辺野古のサンゴ ~残したまま工事強行 反故にされた約束

6月14日、衆議院第一議員会館にて集会と防衛省交渉「辺野古新基地建設の環境保全措置で希少サンゴは守れるのか?」が開催されました。ここで、サンゴ保全をめぐって衝撃的な事実が次々に明らかになりました。
 本当は、専門家の大久保奈弥先生も強調されていましたが、サンゴを真に保全するのであれば、移植ではなく、「埋立を行わないこと」により、生態系をそのまま保全する以外にないのです。しかし、ここでは、防衛省が辺野古新基地建設に当たっての「埋立承認願書」で約束してきた、事業実施前の「移植」ですら蔑ろにされてきている事実を強調したいと思います。

1.サンゴ移植は事業実施前のはずでは?

どんどん護岸工事が進み、辺野古側の埋立海域は、開口部50メートルを除き、ほぼとじられてしまっており、その中にサンゴが取り残されている状況です。
しかし、当初の約束では、工事の前にサンゴは移植されるはずでした。
「埋立承認願書」第7章 環境保全措置においては、以下のように記されています。

事業実施前に、移植・移築作業の手順、移植・移築先の環境条件やサンゴ類の種類による環境適応性、採捕したサンゴ類の仮置き・養生といった具体的な方策について、専門家等の指導・助言を得て、可能な限り工事施行区域外の同様な環境条件の場所に移植・移築して影響の低減を図り、その後、周囲のサンゴ類も含め生息状況について事後調査を実施します。」

これを普通に読めば、サンゴを移植するのは事業実施前、すなわち工事の前と解釈されます。
しかし、防衛省は、「事業実施前に、専門家等の指導助言を得る」という意味だと言い張っています。
沖縄県は、沖縄防衛局への5月23日付文書「土海第136号」において、「サンゴ類については明確に『事業実施前』に移植・移築して影響の提言を図ると明記されている」と指摘した上で、改めて工事を停止した上で変更する場合は承認を受けるよう求めていますが、無視されてしまっています。
ちなみに、埋め立て承認の際の留意事項の一つに、環境保全に関しては沖縄県と協議を行うことが記されていますが、これも無視されてしまっています。

2.とりのこされた護岸内のオキナワハマサンゴ(絶滅危惧2類)

辺野古側のK4護岸近くのオキナワハマサンゴは移植対象とされていますが、沖縄県は埋立予定地の食害などを理由に採捕許可を出していません。

産卵期を含む繁殖期や高水温期の移植については、サンゴが死ぬ可能性が高いとし、沖縄県のサンゴ移植マニュアルが参照した論文を執筆した大久保奈弥(おおくぼなみ)東京経済大学准教授(サンゴの生物学)をはじめ、専門家が反対しています。このことから、沖縄県のサンゴ移植マニュアルでは、「産卵期や高水温期となる5月以降10月頃までをできるだけ避けることが適切である」とされており、防衛省もこれを踏襲する方針でした。

しかし、報道によると、沖縄県防衛局は、5月~10月の高温期であっても移植を行う方針を明らかにし、防衛局が設置している「環境監視等委員会」もこれを了承したとされています。
同委員会の議事録では、委員の発言として以下のように記されており、必ずしも「了承」ではありません。

「サンゴの移植の時期について、高水温期をできるだけ避けるということでした。
これについては、ミドリイシ類のように高温に弱い種類についてはそうですが、ハマサンゴに関しては、案外夏場でも移植可能ではないかと思います。温度耐性はサンゴの種類によって違いますので、夏に移植することが問題のない種類がいるかどうかについても、今後、情報収集に努めていただければと思っています。」

交渉に参加したサンゴの移植に関する第一人者である東京経済大学・大久保奈弥准教授は、「案外夏場でも移植可能」という委員の発言は、「既存の研究論文に照らせば明らかに間違いである」と批判しています。

仮に移植をしないとすると、どうなるでしょう?

4月9日の環境監視等委員会(第14回)においては、開口部50メートルを残して護岸建設を進めた場合、流況シミュレーションにより0.1℃程度の水温上昇が予見されることが説明されていました。このときはまだ護岸工事が進んでいなかったが、沖縄防衛局は「若干の流速低下域や水温増加が生じるものと思われますが、当該サンゴのモニタリングを行いつつ工事を進めていくこととします」とし工事を強行。

その後、5月28日に開催された環境監視等委員会(第15回)において、護岸の開口部50メートルを残した状態での流況シミュレーションから、「今夏の高水温期には、当該護岸の存在により0.1℃程度の水温上昇が予見される」とし、上部を遮光ネットで囲む、遮蔽シートで防ぐ、海水導入などの対策を行うとしています。しかし、これらの対策が有効であることを裏付ける引用文献や予備実験の結果は示されていません。

流速低下や水温上昇の問題を認識しているのであれば、なぜ護岸建設をすすめたのか、いまからでも護岸をこわして原状復帰をすべきではないでしょうか?

3.市民の調査で、N3護岸付近でみつかった大型サンゴについて

現地で反対運動を続けている市民の調査により、N3護岸付近で長径1メートルを超えるハマサンゴ1群と長径2メートル超のトガリシコロサンゴ1群が市民側の調査で見つかっています。1メートルを超えて移植対象であるのに環境監視等委員会に報告されていません。

トビータさん提供写真2 トビータさん提供写真1

N3護岸付近でみつかったトガリシコロサンゴ1群(左)と1メートル超のハマサンゴ1群(右)(写真提供:辺野古ぶるー)

6月14日の交渉で、防衛省は、これらについては、「認識していない」と頑強に否定。
市民側は、市民による調査時の写真および動画を示し、防衛省の調査を求めましたが、防衛省は同じ答弁を繰り返すだけでした。
その後、朝日新聞がヘリを飛ばし、上空からの写真で確認した結果を報道しました。

朝日サンゴ

この件について、6月19日に開催された外交防衛委員会で、藤田幸久議員が質問しました。
防衛省の回答は、以下の通りです。

「今月にも潜水の目視調査を行っているところ、長径90センチ程度のハマサンゴ属の群体、あるいは複数のシコロサンゴ属の群体が集まって形成される小型サンゴ類の群落が存在することは確認をしてございますが、いずれも移植対象に該当するものではないということでございます。」

ハマサンゴについては、市民が撮影した映像を見る限り、1メートルは超えていると思われますが、航空写真ではそこまではよくわからないことをいいことに頑として移植対象だとは認めないつもりのようです。
また、「複数のシコロサンゴ属の群体が集まって形成される小型サンゴ類の群落」については、大型サンゴだとは認められないと主張しています。いずれにしても専門家の関与を得ずに、防衛省が独断できめてしまっていることは問題です。

さらに、そもそもこの「1メートル」という基準も問題です。
多くの専門家が「おかしい」と反論をとなえています。

普天間飛行場代替施設建設事業に係るサンゴ類の環境保全対策について(日本サンゴ礁学会サンゴ礁保全委員会)
http://www.jcrs.jp/wp/?p=4186

