台湾の脱原発に「待った」!?脱原発政策の行方

 

 昨年2018年、台湾の「2025年に原発ゼロ」政策の是非を問う国民投票が実施され、投票者の過半数が政策廃止に投票しました。今、台湾で何が起きているのか。一橋大学博士課程在籍で、地球公民基金研究員のダン・ウィジさんにお話を聞きました。

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 台湾には2011年の東電福島事故以前から脱原発運動がありましたが、2000年以降沈静化していました。しかし、福島第一原発事故をうけて、再び論争が白熱化し、運動は盛り上がり、最終的に2025年までに原発ゼロにするということが決定されました(法制化された)。

 台湾は、九州と同じくらいの面積で、4箇所の原子力発電所があります。首都台北から近いところに第1、第2原発があり、台湾南部に第3原発があります。1980年代、台北の北部に第4原発建設計画が浮上。それは台湾の民主化運動の盛り上がりの時期とも重なっています。

 2002年、環境基本法に脱原発社会を構築すると明記されました。しかしいつまでに脱原発社会を実現するかについては、定まっていませんでした。福島事故後、「2025年」というタイムラインが書き込まれました。

 2018年、「2025年原発ゼロ政策を撤回」すべきかどうかという国民投票が行われ、投票率54%、賛成が589万票、反対が401万票で、賛成多数で政策撤回が決まってしまいました。

 もともと2025年までに原発ゼロというのは野心的な目標ではありませんでした。現存する原発を40年間運転して、延長稼働しなければ、2025年には自然に原発ゼロとなるからです。ただ、見方をかえると2025年の電源構成には再エネ20%が含まれており、2016年時点で再エネが5%であることを考えると、再生可能エネルギーが原発に代替できるのかということに関しては不安がありました。

 では、なぜこの短期間の間に脱原発に向かい風が吹いたのか?

 背景として、民進党政権への不満が高まっていました。じつは今回の国民投票は、脱原発だけが議題ではありませんでした。10件の国民投票と地方統一選が同時に行われました。

 民進党政権は、エネルギーシフトに加え、年金改革や同性婚の認可を政策として進めてきました。そういった課題に対して、国民党を含め保守勢力は大きく反発し、国民投票で民進党政権の政策に反対しようと乗り出しました。

また、政権の実績に対しても、とくに経済政策がうまく行っていないという世論があり、一般国民の間でも現政権に対する反感が高まっていました。

 そこで、政権全体への信を問うも同然のような10項目の国民投票が浮上してきたのです。

 そこには、もう一つ背景があります。2017年に国民投票法が改正され(これも民進党政権肝いりで実現した)、国民投票の実施のハードルが下がっていました(有権者の1.5%が署名したら実施できることに。もともと5%だった)。皮肉ですが、民進党政権が進めた国民投票法改正が、保守陣営にうまく利用され、自分たちが自分たちの改革に飲み込まれた側面がありました。

 民進党が進めようとする同性婚政策を問う国民投票も反対多数で可決されました。地方統一選においても民進党は大敗を喫し、今回の投票結果は、エネルギーシフトや脱原発に民意が支持しないというよりは、民進党政権への不満の結果としてあらわれた現象とみたほうが妥当だと思います。

 また、政権側の対応も、後手に回りました。政策の一つである同性婚に関しては、とくに保守派の反対が強く、民進党が繊細な課題への意思表明を避けたかったため、原発についても強くでることができませんでした。

 さらに、議題提案者(台湾核エネルギー学会が主導した「以核養緑」国民投票運動が議題提起、表のリーダーは原子力支持任意団体(「核能流言終結者」)が務める。)が、エネルギーシフトの課題を壁として見せることに成功していました。つまり、脱原発政策を支える代替案がちゃんと整備されていないことを声高に叫びました。

 また、大気汚染問題に関する世論がとくに昨年から盛り上がっていました。脱原発を進めたため、火力発電が増やされ、大気汚染が深刻化したという論調が飛び交いましたが、原発が即時停止されたわけではなく、これは明らかに事実と異なります。しかし、こうした言説は、大気汚染問題が深刻な台中市や高雄市で国民党の市長候補者が選挙戦にとり入れたため、一気に広がりました。

 さらに、問題だったのはカンニングペーパー効果です。国民投票は発議されてから1ヶ月以内に投票が行われなくてはいけません。これでは十分な議論の時間ができません。内容をきちんと理解した上で投票した人はほんの一握りでした。

 ではみんな何に頼って投票したのか?SNSにどの議題になんと答えるかの解答例が出回りました。それに頼って投票した人が多かったのです。脱原発=大気汚染推進という画像も出回りました。フェイクニュースです。

 投票提起者は、これが脱原発法を削除する国民投票であると言わず、これは「以核養緑」のための投票だと説明していました。すなわち、再エネの普及は時間かかるので、2025年までに再エネ20%、LNG50%、石炭30%というエネルギーミックスは無理があり、なので原子力をもっと活用して、再エネの健全な普及を図ろうという意味です。

 (ちなみに、国民投票請求のための署名集めの最中には核エネルギー学会と東電が主催で「東電再建の道」という廣瀬直己会長講演会も行なっていたとのこと)

 実際にこの決定がどのような影響を及ぼすのでしょうか?

 第1・第2原発に関しては、運転延長期間の申請は間に合いません。第3原発は可能ですが、地方自治体首長は否定しており、活断層の問題もあります。第4原発は工事再開のために予算編成が必要です。

 現在、原発擁護派は第4原発の是非を問う国民投票を目論んでいます。また環境団体の説明会に乱入して、嫌がらせすらしています。

 今後、脱原発派は原発安全問題をもっと主張していくつもりです。日本で震災が起きてから8年。台湾でも記憶が薄れつつあります。原発事故の状況についても、引き続き台湾に伝えていく必要があります。

 また、自分たちの活動に資するような、今回の国民投票に対して対抗的な国民投票も考えています。

(聞き手・書き起こし:深草亜悠美)

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People Power!! きれいな空気をもとめる千葉・首都圏の市民の声が後押しに!

