コロナ危機をどう乗り越えるか 〜システムチェンジに向けた連帯を〜

先月末、FoE ドイツの呼びかけで、このコロナ危機について意見交換や情報交換をする機会がありました。

ヨーロッパだけでなく、アフリカやラテンアメリカ、米国、アジアから40人近くのFoEのメンバーが集まって、「このコロナ危機をどう捉えるか」という話から始まり、途上国や先進国で起きていることの共有、そして、私たち市民が持続可能な社会のために目指すべき経済復興対策はどのようなものかという問題提起がありました。

話の中で出たのは、

・コロナ危機は、今まで見えないふりをしてきた気候変動による甚大な被害、生物多様性の損失、所得格差の拡大などの延長線上にあるもの。コロナ危機は、これらの社会問題・環境問題の原因である今の社会の仕組みが、限界であることを教えてくれている。

・コロナ危機の中で、不安定な雇用や家庭内暴力等に苦しむ人々、社会のセーフティーネットから溢れてしまう人々の存在など、社会の脆弱性が顕在化し、人々がこれらに気がつくようになった。その中で、お互いを気遣いあう人々が増えてきていたり、人間活動の低下による自然の回復を目にして自然との関係を見直そうという議論が盛んになってきたりしていることも事実である。

・南アフリカ(途上国で起きていること):多くの人々が電気など、基本的なニーズへのアクセスが困難な状況。すでに気候変動等の影響を被っている人ほどコロナ危機対策の網の目からこぼれ落ちている。今の状況は、もはや気候危機が起きたようなもの。

・米国(先進国で起きていること):政府から化石燃料産業や航空産業など、気候変動を加速させるような産業へ多くの補助金が渡されている。

 

会の後半は、今後、この危機を乗り越え、私たち市民で持続可能な社会をつくるための経済復興対策はどのようなものであるべきかという話になりました。話の中で出てきたのは、まずは経済の目的を考え直すこと、つまり人々や地球の健康の価値を見直すことが必要であるという話になりました。

そして、人々や地球の健康を大切にする経済の条件として、税の公平性の実現、公共サービスの提供、地産地消とフェアトレードの推奨、協同組合などを中心とした経済活動の拡大、利益追求の名の下に自然や人権を搾取するような企業に対する、拘束力のあるルールの確保、といった案が出ました。

 

また、全体を通してのキーワードは、”Just Recovery”という言葉。

”Just Recovery”とは、この危機による経済的打撃から回復する方法として、環境破壊や所得の格差を広げてしまうような過去の社会・経済の仕組みを繰り返すのではなく、社会的公正・環境に配慮しながら、回復しようという考え方です。

具体的には、気候変動の原因となる化石燃料ではなく、再生可能エネルギー普及をはじめとした脱炭素社会構築のための補助金や仕組みづくり、また、脱炭素社会に向けた仕事を増やし、すべての人々が人間らしい仕事と生活ができるような雇用支援をしていくことで、これ以上の自然破壊を止め、人々の公平性を実現していこうという考え方です。

例えば、政府からのお金が化石燃料産業などを維持するために使われてしまったら、短期的に求められる必要な緊急対策や、長期的な視野が求められる脱炭素社会のための技術や雇用の保護に十分なお金が行き届来ません。

 

繰り返しになりますが、私たちは今、気候変動、生物多様性の損失、所得格差の拡大、ジェンダーの不平等など、社会的問題と環境問題が複雑に絡み合った世界にいます。これらの問題を後回しにし、その悪影響が顕在化したのが、今回の危機と言えます。

だからこそ、私たちは個々の問題に個別に対処するのではなく、コロナ危機の影響を最も受けている人々の声を聞きながら今まで複数の危機に立ち向かってきた人同士で連帯し、すべての人が尊厳を持って生きることができる経済・社会を目指す必要があります。

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持続可能な社会とはどのような社会なのか、そして政府の打ち出す政策が持続可能な社会につながるものなのかを私たち市民がしっかり確認し、政府に訴えていくことが求められているように感じます。

(高橋英恵)

 

参考:

Friends of the Earth international, 2020/5/6 “Solidarity with peoples affected by coronavirus crisis – Friends of the Earth International”

https://youtu.be/DDrGl1rxtzg

 

Friends of the Earth international, 2020/4/15 ”COVID-19 crisis is a wake up call for system change”

https://www.foei.org/news/covid-19-coronavirus-crisis-system-change

 

Friends of the Earth Europe 2020/4/20 “Coronavirus: Choices lie ahead for how we build back our broken economies”

http://foeeurope.org/coronavirus-choices-lie-ahead-070420

 

Friends of the Earth APAC, 2020/4/26 “COVID-19: An Opportunity for System Change”

https://foeasiapacific.org/2020/04/26/covid-19-an-opportunity-for-system-change/

 

Friends of the Earth US, 2020/4/15 “New Report: Big Oil’s Money Pit to Reap Stimulus Billions”

https://foe.org/news/new-report-big-oils-money-pit-to-reap-stimulus-billions/

台湾の23の環境NGOが、汚染水の放出に反対し、意見書提出

情報更新:2020年5月14日
その後2団体が加わり、23団体になりました。

緑色公民行動連盟、地球公民基金、台湾環境保護連盟、など、台湾の23の環境NGOが、福島第一原発のサイトでたまり続ける汚染水の海洋放出に反対し、経済産業省に意見を提出しました。

意見書では、「ロンドン条約」が放射性廃棄物の海洋投棄を禁じていることを挙げ、「国際条約の理念に反する」としています。また、「放射能の汚染を国境を超えて拡散させることになり、福島近海の漁業や、近隣諸国の自然環境、人々の健康を危険にさらすことになり、台湾の人々にとっては大変憂慮する事態である」とし、「日本政府が各方面の反対の意見を聞いて他の方法をとること」を提案しています。

経済産業省は、現在、汚染水の処分について一般からの意見募集を行っており、台湾の環境団体の意見書は、それにこたえるものです。>経産省の意見公募についてはこちら


台湾のNGOから日本国経済産業省への意見書
経済産業省 御中
福島第一原発に溜まっている汚染水を海洋に直接投棄する予定であることを、貴殿が公表した情報で知りました。

福島第一原子力発電所の事故から 9 年が経ちましたが、東アジアの運命共同体である台湾は、政府も民間も事故については遺憾に思い、また注目してきました。私たちは日本の人々の生活復興支援に力添えするとともに台湾における原発政策を反省し、同じような事故がおこらないように努めたいと思っています。

