2030年エネルギーミックスから持続可能な太陽光発電を考える

パワーシフト・キャンペーンの田渕です。FoE Japanは、森林破壊を伴ったり、住民の生活を脅かしたりするような再エネには反対しています。くわしくは、以下の「見解」をご参照いただければと思います。
https://www.foejapan.org/energy/library/180413.html

2030年電力用エネルギーミックスの試算が各団体から出されています、目標値として有用であるため紹介をします。 森林に設置される太陽光発電がどれほど含まれているかを試算をした結果、全体に占める割合は少なく、他の発電方式に変えることで森林破壊を伴ったり、住民の生活を脅かしたりすることのない良いエネルギー社会を目指せるのではないかと思います。

1.2050年温室効果ガスゼロに向けた2030年のエネルギーミックス

2050年温室効果ガスの排出実質ゼロに向け、通過点である2030年の電力に関するエネルギーミックスの試算が各団体から出されている。WWF*1、自然エネルギー財団(以下自然エネ財団)*2、未来のためのエネルギー転換グループ(以下未来エネグループ)*3のレポートから数値を抜粋した電力用2030年発電量予測をグラフ1に示す。

グラフ1.各団体による2030年電力用エネルギーミックス試算

(各レポート内数値を元に筆者作成)

グラフ棒の高さ(電力量総量)は積み上げた数値が大きく異なるのは発電量と需給量の違いなので比較するものではない。

グラフ1に示されているように各団体が試算した2030年電力用エネルギーミックスは基本的に原発、石炭火力はゼロであり、省エネをした上で、総電力量の約半分を再エネで賄う計画となっている。2030年は近い将来でありこれらのエネルギーミックスの実現に向けて最大限努力していかなくてはならない。これらの数値の根拠や条件などの詳細については各レポートを参照されたい。

自然エネ財団と未来エネグループに関しては、太陽光、風力、バイオマスについてレポート内の数値を利用して筆者がさらに細分化した。細分化方法を以下に示す。

<自然エネ財団のデータ細分化>

国土交通省(2013)他の文献を元に表1のように太陽光発電の細分化をしている。

表1 利用可能な土地の推計及び設置可能設備容量*4

(自然エネルギー財団*2の表3-2データを転載,「太陽光発電合計に対する割合[%]は筆者記入)

種類設備容量[GW]太陽光発電合計に対する割合[%]
森林(既存+2019年までの見通し)*下記に詳細記載あり6.76.0%
空き地・原野(民有地)12.911.5%
資材置き場1.00.9%
駐車場2.11.9%
ゴルフ場からの転用12.310.9%
その他・不詳1.51.3%
耕作放棄地52.947.1%
追加転用+追加荒廃農地10.08.9%
湖沼水面2.01.8%
ダム水面8.87.8%
空き家の転用1.91.7%
利用できない建物(廃屋等)-法人所有0.20.2%
合計112.4100.0%

環境へ悪影響を及ぼすかどうかは個々の事案を考慮する必要がある。

建物の上や人工物に設置するものは環境影響が低いと思われるが、既存分を含むものの新たに林地を伐採する可能性がある「森林」を分けてグラフ化した。

森林については自然エネ財団も「森林伐採や造成のコスト、系統連系上の問題が生じやすいこと、環境影響が懸念されることから、2017年までに林地開発許可を得ているもの(約1万ha)に、2018年及び19年の見通し(約0.4万ha)を加えた値とし、それ以上の導入可能性が低い」 *2-P30 としており、見通し分を限定しており電力量全体に占める割合は1%以下で低い。

この設備容量の割合を発電量の割合と同じと仮定し、太陽光(森林)と太陽光(耕作放棄地、追加転用、水面、空き家、人工物、空き地原野、ゴルフ場)に分けた。

<未来エネグループデータ細分化>

太陽光は「屋根置き」「ソーラーシェアリング」「野立て」の3つに分けており、さらに「野立て」については前述した自然エネ財団の設備容量予測の割合(表1)により「森林」とそれ以外に分けた。

未来エネグループのレポートの主題はグリーンリカバリーであり、森林に設置する太陽光発電のようなものは他の手段に置き換えるという考えに基づいている。

この結果、2030年総電力量のうち「森林」は0.7%を占める。(自然エネ財団、未来エネグループ)

<森林と耕作放棄地の定義>

詳細は各団体のレポートを参照いただきたいが、森林と耕作放棄地の定義を転載して示す。

・森林(既存+2019年までの見通し)の定義

森林については、森林伐採や造成のコスト、系統連系上の問題が発生しやすいこと、環境影響が懸念されることから、2017年までに林地開発許可を得ているもの(約1万ha)に、2018年及び19年の見通し(約0.4万ha)を加えた値とし、それ以上の導入可能性は低いとした。(自然エネ財団レポート*2より)

ちなみに自然エネ財団の新しいレポート(脱炭素の日本への自然エネルギー100%戦略 https://www.renewable-ei.org/activities/reports/20210309_1.php)における太陽光発電量の予測では、森林他の細かい分類の記載はなく太陽光全体のポテンシャルは環境省のデータを根拠に十分にあるとしている。一方で*2の文献が引用されている。つまり自然エネルギー財団の最新のレポートとしては表2にあるように森林等も試算に入っていると考えた。(森林の扱いについて慎重な姿勢が見える)

・耕作放棄地の定義

過去1年以上作物を作付けしておらず、今後も作付けする意思のない土地であり、全国で42.3万haに上る。そのうち、果樹園等の傾斜がある耕作放棄地は、太陽光発電の設置に適さない場合が多いなど、全ての耕作放棄地が利用可能なわけではない。今回は、太陽光発電事業者へのヒアリングから、利用可能な土地を15%とした。(自然エネ財団レポート*2より)

