温暖化の進行でさらなる“気候変動危機” ―IPCCからの警告

IPCC English2.jpg2018年10月1~6日、韓国・仁川でIPCC(気候変動に関する政府間パネル)総会が開かれ、8日、地球規模の1.5℃の気温上昇に関する特別報告書(SR15)と政策決定者むけのサマリー(SPM)が発表されました(*1)。

レポートは、世界の平均気温が工業化以前より1.5℃上昇した場合の影響を描き、2℃上昇した場合の影響と比較、また1.5℃までに抑えるためには、世界の全体の人為的なCO2排出量を、2030年までに約45%削減、2050年頃までには正味ゼロのする必要があることを示しました。

2015年に採択されたパリ協定では、気温上昇を2℃未満、できる限り1.5℃以下に抑えることを目指すとされましたが、今回の報告書では、2℃の気温上昇は1.5℃に比べて大きな影響・被害が予測されることが示され、気候変動対策がより差し迫ったものであることが警告されました。

一方、これまですでに産業革命期以降約1℃の平均気温上昇が見られ(日本では約1.2℃(*2))、それにより甚大な被害が出ています。気温が2℃上昇した場合にくらべ、1.5℃上昇程度に抑制することができた場合はそれでも、水不足に苦しむ人々の数や、気候変動の様々なリスクに直面する人々の数が半減することを示しています。例えば、極度の干ばつや森林火災などを含めた異常気象や食糧不足、熱波に起因する病気や死亡リスク、そして生物多様性や生態系の喪失といったリスクを抑制することができると考えられます。温暖化を1.5℃に止めた場合、2℃の気温上昇に比べ2050年までに世界で数億の人口が気候変動のリスクや貧困にさらされる影響を回避できるとしています。さらに、海面上昇による1,000万人規模の移住リスクも回避することができるかもしれないとしています。

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IPCCの特別報告書は、危険な気候変動の影響を1.5℃の気温上昇に食い止める可能性が十分あることを示していますが、そのためには各国がいますぐに行動することが必要です。パリ協定の下で約束されている温室効果ガス削減分を積み上げても、1.5℃目標にはほど遠いことはこれまでも明らかでした(現状の対策では、3℃以上の上昇が予測されています)。このことから、政策決定者向けサマリーの大きな焦点は、現在のパリ協定下での2030年までの各国の目標を大きく強化する必要性と、さらには今後20年ほどの間にかつてない規模でのシステムチェンジ(例として世界で今進んでいる自然エネルギーへの移行)、社会変革やライフスタイルの大きな変換を呼びかけています。

この報告書は12月の国連気候サミット(COP24)で議論され、2020年までに既存の各国2030年目標の引き上げを図る決定がなされる動きをつくることが想定されています。

しかし、留意すべきなのは、IPCCが提唱している気温上昇を1.5℃未満に抑えるための方策の中には、大きなリスクを孕んだ、検証の未だ十分でない技術も含まれているという点です。例えばBECCS(バイオマス炭素回収貯留)が挙げられます。BECCSは広大な土地で燃料とするための作物を育て、発生したに二酸化炭素は回収貯蔵するという技術です。最大でインド国土の倍の農地をバイオ燃料生産に振り向けることを予想するなど広大な土地を利用することから、土地収奪の可能性や、食糧生産への影響が懸念され、世界の最貧困層にとってさらなる問題を引き起こす可能性があります。火力発電所を石炭からバイオ燃料に置き換える動きはすでに国内外で始まっています。また、CCS(二酸化炭素回収貯留)を伴った化石燃料発電や、原子力発電も、シナリオの上では対策として含められています。

FoEグループはこのようなリスクを伴う技術に頼って、温度目標を達成することには反対しています。今回のIPCCの報告書では、こういったリスクを抱えた技術に頼らずとも、脱化石燃料の動きをさらに早め、省エネとライフスタイルの変革で全体のエネルギー需要を下げることで、気温上昇を1.5℃未満に抑えることが可能であるシナリオも示しています。またこれを世界で実現するためには、地球規模での化石燃料を中心とした社会からの移行や、それらを促進するための北側の先進国から南の途上国に向けた資金援助が必要不可欠です。

