【COP26 vol.5】COP26グラスゴー会合、2週目に突入。“外向け”の宣言と交渉の実態の差

10月31日から始まったCOP26グラスゴー会合が2週目を迎えました。第一週目はワールドリーダーズサミットをはじめ、様々な議長国主催イベントでの宣言等がメディアを賑わせましたが、途上国が重要視している気候資金、損失と被害に関する交渉などについては、ほとんど進捗が見られませんでした。

閣僚級会合で合意が待たれる気候資金

第一週の議長国によるワールドリーダーズサミットや、ファイナンスデーでは、途上国への資金支援の増額や先進国が脱炭素に向けた資金動員をアナウンスしましたが、実際の交渉では、長期資金や適応資金、損失と被害に対応するための資金に関する交渉はほとんど進んでいません。

例えば、途上国は、2025年まで提供することが合意されている年間1000億ドルの資金(長期資金)について、2025年以降の資金提供について議論を始めたいと考えていますが、先進国はその議論を拒んでおり、実際に交渉されていることと、先進国政府が交渉の外で言っていることとの間に大きな差があります。

先送りにされる損失と被害の交渉

世界的に気候変動の被害が深刻化する中、コロナウイルスのパンデミックもあり、気候変動による損失と被害に対する具体的な支援も、途上国にとって喫緊の議題です。

損失と被害に関する制度については、2013年のCOP19で設立されたワルシャワ国際メカニズムがありますが、先進国の圧力によって、極めて機能が限定されたものになっています。また、2019年に開催された前回のCOP25では、損失と被害に関するサンティアゴ・ネットワークが設立されました。途上国としては、今回のCOP26で、サンティアゴネットワークをワルシャワ国際メカニズムとどのように差別化するか、そしてこのネットワークを本格的に稼働させていくために、具体的に損失と被害を最小化したり避けるための具体的な技術支援の内容や、支援の受け方、対策のための資金提供の仕組みなどを話し合いたいと考えていますが、それに対してもアメリカが中心となって議論が前進することを阻んでいます。

先進国のニーズ優先で進んだ第一週の交渉。二週目は?

気候変動による影響を特に大きく受ける途上国グループは、気候変動への適応策に対する支援や、損失と被害に対する具体的な支援や資金に関する合意がない限り、今回のグラスゴー会議は成功したといえないと、本日開かれたストックテイク(各会議体の進捗確認をするための会合)にて発言し、同様のコメントが島嶼国グループや後発開発国グループの国からも相次ぎました。気候資金に関する交渉は閣僚級会合に引き継がれ、適応策や損失と被害に関する交渉は、一部の議題を引き続き交渉官による議論を行った後、閣僚級会合に引き継がれる予定です。

交渉と並行して行われている議長イベント

今回のグラスゴー会合では、議長国がそれぞれの日にテーマを設定しています。11月1-2日に開催されたワールドリーダーズサミットでは、120カ国以上の首相たちが参加し、NDCの引き上げなどの宣言がありました。日本は、岸田首相が600億ドルの気候資金に加え、現在足りていない分を補うため、新たに5年間で最大100億ドルを追加することを述べたほか、アジアの途上国において水素やアンモニアといったゼロエミッション火力を推進するため1億ドル規模の支援を展開することをスピーチで述べました。しかし、ゼロエミ火力は石炭火力を延命させるためのものでしかありません。

それ以外にも、ワールドリーダーズサミットでは、生態系保全のために2030年までに森林保全を推進するGlasgow’s Leaders’ Declaration on Forest and Land Useに133カ国が賛同し、9月にEUと米国が公表した二酸化炭素に次いで気候変動に影響があるメタンを2030年までに2020年比30%削減を目指すMethane emission reduction pledgeにもこのワールドリーダーズサミットで参加表明する国が相次ぐなど、様々なイニシアチブが打ち出されました。

エネルギーデー(Energy Day)として定められた11月4日には、議長国が脱石炭に向けた世界規模の公正な移行に関するイニシアチブ “GLOBAL COAL TO CLEAN POWER TRANSITION STATEMENT” や、2022年以降の化石燃料事業への公的支援を停止するイニシアチブ “STATEMENT ON INTERNATIONAL PUBLIC SUPPORT FOR THE CLEAN ENERGY TRANSITION“の発表など、脱石炭だけでなく脱化石燃料を促す動きがありました。FoE Japanも、このエネルギーデーにあわせ、日本の脱石炭を求めるアクションを他の国のNGOとともに会場付近で行いました。

上記のように多くの宣言が出された第一週ですが、いずれの宣言も公式な交渉外での宣言であり、それぞれの宣言についてどのように進捗を図るのかが不明瞭であるという問題点があります。これらが宣言だけに留まらず、気候変動対策に資する内容が伴うものとなるよう今後の働きかけが重要となってきます。

通常と異なる形で議論されるCover Decision

また、今回のグラスゴー会合では、COP(UNFCCCの締約国の会議)、CMP(京都議定書締約国の会議)、CMA(パリ協定締約国の会議)全てにかかる文書(Cover Desision)が議長国や各交渉グループによって検討されています。通常は、COP、CMP、CMAの合意内容に基づき文案が作成されますが、今回は1.5度目標の明示やNDCの継続的な引き上げ、ネットゼロに向けた取り組みの強化など、実際の議題にはない文言が、合意文書のたたき台にあがっています。一部の国は、会合の議題として取り上げられていないことが書かれていることから同文書の法的拘束力を疑問視しています。また、本日開催されたストックテイクにおいても、途上国グループや市民社会が同文書の決定プロセスが公正でないことを指摘しました。さらに、現在検討されている文案の中には、先進国のネットゼロを達成するための要素(自然に基づく解決策の活用など)など、途上国や市民社会が問題視するような内容が盛り込まれており、決して途上国の声が反映されたものであるとはいえません。このCover Decisionについても、今後どのような内容になるのか、どのような位置付けになるのかを注視していかなくてはなりません。

交渉結果に気候正義を求める市民の声を

先進国が歴史的責任に鑑み、確実な方法で自国の排出削減をし、途上国へもしっかりとした支援を行っていくことが、気候正義に基づいた1.5度目標達成への道のりです。

土曜日に行われた世界気候マーチには、10万人以上が参加しました。グラスゴー以外でも、世界各地で気候正義を求める市民の声があげられています。気候変動対策を具体的な行動にうつすのは私たち市民です。

最も被害を受けている人々が不在の中での開催であっても、気候正義の実現を求める声が交渉に反映されるよう引き続き、会場内外で市民社会の声を高めていきます。

(高橋英恵、小野寺ゆうり)