プレスリリース

People Power‼
きれいな空気をもとめる千葉・首都圏の市民の声が後押しに!
JFEスチールと中国電力、蘇我石炭火力発電所計画を中止に

[PDFはこちら

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12月27日、中国電力株式会社並びにJFEスチール株式会社は、千葉市蘇我地区で計画していた「(仮称)蘇我火力発電所建設計画」(107万kW、2024年運転開始予定とされていた)を中止し、天然ガス火力発電所共同開発の事業実現性検討に着手することを発表しました[1]。中止の理由について、「本計画は十分な事業性が見込めない」とホームページ上で公表しています。FoE Japanは、連携する地元団体や環境団体とともに、その決断について歓迎します。

本計画に対しては、2017年4月に発足した蘇我石炭火力発電所計画を考える会(蘇我の会)を中心に、地道なチラシの配布や駅頭での呼びかけ、手配りによるアンケート、千葉市や千葉県の環境委員会等の傍聴や意見提出、事業者本社への働きかけなどなど、ダイナミックに活動してきました。東京湾の他の計画地の市民団体や、気候ネットワークやFoE Japanなどの環境団体もその動きと連携してきました。

しかし、事業者は環境影響評価の手続きを進め、2018年1月には環境影響評価方法書を公開していました。方法書に対しては、住民説明会などでも反対の声が大きくあがりました。

・住民団体が指摘していた本計画の問題点:
(1)気候変動問題に対して世界の脱石炭の潮流に逆行していること
(2)大規模な石炭火力発電所は最新の設備であっても大気汚染物質を拡散(SOxやNOx、PM2.5、水銀など)、その影響は広範囲にわたること
(3)現在すでに粉じんの降下があること
(4)真横にサッカースタジアムもあり、周辺に学校や病院なども多いこと

今回の事業者の決断にあたっては、地域住民や環境NGOからの度重なる要請やアクションなどさまざまな形での声が、無視できない大きさであったことも後押ししたと考えられます。市民の力、People Powerの勝利です。

FoE Japanでは2018年11月、蘇我の会のメンバーにインタビューをし、その声の一部を映像とインタビューにまとめていますので、ぜひご覧ください。
●映像『日々のくらしの裏側で〜千葉県千葉市 蘇我〜』http://www.foejapan.org/climate/nocoal/soga.html

●インタビュー記事
【日々のくらしの裏側で – vol.5】企業の懐柔策に埋もれる蘇我住民の声(渡辺敬志さん)https://foejapan.wordpress.com/2018/12/19/soga_1/
【日々のくらしの裏側で – vol.6】残すべき未来のために、一筆一筆の力を信じて(山崎邦子さん)
https://foejapan.wordpress.com/2018/12/26/soga_2/
【日々のくらしの裏側で – vol.7】一人のサッカーファンの願い(品田知美さん)https://foejapan.wordpress.com/2018/12/27/soga_3/
【日々のくらしの裏側で – vol.8】本当に向き合うべき相手とは。JFEと中国電力だけではないもう一つの壁(小西由希子さん)
https://foejapan.wordpress.com/2018/12/28/soga_4/

しかしまだ、日本には石炭火力発電所の新規建設計画が34基あります[2]。東京湾にも袖ケ浦、横須賀の計画が残っています。FoE Japanは、「事業性がない」ことがすでに明らかとなっている石炭火力発電について、その他の計画も中止としていくことを求め、引き続き地元の市民とともに声をあげていきます。

<関連情報>

・石炭火力を考える東京湾の会:蘇我火力問題の関連ニュース
https://nocoal-tokyobay.net/tag/chiba/

・FoE Japan:電力自由化の負の側面?石炭火力の新規計画ラッシュ!
http://www.foejapan.org/climate/nocoal/index.html

・蘇我にもう発電所はいらない—「公害」の歴史ある土地で進むあらたな建設計画
(2017年10月記事)
https://foejapan.wordpress.com/2017/10/16/soga/

国際環境NGO FoE Japan
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9
03-6909-5983   info@foejapan.org

[1] 中国電力ほかプレスリリース(2018年12月27日)
「石炭火力発電所共同開発の検討中止と天然ガス火力発電所共同開発の事業実現性検討着手について」http://www.energia.co.jp/press/2018/11571.html

[2] 石炭発電所ウォッチ(気候ネットワーク) https://sekitan.jp/plant-map/

 

COP24閉幕 – 公平性に欠けるパリ協定の実施指針、気候変動への行動強化にも繋がらず

12月2日から開催されていた第24回気候変動枠組条約締約国会議(COP24)は、予定していたよりも1日遅い15日に終了しました。

何が期待されていたのか?

今回のCOPで期待されていたのは、気候変動行動強化に関する主な2つの点です(開幕時の論点整理はこちら)。

一つはパリ協定の実施指針(ルールブック)の合意、そして二点目は、各国の気候変動への国別目標(NDC)の強化です。今回のCOP24は、気候変動の緊急性と行動強化の必要性を示したIPCC1.5度特別報告が2018年10月に発表されてから初めて開催されたCOPであることから、2023年の各国の気候変動取り組みの進捗を確認し合うグローバル・ストックテークに5年先立ち、各国が目標強化の取り組みなどについて議論するために設けられた促進的対話(タラノアダイアログ)などを通じて各国の気候変動への国別目標(NDC)の強化が期待されていました。

ルールブックはどうなった?

一点目の主要点であるルールブックにおいては、残念ながら、先進国の気候変動への歴史的責任はほぼ削られる結果となりました。

途上国はルールブック作りにも公平性・共通だが差異ある責任の原則の適用を主張し、NDCに関しても緩和中心ではなく、適応などその他の要素も含めるべきだと主張していました。結果的に、緩和については必須ですが、適応などその他の項目は、NDCに含めたい国は含めることという形になりました。

「透明性枠組み(各国の気候変動対策の取り組みの報告に関する枠組み)」では、各国は2年ごとに各国の排出目録と取り組みの進捗レポートを提出することになります。提出フォーマットに関しては先進国と途上国の間に差が設けられました。(先進国の提出は2022年から、途上国は2024年から)。適応と損失と被害についての報告は要素として盛り込まれましたが、損失と被害に対応するための資金の言及は完全に削除されました。

資金情報の報告については、新たに拠出された公的資金だけでなく、民間から動員された商業融資や投資、保険などもカウントして良いことになりました。

一方、先進国は2年ごとに今後拠出する気候資金の情報についてレポートを別途提出することになりました。資金がなければ自国の気候変動対策実施が難しい途上国にとっては、この点は一つの勝利といえます。

今後2年間は、各国がNDCを強化する非常に重要な年になります。

「グローバルストックテーク」は、2023年から始まる各国が気候変動対策の取り組みを見直し、5年ごとに目標を強化して再提出するプロセスです。グローバルストックテークでは公平性原則が非常に重要な論点であり、途上国、とくにインドなどは、残されているカーボンバジェット(1.5度目標達成のために残された温室効果ガスの排出許容量)や歴史的排出を目標強化のプロセスに盛り込むよう求めましたが、実施指針には残りませんでした。また、「損失と被害」についての言及は最後までアメリカが強行に反対し、本文では言及されず、最終的に脚注に追いやられました。

IPCC1.5度特別報告の扱いは?気候変動行動強化につながったのか?

