気候資金や拡大する損失や被害への対策で進展みられず(COP閉幕レポート2)

ボンで開催されフィジーが議長国を務めた国連気候変動枠組条約会合は、残念ながら期待された成果を出すことなく閉幕しました。

cropped-38181814401_69c43ccd05_oCOP23は、気候変動の影響を受けている島嶼国フィジーが議長国を務めるということで、気候変動の影響をすでに大きく受けている途上国や貧困層の人々への支援(「損失と被害」)や気候資金について、進展があることが期待されていました。

今年、巨大ハリケーンにより人道的危機に直面したバハマやキューバなどから会議冒頭、支援の強化を求める強い声が相次ぎましたが、この会議で損失と被害を議論することに反対する米国を中心に、先進国の反対によって今会議での大きな進展は見られず、リスク移転のための保険制度整備情報サイト立ち上げと来年春の専門家フォーラムの開催を決定するに留まりました。

2018年に合意される予定のパリ協定のルールブック交渉(パリ協定を実施するためのルールブック)については、成果の鍵とみられた来年に向けた交渉文書の要素書き出しで進展がみられ、今後の交渉の基礎となる最初の一連の文書が出されました。国別貢献(NDC)の定義や透明性枠組みでの報告の範囲、先進国途上国の差異化など根本的な論点について歩み寄りはなく、見出しと小見出しに全ての国の交渉上の立場が反映されています。

COP17以降の6年間の停滞の時期を経て、このCOP中に、国際(炭素)市場メカニズムについての交渉が予想以上のスピードで進み、次回4・5月に開催される補助機関会合までに交渉文書のたたき台が用意されることが見込まれています。この交渉はロシアや東欧圏に大量に蓄えられている京都議定書下の過去の排出量枠、CDMのオフセットルールの移植、熱帯雨林/REDD+(途上国の森林減少・劣化に由来する排出の削減)、国際民間空港機関(ICAO)のもとでの新しいグローバルオフセットスキームとの連携可能性など、かなり懸念の大きい要素が含まれています。

COP22と23の議長国であるモロッコとフィジーは、促進的対話(タラノア対話と改称)のデザインを作成。この促進的対話のデザインは最終日に承認され、2018年を通じ実施され、COP24での対話を経て2020年以降の各国の野心の引き上げを促進することが意図されています。しかし承認されたデザインでは、2020年以降のアクション、それも緩和のみに焦点がおかれ、途上国への資金支援や、公平性については含まれていません。

一方で途上国は初日に、タラノア対話とは別に2020年までの行動の検証を議題として提案していました。これは京都議定書第二約束期間に関するドーハ合意の批准、2020年までの先進国の排出目標含む野心の引き上げ(カンクン目標)、先進国による2020年までに年間1000億円の気候資金目標の進捗などを交渉内で検証していくことを提案したもので、決定文書に採択されました。背景には、先進国の過去のコミットメントや2020年以降のパリ協定下での責任に不信を持つ途上国の強い結束があり、この議論を受け、EUは来年末までに京都議定書の第二約束期間(ドーハ合意)を批准すると表明しています。

今回の会議では、農業に関する交渉でひとつ前向きな結果が出ました。農民が適応やレジリエンス(強靭性)を高めるための具体的な行動や支援事業について議論する場が設けられることが決まり、さらにローカルコミュニティと先住民族プラットフォーム、ジェンダーアクションについても市民社会含め一定の成果と見られています。

アメリカの交渉団は、あきらかに交渉を妨害する形で存在感を発揮していました。オーストラリアの支持のもと、とくに資金のスケールアップ、損失と被害についての交渉をブロックし、パリ会議前同様、パリルールブックの交渉のもとで歴史的責任をないがしろにし、事実上途上国への責任転嫁となる発言を繰り返し行っています。多くの先進国はアメリカの陰に隠れつつも先進国として交渉をブロックしていました。また、アメリカは化石燃料と原発を推進するサイドイベントを開催。市民団体やユースが非暴力で阻止する様子(歌を歌ってサイドイベントを妨害)がソーシャルメディアを通じて世界に流れました。

気候資金についても大きな進展は見られませんでした。パリ協定9条5項のもとでの先進国による気候資金に関する事前の情報提供に関しては、途上国が事前に気候変動対策を計画する上で重要な要素となってきます。現在京都議定書下にある適応基金の将来についても、解決を来年度に先送りを狙う先進国の思惑により2018年に交渉が持ち越され、パリ協定のもとに引き継がれることが京都議定書締約国会議(CMP)決定に盛り込まれましたが、パリ協定締約国会議(CMA)のもとでの決定がこれから必要になってきます。先進国、とくにEUは、国際炭素市場メカニズムを推進し、適応基金と引き換えに市場メカニズムの交渉を進展させるよう求めていると言われています(適応基金の原資がクリーン開発メカニズムの一部収益を基にしているため)。

次回、COP24は2018年12月にポーランドで開催され、来秋のIPCCによる1.5℃目標シナリオの特別報告を受けての2020年、2030年の野心引き上げ(つまりタラノア対話と2020年までのアクション検証)、パリルールブックの採択、そして気候資金が注目されます。気候資金に関する閣僚級対話および国連事務局による公式の隔年評価報告も2018年に行われます。損失と被害に関してはCOP25で報告がまとめられ、現状のサポートメカニズムが評価・見直しされる予定です。なお、COP25はブラジルが開催国として名乗りを上げましたが、ラテンアメリカ諸国のコンセンサスが得られるまで決定は持ち越しとなっています。

また、パリ協定のルールブック作りに関する追加会合が2018年10月に行われる可能性が高いものの、開催の最終的な有無は来年5月の補助機関会合で正式に決定されることになっています。

(小野寺・深草)

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気候変動影響を受ける人々の声は国際社会に届いたか(COP閉幕レポート1)

11月6日から18日まで、ドイツ・ボンにて気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)が開催されました。

気候変動の影響を受けやすい島嶼国・フィジーが今回の議長国であったこともあり、FoE Japanは気候変動による損失と被害に対する支援がどれくらい議論されるかなどについて注目してきましたが、残念ながら気候変動による損失と被害についての交渉には、あまり大きな成果が出ませんでした。

FoEグループはこれまでも、先進国や一部の裕福な人々による気候変動への歴史的責任と、一方で多くの被害は貧しい人々や途上国に集中している不公正さを訴え、気候正義を求めてきました。またCOP期間中にもかかわらず、日本の国際協力銀行は住民から強い反対の声も上がっていたインドネシア・チレボン石炭火力発電所への貸付を実行。これについては、アジア諸国の市民社会からも大きな非難の声が上がり、ボンでは緊急アクションが行われました。