原発の安全神話はすでに過去のものとなっています。事故による影響は甚大であり、元通りにすることは困難であり、日本の人々はその被害を受け続けています。私たちも日本政府が原発災害後の対処に努めていることは理解しています。しかし注意を喚起しておきたいのは、1990 年代に採択された「ロンドン条約」が放射性廃棄物の海洋投棄を禁じていることは国際的な共通認識だということです。しかるに日本政府は放射性物質を含んだ 119 万立方メートルの汚染水を太平洋に投棄しようとしています。これは国際条約の理念に反することであり、放射能の汚染を国境を超えて拡散させることになり、福島近海の漁業や、近隣諸国の自然環境、人々の健康を危険にさらすことになり、台湾の人々にとっては大変憂慮する事態なのです。

私たちは、日本政府が各方面の反対の意見を聞いて他の方法を採ることを重ねて建議します。放射能汚染水の海洋投棄は最悪の選択であり、それは日本にとって無益なだけでなく、禍を近隣に押し付けることにもなりま す。貴殿が意見を聴取しているいま、私たちは台湾の民間団体の立場から共同の声明を公表することにしました。日本政府が台湾からの意見を重視してくださることを願って。

1. 綠色公民行動聯盟 Gr een Citizens’ Action Alliance
2. 地球公民基金會 Citizen of the Earth
3. 台灣環境保護聯盟 Taiwan Environmental Protection Union
4. 桃園在地聯盟 Taoyuan Local Union
5. 北海岸反核行動聯盟 North Coast Anti Nuclear Action Alliance
6. 屏東縣好好婦女權益發展協會 Juridical Association for the Development of Women’s Rights in
Pingtung
7. 綠色和平 Greenpeace
8. 永社 Taiwan Forever Association
9. 環境法律人協會 Environmental Jurists Association
10. 彰化縣環境保護聯盟 Changhua Environmental Protection Union
11. 媽媽監督核電廠聯盟 Mom Loves Taiwan Association
12. 蠻野心足生態協會 Wild at Heart Legal Defense Association
13. 宜蘭人文基金會 Yilan Charlei Chen Foundation
14. 350 台灣 350 Taiwan
15. 台灣人權促進會 Taiwan Association for Human Rights
16. 台灣環境資訊協會 Taiwan Environmental Information Association
17. 生態關懷者協會 Taiwan Ecological Stewardship Association
18. 主婦聯盟環境保護基金會 Homemakers United Foundation
19. 荒野保護協會 The Society of Wilderness
20. 看守台灣協會 Taiwan Watch Institute
21. 台灣非核亞洲論壇 No Nukes Asia Forum Taiwan
22. 人 本 文 教 基金 會 Humanistic Education Foundation
23. 台 灣 基督 長 老 教 會 The Presbyterian Church in Taiwan

 


関連報道

環團赴日台交流協會陳情 反對福島核污水入海https://www.cna.com.tw/news/aipl/202005130072.aspx
ほか多数

台湾_汚染水反対

 

#STAYHOMEの今こそ。見直そう!おうちの電気

いよいよ、2020年度が始まりました。
新しい環境での生活を始められた方も多いかもしれません。
そして誰にとっても、これまでにない状況での新年度となっていると思います。

2016年4月の電力小売全面自由化から丸4年がたちました。

おうちの電気、あなたはもう切り替えましたか?

そういえば、まだだった・・という方も多いかもしれませんが、今からでも遅くありません。4年経って、具体的に選べる電力会社も増えてきた今、そして家にいる時間が長くなっている今、ぜひ行動に移しませんか?

●どうやって切り替える?

実際に、申込み手続き自体はとても簡単です。各社のウェブサイトから必要事項を入力するだけ。(現在の請求書の「お客様番号・地点番号」の情報が必要です)

それよりも「どの電力会社にするか」決めるほうが大変かもしれません。

そこで今日は、自然エネルギーを重視する電力会社の選び方について書いてみます。
環境NGOなどで2015年に始めた「パワーシフト・キャンペーン」(FoE Japanが事務局をやっています)では、自然エネルギーを重視する電力会社を紹介し、選ぶ人を増やすことを目指しています。こちらにそってご紹介します。
http://power-shift.org/

1)お住まいの地域で選べる電力会社をチェック。

お住まいの地域に本社のある電力会社があれば、ぜひ候補に入れましょう。
今居住地だけでなく、出身の地域や思い入れのある地域の電力会社もよいでしょう。また、生協の組合員の方は、生協の電気もチェック。

2)気になる電力会社のウェブサイトをチェック。

電源構成、どこから電気を調達しているのか、どんな会社なのか。各社ウェブサイトに加え、パワーシフトのウェブサイト上の紹介記事(http://power-shift.org/choice/)をぜひ読んでいただきたいです。社長の思いや苦労していること、目指す方向など、各社ウェブサイトに載っていないことも掲載しています。

3)一番応援したいと思うところに決める

調べてみると、自然エネルギー重視の電力会社といっても各社方向性がそれぞれだとおわかりいただけるかと思います。また、パワーシフトで紹介している会社がすべて完璧というわけではなく、むしろ「目標に向けて前進中」です。

ポイントは、大手電力や大手新電力よりも少しでもベターで、共感できる電力会社を選ぶこと。応援したいと思うポイントやエピソードを見つけるつもりで、選んでみてください。

なお、パワーシフトの紹介電力会社が少ないエリアもあると思います。紹介以外の会社も含めて、少しでもベターを見つけてください。
●よくある疑問!工事は必要なの?

なお、物理的な電気の流れはこれまでと変わりません。電線の管理運営は、引き続き大手電力会社が担います。小売電力会社は、事務的な手続きの窓口なのです。

しかし、小売電力会社によって、どこから電気を調達するのか、電気料金をどう使われるのかが違ってきます。

●お金の流れを変えよう!

電気を選ぶことは、未来を選ぶこと。投票と同じくらい効力があります。
電気代というお金の行き先を実際に変えることができるからです。

電力市場全体で約15兆円、そのうち約7.5兆円が家庭部門です。2016年以前はすべて大手電力会社に行っていたこのお金の流れを、私たち自身が決めることができるのです。切り替えたみなさんの感想は「気分がすっきりした」「再エネにつながる安心感がある」などなど。物理的な電気は同じでも、お金の流れで違うのです。

ちなみに・・パワーシフトで2019年9月から呼びかけている「みんなの電気代積み上げ」、ようやく1200万円まできました!
ですが、まだまだ足りません!!
みなさんの登録と口コミ、改めてお願いいたします!!!
http://power-shift.org/100m/

●#STAYHOME期間の特別キャンペーン(ひとまず5月10日まで)

パワーシフト相談受付

みなさんの電力選びを、できるだけサポートします!
疑問・疑問にどんどんお答えしたいと思います。info@power-shift.org へのメール

もしくは、パワーシフトのツイッター、FB、Instagramに「質問受付」の投稿がありますので、何か迷ったらぜひお気軽に問合せください。こんなことができるんじゃない、という提案も大歓迎です!