二点目の各国の気候変動への国別目標(NDC)の強化について、COP24の決定文の中には1.5度特別報告を直接歓迎することができず、各国のNDCの強化は「2020年までにNDCを強化して再提出する」という、これまでの決定文にも含まれていた表現が含まれるのみにとどまりました。IPCC特別報告の内容をそもそも認めないという立場のアメリカに加え、サウジアラビア、ロシア、クウェートなど、温室効果ガスの大型排出国がIPCC特別報告の扱いについて最後まで強硬な立場をとったためです。

タラノアダイアログにおいても各国の取り組み強化が加速されることが期待されていましたが、公平性や1.5度レポートについて言及されたものの、COP決定文の中では「タラノアダイアログの完了を歓迎する」と記したのみで、今後の行動強化には繋がりませんでした。

気候資金は?

パリ協定は、先進国の途上国に対する資金・技術支援を義務付けています。しかし、ルールブックのいたるところで先進国の資金・技術支援の義務が弱められた表現になっています。

京都議定書のもとで設けられた適応基金は、存続は決まっていますが、これまでクリーン開発メカニズムの利益の一部を原資としていたため、パリ協定下でどのように運営するのか、議論が決着していません。市場メカニズムの議論はCOP25まで先送りされたためです。

また、先進国は2020年までに年間1000億ドルの気候資金を拠出することになっていますが、その約束も2025年までで、それ以降の資金目標が決まっていません。今回のCOP24で、次なる資金目標の議論は2020年から始めることに決まりました。

気候変動の被害は加速する一方

2018年は、日本でも気候変動の被害がさらに拡大しました。猛暑や洪水、大雨などで亡くなる方や、家を失う方がたくさん発生しました。途上国でもその被害は特に甚大です。災害への備えが少なく、農業や漁業など第一次産業に従事する人口も多いため、より大きな気候変動被害を受けます。しかし、そういった人たちほどほとんど温室効果ガスを排出していません。

一方、先進国の政府や銀行、企業はいまだに化石燃料企業やプロジェクトに投資し続けています。間違った気候変動支援が、コミュニティや環境の破壊、そして人権侵害に繋がっています。

また、今回のCOP24では、市民社会の参加に対する抑圧が非常に顕著でした。気候変動の現場でたたかい、実際に化石燃料プロジェクトとたたかう市民社会の声が押さえつけられるようなことがあってはなりません。

公平性や途上国の視点からは、今回のCOP24の結果は非常に残念な結果だったと言わざるを得ません。

今後さらに重要になってくるのは、各国での取り組み、とくに先進国による国内での温室効果ガスの大幅な削減などの取り組みの強化と、途上国への支援強化です。また、化石燃料プロジェクトや間違った気候変動対策に対する草の根の取り組みもとても重要です。

FoE Japanは、これからも公平性の観点を重視した提言活動、実際に気候変動を加速させている化石燃料プロジェクトに対する草の根の取り組みに尽力していきます。

(小野寺ゆうり・深草亜悠美・高橋英恵)

サヨナラCoal! – 気候変動に脅かされる途上国市民社会からの声

action 2昨年のCOP23の会場において、日本が市民社会からの厳しい批判を受けたことを皆さんは覚えているでしょうか。それから約1年、日本の化石燃料融資に対する批判の声が、再びCOPの会場内に響き渡りました。

会場内でのアクションでは、特定の国名や企業名は名指しできないという制約があるため、工夫を凝らしてのアクション。気候変動の脅かされる途上国市民社会からの声が叫ばれました。

インドネシアで鉱山開発問題などに取り組むJATAMのスタッフ、アルウィヤ・シャウバヌ氏は、“日本はインドネシア有数の石炭事業への融資国。日本の国際協力銀行は、北カリマンタンの鉱山開発、そして(他の州での)石炭火力発電所に融資している。これらの鉱山や石炭火力発電所の建設計画地近くでは人権侵害が横行し、環境が汚染され、(住民たちの)土地も奪われ、そして生計手段をも奪っている状況です。日本はいますぐ、この私たちの生活を奪う破壊的な事業をやめるべき。”とスピーチ。

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FoE Japanの深草も、次のようにスピーチしました。

日本はG20の中で、化石燃料事業に対する最も高額な公的資金の融資国。世界の平均気温上昇を1.5℃に抑え、世界の温室効果ガス排出量を今世紀後半までにゼロにすることを目標に掲げたパリ協定の採択後も、日本の石炭火力発電の技術は高性能であると謳い、未だに融資を続けている。日本が融資している事業は、気候変動の影響を悪化させているだけなく、近隣住民への人権侵害、土地収奪、そして生計手段の喪失を引き起こしている。日本においても、今年の夏に度々見舞われた豪雨のように、気候変動の影響を無視できない状況になりつつある。今、日本に求められているのは、気候変動への影響に対する歴史的責任の下、途上国への削減支援する資金の拠出、そして、人々の命を中心に据えた気候変動への解決策であるべき”
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action 1また、気候ネットワークインターンの塚本悠平さんからは、

“日本が今本当に必要としているものは石炭ではない。必要なのは、再生可能エネルギー100%の社会への移行だ。今、行動を起こさないと、気候変動はより悪化し、将来世代への影響が大きくなる。エネルギーの効率化や再生可能エネルギーの技術など、私たちはすでに解決策を持っている。政府の皆さん、今すぐ、方向転換を。”

温室効果ガスを最も排出する電源である石炭火力からの脱却の流れが世界で加速している一方、日本はいまだに国内外で石炭火力を推進しています。昨年COP23期間中にも、日本の丸紅株式会社がベトナムで低効率の石炭火力発電所事業を進めていることが発覚し、大きな批判を呼びました。しかし、批判を浴びたにも関わらず、2018年4月に日本の公的金融機関である国際協力銀行は、同事業への融資を決定しています。

この一年間、気候変動の影響を受ける途上国の市民社会は期待をもって見守っていたはずです。しかし残念ながら、日本は世界の期待に応えるようには進んでいません。また、米国の環境団体によると、G20諸国の中で公的資金を使って化石燃料を支援している最大の国は日本であると報告されています (注1)。パリ協定の温度目標達成のためには今世紀後半の脱炭素化が必要であるため、石炭だけでなくその他の化石燃料からの脱却も加速する必要があります。今、方向転換できなければ、今後ますます孤立の道を歩むことになりかねません。