気候変動問題は、日本にとっても差し迫った問題です。近年の大型台風や集中豪雨、猛暑などの異常気象は、日本列島にも大きな爪痕を残しています。しかしながら、日本が現在示している気候変動目標は、十分なものではありません(2030年までに2013年比で温室効果ガス26%削減)。

国内では石炭火力発電所の建設計画が相次ぎ(*3)、石炭火力発電の輸出も推進(*4)しています。
FoE Japanは、今回のIPCCの警告を受け、消極的・後ろ向きな日本の気候変動・エネルギー政策の転換を改めて求めます。気候変動被害の拡大を少しでも抑えるために、一刻も早く化石燃料中心の社会からコミュニティや人権を尊重した再生可能エネルギー中心社会へと移行することが必要です。

(スタッフ:小野寺・深草・吉田、インターン:天野)

*1 IPCC:Special Report on Global Warming of 1.5 °C (SR15) ,  政策決定者向けサマリー, プレスリリースの和訳(環境省)
*2 気象庁「日本の年平均気温」
*3 日本の石炭火力問題
*4  No Coal, Go Green! JBICの石炭発電融資にNO!

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インドネシア・スラウェシ地震 緊急支援にご協力ください

インドネシア・スラウェシ島の中スラウェシ州で28日に発生した地震と津波で大きな被害が出ています。WALHI/FoEインドネシアの地域オフィスもあり、スタッフは皆無事だったそうですが、ほとんどが避難を強いられているとのこと。

地震・津波の発生後、インドネシアの市民団体は緊急支援を行う対策本部(ナショナルポスト)を立ち上げており、WALHI/FoEインドネシアはその事務局を担っています。

WALHIをはじめとするNGOらは、救助活動、ボランティアの動員、情報収集、情報発信などを行っていますが、被害は甚大で、大きな支援を必要としています。

是非、支援にご協力ください。

●インドネシアに直接送金する
注:インドネシアの団体へ寄付するため、寄付控除の対象にはなりませんので、ご了承下さい。
Account holder: WALHI
Bank Name: CIMB Niaga
Bank Address: Jalan Buncit Raya No. 100 Jakarta Indonesia
Account number: 800127563330
Swift code: BNIAIDJA

Account holder: Yayasan WALHI
Bank Name: Bank Central Asia
Bank Address: Jalan Bendungan Hilir Raya No. 44/I Jakarta
Account Number: 3019991980
Swift Code: CENAIDJA

●FoEJapanを経由して寄付をする
注:インドネシアの団体へ寄付するため、寄付控除の対象にはなりませんので、ご了承下さい。

*郵便振替
郵便振替口:00130-2-68026 口座名:FoE Japan
郵便局備付の払込取扱票をお使いください。
通信欄に、「インドネシア震災寄付」とご明記の上、住所、氏名をお忘れなくご記入ください。

*銀行振込
振込先:城南信用金庫 高円寺支店 普通358434  エフ・オー・イー・ジャパン
送金後、確認のために、FoEまでお知らせください。
info@foejapan.org / 03-6909-5983

フィリピンの先住民族・人権活動家のジョアン・カーリングさん、国連環境計画の「地球大賞」受賞

国連環境計画(UNEP)の「地球大賞」(Champions of the Earth)を私たちの古くからの友人で、フィリピンの先住民族・人権活動家であるジョアン・カーリングさんが受賞したとの嬉しい報せが届きました!>UNEPのリリースはこちら

ジョアン
彼女はフィリピン、また、アジア地域の先住民族団体で20年以上活動。ごく最近では国連にエクスパートとして任命され、先住民族やSDG関連の会議等に参加してきましたが、今年2月にフィリピン政府が出したテロリスト600名以上のリストにも名前が掲載され、弾圧の対象となっています。

FoE Japanとジョアンさんの付き合いは、彼女がフィリピ北部のコルディリェラ人民連合(CPA)代表として、サンロケダムの問題に取り組んでいた頃からで、2002年の世界ダム委員会のシンポジウムや2003年の世界水フォーラム(京都)のときに来日してもらいました。

彼女はビデオでも見られるとおり、知的でスマートですが、穏やかで優しく、コミュニティーの信頼も非常に厚い活動家です。冗談も大好きで、小さな身体からこれでもかという程、大きな笑い声を立てるので、周りにいる人たちをよくびっくりさせています。そんなところも、皆から愛される理由だと思います。