また、同様に風力については陸上風力と洋上風力に分けた。バイオマスについては自然エネ財団は「未利用木質、一般木質、農業残渣」と「メタン発酵ガス、建築廃材、一般廃棄物、RPS等」に分け、未来エネグループは「木質バイオマス」と「メタン発酵バイオマス、廃棄物」に分けている。今回は風力発電とバイオマス発電に関しては環境への悪影響については考察しないが、今後活用できるデータとして示しておく。

2.持続可能ではない太陽光発電について

メガソーラーの中には森林を伐採して作られるもの、草原などの貴重な緑地を利用するもの、環境懸念を抱えた住民の反対があるものについては持続可能ではない再エネとして環境団体などでも懸念を示してきた*5-1,5-2

前項で示したように既存分を含むものの新たに林地を伐採する可能性がある「森林」は総電力量の0.7%であった。

 これ以外にも、耕作放棄地、原野やゴルフ場跡地、他の中には環境維持することが重要であったり住民の意思を尊重すべきものがあり、個々の事業を考慮する必要があるものが含まれる。

これら環境への懸念があるものではなく、持続可能な太陽光発電を増やすためにソーラーシェアリングを試算より増やすことはできないか検討した。

試算するにあたって採用した文献は「制約条件を考慮したソーラージェアリングの導入ポテンシャル評価 2018土木学会論文 東大 室城ほか」*6で、関東地域のソーラーシェアリングの導入可能性を作物ごと、日照条件や電源系統への接続条件などを考慮して試算している。これによると関東地域でのソーラーシェアリング導入試算量は69,118[GWh/年]であり、文献内条件case1(地理的な制約考慮、電源系統への接続課題は考慮しないなど)を採用すると63,110[GWh/年]となる。

上記文献は関東地域の試算なので、全国の耕作面積比率データ*7から単純比率で計算すると全国のソーラーシェアリング導入試算量は394,438[GWh/年]となる。地域の条件等はさまざまなのでそれを考慮してそのうち10%が導入できたとすると、39,444[GWh/年]になる。この量は2030年総電力需給量(未来エネグループ試算値)の約5.3%にあたる。

これらの数値を表2に示す。

表2 ソーラーシェアリング導入量試算(文献*5,6から筆者試算)

 ソーラーシェアリング導入量試算 [GWh/年]
関東69,118
文献case163,110
関東→全国換算*7394,438
内10%導入の場合39,444
未来エネグループの2030年総電力需給量を100%とした場合の割合5.3%

この試算によるソーラーシェアリング導入量は、未来エネグループのソーラーシェアリング試算量2.2%の2倍以上である(グラフ2)。

もちろんソーラーシェアリングにはさまざまな課題があるため普及は容易ではないが森林破壊や住民の反対のある発電方式の代替手段としてひとつの可能性を示した。

従って、環境への悪影響があって持続可能ではない太陽光発電ではなく例えばソーラーシェアリングの導入拡大を図ることによって、エネルギーミックスは良い方向へ向かうものと思う。

 グラフ2. 2030年電力用需給見通し割合(未来エネグループ)

(未来エネルギーグループのデータから筆者推定を含め作成)

また今回は考察しなかったが、再生可能エネルギーであってもパーム油やPKSを利用したバイオマス、燃料を輸入して燃やす木質バイオマス系*8、環境懸念を持つ住民の反対がある風力発電など、持続可能ではないと思われる再エネは他にもある。

気候危機を緩和させるためには地域の合意が大前提であり、再エネ発電が増えたとしても緑地が減ったり地域を重視しない方法ではかえって危機を悪化させるのではないだろうか。

気候危機対策として実施されようとしているものの中には逆効果であるものもあるのではないか、引き続き持続可能な再エネとはなにか?について考え活動をしていきたい。

(田渕 透)

<参考文献>

*1 脱炭素に向けた2050年ゼロシナリオ(WWF)
https://www.wwf.or.jp/activities/data/20201215climate01.pdf

*2 2030 年エネルギーミックスへの提案(自然エネルギー財団)
https://www.renewable-ei.org/pdfdownload/activities/REI_2030Proposal.pdf

*3 レポート2030(未来のためのエネルギー転換研究グループ)
https://green-recovery-japan.org/pdf/japanese_gr.pdf

*4 国土交通省(2013)『平成 25 年 世帯・法人土地・建物基本調査』、農水省(2017)「荒廃農地の現状と対策」、太陽光発電に係る林地開発許可基準の在り方に関する検討会(2019)「太陽光発電に係る林地開発許可基準の在り方に関する検討会報告書」、総務省(2019)「平成 30 年住宅・土地統計調査」、一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会(2019)「利用税の課税状況からみたゴルフ場数、延利用者数、利用税額等の推移」より自然エネルギー財団作成。

*5-1 「持続可能な再エネ」電力会社を選ぶことで「よい社会」を選べる(パワーシフトキャンペーン)https://power-shift.org/downloads/15258/

*5-2 鴨川市田原地区メガソーラー計画を取材しました(FoE Japan)
https://power-shift.org/kamogawa_megasolar190302/

*6 制約条件を考慮したソーラージェアリングの導入ポテンシャル評価 2018土木学会論文 東大 室城ほかhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejer/74/6/74_II_221/_pdf/-char/ja

*7 令和2年耕地及び作付面積統計(併載 平成28年~令和元年累年統計)e-Stat 政府統計の総合窓口
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500215&tstat=000001013427&cycle=7&year=20200&month=0&tclass1=000001032270&tclass2=000001032271&tclass3=000001150346

*8 レポート「バイオマス発電は環境にやさしいか? “カーボン・ニュートラルのまやかし”」 FoE Japan
Click to access 210514.pdf