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また、FoE JapanはアジアのFoEグループなどと協力して、COP一週目にアジアの気候変動影響に関するレポートの発表や関連するイベントを行いました。

太平洋諸島では海面が上昇し、多くの人々が移住を迫られている。フラッキングを行う企業が干ばつの影響を受ける地域に入り込んでいる。ハリケーンは国全体を機能不全に陥らせ、そして気候変動移民を含む人々の自由な移動を阻止するための壁やフェンスが建てられている—

これらはFoEインターナショナルの「気候変動の影響を受ける人々」のワークショップで聞いた、話の一部です。

世界の人口の60%が集中するアジア太平洋地域は、気候変動の影響を最も影響を受けやすい人々の地域でもあり、ワークショップの初めには、FoEアジア太平洋による新たなレポートの発表も行いました。このレポートは、スリランカ、フィリピン、パプアニューギニアの3つの国のケーススタディを取り上げ、気候変動が引き起こす移住への懸念が高まる中、政府や政府機関がこの問題に早急に対応するよう訴える内容になっています。

ワークショップには、四人のスピーカーが登壇。

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左からステラ-マリア、マリナ、ヘマンサ(ファシリテーター)、カティア、ジョイ

FoEオーストラリア/ブリスベンの気候最前線グループ(Climate Frontlines Collective)のメンバーでパプアニューギニア出身のステラ-マリア・ロビンソンは、「ママの骨」と題した演劇のビデオの一部を上映。海面上昇が原因で母国を離れて新しい国へと移動する人々の現実を扱った演劇です。母国に根付いた文化や伝統、スピリチュアリティは移動のプロセスの中で失われていきます。

ロビンソンは、「オーストラリアは良い隣人ではない。彼らは移民の面倒を見ないし、自国の富の蓄積のためにしか行動しない。この状況を変えるために私たちは共に行動しなければならない。今、行動しなければならない。すぐに手遅れになり、地球という家がなくなるだろう。」と話を締めくくりました。

南アフリカのカルー地域のコイサン族の族長、ジョイ・ダーリングは、コミュニティーの「雨乞い人」。カルーは干ばつの土地という意味だそう。2017年6月、彼は部族を率いて、伝統的な雨の踊りのセレモニーに参加したましたが「雨は降らず、私たちは全ての家畜を失い、植物を植えることもできなくなった。これは、私がコミュニティーを破壊させてしまったことを意味する」と話しました。

コイサン族の干ばつで破壊されたエリアでは、現在、企業がフラッキングを行おうとしています。カルー環境正義運動にも参加しているダーリングは、「私たちは、フラッキングに反対し、私たちの大切な土地を破壊する活動にお金を与えないよう、世界銀行に求めている。お金はコミュニティーを分断し、人々の要求を満たすことはない。」と訴えます。

プエルトリコは、9月の2週間の間にイルマとマリアという2つのハリケーンに襲われ、深刻な状況が続いています。ハリケーン・イルマは電力供給を破壊し、ハリケーン・マリアは水インフラに影響を及ぼしました。「私たちのコミュニティーでは電気も水もなくなり、食料も不足してから60日間が経過した。」カティア・アヴィレス・ヴァスケスは、プエルトリコの小さなコミュニティーとともに25年間活動している彼女が話す姿は、多くの人の感情に訴えました。

ハリケーンによりプエルトリコのインフラ設備の多くが失われ、プエルトリコ政府は深刻な状況にある人々を支援せず、自分たちのために使っていると彼女は指摘します。16人しか死者が出ていないというのは政府のプロパガンダであると指摘し、「私たちの政府は実際には900以上の死体を燃やし、さらに100以上が死体安置所で燃やされるのを待っている。」と話しました。

マリナ・ソフィア・フレヴォトマスは、難民が壁に直面しており、食糧危機、戦争、海面上昇などの自国の過酷な現実から逃げるための自由な移動ができなくなっているという状況を指摘。

「壁を築いているのは、まさしくその移住の原因をつくっている人々である」彼女は、先進国が利益を求めて起こす行動こそが、移住の原因をつくっており、その不正義を訴えました。彼女は、「難民」はいつかは自国に帰るという希望をもって新しい場所に移動している一方で、気候変動移民は、精神面でも自らの場所を追い出され、もう自国には戻れない状況になります。多くの人々が、多くの人が想像できないような状況に置かれています。多くはヨーロッパに向かう途中で命を落とし、中にはヨーロッパとの境界に到達することすらできない人々もいます。この境界の警備には莫大な費用がかけられ、移民たちが到達した時には彼らは歓迎されない状態にあります。

「移民とは恐れるべき存在で、彼らの入国は止めなければいけないという恐れの物語を作り上げた。先進国にはこの不当な行為をやめるという責任がある」「壁は解決策ではない。気候正義は、壁がないという意味である。」

世界中で特に貧しい国や地域の人々が、気候変動の影響を受けています。国連気候変動交渉のもとでは、ワルシャワ国際メカニズムという気候変動の損失と被害を扱う会議の下に、「人々の移動」に関する特別委員会が設けられました。

しかしこのメカニズムには、十分な資源が与えられていません。気候変動による損害を認めてしまうと、気候危機をおこした過失と責任の追及につながる可能性があるために、汚染の原因をつくっている先進国が強い反対をしているからです。

これらの国々は、排出を迅速に削減したり、実際に被害を受けている人々を助けるために必要な資源を供給したりするなどの、歴史的な責任を負うための取り組みを、ほとんどしていないのが現状です。

気候変動の影響を受ける人々の人権、安全と尊厳は、保障され、尊重されなければなりません。
豊かな国々の政府は、一刻も早く排出を削減し、再生可能エネルギー中心で民主的なシステムに移行し、これまで気候変動を起こしてきた任をとらなくてはいけません。

ワークショップのレポートの詳細はこちら(英語)ワークショップのレポートの詳細はこちら(英語)

多国籍企業と人権に関する条約、「交渉段階」へ

先月、国連人権委員会で多国籍企業と人権に関する条約の第三回会合が開催されました。
その結果について、FoEインターナショナルも参加する「グローバルキャンペーン」による声明が発表されています。

プレスリリース
多国籍企業と人権に関する条約、「交渉段階」へ (原文はこちら

ジュネーブ、2017年11月1日 ― グローバルキャンペーン(注1)は、今回の会議が、多国籍企業と人権に関する条約作成について、アメリカとEUからの抵抗があったものの、重大な交渉に向けて大きく動いた成功の1週間だったと歓迎した。

2017年10月23日から27日までの国連の政府間ワーキンググループ(注2)の第3回会議の間、100以上の国と、200以上の社会運動や労働組合、市民社会団体の代表者らが、ジュネーブの国連本部に集まった。20以上の国やEU議会の議員(注3)、そして700以上の市民社会団体が、この交渉への強い支援の姿勢を示した。

