People Power!! きれいな空気をもとめる千葉・首都圏の市民の声が後押しに!

プレスリリース

People Power‼
きれいな空気をもとめる千葉・首都圏の市民の声が後押しに!
JFEスチールと中国電力、蘇我石炭火力発電所計画を中止に

[PDFはこちら

soga_181228

12月27日、中国電力株式会社並びにJFEスチール株式会社は、千葉市蘇我地区で計画していた「(仮称)蘇我火力発電所建設計画」(107万kW、2024年運転開始予定とされていた)を中止し、天然ガス火力発電所共同開発の事業実現性検討に着手することを発表しました[1]。中止の理由について、「本計画は十分な事業性が見込めない」とホームページ上で公表しています。FoE Japanは、連携する地元団体や環境団体とともに、その決断について歓迎します。

本計画に対しては、2017年4月に発足した蘇我石炭火力発電所計画を考える会(蘇我の会)を中心に、地道なチラシの配布や駅頭での呼びかけ、手配りによるアンケート、千葉市や千葉県の環境委員会等の傍聴や意見提出、事業者本社への働きかけなどなど、ダイナミックに活動してきました。東京湾の他の計画地の市民団体や、気候ネットワークやFoE Japanなどの環境団体もその動きと連携してきました。

しかし、事業者は環境影響評価の手続きを進め、2018年1月には環境影響評価方法書を公開していました。方法書に対しては、住民説明会などでも反対の声が大きくあがりました。

・住民団体が指摘していた本計画の問題点:
(1)気候変動問題に対して世界の脱石炭の潮流に逆行していること
(2)大規模な石炭火力発電所は最新の設備であっても大気汚染物質を拡散(SOxやNOx、PM2.5、水銀など)、その影響は広範囲にわたること
(3)現在すでに粉じんの降下があること
(4)真横にサッカースタジアムもあり、周辺に学校や病院なども多いこと

今回の事業者の決断にあたっては、地域住民や環境NGOからの度重なる要請やアクションなどさまざまな形での声が、無視できない大きさであったことも後押ししたと考えられます。市民の力、People Powerの勝利です。

FoE Japanでは2018年11月、蘇我の会のメンバーにインタビューをし、その声の一部を映像とインタビューにまとめていますので、ぜひご覧ください。
●映像『日々のくらしの裏側で〜千葉県千葉市 蘇我〜』http://www.foejapan.org/climate/nocoal/soga.html

●インタビュー記事
【日々のくらしの裏側で – vol.5】企業の懐柔策に埋もれる蘇我住民の声(渡辺敬志さん)https://foejapan.wordpress.com/2018/12/19/soga_1/
【日々のくらしの裏側で – vol.6】残すべき未来のために、一筆一筆の力を信じて(山崎邦子さん)
https://foejapan.wordpress.com/2018/12/26/soga_2/
【日々のくらしの裏側で – vol.7】一人のサッカーファンの願い(品田知美さん)https://foejapan.wordpress.com/2018/12/27/soga_3/
【日々のくらしの裏側で – vol.8】本当に向き合うべき相手とは。JFEと中国電力だけではないもう一つの壁(小西由希子さん)
https://foejapan.wordpress.com/2018/12/28/soga_4/

しかしまだ、日本には石炭火力発電所の新規建設計画が34基あります[2]。東京湾にも袖ケ浦、横須賀の計画が残っています。FoE Japanは、「事業性がない」ことがすでに明らかとなっている石炭火力発電について、その他の計画も中止としていくことを求め、引き続き地元の市民とともに声をあげていきます。

<関連情報>

・石炭火力を考える東京湾の会:蘇我火力問題の関連ニュース
https://nocoal-tokyobay.net/tag/chiba/

・FoE Japan:電力自由化の負の側面?石炭火力の新規計画ラッシュ!
http://www.foejapan.org/climate/nocoal/index.html

・蘇我にもう発電所はいらない—「公害」の歴史ある土地で進むあらたな建設計画
(2017年10月記事)
https://foejapan.wordpress.com/2017/10/16/soga/

国際環境NGO FoE Japan
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9
03-6909-5983   info@foejapan.org

[1] 中国電力ほかプレスリリース(2018年12月27日)
「石炭火力発電所共同開発の検討中止と天然ガス火力発電所共同開発の事業実現性検討着手について」http://www.energia.co.jp/press/2018/11571.html

[2] 石炭発電所ウォッチ(気候ネットワーク) https://sekitan.jp/plant-map/

 

広告

【日々のくらしの裏側で – vol.8】本当に向き合うべき相手とは。JFEと中国電力だけではないもう一つの壁。

国会議員に話しても、石炭は悪い。けど、JFEは支援者だから言えないってはっきりおっしゃるんです。だから私が代わりに言わないと。知らない人のためにも、知っていて言えない人のためにも、やっぱり誰かが言わないといけないと思うんですよ。つくってしまったらね、やっぱり30年とか40年とか壊せないわけでしょ?だから作らせまいと。そのために踏ん張らないといけないと思います。”

こう話すのは、石炭火力を考える東京湾の会(以下、東京湾の会)の共同代表を務める、蘇我石炭火力を考える会(以下、蘇我の会)の小西由希子さん(以下、小西さん)。蘇我石炭火力の建設計画は、小西さんの仲間の市議会議員から聞いたそうです。この計画について調べていく中で問題だと思ったことが、蘇我の会の最初のきっかけだった言います。

知らない人のためにも、知っていて言えない人のためにも、誰かが言わないといけない。そのように考えるまでに至った、その背景を伺いました。

20181228-1

(小西由希子さん。JFEアクションにて気候変動への危機を訴える)

 

小西さんにとって、何が一番問題なのでしょうか?