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(高橋英恵・深草亜悠美)

(注1) http://priceofoil.org/content/uploads/2017/07/talk_is_cheap_G20_report_July2017.pdf

COP24 二週目突入 – 交渉の行方と抑圧される市民社会

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COP24も2週目に差し掛かりました。1週目は主にパリ協定のルールブックづくりの技術的な部分が話し合われました。技術的な交渉は8日土曜日に終結する見込みでしたが、今週11日火曜日まで延長されました。二週目は閣僚級が集まるハイレベル会合が開催されます。

この間、COPに参加する市民団体のメンバーらが国境で強制送還されたり、カトヴィチェのホテル滞在中に突然拘束され強制送還される事例が報告されています。確かな数はわかっていませんが、100名以上のNGO関係者らが入国拒否されているとの情報もあります。

強制送還や拘束の理由は不明です。入国拒否をされた人の中には、過去に何度もCOPに参加したことがあるNGOスタッフや、政府代表団の一員としてCOPに参加する予定だったNGOスタッフも入っているとのことです。

このような深刻な人権侵害の状況をうけて、FoEインターナショナルはじめとする市民団体は抗議声明を発表し、拘束・強制送還された仲間の状況を確認している状況です。12月10日にCOP24会場内で行われた記者会見では、少なくとも12名がポーランドから強制送還・拘置されている350.orgの東欧グループのメンバーから「基本的な人権を奪わないでほしい。拘束される理由もない。ポーランド政府による明らかな市民社会への弾圧だ。皆さんの助けが必要です」と発言がありました。

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COP会場では、石油会社や原発企業が、ガスや石炭(”クリーンコール”)推進、原発推進のサイドイベント開催を許される一方、市民団体への監視や締め付けが厳しくなっています。本来であれば、気候変動の影響を受ける人々の声ほど政策に反映されるべきです。気候変動の影響をより受けやすい脆弱なコミュニティや人々の人権が保護されること、資金にアクセスできること、その他必要な技術支援が受けられることが重要です。

交渉の中でも、COP決定(COP交渉の最後に採択される文章)におけるIPCCの1.5度レポートへの言及について強い対立があり、主にアメリカやアラブ諸国がIPCCへの言及に反対しています。気候変動の「損失と被害」に関する言及や扱いについても、温室効果ガス排出責任を問われることを取り分け恐れるアメリカが、非常に強く反対しており、他の先進国もそれを支持しています。

私たちにはあまり時間が残されていません。今までの1度の気温上昇でも、すでに被害が広がっています。

気候変動の背景には、化石燃料の開発・利用をいまだに止めようとしない企業、人権やコミュニティをないがしろにし、利益を優先して環境破壊・資源収奪・搾取を行うネオリベラリズム経済が存在します。そういった新経済主義を体現する企業が交渉に強く干渉し、また人々の声がないがしろにされることに非常に強い危機感を覚えます。

(深草亜悠美)

【日々のくらしの裏側で – vol.3】きれいな空気は誰のもの?命を脅かす石炭火力発電所の恐さ

11月4日、三浦で開催された横須賀石炭火力発電所について考えるセミナーに参加されていました、横須賀市在住の大竹裕子さん。子育てをするために横須賀に越してきた矢先に、喘息が発症したそうです。喘息を持つ立場として、お住まいの横須賀に石炭火力発電所ができるということについて、どのように感じていらっしゃるのか、伺いました。

 

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“私は子育てするためにこちらに移住してきたんです。父たちが先に来ていたのもありますけれども。すごくいい環境で子供を育てたいなっていうふうに思ったので。なのに、妊娠中にはじめて病気が発症して、大きな発作を起こしてしまったんですね。で、赤ちゃんの命に関わると言われて。強い皮下注射でその場は命拾いをしたんですけれど、それからはとにかく死なないように、予防に徹していました。喘息って、一回起こすともう器官が健常な人の半分しかなくなってしまう、死に至る病気なんです。例えば、健常の方はストロー、太めのストローを口に加えて24時間生活してみてください。それでわかります。それくらいの呼吸量になってしまうんです。なので、煙とかタバコとか、お線香とかもできるだけ避けるようにしないといけないんです。ここは冬も暖かいくらいすごく温暖で、気候もいいですけれども、自然環境もものすごくいいんですね。ですから、ここ(横須賀)では風邪も引きづらいはずなんです。医学的な証明はできないんでしょうけど、喘息になったのはそれがきっかけじゃないかなと、思っています。”

 

この横須賀の石炭火力発電所の問題はどのような経緯で知ったのでしょうか?

まず広報です。市の広報で、石炭を利用した発電所ができるので、この計画についてJERAという会社が説明をするから集まってくださいという呼びかけを受けて、参加しました。“

 

そういった説明会などの誘いがあったとしても参加されない方もいらっしゃる中、なぜ、説明会へ参加しようと思ったのでしょうか。

”この横須賀には核燃料棒を作っている会社があって、もともとは核燃料棒の活動をしていたんです。その活動も、きっかけは3.11でした。3.11があって、まず最初の行動は官邸前に、国会前に一人で行きました。そこには、自分と同じようにポツンポツンと来る女性・男性がとても多くて、話してみると、やっぱり何をしているかわからないけどとりあえずここに来てみたと、そういうような自分と同じ人が多かったんですね。それで、官邸に集まるようになりました。たくさん人数が集まって、変えられると思ったのもあるんですけど、地元に燃料棒を作っている会社があることをもっと地元の人に知らせなきゃっていうことで、その核燃料棒の活動を立ち上げたんです。それを7年間、もう8年目ですけど、みんなに可視化するという行動を続けていたところ、エネルギー関連だったということもあって、たまたま石炭発電所が久里浜に来るということを知ったんです。ありえないですよね、この時代に石炭なんて。なので、すぐに参加しようと思いました。”

 

最後に、大竹さんが描く横須賀の未来をお聞きしました。

“とにかく命が大事にされること。あと、人間の尊厳が大事にされることだけですね。あと、幸せに、美味しいものを食べて、幸せに暮らせる未来。戦争は、もちろんない。戦争は環境を壊す一番の大罪だと思っているので。そうですね、人間も生物も、すべての人がありのままに暮らせる未来がいい。やっぱり自分や家族、自分の周りの人、自分と関わり合いのある人達が幸せでなくてはいけないと思っているので。そのために頑張りたいと思います。”