多国籍企業と人権に関する条約の作成を課された国連のワーキンググループは、10月27日に第3回の会議を終える予定だった。その日、「この条約は、成立に反対した国を拘束しないものとする」という2014年の決議26/9への反対票を投じ、3年間プロセスに参加してこなかったアメリカ合衆国からの代表が、予想外にも重要な会合に参加し、ワーキンググループはこのプロセスを進めるうえで国連人権理事会から新しい委託を得る必要があるだろうと提言した。しかし、人権理事会の事務局は、ワーキンググループに新しい決議は必要なく、条約が交渉に入るまで作業を進めていく、ということを確認した。

ワーキンググループの議長報告者、エクアドル政府常駐国連代表・ギローム・ロング大使の最終勧告では、2018年に開かれる第4回ワーキンググループに向けた交渉プロセスのロードマップと、その先の会議について確認された。

報告書の草案と結論は全会一致で承認され、最終的な承認を得るために2018年3月に国連人権理事会へ提出される予定だ。さらに、エクアドルがこの第3回会議で提案した条約にむけたエレメント・ペーパーは2月末まで更なるコメントを受けつけた状態にし、その時までに、2015年と2016年の会議の成果も踏まえて、2018年の第4回ワーキンググループにむけた条約の草案を発展させるための基礎を作ることで合意した。

「これは、条約作成にむけたプロセスを支持するものたちにとって一つの勝利である。特にEUなど、いくつかのグループからの妨害に打ち勝つために、社会運動やNGO、多国籍企業の人権侵害の被害を受けたコミュニティからの政治的圧力は必要不可欠であった。」と、ビア・カンペシーナのリン・デービスは述べた。

トランスナショナル・インスティチュートの研究者ゴンザロ・ベロンは、「多国籍企業での人権侵害を防ぐために昨今とられている対策は、十分なものではない。多国籍企業が、幅広い投資者の保護メカニズムや国際法の抜け穴から恩恵を受けている一方で、多国籍企業の活動によって生命や生計手段、土地を奪われた人々は、しばしば、繰り返し正義を否定されている。」と述べている。

また、FoEインターナショナルを代表して、カメルーン出身のアポラン・コアーニュ・ズーペは、次のように述べている。「企業の自主規制は不十分だ。ホンジュラスのベルタ・カセレスをはじめとして今週国連で提起された多くの他の事件において、多国籍企業の行為に対し人権保護を訴える者が殺されている。法的拘束力のある条約にむけたこのプロセスは、緊急に必要とされている。これは、多国籍企業の活動によって被害を受けたコミュニティが、政府や国連に訴えているメッセージである。」

最近の3つの会議の間に示されたように、グローバルキャンペーンは、被害を受けたコミュニティや社会運動の経験に基づいた提案をもって、このプロセスへ貢献するよう全力を尽くしている。ワールドマーチオブウーマン・フィリピンの、マリー・アン・マナハンは、「グローバルキャンペーンが示した多国籍企業とそのサプライチェーンの人権に関する条約への提案(注4)は、条約草案にむけた国家間の交渉を進めるうえで非常に重要な文章だ。」とコメントした。

注釈
(注1) このプレスリリースは、人々の主権を主張し、企業の権力を打ち壊すこと、そして企業が刑罰を免れている状態を止めるためのグローバルキャンペーンによるものである。このグローバルキャンペーンは、200以上の社会運動と、特にアフリカやアジア、ラテンアメリカでの土地収奪・鉱山採掘・労働搾取や環境破壊に抵抗し、影響を受けたコミュニティのネットワークである。
ウェブサイト < https://www.stopcorporateimpunity.org/ >

(注2)多国籍企業や他の企業と人権に関する自由政府間ワーキンググループ(OEIGWG)は、2014年6月の人権理事会によって承認された決議26/9の結果として生まれたものである。< http://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/WGTransCorp/Pages/IGWGOnTNC.aspx >

(注3)多国籍企業と人権に関する国連の条約締結にむけた議会間でのイニシアチブの署名国リストはこちら < http://bindingtreaty.org/ >

(注4) こちらのサイトから提案書にアクセスできます
< https://www.stopcorporateimpunity.org/wp-content/uploads/2017/10/Treaty_draft-EN1.pdf >
連絡先
Sol Trumbo Vila(英語、スペイン語)
soltrumbovila@tni.org
+31 610172065

韓国ムン・ジェイン大統領のもとでの脱原発の道のり~新古里5・6号機の公論化プロセスで問われたものは?~

IMG_0857韓国環境運動連合(KFEM、FoE韓国)の事務所を訪問。ムン・ジェイン大統領のもとでの脱原発政策、特に新古里5・6号機の公論化プロセスについてお話しをうかがった。KFEMは公害被害者救済運動からはじまった韓国を代表する環境団体であり、各地に52か所の地域事務所をもつ。お話ししてくれたのは、メディアに脱原発の論客としてよく登場するというヤンイ・ウォニョンさん(エネルギー部門長)とアン・ジェフンさん(脱原発チーム長)。国際担当のキム・ヘリンさんも同席し、脱原発や反戦をテーマに活動されているキン・ポンニョさんが通訳をしてくださった。(写真上:KFEMの事務所の入っている建物の外観。)

ムン・ジェイン大統領の脱原発公約の内容

韓国には稼働中の原発が24基、建設中のものが4基、計画中のものが6基あり、全発電量の30%を原発が占める。こんな原発大国韓国において、ムン・ジェイン大統領は選挙公約として、脱原発を進めるため、①建設中の原発の建設中断、②計画中の原発の白紙撤回、③設計寿命の延長はしない、④脱原発ロードマップを作成する--などの公約を掲げた。これに従えば、現在建設中の新古里5・6号機は建設中断となるはずであった。

国民の圧倒的な支持で当選したムン・ジェイン大統領は、2017年6月19日、寿命を迎えた古里1号機の停止式典で、脱原発宣言を行ったが、建設中の新古里5・6号機については、「公論化プロセスにより、結論を出す」と公約よりも後退したものであった。

建設30%の新古里5・6号機が公論化プロセスへ

新古里5・6号機は、すでに建設が30%進んでおり、建設を中止するにはもっとも議論をよぶものであった。事実、地元の住民も、建設作業で雇用されていたり、補償金が支払われたりしており、今から中止することに関して抵抗が強かった。地元の造船所も不況であったため、建設中断は、雇用の問題と絡め認識されてしまったという。