“やはり、この問題を知らない人が多いことかなと思います。特に、千葉でできた電気を消費しているところにいらっしゃる方が、こういう問題があるということを知らないことが大きいと思います。もちろん、消費している人が出したCO2としてカウントされていくんだけれど、実際は発電所から出た排気ガスはここに残していかれているわけで。そういうことを知っていただくのと、それからやっぱり、電気は十分に足りていて、この石炭火力を日本政府が進めようとしているその裏には、原発と抱合せでエネルギー基本計画等が、なんの見直しもなくやられていること、それから、やっぱりこれから電気を必要としている他の国々のために、石炭火力のプラントを売り込んでいこうというような政治姿勢は、本当に私たちが望んでいることか考えてほしいと思います。”

 

この活動をされていて、困っていることをお聞きしました。

困っていることはいっぱいあります(笑)。そうですね、まず一つは、計画を知らない方がすごく多いということです。それはあまり広報されていないということもあるし、広報されていないからと思いますが、マスコミもあまり取り上げていないんですよ。私たちが何か署名を届けた時とかは取り上げてくださるけど、あんまり関心を持ってくださらない。

それと、市民でも、お話させていただくと、電気が足りないんだったら原発よりいいんじゃない?と思ってらっしゃる方も結構いるんです。そもそも発電しなくていいのよっていっても、そこはなかなかわかってもらえない。というのも、福島が発電所を背負ってくれて、迷惑かけていて、私たちがいっぱい電力使っているのに、そんなわがまま言っちゃいけない、というふうに思っている人が多いんですよ。あと他に、ここに石炭火力がくると、きっと雇用が生まれるんじゃないかとか、固定資産税が増えるんじゃないかとか、なんとなく期待感を持っている方もいます。けれど、行政と事業者に、ここでの経済的メリットは何なのという質問をしたんですけれど、結局行政も事業者も、どんな経済効果があるって言えなかったんですよ。だから、それほど効果がないということなのではないかなと。でも、なんとなく儲かるのではと、そういう“なんとなく感”に縛られている。これを逃したら雇用が減るのではないかとか、なんか、そういうことに縛られてしまっているというか、そういうことがあるのかなと感じます。”

 

電力を多く使っているから文句は言えない。そんな住民の声を聞いて、小西さんは千葉市そして千葉県の電力消費量を調べてみたそうです。その結果について教えてくださいました。

“千葉県とか千葉市の発電所の電気ってどこでどれだけ使われているのだろうって調べたんです。でもそういうデータってどこにもなくて。そこで自分で、いろんなその消費電力とか発電所の規模とかから計算して出してみたんです。そうしたら、千葉市の場合は、千葉市でつくっている電力の25.9%くらいしか市内で消費していないんです。しかも千葉市は製鉄所を持っているから、産業部門の消費電力がすごく大きくて、千葉市民が使っているのは、結局千葉市でつくっている電力の5.8%しかないんです。で、残りの72.1%は市外に出している。市外といっても首都圏ですよね。じゃあ千葉県はと調べてみたら、27%が県内消費、残りの73%は外に向けての電気だっていうことがわかったんです。この結果を見たとき、これは、福島が他県のために電気を作っているのと全く同じ構図だということがわかったんです。だから千葉県、千葉市がこれ以上発電所を作らなければならない理由はないんじゃないかと思ったわけ。千葉市のこの家庭部門での消費は5.8%しかないのに、市民は自分たちで、エコドライブに気をつけましょうとか、電気はマメに消しましょうとか、トイレの電源は出かけるときは抜きましょうとか、市民はこんなにコツコツ節電しているのに、なんでそんな温室効果ガスを出すような発電所を認めるの?って、全く私には納得いかない話でしたね。”

 

20181228_2

(東京湾石炭火力サミットにて。住民の声を届ける。)

 

事業者との会合も何度か設けたという小西さん。そのとき印象に残った事業者のコメントがあるそうです。

“中国電力の方に最初に話を聞いたときにおっしゃったのは、「石炭火力発電は製鉄所で使うよりずーっと、質の悪い石炭でできる」って、はっきりおっしゃったのよ。要するに、硫黄とか不純物を含んでいる質の悪い石炭が燃やされるということなんです。こういう質の悪い石炭が燃やされると、発電所周辺の被害もあるし、その石炭の採掘現場でも、相当の環境問題を引き起こすわけですよね。それに、日本がプラントを輸出することで、どれだけ環境汚染を輸出してしまうのかということも、やっぱり私たちは考えていかないといけないと思う。だからもうやっぱり、石炭火力で金儲けをする時代ではないっていうことを、やっぱり言っていきたいなあと思うし、やっぱりその、消費する側の方にも、こういう問題があるということを、ぜひ知っていただきたい。“

 

質の悪い石炭でもいいという、中国電力社員の衝撃的な言葉。その言葉が意味することを彼は理解しているのかと、怒りすら覚えます。この中国電力のコメントについて、もう少し小西さんに伺ってみました。

結局、住民がどれだけの空気のよさを求めるかによって、プラントの質が決まり、原料が決まるっていうわけなんですよ。私たち住民があまり文句言わなければ、安いプラントでいいし、原料も安くていい、と。しかも、石炭採掘とかやってらっしゃるJERA(株式会社JERA。東京電力グループと中部電力とが共同で設立した火力発電会社)なんかはね、いろんな質の石炭を持っているわけですよ。だから、出口が決まっていると、石炭のブレンドが決まってくると。この質の悪いのを3割、中くらいのを3割、いいのを4割入れよう、というように。住民がどれだけ無害さを求められるかによって、いくらでもブレンドできると、つまりは、住民が何も言わなければ、いくらでも安いものを入れられると、そういう話をするわけですよね。でも、そんなことをされたら、たまらないでしょ。しかも、石炭ってね、敷地内に野積みにされるんです。船から石炭を搬入するときは密閉したベルトコンベアーでやりますっていうんだけれど、搬入後の石炭の保管の仕方が野積みだったら、なんの問題解決にもなっていない。”

 

日本は政府のやっていること、企業活動に反対の声をあげるのが非常に難しい世の中。筆者自身も、国や企業の活動で何かおかしいなと感じても、考えを発信することに躊躇してしまう人が多いように感じます。それでも、声を上げ続ける小西さん。その原動力は何なのでしょうか。

実は、私たちの向き合うべき相手は、石炭火力のJFEと中国電力だけではないんですよ。実は住民、議員でもあるんです。この問題って、ちょっと考えたらおかしいでしょ?だけど、議会でも、ほとんど取り上げられないんです。それは何故かというと、一つはJFEがこの千葉市にとって非常に大きな企業で、納税も高いってことで、保守系の方々が何もおっしゃらないというのがあります。民主党系の議員の方は言ってくださるかなと思って、国会議員に話しても、JFEは支援団体だそうで「石炭は悪いよ、けど、支援者だから言えない」ってはっきりおっしゃるんです。だから、私が代わりに言わないと。知らない人のためにも、知っていて言えない人のためにも、やっぱり誰かが言わないといけないと思うんですよ。つくってしまったらね、やっぱり30年とか40年とか壊せないわけでしょ?だから作らせまいと。そのために踏ん張らないといけないと思います。渡辺敬志さんもおっしゃっていたけれど、ここはJFEの企業城下町でもあるので、なかなか住民も声を上げない。あと、自治会長さんがJFEのOBだったりしてちょっと言えないとか、それから、お祭りとか運動会とかにいっぱい寄付をいただいていたりとか。そうすると、なかなか反対の声を上げられない。個人同士で話すと、やっぱりおかしいよねとか、車が汚れて困っているとか、石炭火力発電所なんてありえないというようになるんだけれど、じゃあ組織として何か言ってくれるかというとなかなか。政治家も、今は本当に残念ながらあてにならない。力になってもらえていないです。”