なお、当日はサンゴの生態が専門の大久保奈弥さん(東京経済大学准教授)および日本自然保護協会の安部真理子さんをお招きしてお話しをおききしました。サンゴの保全や、辺野古の埋立による生態系への影響に関する、たいへん貴重な講演でした。以下から動画をみることができます。
【集会 辺野古の新基地建設の環境保全で、希少サンゴは守れるのか?】

20180614 UPLAN【政府交渉】辺野古新基地建設の環境保全措置で希少サンゴは守れるのか?


(満田夏花)

▼署名もよろしく!
https://goo.gl/Vx3GVm

STOP_HENOKO_V5_360

 

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誰のための原発輸出?ウェールズの住民が来日

日立製作所が進めるイギリス・ウェールズでの原発建設計画。

このたび、FoE Japanの招聘で、同原発に反対する地元ウェールズの住民団体PAWBのメンバー3人が来日しました。3人は、福島を訪問。原発事故による避難、最近の被害をめぐる状況についてのお話を聞いたあと、富岡町などを訪問。人影がない町の様子や大量の除染廃棄物を見て、「このようなことが、日本でもウェールズでも、どこでも起こってはならない」と発言しました。

IMG_2227.JPG28日には、FoE Japanが多くのみなさまにご協力いただいて集めた署名5,823筆を、
経済産業省などに提出しました。ご協力ありがとうございました。

同日、FoE JapanとPAWBとの連名で、日立製作所に対して、原発事業からの撤退を求める要請書を提出しました。また、多くの国会議員との意見交換を行い、さらに、国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)を訪問。福島、東京、大阪の3箇所で開催された報告会では、事業が、アングルシー島の美しい自然やウェールズの固有の社会に与える悪影響、放射性廃棄物の行き先が決まっていないこと、そもそも原発は必要とされていないこと、そうした事業が日英の両国民にリスクと負担を押し付ける形で進められている理不尽さを訴えました。
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「法的根拠」不明のまま進む除染土の再利用~撤回を求めて署名提出

みなさまにもご協力いただきました、「除染土の再利用方針の撤回を!」署名ですが、昨日6月11日、環境省宛てに15,374筆を提出しました。前回までの提出分27,246筆とあわせると、合計42,620筆となりました。厚く御礼を申し上げます。
署名では、除染土の再利用方針の撤回を求めるとともに、除染のあり方、除染土の処分のあり方に関しては、福島県内外の各地の幅広い人たちの参加のもとでの議論を求めるものになっています。

当日は、除染土の道路の路床材の実証事業が行われようとしている二本松市の「みんなでつくる二本松・市政の会」の菅野さん、鈴木さんにご参加いただき、また、除染土を埋める実証事業が行われようとしている栃木県那須町からも、田代さんが参加されました。まさのあつこさんに全体的な状況についてお話しいただきました。

環境省のこの除染土再利用方針については、以下の検討会の資料をご覧ください。
「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」
この検討会の名称でもわかるように、環境省が除染土壌の「再利用」をする目的は、大量の除染土を減らすことにあります。

再利用の実証事業に関しては、その概要が直近の検討会資料に記されています。>資料

那須町・東海村での除染土の埋め立て処分の実証事業についての情報はこちらをご覧ください。>資料
政府交渉では、驚くべき事実が明らかになりました。

1.除染土の再利用についての法的根拠は不明

法的根拠を問われ、環境省は、「放射性物質対処特措法」41条を上げました。
しかし、環境省の除染土の再利用方針は、除染土の減容化を目的としたものであり、同法の目的に書かれている「事故由来放射性物質による環境の汚染が人の健康又は生活環境に及ぼす影響を速やかに低減する」という目的とは、本質的に異なるのではないかと思います。

第四十一条 除去土壌の収集、運搬、保管又は処分を行う者は、環境省令で定める基準に従い、当該除去土壌の収集、運搬、保管又は処分を行わなければならない。

ちなみに、この「処分」については施行規則はなく、環境省は、那須町・東海村における、埋め立て処分の実証事業や、一連の再利用の実証事業を踏まえて、作成するようです。

「実証事業の法的根拠は?」と問われると、同法の第54条(調査研究、技術開発等の推進)を上げました。
しかし、ここでも、「事故由来放射性物質による環境の汚染が人の健康又は生活環境に及ぼす影響を低減するための方策等に関する調査研究、技術開発等」とされていますが、あくまで事業は、大量の除染土の減容化を目的とした、「再利用」であり、根本的に異なります。

2.飯舘村長泥地区の除染土再利用は、除染と「バーター」

長泥地区では、除染土の農地造成への再利用の実証実験が進められようとしています。
飯舘村から集められた除染土を運びこみ、農地をかさ上げし、上に覆土するというものです。

長泥地区実証実験イメージ
資料
環境省は、長泥の住民の理解を得られた、村からも事業を進めてほしいという要請がきたとしますが、飯舘村の支援を続けられている糸長先生から、長泥のみなさんは、この事業を受け入れなければ、復興拠点に指定されず、家のまわりを除染してもらえないという認識があったという指摘がありました。

環境省は、「条件というわけではない」「”バーター”と言ったかどうか確かではないが、バーターというわけではい」と言っていましたが、長泥地区を復興拠点(「特定復興再生拠点区域」)にする飯舘村の計画の中に、この除染土再利用という「環境再生事業」も記入されています。環境省としては村からの要望で進めていると言いますが、住民たちには、復興拠点事業と除染土再利用の農地造成実証事業が「セット」として説明されていたことが浮かび上がりました。

※たとえば、復興拠点計画の以下の文書の3ページ目に以下のように記されています。
「農の再生にあたっては、実証事業により安全性を確認したうえで、造成が可能な農用地等については、再生資材で盛土した上で覆土することで、農用地等の造成を行い、農用地等の利用促進を図る(環境省事業)。」

環境省は、「この除染土再利用実証事業がなければ、復興拠点に指定できないということではない」と言っていたため、「セット」ではない、ということをあらためて説明しなおすべきではないでしょうか?

3.実証事業で使われる土の詳細はわからない。

二本松でも那須町でも、実証事業で使われる土の汚染レベルなどについてはわかっていません。
「線量から推定するに、だいたい1,000ベクレル/kgくらいのレベルではないか」「実証実験については、決まっていないが1,000~2,000ベクレルくらいのレベルの土を使うのではないか」と言っていましたが、実際に使う土の汚染レベルという最も重要なことを決めずに、実証事業を行うということがありえるのでしょう
か?

4.本当に「実証事業」なのか?