 

この横須賀の石炭火力発電所の建設計画。横須賀石炭火力を考える会の鈴木陸郎さんもおっしゃっていましたが、営利目的の計画であることは明白です。

利益のためなら、命はないがしろにされていいのか。横須賀の石炭火力発電所の計画において、私達はこの点は問いただしていくべき論点と考えています。

(高橋英恵)

 

<関連記事>

・動画:「日々のくらしの裏側で〜神奈川県横須賀市久里浜

・横須賀署名スタート!詳細はこちら

・インタビュー記事:「【日々のくらしの裏側で ーvol.1】横須賀石炭火力発電所建設計画への地元高校生への目線

・インタビュー記事:「【日々のくらしの裏側で – vol.2】過去の経験から未来へ。あの公害を繰り返したくない。

 

気候変動における汚染者負担の原則「フェアシェア(公平な分担)」を考える

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COP24の期間中、気候変動の排出目標に関する市民社会レビュー「パリ協定以降 – 格差、公平な分担、気候危機」(以下、市民社会レビュー)が発表されました。「市民社会レビュー」は研究者やNGOらのグループによって2015年から毎年発行されている研究レポートです。公平性の観点から、過去に遡って気候変動へどれだけ影響を及ぼしてきたかという歴史的責任を鑑みて、各国がどれだけ温室効果ガスの削減責任を負うべきなのかを計算したものです。今年の市民社会レビューは国別の削減責任を計算するだけでなく、それぞれの国の中でも貧富の格差が広がっていることも考慮に入れたレポートになっています。

10月に発表されたIPCCの1.5度特別報告書では、平均気温の上昇が2度の場合と1.5度の場合では気温上昇による被害に非常に大きな差があることがわかっています。同時に、必要な措置を行なえば1.5度に抑えることは可能であるということもわかっています。1.5度以下に抑えるためには「エネルギー、土地利用、都市、インフラ、そして工業システムを迅速に変えていく」必要があります。

地球規模で気候変動への責任を考えると、先進国により大きな責任があり、また先進国にはより多くの責任を果たすための金銭的・技術的能力があるのは明らかです。下のグラフは、世界の人口を収入で低い方から10等分して縦軸にとり、各階層の1人当たりの収入を横軸で表したものです(「貧困のシャンパングラス」)。最富裕層のトップ10%が、世界の富の50%を得ています。一方、たった10%の富が、世界人口の最下位50%に、そして40%の「中間層」が残り40%を占めています。中間層といっても、実際は非常に貧しいのが現状です。またこの10%の富裕層が、世界の温室効果ガスの50%を排出しています。
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レポートによると、温室効果ガスの歴史的排出量にもとづいて排出削減量を計算すると、先進国や一部の新興国は現在排出している以上の削減が必要になります。つまり、途上国における削減を支援しない限り、削減量における「公平な分担」を全うすることができません。すなわち先進国である日本は、国内排出ゼロを達成し、同時に途上国への削減支援(および適応、損失と被害への支援)を行わなくてはいけません。

先進国に歴史的責任がある一方、先進国内での貧困の格差も深刻になってきました。レポートは、国際的なレベルでの国家間の公平性を求める一方、気候変動対策のために必要な社会変革のあり方として、貧困層や、化石燃料企業の労働者などが必要以上にコストを支払うことなく、むしろ貧困層や労働者、脆弱なコミュニティーがトレーニングや社会的保護を得られる形で変革を起こしていくべきだと結論づけています。

レポートの本文はこちら

【日々のくらしの裏側で – vol.1】横須賀石炭火力発電所建設計画への地元高校生の目線

2018年11月4日、三浦市。現在、三浦市の隣市である横須賀市で計画されている石炭火力発電所に関するセミナーが開催されました。実はこの横須賀の石炭火力発電所建設計画、リプレイスメント(建て替え)ということもあり、通常以上の速さで計画が進行しています。

セミナーのワークショップでファシリテーターを務めたのは、逗子在住の高校生、山下くん。小学校の頃から環境問題に興味があり、社会と理科を合わせて考えてみたいということもあって登録していた環境団体のメールマガジンが、横須賀の石炭火力計画を知るきっかけだったそうです。この状況を見つめる地元高校生を追いました。

 

横須賀の石炭火力計画を知ったきっかけは、グリーンピースさんのメールマガジンでした。僕は原発問題とか、川の汚染、大気の汚染のことが気になっていたので、このメールマガジンに登録していたんですけど、石炭火力が日本で今建てられていると、それが僕の町、横須賀にもあるんですよという内容がメールマガジンで入ってきたんです。”

20181203_1セミナーでファシリテーターを務めた逗子在住の高校生、山下くん。

 

そのメールマガジンをきっかけに動くようになったのかと思いきや、やはり高校生。当初は学校の活動が忙しかったそう。

その当時は生徒会入っていて忙しくて、自分の興味あることとかあまりできていなかったんです。選挙だ、文化祭だと準備に追われていて…。結局生徒会の任期が終わったタイミングからでした。引退して時間ができて、じゃぁ自分の興味のあることをどんどん知っていこう、これから大学を選んでいくためにも、自分が本当に興味のあるものはなんだろう?ということを知りたくなったんです。それでいろいろ調べたり、ボランティア活動の掲示板を見たりするようになって。掲示板のイベントも、気になったものは見に行きました。

その中の一つに、横須賀セミナーという、この石炭火力発電所計画のイベントが8月にあって、そこに参加したんです。そのセミナーでは、今こういう計画がある、経済影響はどうだ、といった話だったんですけど、実際に影響を受けるのは横須賀の人だけではなくて逗子の人鎌倉の人葉山の人にも影響があって、しかも横須賀市には税金としてお金が落ちるけれども、逗子市や葉山市には何もお金が降りてこない、ということを知ったんです。そもそも、こんな話、逗子や三浦の人も全部含めて周辺自治体の人はみんな知らないぞと。僕は逗子に住んでいて、この会に、たまたま僕のほかにもう一人逗子からの参加者がいて、その人と一緒に、セミナーのあと、「逗子の人みんな知らないよ」という話を鈴木さん(横須賀石炭火力を考える会)にしにいったんです。そのあと、どうやったらもっとみんなにこの計画を知ってもらえるかと話し合いになって。”

 

その話し合いの結果、逗子でもセミナーを開こうと?