 

住民の結束の難しさにも関わらず、諦めずに続ける強さはどこから来るのでしょうか。

 “それでも私がやろうとするのは、相手がJFEとかではなくて、よそ者だったときは、私たちが望まない事業を止めることができた経験があるからなんです。3.11の後、指定廃棄物の埋立所が蘇我の東京電力の敷地内に計画されたんです。まあ、計画というか、国が決めたものでした。環境省が決めたルールで、放射能の濃度が高いものを全体から集めて一箇所に埋めるということになったんです。そこで、おそらく、東電が敷地を持っているからここを提供しますって売ったのだと思うんですけれど、当時、その千葉県議会の知事も、千葉市の市長も、これにはノーコメントだったんですよ。議会も、全然コメントがなかったんです。でも、千葉市が持っている指定廃棄物は本当に少しだったんですよ。なので、私たちは、もう一度考え直して欲しいということを、国に対して随分言ったんですね。当時は議会も市長も知らん顔だったけれど、私たちが一生懸命、地域の人にアピールしたんです。それこそ自治会長さんとか。そうすると、今回の石炭火力とは違って、相手が環境省っていう、要するに、よそ者だったから、住民も「それはおかしい、反対だ」ってなってきたんです。さすがに住民とか自治会が文句を言いはじめると、議員も動き出してきて。自分の有権者が色々言い出してくると、さすがにそれはちょっと耳が痛いと。それで、議会も、市長も、指定廃棄物は千葉市は受け入れません、と宣言したんです。

そんなふうにね、法律でどうしようもないことでも、住民が声をあげることが風を起こすというか、やっぱり為政者はどっちに風が吹いているかなといつも見極めていて、こっちかなこっちかなと、こっちに風がきたとなったら、うん、前からそう思っていたんだよと、いうわけですよね。やっぱり住民の声っていうのは力を持っているわけだから、この石炭火力もね、やっぱり住民がおかしいと声を大きく上げていくことで、この地域から票をもらっている議員たちに動いてもらうと。そういうふうに、下からの活動でも続けてやっていくことで、少しでも止める力になれないかなあと私は思っています。”

 

利益を得るために、住民が黙っていれば質の悪い石炭でも良いだろうという事業者。そして、企業と行政の癒着により十分に市民の声が届かない議会。

そんな状況でも、この問題を多くの人に伝えて声をあげる仲間を増やし、企業や行政を変える風を起こすことは可能だと、小西さんの言葉から強く感じました(注1)。

 

日々のくらしに追われて、私たちは自分たちの生活を構成しているものがいったいどこからきているのか、また、どのような影響を及ぼすのか、考えることは滅多にないように思います。けれど、日々使っている電気が、誰かの幸せを奪っているかもしれない社会を、私たちは望んでいるのでしょうか?また、“経済”のために、人々の生活や自然が犠牲なってもいいのでしょうか?

エネルギーは、決して利潤創出の手段になってはいけないものです。私たちが目指すべきエネルギーのかたちとは、発電所周辺地域の住民のために生産され、発電所周辺地域の住民の権利が保障されるものであるべきです(注2)。

 

ぜひ、考えてみてください。

日々のくらしの裏側で、誰かの苦しみを伴うようなことはあっていいのか。

また、みんなが安心して日々のくらしを営むための電気のあり方とはどのようなものなのか。

そして少し勇気を出して、あなたの考えを周りの人と話してみてください。

たとえ一人一人の声は小さくても、多く集まれば社会を変える風になります。

 

(高橋英恵)

(注1)2018年12月27日(木)、中国電力JFEスチール、および左記2社によって設立された特別目的会社である千葉パワーは、蘇我における石炭火力発電所開発に関する検討の中止を共同で発表。

(注2)FoE Japanが目指すエネルギーについては、こちらをご参照ください。

 

<関連記事>

・住民へのインタビュー動画:蘇我編「日々のくらしの裏側で〜千葉県千葉市 蘇我〜

・住民へのインタビュー動画:袖ヶ浦編「日々のくらしの裏側で〜千葉県袖ヶ浦市〜

・住民へのインタビュー動画:横須賀編「日々のくらしの裏側で〜神奈川県横須賀市久里浜〜」

・インタビュー記事:【日々のくらしの裏側で – vol.1】横須賀石炭火力発電所建設計画への地元高校生への目線

・インタビュー記事:【日々のくらしの裏側で – vol.2】過去の経験から未来へ。あの公害を繰り返したくない。

・インタビュー記事:【日々のくらしの裏側で – vol.3】きれいな空気は誰のもの?命を脅かす石炭火力発電所の恐さ

・インタビュー記事:【日々のくらしの裏側で – vol.4】気候変動という危機を放置していいのか?袖ケ浦石炭火力発電所建設計画に立ち向かう人々

・インタビュー記事:【日々のくらしの裏側で – vol.5】企業の懐柔策に埋もれる蘇我住民の声

・インタビュー記事:【日々のくらしの裏側で – vol.6】残すべき未来のために、一筆一筆の力を信じて。

・インタビュー記事:【日々のくらしの裏側で – vol.7】一人のサッカーファンの願い

 

【日々のくらしの裏側で – vol.7】一人のサッカーファンの願い

11月から蘇我石炭火力を考えるの会(以下、蘇我の会)の新メンバーとなった品田知美さん(以下、品田さん)。

品田さんのご家族は、大のサッカーファミリーだそうで、蘇我の石炭火力発電所建設予定地真横に立地するサッカースタジアムもよく訪れるそうです。そんな中、同サッカースタジアムのすぐ隣に石炭火力発電所ができると知り、いてもたってもいられなくなったとのこと。

サッカースタジアムの真横に石炭火力発電所が建てられようとする状況について、千葉に住む一人のサッカーファンとしてどのように感じるのか、お話しを伺いました。

 

20181227_1

(品田さん。JFEアクションにて)

“この蘇我の石炭火力発電所の建設計画は、時々寄付をしている環境団体さんの投稿で知りました。

私の住んでいるところは海沿いの空気のきれいなところなのですが、蘇我はいつも通るたびに空気汚れているなと思ったり、サッカー観戦に来た時には、サッカー選手はこんなところで練習したり試合したりしていて大丈夫かなあと心配していたんですね。そんなときに、今回の新しく石炭火力発電所ができるということを知って。これは絶対に反対しないと、と思ったんです。

