一週目終了 – COP27は「アフリカCOP」なのか

11月6日に開幕したCOP27の一週目が終わりました。

通常一週目に技術的な交渉を中心に行い、二週目には閣僚級の政府関係者が参加し政治的な合意を話し合う段階に入ります。

12日に開催したFoEインターナショナルの記者会見の内容と共に、この1週間のハイライトを紹介します。

(12日のマーチ 写真:https://twitter.com/Artivistnet/status/1591398886287212545?s=20&t=_zR_dnsMIjr64kKaYeWT7Q )

人権なくして気候正義なし

一週目の最後、11/12は「COP27連合」(COP27のために結成された市民社会等のネットワーク)により世界的な行動の日(Global day of action)が呼びかけられており、日本を含め、世界各地で気候変動対策を求めるアクションが行われました。

2013年以降、エジプトの市民社会は深刻な抑圧を受けています。政府は活動家や女性、性的マイノリティ、ジャーナリストを対象に、不当逮捕や弾圧を続けています。

英国系エジプト人の活動家で、良心の囚人であるアラー・アブデル・ファターは、4月2日からハンガーストライキを行っていますが、11月1日からは1日に取っていた100キロカロリーの食事をやめ、COP開始日の6日からは水を飲むことも止めています。COPに先立ち、エジプト含む世界の市民団体などが、アラーの解放を求め、自由に市民活動ができるスペースなしに、気候変動対策はなしえないと声をあげています。

11月15日〜16日のG20開催が近づくインドネシア・バリ島でも市民活動の制限が厳しくなっています。過去10年間に、世界で少なくとも1733名の環境人権擁護者が殺害されました。カナダで、伝統的に守り継いできた水源や森を開発や収奪から守るために立ち上がっている先住民族やその支援者が犯罪者扱いされ、弾圧されています。ベトナムでも、環境問題に取り組んでいた方が逮捕された状況が続いています。

FoEグループは、権利侵害や環境のために立ち上がり、不当逮捕・迫害されている全ての人々に対し、これまでも連帯を示し、声をあげてきました。

グローバル・アクションデーの今日、エジプト国内では自由にデモ活動ができないため、12日には国連の会議場内(国連の会議場は国連の管轄になる)で短いマーチが行われました。本来であれば、路上にでて自由に市民が声をあげられるべきです。

12日に現地で開かれたFoEインターナショナルの記者会見においても、FoEインターナショナルのプログラムコーディネーターであるDipti Bhatnagarは「気候正義には連帯が重要です。私たちは今日ここにいない人のためにもCOPにきて活動しています。エジプト政府による人権侵害を受け入れることはできません。」と発言し、気候正義にとって人権や民主的スペースが不可欠であることを訴えました。

気候変動による損失と被害

COP開幕当初から注目されている損失と被害(ロスダメ)。途上国はロスダメに対する資金支援を長年求めてきましたが、今回のCOPで初めて正式な議題に上がりました。

Bareesh Hasan Chowdhury(FoEバングラデシュ)は12日の会見で「長年議論されてこなかったロスダメ資金に対する期待がある一方、交渉において、先進国は、今でも方向性を捻じ曲げたり議論を遅らせたりしようとしています。ロスダメは将来の問題ではなく、今すでに私たちが経験していることです。ロスダメ資金の合意なしに、シャルム・エル・シェイクを去ることはできません」とコメント。

交渉の中で、途上国グループ全てが、2024年より前に資金ファシリティが運用されることが重要であると主張していますが、アメリカは損失と被害に対しての先進国の責任や賠償を認めておらず、またしても交渉をブロックすることが懸念されます。

炭素市場

パリ協定6条、いわゆる炭素市場や二国間支援に関する交渉も、注目されます。

COP開始前日、6条4項の監督委員会が「除去」に関する勧告(Recommendation)をまとめました。この勧告は幅広い種類の除去手段をオフセットとして取引することを認めるもので、まだ技術的に確立していなかったり(CCS/CCUSなど)、土地収奪や環境への悪影響が予測される土地部門の除去やジオエンジニアリングをも認める内容でした。これに関して、市民社会だけでなく先進国途上国双方の政府からも懸念の声があがっています。

FoEグループはこれまでもオフセットは排出対策に繋がらないとして反対の立場をとってきました。また、「自然に基づく解決策」についても、大規模な土地収奪に繋がりかねないことや、排出削減に繋がらないことなどを訴えてきました(詳しくは:https://foejapan.org/issue/20220613/8344/ )

なお、ジオエンジニアリング(一般的に、気候変動問題の解決のために地球規模の影響をもたらしうる技術を利用することを気候工学、ジオエンジニアリングと呼ぶ)については、環境や社会への影響が未知数なことなどから、2010年に生物多様性条約で全ての気候変動関連ジオエンジニアリング技術に対し、モラトリウム(一時停止)が設けられています。

監督委員会が勧告を採択した段階ですが、第二週目でCOPが委員会に差し戻し、見直しを求める可能性は十分あります。

COPは化石燃料まみれ?

6条の交渉からもわかるように、国際炭素取引市場でのオフセットや自然に基づく解決策など、いわゆる私たちが誤った気候変動対策と呼んでいる策を強力に推し進めようとする(特に先進国の)政府や企業が数多く参加しています。

COP開始時点から強く懸念されていたのはガスを推進する勢力です。COP開始前から、ロシアのウクライナ侵攻を背景に、アフリカでのガス開発への関心が高まり、またアフリカのガス利権関係者は、アフリカのガス開発を開発の権利として主張し、脱化石燃料とは逆方向の主張を繰り広げていました。

12日の記者会見でも、FoEナイジェリアのRita Uwakaは「化石燃料事業の継続はコミュニティへの宣戦布告です。ニジェールデルタ(注:ナイジェリア最大の産油地帯で、環境汚染や人権侵害が非常に深刻な地域)で起きていることからもわかるように、石油採掘が水や土を汚染し、漁業者や農民に影響を与えています。自然は私たちの命です。」とコメント。また、気候危機や企業による環境破壊や土地収奪によって女性が被害を受けており、一方で、土や水を守ってきたのも女性であると強く訴えました。

世界中の市民社会団体や活動家、先住民族が立ち上がり、気候危機やそれを生み出した構造を変えようと取り組む中で、先に述べた通り、市民社会のスペースが世界中で縮小しています。

一方、今回のCOPには石油ガス産業の関係者が少なくとも636人が参加していることがわかっています。これは去年の数字から25%も増加しています。化石燃料産業がパビリオンでイベントを行い、化石燃料由来の水素の喧伝も行っています。

FoEUSのKaren Orensteinは会見で「米国政府はさまざまなイニシアチブを発表し、一見良く見えますが、一方でガス開発を拡大し、欧州への輸出を増やそうとしています。米国の気候変動に対する歴史的責任を考えると、排出対策も途上国支援も大幅に拡大しないといけません」とコメント。

また、米国の姿勢について、資金支援の文脈で、FoEマレーシアのMeena Ramanは「現在の資金支援のあり方では、気候危機に緊急に対応することはできません。資金に関する議論の文章はまだほとんどが「括弧付き」(交渉で未合意)です。米国は新たな資金支援なしにCOPに参加しました。また、米国が動かないのを言い訳に米国以外の先進国、EUや日本が動かないだろうことも問題です。気候変動対策が遅れている国々(Laggards)を待っていることはできません。これらの先進国に今すぐ行動を強化するよう叫び続けないといけません」と記者会見で述べました。

アフリカCOP?