逗子の人にまず考えてもらいたい。自分の地元ですから。僕は生まれも葉山なのでやっぱり、逗子・葉山の人に考えてもらいたい。「あの時声を上げていれば」とならないように、自分たちが影響を受ける前にみんなで考える時間を作りたかったんです。そこで、横須賀セミナーに一緒に参加した方と、逗子でセミナーをやりましょうってなったんです。”

 

逗子セミナーは、どのように準備を進めていったのですか?

もう一人の方には会場の予約とか、僕は高校生の団体や、生徒会に入っていたので神奈川県生徒会会議に声をかけてみたり、駅前でチラシを配ったり、広報活動をしていました。あとは、気候ネットワークの方々、考える会の鈴木さんと、みなさんに集まっていただいてなりたったという感じです。”

 

逗子組で企画した逗子セミナーですが、山下くんの広報の成果もあり、高校生の参加者も多かったとのこと。今回の三浦セミナーも、逗子セミナーに参加した、山下くんの仲間の言葉がきっかけだったそうです。

彼はたまに三浦の農家へインターンに行くんですけど、「三浦も横須賀と接しているけれど、三浦はもっと知らない。なんなら三浦は農業をやっているからその人達にも影響があるんじゃないか」という話になったんです。それで、これは三浦でもセミナーをやらなきゃいけない、と。そうしたら別の参加者から、「今回は逗子だったから逗子の人は来ることができたけれど、三浦や鎌倉や葉山にはまだ来れていない人がいるかもしれない」という提案も頂いて。そこで、三浦半島の4つの市でセミナーを開いていこうという話になって、今日、三浦でセミナーを開くに至ったんです。”

 

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三浦セミナー事前会議風景

 

セミナーでのワークショップのファシリテーターを務めた山下くん。彼が参加者に投げかけた問いは「セミナーを受けて、横須賀の石炭火力計画の何が一番問題だと思いますか」というもの。山下くんにとって、何が一番問題なのかを伺うと、次の返答が。

僕は大気汚染ですね。やっぱり直に影響が来るじゃないですか。地球温暖化は確かに大変だと思うし、世界規模で努力をしなきゃいけない。でもやっぱり、空気の汚れって一番に直近で影響が来ますよね。石炭火力発電所ができて、それが動き始めたら有害物質は飛んでくるし。地球温暖化は暖まるのに時間がかかって、最終的には最悪な状態になるのかもしれなくても、逗子葉山のきれいな海とか空気を汚すようなことは嫌だし、良くないかなと。やっぱり海とか歩いたりするのが好きなので。

あと、公害とか、昔あったじゃないですか。それから日本は規制を設けたり、環境アセスメント法とかも整備したりして、やっとグリーンな地球を作るために頑張ろうという方向に向いてきているのに、それに逆行するようなことはしちゃいけないと、僕は思うんです。”

 

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白板の前に立つ山下くん

 

これからやっていきたいことを聞いてみました。

もっと、この横須賀の石炭火力建設計画問題を知ってもらう機会を作りたい。今、横須賀、逗子、三浦と、3つの場所で開催できて、あとは鎌倉、葉山それぞれに知らせなきゃいけない。でも、汚染が一番ひどくなる地域って戸塚あたりなんです。もちろん三浦や逗子も近いからひどいけれど、煙突が高いからなのか、風によって一番ひどくなるのってちょっと離れたところなんですよ。平塚の人とか、茅ヶ崎の人とかは、横須賀の問題をなぜここで言っているんだと思うかもしれないけれど、「あなた達が一番やばいんだよ」というのを何より本当に伝えたいです。物理的な距離と、自分たちの心の距離が、人間の心の距離感が合わない。

だから、まず地元で反対の機運を高めないといけないと思う。地元が反対していないのに外の人が反対と言うのは少し違うと思うので、まずは横須賀市内、でちょっと次に三浦半島全域、さらには神奈川県の影響があるところは全部、っていう順で、この石炭火力問題のことを伝えられたらなと思います。いろんなところでこの問題を広める活動ができたらみんなの意識が変わってくると思う。何より、この横須賀の石炭火力発電所の問題の何が一番ネックかって言ったら、みんなが知らない間に進んじゃっているっていうことが一番いけないと思うんですよ。気づいたら自分たちの健康に悪いものができていたっていうのはそれは困るだろうと。企業側が本当はもっと知らせるべきだと思うんですけど、企業が知らせる努力をしないんだったら、知っている人がしなきゃいけない。まずはみんなが知らなきゃいけないんです。”

 

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三浦セミナーの会場からうっすらと見える、建て壊し中の古い発電所。この跡地に、新たな石炭火力発電所の建設が予定されている。

 

初めは横須賀だけであったセミナーをどんどん三浦半島に拡散していくことに貢献し、伝えたいことや今後のビジョンもはっきり持つ彼ですが、こんな意外なコメントも。

時々、自分がやっていることが正しいのかわからなくなるんです。たとえば、最初に言われたことなんですけど、「電気足りないから発電所作るんじゃないの?おまえがそれ止めちゃって停電になったらどうするの?」というようなことを言われたんです。その時は知識がなくて、「いやちょっと待てよ、確かに電気足りていないのかもしれない。どうしよう?」となって。このときは知識がある方から「日本の電力は余っている」という情報を聞いて、「あ、電気は足りているんだ」と一件落着したんですけど、他にも「経済を回すにはいくら環境に悪くても発電所を作らなきゃいけないんじゃないか」と言われた時とか、「そうかもしれない」と思う時がたまにあって、そういうときはちょっと怖く感じるというか、僕らは石炭火力発電所に対する反対意見を言っているけれど、その反対意見に反対されたときの根拠が十分になかったりすると、自分のやっている活動が正しいのか不安になることはありますよね。友達に話しても、聞いてくれないことはあるし。”

 

全てが順風満帆と感じるわけではないようです。大人から反対されるのももちろんですが、友達に話しても聞いてくれないとなると、なおさら不安を感じるはず。それでも、同世代のみんなに伝えたいことがあるかを尋ねたところ、山下くんは、少し間をおいてこんなメッセージをくれました。

もちろん僕も一人でやっているわけではないので、仲間をどんどんほしい。まずは知っておいてもらいたい。これも僕が石炭に関わり始めて日が浅いせいかもしれないですけれど、自分の地元、生まれ育ったところが、逗子葉山の海と空気が汚れることは、僕にとってうわーって思う状況なんです。それを同じように感じでくれたのなら、気候ネットワークさんとか横須賀の会のツイートをリツイートとかしてくれたら、広がっていくわけじゃないですか。そういう細かいところからの参加でいいから、持続可能な社会を作っていくのに協力していけたら、いける人が多くなったらいいというのは思いますね。”