5/1 FoE カフェ「パワーシフト入門」もよろしければご覧ください。
https://www.facebook.com/FoEJapan/videos/537056840337114/

2020年は、3.11から10年目の年でもあります。
おうちの電気も見直して、心を新たに。

連休中もどうか健康に気を付けて、おうち時間をお過ごしください。
(吉田明子)

置き去りとなったALPS処理汚染水長期陸上保管の選択肢

東京電力福島第一原発で増え続けるALPS処理汚染水について、経産省のもとに設置された「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」(ALPS小委員会)は、昨年12月23日、「海洋放出」、「水蒸気放出」、そしてその組み合わせという3つの案に絞り込んだ「とりまとめ案」を発表した。しかし、これらはいずれも放射性物質の環境中の拡散を許すものとなっている。大型タンク貯留案やモルタル固化案などの陸上長期保管の代替案は無視されてしまった。

ALPS処理汚染水は、2019年10月段階で約116万m3、タンク数は960基にのぼる。トリチウムの総量でいえば推定856兆ベクレル(注1)。タンクにためられている水のうち約8割で、トリチウム以外の62の放射線核種の告示比総和が1を超えている(告示比総和とは各核種濃度の告示濃度限度に対する割合を足し合わせたもの。排出基準として1未満でなければならない)。ヨウ素129やストロンチウム90などだ。東電は海洋放出する場合は二次処理を行い、基準以下にするとしている。

汚染水に関しては、更田原子力規制委員会委員長が「希釈して海洋放出が現実的な唯一の選択肢」と繰り返し発言。原田前環境大臣も記者会見で「海洋放出しかない」と発言し、大きく報道された。しかし、十分現実的な陸上保管案が提案されているのにもかかわらず、それについてはほとんど検討されていないし、報道もされていない。

実質的な議論がなされなかった大型タンク保管案

陸上保管案については、大型プラントの技術者も参加する民間のシンクタンク「原子力市民委員会」の技術部会が、「大型タンク貯留案」、「モルタル固化案」を提案し、経済産業省に提出している(注2)。

大型タンク貯留案については、ドーム型屋根、水封ベント付きの10万m3の大型タンクを建設する案だ。建設場所としては、7・8号機予定地、土捨場、敷地後背地等から、地元の了解を得て選択することを提案。800m×800mの敷地に20基のタンクを建設し、既存タンク敷地も順次大型に置き換えることで、今後、新たに発生する汚染水約48年分の貯留が可能になる。

2018年8月、ALPS小委員会事務局が実施した公聴会では、漁業関係者も含めた多くの参加者が海洋放出に反対し、「陸上長期保管を行うべき」という意見が表明された。これを受けて山本 一良委員長は、「一つのオプションとして検討する」と約束。

しかし、陸上保管がようやく俎上に上がったのは、一年近くたった2019年8月9日の第13回委員会でのことだった。第13回の会合で東電が大型タンク貯留に関して、「検討したが、デメリットが大きい」という趣旨の説明を行ったのみだ。これに対する質疑や議論は行われていない。

東電がデメリットとして挙げたのは、「敷地利用効率は標準タンクと大差ない」「雨水混入の可能性がある」「破損した場合の漏えい量大」といった点であった。大型タンクは、石油備蓄などに使われており、多くの実績をもつことは周知の事実だ。また、ドーム型を採用すれば、 雨水混入の心配はない。さらに、原子力市民委員会による大型タンクの提案には、防液堤の設置も含まれている。ALPS小委員会は、東電の一方的な説明のみを受け入れるべきではない。

「モルタル固化案」はまったく無視

原子力市民委員会が提案する「モルタル固化案」は、アメリカのサバンナリバー核施設の汚染水処分でも用いられた手法で、汚染水をセメントと砂でモルタル化し、半地下の状態で保管するというもの。

「利点としては、固化することにより、放射性物質の海洋流出リスクを遮断できることです。ただし、セメントや砂を混ぜるため、容積効率は約4分の1となります。それが欠点といえるでしょう。それでも800m×800mの敷地があれば、今後、約18年分の汚染水をモルタル化して保管できます」。同案のとりまとめ作業を行った原子力市民委員会の川井康郎氏(元プラント技術者)はこう説明する。

事務局は、「実績がない」として片付けようとしているが、サバンナリバー核施設での実績をもちだすまでもなく、原発の運転時に発生する低レベル廃棄物についても、その多くがモルタル固化され、トレンチあるいはビット処理を行っている。きわめてシンプルな手法であり、現実的だ。「実績がない」として片付けることは理屈にあわない。

敷地は本当に足りないのか

敷地をめぐる議論も、中途半端なままだ。

東電が示した敷地利用計画は、使用済核燃料や燃料デブリの一時保管施設、資機材保管に加え、モックアップ施設、研究施設など、本当に敷地内に必要なのかよくわからないものも含まれている(注3)。さらに、使用済み核燃料取り出しの計画はつい最近最大5年程度先送りすることが発表されたばかり。デブリの取り出しについても、処分方法も決まっていない。そもそもデブリの取り出し自体を抜本的に見直すべきではないか。

委員からは、「福島第一原発の敷地の利用状況をみると、現在あるタンク容量と同程度のタンクを土捨て場となっている敷地の北側に設置できるのではないか」「敷地が足りないのであれば、福島第一原発の敷地を拡張すればよいのではないか」などといった意見がだされた。

敷地の北側の土捨て場にもし大型タンクを設置することができれば、今後、約48年分の水をためることができると試算されている。

委員から再三にわたり、「土捨て場の土を外に運びだすことができないのか」という質問がなされたが、原子力規制庁は、「外に出す基準について検討が必要」という趣旨のあいまいな回答にとどまっている。

土捨て場にためられている土について、東電は「数Bq/kg~数千Bq/kg」と説明しており(注4)、これが正しければ敷地から動かせないレベルの土ではない。

敷地拡大の可能性については、事務局は「福島第一原発の外側である中間貯蔵施設予定地は、地元への説明を行い、福島復興のために受け入れていただいており、他の用途で使用することは難しい」としている(注5)。もちろん、地元への説明・理解は不可欠であるが、その努力をまったくせずに、「敷地拡大は困難」という結論を出すことは時期尚早だろう。

問題が多い小委員会「取りまとめ案」

 昨年12月に発表されたALPS小委員会の「取りまとめ案」は小委員会の議論を反映したものではなく、事務局や東電の誘導により「海洋放出」、「水蒸気放出」、そしてその組み合わせという結論を導き出したように思える。