12日に会場内で行われたマーチでは、ナイジェリア出身のNnimmo Baseyが「これはアフリカのCOPではありません。人々のためのCOPが必要です。汚染者をCOPから追い出すべきなのです。アフリカは歴史的に、そしてまた今まさに、豊かな国や企業により搾取されてきてました。奪われ、搾取され、破壊されている、まさに帝国主義です。」と力強いスピーチを行いました。

先進国によるアフリカでのガス開発もCOP中の大きな話題の一つとなっています。

12日、アフリカでのガス開発を止めるよう求めるアフリカの市民社会団体の連合「Dont’ Gas Africa」が新たなレポートを発表しました。レポートでは、このまま開発が進めば、投資回収ができず「座礁資産」となる可能性があり、また海外の企業に事業の権利を与えることはアフリカのエネルギーシステムが海外資本によって所有されることを意味し、その利益はアフリカの人々ではなく権益を持つ先進国に渡ること、開発による環境影響は地元の人々が被ること、などと指摘しています。

図:アフリカ大陸で建設中・計画中・操業中の石油・ガス関連インフラ(出典:https://dont-gas-africa.org/cop27-report/#press-release)

交渉がどう進展するのか、また交渉と並行して市民社会がどのようなことを訴えているのか、来週もお伝えしたいと思います。

(深草亜悠美)

東電による汚染水「放射線影響評価」から読み取れること、読み取れないこと~放出される64の放射性物質の総量は?

東京電力は福島第一原発の「ALPS処理水の海洋放出に係る放射線影響評価報告書」を公開し、国内外からの意見を募集しています(12月17日23:59まで)。

東電は放射性物質の海洋拡散シミュレーションを行い、3つのタンク群と、仮想のALPS 処理水の核種組成(炭素14、銀110m、カドミウム113mなど人への被ばく影響が大きい9つの核種を選定)の 4つのケースについて人への影響を評価し、「すべてのケースで一般公衆の線量限度および国内の原子力発電所に対する線量目標値のいずれも下回った」としています。また、海洋生物への影響評価も行い、問題のないレベルと結論づけています。

ところがこの「放射線影響評価」は問題だらけ。たとえば…

  • 放出は30年以上続くはずであるが、それについての記述がありません。
  • 海洋拡散シミュレーションをしているが、いつの時点での評価なのか、放出を開始して1年後なのか、10年後なのか、30年後なのか不明です。
  • 年間および 10km×10km の「平均濃度」により評価を行っています。季節ごと、また場所によって放射性物質の濃度が高い部分が生じたとしても、「平均」をとることによって薄めてしまうことになります。
  • 外部被ばくも、内部被ばくも、年単位での被ばく評価となっています。つまり、累積的な影響が評価されていないのです。

一方、この評価報告書から読み取れることもあります。
私が注目したのはp.50以降の、実際に64核種について測定を終えている3つのタンク群の水を、計画どおりトリチウムが年間22兆べくれる1年間放出し続けたとした場合の64核種の年間放出総量です(東電報告書p.50以降)。

たとえばK4タンク群の水を1年間流す場合の、いくつかの放射性物質の年間放出総量は

ストロンチウム90 2500万ベクレル
カドミウム113m 210万ベクレル
ヨウ素129 2億4,000万ベクレル
セシウム137 4,900万ベクレル
プルトニウム238 7万3000ベクレル
プルトニウム239 7万3000ベクレル
プルトニウム240 7万3000ベクレル
プルトニウム241 320万ベクレル

となります(トリチウムが年間22兆ベクレルになるように放出するという前提です)。告示濃度比総和1以下(つまり全体として規制基準以下)とはいえ、なにせ放出量が多いので、膨大です。いくら薄めても、総量は変わらないのです。つまり濃度でのみ規制をかけることの限界といえます。

プルトニウムに着目しましょう。同じくそれぞれのタンク群の水を、トリチウム年間22兆ベクレルとなるような放出を行うという前提です。

年間放出量(ベクレル)
K4タンク群 J1-C タンク群 J1-G タンク群
Pu-238 73,000 890,000 2,300,000
Pu-239 73,000 890,000 2,300,000
Pu-240 73,000 890,000 2,300,000
Pu-241 3,200,000 32,000,000 81,000,000

K4タンク群の水を1年間放出すると、プルトニウム238、239、240、241の合計で341万9,000ベクレル、J1-Cタンク群の水の場合、プルトニウム238、239、240、241の合計で3,467万ベクレル放出、J1-Gタンクの水の場合、年間8,790万ベクレル放出ということになります。

まだ、すべてのタンク群の核種ごとの濃度や容量が公開されていないため、不明なところがありますが、この3つのタンク群が特殊なものでない限り、このレベルの放出が30年以上続くことになります。

しかし、このような数字も、限定的なものに過ぎません。いままで東電は、放射性物質の濃度のみを公開してきており、放出の総量については示してきていませんでした。私たちは、いったい何が、どれくらい放出されるのかわからないままにいるのです。さらに、東電が測定・公開の対象としている64核種というのは、ALPSで処理の対象となっている62の放射性物質とトリチウム、ALPSの対象ではないがあとから存在することがわかった炭素14のみです。

技術者や研究者も含む、原子力市民委員会のメンバーが、パブコメを公開しています。

http://www.ccnejapan.com/wp-content/20211215CCNE.pdf

領域海洋モデルの再現性に関しての批判、有機トリチウムによる内部被ばくが過小評価されている件など、かなり具体的な指摘がならんでいます。
また、原子力市民委員会では、12月16日に開催したオンラインセミナーの「“東京電力「ALPS処理水の海洋放出に係る放射線影響評価報告書」の問題点”」の資料および録画をYouTubeにアップしています。(冒頭の私のところはイントロなので飛ばしてください)

ご参考にしていただければ幸いです。(満田夏花)

【COP26 vol.7】COP26-各国は口約束だけに終わらず脱化石燃料を加速させることができるか?