IMG_0862「ムン・ジェイン大統領が、住民への補償問題を先に解決してから、公論化プロセスに進んでいたら、話は違っていたかもしれません」とアン・ジェフンさん。

公論化プロセスが発表されたとき、脱原発運動をしている人たちの中でも意見が分かれた。「建設中の原発の建設中断という約束を守るべき」という意見もあったが、「市民たちが参加するプロセスを否定することは難しい」とほとんどの団体は公論化プロセスを尊重するという態度をとった。高い支持率をほこるムン・ジェイン大統領に反対することは分裂を生む、という考えもあった。

建設再開が過半数、しかし原発縮小も過半数

公論化プロセスは、今年7月から3カ月行われた。日本でも2012月夏にエネルギーをめぐる「国民的議論」で行われた討論型世論調査と類似の形式をとった。公論化委員会が形成され、建設の賛否の双方の意見を資料集に記述。2万人の一次世論調査が行われ、回答者の中から、地域・性別・年齢などを考慮されて471人の市民参加団が選出された。(しかし、あとからの発表では、建設賛成派の方が多かったという。)この人たちが、事前学習を行い、総合討論会に参加し、最終アンケート調査に回答した。

結果は、建設中止が40.5%、建設再開が59.5%。(女性では建設中止が52.7%、再開が47.3%、男性では中止が33.7%、再開が66.3%)。

一方、原発を縮小すべきという意見は53.2%を占め、拡大すべき9.7%、維持すべき35.5%を大きく上回った。

建設が再開されることにより、古里5・6号機が運転を開始し廃炉になるまで、最長で2080年代までかかることになるという。

合意された「原発をやめていく」というという方向性

「あまりに長すぎます」とアン・ジェフンさん。

「これで脱原発と言えるのか…。公論化プロセスでは、原発の安全性や事故が起こった時の住民被害よりも、仕事がなくなる、とか、電力需給の問題に焦点があたってしまいました。住民にとっては直接的な雇用の問題と原発建設の問題を切り離すことができなかったのは残念です」

「原発に利害をもつ勢力の力がつよく、マスコミへの影響も強かったのが現実でした」とKFEMのエネルギー部門長のヤンイ・ウォニョンさん。

「原発をやめていくという方向性については多くの人たちが合意したものの、急激な変化については不安があったのでしょう。エネルギー供給を現在数パーセントにすぎない再生可能エネルギーで代替していくことも“現実的でない”と思われてしまった感があります。」

30km圏内に380万人~安全性は論点にならなかったのか?

実は、韓国の原発は人口密集地の近くに立地する。原発30km内の人口は世界1位。なかでも古里原発は30km圏内の人口が380万人にのぼる。釜山、ウルサン、キョンジュなど原発が集中する東南地域には、およそ60の活断層があるという指摘もある。こうした危険性は、公論化プロセスに影響を与えなかったのだろうか?

「もちろん、大きな論点でした。しかし、北朝鮮の核ミサイルや戦争の脅威に比べると、小さく感じられてしまったのかもしれません。原発事故が現実に起こるという実感が薄いのかもしれません」とヤンイ・ウォニョンさん。

「地震が起こるたびに、世論はダイナミックに変化します。キョンジュでの地震のあとには、原発反対が70~80%にまで跳ね上がりました。今は建設再開が強い状況です。

私たちとしては、これからは、原発の危険性に関する問題を提起するだけでなく、原発をやめても十分に電力はまかなえること、そうした代替案への希望を提起していくことが必要とされています」

一方で、ムン・ジェイン大統領は、「原発輸出については継続する」とも発言している。韓国の原発企業は、UAEでの原発事業の受注に加え、英国やサウジアラビアなどへの原発輸出を模索している。「当然反対です。国内での脱原発を目指すのに、原発輸出を継続するのは矛盾しています」とヤンイ・ウォニョンさん。東芝の失敗は、原発ビジネスのリスクを認識させなかったのか?という筆者の問いに対して、アン・ジェフンさんは、「むしろ、東芝が競争力を失ったことで、自分たちが競争力をもつ、と言っている」と苦笑した。

脱原発をいかに進めるか、廃炉をいかに早めるか、再生可能エネルギーをどのように促進していくか、日本の原子力規制委員会にあたる原子力安全委員会をどのように機能させるか、原発輸出に関する議論をどう進めるのか…。悩みはつきないが、それでも脱原発に舵をきったムン・ジェイン大統領の政策を、しっかりと支え、公約を守らせ、後戻りさせないという決意が感じられるお話しだった。

(満田夏花)

(談話) ※近日中に字幕つきでビデオ・アップします。

  • ヤンイ・ウォニョンさん(KFEMエネルギー部門長)

IMG_0890新古里原発5・6号機の公論化の議論を通じて、原発を減らすべきだというのが大多数の総意であることは確認できた。

しかし、建設中である原発を続けようというのは、現実的な電力供給に関して懸念があったせいだと思う。私たちは原発の危険性に関して提起を行うのみならず、原発を減らしても十分に電力の需給バランスをとることが可能だという希望と対案を積極的に提起していくことが大事だと考えている。

  • アン・ジェフンさん(KFEM 脱原発チーム長)

Image-1ムンジェイン政府が脱原発政策を推進してエネルギー転換のきっかけをつくったことは画期的だ。

しかし、脱原発が実現するのは(このままでは)あまりにも遠い先であるので、心配であることも事実だ。

脱原発へ向かうスピードを速めて、24基の原発をどれほど早く閉鎖できるかが、われわれに問われている。たとえば、再生可能エネルギーを増やしたり、エネルギー効率を高めたり、省エネを実現したりして、脱原発を早期に実現できることを示していく必要がある。

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ストップ石炭!パリ協定に逆行し石炭融資を続ける日本に厳しい国際社会の目

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石炭火力はパリ協定の1.5度目標と矛盾するー石炭火力プロジェクトに反対する市民グループが、現地時間9日朝、COP会場でアクションを行った。屋外で行われたアクションでは、インドネシアやタイ、フィリピン、アメリカなどの国から市民団体が集まり、日本の公的融資や民間企業が関わる事業によって生じている環境破壊や人権侵害、気候変動への影響についてスピーチを行い、日本の石炭火力推進政策を非難した。日本は世界でもっとも公的資金を使って石炭火力事業を支援している国として、国際的に批判を浴びている。

パリ協定を批准してからも日本の石炭支援は止まらない。2017年4月、日本の国際協力銀行(JBIC)は、インドネシアのチレボン石炭火力発電所の拡張案件に対する融資を決定。しかし、同案件は地元住民の反対の声も大きく、事業の合法性をめぐる裁判では住民側が勝訴した。FoEインドネシア(WALHI)事務局長のヤヤ・ハダヤティは「インドネシア国内法の遵守、人権尊重、そしてJBICの環境ガイドライン遵守の観点から、JBICは貸付を行うべきでない。」と訴えた。また「地元住民の生活や人権を守るため、日本は”公正”な解決策で途上国に貢献すべき」とも話した。