 前述の大型タンクをめぐっては、東電の説明をそのままなぞるだけの文面となっている。

土捨て場の土壌の運びだしに関しては、「敷地内土壌が汚染されている実態が明らかになっていないこと、敷地内の土壌の搬出先、保管方法等についての具体化がなされていないこと、敷地内土壌の最終的な処分方法が決まっていないことから、敷地外へ土壌を持ち出すことは困難であるとの結論に至った」など、小委員会で議論されていないことも含めて、決めつけている(注5)。

 にもかかわらず、小委員会の委員が明確な異論を示さない限り、この事務局主導の「取りまとめ案」が委員会の意思として固まってしまうだろう。

 ALPS小委員会での議論はそろそろ大詰めだ。近日中に小委員会が開催され、「取りまとめ」が確定するだろう。そして、地元の理解を得たことにする何らかのプロセスがはじまると思われる。

 しかし、地元の漁業者は「放出ありき」の議論に、早くも反発を強めている。

 ALPS小委員会は、陸上保管案を真剣に検討し直し、地元も含めた幅広い市民の意見をきくべきだろう。

注1) 2019年11⽉18⽇東電発表資料
注2)原子力市民委員会「ALPS 処理水取扱いへの見解」2019年10月3日
注3) 第14回 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 資料3
注4) 第15回 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会における東電発言
注5)第16回 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 資料4

【横須賀石炭訴訟報告 vol.2】再び傍聴者超満員。処分性と原告適格について主張

12月23日、第2回目の横須賀石炭火力訴訟裁判が開廷されました。法廷定員が96名の中、128名が傍聴のために東京地方裁判所に駆けつけ、超満員となりました。

今回は、前回裁判で提出された被告(国)の「横須賀石炭火力行政訴訟の提訴(以下「本件」)は不適法だから却下すべき」という答弁書への反論が主な内容でした。

(訴訟の概要についてはこちら

(第一回目期日の報告はこちら

国が本件を不適法と述べる理由としてあげたのは、

(1)本件は取消訴訟の対象となる処分ではない(処分性がない)

(2)原告らに本件通知の取り消しを求める法律上の利益がない(原告適格がない)

の2点です。上記に対し、原告は以下のように反論しました。

(1)本件は取消訴訟となりうるか?

取消訴訟としてみなされるには、「国・公共団体の行為により、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」である(=「処分性がある」)必要があります。

今回の裁判に当てはめた場合、環境影響評価書の確定通知がないと発電所の操業や建設工事に着手できる権利が発生しないこと、また、電気事業法においても工事の届出をしないと工事することはできないと定められている通り、法律上の手続きを経ないと事業が進まないことから、被告の申立ては通用しないことが言えます。

(2)確定通知の取り消しを求めることで、原告らに法律上の利益はあるか?

原告適格について、国は「個々人の一般的利益を保護しようとすることではなく、一般的利益としての環境の保全を図ろうとしている」と言って、原告らに環境影響評価の確定通知取消を求めても利益がないと主張しましたが、もしこのまま建設が進んでしまった場合の原告の被害は、

(1)排出されるCO2によって気候変動が進行して生じる被害

(2)排出される大気汚染物質によって生じる身体健康被害

(3)排出される温排水によって漁業資源が失われる等の生業喪失

の3点あるとして、原告側は原告適格を主張しました。

実際、気候変動によって、すでに大型台風等異常気象による損失と被害は起きており、熱中症等の搬送者数も今年は最高記録を更新しています。

また、大気汚染の影響を被る範囲について、神奈川県環境影響評価条例では、一定規模以上の火力発電所については「対象事業の実施区域又は当該法対象事業の実施されるべき区域の周囲から3kmの区域」を関係地域として指定しており、発電所アセス省令においても、火力発電所の周囲20kmの範囲を影響調査の対象地域としています。

温排水による環境の影響についても、近年の調査によって、海水温の上昇に伴う藻場植生の変化が見られる等、影響があることが認められています。

提訴時の45人の原告は発電所の20km圏内に住んでいる方が多く、20km圏外に住む原告であっても熱中症になりやすい年少者や高齢者です。また、新たに3名が原告に加わりましたが、いずれも漁業等関係者です。

以上のように、本件には処分性も原告適格もあることは明らかです。

求められる脱石炭

また、裁判後の報告会では、第二回期日の内容の報告のほか、気候ネットワーク平田仁子さんより、石炭火力をめぐる国際動向についての説明がありました。

パリ協定締結以来、世界の国々は脱石炭に舵を切っています。また、昨年秋からのFridaysForFutureの運動の影響もあり、今年春には欧州で環境派の緑の党が大きな躍進を見せました。そして、9月の気候行動サミットを呼びかけたアントニオ・グテーレス国連事務総長は、1.5度に気温上昇を抑えるために、

・2020までに新規の石炭火力発電を中止

・2050年に実質ゼロ

・2030年までに温室効果ガスを45%削減

を各国に呼びかけました。

一方、日本はCOP25においてもこの要請に応えず、国際的な批判を浴び続けています。

日本がすべきことは、グレーテス国連事務総長の要請を国策に反映すること、そして、それらに伴う仕事・雇用の公正な移行のための戦略を策定することが何より求められます。

本件が早く本審議に移行することとともに、日本の政策が脱石炭へと大きく方向転換されることを望みます。

次回期日は3月23日(月)14:00~、場所は東京地方裁判所(東京・霞ヶ関)です。
今回同様、裁判後は同裁判に係る報告会を、日比谷図書館にて開催します。
法廷に入廷できなかった場合も、裁判の様子はこちらの会にて裁判の報告をさせていただきますので、ぜひご参加ください。
申し込みフォームは後日、下記webサイトに掲載の予定です。
https://yokosukaclimatecase.jp/

FoE Japanは、引き続き、原告および訴訟サポーターのみなさまとともに、石炭火力の新設計画中止を求めて活動してまいります。

(高橋 英恵)

*横須賀石炭火力訴訟では、同裁判を支援するサポーターを募集しています。サポーターに登録いただいた方には次回期日の詳細、また、関連情報をお届けしています。ぜひ、皆様の知人、ご家族もお誘いの上、横須賀訴訟サポーターにご登録ください!

登録はこちらから↓

https://yokosukaclimatecase.jp/support_us/

【COP25 vol.2】COP25初日終了 – 政府によるチリ市民への弾圧への連帯を、そして市場メカニズムにNOを!