英国・グラスゴーで開催されているCOP26の5日目にあたる11月4日はエネルギーをテーマに議長国の主催イベントなどが多数開催されました。また、11月11日にはコスタリカとデンマークの主導で「Beyond Oil and Gas Alliance(BOGA)」という石油・ガスの新規開発許可の停止を求めるイニシアチブも発表されます。COP期間中の化石燃料をめぐる動きをまとめます。

「脱石炭」

英国とカナダ政府は2017年にPowering Past Coal Alliance(PPCA、脱石炭同盟)を立ち上げ、各国に脱石炭の加速を求めてきましたが、この日、新たに英国政府のイニシアチブにより「Global Coal To Clean Power Transition Statement」が発表され、これには40カ国以上が賛同しました(一部の国は部分的に賛同)。

この声明は、署名団体に対し

  1. クリーンエネルギー利用とエネルギー効率強化を加速させること
  2. 主要な経済大国は2030年代(のなるべく早い段階)に、それ以外の国についても2040年代(のなるべく早い段階)排出削減対策の講じられていない石炭火力発電(CCSのついていない石炭火力発電)を廃止していくこと
  3. 新規石炭火力の建設や、許可を止めること
  4. トランジションのための国内外での努力を強めること

などを求めています。

声明にはベトナムや韓国、インドネシア(条件付き)も賛同を示しています。ベトナムやインドネシアは日本が多くの石炭火力発電所の輸出をこれまで行ってきた国なので、今後どのように脱石炭に取り組むのか注目されます(注:インドネシアは移行に関する1、2、4に賛同したのみで、新設中止等には賛同していない。)。(声明全文と署名した国名のリストはこちら、Japan Beyond Coalによる日本語訳はこちら​​)

一方の日本政府は、国内の石炭火力発電を廃止する計画を持たず、かつ海外への輸出支援も止めていません。海外へ石炭火力発電事業を輸出する際の公的支援は2021年末までに止めるとしていますが、インドネシア・インドラマユ石炭火力発電事業とバングラデシュ・マタバリ2石炭火力発電事業はいまだに例外扱いし、国際協力機構(JICA)による支援の可能性を残しています。

国内外の環境団体の連合であるNo Coal Japanは、依然遅れを見せる日本政府の姿勢に抗議し、COP26の会場近くでアクションを行いました。

インドネシア環境フォーラム(WALHI)のメンバーでCOP26に参加しているアブドゥル・ゴファルは「インドネシア政府は供給過剰を理由に、インドラマユ石炭火力発電事業を電力供給事業計画(2021〜2030年)から除外しました。同発電所が2030年まで不要であると明確に認めているのです。日本政府は今すぐ決断し、インドラマユ石炭火力発電事業をもう支援しないとはっきり表明するべきです。」と指摘しています。また、「インドラマユでは事業に反対する人々が身に覚えのない罪で収監されるなど深刻な人権侵害が起きています。また火力発電所は大気汚染の主要な原因で、住民の健康や生活を脅かしています。インドラマユの人々に連帯を示したいと思います」と話しました。

イギリス議長国は、石炭からクリーンエネルギーへの転換を支援するための資金支援プログラムなども発表しました。つい先日もアジア開発銀行が、石炭からの転換を促進する新たなプログラム(ETM、Energy Transition Mechanisms)を発表し、これには日本政府が一番に支援を発表しています。

石炭から持続可能でクリーンなエネルギーへの転換はとても重要なことであり、石炭火力発電所の早期廃止などを支援することも重要です。しかし、誰をどのように支援するのかについて、十分かつ開かれた議論が必要です。これまで不必要な石炭火力発電所を建設し続けてきた大企業やそれを支援してきた金融機関は、現地の電力公社と長期の電力購入契約を結んだり、公的資金のバックアップを受けたりすることで、さまざまなリスクを軽減しながら石炭火力発電事業への投融資を続けてきました。エネルギーを転換していく中で、途上国の市民への影響やリスクの回避が必要なことはもちろんのことですが、クリーンエネルギーへの移行を支援するためのメカニズムが、石炭火力の早期廃止に伴う座礁資産化などのリスクを本来負うべき大企業や銀行の救済になってしまわないかという懸念も考慮されるべきです。

化石燃料事業への直接的な公的支援を停止

議長国によってエネルギー・デーに指定されたこの日、石炭以外のエネルギーに関しても新たなイニシアチブが発表されました。

英国政府は、2022年末までにエネルギーセクターにおける、排出対策が講じられていない(=”unabated”、通常はCCUSが設置されていないものを意味する)全ての化石燃料事業について直接の公的支援を止めること含むイニシアチブを発表し、これには化石燃料産業への依存の大きいカナダやアメリカも賛同しました。

(賛同リストはこちら

日本は、G20の中でも最も多くの公的資金を化石燃料開発に注いでいます。先日発表されたFoEUSとオイルチェンジインターナショナルの報告によれば、2012年以降、日本の支援実績はG20中2番目に大きいことが報告されました。

COP26直前にも、日本の公的機関である国際協力銀行(JBIC)がLNGカナダターミナル事業への融資を決定しましたが、気候危機に立ち向かう世界の「脱化石燃料」の取組みを無視し続けている日本の姿勢には国内外から抗議の声が上げられています。

海外における化石燃料事業への公的支援停止は必要なステップですが、声明に賛同を表明したカナダやアメリカは国内での化石燃料開発も大規模に行われています。国内における開発についても規制を強めて行くことが必要です。また声明には例外規定も設けてあり、これらの抜け穴を閉じる必要もあります。また議長国英国の足元でも、スコットランド・カンボオイルフィールドの開発が今まさに進められようとしており、現地のNGOや活動家、市民から英国政府の欺瞞を指摘する声があがっています。

そんな中、11日にはコスタリカとデンマークによるBeyond Oil & Gas Alliance (BOGA、国内における化石燃料開発許可の停止を求めるイニシアチブ。)が正式にローンチされる予定で、会場で記者会見が行われます。

今回のCOPではさまざまな「アナウンスメント」がありました。これらは全て国連の気候変動交渉の外で行われています。前向きな政治的決意と捉えられる一方で、こういった「声明」や「アナウンスメント」がただのアナウンスメントで終わってしまわないよう、各国がしっかりと約束を果たすよう、今後も監視し、行動を求めて行く必要があります。

(深草亜悠美)

エネルギー需要削減の本気度は? ーエネルギー基本計画素案を読む(5)