私(波多江)個人としては、サンロケダムの問題に取り組み始めた2001年に初めてフィリピンで会い、2004年に活動拠点を東京からフィリピンに移した際の最初のハウスメイトでもあります。フィリピン北部で使われているイロカノ語の私の先生の一人とも言えます。今では、サンロケダムに反対して2006年に暗殺された農民リーダー・アポの奥さんと一緒に、クリスマス時期にバギオの彼女の自宅を訪ねるのが年行事になっています。

ジョアン・カーリングさんの受賞を心から祝福するとともに、身体、そして身の安全に気を付けながら、世界の先住民族や社会的弱者のために益々活躍していってもらいたいと思います。

(波多江秀枝)

貧困と森林のつながりへの気づき

ニュースレターやブログなどを通じFoEの活動は見えてきても、スタッフの姿は見えないことが多いと思います。どんな人がFoE Japanで働いているのでしょうか?なぜFOEに?
インターンスタッフに3名の職員にインタビューをしてもらいました。

第二弾は「森林保全と生物多様性チーム」の三柴淳一です。

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FoE Japan では何をされていますか?
木材消費国側から森林を守るための活動「フェアウッドキャンペーン」に2004年から携わっています。

なぜ「森」だったのでしょうか?
元々電気系の仕事をしていましたが、青年海外協力隊でガーナに行ったことが転機になりました。当時のガーナでは計画停電が行われ、ガーナの工業高校では電気を必要とする電気電子工学の実験が出来ないという状況でした。このようなアフリカの生活を見たことで、開発や貧困の方へ関心を寄せるようになりました。その後、大学院へ進み、貧困問題について学んでいく中で、世界的な貧困層の多くは森のそばに住んでいるということを知り、「森」に関わっていくことにしました。

FoE Japan に入るきっかけは?活動のモチベーションは何ですか?
入ったきっかけは、たまたま2004年にスタッフ募集があったからです。ですが、その後、2006年にボルネオ島の熱帯林に調査に行ったことで、エンジンがかかりました。物事は必ずしも予定調和的には動かないので、その動かないものを障害を取り除いて動くようにする・解決することに興味を持っています。

最後に、FoE Japan は一言で言うとどのような場所ですか?
「どのような場所というか、自分にとってどのような場所にするかという部分もあると思います。」–– FoE Japan は、一言では収まらない組織。やりたいとかやるとか決めている人の集合体だと思います。

(聞き手:インターン 杉浦佳蕗)

「銃とブルドーザー」に抗う人びととともに−波多江秀枝インタビュー

ニュースレターやブログなどを通じFoEの活動は見えてきても、スタッフの姿は見えないことが多いと思います。どんな人がFoE Japanで働いているのでしょうか?なぜFOEに?
インターンスタッフに3名の職員をインタビューをしてもらいました。

第一弾は「開発と環境チーム」の波多江秀枝です。IMG_20160401_100252

FoE Japan では何をされていますか?

日本の政府機関や企業が携わっている海外での大規模開発事業に関する問題を提起しつつ、その影響を受けている地元の住民の人やNGOと共に問題に取り組んでいます。ここ最近は、インドネシア等における石炭火力発電所開発問題に注力して活動しています。

FoE Japan に入ったきっかけはなんですか?
元々開発や環境問題には関心があり、大学では環境に関するゼミに入っていました。授業や文献等を通して、開発事業の光の部分だけではなく陰の部分についても知る機会があったのですが、その「陰」の部分が自分の中で引っ掛かっていました。大学3年生になり就職活動の時期が迫ってきた際に、開発事業によって被害を受けている人がいるかもしれないのに、その加害者側に加担する立場にはなりたくないと感じ、問題解決を図っている団体を探していく中で FoE Japan にたどり着きました。大学3年生の終わり頃からボランティアで関わり、インターンを経て、スタッフになりました。

入ってから今日まで続ける上でのモチベーションは何ですか?
現地の人の笑顔や逞しく生きている姿だと思います。例えば、農民の人たちが農作業をしているのを見ていても、それが好きで大切なんだなというのが伝わってくる。だからこそ、そういう彼らの生活が、理不尽なものによって破壊されるのを何とかしたいと感じます。しかし、私の心の奥底にあるのは、2002年にダムの問題に取り組んでいた時に、20歳の青年がゲリラに入った後、フィリピン軍との交戦で殺されてしまったという出来事です。彼がゲリラに入った理由は、ダム建設に伴う立ち退きの現場で、事業者と共に来た軍に親戚・友人が銃を突きつけられ、立ち向かいたいのに銃の前には何も出来なかった悔しさでした。この出来事があったからこそ、私は今でも活動し続けています。