 

ジレンマを抱えつつも、同じ世代の仲間へ強く発せられた強いメッセージ。

自分の地元が、もしくはお気に入りの場所の空気が汚されてしまったら。

この記事を最後まで読んでくださったみなさん、まずは目を閉じて想像してみてください。

 

<関連記事>

・動画:「日々のくらしの裏側で〜神奈川県横須賀市久里浜

・横須賀署名スタート!詳細はこちら

 

(高橋英恵)

 

ばらばらになった町~福島、旧避難指示区域の現実(楢葉、富岡、浪江訪問記)

スタッフの吉田です。2018年11月5日(月)、ドイツでチェルノブイリ原発事故に関する支援活動をしているメンバーとともに、福島県の浜通り、福島第一原発周辺の自治体を訪問しました。富岡市から会津若松市に避難されているYさんに7人乗りの車に乗せていただいて福島市から出発しました。

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楢葉町まで1時間強。道中、除染土を載せて浜通り方面に向かうトラック10台以上とすれ違いました。県内各地の空き地などの「仮置き場」から双葉町や大熊町の中間貯蔵施設に向かう車両です。環境省の中間貯蔵施設情報サイトを見ると、輸送対象は1400万立方メートルと気が遠くなる量です。

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楢葉町

2015年の3月に避難指示が解除されており、7000人の人口のうち約半数が帰還(原発労働者として新たに居住している人を含む)しているとのこと。車窓からは、農業試験場が営業している様子や、稲作などが再開されている様子が見られました(2016年から出荷も再開)。

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楢葉町立あおぞらこども園は、かつては町中から200人の子どもたちが通ってきていたという広い園舎と園庭のある園です。原発事故後はいわき市に移転、避難指示解除後の2017年から戻って再開。2018年現在は登録数68名とのことです。ALTの英語教員も常駐していてのびのび遊ぶ子どもたちに迎えられました。子どもたちの親は、公務員など仕事の関係で帰還している人がほとんどとのこと。園庭は除染されていて、モニタリングポストの値は0.04マイクロシーベルトでした。しかし、原発から20キロ圏内の地域に多くの子どもたちが住んでいることに複雑な思いもいだきました。

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給食の放射能測定結果は毎日楢葉町のウェブサイトに掲載。

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富岡町

2017年4月に避難指示が解除されましたが、人口16000人のうち住民の帰還は約430人、作業員を含めて約800人(約5%)。町の出張所のような「交流サロン」には食品の放射能測定器が置かれていて、利用記録ノートを見るとほぼ毎日、数種類の測定記録があります。野菜やキノコ、果物など。メモのように〇や×が書かれ、キノコ類には多く×があります。

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富岡町で唯一の、かつ2人目の女性町議高野さんは、原発事故後の避難生活の中で、特に女性や高齢者は思うことがあってもなかなか声をあげられない現実に直面。町の政策に反映されない、そこで自分が代弁しようと、2015年に立候補して当選しました。町では新しいスーパーや病院が建てられていますが、実際には帰還住民よりも原発作業員のためのようにも見える、本当に町民のためになるお金の使い方を望むと言います。

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(左から2人目が高野さん)IMG_2959高野さんのご自宅のすぐそばに、帰宅困難区域との境界。

続いて、高齢者施設「デイサービスもとまち」を訪問しました。30名の登録、この日は12名が来ていて輪投げのレクリエーションをしていました。高齢夫婦のみや一人暮らしで帰還している人が多いそうです。

周辺では、新築の復興住宅(アパート)が目立ちます。大手建設会社が土地を買って建てているのだそうです。入居するのは廃炉作業の関係者が多いでしょう。個人宅が取り壊されて更地になっている場所も多くあります。

桜並木で有名な夜ノ森(よのもり)地区の近くに住むIさん(90歳)は、2017年6月に帰還、役場が掲げる「復興」には複雑な思いを抱いています。

DSC05089紅葉する夜ノ森の桜並木。

「よその土地に家を建てた人もいる。子どもたちは富岡ではなく違うところがふるさとになる。いつまで『富岡の人』でいられるのか・・・。個人がこれほど苦しんでいることは東京電力は知らないだろう。福島第一原発ではこれまらもまだ何が起こるかわからない。」

急な訪問にも関わらずご自宅の居間に上げていただきお話を伺いました。これだけ多くの人(9人で訪問)と話すのは久しぶりで嬉しい、とおっしゃっていました。ご趣味の素晴らしい仏画も見せていただく。

IMG_2962 (2)帰宅困難区域の境は、簡易なロープのみの場所も。

大熊町

常磐道を通り富岡から浪江へ。途中、帰宅困難区域の大熊町を通過。家も店舗も閉ざされたまま。道路に面した入口は鉄格子で封鎖されています。

IMG_2978 (2)大熊町、車から。飲食店、ショッピングセンター、ガソリンスタンドなどすべて無人。

浪江町

請戸の浜へ。福島第一原発が見通せ、距離は約10キロ、津波と原発事故の2重の被害を受けた場所です。浜辺にあった集落は跡形もなくなり、お墓などは高台に移転しています。無人になった浜辺に、防潮堤の工事が行われています。IMG_2984 (2)高台より請戸の浜を望む。写真奥の浜辺に集落があった。中央は田んぼだったところ。

IMG_2989 (2).jpg地震で大きくずれた道路。

請戸小学校は、1階部分は完全に津波にさらわれていますが、児童生徒は高台まで避難して助かったそうです。校庭に置かれているのは防潮堤の資材です。

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小学校の校庭からも、福島第一原発がかすんで見えます。(↓写真は近くの見晴台より)

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こちらは、浪江町の仮設焼却施設です。津波がれきや解体した家の部材などを焼却するもの。家の取り壊しはまだまだ続いています。放射性物質の灰への濃縮やフィルターからの拡散も懸念されます。

富岡町を通過中にも、仮設焼却施設がありましたが、そちらはまもなく解体が決まっているとのこと。その後は、富岡町のものも、こちらに運ばれる予定とのことでした。

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そこから少し行ったところには、浪江町に新しくできた小中一貫校があり、車で通りました。新築の立派な建物で、2018年4月から再開していますが、生徒は十数名とのこと。これほど原発に近い場所にも、少数とはいえ子どもたちが帰還しています。