第6次エネルギー基本計画素案では、エネルギー需要や電力需要の想定が、2018年度の第5次計画に比べて少し下方修正されましたが、そもそも第5次計画の想定が過大なものでした。

以下の図は、2019年度まで最終エネルギー消費量とGDPのデータに、今回示された2030年目標を置いたものです。エネルギー需要は減る見通しとなっていますが、2011年以降の減少傾向から直線を引いたもので、野心的なものではありません。

2050年の排出ゼロを目指すというものには、まったくなっていないのです。

図:最終エネルギー消費と実質GDPの推移(エネルギー白書2021より)より作成

エネルギー需要はどのくらい削減するのか

前提となるエネルギー需要がどのように推定されているのかという部分を、素案の記述に加えて、8月4日の基本政策分科会の資料5、「2030年におけるエネルギー需給の見通し参考資料」を中心に見ていきます。

まずは、エネルギー需要の推計方法です。

↑図1:「2030年におけるエネルギー需給の見通し参考資料」p.6 

このように、人口やGDPを推計し、これらを参考に主要業種の活動量を想定して、省エネ前のエネルギー消費を推定、そこに省エネ対策を加味します。

まずは、経済成長について。下記の図のように、前回計画(H27策提示)での想定に比べれば下方修正されているものの、2021年度から2030年度までの成長率は、コロナ禍前(2013~2019年度)を上回る右肩上がりの想定です。

↑図2:同上 

GDPの大きさは、エネルギー消費の増大とイコールではありません。GDPを上げながらエネルギー消費を下げることをデカップリングと言いますが、最初の図をみると、日本でも2011年以降すでにそのような傾向になっています。

例えば「レポート2030ーグリーン・リカバリ―と2050年カーボンニュートラルを実現する2030年までのロードマップ」(https://green-recovery-japan.org/)では、仮に政府の予想のようGDPが640兆円まで増加したとしても、グリーン・リカバリ―戦略(環境に配慮した経済再生政策)を実施すればエネルギー消費量を40%削減できると試算しています(同レポートのp.13)。

各部門の活動量見通し

続いて、各部門ごとの活動量を見てみます。

産業部門での主要4業種、粗鋼、エチレン、セメント、紙・板紙の生産量は、2000年度から2020年度にかけてそれぞれ減少傾向が見て取れますが、2020年度〜2030年度の想定はほぼ横ばいとなっています。

社会全体で使う資源の量を減らしていくことや、産業構造の転換によって生産量を減らしていくという意図も可能性も、まったく考慮されていません。

業務床面積も、人口減少にもかかわらず、微増となっています。

旅客交通需要は、コロナ禍の影響やテレワーク等の普及、通信技術の普及・発達などにより減少する可能性について十分に考慮されたものではありません。

↑図3:同上
(左上)粗鋼、エチレンの生産量 (右上)セメント、紙・板紙の生産量

(左下)業務床面積 (右下)旅客交通需要と貨物交通需要

その結果、最終エネルギー消費の想定(省エネを加味する前)は、約350百万kl(原油換算)と、2019年度の334百万kl (省エネがなければ356.5百万kl)とほぼ同じです。(図4)

このように、人口減少にも関わらず、「需要量の削減」はほとんど考慮されていないのです。

日本のエネルギー政策で言われる「省エネ」とは、機器の効率改善や性能の向上など、エネルギー効率の改善のことで、消費量・需要量自体や、需要のあり方を大きく見直す・減らすということではないのです。

その「省エネ」を加味した280百万klでも、2019年度の334百万klに比べて約16%削減にとどまっています。

↑図4:同上

各部門ごとの「省エネ」の内容

次に、具体的な「省エネ」の内容についてざっと見てみましょう。

素案では39~42ページに書かれていますが、長文のため、ここでは大枠のみ、概要版の記載から抜粋します。

まず、産業部門について。

「エネルギー消費原単位の改善は進展したものの、近年は足踏みの状態である。」(素案p.39)

これについては、4月13日の審議会資料の中に以下があります。主要4業種において、エネルギー原単位の改善は鈍化、また石炭など化石燃料に大きく依存していることがわかります。

↑図5:第40回基本政策分科会 資料5より

このようなエネルギー多消費型の産業のあり方そのものを、本来見直さなければならないはずですが、そのような議論はまったくありません。

エネルギー基本計画で言う「省エネの深堀り」とは、すでに現在省エネが進んでいる部分について、現実に沿って想定を見直す、という作業にすぎないのです。

業務家庭部門については、建築物・住宅の省エネや断熱性能を高めることは最も重要です。素案に、

「2030年の新築平均ZEH・ZEB目標と整合的な誘導基準・住宅トップランナー基準の引き上げや、省エネルギー基準の段階的な水準の引上げを遅くとも2030年度までに実施する。」(p.41)

とあります。本当は2030年よりももっと早くやらなければならなかいはずですが、ようやく、というものです。

2019年度の新築住宅の断熱性能でも、ZEHレベルはまだまだ小さい割合(戸建て住宅の約25%、共同住宅の約2%、下図参照)です。

↑図6:「2030年におけるエネルギー需給の見通し参考資料」p.20より抜粋

2021年の4月に国土交通省に「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」が設置されて議論が重ねられ、ようやくの前進、ではありますが、2030年度の目標を絵にかいた餅に終わらせず、なおできるだけ前倒しするにはどうすればよいのか、引き続き注目していく必要があります。

脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会(国土交通省)


最後に運輸について。

素案に書かれている内容は、自動車の燃費向上やEV化、消費原単位の改善などです。

しかし、本当に取り組まなければならないのは、ここでも需要削減、例えばテレワーク化や出張の削減、車の利用を減らしてもくらしやすいまちづくりなどです。

欧州ではすでに、近距離の航空利用を削減する動きが広がっています。フランスでは、2時間半以内の国内航空路線の運航を禁止することを盛り込んだ気候変動対策・レジリエンスの強化法案が2021年7月に成立しています。

オランダやドイツでも、近距離路線の減便や鉄道との連携が始まっています。

日本でも、コロナ禍により、航空便の利用は大幅に減少し、航空便の減便は行われていますが、これを一時的な対応とせず、気候変動対策として将来の運行のあり方を大きく見直す必要があるのではないでしょうか。

自動車についても、利用自体を大きく減らさなければなりません。

鉄道やバスなど公共交通へのシフトや、自転車や徒歩で暮らせるまちづくり、自動車のシェアや働き方・通勤のあり方などを含めて、できることはたくさんあるのではないでしょうか。EV化の議論は、そのうえでのことです。