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COPに参加している政府代表団は、パリ協定のルール作りや気候変動への行動を会議場で語る一方、先進国の企業や銀行、政府は未だに温室効果ガスを大量に排出する石炭火力発電に巨額の投融資を続けている。イギリスやフランス、カナダなど少なくない数の先進国が脱石炭を約束する中、日本は逆を行く格好だ。

COP会場内で同時に行われたアクションでは、参加者は日本が関与する石炭関連プロジェクトの写真を掲げ、先進国に対して一刻も早く石炭火力から脱却するよう訴えた。さらに先進国に対して汚いエネルギーで支援するのではなく“公正でクリーンな解決策”で途上国を支援するよう求める声も上がった。

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プレスリリース

2017年11月9日
原文(英語)

地球の気温上昇を1.5度未満に抑えるため、日本は石炭への投資を止めて!

11月9日(木)、世界中の市民社会組織(CSOs)がボンで開催中の第23回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP23)の会場で抗議アクションを決行し、気候に破壊的な影響をもたらす石炭関連事業に世界各国で投資を続けている日本への注意喚起を行ないました。石炭は大きな汚染源であり、2015年12月のパリ協定で各国が合意した野心的な目標、つまり、地球の平均気温上昇を1.5度未満に抑えるという目標に合致しません。市民社会組織は、気候変動対策において日本が責任ある役割を果たし、人びとや気候に優しい再生可能エネルギーへ資金の流れを転換するよう訴えました。

日本は主要7カ国(G7)のなかで唯一、電力会社が政府の支援を受けながら、国内外での新規の石炭火力発電所の建設を予定しています。しかし、2015年にG7諸国は、今世紀末までに世界経済の脱炭素化を図ると宣言しました。この達成には、CO2排出量の厳しい削減を要し、2050年までに各国のエネルギーセクターの抜本的な転換も行われなくてはなりません。

こうした状況にもかかわらず、『Global Coal Exit List(脱石炭リスト)』(ドイツの環境NGOウルゲバルト(Urgewald)がCOP23期間中に発表する世界の石炭関連事業に関連する企業の包括的データベース)に掲載された大半の日本企業は、22社のうち16社が石炭火力の拡張計画を有しているなど、依然として石炭関連事業を拡大する傾向にあります。FoE Japan気候変動・エネルギー担当の深草亜悠美は、「世界中の人びとがすでに気候変動の恐ろしい影響を経験しています。こうした気候変動を引き起こしてきた歴史的な責任があるにもかかわらず、日本政府はクリーンでない汚染源となるエネルギー事業への資金提供をむしろ続けています。日本政府は破壊を引き起こす方針を転換し、クリーンなエネルギーを届け、気候変動へのさらなる影響の回避に貢献する再生可能エネルギーへの資金提供に切り替えることができます。」と述べました。

(脱石炭リストによれば)特筆すべき日本企業は世界26位の石炭火力発電事業者である丸紅で、アジアおよびアフリカの9カ国で新規石炭火力発電所の建設を計画するなど、石炭関連事業を進めるトップ企業の一つとなっています。

国際協力銀行(JBIC)は、インドネシア西ジャワ州で丸紅が関与するチレボン石炭火力発電事業・拡張計画(1000 MW)への融資契約を締結し、大きな議論を巻き起こしています。地元コミュニティーは生計手段の喪失や健康への影響を懸念し、2016年12月、同拡張計画の環境許認可の取り消しを求めて、地元政府を行政裁判所に訴えました。そして、2017年4月19日に出された地方行政裁判所の判決で、地元の空間計画への不遵守を理由に同拡張計画への許認可の取り消しが宣言されました。それにもかかわらず、JBICはこの1、2週間のうちに同拡張計画への融資の支払いを行なう姿勢を見せています。インドネシア環境フォーラム(WALHI:ワルヒ)のヌル・ヒダヤティは、「JBICは、すぐにも予定されている新たな訴訟の最終判決が出されるまで、同チレボン拡張計画への融資支払いを行なうべきではありません。JBICは、地域住民の権利、現地国の司法判断、そして、JBIC自身の環境ガイドラインを尊重すべきです。」と述べました。

FoE Japan深草は、生計手段の喪失や健康への影響を懸念する地域住民、および、事業の違法性の観点から、インドネシアのチレボン石炭火力・拡張計画にJBICが貸付を行なうべきではないという主張に同調しました。「地域住民の訴えに応じて裁判所が先に出した判決で元々の環境許認可が取り消されたにもかかわらず、新しい許認可がすでに発行されています。しかし、地域住民は彼らの将来のため、新しい許認可の有効性を問う新たな訴訟を起こし、闘い続ける準備ができています。私たちは、日本政府がコミュニティーや環境を破壊するいかなる石炭火力発電事業への資金提供も行わぬよう求めます。また、人びとのことをしっかりと考えた持続可能なエネルギー事業を支援するよう求めます。」

JBICはまた、アジアやアフリカで石炭火力発電事業を推進する企業のみに資金提供しているわけではなく、炭鉱事業に対しても融資を投じています。その中には、地元コミュニティーが反対をしているインドネシア北カリマンタン州の炭鉱事業も含まれます。インドネシアの鉱山問題に取り組む「鉱山に関する提言ネットワーク」(JATAM:ジャタム)事務局長のメラ・ジョハンシャは、「日本は石炭や私たちの気候を燃やすだけでなく、森林や集水域も荒廃させ、インドネシアのコミュニティーを気候変動の影響に対してより脆弱な立場に追いやっています。」と述べました。森林保護はCO2吸収源としてだけでなく、多くの事象のなかでも、かんばつや鉄砲水のような気候変動の影響に対する適応策として促進されなくてはなりません。

「世界に広がる共同運動である『リクレイム・パワー』は政府に対し、新たなクリーンでない汚染源となるエネルギー事業を中止し、化石燃料への補助金を止めるよう要求しています。このなかには、チレボン石炭火力計画のようなアジアの石炭関連事業への日本の資金提供も含まれます。」とリクレイム・パワーの共同ファシリテーターかつ債務と開発に関するアジア民衆運動(APMDD)のコーディネーターであるリディー・ナックピルは述べました。「人びと、そして、コミュニティーのために、汚染源となる石炭関連事業に対する資金が、民主的かつ貧困層のための再生可能なクリーンエネルギーへと迅速かつ直ちに転換するための支援に使われる必要があります。」と彼女は付け加えました。