もどかしさや困難に直面した時に、どのように折り合いをつけていらっしゃいますか?
「やるんだったら、とことんやりたい。」 ––日本の開発側の人たちとの認識の差が埋まらない等、もどかしいと思うこともあります。しかし、私は自分が実際に被害を受けているわけではないので手を引こうと思えば引けるけれど、住民の人たちは逃げることが出来ません。彼等は弾圧されるリスクがあり、暗殺されてしまう場合もあります。そういう立場に置かれた住民のことを考えた時に、「こんなところで挫けられるか!」と思います。

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フィリピンのダム反対運動の最中に暗殺された農民リーダーの奥さん(写 真左)とともに。ここの家は波多江にとって、フィリピンの実家のようなところ。

FoEでボランティアやインターンをしたい方へのメッセージ
FoE Japan は、自分がやりたいことが十二分に出来る場所だと思います。是非一緒に活動しましょう!

最後に、FoE Japan は一言で言うとどのような場所ですか?
「現場力」–– 程度は異なるけれど現場に行って、現場を見て、現場のニーズや声に基づいて提言活動をやるのが FoE Japan。それが強みだと思いますし、それがなければFoE Japan ではない気がします。

(聞き手:インターン 杉浦佳蕗)

石炭推進の「クリーン・コール・デー」国際会議に、石炭NOのアクションをしました

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石炭推進の人たちによる「クリーン・コール・デー」国際シンポジウム(一般社団法人日本鉄鋼連盟、一般社団法人セメント協会、 日本製紙連合会、電源開発株式会社、一般財団法人石炭エネルギーセンターなど)が都内のホテルで開催されました。

これに対して9/10朝、会場前でアピールを行いました。「石炭火力問題を考える東京湾の会」のメンバーをはじめ、仙台や神戸の考える会からも参加がありました。国際シンポジウム参加者および一般市民向けに、LNG火力の2倍のCO2を出す石炭火力の問題点をアピールしました。チラシは受け取らなくても「千葉に青空を」などの横断幕はとても分かり易く効果的でした。FoE Japanからは3名(+赤ちゃん1名)が参加しました。(文責 鈴木国夫)

「石炭火力問題を考える東京湾の会」
http://nocoal-tokyobay.net/2018/09/10/no_more_coal_action/

パリ協定実施指針採択に向けて 〜主要論点〜

パリ協定実施の核である「国別貢献(各国が独自に定める気候変動対策に関する目標/NDC)」の定義に関しては、貢献は緩和だけでなく適応や途上国支援、発生した被害への対策などを含め包括的であるべきとする途上国と、緩和のみで適応や途上国支援は一切外したい米国主導の先進国グループとの間で交渉開始当初から大きく隔たったままの状況です。

・透明性枠組み
各国の進捗報告のシステム(「透明性枠組み」)の構築においては、途上国側は、先進国からの資金・技術移転なしには実施できない部分が多いため、報告すべき内容に先進国による案件レベルの支援に関する情報を含めるよう求めています。一方、米国主導の先進国側は、支援を受ける国が、受けた支援の報告も含め、先進国と同様の報告を求める主張が併記された形になっています。また先進国は発生している気候変動による被害の情報は含まれないと主張し、含まれるべきと主張する途上国と対立しています。

・グローバルストックテーク
パリ協定の下で2023年から5年ごとに行われる進捗状況の全体評価(グローバルストックテイク)の手続きの議論では、1.5/2℃目標に対する進捗評価だけでなく、適応の進捗や資金技術支援、発生被害の評価もすべきとする途上国に対し、先進国の間では、緩和以外に支援評価などを含めることに対して強い抵抗があります。また米国などの先進国はここでも発生する被害の評価を含めることに強く反対しています。