COP25初日が終了しました。

開幕の朝、会場入り口にて、南米の先住民族を中心に、チリ政権による市民社会への弾圧に反対する声をあげるアクションが開催されました。冷たい空気の中、15人ほどが眼帯をかけ、チリでたたかう市民への連帯を示し、気候危機の根本には不正義や、市民の声を封じるような政権の存在があるとし、Justice for climate, Justice for Chilean と声をあげました。

気候正義を求めるNGOの連合Demand Climate Justiceのメンバーの一人は「開催地はスペインに変わっても、私たちはチリの人々と共にある。スペインに変更になったからといって、現地で起こっている不正義から目をそらしてはいけない」と語りました。

開催地はスペイン・マドリードに変更となりましたが、COP25の交渉を進める議長はチリのままです。気候正義を求める市民社会としては、市民を弾圧する政府に今回の議長を任せることはできません。

また、初日の午後には、Friends of the EarthインターナショナルとしてCOP25にかける期待を記者に向けて発信。

南米・エルサルバトルのRicardo Navarroは、南米の市民社会と連帯することをうったえました。

「社会的・政治的な不公正、環境不正義を避けるために、私たちが取り組まなければならないことはシステムチェンジです。システムチェンジはいますぐに、すべてが気候危機に瀕する前に起こさなくてはなりません。今こそ、システムチェンジの時なのです。」

「開催地は変わっても南米の市民社会と連帯を」Ricardo Navarro(南米・エルサルバトル)

ナイジェリアのPhilip Jakporは、国際市場メカニズムについて指摘。ナイジェリアではShellや、ENIなど巨大化石燃料企業が化石燃料採掘を続けています。

また、FoEナイジェリアとFoEオランダは、化石燃料採掘を続け、気候危機を加速させているShellを相手取り、訴訟を起こしています。

ナイジェリアのPhilip Jakporは、国際市場メカニズムについて指摘。

しかし、驚くべきことに、Shellは市場メカニズムに参入する見返りとして、オランダ政府から補助金を受け取っています。Phillip Jakporはこれらの事実を記者会見で指摘し、企業の利益ばかり反映され、大規模プランテーションがクレジットになるようなメカニズムは、今すぐにやめるべきであるとコメントしました。

(高橋英恵・深草亜悠美)

「原発事故以後のエコロジーと地域」しあわせの経済国際フォーラム2019 in 横浜戸塚

「しあわせの経済国際フォーラム in 横浜戸塚」のA2セッション「原発事故以後のエコロジーと地域」(11月10日)を、FoE Japanでコーディネートしました。

トーク:武藤類子(福島原発告訴団団長
    山田周生(一般社団法人ユナイテッドグリーン代表)
    岩野さおり (高校生、Fridays for Future Tokyo)
    佐藤隆美( 城南信用金庫企業経営サポート部上席調査役)
モデレーター:吉田明子(国際環境NGO FoE Japan(気候変動・エネルギー担当))
企画:国際環境NGO FoE Japan

政治もくらしもエネルギーも、どこか「ひとごと」になっている現在の社会。2011年の福島第一原発事故により、大きな被害とともにその矛盾と問題が明らかになりました。

今年のフォーラムのメインビジュアルは、原発事故で放射能をあびた「山」の気持ちを描いたという間中ムーチョさんの作品です。また10日のクロージングでは、福島県いわき市から東京に避難された歌手のゆかりさんがふるさとへの思いを歌いました。

8年半たっても、原発事故は全く収束していない、そのことをメッセージとして伝えたかった、と辻信一さんは繰り返します。

A2セッションでは、原発事故の現状と各地で起こる市民の取り組み、今年も甚大な被害をもたらしている気候危機をテーマとして話しました。フォーラム開催の直前には、サティシュ・クマールさんも、Fridays For Futureの若者たちを激励るメッセージを寄せてくださっています。

最初に、今秋各地を襲った台風被害について、亡くなった方、今も困難なくらしを続けている方々に心よりお見舞い申し上げます。

武藤類子さんからは、福島県の阿武隈川沿いやいわき市でも、大きな被害があり、知人も被災されたことを伺いました。原発事故からの避難先での二重の被災でつらい思いをしている人がいること、放射性物質の移動や再拡散が懸念されることも報告されました。

山田周生さんも、釜石市の津波被災地にも影響があったとのお話しでした。佐藤隆美さんも、神奈川で知人が被災して他人事と思えないとのことでした。

台風19号の巨大化は、気候変動による海水温上昇に起因すると言われています。

日本の私たちも、気候災害、気候危機が、生活に直接的な脅威となっていることを、実感させられています。

武藤類子さんは、チェルノブイリ原発事故後に、村がすべてなくなってしまうような被害をもたらす原発は使いたくないと、声を上げはじめたそうです。電気も食べ物も自給自足するくらしを目指し、省エネや太陽熱・太陽光利用、山菜やどんぐりを食べるなど、試行錯誤したそうです。しかし、原発事故により、山菜や畑の野菜は食べられなくなり、くらしが一変しました。事故以降は、放射能被害の現状を国や県にうったえるとともに、2014年からは、東電福島原発刑事裁判を提訴し、東電の幹部の意図的な無作為を明らかにしてきました。9月に全員無罪の判決が出されたときのメンバーの悔し涙に、スリーマイル島原発事故の被災者の涙が重なったそうです。「核の悲劇の悲しみは時間と空間を超えて同じように映し出される」とのメッセージを伝えてくださいました。

高校1年生の岩野さおりさんも、原発事故当時は7歳だったそうですが、いとこたちとともに関西に避難をしたそうです。武藤さんのお話しを聞いて、子どもに特に影響をおよぼす原発は気候変動対策として使うべきではないと、改めて感じたと言います。

岩野さんは、ちょうど1年ほど前に、中学校の授業でセバン・スズキさんの国連でのスピーチとグレタ・トゥーンベリさんのスピーチを見て感銘を受け、3月末のイベントからFridays for Future Tokyoに参加し始めました。Fridays For Futureの若者たちが求めるのは気候災害による人権侵害に対する正義=気候正義「Climate Justice」だと話しました。11月29日のグローバル気候マーチへの参加を呼びかけるとともに、東京都に気候非常事態宣言の発表を求める署名活動を通して政治に私たちの声を届けることができるとうったえました。

山田周生さんは、大学在学中からバイクで地球を75周、世界を回りながら環境問題を取材していたそうです。その後天ぷら油のバイオディーゼル車での世界一周を実施、日本にかえってきて、岩手県釜石市にいたときに、3.11に遭遇したそうです。釜石で被災者支援を続けるとともに、バイオディーゼル発電をツールとしたコミュニティづくりも始めます。自宅も、薪ストーブや太陽光発電、バイオディーゼル発電などでオフグリッドを実現しています。米作りをはじめ食料も自給、トイレはもちろんバイオトイレです。仲間の輪がひろがり、釜石で農業者、漁業者とともに自給コミュニティが広がりつつある、と最先端のエココミュニティ、エネルギーのあり方を紹介いただきました。持続可能なくらしは楽しい、そのことで共感を広げ、人が集まっていると山田さんは言います。