長泥地区・二本松・那須町などで行われるのは、本当に「実証事業」なのでしょうか?
実証事業で、「安全性」を確認するのであれば、環境省が指針で示している上限の値(覆土にもよりますが、8,000Bq)でも大丈夫であるかどうかを示さなければなりません。
一連の「実証事業」は、実証というよりも、アリバイづくり、もしくは除染土を再利用することを、人々に「慣れさせる」ことが目的のように思えてなりません。

一方で、環境省は、「実証事業についてはさまざまな意見をいただき、検討している。白紙撤回も選択肢としてはある」というような趣旨のことも言っていました。

大量の除染土は確かに深刻な問題です。

だからといって、それを公共事業に利用することにより、環境中に拡散させてしまうことは許されるものではありません。環境省は、「管理主体が明確な公共事業で使う」としていますが、実際には、形上、管理主体が明確だったとしても、そこに埋められた放射性物質を「管理」できるわけではありません。

除染土をどうするのか。再利用ありきではなく、根本から議論を進める必要があるのではないでしょうか?

(満田夏花)

▼当日資料

まさのあつこさん資料

環境省からの資料(飯舘・二本松 実証事業資料)

環境省からの資料(5月17日、二本松実証事業説明r資料)

▼除染土再利用の反対を求め、署名を提出しました。

除染土再利用反対署名提出_180611

 

FoE APAC声明:国際社会はイスラエルによるパレスチナ人への弾圧に沈黙するな

FoEインターナショナルおよびFoE アジア太平洋(FoE APAC)は、エルサレムへの米国大使館移転式典の最中に、ガザで数十人ものパレスチナ人が不当に武力攻撃を受けている現状を受け、緊急声明を発出しました。

原文(英語)はこちら

FoE インターナショナルおよびFoE アジア太平洋(FoE APAC)は、エルサレムへの米国大使館移転式典の最中に、ガザで数十人ものパレスチナ人が殺害されたことに、深い悲嘆を感じている。

5月14日月曜日、イスラエルは非武装で平和的に抗議活動を行っていたパレスチナ人に対し、武力を行使し、1日あたりの犠牲者が2014年のガザ侵攻以降、最大となった。ガザの国境フェンス沿いで60人以上が殺害され、2800人以上の抗議者が負傷した(少なくとも1350人は銃による負傷)。イスラエル軍による発砲は、イスラエル政府および軍部が、人命に対していかに無関心であるかはっきりと示している。

月曜日は、7週間前から行われていたパレスチナ人難民の返還を求めるデモ(帰還のための大行進)以降、もっとも残酷な日になった。最近の抗議は、イスラエル建国70周年、及び「ナクバの日(大惨事の日)」、1948年のパレスチナ戦争の間に、70万人以上のパレスチナ人がイスラエルにより故郷を追われ、強制移住が始まった日に、米国が、米国大使館をテルアビブからエルサレムに公式に移転することに端を発した。

200万人のガザの人口のうち、男性、女性、子ども、家族総出で、数万人が3月30日から、国境に隣接した農地を行進した。彼らは故郷に帰る権利を平和的な行動で望んでいた。にもかかわらず、イスラエルは行進するすべての人、女性も、子どもも、車椅子に乗った障がい者にすら攻撃を行った。

ガザに住む人々は2006年にイスラエルがガザ侵攻を開始して以降、悲惨な状況に置かれている。基本的人権すら否定された状況にあるパレスチナ人は非常に困難な生活状況に耐えている。97パーセントの水は飲み水に適さず、医療サービスも限られている。この状況はアメリカによる国連へのパレスチナ難民のための援助が打ち切られて以降、さらに悪化している。

FoE International およびFoE APACは、国際社会がこの状況に沈黙している状況、っしてガザの人々の悲惨な状況を打開することができず、イスラエルによるガザ包囲を解除できていないことを強く非難する。
世界各国の指導者に対し、日々国際法に違反し、説明責任を果たさないイスラエルによる悲惨な不正義を終わらせ、パレスチナ占領を永久的に終わらせるように呼びかける。
最後に、FoE APACは、国際社会に対し、パレスチナ人がパレスチナの首都はエルサレムであるとする声を受け止め、耳を傾けるべきであると呼びかける。

Listen to a statement from Friends of the Earth Palestine’s Abeer Al Butmeh on Real World Radio

“Environmental Nabka: Environmental injustice and violations of the Israeli occupation of Palestine”: A report of the Friends of the Earth International observer mission to the West Bank

BUND/FoEドイツ エネルギーシフト・気候変動対策の現状と市民(報告その2)

323日から27日まで、BUND(ドイツ環境自然保護連盟:FoEドイツ)から代表のフーベルト・ヴァイガー氏ら3名が来日しました。

327日(火)に開催したセミナーの報告(その2)です。
BUNDFoEドイツ)来日セミナー:脱原発・脱石炭・エネルギーシフトと市民参加」
▼詳細・資料はこちら http://foejapan.org/energy/evt/180327.html

報告その1はこちら「BUND/FoEドイツ 脱原発の歴史と最終処分場問題」
https://foejapan.wordpress.com/2018/04/16/bund_energy_01/

●ドイツの気候変動政策・エネルギーシフトについて(リヒャルト・メルクナー氏より)

IMG_1039メルクナー氏も30年以上BUNDの活動に関わり、ヴァイガー氏とともに何度も東京や福島も訪問しています。

ドイツで脱原発と表裏一体続くのがエネルギーシフト・気候変動政策です。グローバル企業のシーメンスは2011年、原子力事業からの撤退を表明し、現在は省エネと再エネに取り組んでいます。省エネ、エネルギー効率化を進めたうえでの再エネ促進、これがエネルギーシフトの鍵なのです。

例えば、バイエルンの中心都市ミュンヘン(人口146万人)では2025年までに100%自然エネルギーでの電力供給を目指しています。100万人規模の大都市ではこれは世界初の試みです。2018年にはすでに一般家庭や地下鉄の電力使用分など約50%となる見込みだそうです。プロジェクトは、市のエネルギー公社(シュタットヴェルケ・ミュンヘン)が実施しています。大きなポテンシャルを持つのが風力発電で、市内での発電のほか、ドイツや欧州各地での風力発電プロジェクトに、シュタットヴェルケが出資するという方法も取られています。

またミュンヘンでは地域熱供給網が発達していて、現在も効率のよいコジェネレーションが用いられていますが、2040年までには地下20003000メートルの80100℃の地熱を利用して熱供給も「自然エネルギー100%」に、さらに地下水を利用した地域冷房システムも計画されています。

こうした取り組みが、農村部だけではなくミュンヘンのような大都市で実現されるということは、大きな意味があるでしょう。

さらに近年、ドイツの福音主義教会(EKD: Evangelische Kirche in Deutschland)も気候変動問題に取り組み・発信をしていることは大きなことだと、メルクナーさんは言います。20175月にベルリンで開かれた「信徒集会(2年に1度の大会)」では、会場までの自転車ツアーが企画され、その際にベッドフォード=シュトローム常議員会議長も「我々自身が行動によって示さなければならない」と、化石燃料の自動車利用から自転車や公共交通機関へのシフトを例に挙げてコメントしたそうです。

