日本の官民が関わるカナダのガス開発事業で深刻な人権侵害と環境破壊

日本の民間銀行(三井住友銀行、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友信託銀行)が融資するパイプライン事業で、深刻な人権侵害が起きています。カナダのブリテッシュ・コロンビア州で建設が進むコースタル・ガスリンク・パイプラインは先住民族の土地を通りますが、先住民族Wet’suwet’enは、建設に同意していません。さらに、警察が非暴力の反対運動を続ける先住民族を相次いで逮捕する事態も発生しています。気候変動の観点からも問題です。

Photo: Michael Toledano

事業の問題

先住民族が事業に合意していない。

先住民族Wet’suwet’enは、彼らが伝統的に利用してきた土地や水源を守るため、事業に対し反対の声を上げ続けています。先住民族の権利はカナダの最高裁判所でも認められており、Wet’suwet’enの伝統的酋長らがその土地に対し権利を持つと認められています(Delgamuukwケース)。しかし、パイプラインを建設するコースタル・ガスリンク・パイプライン社(CGL社)は先住民族の「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(free, prior and informed consent)」(FPIC)を取得せず、パイプライン建設を続けています。

融資に参加している日本の民間銀行は、それぞれ「エクエーター原則」の採択銀⾏であり、エクエーター原則採択銀行には、「先住⺠族が伝統的に領有、または、慣習的に使⽤している⼟地と⾃然資源に対する影響があるプロジェクト」について、FPICの取得を要件としている国際⾦融公社(IFC)パフォーマンススタンダードの規定を踏まえた融資判断をすることが求められています。

FPICに関しては、国連人種差別撤廃委員会(Committee on the Elimination of Racial Discrimination)が、2019年12月13日付けで、Wet’suwet’enのFPICが得られるまで、コースタル・ガスリンク・パイプライン事業の建設を即時停止すること、(カナダ王立騎馬警察(RCMP)やその他警察がWet’suwet’enの伝統的土地から退去すること、また殺傷能力のある武器の使用を禁止し、Wet’suwet’enに対するいかなる武力も行使しないことを保証することをカナダ連邦政府に求める決議を発表しています。にもかかわらず、11月にも30名近くの抗議者や先住民族がRCMPによって逮捕されています。また記者も逮捕されました。

気候変動を加速させ、環境を破壊する

この事業は人権を脅かすだけではなく、気候変動を加速させ、現地の環境を破壊します。国際エネルギー機関(IEA)は、パリ協定の1.5℃目標を達成するならば、新規の石油・ガス開発事業への投資はやめるべきとしています。ガスも化石燃料です。燃やせば温室効果ガスを排出します。ガスの採掘や運搬の際などに温室効果ガスであるメタンが漏れだすことも問題です。

ガスは石炭火力に比べれば温室効果ガスを排出しないので、再生可能エネルギーが普及するまでの「つなぎのエネルギー」とよく言われます。しかし、新たなガス田の開発や採掘、ガス関連施設を建設することは、新たな温室効果ガスの排出を長期にわたり固定(「ロックイン」)することに繋がり、パリ協定の目標とも合致しません。

パイプラインを通じて運搬されたガスは、液化施設(LNGカナダ)で処理され、アジア市場に輸出されます。この液化ターミナル施設は、2024年度中から40年稼働が計画されており、計画通り進めば2050年を超えて運転することになります。

さらに、現地の環境当局は、パイプラインを建設する事業者が廃棄物処理や生態系保全等の点で問題があることをこれまでも何度も指摘し、改善を求めています。

経済的なリスクも大きい

これまで、気候変動対策に伴う規制の強化や、国際的な「ダイベストメント運動」の高まりなどから、これ以上石炭火力発電所が動かせなくなり利益を生み出せなくなる「座礁資産化」が指摘されてきましたが、ガス事業についても同様の理由から「座礁資産化」のリスクが指摘されています。また、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響や、先住民族の反対運動などによってパイプラインの建設作業が遅れており、LNGカナダとCGL社との間で追加のコストをめぐって対立も生まれています。さらに、米国のシンクタンク・エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)が、LNGカナダ事業を分析し、上流でのガスの生産が鈍化していることや市場の変化、ブリティッシュ・コロンビア州の政策変更などが、今後事業の経済性に深刻な影響を与えうることを指摘しています。

私たちにできること

現地の先住民族や、NGOがアクションを呼びかけています。
彼らの投稿をシェアする、事業に関わる銀行や企業に対し事業から撤退するよう求める声を届ける、動画をシェアするなどにぜひご協力ください!

  1. 事業についてさらに詳しく知る→LNGカナダ事業概要10月2日ウェビナー(Wet’suwet’enの方をゲストに事業の問題点やカナダの先住民族をめぐる状況にについて解説したウェビナーです。ぜひご覧ください)
  2. 現地の先住民族の声を聞く→Gidimt’en Checkpoint
  3. 動画の上映会をする(日本語字幕もあります)→Invasion