スーパーマーケット温度調査、報告をもとにイオンと面談しました

FoE Japan、気候ネットワークなど7団体は、2017年夏、スーパーマーケットの「冷えすぎ」と省エネの関係に着目し、首都圏のスーパーマーケット100店舗以上をまわり、生鮮食品売場等の温度を測定、9月に調査結果をまとめました。

supermaeket_cover・首都圏店舗100軒調査 報告と提言
「冷えすぎ改善で省エネと快適な買い物環境を」(2017年9月15日)
http://www.foejapan.org/climate/saving/2017supermarket.html

その後、調査で訪問したスーパーマーケットチェーン各社に連絡し、調査報告をもとに面談を依頼したところ、イオン株式会社から、快諾をいただき、10月26日(木)に海浜幕張(千葉県千葉市)の本社を訪問しました。

●対応してくれた方
イオン株式会社 グループ環境・社会貢献部 金丸治子さん、奥田勝文さん

●主なやり取り

1.顧客から「寒い」という声があった場合どう対応されていますか。
→寒いも暑いもある。可能な限り対応するが、品質管理をキープしつつどこまでできるかということになる。現状については調べてみたい。

2.ショーケースについて、扉付きショーケースなどの導入は検討されていますか。
→効果が高いものから順次、導入を推進している。
新規出店の店舗については、導入されている。基本的には最新の設備が入っていて省エネ効果も良い。既存店舗は順次。
扉付きも最初は営業的視点では抵抗があったが、実際にはそれほど支障がないようで、省エネ効果もある。

3.フロン(冷媒)対策について、2020年にHCFC22が生産全面禁止となりますが、今後どのような対策をお考えでしょうか。
→HCFCR22を使用している冷蔵ショーケースが結構ある。以前はフロン規制がなく、HCFC22の省エネ効果が高かったため。
機器の入れ替えには、天井や壁をはがすなども含めてコストもかかるため、特に既存店ではハードルが高い。
しかし、イオンは2011年に「自然冷媒宣言」を出しているため、簡単ではないが進めていきたい。
http://www.aeon.info/environment/environment/refrigerants.html

4.省エネ・エネルギー対策全体について、今後の目標などがあれば教えてください。
→2020年に、店舗でのエネルギー消費量を、原単位で50%削減(2010年比)という目標をかかげている。現状27~28%削減できているが、これから先については、設備更新だけでもできないところがあるので、どうしようかと考えていた。
この調査について社内でも共有し、参考としたい。
https://www.aeon.info/environment/manifesto.html

●意見交換を終えて

まず、10社程度に連絡をしたところ、意見交換について快諾いただいたのは10月現在イオン株式会社のみでした。多忙の中時間をとってくださったことに感謝します。

また、今回の調査結果について、社内で共有してくださるというのは嬉しいことです。その中での議論をへて、具体的な対策につながっていくのか、またお聞きできればと思います。

一方、店舗での空調の温度設定をどうしているのか、夏と冬で変えているのか、など実務的な対応については、各チェーンなどに確認する必要がありそうです。
今後、他のチェーンに対しても、調査結果をもとにした質問を送るなど、さらなる実態把握や事業者との意見交換をしていけたらと考えています。

また、冬の温度がどうなっているか、可能な範囲で冬季の測定も考えています。

(FoE Japan 吉田 明子)

<調査実施・報告書発行団体>
国際環境 NGO FoE Japan 、 NPO 法人気候ネットワーク、 NPO 法人世田谷みんなのエネルギー、足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ、環境まちづくり NPO エコメッセ、NPO 法人川崎フューチャー・ネットワーク、 NPO 法人まちだ自然エネルギー協議会

COP23はじまる~ポイントはパリ協定の具体化 ドイツでは史上最大の気候マーチも

気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)が、今日からドイツ・ボンで始まります。
開催国はドイツですが、会議の議長国はフィジー。初めて島嶼国が議長国ということでも注目されています。

フィジーなどの島嶼国は、海面上昇や巨大台風など様々な異常気象の影響を特に大きく受けるため、気候変動のフロントラインとも言われています。今回のCOPは、気候変動の緩和や適応だけでなく、気候変動による「損失と被害(ロス&ダメージ)」にもしっかりと焦点をあてた「ロスダメCOP」になるかどうかも注目されています。

さらに、注目ポイントは、主に二つ。
まず一つは2015年に採択されたパリ協定の具体的なルール作りです。パリ協定は2015年に採択され、2016年には発効が決まりましたが、パリ協定をどのように2020年から施行していくかについての詳細ルール作りは現在進行しているところです。このパリ協定の「ルールブック」は2018年までに完成させることになっており、今回の交渉でこのルールブック作りがどれだけ進むかが一つのポイントです。

もう一つは、促進的対話と言われるものです。パリ協定では、各国がおこなう気候変動への国別目標を定め、5年ごとに報告と目標の引き上げを行います。これまで各国が出している国別目標を積み上げてもパリ協定が掲げている気温上昇を1.5度に抑える目標には到底到達しません。2018年に予定されている促進的対話を通じ、各国がどれだけ目標を引き上げることができるかがキーとなり、今回のCOPではその促進的対話をどのように行うかが話し合われる予定で、こちらも注目されます。

COP23直前セミナーの資料はこちら

FoEグループ、すでに気候変動の影響を受けている人々への支援や人権の尊重、化石燃料や原発、大型ダムなど”汚いエネルギー”から民主的で分散型エネルギーへの一刻も早い転換、大量消費を促し、人権や人々への利益ではなく企業の利益を優先するような社会システムの変革などを求めています。

今回のCOPの場でもサイドイベントやアクション、アドボカシー活動を通して、「気候正義」や「システムチェンジ」を訴えていきます。

会議に先立ち、土曜日には気候マーチが開催されました。
世界中からあつまっている市民社会のメンバー地元の人々が、ボンの街を行進し、気候正義(クライメートジャスティス)や、「脱石炭」を訴えました。FoE Japanも、スリランカ、ウルグアイ、イギリス、コスタリカなど世界中のFoEの仲間とともに行進しました。
マーチには約2万5千人、気候変動に関するマーチとしてはドイツでは過去最大の参加人数でした。

翌日日曜日にはボン近郊にある炭鉱(Hambach 炭鉱)をアクティビストらが占拠。数千人の非暴力不服従アクションによって、炭鉱の操業を部分的に停止させました。

 

人々に権利を、ビジネスにルールを!