城南信用金庫の佐藤隆美さんからは、震災後に脱原発、自然エネルギーへの転換を呼びかける金融機関としての取組についてお話しいただきました。原発事故直後の2011年4月1日、吉原元理事長のトップダウンで、「脱原発宣言」を決めたそうです。東電の債権と株は売却、原発関連には融資しないことを決めるとともに、本店や店舗の節電や太陽光発電設置を進めたそうです。2012年以降「よい仕事おこしフェア」を毎年開催し、全国の信用金庫や企業に参加を呼びかけています。現在はSDGsを経営目標にかかげ、女性役員の積極登用や子ども食堂などの取組みも行っているそうです。社内でも脱原発の方向性は十分に共有され、社員同士でも話をするそうです。

原発事故からコミュニティづくり、気候変動と幅広いテーマについて話をしましたが、問題の原因や解決にむけた動きは共通しています。地道な人々のつながり、取り組みこそがまさに「しあわせの経済」です。それを作り出すのは私たち一人ひとりの声、アクションです。

できることはたくさんあります。フォーラムに参加したみなさんも、このウェブページをご覧くださったみなさんも、今日からの一歩をともに始めましょう!

(FoE Japan 吉田明子)

初めてでも大丈夫だった!

こんにちは。

入口が見つからず遅刻したインターンの鷹啄です。

11月10日に宇津木の森での里山保全活動に参加しました。

今回の主な活動内容は、

草刈り、薪割り、柚子の収穫でした。


私は鶴折れないくらい不器用で、

小学生に腕相撲勝てないくらい力もないので、

今までそういう重労働っぽいことを避けたく、

自然の中で何かをしたいと思っても、参加していませんでした。


確かに最初は、どれも初めてやることなので苦戦しましたが、

だんだんと出来るようになりました。

今回のこの体験で、少し自信がついたので、

今後はこういった活動をどんどんしていきたいと思いました。

私と同じように、こういう作業は出来ないよ…と思ってしまっている方も

ぜひ勇気をだして参加してみてください!

次回の開催は12月10日です。

お会いできるのを楽しみにしています:)

詳細はこちら

http://www.foejapan.org/satoyama/utsugi/index.html

環境と人権のためにたたかったFoEインドネシアの活動家、命を落とす - 徹底的な調査と人権保護を

今月6日、インドネシア最大の環境団体、FoEインドネシア(WALHI:インドネシア環境フォーラム)北スマトラ支部のメンバーであったゴルフリッド・シレガール(Golfrid Siregar)が亡くなりました。34歳の若さでした。ゴルフリッドの冥福を祈るとともに、全ての環境・人権活動家の安全が確保されることを切に望みます。

 ゴルフリッドは、10月3日木曜日の早朝、重度の頭部外傷のため、非常に危険な状態で発見され、6日に搬送先の病院で息を引きとりました。現地警察は死因は事故であったとしていますが、損傷は頭部のみで身体は無傷であったこと、彼の所持品が消えていること、彼のバイクは損傷が少なかったことなど、不可解な点も多いため、活動家を狙った暗殺の可能性も非常に高く、WALHIを含む市民団体、およびFoEアジア太平洋グループは、インドネシア政府に対し、迅速かつ透明性の確保された形で彼の死因を調査するよう声明を発出しました。

 ゴルフリッドは様々な環境や人権の保護、特に北スマトラでの活動に人生を捧げました。プランテーション、違法伐採、水力発電ダム、砂採掘会社に対して提訴した漁民への支援など、企業により被害を受けたコミュニティ支援に精力的に取り組んでいました。


 インドネシアでは、環境や人権を守り活動する人々の命が常に危険にさらされています。FoE Japanがともに活動するインドネシア・インドラマユで石炭火力発電事業に反対する農民たちも、一時弾圧としか思えない理由で投獄されました(http://www.foejapan.org/aid/jbic02/indramayu/180924.html)。日本もまったく無関係ではないのです。また、インドネシアだけでなく、世界各地で活動家の人権侵害や生命への脅威が増しており、英国の人権監視団体グローバル・ウィットネスの今年の報告によると、2018年には週に3人のペースで活動家が殺害されています(https://www.globalwitness.org/en/campaigns/environmental-activists/enemies-state/)。

 今日、環境を守るために活動するということは旧来の自然保護の枠を超え、多くの国や地域で強権的な政府や大企業などの既得権益に対し土地や地域社会の権利、人権を守ろうと志す多くの人々の命を賭けた活動となっています。国連の人権擁護者に関する特別報告者のレポートは、問題の背景として、資本主義社会における資源収奪や、市民社会ではなく企業に多くの力が集中したり、本来規制導入を議論・実施すべきはずの政府が企業優遇の姿勢を見せているなどの要因をあげています(https://www.protecting-defenders.org/sites/protecting-defenders.org/files/environmentaldefenders_0.pdf)。

FoEアジア太平洋による声明はこちら(英語)
https://foeasiapacific.org/2019/10/11/friends-of-the-earth-asia-pacific-demands-a-thorough-investigation-into-the-death-of-activist-golfrid-siregar/

市民団体の連合による共同声明は下記(英語原文は翻訳版の下部に記載)

共同声明

ゴルフリッド・シレガールの死に関する徹底調査を

ジャカルタ:人権擁護活動家のための市民社会連合は、WALHI(FoE インドネシア)北スマトラの活動家でもあった環境保護活動家・人権擁護活動家のゴルフリッド・シレガールの死に関し、迅速で透明性の確保された、かつ、実効性のある独立調査を実施するようインドネシア政府に強く要請する。ゴルフリッドは2019年10月3日木曜日の未明、頭蓋の重度の頭部外傷のため、非常に危険な状態で発見された。ゴルフリッドは搬送先の病院で10月6日の日曜日に息を引き取った。

私たちは、警察が、ゴルフリッドの死因が交通事故によるものだと拙速に判断を下したことを遺憾に思っている。彼の死には、(交通事故が死因であると判断するには)多くの不審な点が残っていると考える。例えば、事故の発生現場が不明である。当初、彼の家族は、ジャミン・ギンティングの高架道路で事故が発生したという情報を治安部隊から入手していた。その後、故の発生現場はティティック・クニングの高架下であったと変更された。ゴルフリッドの死は、交通事故が原因ではなく、暴力が原因で死亡したのではないかと疑われる。さらに、マルク州の先住民族の活動家であるヨハネス・バルブンのケースでも、2016年に事故で死亡したと警察が主張した。一方、今年初めにWALHI西ヌサ・トゥンガラ支部の事務局長ムルダニが暗殺未遂事件にあったことも明らかにされていない。