201711月には、2020年までに温室効果ガスを40%削減するというドイツの目標を達成すべきとして、連邦政府に働きかけるとともに、教会での省エネなどの取り組みも掲げました。https://www.ekd.de/evangelische-kirche-fordert-sofortprogramm-zum-klimaschutz-30804.htm

これまで保守的とされてきて1015年前までは原発も否定していなかったキリスト教会の、近年のこのような動きは注目に値する、今後も様々なセクターとの連携が欠かせないとのこと。

さらに、重要なことは、ドイツで2016年までに導入された再生可能エネルギーのうち「個人」と「農業者」が合わせて4割以上を所有し、4大電力会社が所有する割合は5.4%に過ぎません。(2016年までの再生可能エネルギー発電への主体別投資)

元ベルリン自由大学准教授の福澤啓臣さんからは、日本でよく誤って伝えられるドイツのエネルギー事情について補足がいただきました。
・ドイツの市場電力価格は、欧州各国と比べてむしろ安い。
・再エネ賦課金が高いとよく言われるが、2023年頃をピークにその後は下がっていく見通し。
・ドイツはフランスから原子力の電気を輸入していると言われるが、対フランスでは輸出のほうが多い。対外取引全体でも、輸出量が輸入量を大きく上回っている。
(詳細は資料参照)http://foejapan.org/energy/evt/180327.html

こうした事実が誤って伝えられて「ドイツのエネルギーシフトは失敗、うまくいっていない」と日本で言われることもあります。しかし、いくつかの「もっと改善すべき」政策はあるとしても、大きな方向性として脱原発・脱気候変動にドイツのエネルギー政策が向かっていることは間違いない、とヴァイガーさんも明確に否定しました。

●ドイツでのエネルギーシフトの受容と若者(マルティン・ガイルフーフェ氏より)

IMG_1057最後に、マルティン・ガイルフーフェさんより、気候変動と脱原発、若者の関わりについて話していただきました。ガイルフーフェさんは、大学在学中からBUND青年部の活動に参加し、現在はBUNDバイエルン州支部で政策提言や国際問題を担当しています。

ガイルフーフェさんはまず、「再生可能エネルギーの大幅拡大を支持するか」という2017年のアンケート結果を紹介します。結果、回答者の65%が「非常に重要」、30%が「重要」と答えていると言います。つまりドイツ人の9割以上が再生可能エネルギーの拡大を支持しているとのこと。長年の脱原発の世論と、気候変動に対する危機の共有が背景にあると言えるでしょう。

ドイツでは、2002年に脱原発が決められたあと、BUNDも含む環境団体は、石炭火力発電所の新増設に対する大きな反対運動がおこりました。その成果として2007年から2008年には41基(現在の日本の計画と同じくらい!)あった建設計画のうち、約半分の22基の計画が中止となりました。現在は11基の石炭・褐炭発電所が実際に建設中もしくは稼働しているとのこと。ただ、既設を含めると60基以上の石炭・褐炭発電所が稼働し、電源構成に占める割合は約40%あります。今後これをどのように減らしていくかは、ドイツの気候変動政策の課題でもあります。

現在、石炭火力発電反対運動には、若者グループも積極的に関わっています。2017年ボンでのCOP23(議長国フィジー)の際には、ボン近郊の石炭の採掘地でアクションが行われました。

また若者世代の間では、肉食を減らすことや飛行機の利用をなるべくしないこと、プラスチック利用を減らすことなど、ライフスタイルの根本的な変革も大きなテーマです。

実際に、ヴィーガンやベジタリアンは若者に多く、またヨーロッパ内の移動は飛行機を使わずにバスや鉄道を利用することが環境活動をする若者の間では広く実践されています。ガイルフーフェさんも、例えばペットボトルはほとんど買わない、肉は少なめになどできるだけ心掛けているそうです。

このように、幅広い世代、様々なセクターによる脱原発やエネルギーシフトを求める動きが、ドイツの環境・エネルギー政策を形作ってきたということができます

それは、BUNDFoEドイツ)をささえる50万人の会員・支持者の圧倒的な広がりにも見ることができます。日本では、これほどの会員を抱える環境団体はまだありません。(FoE Japanへのご参加は大歓迎です!)

ただ、日本で脱原発・エネルギーシフトを求める市民運動が小さいかといえば、決してそうではありません。日本には各地にたくさんの草の根グループがあり、地域から地道に活動しています。脱原発、エネルギーシフト、子どもたちの保養、避難者支援、放射性廃棄物問題など、様々なテーマに取り組む団体がたくさんあり、連携の輪もあります。

「福島第一原発事故は非常に悲しいことだったが、そこから生まれたつながりもある。日本にもドイツにも、世界中で原発はなくせる。そこに向けて連帯していこう」ヴァイガーさんの力強い言葉で締めくくられました。

(吉田 明子)

BUNDFoEドイツ)来日セミナー:脱原発・脱石炭・エネルギーシフトと市民参加」
▼詳細・資料はこちら http://foejapan.org/energy/evt/180327.html

報告その1はこちら「BUND/FoEドイツ 脱原発の歴史と最終処分場問題」
https://foejapan.wordpress.com/2018/04/16/bund_energy_01/

メイ首相に、メッセージを送ろう!~日立の原発を受け入れないで!

日立製作所が進めようとしているイギリス・ウェールズへの原発輸出に関し、本日(5月3日)にも日立の中西会長がテリーザ・メイ英国首相と会談して、イギリス政府からの投融資や原発の買取価格の保証などを文書で求める予定と報道されています。(会談の時間はわかりませんが、イギリスの時間は、8時間遅れです。)

日立製作所が、このように必死になっていることは、原発ビジネスのリスクの大きさを示すものにほかなりません。イギリスでは電力需要が激減し、風力の価格は原発よりもずっと安く、原発建設の必要性はまったくというほどありません。

立地地元ウェールズのアングルシーの人たちも反対しています。福島原発事故を経験した日本の私たちから、ツイッターやメールで、ぜひ、メイ首相にメッセージを送りましょう! 以下、サンプルですが、英語が得意な人も、得意でない人も、ぜひ自分なりのメッセージを考えてみましょう。

参考>

【ツイッターでメッセージを送る】
→ @Theresa_May   ハッシュタグ#Wylfa #Stop_Hitachiを入れてください。
ツイッター文案
. @Theresa_May  Unacceptable: @HitachiGlobal ‘s #nuclear export means huge risks and costs for Japanese and British people while companies and banks make profit. #Wylfa #Stop_Hitachi
(メイ首相、日立の原発輸出は、巨大なリスクと費用を、日英両国の国民に押し付け、そのかたわら、企業や銀行が利益を得ることになり、受け入れがたいものです)
. @Theresa_May You already have alternatives! Renewable  much cheaper than nuclear in U.K. Don’t agree the deal with Hitachi. #Wylfa #Stop_Hitachi
(メイ首相、イギリスは代替案を持っています。再生可能エネルギーは、原子力よりずっとやすい。日立の売り込みに賛成しないでください)
 