・途上国支援
現在、各国が発表しているNDCを積み上げると、将来の気温上昇は3℃以上になると予想されていますが、この数字はあくまでも途上国が十分自国の貢献を果たせたという仮定に基づいており、追加的な資金・技術の移転が先進国からなされなければ、気温は更に上昇します。そのため、途上国は、先進国による途上国支援の報告や、パリ協定下での次の途上国支援目標額の設置、適応資金の継続など、途上国への支援についての内容が先進国のNDCに含まれ、また透明性枠組みの下での報告や全体評価にきちんと含まれることを求めているわけですが、米国や一部の先進国は強硬な反対を続けています。

更には、COP16(2010年、メキシコ・カンクン)の決定で設置された途上国支援の要である緑気候基金(Green Climate Fund, GCF)は、初期資金の3/4がすでに拠出されており、このままだと来年で資金が底をつく状況です。先進国、特に米国は拠出を約束した額の一部しか拠出しておらず、7月の緑気候基金の理事会で先進国理事が追加拠出の手続き開始に合意しなかったことが途上国の危機感を煽っています。

・市場メカニズム
日本や欧州先進国及び一部途上国はパリ協定に盛り込まれた国際市場メカニズムのCOP24での国際ルール合意に強い意欲を見せています。化石燃料や農業に関わる国際資本は、途上国でのバイオマスやバイオ燃料を使った削減事業のクレジットでビジネスを継続できることから、交渉に深く関わっており、今回の会合でCOP決定文書案に整理されため市場メカニズムに関する交渉文書が作られる可能性があります。国際市場メカニズムが設けられることはパリ協定ですでに合意されているとはいえ、京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)と桁違いの大量のオフセットが取引されることになり、大口排出国の国内対策が更に遅れることになるため、これに懸念を持つ国々はオフセットではなく純削減とする原則や、取引できる量を制限する「補完性」と呼ばれる国際ルールを求めています。

・利益相反
これは大資本の利権がパリ協定の実施方針を弱める一例でもあります。先進国の大資本は、エネルギー政策に決定的影響を与えています。国連気候変動交渉において、多くの化石燃料企業が関与しており、気候正義を求めるFoEや国際的な市民のムーブメントは、気候変動による破滅的状況を避けるためにはエネルギーシステムの抜本的改革が必要であると訴えています。中でも今日の気候危機を生み出している、強い政治力を持つ企業資本が大きな影響力を持つ現在の状況から、市民が決定権を取り戻すことを呼びかけています(例えば、気候変動交渉には利益相反指針がなく、化石燃料企業も多く交渉に関与しているため、気候正義を求める市民グループは、利益相反指針(COI)を設けるよう提言している)。

(文:小野寺ゆうり、編:深草亜悠美)

パリ協定実施指針採択に向けて—クライメートジャスティス(Climate Justice)への道のり

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今日9月4日から9日までタイ・バンコクにて、12月に開かれる気候変動枠組条約締約国会合(COP24/ポーランド開催)で採択される予定のパリ協定の実施指針(ルールブックまたはPAWP)を交渉するための追加会合が開催されています。COP24前最後となる公式の政府間交渉で、交渉のたたき台となる決定文書案を準備することが望まれています。パリ協定は世界の気候変動対策の枠組みであり、その効果的な実施が世界の将来を左右するため、COP24での実施指針採択はパリ協定が採択されたCOP21パリ会議以来、最も重要な会議と見られています。

これまでにすでに世界平均で1℃前後の気温上昇が記録され、日本だけではなく、世界各地で記録的な猛暑を記録し、集中豪雨などが発生しています。記録的な飢饉、水不足、農業生産の減少・食糧危機、洪水や海面上昇による避難民(気候難民)がアフリカ、南アジアや中南米の各地で増加しています。それにより多数の犠牲者が出ています。
特に、近年被害が急速に拡大している途上国の市民はCOP24を強い関心を持って見守っています。インフラが脆弱で、十分な資金のない途上国にとって、追加的な資金支援や技術支援、公平性を反映した実施指針の策定が重要です。COP24の開催国であるポーランドが、COP24に参加予定の市民団体を弾圧する立法を行ったこともあり、このバンコクでの会合の機会を最大限に活かそうと、アジアの市民社会を中心に、会議場周辺で連日さまざまな抗議行動や集会が開催される予定です。