インドネシアやその他の国で発生した、死亡や殺人未遂につながるあらゆる暴力事件と同様に、社会・環境に係る権利のために闘う環境・人権擁護活動家の活動と、住む場所・生計手段の喪失や環境被害といった企業による破壊行為の脅威とを切り離すことはできない。人権団体からの様々な報告によると、環境・人権擁護活動家は、人権侵害の事例や深刻な環境被害を明らかにするために活動している一方で、襲撃や脅威に対して非常に脆弱である。

ゴルフリッドは特に北スマトラにおいて、様々な環境保護活動や人道的活動に人生を捧げた。ゴルフリッドとWALHI北スマトラの仲間が行った様々なアドボカシー活動の中には、シアンタールにあるMitra Beton社の活動により被害を受けたコミュニティへの支援、リンガ・ムダでの森林への不法侵入や違法伐採問題におけるコミュニティへの支援、ラブビーチでの砂採掘会社に対する訴訟のための漁民への支援、そして、NSHE社に対する環境許認可を発行した北スマトラ州知事に対する訴訟のWALHI弁護団のリーダーとしての役割、また環境アセスメントにおける署名偽装に関する調査を中止した北スマトラ州警察の警察官をジャカルタの警察本部に報告したことなどが含まれている。

環境保護活動家や人権擁護活動家の殺害につながる暴挙はこれまでも発生しており、増加している。インドネシアでは、インドラ・プラニ、サリム・カンチル、ヨハネス・バルブン、ポロドゥカが殺害されてきたが、今、ゴルフリッド・シレガールがまた殺害された。同様に、西ヌサ・トゥンガラ州でムルダニが放火により暗殺未遂にあっている。

今回の事件を受けて、環境と人権の擁護者であるゴルフリッドの正義と家族のために、そしてすべての人々の正義のために、私たちは以下を強く要求する:

  1. 1998年12月9日に国連で採択された人権擁護活動家に関する宣言の第9条 (5)に述べられているように、国は、調査を迅速かつ公正に実施し、又はその管轄地域内で人権及び自由の侵害が生じたと信ずるに足りる合理的な根拠がある場合に確実に調査を実施しなくてはならない。
  2. 警察官は、法の執行プロセスの説明責任を果たすため、開かれた形で、ゴルフリッドの死を徹底的に調査すべき。また、北スマトラ州警察には利益相反が存在することから、この事件の処理は警察本部に引き継がれるべきである。
  3. 環境と人権の擁護者に関わる事件であるため、国家人権委員会は直ちに事実調査の独立チームを結成すべき
  4. その緊急性に鑑み、これ以上の冤罪や死につながる暴力が起きないよう、国に対し、環境及び人権の擁護者の保護を確保するための政策(大統領令)を直ちに発出することを求める。
  5. 政府は直ちに人々の命と生態系の持続可能性の保護を主要な前提条件とする開発プログラムを立案し、実施すべき。開発のために、人々の生命と生態系を危機に晒してはいけない。

また、私たちは一般の市民に対しても、ゴルフリッド・シレガールの死に関する法の執行プロセスが適切に実施されるよう、共に監視するよう求める。将来、人々の権利や環境のためにたたかう人々の命がこれ以上奪われないことを切に願う。

Joint Statement of Civil Society Coalition

Investigate Throroughly the Demise of Activist Golfrid Siregar

Present the State to Protect Human Rights Defenders

Jakarta—The Civil Society Coalition for Human Rights Defenders urges the state to conduct an immediate, open, effective and independent investigation related to the demise of environmental and human rights defenders, Golfrid Siregar, SH, who was also an activist from Wahana Lingkungan Hidup Indonesia in North Sumatra (WALHI Sumut). Golfrid was found early on Thursday October 3, 2019 in a very critical condition due to severe head injuries in his cranium. Golfrid was the brought to hospital, until he breathed his last on Sunday, October 6.

The Coalition regrets the Police’s attitude to hastily state the cause of late Golfrid’s demise was due to a traffic accident. The Coalition considers that there are a number of irregularities found from his death. For example, unclear location of the incident (TKP). Initially, the family obtained information from the security forces that the incident happened at Jamin Ginting flyover. Then, the TKP changed underpass Titik Kuning. We suspect that the late Golfid’s demise was not because of a traffic accident however caused by violence that resulted in death. Moreover, the case of Yohanes Balubun, an activist for Indigenous People in Maluku, whose death in 2016 was claimed by the police as a result of an accident. Meanwhile, in West Nusa Tenggara (NTB), an attempt to assassinate WALHI West Nusa Tenggara Executive Director Murdani earlier this year has also not been revealed.

As any other violence cases that lead in demise or attempted murder that happened in Indonesia and other countries, it cannot be separated from the activities of environmental and human rights defenders who fight for the rights of society and environment from threats of destructions by corporations, such as the loss of residential, livelihood, and environmental damage. Various reports from human rights organizations show that environmental and human rights defenders are very vulnerable to attacks/threats while working to expose human rights violations cases and serious environmental damage. 

In the spanning of his life, Golfrid dedicated his life for various environmental advocacy works and humanity, especially in North Sumatra. Various advocacy works carried out by Golfrid and friends in WALHI North Sumatra, amongst other are assisting impacted local community due to the activities of PT. Mitra Beton in Siantar, assisting local community in Lingga Muda from forest encroachment and illegal logging, assisting fishermen in Labu Beach for the lawsuit against sand mining company, and lastly serving as the lead of WALHI legal team of the lawsuit against  Governor of North Sumatra for issuing environmental permits with defendant of PT. NSHE, as well as reporting the police officers in North Sumatra Regional Police (POLDA Sumut) who stopped the investigation of forged signature case in AMDAL to Police Headquarters (Mabes POLRI) in Jakarta. 

The violence that lead to death experienced by environmental and Human Rights Defenders has long happened and been increasing, Indra Pelani, Salim Kancil, Yohanes Balubun, Poroduka, and now Golfrid Siregar, as well as the attempted murder of arson experienced by Murdani in West Nusa Tenggara. 