色々調べていく中で、PM2.5の飛散するシミュレーションを見つけて、それをみたんです。そしたら、私の住んでいるところまでPM2.5がちゃんと飛んできてしまうんですね。自然が好きで、空気のきれいなところに住んでいるのに、ここまで空気が汚れてしまうのかって、思いました。そういう風に思う方は、蘇我の方だけでなくて、私みたいにたまたま知った人でもたくさんいると思うんですよ。もう少し遠くの人も巻き込んで、ぜひ積極的にやりたい。だって、遠くに住んでいても被害を受けるということは、この石炭火力発電所の関係者なんです。だから、私もその一人だと思って、もうこれは反対しようと思ってきました。”

20181227_3

(蘇我、袖ヶ浦、横須賀で建設が予定されている石炭火力発電所が稼働した場合のPM2.5の飛散シミュレーション)

 

サッカーが大好きという品田さん。この計画を知った時の気持ちを教えてくださいました。

“私の家族はサッカーファミリーで、本当にサッカーが好きなんです。

先日ちょうど建設計画のお話をきく機会があって、具体的な予定地を聞いたら本当に真横で。かえってショックで、眠れなくなるくらいショックで。地図を見たらそこなの?みたいな。本当に横だったのでがっくりきちゃって。

蘇我の発電所の建設予定地のすぐ横に、すごく大きなスタジアムがあるんですけど、その横にもいっぱい小さなスタジアムがあって、そこではいつもお子さんたちが、千葉中のお子さんたちが集まって、サッカーやっているところなんですね。そこにね、また空気を汚してしまうようなものをつくるというのは、本当に健康の被害を増やすだけだと思うんです。サッカーが好きな人は、このあたりには本当に多いと思うんです。だからこそ、この計画を知っている人を増やしていかないとまずいなって思っています。”

20181227_2

(建設予定地周辺図)

 

この計画を知っている人を増やしていきたいと、繰り返し語る品田さん。品田さんの考える今後の告知戦略をお聞きしたら、サッカー家族ならではのアイデアが。

“今、サッカーやっているお子さんは本当に多いので、小学生のサッカークラブに一斉メールとか、一斉チラシとか送ることが効果的なんじゃないかと思っています。若いお母さんたちだって子どもの健康にはすごく気を使うと思うんですね。

私は仕事上、環境問題が研究対象なので、石炭火力発電は温室効果ガスを排出して気候変動の問題を悪化させることや、石炭火力発電をつくっているのは先進国で日本くらいしかないのも知っているけれど、これは、健康も本当に大事な問題なんです。私自身、少し喘息気味というのもあるので、自分の健康も不安だけれど、実際、娘や息子の友達がこのスタジアムでプレーしているんです。選手だけじゃないんです。だから私が反対しないと。選手たちってなかなかそういう活動ってしにくいと思うんですよね。だからやっぱり、できる立場にいる自由な人間がやった方がいいのかなって。私はそういうことを言っても別に仕事上困ったりはしないので、私が代わりに言わないと、彼らの健康を守れないから。”

 

筆者が蘇我の石炭火力発電所の建設予定地の視察・インタビューに訪問したのは、ちょうど小学校の下校の時間でした。道々では多くの小学生が友人らと共に自宅へと向かい、また、これからサッカーの練習に向かうであろうお子さんの姿も多く見かけました。

自分の子ども、友人がサッカーをする場所の空気が汚れてしまったら?また、自分の応援するサッカー選手が空気の汚れのせいで病気になってしまったら?

サッカーに限りません。野球であっても、テニスであっても、サイクリングであっても、自分の好きなスポーツをする場所の環境・空気が汚れてしまったら?

一度、自分の身近なものに置き換えて、考えてみませんか?

(高橋英恵)

 

<関連記事>

・住民へのインタビュー動画:蘇我編「日々のくらしの裏側で〜千葉県千葉市 蘇我〜

・インタビュー記事:【日々のくらしの裏側で – vol.1】横須賀石炭火力発電所建設計画への地元高校生への目線

・インタビュー記事:【日々のくらしの裏側で – vol.2】過去の経験から未来へ。あの公害を繰り返したくない。

・インタビュー記事:【日々のくらしの裏側で – vol.3】きれいな空気は誰のもの?命を脅かす石炭火力発電所の恐さ

・インタビュー記事:【日々のくらしの裏側で – vol.4】気候変動という危機を放置していいのか?袖ケ浦石炭火力発電所建設計画に立ち向かう人々

・インタビュー記事:【日々のくらしの裏側で – vol.5】企業の懐柔策に埋もれる蘇我住民の声

・インタビュー記事:【日々のくらしの裏側で – vol.6】残すべき未来のために、一筆一筆の力を信じて。

【日々のくらしの裏側で – vol.6】残すべき未来のために、一筆一筆の力を信じて。

千葉エコメッセ、早朝のJFE本社前アクション等、東京湾の会の活動にはほぼ休むことなく参加している山崎邦子さん(以下、山崎さん)。子どもの権利に興味があり、普段は子どもの権利に関わるお仕事に携われているそうです。蘇我の石炭火力発電所の建設計画を知ったのは、日頃から一緒に活動している仲間から教えてもらったとのこと。この計画を向き合うに至った背景をお聞きしました。

 

20181226_4.JPG(山崎さん)

 

“今回の石炭火力発電所が計画されていることは、日頃からいろいろと中央区で一緒に活動をしている仲間と話している中で知りました。実はその前に、3.11以後の特定廃棄物の処分場が蘇我の東京電力の敷地にできるという問題が持ち上がりまして。そのことが環境問題に関心を持つきっかけになりました。きっかけは産業廃棄物の問題だったんですけれど、環境問題について勉強していくうちに、世界ではみんな石炭は扱わないという流れになっていく中で日本が石炭を推し進めているということも、その時に知ったんです。しかも、その理由が、儲かるからこの事業を展開していくというもので。3.11以降、多くの人が自然とか環境を考えたり一生懸命電気を節約したりしているおかげで、原発を止めているけれど電気が足りないということは起こっていない状況なのに、このような企業の考え方がとても信じられない気持ちでいっぱいでした。企業はこういう皆の、主婦といいますか、一般市民の努力を知らないのかなと。”

 

