一週目終了 – COP27は「アフリカCOP」なのか

11月6日に開幕したCOP27の一週目が終わりました。

通常一週目に技術的な交渉を中心に行い、二週目には閣僚級の政府関係者が参加し政治的な合意を話し合う段階に入ります。

12日に開催したFoEインターナショナルの記者会見の内容と共に、この1週間のハイライトを紹介します。

(12日のマーチ 写真:https://twitter.com/Artivistnet/status/1591398886287212545?s=20&t=_zR_dnsMIjr64kKaYeWT7Q )

人権なくして気候正義なし

一週目の最後、11/12は「COP27連合」(COP27のために結成された市民社会等のネットワーク)により世界的な行動の日(Global day of action)が呼びかけられており、日本を含め、世界各地で気候変動対策を求めるアクションが行われました。

2013年以降、エジプトの市民社会は深刻な抑圧を受けています。政府は活動家や女性、性的マイノリティ、ジャーナリストを対象に、不当逮捕や弾圧を続けています。

英国系エジプト人の活動家で、良心の囚人であるアラー・アブデル・ファターは、4月2日からハンガーストライキを行っていますが、11月1日からは1日に取っていた100キロカロリーの食事をやめ、COP開始日の6日からは水を飲むことも止めています。COPに先立ち、エジプト含む世界の市民団体などが、アラーの解放を求め、自由に市民活動ができるスペースなしに、気候変動対策はなしえないと声をあげています。

11月15日〜16日のG20開催が近づくインドネシア・バリ島でも市民活動の制限が厳しくなっています。過去10年間に、世界で少なくとも1733名の環境人権擁護者が殺害されました。カナダで、伝統的に守り継いできた水源や森を開発や収奪から守るために立ち上がっている先住民族やその支援者が犯罪者扱いされ、弾圧されています。ベトナムでも、環境問題に取り組んでいた方が逮捕された状況が続いています。

FoEグループは、権利侵害や環境のために立ち上がり、不当逮捕・迫害されている全ての人々に対し、これまでも連帯を示し、声をあげてきました。

グローバル・アクションデーの今日、エジプト国内では自由にデモ活動ができないため、12日には国連の会議場内(国連の会議場は国連の管轄になる)で短いマーチが行われました。本来であれば、路上にでて自由に市民が声をあげられるべきです。

12日に現地で開かれたFoEインターナショナルの記者会見においても、FoEインターナショナルのプログラムコーディネーターであるDipti Bhatnagarは「気候正義には連帯が重要です。私たちは今日ここにいない人のためにもCOPにきて活動しています。エジプト政府による人権侵害を受け入れることはできません。」と発言し、気候正義にとって人権や民主的スペースが不可欠であることを訴えました。

気候変動による損失と被害

COP開幕当初から注目されている損失と被害(ロスダメ)。途上国はロスダメに対する資金支援を長年求めてきましたが、今回のCOPで初めて正式な議題に上がりました。

Bareesh Hasan Chowdhury(FoEバングラデシュ)は12日の会見で「長年議論されてこなかったロスダメ資金に対する期待がある一方、交渉において、先進国は、今でも方向性を捻じ曲げたり議論を遅らせたりしようとしています。ロスダメは将来の問題ではなく、今すでに私たちが経験していることです。ロスダメ資金の合意なしに、シャルム・エル・シェイクを去ることはできません」とコメント。

交渉の中で、途上国グループ全てが、2024年より前に資金ファシリティが運用されることが重要であると主張していますが、アメリカは損失と被害に対しての先進国の責任や賠償を認めておらず、またしても交渉をブロックすることが懸念されます。

炭素市場

パリ協定6条、いわゆる炭素市場や二国間支援に関する交渉も、注目されます。

COP開始前日、6条4項の監督委員会が「除去」に関する勧告(Recommendation)をまとめました。この勧告は幅広い種類の除去手段をオフセットとして取引することを認めるもので、まだ技術的に確立していなかったり(CCS/CCUSなど)、土地収奪や環境への悪影響が予測される土地部門の除去やジオエンジニアリングをも認める内容でした。これに関して、市民社会だけでなく先進国途上国双方の政府からも懸念の声があがっています。

FoEグループはこれまでもオフセットは排出対策に繋がらないとして反対の立場をとってきました。また、「自然に基づく解決策」についても、大規模な土地収奪に繋がりかねないことや、排出削減に繋がらないことなどを訴えてきました(詳しくは:https://foejapan.org/issue/20220613/8344/ )

なお、ジオエンジニアリング(一般的に、気候変動問題の解決のために地球規模の影響をもたらしうる技術を利用することを気候工学、ジオエンジニアリングと呼ぶ)については、環境や社会への影響が未知数なことなどから、2010年に生物多様性条約で全ての気候変動関連ジオエンジニアリング技術に対し、モラトリウム(一時停止)が設けられています。

監督委員会が勧告を採択した段階ですが、第二週目でCOPが委員会に差し戻し、見直しを求める可能性は十分あります。

COPは化石燃料まみれ?