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大企業や国際的な金融機関が、大規模開発の推進により、土地収奪や人権侵害を起こしています。
ときに企業は規制の少ない国で法の抜け穴を利用したり、複数の国にまたがる関連企業やサプライチェーンのかげにかくれて、法的な責任から逃れています。

住民の声を無視した巨大ダム開発や発電所建設、プランテーションのための土地収奪などが各地で問題になっています。市民の主権を無視し、利益追求のために環境や民主主義を顧みない企業や銀行、権力者に対し、FoEメンバーグループはつねに働きかけてきました。
FoEグループはこれまで多国籍企業に対する法的拘束力ある条約づくりに積極的に取り組んできましたが、2014年、国連レベルでのビジネスに対するルールづくりの新しい政府間ワーキンググループが立ち上がりました。

10月23日から第三回目の議論が始まるのを前に、FoEインターナショナルが声明を発出しました。

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プレスリリース:
多国籍企業の人権侵害を抑制する法的拘束力ある条約の制定を!—Friends of the Earthインターナショナル(原文はこちら

2017年10月19日

アムステルダム:
2017年10月23日から27日までジュネーブで開催される「多国籍企業と人権に関する国連条約」に関する協議を前に、Friends of the Earthインターナショナルは、多国籍企業による人権侵害や環境破壊に対して責任を問う法的拘束力ある国連レベルの条約制定のために建設的な議論を始めるよう、各国に対し強く求めています。

FoEインターナショナルのルシア・オーティスは
「多国籍企業の利益を守るための法的拘束力ある条約はすでにいくつも存在する一方、企業による人権侵害の責任を問う条約はありません。企業による人権侵害や環境破壊を抑制する法的拘束力ある条約が必要です。議論を始めるための最低限の交渉の材料はすでに出揃っています。しかし、国連での交渉プロセスに巨大企業から過度な影響が及ばないよう、企業の参加による利益相反を防がなくてはいけません。」

FoEインターナショナルや世界中のFoEのメンバー団体は、多国籍企業が気候変動や食糧危機、金融危機、そして人道危機に加担しており、企業による環境軽視、そして、地域の環境保護活動家に対する強迫行為を阻止する必要があると指摘しています。

FoEアフリカのアポリン・コアニ・ズアペットは、「この条約ができれば、アフリカや様々なところで、企業により影響を受けている数千のコミュニティーや市民はは、国際法廷を通じ、司法へのアクセスが可能になるでしょう。そうした司法アクセスに、先住民族の“生存”がかかっている事例もあります。。」

FoEラテンアメリカ・カリブ(ATALC)のアルベルト・ヴィラリアルは、「多国籍企業は利益を拡大させるために私たちの土地を破壊しています。しかし、複数の国にまたがる関連企業やサプライチェーンのかげにかくれて、破壊行為による責任から逃れています。企業が被っているベールを取り払い、企業の意思決定者に説明責任を果たさせる必要があります。」

FoE アジア太平洋のカリサ・ハリッドは、「国際的な金融機関や多国籍企業は、法的責任の免責により守られている状態です。条約は、(企業による人権侵害や環境破壊の)影響を受ける人々が、国レベルおよび国際レベルの法廷の場で、企業に対し説明責任を求めることを可能にします。条約は、環境保護活動や、とくに企業の利益追求から土地を守る際に影響を受けやすい女性を守るものになるべきです。」

FoEヨーロッパのアン・ヴァン・シャイクは、
「欧州委員会(EC)は、この(条約制定)プロセスに参加することを躊躇しています。しかし、ヨーロッパの市民や欧州議会は条約を支持すると何度も表明しています。フランスはすでに2017年に多国籍企業の「ケアする義務(duty of care)」に関する法律を制定しました。欧州委員会は、この機会を生かし、市民に対して人権に配慮しているということを見せるべきです。」

今回の議論は、多国籍企業およびその他のビジネスと人権に関する第3回目の政府間ワーキンググループになる。条約のエレメント(要素)に関するドラフト文書に関する交渉が期待され、環境団体や影響を受けるコミュニティー、世界中の社会運動体が国連プロセスとその成果を見守っている。

FoEインターナショナルの代表団は、国連人権委員会における交渉セッションに参加する。代表団は、ブラジル、カメルーン、カナダ、コロンビア、エルサルバドル、フィンランド、フランス、ホンジュラス、ハンガリー、インドネシア、モザンビーク、オランダ、ナイジェリア、ロシア、スペイン、ロシア、スリランカ、スウェーデン、ウルグアイからの環境保護活動家、人権擁護、影響をうけているコミュニティの代表らから構成される。

蘇我にもう発電所はいらない—「公害」の歴史ある土地で進むあらたな建設計画

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Day of Action!

10月14日、FoE Japanは「蘇我⽯炭⽕⼒発電所計画を考える会」とともに、蘇我石炭火力発電所の建設予定地をめぐり、建設に反対をするアクションを行いました。
千葉市は川崎製鉄所(現JFEスチール)の工場が原因の大気汚染で健康被害に苦しみ、公害裁判がたたかわれた街でもあります。今でも工場から排出される排気ガスや煙が周辺の住民に影響を及ぼしており、そんな中での石炭火力発電所の新規建設は住民の反対や懸念を生んでいます。

また10月13,14日は、石炭火力や原発など環境や社会に大きな悪影響を及ぼすエネルギーに対してノーと言い、地方分散型でより持続可能なエネルギーを求める市民が世界中でアクションを起こす「Day of Action(デイ・オブ・アクション)」でもありました。
日本だけでなく、インドネシア、バングラデシュ、ネパール、オーストラリアなどでFoEの仲間や市民が声をあげました。

公害の歴史

千葉県千葉市の住民は1951年にできた川崎製鉄所(現JFEスチール)の工場からの煙による深刻な公害被害に苦しんできました。

1972年、公害対策を求める保護者、行政職員、学校の先生やお医者さんなど幅広い市民があつまり「千葉市から公害をなくす会」が結成されまました。千葉県千葉市の当時の市民の2割に当たる7万5千人もの人々が賛同し「公害防止基本条例制定」の直接請求がなされましたが、却下され、1975年「子どもたちに青空を」という願いのもと住民らが提訴。「あおぞら裁判」が始まりました。

1988年、千葉地裁は川崎製鉄の排出する大気汚染と住民らの健康被害との法的因果関係を明確に認め、川崎製鉄に対しては損害賠償を命じ、原告勝訴の判決を言い渡しました。大気汚染と公害患者の病気との法的因果関係が認められたこの裁判の結果は、後に続く各地の大気汚染公害裁判の励みとなりました(1)

そんな、公害とたたかってきた市民の歴史あるまちで、新たな石炭火力発電所の建設が進もうとしているのです。

あらたな石炭火力発電所計画

現在、千葉市中央区で設備容量107万kWの⽯炭⽕⼒発電設備の建設計画が進んでいます(「蘇我⽕⼒発電所(仮称)」)。同発電所計画は、JFEスチール(旧川崎製鉄)と中国電力が出資している千葉パワー株式会社が事業主体です。現在、環境影響評価法等に基づく環境アセスメントの⼿続きが進められています。