. @Theresa_May Fukushima nuclear crisis is not over. The risks of nuclear power is simply too huge. Please do not invest #Wylfa #Stop_Hitachi
(メイ首相、福島原発事故は終わっていません。原子力のリスクは、巨大です。ウィルファに投資しないでください)
. @Theresa_May Due to Fukushima nuclear disaster, many people have lost their livelihoods, families and communities have been separated. Please remember Fukushima. #Wylfa #Stop_Hitachi
(メイ首相、福島原発事故により多くの人たちが生業を失い、家族やコミュニティが分断されました。福島を忘れないでください)
.@Theresa_May Cost of the Fukushima Nuclear accident adds up to 21.5 trillion yen.  Don’t agree the deal with Hitachi. #Wylfa #Stop_Hitachi
(メイ首相、福島第一原発事故の費用は21.5兆円にまでなりました。日立の原発輸出に賛成しないでください。)
【メイ首相にメールする】
 
サンプルレター
 Dear Prime Minister Teresa May
We’ve leant that Hitachi’s Chairman is to visit you to ask for a direct investment in Wylfa Newydd project.
Since nuclear power is expensive, dirty and unsustainable energy, it is not a good idea to pour public money into the project. 
There are already alternatives. The price for wind power gets much cheaper in U.K.  
Moreover, once nuclear accidents happen, the cost of it is tremendous. We’ve learnt that from Fukushima Nuclear Crisis.
Still many people are suffering from Fukushima nuclear crisis. 
Hitachi should learn the same and they should rather export renewable and sustainable energies to U.K.
We also learnet that local groups oppose to the project.
The site is surrounded by pristine nature, including the colonies of protected bird species. 
I strongly suggest you not to invest the project. 
Best wishes,
—————————–
以下、FoE Japanと現地の市民団体のPAWBが昨日出した共同声明です。ご参考までに!

Friends of the Earth Japan
People Against Wylfa B

Urgent Joint Statement
Hitachi’s nuclear export transfers risks to both Japanese and British people while companies get profits
Responding to the upcoming meeting between Hitachi Chairman Nakanishi and Prime Minister May

Hitachi’s Chairman Nakanishi is reportedly going to visit British Prime Minister Teresa May on 3rd May to ask the U.K. government to take a direct stake in Wylfa Newydd nuclear power project in Anglesey, Wales. The report says Hitachi is going to ask not only for direct investment but also an assurance for a power purchase agreement(1). Hitachi’s struggle just shows the risks of the nuclear power project is simply huge.

In February, Mr. Nakanishi already expressed the view that the project would not happen without government commitment and stated “Both UK and Japanese governments understand that the project would not go on without the commitment by the governments”(2). To reduce the risk of the project, the project is said to be insured by Nippon Export and Investment Insurance(NEXI), 100 percent Japanese government owned export credit agency(3).

In addition to huge construction cost, nuclear projects are associated with various risks such as accidents, increased cost for tougher regulations, opposition from local people, radioactive waste management and so on. Risks are too huge to manage. Thus, it is clear that companies should decide to retreat from the project. While transferring risks of the project to people, it is unacceptable that the companies and banks take profits.

Electricity generated from Hinkley Point C nuclear power, which is currently under construction in UK will be purchased at £92.5/MWh, which is approximately twice as expensive as the average market price. National Audit Office of UK warned that this would increase ratepayers burden (4). If UK government gives an assurance for expensive price of electricity to Hitachi, the project will put more burden not only Japanese taxpayers with huge risks, but also British ratepayers with huge costs. For whose sake is this project?

The project site for Wylfa Newydd is surrounded by pristine nature. Colonies of protected bird such as Arctic terns was discovered near the site(5). The National Welsh Coastal Path borders the land bought by Hitachi which is in an area of Otstanding Natural Beauty. The project would put a heavy burden on the social and economic infrastructure on the island rather than benefitting the local economy(6) .

The Spokesperson from People Against Wylfa B, Dylan Morgan says;
“Don’t pour good money in to the bottomless black hole of nuclear power. This is an old fashioned, dirty, dangerous and extortionately expensive technology. The Fukushima triple explosions and meltdowns has and will continue to cost the people of Japan greatly. There is no end in sight for this continuing tragedy, which means that no new nuclear reactors are going to be built in Japan. It is unacceptable that Japan wish to export this deadly technology to another state in order to keep Japan in the nuclear club.”

TEPCO’s Fukushima Daiichi nuclear accident is not over. Globally the cost of renewable energy decreases dramatically and energy efficiency is also improved. Exporting nuclear power is against that trend. This is morally and economically the wrong direction. Moreover, pouring public money to a handful of private companies without consulting the public or having discussion at a parliament is unacceptable.

Japanese government and companies should seek and promote nuclear phase out and sustainable and democratic energy systems based on thorough reflection on the lessons learned from the nuclear accident. We strongly oppose Hitachi’s Wylfa Newydd project. No money from Japanese and British taxpayers should be used to save this totally outdated and dangerously wasteful project.

1. “Hitachi seeks assurance from UK’s May on shared stake in nuclear project” Nikkei Asia Review, 29th April 2018.
2. ”Committements by both UK and Japanese government necessary fro Hitachi’s nuclear project, says next chair of Keidanren” (In Japanese) Reuters, 13th Feb 2018.
3.“Japanese and UK government to support Hitachi’s nuclear project, loss may result in public financial burden (in Japanese)” Asahi Shimbun, 11th Jan 2018.
4. “Hinkley Point C” National Audit Office, 23th June 2017
5.“Plans for Welsh nuclear power plant delayed by concerns over seabirds” Guardian, 9th Apr 2018.
6.“Wylfa Newydd: Nuclear plant ‘increases homelessness risk’” BBC, 27th Mar 2018.

電力自由化から2年、パワーシフトは進んだか?

20164月の電力小売全面自由化から丸2年が経ちました。

低圧分野での大手電力から新電力のスイッチングは全国で8.2%、東電エリアで11.7%、関電エリアで10.9%201711月時点)となりました(*1)。

ただ、切り替え先の上位はガス会社系や携帯電話会社系、石油会社系などの大手新電力が占めています

一方販売電力量でみると、新電力のシェア(低圧・高圧全体)は全面自由化前の約5%から201711月時点で約12%まで高まっており、これは当初の想定(経済産業省は2020年時点の新電力シェアを10%と仮定していた)より高いということができます。

しかし再生可能エネルギーや地域貢献の視点で選択したい消費者にとってはどうでしょうか。

再生可能エネルギーを重視する事業者や地域の事業者も、当初は家庭向け販売を開始しているところは多くはありませんでした。2年経ってその状況は変化しています。これから出てくる地域電力会社や自治体電力会社も複数もあり、具体的な選択肢が増えてきています。