リニア中央新幹線の建設についても、すでに移動需要が減少しているなかで、本当に必要なのか、その環境・社会影響の大きさに鑑みて、見直すべき時ではないでしょうか。

偽りの「カーボンニュートラル」ではなく、真の排出ゼロを目指すための第一歩は、まずは化石燃料からの脱却を進めること、そして同時に需要の大幅な削減を行うことです。

第6次エネルギー基本計画の議論の中では、この需要な点が抜けているのです。

(吉田明子)

原発20~22%とは?ーエネルギー基本計画の素案を読む(2)

現在、「エネルギー基本計画」の改訂議論が最終段階を迎えています。「エネルギー基本計画」はおおむね3年に一度改訂されるもので、先日第6次計画の「素案」が発表されました。まもなくパブリックコメントが開始されます。

このブログでは第6次エネルギー基本計画(素案)について、「原子力」というテーマでその中身や問題点をみていきます。

今回のエネルギー基本計画素案でも、2030年の電源構成のうち原子力は「20~22%」という割合が維持されました。

しかし、2020年度、原発の割合は4%程度。2019年度は約6%でした。いったん再稼働した原発が安全設備の建設の遅れなどにより相次いで停止したことが原因で減少しました。

2030年、原子力で2割をまかなうのは、さすがに無理なのではないかと思いますが、政府はどのような想定をしているのでしょうか。

原子力20~22%の内容とは?

以下の表は、審議会「基本政策分科会」で7月13日に提示された資料からの抜粋です。現在ある36基の原発のうち、新規制基準未申請の9基を除いた27基すべて(表の4つ目まで)を設備利用率80%で動かした場合、年間発電量の合計は1,940億kWhとなります。
これを2030年の想定発電量(9,300~9,400億kWh)で割ると、その割合が20.6~20.9%となるのです。

(↑第45回基本政策分科会資料より)


「今後動く可能性と政府が想定している原子炉」27基とは、具体的にどの原子炉でしょうか?

再稼働に向けて「新規制基準適合性審査」の申請が行われているもので、以下の図でオレンジや黄色の色付けがされているものです。まだ建設途上の大間原発(青森県)や、10年以上動いていない浜岡原発(静岡県)なども含まれています。27基すべてが稼動するとは、非常に考えにくいものです。
未申請の9基は、柏崎刈羽原発1~5号機、東通原発、志賀原発1号機、女川原発3号機、浜岡原発5号機です。

(↑同上、第45回基本政策分科会資料より)

2030年は今から9年後なので、原発もその分老朽化します。高浜原発1号機は運転開始からすでに46年、同2号機は45年ですが、2030年には、それぞれ55年、54年が経過することになります。このような老朽原発もフル稼働(設備利用率80%)しなければならないのです。

しかし、ここ最近の状況を見ても、様々な不祥事や故障、人為的ミス等により、原発の再稼働スケジュールが遅れたり、点検期間が長引いたりすることが相次いでいます。また裁判により運転差し止めになるケースもあります(注1)。

「稼働率80%」は、そういった不具合やミス、裁判による運転停止がほとんど起こらないという想定なのです。
これが果たして現実的と言えるでしょうか?

2020年の国内原子力発電所の運転状況が、総発電電力量449億7,520万kWh、設備利用率15.5%(全36基に対する割合)(注2)だったことを考えても、この想定に無理があることがわかります。

再稼働推進が強調された

上記のように、「20~22%」の想定は、実現可能性だけをみても大いに疑問のある「積み上げ」です。
また今回素案には、
「(p.64)原子力事業者をはじめとした産業界は、新たな連携体制として「再稼働加速タスクフォース」を立ち上げ、外部専門家を含め人材や知見を集約し、審査中の泊、島根、浜岡、東通、志賀、大間及び敦賀において、原子力規制委員会による設置変更許可等の審査や使用前検査への的確かつ円滑な対応、現場技術力の維持・向上を進める。」

ということが書き込まれました。

中立厳正な十分な審査を行おうとすれば、当然、時間がかかるものです。「再稼働加速」とうたうことは、そうした審査のあり方に、「早くしろ」と圧力をかけることになりかねません。

老朽原発の長期運転が視野に

20~22%の中には、運転開始から40年以上たつ原子炉の運転も当然想定されています。

福島第一原発事故後、原発の稼働は「原則40年」とされました。40年を超える原発の運転は例外的措置であり、一度に限って最長60年までの延長を申請できることになっています。しかし7月15日、「60年超の運転を可能とする案が浮上している」と報道されました(注3)。

老朽原発の運転はとても危険なものです。劣化しても交換できないものが多いのです。たとえば圧力容器は交換できません。長い間、中性子が当たり続けて、材料の金属が劣化し、脆くなっていきます。地震などの緊急時に停止するするための装置が起動したとき、圧力容器が急激に冷え、割れる恐れがあるのです。原子炉の中と外をつなぐ配管や、一部の電気ケーブルなども交換することはできません。

素案には、以下のように「長期運転」を進めていく方向が書かれており、こちらも今後要注意です。

「(p.64)一方、東日本大震災後に原子力発電所の停止期間が長期化していることを踏まえ、メーカー等も含めた事業者間の連携組織が中心となり、保全活動の充実や設計の経年化対策、製造中止品の管理等に取り組むとともに、安全性を確保しつつ長期運転を進めていく上での諸課題について、官民それぞれの役割に応じ、検討する。加えて、メーカー等も含めた事業者間の連携組織が中心となり、トラブル低減に向けた技術共通課題の検討体制の構築や照射脆化等の経年劣化に係る継続的な知見拡充、安全性を確保しつつ定期検査の効果的・効率的な実施や運転サイクルの長期化を図るための技術的検討が始められており、こうした取組を引き続き進める。」

「原発依存度の低減」の表現は維持

原子力について、「福島復興はエネルギー政策を進める上での原点」として、反省と教訓に触れたうえで、

「(p.7)東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した我が国としては、2050年カーボンニュートラルや2030年の新たな削減目標の実現を目指すに際して、原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する。」

と書かれています。

「可能な限り原発依存度を低減」について、産業界や電力業界は、この表現を削除すべきという要望を出していましたが、何とか維持されることとなりました。新増設やリプレースについて書き込まれなかったことは、原発廃止を望む全国の市民の声が、プレッシャーとなっていると言えます。

しかし、油断はできません。

素案発表後、7月30日に開催されたの資源エネ庁の審議会(基本政策分科会)でも、オブザーバーとして発言した経済団体連合会や日本商工会議所、そして審議会の複数の委員から、「新増設やリプレースについて書き込むべき」という強い意見が、改めて出されました。この段階でもまったくあきらめていないのです。