企業の論理と生活者の論理。この事業を推し進める企業の言い分の一つとしては、石炭火力発電所を作ることで地域に雇用が生まれ、地域経済が潤うという主張です。このような意見に対して、山崎さんはどのように感じるのか、伺ってみたところ、次のような返答が。

“企業としては地域で雇用が生まれて、そこでの業績を税金として市とかに納めるという言い分をされると思うんですけど、今回のことに関してはそのあたりのことを聞いてみても、はっきりとした答えが出てこない。雇用も実はそんなに増えないんじゃないかなと私は感じています。例えば、フクダ電子アリーナができたときも、その周辺はお店が増えて経済が潤うという話もあったみたいですけれど、そうはなっていないように感じます。アリーナの説明会の時も、地元でどのくらい雇用があって、どのくらい地元に貢献できるのかというのを聞いた方がいらっしゃったのですが、それに対するはっきりとした答えが何もなかったんです。確かに建設のときは沢山の人が雇用されたと思いますけれど、完成したらあとは自動化といいますか、そこで働く人というのはそんなにはいなかったみたいで。この石炭火力の計画も、フクダ電子アリーナのときのように、建設の時はたくさんの方が関わるかもしれないけれど、完成したらまちが潤うというようなことはないと思います。”

 

20181226_2.JPG

(中国電力の前にて。)

 

そもそも、山崎さんはどうしてこの計画を止めないといけないと考えているのでしょうか?

やっぱりきれいな環境を子どもやこれからの将来残していきたいというのはとても強く思っています。それにいろんな借金、まあ行政の借金ですけれども、これを本当に残したくない。国の借金、県の借金、市の借金は今でさえたくさんあって、まずはこの借金を減らさなきゃと思うけれど、逆に行政は市債とかを出して債権をどんどん増やしているんです。でもこれって、将来への負担をどんどん増やしているということで、こればかりもう、行政の方々と主婦の家計簿感覚は違うんですよね。そういうのが行政的な考え方というのか、きっと会社的なものなのかわからないですけど、ちょっと主婦的な、家計簿的な考えていうと、借金をどんどん子どもに残すというのは、受け入れかねる部分があるんです。環境に関しても、同じだと思います。なにか綺麗にできる、ちゃんと手立てがあった上での何かであったらいいんですけど、原発もそうですよね、結局最後に、廃棄物をちゃんとキレイにするとか、どういう風に保管するとか何も対策できていないままに進めている。今回の石炭火力にしても、これをすると絶対に身体によくないものが出るというのがわかっているのに進めようとするということに関しては、やっぱりもう絶対止めて、じゃないと、将来がどうなるだろうというのがあります。

 

将来の世代に残したいものは失われていく方向にある一方、将来世代に残したくないものばかりが増えていく。この状況を、まずは多くの人に知ってほしいと切々とお話しする山崎さん。この問題を知った私達が力になるには、どうすればよいのでしょうか?

この問題の難しいところでもあるんですけれど、CO2も窒素酸化物とか、目に見えなくてついつい見過ごしがちになってしまうものが温暖化という世界規模の問題につながっているということを、まずは皆さんに知ってもらいたいです。そして、電気はまず足りているということもありますけれども、石炭火力発電所は要らないよということをしっかりとわかってほしいし、一人でも多くの人がその運動に関わってもらえたらなと思います。

この計画の中止というか、見直しをしてもらうためには、市議会とかで意見がどんどん出てくるようになることが望ましいと思います。今の状態では、私たちがそこに直接言うのはなかなか難しいと思いますけれど、やっぱり市民が、たくさんの市民が、例えば署名をするとか、チラシを一緒に配布してくれるとか、市長への手紙とか、意見をどんどん言ってくれるということがあると、何か本当にその一つ一つ、一筆一筆がとても力になる、動かせるって思っています。”

 

20181226_3.JPG(JFE本社前アクションにて)

 

山崎さんとお話しすると、いつも温かさを感じます。そして今回お話を伺う中で、山崎さんの言葉の中に、市民の力を信じる強さを感じました。

 

私たちがほしい未来はどのような未来なのか。また一方で、私たちの望まない未来とは。

私たちが望む未来とは、企業の利益のために命が犠牲となる社会ではなく、そこに生活する人々の命と、これから生まれてくる命が第一に優先される社会なのではないでしょうか。

石炭火力発電所は近隣住民の健康被害につながるほか、温室効果ガスの排出による気候変動の影響を悪化させます。近年では日本でも豪雨の被害が頻繁に起きていますが、気候変動の影響は日本から離れた島嶼国での海面上昇、干ばつからくる農作被害そして農民の自殺、またヒマラヤ山脈付近の国々では氷解による被害等、深刻な被害をもたらし、人々の命が奪われています。

企業の利益ではなく人々の命が中心となる社会。そこには、石炭火力発電所はないはずです。

(高橋英恵)

<関連記事>

・住民へのインタビュー動画:蘇我編「日々のくらしの裏側で〜千葉県千葉市 蘇我〜

・インタビュー記事:「【日々のくらしの裏側で ーvol.1】横須賀石炭火力発電所建設計画への地元高校生への目線

・インタビュー記事:「【日々のくらしの裏側で – vol.2】過去の経験から未来へ。あの公害を繰り返したくない。

・インタビュー記事:「【日々のくらしの裏側で – vol.3】きれいな空気は誰のもの?命を脅かす石炭火力発電所の恐さ

・インタビュー記事:「【日々のくらしの裏側で – vol.4】気候変動という危機を放置していいのか?袖ケ浦石炭火力発電所建設計画に立ち向かう人々

・インタビュー記事:「【日々のくらしの裏側で – vol.5】企業の懐柔策に埋もれる蘇我住民の声

 

【日々のくらしの裏側で – vol.5】企業の懐柔策に埋もれる蘇我住民の声

千葉県蘇我駅から車で5分ほど。そこに、千葉の地元のサッカーチームであるジェフユナイテッド千葉が拠点とするフクダ電子アリーナがあります。

“あの右側の奥に、石炭火力発電所ができるんです。”

そうおっしゃったのは、蘇我石炭火力を考える会(以下、蘇我の会)のメンバーの渡辺敬志さん(以下、渡辺さん)。9年ほど前に東京から広い家を求めて蘇我に越してきたものの、新しく出てきた今回の蘇我の石炭火力発電所建設計画。この現状にどのように感じているのかを、伺いました。