6条の交渉からもわかるように、国際炭素取引市場でのオフセットや自然に基づく解決策など、いわゆる私たちが誤った気候変動対策と呼んでいる策を強力に推し進めようとする(特に先進国の)政府や企業が数多く参加しています。

COP開始時点から強く懸念されていたのはガスを推進する勢力です。COP開始前から、ロシアのウクライナ侵攻を背景に、アフリカでのガス開発への関心が高まり、またアフリカのガス利権関係者は、アフリカのガス開発を開発の権利として主張し、脱化石燃料とは逆方向の主張を繰り広げていました。

12日の記者会見でも、FoEナイジェリアのRita Uwakaは「化石燃料事業の継続はコミュニティへの宣戦布告です。ニジェールデルタ(注:ナイジェリア最大の産油地帯で、環境汚染や人権侵害が非常に深刻な地域)で起きていることからもわかるように、石油採掘が水や土を汚染し、漁業者や農民に影響を与えています。自然は私たちの命です。」とコメント。また、気候危機や企業による環境破壊や土地収奪によって女性が被害を受けており、一方で、土や水を守ってきたのも女性であると強く訴えました。

世界中の市民社会団体や活動家、先住民族が立ち上がり、気候危機やそれを生み出した構造を変えようと取り組む中で、先に述べた通り、市民社会のスペースが世界中で縮小しています。

一方、今回のCOPには石油ガス産業の関係者が少なくとも636人が参加していることがわかっています。これは去年の数字から25%も増加しています。化石燃料産業がパビリオンでイベントを行い、化石燃料由来の水素の喧伝も行っています。

FoEUSのKaren Orensteinは会見で「米国政府はさまざまなイニシアチブを発表し、一見良く見えますが、一方でガス開発を拡大し、欧州への輸出を増やそうとしています。米国の気候変動に対する歴史的責任を考えると、排出対策も途上国支援も大幅に拡大しないといけません」とコメント。

また、米国の姿勢について、資金支援の文脈で、FoEマレーシアのMeena Ramanは「現在の資金支援のあり方では、気候危機に緊急に対応することはできません。資金に関する議論の文章はまだほとんどが「括弧付き」(交渉で未合意)です。米国は新たな資金支援なしにCOPに参加しました。また、米国が動かないのを言い訳に米国以外の先進国、EUや日本が動かないだろうことも問題です。気候変動対策が遅れている国々(Laggards)を待っていることはできません。これらの先進国に今すぐ行動を強化するよう叫び続けないといけません」と記者会見で述べました。

アフリカCOP?

12日に会場内で行われたマーチでは、ナイジェリア出身のNnimmo Baseyが「これはアフリカのCOPではありません。人々のためのCOPが必要です。汚染者をCOPから追い出すべきなのです。アフリカは歴史的に、そしてまた今まさに、豊かな国や企業により搾取されてきてました。奪われ、搾取され、破壊されている、まさに帝国主義です。」と力強いスピーチを行いました。

先進国によるアフリカでのガス開発もCOP中の大きな話題の一つとなっています。

12日、アフリカでのガス開発を止めるよう求めるアフリカの市民社会団体の連合「Dont’ Gas Africa」が新たなレポートを発表しました。レポートでは、このまま開発が進めば、投資回収ができず「座礁資産」となる可能性があり、また海外の企業に事業の権利を与えることはアフリカのエネルギーシステムが海外資本によって所有されることを意味し、その利益はアフリカの人々ではなく権益を持つ先進国に渡ること、開発による環境影響は地元の人々が被ること、などと指摘しています。

図:アフリカ大陸で建設中・計画中・操業中の石油・ガス関連インフラ(出典:https://dont-gas-africa.org/cop27-report/#press-release)

交渉がどう進展するのか、また交渉と並行して市民社会がどのようなことを訴えているのか、来週もお伝えしたいと思います。

(深草亜悠美)