また、2050年カーボンニュートラルを視野に入れた表現としては
「(p.23)原子力については、国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していく。」

と書かれました。

これは、「リプレースについても余地を残す表現だ」(産経新聞、注4)とも報道されています。総選挙が終わってから、3年後のエネ基改訂に向けて、原発推進の声がいっそう強くなることも十分に考えられます。

私たち市民も、パブリックコメントや選挙に向けて、「原発はフェーズアウトを」「新増設やリプレースは論外」の声を、あげ続けなければなりません。

(吉田明子・満田夏花)

注1:たとえば、いったん再稼働した川内原発、高浜原発の4基は、テロ対策施設(特定重大事故等対処施設)の建設の遅れにより、2020年には停止に追い込まれました(その後、川内原発は再稼働)。定期点検中の伊方原発3号機は、広島高裁による運転差し止め判断で、定期点検が終わっても運転再開できていません(2021年3月18日、広島高裁が差し止めを取り消し)。また、2020年12月4日、関西電力大飯原発3・4号機をめぐり、大阪地裁は国に設置許可の取り消しを命じる判決を出しました。国は控訴し、判決は確定していないため、ただちに大飯原発の運転を止めるわけではありませんが、今後、全国の原発に波及する可能性があります。

注2:原子力産業新聞、2021年1月8日「2020年の原子力発電設備利用率は15.5%」

注3:日経新聞、2021年7月15日「原発60年超運転浮上 建て替え見送り延命頼み」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA15CZB0V10C21A7000000/

注4:産経新聞、2021年7月6日「原発「必要規模を持続的に」 エネ基骨子案判明」
https://www.sankei.com/article/20210706-ZQBRWGADEVNBZJSLJ3EXPLUDTE/

企業の株主総会で気候変動アクション!

近年、企業に対し気候変動対策の強化を求めて株主が行動を起こすケースが増えています。機関投資家の動きはこれまで注目されてきましたが、海外ではNGOが自ら株主となり、企業に対し気候変動対策の強化を株主提案し、可決されるケースも出てきています。

日本でも、昨年気候ネットワークがみずほ銀行に対し株主提案を、今年はマーケットフォースが住友商事に、そしていくつかのNGOが合同で三菱UFJフィナンシャルグループに株主提案をしています。

参考:株主総会ピーク 気候変動問題へ取り組み強化求める提案相次ぐ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210629/k10013109341000.html

FoEJapanは他のNGOとともに株主総会会場近くで、企業の関係者や総会に参加する株主に対し、アピールを行いました。

住友商事は2050年に住友商事グループのカーボンニュートラル化を目指すことや、原則として新規の発電事業・建設工事請負には取り組まないとしています。しかし、実際には今も新規石炭火力発電所への関与を完全には否定していません。バングラデシュ・マタバリ石炭火力発電事業はその一つ。住友商事はすでに建設中のマタバリ1&2号機に関与していますが、新規の3&4号機ついては、今も「参画の是非を検討する」としています。

マーケットフォースの株主提案は否決されてしまいましたが、日本の大手商社に対して気候変動の観点で出された初めての株主提案としては一定以上の賛成票を集められたのではないかと評価する声もあります(参考:東洋経済オンライン「住友商事、気候変動の株主提案「賛成2割」の重圧 「脱石炭」に遅れ、石炭火力完全撤退は2040年代」https://toyokeizai.net/articles/-/436303)。

みずほ銀行の株主総会でのアクションの様子

脱石炭ポリシーを掲げている三菱商事、新規石炭火力のEPCに参画

三菱商事に対しては、すでに脱石炭方針を掲げているにもかかわらず、今でも新規石炭火力発電事業に参画を続けていること、カナダで進めているLNGカナダ事業に関連して先住民族の反対や人権侵害が発生していること、またミャンマーの軍に利する可能性のあるガス事業に参画している問題点などを指摘し、三菱商事に対しては問題ある事業からの撤退を、そして株主総会に参加する株主たちに三菱商事に対し気候変動・人権ポリシー強化を求める質問等を行なうようアピールしました。

今後も企業に対し様々な形で気候危機対策や、脱化石燃料を求めていきます。

(深草亜悠美・杉浦成人)

Dear Shareholders of Mitsubishi Corporation

To prevent Mitsubishi Corporation from being left behind in the race to zero emissions

Did you know?

Mitsubishi Corporation’s commitments include a 30% renewable energy ratio in power generation, decarbonization of coal by 2050, and the promotion of ammonia, carbon dioxide Capture, Utilization and Storage (CCUS), and hydrogen-related businesses. The company says they are committed to protecting the environment and addressing climate change issues, but these are far from those contained in the Paris Agreement, which seeks decarbonization of society by 2050.

A recent report released by the International Energy Agency (IEA) (Net Zero by 2050) called for zero investment in new fossil fuel development after 2021 in order to achieve net zero greenhouse gas emissions in 2050. Not only coal but also gas may become “stranded assets” in the future.

Mitsubishi Corporation should not only accelerate its efforts to eliminate coal, but also withdraw from other new fossil fuel businesses.

Indigenous peoples are protesting in Canada

Mitsubishi Corporation is involved in the development of shale gas and the construction of a liquified natural gas (LNG) terminal in British Columbia – LNG Canada project.

Indigenous peoples and local NGOs have voiced opposition to these developments and the development of gas pipelines, which threaten indigenous peoples’ lands and accelerate climate change. However, armed police are violently suppressing these protests.

Canadian citizens expressed outrage at the police crackdown.

Strikes in solidarity with indigenous peoples have spread across Canada

Photo: Michael Toledano

The United Nations is keeping a close eye on this project

The Coastal GasLink pipeline, which is being constructed to transport fracked gas to Mitsubishi Corporation’s LNGCanada project, is being constructed without the consent of indigenous peoples. Therefore, the UN Committee on the Elimination of Racial Discrimination is calling on the Canadian government to immediately halt the construction of the Coastal Gas Link pipeline project, the Trans-Mountain pipeline project as well as the Site C dam until they obtain their Free Prior and Informed Consent (FPIC).

Mitsubishi Corporation also has its policy on indigenous peoples’ rights stating, “in the context of its overall commitment to respecting human rights, [Mitsubishi Corporation] pays special attention to upholding the rights of indigenous peoples, acknowledging their unique social and legal status under national and international laws, as well as their unique histories and cultural contributions throughout the world.”

Continuing this project would pose a reputation risk to the company.

Please speak with Mitsubishi Corporation

Please urge Mitsubishi Corporation to withdraw from the LNG Canada project and establish a stronger environmental policy.