これまでに各国が提出した2025/2030年までの協定の下での気候変動に関する行動計画(NDC)を積み上げた結果では、3℃以上の気温上昇が予想されます。21世紀末までの気温上昇を1.5℃までに留めるよう努力するというパリ協定の目標とは程遠いのが現実です。 10月には1.5℃の気温目標に関し世界の科学者の知見を集めた特別報告(IPCC特別報告書)が出されますが、その中でももう時間の猶予がほとんどなく、被害規模の予測とともに、今すぐの脱化石燃料の必要性が明らかにされるとみられます。最近発表された研究では、平均気温が1.5〜2℃以上上昇すると、森林火災、アマゾン森林の枯渇、局地に存在する大量のメタンガスの放出などが引き金となって、もはや人間では止めようのない温暖化が発生する可能性があると報告されています。

バンコクに集う市民やFoEのメンバーは、政府による行動の不十分さ、とくに歴史的な温室効果ガス排出の半分を占め、化石燃料で発展を遂げた先進国の責任を追及しています。パリ協定の実施指針だけでなく協定の内容を超えた速やかな脱石炭、脱化石燃料と自然エネルギーへの移行、大規模被害への支援や気候避難民の保護、更にこれらを達成するために必要となる社会経済システムの変革を問い、先進国がその責任を果たすことを求めています。

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(C) Chidambaram SP

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(C) APMDD

実際の交渉では、先進国(特に米国をリーダーとする日本を含む環太平洋の先進国)は協定下で途上国や新興国との差異化を認めず、様々な局面において同等の扱いを要求しています。また、化石燃料や産業型農業などの多国籍資本が主要な交渉内容に大きな影響力を持ち、協定の実施指針を弱めようとする状況が続いています。

世界の市民はパリ以来、今また改めてCOP24に向けて大きな声を上げようとしており、その国際的な組織化がこのバンコクで弾みをつけることになります。

(小野寺ゆうり)

FoE Japanもダイベストメント!

FoE Japanは2018年7月、城南信用金庫に口座を開設し、いままで大手銀行に置いていた団体資金の一部を移動しました。

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化石燃料からの「ダイベストメント(投資撤退)」という動きが、今急速に世界に広がっています。石炭・石油・ガスを含む化石燃料に依存する企業やリスクの高い原発関連企業へのお金の流れを止めて、持続可能な社会の実現に取り組む企業へと移行させようというムーブメントです。
*「レッツ、ダイベスト!~未来のために銀行を選ぼう~」 https://letsdivest.jp/

すでに世界中で約900もの機関(政府、年金基金、都市、大学など)がダイベストメントを宣言し、その総額は6兆米ドル以上となっています。
*「Go Fossil Free」ウェブサイト https://gofossilfree.org/divestment/commitments/

FoE Japanでも、化石燃料や原発依存からの脱却、また人権・環境など社会的影響の観点から、ダイベストメントは重要なアクションと考えこのキャンペーンに賛同しています。そして今回、部分的にではありますが、団体としても「実行」に移すことができました。具体的には、2018年に7月に特定化石燃料や原発関連企業との取引が確認されていない城南信用金庫に口座を開設し、これまで大手銀行に置いていた資金の一部を移動しました。
さらに、スタッフやサポーターなど関わってくださるみなさんにも、取り組みを呼びかけていきます。

城南信用金庫は、2011年以降脱原発・自然エネルギーへのシフトを明確にし、様々な発信や呼びかけを行っています。また、FoE Japanも参加する「甲状腺がん子ども基金」の事務局を務めるなど、福島第一原発事故被害者への支援も行っています。このように、目指す方向性を共有し、私たちスタッフも様々な場面でご一緒する機会のある「顔の見える金融機関」として城南信用金庫を選びました。

気候変動は、日本でも、記録的な猛暑や豪雨災害など大きな爪痕を残しています。石炭などの化石燃料を燃やし続けることは、大気汚染や気候変動の加速につながります。また、福島第一原発事故も収束せず、放射性廃棄物の処理問題も解決しない中、これ以上原発に投資し続けるのはやめ、すぐさま脱原発すべきです。しかし、日本のエネルギー政策・気候変動政策は民意に反して原発回帰・石炭火力推進です。そして日本の大手銀行(三大メガバンクなど)に置いている私たちの預金も、間接的に化石燃料や原発に関わる事業への融資などに使われています。この現実を変えていくために、小さくても意思表示していくことは重要です。