一方で、大手電力会社の巻き返しが大きいのが現状です。高圧分野での新電力のシェアは20177月に15%台に達しましたがその後停滞しています。すでに2016年度から、自治体電力調達への入札にも大手電力が参加して低価格で契約をとる事例が各地で相次ぎ、大手企業や大口顧客については、新電力への申込をした数日後に大手電力からさらに安い見積もりが届くということも、新電力から多数報告されています。

パワーシフト・キャンペーンでは年に2回程度、再エネ供給を目指す新電力との意見交換を実施していますが、再エネ紹介している新電力も例外ではありません。いまだに厳しい状況が続いていますので、少し見てみましょう。

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1)再エネ新電力の苦労:再エネのアピールだけで売るのはなかなか難しい

意見交換のなかで再エネ新電力のみなさんが口々に言うのは、広く一般に対して、再エネのアピールだけで販売することは難しいということです。

生協系の電力会社であっても、当初の目標より契約が下回ったり、価格重視のプランと二種類がある場合には再エネプランの契約が予想より伸びていないなどの難しさがあると言います。配達を担当するスタッフは通常でもお知らせする情報が多い中、複雑な電力契約について丁寧に説明することに少しハードルがあるとのお話しも聞きました。

地域のガス会社等もやはり、再エネに関心を持つ消費者に出会うのは容易ではないようです。例えば個別訪問やイベント開催をしても、それだけでは関心を持つ人は少数といいます。

そのためパワーシフト・キャンペーンでは、運営団体や賛同団体の周辺に環境やエネルギー問題に関心のある消費者や市民が少なからずいるので、そのような関心のある人たちに情報共有し、具体的な行動にどうつなげることができるか、試行錯誤しています。

2)選択肢は増えたものの、情報は減った

2016年の小売全面自由化開始当初は、多くの新聞、テレビ、雑誌などで特集が組まれ、その中で再エネ新電力を選ぶ可能性についても触れられました。

しかし当初は、再エネ新電力を選びたくても、実際に申し込みできるところは少数しかなく、「少し待ってから」もしくはとりあえず「再エネでなくても別の新電力に」という状況でした。

2016年度の後半から2017年度にかけてようやく、各地の生協や各地の再エネを重視する新電力が実際に販売を開始し、現在ようやく東電管内や関電管内、九電管内などを中心に、複数の選択肢がでてきたところです。(中国電力管内や北陸電力管内では、もともとの電気代が安価だったことがあり新電力の進出はまだまだ遅れています。)

一方で、電力切り替えに関する情報はだいぶ少なくなってしまっています。

「とりあえず様子を見ていた」
「再エネ新電力がもう少し出てくるのを待っていた」
「忙しくてそのままになってしまっていた」
という方も多いのではないでしょうか(*2)?

3)大手電力の巻き返し

冒頭に書いたように、高圧分野や大口顧客に対する大手電力の巻き返しに加え、低圧分野でも巻き返しが起こってきています。例えば関西電力は、原発の再稼働を理由に20178月、さらに2018年の夏にも再値下げをすると発表しています。このような値下げは「原発の電気は安い」と錯覚させるためのパフォーマンスであると考えられますが、特に小規模の再エネを重視する新電力が追従できるものではなく、相対的に高く見えることでさらに状況が厳しくなっています。

東京電力や東北電力は、「アクアエナジー100(東京電力)」など水力発電の電気を中心とした「クリーンな」プランを打ち出したり、別途電力小売の子会社を設立したりしています。そうしたところへの切り替えは、結局は大手電力をささえるのと本質的に変わりません。パワーシフト・キャンペーンではそのため、大手電力会社の水力プランや子会社は紹介していません。

4)再エネ調達の困難

再エネ100%を供給する電力会社はあるのか、ということはよく聞かれます。確かにいくつかの新電力では、「再エネ100%」のプランを打ち出しています。その多くは、グリーン電力証書やJクレジット、非化石価値取引証書などを使って「再エネ100%」としているものです。

生協系の電力会社などは、自社で調達するFIT電気を高い割合で調達しているところも多数あります。

一方で、地域のLPガス会社などで、再エネやFIT電気の割合が現状ではまだ必ずしも高くないところもあります。こうした会社は、自社開発や自社の顧客などのつながりで地域の太陽光発電の電気を調達したりしていますが、やはり量でいうとまだまだ小さく、今後の開発も容易ではありません。

都市部ではそもそも太陽光発電などの立地に限りがありますし、小水力発電等の開発には、場所選定から送電線への接続に至るまで、手続きや調整に多くの時間と費用がかかります。

「再エネ供給を目指す電力会社」といっても、どのような形でそこに向かっていくかは各社それぞれです。各社の特徴や理念を見て、ぜひ応援したい電力会社を選んでいただけたら幸いです。

 ―――――――――――

このように、小売り全面自由化から2年経った現在も、再エネ供給を目指す新電力が多くの顧客を得て安定していくためには、市民や消費者、理解ある企業や事業所の後押しがまだまだ必要です。

その後押しとは、実際の切り替えと、口コミなどによる情報普及です。

 今からでも遅くありません。
まだの方はこれを機にぜひ、電力切り替えをご検討ください。

http://power-shift.org/choice/

そして、周りのかたにもお伝えしてみてください。小さな規模でも、勉強会やセミナーの開催、環境イベントなどでの情報共有も有効です。その際のチラシや電力会社一覧などのツールは、パワーシフトのウェブサイトからダウンロードしていただくこともできますし、郵送などもしていますので、ぜひお気軽に事務局までお問合せください。

http://power-shift.org/

2018年度はさらに、自治体系の新電力や生協系電力、地域に根差した電力会社など、まだまだ紹介候補の電力会社があります。パワーシフトとしても引き続き注目し、紹介を予定しています。
エネルギー政策への働きかけとともに、市民・消費者としてできること。
ぜひ一緒に広げていきましょう!  (吉田 明子)


*1
総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会(第8回)
資料3-1「電力小売全面自由化の進捗状況」

*2 パワーシフトで20179月に実施したアンケート
「電力自由化から1年半『おうちの電気、もう切り替えた?』アンケート結果」

http://power-shift.org/survey_171114/

3・11甲状腺がん子ども基金記者会見~再発または転移による再手術例 「検査縮小すべきでない」

甲状腺がん子ども基金180301FoE Japanも理事に参加する「3・11甲状腺がん子ども基金」は、原発事故後に甲状腺がんと診断された25歳以下の方々に療養費給付を行っています。2016年12月~2018年2月まで、事故当時福島県に居住していた84人、福島県外30人の患者、合計111人に給付を行いました。この福島県84人のうち、がんの再発または転移による再手術した人が8人いることが明らかになりました。この8人の方々の再手術までの期間は最短で1年、最長で4年4か月です(平均は2年4カ月)。

一方、福島県県民健康調査においては、事故当時18歳以下だった子どもたちのうち194人が、甲状腺がんまたは疑いと診断されていますが、「過剰診断によるもの」とする専門家もおり、検査は子どもたちに心身の負担をかけるとして検査を縮小すべきとの根強い意見があります。