Contact: Friends of the Earth Japan info@foejapan.org

三菱商事の株主の皆様へ

三菱商事が脱炭素の流れから
取り残されないために

ご存知ですか?

三菱商事は環境保全や気候変動対策に取り組んでいますが、その内容は、発電事業における再生可能エネルギー比率30%、2050年までの脱石炭、アンモニアやCCUS・水素関連事業の推進など「2050年までの社会の脱炭素化」を求めるパリ協定からは程遠い内容です。国際エネルギー機関(IEA)が最近発表したレポート(「Net Zero by 2050」)では、2050年温室効果ガス排出ネットゼロのためには2021年以降新規の化石燃料開発への投資をゼロにすべきと示しました。今後石炭だけでなく、ガスも「座礁資産」化する恐れがあります。三菱商事は脱石炭の加速だけでなく、その他の新規化石燃料事業からも撤退すべき時に来ています。

カナダで先住民族が反対の声をあげています

三菱商事はカナダ・ブリティッシュコロンビア州でシェールガス開発やターミナル建設(LNGカナダ事業)を行なっています。これらの開発やガスを運ぶためのパイプライン開発は先住民族の土地を脅かし、気候変動を加速させる懸念があり、先住民族や現地NGOが反対の声をあげています。しかし、こうした先住民族等の抗議を武装した警官が暴力的に弾圧しています。警察による過度の弾圧に対し、カナダの市民も怒りの声をあげました。先住民族に連帯して行われたストライキはカナダ全土に広がりました。

Photo: Michael Toledano

国連もこのガス開発事業を注視しています

三菱商事のLNGカナダ事業にガスを運ぶために建設が進められているコースタル・ガスリンク・パイプラインは、特に先住民族の反対が大きく、先住民族の同意を得ずに建設が進められていることから、国連人種差別撤廃委員会が「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(free, prior and informed consent)」が得られるまで、コースタル・ガスリンク・パイプライン事業、トランス・マウンテン・パイプライン事業、サイトCダムの建設を即時中止するよう連邦政府に求める決議を行いました。また三菱商事自身も「人権尊重のコミットメントの一環として、先住⺠がいる地域での事業活動においては、先住⺠が固有の文化や歴史 を持つことを認識し、事業活動を行う国・地域の法律や国際的な取り決めに定められた先住⺠の権利への配慮を行います。」としています。このまま事業を継続することは、三菱商事に評判リスクももたらします。

株主の皆さんも一緒に声をあげてください

ぜひ三菱商事に対し、LNGカナダ事業からの撤退、より強力な環境方針の設定を求めてください。

LNGカナダ事業に関する情報はこちら

連絡先:国際環境NGO FoE Japan | info@foejapan.org

先住民族の権利や豊かな自然を破壊するガス開発 – 日本の官民は撤退を

日本の官民が関わるガス開発に反対し、弾圧されている先住民族がカナダにいることをご存知ですか?

温室効果ガスの排出が石炭と比べ少なく、再生可能エネルギーが普及するまでの「つなぎ」とみなされることが多いガス。しかし、ガスも化石燃料であることから、気候変動対策にはなり得ません。それ以外にも、たくさんの課題があります。

カナダのブリティッシュ・コロンビア(BC)州で進められている大規模な新規ガス開発現地には、人権や環境を脅かすこの開発に長年反対してきた先住民族がいます。「太古の昔から、私たちは大地と調和のとれた関係を保ってきました。私たちは大地に生かされており、大地を守る責任があるのです。…彼らは私たちを私たちの土地から抹消しようとしています。」2019年4月、国連先住民族問題に関する常設フォーラムで先住民族のフレダ・ヒューソンさんはそう演説しました。現地で何が起きているのでしょうか。

カナダ最大規模の大型LNG事業

カナダはこれまで、採掘したガスの多くをアメリカに輸出してきました。しかし、アメリカ国内でガス生産が増加していることに加えアジアでのガス需要の増大を見越して、液化天然ガス(LNG)をアジアに輸出するカナダ初の大型LNG事業が進んでいます。この事業は主に3つの部分で構成されています。

(地図出典:Coastal Link Gas Pipeline)

1)ガスを採掘するためのモントニー・シェールガス開発事業(地図右上部、Dawson Creekあたり。)

2)採掘場から輸出ターミナルにガスを運ぶためのコースタル・ガスリンク・パイプライン事業(CGL事業)

3)ガスを液化、貯蔵、そして輸出するためのLNGカナダプロジェクト(地図左側、Kitimatエリア)

三菱商事、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、国際協力銀行(JBIC)がモントニーでシェールガス開発事業に関与し、同じく三菱商事が出資するLNGカナダプロジェクトに対してもJBICが融資の検討を行っています。また、BC州で新規の大型ダム(サイトCダム)の建設も進んでおり、この事業はガス開発に電力を供給するために進められているとも言われています。

先住民族の権利を無視した開発

この大型ガス開発では、特に670キロメートルのパイプライン敷設事業に関して強い反対の声が上げられてきました。パイプライン事業は、先住民族Wet’suwet’enの土地を通過する計画ですが、Wet’suwet’enの伝統的酋長らは同パイプライン事業に合意してません。

2019年1月7日、BC州最高裁判所が先住民族の反対運動を違法とみなし、パイプライン建設を認める判決を下しました。この判決は、先住民族の土地に関する決定権は先住民族にあるという過去の判例をそもそも無視しているとの指摘もありました。しかし、この判決を根拠に建設を進めようと、数十名の武装した警官が反対運動を続ける先住民族に弾圧行為を加えたのです。警官はチェーンソーで障害物を破壊して強制的に土地に侵入し、14名を逮捕しました。

先住民族の権利が侵されている事態に対し、国連人種差別撤廃委員会(Committee on the Elimination of Racial Discrimination)は2019年12月13日付けで、「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(free, prior and informed consent)」が得られるまで、コースタル・ガスリンク・パイプライン事業、トランス・マウンテン・パイプライン事業、サイトCダムの建設を即時中止するようカナダ連邦政府に求める決議を発表しました。

しかし、翌年の2020年2月6日現地時間朝3時すぎ、再び数十名の武装した警官が非暴力行動を続ける先住民族を強制退去させようとし、28人を逮捕しました。この件はカナダ全土で大きく報じられ、カナダ国内外70都市以上で先住民族の人々への連帯を示すアクションが行われました。こうした状況をうけ、連邦政府・BC州・先住民族(Wet’ensuwet’en)の間で、「Wet’ensuwet’enの土地に係る権利を認める」とする覚書が結ばれました。それにもかかわらず、この覚書には一連のガス事業についての言及はなく、その後も、パイプライン建設は継続されてしまっています。