個人でのダイベストメントもできます。FoE Japanにつながるみなさまにもぜひ、ご検討いただけたら嬉しいです。持続可能で公平な社会、民主的なエネルギー社会実現のために、小さなアクションを積み重ねていきましょう。
*銀行選びの参考に「レッツ、ダイベスト!」ウェブサイト http://www.letsdivest.jp

FoE Japanの想いをこめたこの新しい口座に、みなさんからのご支援も引き続きお願いします!
「城南信用金庫 高円寺支店 普通358434  エフ・オー・イー・ジャパン」
※ご送金の際は、確認のために事務局までご連絡いただければ幸いです。

FoE Japanは、電気料金のダイベスト=電力切り替えも行い、2016年7月より、みんな電力から電気を購入しています。こちらも、個人でもできるアクションです。
*電気料金のダイベスト=パワーシフト http://power-shift.org/

(FoE Japanスタッフ一同)

 

 

要支援者などの屋内退避用施設の3割が土砂災害警戒区域などに~「原発ゼロの会」調査を要請

共同通信が、原発から主に10キロ圏に整備されている17都道府県の257の放射線防護施設のうち、3割近くの69施設が土砂災害警戒区域や浸水想定区域など危険な場所にあることを報じました。各紙に掲載されました。

(東京新聞)原発避難先3割 危険区域 69施設 土砂災害・浸水の恐れ
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201807/CK2018072102000274.html

放射線防護施設…原発事故時に避難が難しい高齢者や障害者らが、被ばくのリスクを下げるため一時的に屋内退避する施設。原発から主に10キロ圏にある学校や病院、特別養護老人ホームなどに放射性物質の流入を防ぐフィルター付きの換気設備などを設置する。内閣府の補助金交付は、耐震性があり、津波などの浸水被害を受ける可能性が低いことなどが条件。2016年12月、原則として生命に危険が及ぶ恐れがない地域に立地することが条件に加わった。

この記事の発端は、この記事にもでてくる、超党派の国会議員で構成される「原発ゼロの会」が、今回の豪雨被害を受け、内閣府を呼んで放射線防護施設の安全性についての説明を求めたところ、以下のような一覧表を内閣府が提出したとのことです。同会事務局長の阿部知子衆議院議員の事務所のご了承を得て、シェアさせていただきます。

>放射線防護施設の危険区域の状況(PDFファイル)

原発ゼロの会として、内閣府に以下を要請したそうです。

1.今回の7月豪雨において、放射線防護施設が立地する危険区域で土砂災害や浸水被害を受けたり孤立したりしたケースはないか、また、放射線モニタリングポストの流出や、放射線防護施設へ通ずる避難路や物流経路が被災したケースがないかを詳細に調査し、国民に公開することを求める。

2.豪雨、津波、地震などと複合的に原発事故が起きた場合、土砂災害や浸水からの避難と屋内退避は全く矛盾している。その矛盾した行動を避難弱者やその介助者等に求めるべきではない。従って、放射線防護施設の基準が満たされない限りは、政府として原発の再稼働を認めない制度を確立することを早急に求める。

3.放射線防護施設が危険区域(例えば伊方町では10施設中9施設が危険区域)にある場合、原子力事業者の責任と費用で放射線防護施設が危険区域外に移転が行われるよう義務を付し、移転の協力が放射線防護施設や在所者から得られない場合は、原子力防災の観点から原発再稼働を認めない制度を確立することを求める。

放射線防護施設は、移動が難しい要支援者などが避難させることができないことを前提に屋内退避を行うというものです。しかし、原発災害のときに、屋内退避をしても、救援は何日後になるかわからず、また、介護する人もとどまらざるをえません。そういうことを考えれば、そもそもつじつまあわせの非人道的な想定なのではないかと思います。さらに、土砂災害や浸水被害を受けるような場所に設定すべきではなく、そういう意味で、今回の「ゼロの会」の要請は、とても重要です。

自然災害が激甚化している中、原子力防災も複合災害を前提に考えなければならないのですが、現状はそうはなっていません。というか、複合災害を前提にした実効性ある原子力防災や避難計画は、不可能なのでしょう。であるならば、やはり原発は動かすべきではないという結論になるのではないでしょうか。(満田夏花)

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内閣府のページより【放射線防護対策工事の概要】

放射性物質除去フィルターの設置、窓枠部分の強化等の対策を講じます。