From the incident experienced by environmental and human rights defender, Golfrid Siregar, for the sake of Golfrid’s justice and his family, and for the sake of everyone’s justice, we urge:

  1. The State must conduct investigation immediately and impartial or ensure that an investigation is conducted in reasonable grounds to believe that violation of human rights and freedom has occurred in its jurisdiction. As stated in Article 9 (5) Declaration of Human Rights Defenders passed by the United Nation on December 9, 1998;
  2. Police officers to thoroughly investigate the demise of Golfrid Siregar, openly to the public to ensure the accountability of law enforcement process. Given the existence of conflict of conflict interest in North Sumatra Regional Office (POLDA Sumut), therefore we urge the handling of this case to be taken over by Police Headquarters (Mabes POLRI);
  3. The National Commission for Human Rights (Komnas HAM) to immediately form fact-finding independent team, because this case was experienced by environmental and human rights defender;
  4. Given its urgency, we also urge the state to immediately issue policies (Presidential Regulation) that ensure the protection for environmental and human rights defenders. Therefore, there won’t be any criminalization and violence act that lead to death;
  5. Government to immediately draft policies and carry the development programs that put protection towards people’s rights to life and ecological sustainability as the main prerequisites. Therefore, for the sake of development, it doesn’t put in line the people life threaten and ecological disaster.

We also invite public in general to jointly guard the law enforcement process towards the death of Golfrid Siregar. In hope in the future there won’t be any live taken for fighting the rights of the people and environment.  

For further information please reach: 

Jakarta, October 10 2019

Human Rights Defenders Coalition

Wahana Lingkungan Hidup Indonesia (WALHI) – KontraS – Amnesty International Indonesia – Human Rights Watch – Yayasan Perlindungan Insani, Greenpeace Indonesia –YLBHI – ELSAM – Kemitraan – Imparsial – KRuHA, LBH Pers – HuMa – JATAM – HRWG – Solidaritas Perempuan

  1. Zenzi Suhadi, Eksekutif Nasional WALHI

Email: zenzi.walhi@gmail.com

  • Papang Hidayat, Amnesty International Indonesia. 

Email: papang.hidayat@amnesty.id

  • Ainul Yaqin, Yayasan Perlindungan Insani

Email: ainulyaqin@protonmail.com

  • Asep Komarudin, Greenpeace Indonesia

Email: akomarud@greenpeace.org

  • Yati Andriyani, Komisi untuk Orang Hilang dan Korban Tindak Kekerasan (KontraS)

Email: yatiandriyani@kontras.org

ALPS汚染水「モルタル固化による陸上保管案」を新たに提案――原子力市民委員会

学識経験者、技術者、NGOなどから構成される「原子力市民委員会」は、10月3日、ALPS処理汚染水の陸上保管案として、新たにモルタル固化案を提案し、経産省、環境省、原子力規制委員会に提出しました。
http://www.ccnejapan.com/?p=10445

ようやくはじまった陸上保管案をめぐる議論

原子力市民委員会は、かねてより、ALPS処理汚染水を海中放出すべきではないという立場から、石油備蓄などで実績のある大型タンクを使った保管案を提案していました。

昨年8月、経済産業省ALPS小委員会が実施した公聴会では、漁業関係者も含めた多くの参加者から「陸上長期保管を行うべき」という意見が表明されました。これを受けて山本 一良委員長は、陸上保管案も一つのオプションとして検討することを約束。今年8月9日の第13回委員会で、ようやく陸上における長期保管の議論が遡上にのぼりました。

原子力市民委員会 2019年10月3日記者会見資料  川井康郎さん作成

しかし、東京電力は、大型タンク保管案について「1基あたり設置に3年かかる」「敷地利用効率は現在のタンクと大差ない」「浮屋根式は雨水混入の恐れがある」「破損したときの漏洩量が大きい」として否定しました。

10月3日の記者会見で、原子力市民委員会規制部会の川井康郎さんはこれに対して、「大型タンクの設置は1.5~2年」「敷地利用効率は向上する」「雨水混入がないドーム型を採用すればよい」「大型タンクは石油備蓄で実績があり堅牢。もちろん防液堤は必要」と反論しました。

モルタル固化案のメリット・デメリット

今回、原子力市民委員会が新たに提案したモルタル固化案は、汚染水をセメント、砂とともにモルタル固化し、コンクリートタンクの中に流し込んで半地下で保管するというものです。川井さんは、米国のサバンナリバー施設での実績を紹介。

原子力市民委員会 2019年10月3日記者会見資料  川井康郎さん作成

利点としては、放射性物質を環境中に放出しないで済むこと、既存技術の適用であること、欠点としては、容積効率が低いこと、発熱による水分の蒸発があげられるとのことです。

その場所が永久処分地になるということで、もちろん地元の合意が必要となります。

本当に敷地は足りないのか?

現在、マスコミは繰り返し、「2022年夏までに敷地が足りなくなる」と報道していますが、これは本当でしょうか? 9月27日、ALPS小委員会に東電が説明した資料をみると、使用済燃料や燃料デブリの一時保管施設として約81,000m2であるとしています。

第14回多核種除去設備等処理水の取り扱いに関する小委員会 資料3

また、2020年代前半に分析用施設や燃料デブリ取り出しのモックアップ施設、敷材保管、研究施設などに用地が必要だとしています。

第14回多核種除去設備等処理水の取り扱いに関する小委員会 資料3

しかし、燃料デブリの取り出しは果たして現実的かつ必要でしょうか?

高い放射能に阻まれて燃料デブリの場所、形状すらわからない燃料デブリ。無理して取り出せば作業員に大量の被ばくを強いることになるでしょう。

原子力市民委員会では、「技術リスク、巨額コスト、被ばく労働を避けるためにも『デブリは取り出さない』という選択肢を真剣に検討すべきである」として、「100 年以上隔離保管後の後始末」を提案しています。

また、研究施設などの建設は、敷地内である必要があるのでしょうか?

さらに、経産省のALPS小委員会では、委員から「現在、土捨て場として利用されている場所の使用を検討すべきではないか」「敷地を拡張すべきではないか」などの意見が出されています。いずれも、経産省事務局からは、「困難」と回答していますが、本当に不可能なのか、真剣に検討した形跡はありません。

経産省は、原子力市民委員会が提案している陸上保管案を、ALPS小委員会、もしくは新たに委員会を設置して、早急に検討すべきでしょう。

(満田夏花)

※共同通信、河北新報に取り上げられました。

▶河北新報「福島第1原発の処理水、モルタル固化を 有識者団体が提案

処理水は長期保管や固化処分を 市民団体、海洋放出反対の提言

※関連記事

▼汚染水長期保管の真摯な議論に水をさすきわめて無責任な環境相の発言

http://www.foejapan.org/energy/library/190911.html

▼汚染水の公聴会大もめ~海洋放出に反対意見次々

https://foejapan.wordpress.com/2018/09/03/0903/

▼ALPS処理水、トリチウム以外核種の残留~「説明・公聴会」の前提は崩れた

http://www.foejapan.org/energy/library/180829.html