そもそもは石炭火力というよりも、マンションの汚れが非常に目立つということがきっかけでした。最初は私個人の問題としてJFEに電話をしたり、あるいは行政に電話をしたりしていたのですけど、所詮個人では埒が明かなくて。それで、マンションの管理組合とか自治会関係に携わっていたこともあり、自治会として住民に全戸アンケートを取ったんです。そうしますと、過半数以上の回答(139戸中79戸)がありまして、そのうちの85.6%から「粉塵問題悩んでいる、なんとかしてほしい」という声が生々しく上がったんです。コメントの中には子どもさんへの影響が気になるというようなご意見もありました。それを自治会の役員として受け取ったわけですよ。そうするとね、受け取った以上は放置できない。そういうことで、この件を自治会として扱おうという決議を出し、同じ自治会、連協の会長さん宛とか、行政宛に自治会名で要望書を出したりしていました。“

そして、新しく出てきた今回の蘇我の石炭火力発電所建設計画。なんと、たまたま蘇我駅を通りかかったとき、同計画に関するチラシを受け取ったのが知ったきっかけだそうです。

“たまたま蘇我の駅を通りかかったとき、石炭火力ができますよというチラシを受け取りました。それではじめて「えっ」と思ったんです。そもそも、私どもが粉塵問題で取り上げたのは、かれこれ6年前。6年前に取り上げたときは、行政とJFE、私どものマンション、それから環境N POの方と、お互いに話をぶつける4社ヒアリングの場が設けられました。でも、結局3回で流れてしまいました。流れてしまった理由を簡単に言いますと、非常に実のない話に終止してしまいがちだったんです。行政はどちらかというとJFE側の立ち位置で、NPOさんも行政やJFEに対して何か言ってくれるかと思えば中間的な立場で物言いをされるし、結局はうちの自治会関係が言うだけで空回りというような感じだったんです。だけど、このときJFEさんは「年間10億円の予算で毎年粉塵問題を解決しています、いろいろと企業努力をしています」と言っていたんです。そのときに出た例の1つが、老朽化した設備を新しく入れ替えることによって、煙突から飛散する粉塵については軽減を図っておりますという話だった。風で粉塵が飛んでいるということは知っていたんですね。あと、工場見学に行ったときに石炭が山積みされたところを通ったからそれはどうなの?と聞いた時は、散水して飛散を防止していますと。他にも、12mの高さの緑化マウンドを作って、飛散防止を図っていますということだった。我々も毎年10億円の予算をかけてJFEさんが努力してくれているのであれば、様子見をしようということで、一旦は鉾をおさめたときがあったんです。

でも、そういった矢先に石炭火力の話を知って、冗談じゃないと。今までのJFEの善意はこのために意図的にやっていたのかと。こういうことで非常に腹がたってですね。で、石炭火力の問題を追求し始めた。そのときに私どもの自治会だけではなくて、地域の市民の人たち、市民ネットの方、あおぞら会という、昔川崎製鉄で粉塵の問題で公害訴訟をなさった人たちが集まって、蘇我の会というものを作り、昨年の4月から活動をはじめました。並行して、袖ヶ浦と横須賀でも石炭火力の話が出ていましたから、じゃあ、それぞれの会が連携してやりませんかという話になって、東京湾の会もでき、私どもは蘇我の会として、石炭火力の話を真正面から取り組むようになりました。“

蘇我の会として、今までどのような活動をされてきたのでしょうか?

“まず大きな一つは、近隣マンションへのアンケートです。あと、一般の皆さんへの学習会や、駅でのチラシまきとか。それからパタゴニアさんの助成金を申請したら受かったものですから、その資金を活用して、新聞折込とかをさせていただきました。こういう一般住民向けの活動と、それからJFEとのヒアリングを何回か、あと、行政とのヒアリングもやっています。そのほか、先日千葉県の弁護士会館で石炭火力問題のセミナーを開催していただいたりと、いろいろなかたちで、今、協力者の輪を広げつつあります。”

近隣マンションへのアンケートが一つの大きな活動だったとおっしゃる渡辺さん。アンケートの結果について教えてもらいました。

“2万件を足で歩いて、1戸1戸ポスティングをしてきました。回答が355件あって、そのうちの278件が記名式で連絡の取れるものでした。名前の記されたアンケート回答は、僕は珍しいと思っています。やっぱりそれだけ自分の名前を出してでも、訴えたい方がいらっしゃっるんだと思いました。しかも、そのアンケートの結果ですが、90%以上の人が石炭火力は冗談じゃないと。で、「今病気通っています」とか「自覚症状あります」とか、「今治療中です」とか言う方もいらっしゃいました。何より、「将来が不安だ」という方が圧倒的多数だったんです。

そういうことを聞いたときに、私として興味を持ったのが、回答は確かに2万件の中で355件だったんですけど、たとえばうちのマンションの355件のうち何人回答したかをみてみたら、12人しかいないんですよ。一方、私の自治会が過去にやったアンケートではね、さっき言いましたように、139のうち79%の回答がありまして、そのうちの85.6%が粉塵問題で悩んでいるということになると、そんな10人どころの話じゃないんですよ。

しかもこの地区はマンションだけで、全てのマンションから必ず1人から5人くらいの粉塵の悩みが寄せられたんです。それらを合わせて推察したとき、あるマンションの一戸だけが汚れていると思えない。そうすると単にアンケートに答えていないだけで、この千葉みなとを中心とした地区に、少なくとも4千人から5千人の方が苦しんでいると思います。”

 

バリバリと活動をされている渡辺さんですが、活動している中で直面している壁もあるのだとか。

“とにかく、知らない人が多すぎる。私自身もこの計画を知ったのが、蘇我の駅を通りかかったときのチラシがきっかけだったんですね。いろんな説明会とか、蘇我の会としてやっていますけど、ほとんどの人が知らなかったということが圧倒的に多いんですね。市に言ってみたら、官報に載せていますってことだったんですが、誰も見やしない、ものすごく小さい記事なんですよ。だから、実質的には何一つとしてこの計画の広報を行政としてはやっていない。そう思います。

あと、もう一つ、今は引退しましたけれど、現役の時はどちらかというと経営者側の目線でした。経営者だったものですから、小さい会社ですけどね。当時は、経営者側の考えること、あるいはそれにまつわる行政の思想、それから政治家のあり方、そういうものをいっぱい見てきました。しかも、それを自分の利益になるのであれば、容認してきた時期もあります。でも今、市民にはじめて戻って、一市民の目線でその粉塵問題という、現実に自分の目の前に降りかかってきて。行政や事業者、あるいは政治家とどう対峙していけばいいかというのは、私なりにわかります。でも、この問題について冗談じゃないとなった時に、一番重要なのは住民のパワーをどのように結集していけるか、この一点だと思います。そのために何をやればいいかということを今模索している最中であると、それが正直なところです。解決策はまだ見つかっていません。”