本日(3/1)開催された記者会見にて、基金の専務理事の吉田由布子さんは、福島県立医大の鈴木眞一氏の報告や甲状腺専門病院である隈病院の医師らの論文を紹介し、「若年者ほどがんの進行が速いという研究結果もある。過剰診断という見解は、臨床的見地から見直すべき」と述べました。

また、代表理事の崎山比早子さんは、「”過剰診断”という意見に、臨床医は賛成していない。再発が多いというデータも把握されないまま、検討委員会も評価委員会も議論している。検査が縮小されれば、発見が遅れ、また実状把握ができなくなる」と述べました。

福島県外においては、給付対象30人のうち、アイソトープ治療を行った人が11人(福島県内では84人中2人)。発見が遅れたため、重症化したと考えられます。理事の海渡雄一さんは、「福島県だけでやることが間違っている。国の責任で、福島県外でも検査を行うべき」としました。また海渡さんは、2012年当時、公明党・自民党など野党で健康調査についての法案を提出しようとしていたことを紹介。

とはいえ、現在ある「子ども・被災者支援法」でも、事故当時「一定の線量」以上の場所に居住していた人たちには、国の責任での健診の実施が規定されています(第13条)。

「少なくとも、子どもである間に一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住したことがある者(胎児である間にその母が当該地域に居住していた者を含む。)及びこれに準ずる者に係る健康診断については、それらの者の生涯にわたって実施されることとなるよう必要な措置が講ぜられるものとする。」

国はこれを履行すべきでしょう。

(満田夏花)

イギリスですすむ日立の原発輸出〜公的資金で後押し!?市民に押し付けられるコストとリスク

ウェールズ・ウィルヴァで日立の子会社ホライズンが進める原発計画。
イギリスでは高すぎる原発のコストが問題になっています。実際にどれくらいウィルヴァ原発事業が進んでいるのでしょうか。また、誰が莫大なコストを負担するのでしょうか。

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2015年に閉鎖したマグノックスの原発。この横にウィルヴァニューイッドを建設しようとしている。

パート1はこちら

イギリスの市民に押し寄せる負担

現在、イギリス・ウェールズ地方北部で進むウィルヴァニューイッド原発計画は、報道によると総事業費3兆円、それに対し、日本政府100%出資の国際協力銀行(JBIC)および日本貿易保険(NEXI)による融資と保証が検討されているとされています。
イギリスでは、実は1995年以降、一つも新しい原発は建設されていません。2008年に発表された英・原子力白書では、2030年までに新たに12基の原発を建設するとしており、ヒンクリーポイントC、サイズウェルC、ウィルヴァ、オールドバリーB、ムーアサイド、ブラッドウェルBの計8カ所で原発計画が提案されています。まだ1基も建設されていないのが現状ですが、そのうち、計画が最も進んでいるのがイギリス南西部で進むヒンクリーポイントC原発建設です。
ヒンクリーポイントC原発(3200MW、2機のEPR(欧州加圧水型炉)建設)は、フランスのEDFが66.5%、中国広核集団(CGN)が33.5%出資しておこなう原発事業です。事業費は約3兆円(£196億、これは2012年のロンドンオリンピックのコストの2倍だそう)で、このプロジェクトに対してはイギリスの政府債務保証スキームの適用、差額調整契約制度(CfD)による電力価格の保証 がされています。差額調整制度とは、電源別に基準価格(ストライクプライス)を定め、その価格が市場価格を上回った場合、その「差」を電力料金にのせて需要家から回収するシステムです。ヒンクリーポイントC原発の基準価格は£92.50/MWhで35年契約です。2018年1月のイギリスの電力の市場価格はだいたい50 £/MWhでした。単純に今の市場価格で考えると、約40£の差額は電気料金に上乗せされるのです。(ちなみにイギリスの風力価格は2017年末時点で£57.5/MWh
イギリス監査局の試算では、今後2030年までにCfDを通じて、約4兆5千億円(300億ポンド)の事実上の補助金が投入され、電気料金が年間最大2000円(15ポンド)ほど値上りする恐れがあるとしています 。消費者の負担が大きくなることからも、風力の価格が低下していることからも、原発を政府が手厚く支援することに関して、イギリス国内で問題になっています。

ウィルヴァ原発に対しても、イギリス政府が債務保証スキーム適用検討に合意していますが、前述のようにヒンクリーポイントC原発のコストが高すぎるので、ヒンクリーポイントCで用いたスキーム以外を模索するとしており 、ウィルヴァ原発の資金調達の枠組みや電気の買取価格は今の所不明です。また、ウィルヴァの基準価格はヒンクリーポイントCよりもかなり安くなるとも言われており、その場合、事業の採算性は非常に下がることになります。

このように、新規原発建設によるイギリス国民への負担は莫大です。イギリスは電力市場を自由化しているのですが、原発には補助金を投入しない(No public subsidy policy)という政策をとってきました。原発事業によるコストやリスクは事業者が原則負うとことになっていたのですが、ヒンクリーポイントC原発のように、事実上、イギリス政府は手厚く原発建設を支援しています。

日本の役割

ウェールズへの原発輸出は、一民間企業(日立)の事業です。一義的にはプロジェクトのリスクやコストは事業者や融資する銀行などが負うべきですが、日本では小泉内閣の2005年の原子力政策大綱を受けて、翌2006年にまとめられた原子力立国計画で、それまで国内が中心であった日本の原発産業が国際的な市場で原発推進に先導的な役割を果たすことが強調されています。そしてウェールズへの原発輸出に対し、政府100パーセント出資の日本貿易保険(NEXI)による融資保証、国際協力銀行(JBIC)を通じた融資を行うことが報じられています。

東電福島第一事故後も原発輸出は国策として推し進められておりインドやベトナムなどに対し、トップセールスが繰り広げられ、2016年には長年締結交渉が続けられてきたインドとの原子力協定が署名され、2017年には国会審議を経て批准・発効してしまいました。

原発輸出に対して公的信用を付与する際には、政府が輸出相手国が原発の安全を確保するために適切な制度などを有しているか等「安全確認」を行います。2015年に閣議決定された「原子力施設主要紙機材の輸出等に係る公的信用付与に伴う安全配慮等確認の実施に関する要綱」は、相手国が原子力安全条約などの国際条約を締結しているかどうか等をイエス・ノー方式で調査するもので、プロジェクト個別の安全性は審査せず、とても実質的な安全確認はできないものになっています。

JBICおよびNEXIは、融資・保証を行うか決定する際に、融資・保証審査に加え、環境社会配慮ガイドラインにのっとり、プロジェクトが社会環境に及ぼす影響を確認・配慮することになっています。しかし、JBIC・NEXIは「安全確認」に関しては「政府が行う」としており、JBIC・NEXIは行わないとしています。つまり政府側にも、JBIC・NEXI側にもプロジェクト個別の安全性を主体的に確認するシステムがないのです。