カナダ連邦政府は「先住民族の権利に関する国際連合宣言(United Nations Declaration on the Rights of Indigenous Peoples, UNDRIP)」を2016年に採択しており、BC州も同宣言を実施する決議を行っています。先住民族の土地への権利はカナダの最高裁で認められているにもかかわらず、その反対の声や平和的な抗議活動が武装した警官によって抑圧されているのが現状なのです。

環境負荷の高いシェール開発

フラッキングという手法を使って採掘されるシェールガスには多大な環境影響が伴うことも問題です。シェールガスは地下数百から数千メートルに存在する頁岩(けつがん)層に含まれます。その採掘のために頁岩層まで掘削を行い、岩に割れ目(フラック)を作り高圧で水を注入し破砕する(水圧破砕法またはフラッキング)必要があり、高い環境負荷が生じます。地震誘発、フラッキングのために注入する水による水質汚染、大気汚染、メタン排出による地球温暖化などのリスクが指摘されています。このような問題のため、フラッキングは2011年にフランスで禁止され、2012年にはブルガリア、その後ドイツやアイルランドでも禁止されています。モントニーでも過去にフラッキングが誘発したと見られる地震が発生し、一部で操業の一時的停止措置がとられています。

ガスはつなぎのエネルギー?

ガスは、石炭火力よりもCO2排出が少ないことから、再エネに転換されるまでの「つなぎのエネルギー」と言われることがありますが、大きな間違いです。

気候変動に関する国際条約であるパリ協定は、地球の平均気温の上昇を1.5℃までに抑える努力目標を掲げており、これを達成するためには2050年までに世界の温室効果ガスの排出を実質ゼロにする必要があります。つまり新たなガス田の開発や採掘、ガス関連施設を建設することは、新たな温室効果ガスの排出を長期にわたり固定(「ロックイン」)することに繋がり、パリ協定の目標とも合致しないのです。LNGカナダプロジェクトは2024年度中から40年稼働が計画されており、計画通り進めば2050年を超えて運転することになり、パリ協定と整合しません。

さらに最近国際エネルギー機関(IEA)が発表したレポート(「Net Zero by 2050 A roadmap for the global energy sector」)は、パリ協定の達成のために新規のガス開発投資もやめるべきであると示し、大きな注目を集めました。

三菱商事を含む企業、そして融資に参加する銀行は、今すぐ先住民族の権利侵害への加担をやめ、事業から撤退すべきです。

★事業の詳細はこちら
★先住民族グループからJBICに対して送付された書簡はこちら

写真は全て(C) Michael Toledano

(深草亜悠美)

「処理水」?「汚染水」? どっち? そして、何をどれくらい放出するの?

FoE Japanの満田です。この記事を図でざっくりまとめるとこんな感じです。

もう少し詳しく解説します。

政府は、福島第一原発の敷地でタンク保管されている処理汚染水について、今年4月13日海洋放出を決定しました。

また、同日、経済産業省は「トリチウム以外の核種について、環境放出の際の規制基準を満たす水』のみを『ALPS処理水』と呼称する」という、少し不思議なプレスリリースを出しました。

さて、この水をめぐっては、政府は従来「ALPS処理水」と呼び、海洋放出に反対する人たちは「汚染水」と呼んでいます。まあ、処理しているのを強調したいのか、まだ汚染されているのを強調したいのかの違いでしょうか…。ただ、政府は、「汚染水」という報道を見かけると、結構しつこく、いや失礼、こまめに、「いや処理水です」と訂正に努めていたようです。

FoE Japanでは、間をとって、というわけではありませんが、「処理されているが放射性物質は残留している水」ということから、「処理汚染水」と呼んでいます。

ところが、タンクの水の7割において、どうしても取り除けないとされていたトリチウム以外の放射性物質について全体として基準を超えているのです。

この水は、事故で溶け落ちた燃料デブリを冷却する水と、建屋内に流入した水が混じった正真正銘のこ~い「汚染水」をALPS(多核種除去装置)など何段階にわたって処理しています(下図)。

残留しているのは、ヨウ素129、ルテニウム106、ストロンチウム90、セシウム137など…。ストロンチウム90というのは、骨にたまる怖い放射性物質。ヨウ素129は、半減期は1570万年で気が遠くなるほど長いのが特徴です。最近では炭素14なんてものが残留していることが明らかになりました。ここらへんの顛末は以下の記事もご覧ください。

ALPS処理水、ヨウ素129などトリチウム以外核種の残留~「説明・公聴会」の前提は崩れた | FoE Japan

東電は、トリチウム以外の放射性物質が基準内におさまるように、二次処理をする、としています。

さて、ここで問題です。

最初の政府による「処理水」の定義(「トリチウム以外の核種について、環境放出の際の規制基準を満たす水』のみを『ALPS処理水』と呼称する」)からすると、

いま現在、タンクにたまっている水はなんと呼べばよいのでしょうか?

実は、私も気になっていたこの点に関して、質問を出してくれた議員さんが…!

立憲民主党の阿部知子議員です。

そうしたら、回答が出ました。(答弁書といいます)

「政府としてその呼称を定めていない」。

ガクッ。

まあ、呼びたいように呼んでください、ということなのでしょうか。

ということで、私は、引き続き、「処理汚染水」と呼ぶことといたします。悪しからず…。

ちなみに、この質問主意書、もっと重要なことも聞いていますので、ご紹介します。

いまタンクに溜まっている水に含まれいている放射性物質の種類ごとの総量、および放出するであろう水に含まれる放射性物質の核種ごとの総量の推定値についてです。

つまり濃度ではなくて、どれくらいの量が含まれているの? もしくは、どれくらいの量を海に出しちゃうの? ということです。

これ、知りたかった! 実は、私も何度も何度も、東電や経産省に聞き続けてきたのです…。

で、その答えは…

「東電に公表を求める予定はない」

ガクッ。

濃度がわかっているんだからいいでしょ? ということ? でも総量が、総量が、重要なんです~。

おいおいおいおい。

何をどのくらい放出するつもりか、教えてくださいよ~。基本情報でしょ~。

ということで、質問主意書、答弁書のオリジナル、以下に貼り付けます。

阿部知子議員、ありがとうございました。 

(なお、この「水」をめぐっては、東電は、放出前に濃度を測定せず、計算だけで基準を満たしているか判断する方針であることが報じられています。こちらもまた、びっくりです。>東電、放出処理水の濃度測定せず 規制委で妥当性議論へ(2021年6月10日付東京新聞のサイトですが、共同通信の配信です。))

(満田夏花)

東京電力福島第一原子力発電所敷地内タンクの放射性物質の総量の公表に関する質問主意書