最後に、浪江町のKさん(現在は福島市に避難)の自宅に案内してもらいました。7年半前のそのままにしてあるとのことで、リビングの床にはおもちゃが転がり、3月10日の新聞が置かれたまま。当時お子さんが5歳だったそうです。

IMG_3003 (2).jpg

Kさんのご自宅を出発したのが17時少し前。福島に向かう途中で日が暮れて真っ暗に。浪江町の帰宅困難区域を通る道のため、家の明かりはなく、街灯も全くありません。

家や畑がある場所、また除染度のフレコンバックが積まれている場所・・・。かつては、まばらではあっても家々の明かりがついていたでしょう。道路わきにところどころ設置されたモニタリングポストの値は、4マイクロシーベルト以上のところもありました。

人のつながりとコミュニティがあってこその「まち」。それが引き裂かれ、今後が見えない浜通りの町々。原発事故の現実がつきつけられた訪問でした。原発事故のこと、エネルギーのことなどほとんど語られなくなっている東京や福島市のくらしとのギャップ、「復興」「2020年五輪」の盛り上がりとのギャップを痛感します。

古川好子さん、武藤類子さん、今野寿美雄さん、高野匠美さん、板倉正雄さんにご案内・お話しいただきました。ご多忙中のご配慮に感謝いたします。

(吉田明子)

温暖化の進行でさらなる“気候変動危機” ―IPCCからの警告

IPCC English2.jpg2018年10月1~6日、韓国・仁川でIPCC(気候変動に関する政府間パネル)総会が開かれ、8日、地球規模の1.5℃の気温上昇に関する特別報告書(SR15)と政策決定者むけのサマリー(SPM)が発表されました(*1)。

レポートは、世界の平均気温が工業化以前より1.5℃上昇した場合の影響を描き、2℃上昇した場合の影響と比較、また1.5℃までに抑えるためには、世界の全体の人為的なCO2排出量を、2030年までに約45%削減、2050年頃までには正味ゼロのする必要があることを示しました。

2015年に採択されたパリ協定では、気温上昇を2℃未満、できる限り1.5℃以下に抑えることを目指すとされましたが、今回の報告書では、2℃の気温上昇は1.5℃に比べて大きな影響・被害が予測されることが示され、気候変動対策がより差し迫ったものであることが警告されました。

一方、これまですでに産業革命期以降約1℃の平均気温上昇が見られ(日本では約1.2℃(*2))、それにより甚大な被害が出ています。気温が2℃上昇した場合にくらべ、1.5℃上昇程度に抑制することができた場合はそれでも、水不足に苦しむ人々の数や、気候変動の様々なリスクに直面する人々の数が半減することを示しています。例えば、極度の干ばつや森林火災などを含めた異常気象や食糧不足、熱波に起因する病気や死亡リスク、そして生物多様性や生態系の喪失といったリスクを抑制することができると考えられます。温暖化を1.5℃に止めた場合、2℃の気温上昇に比べ2050年までに世界で数億の人口が気候変動のリスクや貧困にさらされる影響を回避できるとしています。さらに、海面上昇による1,000万人規模の移住リスクも回避することができるかもしれないとしています。

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IPCCの特別報告書は、危険な気候変動の影響を1.5℃の気温上昇に食い止める可能性が十分あることを示していますが、そのためには各国がいますぐに行動することが必要です。パリ協定の下で約束されている温室効果ガス削減分を積み上げても、1.5℃目標にはほど遠いことはこれまでも明らかでした(現状の対策では、3℃以上の上昇が予測されています)。このことから、政策決定者向けサマリーの大きな焦点は、現在のパリ協定下での2030年までの各国の目標を大きく強化する必要性と、さらには今後20年ほどの間にかつてない規模でのシステムチェンジ(例として世界で今進んでいる自然エネルギーへの移行)、社会変革やライフスタイルの大きな変換を呼びかけています。

この報告書は12月の国連気候サミット(COP24)で議論され、2020年までに既存の各国2030年目標の引き上げを図る決定がなされる動きをつくることが想定されています。

しかし、留意すべきなのは、IPCCが提唱している気温上昇を1.5℃未満に抑えるための方策の中には、大きなリスクを孕んだ、検証の未だ十分でない技術も含まれているという点です。例えばBECCS(バイオマス炭素回収貯留)が挙げられます。BECCSは広大な土地で燃料とするための作物を育て、発生したに二酸化炭素は回収貯蔵するという技術です。最大でインド国土の倍の農地をバイオ燃料生産に振り向けることを予想するなど広大な土地を利用することから、土地収奪の可能性や、食糧生産への影響が懸念され、世界の最貧困層にとってさらなる問題を引き起こす可能性があります。火力発電所を石炭からバイオ燃料に置き換える動きはすでに国内外で始まっています。また、CCS(二酸化炭素回収貯留)を伴った化石燃料発電や、原子力発電も、シナリオの上では対策として含められています。

FoEグループはこのようなリスクを伴う技術に頼って、温度目標を達成することには反対しています。今回のIPCCの報告書では、こういったリスクを抱えた技術に頼らずとも、脱化石燃料の動きをさらに早め、省エネとライフスタイルの変革で全体のエネルギー需要を下げることで、気温上昇を1.5℃未満に抑えることが可能であるシナリオも示しています。またこれを世界で実現するためには、地球規模での化石燃料を中心とした社会からの移行や、それらを促進するための北側の先進国から南の途上国に向けた資金援助が必要不可欠です。

気候変動問題は、日本にとっても差し迫った問題です。近年の大型台風や集中豪雨、猛暑などの異常気象は、日本列島にも大きな爪痕を残しています。しかしながら、日本が現在示している気候変動目標は、十分なものではありません(2030年までに2013年比で温室効果ガス26%削減)。

国内では石炭火力発電所の建設計画が相次ぎ(*3)、石炭火力発電の輸出も推進(*4)しています。
FoE Japanは、今回のIPCCの警告を受け、消極的・後ろ向きな日本の気候変動・エネルギー政策の転換を改めて求めます。気候変動被害の拡大を少しでも抑えるために、一刻も早く化石燃料中心の社会からコミュニティや人権を尊重した再生可能エネルギー中心社会へと移行することが必要です。

(スタッフ:小野寺・深草・吉田、インターン:天野)

*1 IPCC:Special Report on Global Warming of 1.5 °C (SR15) ,  政策決定者向けサマリー, プレスリリースの和訳(環境省)
*2 気象庁「日本の年平均気温」
*3 日本の石炭火力問題
*4  No Coal, Go Green! JBICの石炭発電融資にNO!