一般的に、プロジェクトの一義的なリスクは企業や銀行が負うべきですが、保険をかけてリスク分散することもあろうかと思います。しかし、融資保証を行う報道されているのは政府100パーセント出資の公的信用機関です。融資額や保証額が巨額になることが予想されるため、万が一貸し倒れが生じた場合は、国民負担が発生する可能性も指摘されています。

原発は、東電福島第一原発事故でも経験したように、一度事故が起これば、取り返しがつかず、非常にリスクの大きな事業です。事故が怒らなくても、収益性は乏しく、商業上のリスクは大きいのです。まさしく「民間ではカバーできない」規模のリスクです。

世論は脱原発を支持しており、福島事故の被害が続く中、国民的議論もないままに、公的資金で輸出を支援することは社会的に許されるべきではありません。日立製作所や民間大手銀行が負いきれないリスクを、政府100%出資のJBICやNEXIがカバーするということは、リスクを国民に転嫁しているいるといっても過言ではありません。

(スタッフ 深草)

事業者はもっと住民と真摯に向き合い、説明を-蘇我火力発電所に関する住民説明会

インターンの富塚です。先日、千葉市で計画されている蘇我火力発電所に関する事業者による説明会が開かれ、参加しました。その様子を報告します。

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千葉市中央区蘇我地区に建設が予定されている蘇我火力発電所。環境への影響調査の方法が記された環境影響評価方法書が1月22日に提出された。この方法書は3月8日まで公開されているが450ページ以上あり、内容も大変専門的で理解するのが困難だ。このことも踏まえ、事業者である千葉パワー株式会社による住民説明会が2月7、9、10日と蘇我と市原で行われた。地域住民や数多くの環境団体は近辺への影響、そして地球温暖化への影響を懸念し、建設計画に強く反対している。

新しく建設予定の石炭火力発電所は、石炭と副生ガスよる超々臨界圧発電方式で出力約107万kWになると見込まれている。千葉パワーは建設を2020年開始とし、24年からの稼働を目指している。

千葉パワーは中国電力とJFE スチールが共同出資をして昨年4月に立ち上げられた。(蘇我火力発電所が共同会社として初のプロジェクトとなるということだが、説明会は淡々と慣れた様子で行われた。)今回の説明会は「環境影響評価方法書のあらまし」ということで、建設によって懸念される周辺地域や環境への悪影響をどのように調べ、対策をするかという説明が主だった。環境調査は昨年5月に始まり、今年4月まで行われるとのこと。

私が参加した2月7日の説明会には、地域住民、環境団体、そして報道関係者などおよそ80名が参加した。説明会は千葉パワー幹部であるJFEスチール東日本副社長などが登壇した。環境影響評価手続きやその方法についての説明が約45分間あったのちに30分の休憩を経て質疑応答に入ったが、参加者には休憩時間中前半の15分と短い質問提出の時間が与えられた。質問用紙につき一問ずつとされていたため、十数枚の用紙に手を休めることなく意見する人も多くいたが、すべての意見を書き出すには全く時間が足りなかった様子だった。また、休憩時間後半の15分は事業者の解答準備の時間として設けられたため、質問にその場で答えることができないことにも疑問と不安が募った。第2、3回の説明会ではこの進行方針の見直しを参加者は要求したが、事業者側は全く対応しなかった。

質問については「そもそもなぜ」といった内容のものが多かった。なぜ石炭火力発電所なのか。そしてなぜ蘇我なのか。住民の健康被害や環境破壊が懸念される中で、どうしてこのような計画にいたったのか。JFE スチール東日本製鉄所が所有する建設予定地にはすでに火力発電所に必要な設備がもう備わっている上に冷却に必要とされる海水も豊富にあるという。しかし説明によると発電事業で使用された海水は7度ほど温度が上昇して海に戻されるという。これは国が定めた基準値に順ずるとしているが、温度の上がった海水が、大量に海へ放出された時の生物などへの影響、そして東京湾岸の他の火力発電所との複合的な影響も参加者の心配材料だった。

また千葉パワーは国の「エネルギー基本計画」に従い、日本は島国でありながら資源も少なく電力の輸入も難しいため、石炭火力発電所は必要なのだと説明。安価で安定した石炭火力発電は地政学的にも経済的にもリスクが低く、将来的にも地元の雇用増大、地域への納税などんメリットを示したが、パリ協定をはじめとした各国の脱石炭やCO2削減目標、そして国内でももうすでに電力は十分に足りていることなどを考慮すると、事業者が経済的利益と海外輸出を目論んでいることは明確だろう。

もう一つの論点は周囲への環境被害だ。粉塵や煤塵、そして二酸化硫黄や二酸化窒素をはじめとした大気汚染物質への対策についての質問も多く寄せられた。蘇我では過去にも公害訴訟がたたかわれた背景もあり、今も地域の大気の状態は良いものであるとは言えない。しかし千葉パワーはこのような環境被害拡大への懸念があるにもかかわらず、石炭粉塵の影響は全く環境影響評価の項目としていない。これは、すべて密閉容器内で処理をするためとし、その他の大気汚染物質に関しては散水や排煙脱硝装置などの設備による対策を進めると説明した。事業者側は最新鋭の技術を駆使し、被害を最小に抑える努力をすると繰り返したが、実際、磯子火力新2号機と比べると大気汚染物質量の比較によって最善策をとっているわけではないことがわかる。様々な環境被害への懸念に対して長期的には心配はいらないとしているが、短期的に基準に反しているのであれば問題なのではないか、独自に調査をするために測定地をもうけないのかという質問も寄せられていた。詳しくはこの先の準備書に明記し、改めて理解を得られるようにするとのことだった。市民への健康被害は国の規定に反していないため心配ないとのことだが、説明会後参加者の一人はこのような対策では不十分だと、明らかに納得のいかない表情を見せていた。また、国が定めている基準値も他国のものと比べると甘く(例えば水銀など)、見直すべきなのではないかと思われる。

第一回目の説明会で寄せられた質問は約60件、環境、健康、必要性、などが多く問われたが返答があったのは39。予定時間より質疑応答は30分延長したが、質問とは少し違った答えだったり、曖昧な解答が多かった印象を受けた。また、時間切れになることを理由に答えにくい質問は避けたのではないかという声も多く上がった。千葉パワーはこの第一回の説明会で社会貢献の資料などを配布し、地域住民の理解を得ようとしたが、悪影響しか及ぼさない石炭火力発電所建設計画にはとても賛同しがたい。地域住民は、既に問題である地域の大気の状態や環境破壊への影響をまずは対処するべきだという強い意思を持っている。これからさらに多くの地域の方々にこの計画と実情を知ってもらうことも今後の課題となる。
(インターン 富塚)

気候ネットワークが作成した蘇我火力に関する解説書はこちら→
環境影響評価方法書から読み解く(仮称)蘇我火力発電所建設計画~問題点と事業者に確認すべきポイント
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蘇我石炭火力発電所の中止を求める署名も行っています!
詳しくはこちら