今でも、近隣住⺠はJFE スチール東⽇本製鉄所が原因と考えられる⼤気汚染に悩まされており、汚染物質の排出がさらに増えることに強い懸念を⽰しています。

「蘇我石炭火力発電所計画を考える会」の調査によると、現在も「網戸や物干し竿が、毎日ぞうきんでふいても真っ黒でベタベタしている」などといった黒い粉塵への苦情が役所に寄せられているとのこと。また同会が実施した市民アンケートでは、アンケートに回答した市民の9割が発電所建設に反対しているそうです(10月16日現在、1万枚配布中331名が回答)(2)

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ポートタワーからの景色。石炭やスラグが野積みになっている。

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コンビナートから約1キロのところにあるマンションの壁

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ベランダに一週間放置したシャーレにたまる粉塵

事業者に出資しているのは、これまで公害を引き起こしてきたJFEスチールと、地元からは遠く離れた中国電力で、発電所はJFEスチールの敷地を使います。住民らは、石炭やスラグが野ざらしになり、粉塵がまっている現状の改善をまず、と訴えています。
発電所の建設予定地の半径5km圏内には、学校やスポーツ場などの公共施設が立地しています。もし石炭火力発電所が建設され、稼働を始めたら、排出する大気汚染物質による地域住民への追加的な影響が懸念されます。建設予定地は公害裁判を経て、環境が改善されてきた地域です。新たな石炭火力発電所建設により、せっかく改善を試みられてきた土地が、再度汚染されてしまう可能性があります。

また、石炭火力発電は、いくら効率が良いといわれる技術を使ったとしても、化石燃料の中でも一番多くのCO2を排出し、その排出量はLNGの約2倍になります。地球温暖化の原因となり、異常気象や集中豪雨・干ばつなど気候変動を加速させます。

国際的な脱石炭が進み、日本国内の電力需要も今後減少していくとみられる中で、本当に石炭火力発電所が必要なのでしょうか。

蘇我火力発電の問題点がまとまったパンフレットはこちら

東京湾の会の蘇我に関するページ

【事業概要】
発電所名:(仮)蘇我火力発電所
事業者:千葉パワー株式会社(出資者:中国電力・JFEスチール)
住所:千葉県千葉市中央区 (JFEスチール東日本製鉄所 千葉地区東工場内)
設備容量(最大発電能力):107.0 万kW
建設開始予定:平成32年
運転開始予定:平成36年
発電技術:超々臨界 (USC)

参考
千葉市の意
経産省の意見
石炭発電所ウォッチ

拝見…各党の原発関連公約は? 再稼働は? 被害者対応は?

選挙の争点の一つが「原発」となっている。自民党以外の政党(公明、希望、維新、立憲民主、共産、社民)はのきなみ「原発ゼロ」「原発フェードアウト」を掲げているが、内容はどうなのか? 自民党も「原発依存度の低減」をかかげるが、現在の政策と矛盾しているのではないか。
各党の公約を、
再稼働への対応や原発ゼロへの道筋、および現在進行中の原発事故被害者への対応に注目しつつ、私見もまじえてまとめてみた。

各党の原発関連公約は?

希望の党は、「2030年までの原発ゼロ」をかかげている。再稼働は容認。原子力技術の保持も明記しているのが特徴。また「原発ゼロを憲法に書き込む」としているが、通常の法律で十分なのではないか。原発事故被害者への対応は触れていない。なお、原発ゼロを言うのであれば、小池代表が知事を務める東京都は、東電の主要株主でもあることから取り組めることはある。東電の責任を問うてほしい。また、東京都はもっとも多くの避難者が暮らしている。都知事として避難者への支援に真摯に取り組んでほしい。

日本維新の会は「既設原発は市場競争に敗れ、フェードアウトへ」とするが、原発再稼働には避難計画への国の関与や地元同意の法制化などの条件をつけつつも容認。核燃料サイクルは「破たんが明らか」とし「廃止」。事故被害者対応は見当たらない。

立憲民主党は、「原発ゼロ基本法」策定をかかげている。また、東京電力福島第一原発事故の被害者に責任ある対応」「自主避難者を含む避難者に対する生活支援を掲げている点、評価したい。(ちなみに、民主党は、2012年に原発に関する3つのシナリオを示し、国民的議論を徹底的に行った。こうした「公論形成のプロセス」はもっと評価されてしかるべきだった。現政府にも同様のプロセスを望みたい。)

共産党、社民党は、再稼働反対。
共産党は核のゴミ問題やプルトニウムの備蓄問題にも言及。核燃料サイクルからの撤退も明記している。また、「すべての被災者が生活と生業(なりわい)を再建できるまで、国と東京電力が責任を果たすこと」などとしている。

社民党の公約は、原発事故被害者への対応が充実している。「避難の権利」の尊重、住宅の無償提供、「原発事故・子ども被災者支援法」の理念を守ることなどを盛り込んでいる。。

自民党は、「原発依存度を可能な限り低減」としているが、現在の原発依存度は数%のはず。エネルギー長期需給見通しでは、2030年の発電電力量に占める原発の割合を20~22%としているが、これはすべての原発の運転再開と40年を超えての運転延長、新増設を前提としたものとなり、「原発依存度の低減」と矛盾する。公約は一方で「原子力は安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源との位置付けのもとに活用」としている。原発事故被害者に関しては、「復興」の項目に記述がある。「福島については、国が前面に立って・・・安心して帰還できるよう取り組む」「長期避難生活への対応」「コミュニティ再生」などの記述があるが、避難者一人一人の権利を守るというよりも、帰還促進、復興路線であることは否めない。

公明党は「原発依存脱却」「原発ゼロ」というが、そうであるのならば、与党として、上記の原発の40年超運転延長や新増設をしなければ可能でない「2030年原発20~22%目標」をどう考えているのか。それを明らかにするべきであろう。(満田夏花)

各党の公約/マニフェストは、以下から読めます。

自民党:https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/manifest/20171010_manifest.pdf

公明党:https://www.komei.or.jp/campaign/shuin2017/manifesto/manifesto2017.pdf

希望の党:https://kibounotou.jp/pdf/policy.pdf

日本共産党:http://www.jcp.or.jp/web_policy/2017senkyo-seisaku.html

社民党:http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/election/2017/commitment.htm

立憲民主党:https://cdp-japan.jp/yakusoku/

日本維新の会:https://o-ishin.jp/election/shuin2017/common/pdf/manifest.pdf