民の方の手によって、気候変動や石炭火力建設についての意識を調査するアンケートが行われました。

今回は2回にわたって、第一回はアンケートの結果を、第二回はアンケートに関わった地元の方の声を紹介します。

回答者の3割、いまだ石炭火力新設を知らず。

アンケートは3月下旬から4月上旬にかけて配布され、4月20日が回収締め切りでした。

配布地域は建設地に近い久里浜、野比、北下浦、岩戸を中心に横須賀市全域と三浦市です。

配布数は 25,620 枚、回収数は 4,074 枚、回収率 15.9%でした。

アンケートの質問は、下記の5点です。

1. 久里浜で石炭火力発電所が建設されていることをご存知ですか?(知っていた/噂程度に知っていた/知らなかったから3択)

2.石炭火力による、温暖化や気候変動への影響をどうお考えでしょうか?(影響ない/影響あり/わからないから3択)

3.石炭火力による、健康や生活環境への影響をどうお考えでしょうか?(影響ない/影響あり/わからないから3択)

4. 石炭火力発電所建設についてどうお考えでしょうか?(建設すべき/やむをえない/建設反対/わからないから4択)

5. 将来の望ましいエネルギー源は?(原子力/石炭、LNG、石油/再生可能エネルギー/わからないから複数回答可)

結果、久里浜で石炭火力発電所が建設されていることを知っていたのは45.2%、噂程度に知っていたのは25.1%、知らなかったと回答したのは29.7%でした。建設を知らなかったとの回答が3割弱あり、周知の徹底ができていなかったことが伺えます。

また、石炭火力が気候変動に影響があると考えている方も80%近くおり、健康や生活環境への影響についても、影響があると考える方が約75%いらっしゃいました。

気候変動や生活環境への影響を聞いた上で、石炭火力発電所の建設の可否について考えを尋ねたところ、4.7%の方が建設すべき、約20%の方がやむをえない、約64%の方が建設反対、残りの約11%はわからないとの回答でした。

最後の将来の望ましいエネルギーについては、再生可能エネルギーが全体の約77%、化石燃料や原発を選んだ方それぞれ全体の約8%いらっしゃいました。

自由記述欄の記入数が 1755 通

また、自由記述欄への記入数が 1755 通、回収数の 43.1% と半数に近くもあり関心の高さが示されました。

例えば、問4で「建設すべき」と回答された189名中120名から自由記述に記入があり、「原発が信頼を失った以上、火力発電のほかない。再エネですべて賄えない」「再エネに頼るのはダメ。分散してリスクを低減すべき」「原子力よりましであると思う」「火力発電がなくては便利な生活を出来ない」といった意見が見られました。

一方、「建設反対」と回答された2568人中1166名と約45%の方が自由記述に記入があり、「世界の潮流に逆行」「アレルギーがあり大変不安。建設されたら横須賀から引っ越しを考える」「小泉環境大臣のお膝元このような計画が進行中とは嘆かわしい」「市民の知らないとことで工事が進んでいることに疑問を感じる。ショック。市民として悲しい。」などの意見でした。

また、「やむをえない」「わからない」と回答した人の自由記述は、「もう建設が進んでいる。今更反対しても止まらない」「具体的にどんな問題があるかわからない」というようなものでした。

現実とアンケート結果のギャップ

横須賀市内の石炭火力発電所の建設地域付近の地域や三浦市内の6つの地域で実施した今回のアンケートは回収率は約16%であるものの、回答者全体の6割以上が建設反対という結果となりました。また、石炭火力と気候変動の関係、石炭火力と生活環境や健康との関係に影響があると認識されている方も7割以上ということもわかり、住民の中にはこの事業に懸念を持っていることが明確になったことは、とても大きな成果です。

アンケートの自由記述にも、「環境大臣はなぜ地元の石炭火力を止めようとしないのか」「世界に逆行している石炭火力をなぜ今更作るのか」という声が多く見られました。一方、「再生可能エネルギーだけでは不安定なのでは」「建設が進んでいる以上もう止められない」と悲観的なコメントもありました。地域住民の声を聞かずに建設を進め、諦めを感じさせるやり方には、憤りを覚えます。

また、横須賀石炭火力発電所の事業者であるJERAは昨年10月に「JERAゼロエミッション2050」をうちだし、2030年までに発電原単位あたりのCO2排出量を20%減、2040年までにアンモニア専焼を目指すとしていますが、この横須賀石炭火力発電所をどのようにゼロエミッションにしていくのかは公開されていませんし、そもそもJERAが検討している化石燃料からアンモニアを製造する方法は、炭素回収貯留(CCS)という不確実な技術に頼ったもので、真の脱炭素燃料とは言えません。

さらに、今年6月に開催されたG7首脳会合においては、「石炭火力発電が温室効果ガス排出の唯一最大の原因である」ことを認識し、「国内的には、我々は、2030年代の電力システムの最大限の脱炭素化を達成すること、また、それを更に加速させる行動にコミットする」と明記しています。気候変動をさらに加速させる石炭火力を建設・稼働する余裕はどこにもないはずです。

後編では、アンケート活動に関わった方に、アンケートに至った経緯、活動に込めた想いを伺います。

(高橋英恵)