また、こんなコメントも。

ほとんどの自治会長さんは何かの祭りのときはJFEから協賛金を頂いたり、清掃するときにはJFEから人を差し入れて頂いて一緒にやったり、あるいはJFE祭りを華々しくやって近隣住民の皆さんにいろいろサービスしてもらったりしています。そういうものを受けた住民側から見たらね、なかなかJFE相手に物申すということができない。出来づらいだろうなと思います。でも、本来はこの地区とかにお住まいの全自治会の会長さんがすべきなのは、住民の悩みを吸い上げて、実態調査をして、それに沿った自治会の政策を作ることのはずなんです。”

周辺住民の無関心。そしてJFEの住民への懐柔策。蘇我の会が直面する課題は大きいですが、活動を通して、少しずつ動きは変わってきているようです。

“JFEも我々の動きを軽視できなくなってきているように思います。神経質にさせた事自体が一つ前進だと思いますし、行政側も、環境審議会の中に今まではなかった大気関係の専門部会が今年から作られました。これも一歩前進なんです。ただ、その委員の中には冗談じゃないという人が委員に選ばれていたりと中身はないんですけど、形式的にはそういう動きがある。ほかにも、千葉市を美しくする会という組織に対して、千葉市を美しくするために大気環境は欠かせない問題なので取り組んでくださいという要望書を出してみたら、会長さんから、検討してみるというレベルですけど、回答がありました。活動の成果はじわじわと浸透しつつあるんです。”

最後に、どのような気持ちで活動していらっしゃるのか、伺いました。

“私個人でいうと、負けず嫌いですから、相手が大きければ大きいほどなんとかしてやろうという気持ちはあります。もちろん、虚しい気持ちもいっぱいありますよ。やれどもやれども相手にされないという虚しさは。でも誰かが声を出していかないと、誰かがアクションを起こさないと、日本も変わらないから、そう思って活動しています。”

JFEの住民への懐柔策に埋もれた住民の声。

住民が本当に欲しいのは地域の催しの協賛金や清掃サービスではなく、安心して暮らすことのできる綺麗な空気であるはずです。

(高橋英恵)

<関連記事>

・インタビュー記事:「【日々のくらしの裏側で ーvol.1】横須賀石炭火力発電所建設計画への地元高校生への目線

・インタビュー記事:「【日々のくらしの裏側で – vol.2】過去の経験から未来へ。あの公害を繰り返したくない。

・インタビュー記事:「【日々のくらしの裏側で – vol.3】きれいな空気は誰のもの?命を脅かす石炭火力発電所の恐さ

・インタビュー記事:「【日々のくらしの裏側で – vol.4】気候変動という危機を放置していいのか?袖ケ浦石炭火力発電所建設計画に立ち向かう人々

・住民へのインタビュー動画「日々のくらしの裏側で〜千葉県千葉市 蘇我〜

日本の官民が進めるニッケル開発現場で深刻な被害


日本のフィリピン・ニッケル鉱山/製錬開発の環境・健康影響

日常の中で何気なく使っているスマホやパソコンのリチウムイオン電池。近年、電気自動車などの普及とともに、益々欠かせない電池となっています。その電池の原料として欠かせないのがレアメタル(希少金属)の一つ、ニッケルという鉱物。フィリピンは、現在世界最大のニッケル鉱石生産国で、日本が官民でその開発・製錬に深く関わっています。住友金属鉱山をはじめ、大平洋金属、双日、三井物産が現地企業などに出資し、また国際協力銀行(JBIC)が融資、日本貿易保険(NEXI)が付保しています。

日本が関わるフィリピンのパラワン州や北スリガオ州におけるニッケル鉱山・製錬所周辺地域の河川水や湧水などで、これまで日本の環境基準を超える六価クロムが検出されてきました。天然で存在することがほとんどない六価クロムは東京築地などでも基準値以上が検出され、話題となった毒性の高い物質です。皮膚の腐食、臓器障害、癌、DNA損傷の可能性もあると言います

2018年12月の現地調査(北スリガオ州)

この12月、FoEのスタッフになってから初めて、北スリガオ州タガニートでの現地調査に同行しました。成田空港を離陸してからおよそ16時間、3つのフライトを乗り継ぎ到着したスリガオ空港は美しい緑の山林に囲まれており、雨季の湿気を含んだ暑さと、空気の良さを感じながらプロペラ機を降りました。翌日、車で東岸沿いを2時間ほど南下したところにあるタガニート鉱山付近に到着。グーグルマップでも確認できますが、赤茶になった山肌が幹線道路からもちらほらと目視できるようになりました。しかし、PARC制作ビデオ『スマホの真実』で撮影された鉱山開発の現場が最もよく見える場所には立ち入りができませんでした。

今回、メインの水質調査は、タガニート鉱山/製錬所からの排水が流れ込むタガニート川、ハヤンガボン川にて二日間行われました。六価クロム簡易検知管の検査では引き続き複数地点で環境基準値(0.05 mg/L)を超えており、周辺地域の住民への健康被害や水生生物への悪影響などが懸念される状況でした。1日目の調査では、タガニート川とハヤンガボン川でそれぞれ0.1 mg/L、0.075 mg/Lと、基準値以上の六価クロムが検出され、2日目にもタガニート川で基準値以上の0.15mg/Lが検出。今後、採取した水は専門家に精密に分析してもらう予定です。

dav
タガニート川検査結果
(2018年12月撮影、FoE Japan)

今回、何度も現場で検査を行なってきたスタッフからも驚きの声が上がったのは、先住民族ママヌワの移転地近くに暮らすビサヤの人びと数軒が主に利用している湧水の検査結果。簡易検知管の検査で基準値の20倍である1.0 mg/Lが計測されました。湧水をホースで導水し、煮沸などの処理もせぬまま飲料水としても利用しているとのことでした。移転地での水不足の際は先住民族ママヌワの人びとも利用し、この地域の住民の重要な水源になっているようでした。

先住民族ママヌワの移転地近くにあるビサヤ住民の住宅(2018年12月撮影、FoE Japan)

六価クロムの簡易検知管は、汲んだ水を試薬の入った透明なプラスティック製のチューブに吸い取り、六価クロムに反応した場合、1〜2分経過するとピンク色に変化します。この湧水は、チューブで吸い取った直後からみるみるうちに色が変わり始め、その事態の深刻さを人々にどう伝えるのがいいのか、複雑な心境を覚えました。先住民族ママヌワの人びとにとっては、そもそも、鉱山開発によって余儀なくされた移転。移転先で十分な水がなく、このような危険な水を利用することになっている実態――日本の官民が多額の出資・融資をして進める事業によって、住民の人びとが深刻な汚染状態にある水の利用を押し付けられていると自分は感じました。

先住民族ママヌワの移転地近くに暮らす住民が主に利用する湧水の検査結果(2018年12月撮影、FoE Japan)
先住民族ママヌワの移転地近くに暮らす住民らが主に利用している湧水。ホースで導水している(2018年12月撮影、FoE Japan)

FoE Japanは、パラワン州リオツバでも六価クロムがニッケル開発・製錬所の周辺から検出され続けていることから、2016年に製錬事業の最大の出資者である住友金属鉱山に水質調査に関する要請書を提出しました。事業者は、2012年から、鉱石置き場のシート掛け、沈砂池の掘削、また、河川につづく沈砂池の出口付近における活性炭の設置を対策として行っているといいます。しかし、FoEに長年協力してくださっている専門家の大沼淳一氏(金城学院大学元非常勤講師、中部大学元非常勤講師、元愛知県環境調査センター主任研究員)は、その対策は十分ではないと指摘をしてきました。現に六価クロムは検出され続けているのです。

さらに、深刻な人権侵害も起きています。2017年1月、自分たちの土地・生活の権利を訴えてきた先住民族ママヌワのリーダーであるヴェロニコ・デラメンテ氏が殺害され、住民たちは事業に対する懸念の声を上げにくい状況となっています。また、今回、私たちが水質調査を行ったミンダナオでは、フィリピン政府により戒厳令が敷かれており、周辺の町では軍によるチェックポイントが点在するなど緊張感の高さを肌で感じました。

日々の暮らしに欠かせないリチウムイオン電池に含まれるニッケル。その開発は、深刻な水質汚染や住民リーダーの殺害といった人権侵害にも加担するものであり、多大な犠牲の上になりたっている――今回の訪問で、そのことを改めて痛感しました。

現代社会において、パソコンやスマホを手放すことは困難ですが、まだ使えるのに新しい機種を購入するといった行動は疑問を感じざるを得ません。大量生産・大量消費のひずみの一端を引き続き発信し続け、日本から遠く離れた出来事をより身近に感じてもらえるよう、そして、スマホやパソコンをはじめ、モノを大事に扱う大切さを改めて伝えられるよう、FoE Japanで活動を続けていきたいと思います。 (松本 光)

COP24閉幕 – 公平性に欠けるパリ協定の実施指針、気候変動への行動強化にも繋がらず

12月2日から開催されていた第24回気候変動枠組条約締約国会議(COP24)は、予定していたよりも1日遅い15日に終了しました。

何が期待されていたのか?

今回のCOPで期待されていたのは、気候変動行動強化に関する主な2つの点です(開幕時の論点整理はこちら)。

一つはパリ協定の実施指針(ルールブック)の合意、そして二点目は、各国の気候変動への国別目標(NDC)の強化です。今回のCOP24は、気候変動の緊急性と行動強化の必要性を示したIPCC1.5度特別報告が2018年10月に発表されてから初めて開催されたCOPであることから、2023年の各国の気候変動取り組みの進捗を確認し合うグローバル・ストックテークに5年先立ち、各国が目標強化の取り組みなどについて議論するために設けられた促進的対話(タラノアダイアログ)などを通じて各国の気候変動への国別目標(NDC)の強化が期待されていました。

ルールブックはどうなった?

一点目の主要点であるルールブックにおいては、残念ながら、先進国の気候変動への歴史的責任はほぼ削られる結果となりました。

途上国はルールブック作りにも公平性・共通だが差異ある責任の原則の適用を主張し、NDCに関しても緩和中心ではなく、適応などその他の要素も含めるべきだと主張していました。結果的に、緩和については必須ですが、適応などその他の項目は、NDCに含めたい国は含めることという形になりました。

「透明性枠組み(各国の気候変動対策の取り組みの報告に関する枠組み)」では、各国は2年ごとに各国の排出目録と取り組みの進捗レポートを提出することになります。提出フォーマットに関しては先進国と途上国の間に差が設けられました。(先進国の提出は2022年から、途上国は2024年から)。適応と損失と被害についての報告は要素として盛り込まれましたが、損失と被害に対応するための資金の言及は完全に削除されました。

資金情報の報告については、新たに拠出された公的資金だけでなく、民間から動員された商業融資や投資、保険などもカウントして良いことになりました。

一方、先進国は2年ごとに今後拠出する気候資金の情報についてレポートを別途提出することになりました。資金がなければ自国の気候変動対策実施が難しい途上国にとっては、この点は一つの勝利といえます。

今後2年間は、各国がNDCを強化する非常に重要な年になります。

「グローバルストックテーク」は、2023年から始まる各国が気候変動対策の取り組みを見直し、5年ごとに目標を強化して再提出するプロセスです。グローバルストックテークでは公平性原則が非常に重要な論点であり、途上国、とくにインドなどは、残されているカーボンバジェット(1.5度目標達成のために残された温室効果ガスの排出許容量)や歴史的排出を目標強化のプロセスに盛り込むよう求めましたが、実施指針には残りませんでした。また、「損失と被害」についての言及は最後までアメリカが強行に反対し、本文では言及されず、最終的に脚注に追いやられました。

IPCC1.5度特別報告の扱いは?気候変動行動強化につながったのか?

二点目の各国の気候変動への国別目標(NDC)の強化について、COP24の決定文の中には1.5度特別報告を直接歓迎することができず、各国のNDCの強化は「2020年までにNDCを強化して再提出する」という、これまでの決定文にも含まれていた表現が含まれるのみにとどまりました。IPCC特別報告の内容をそもそも認めないという立場のアメリカに加え、サウジアラビア、ロシア、クウェートなど、温室効果ガスの大型排出国がIPCC特別報告の扱いについて最後まで強硬な立場をとったためです。

タラノアダイアログにおいても各国の取り組み強化が加速されることが期待されていましたが、公平性や1.5度レポートについて言及されたものの、COP決定文の中では「タラノアダイアログの完了を歓迎する」と記したのみで、今後の行動強化には繋がりませんでした。

気候資金は?

パリ協定は、先進国の途上国に対する資金・技術支援を義務付けています。しかし、ルールブックのいたるところで先進国の資金・技術支援の義務が弱められた表現になっています。

京都議定書のもとで設けられた適応基金は、存続は決まっていますが、これまでクリーン開発メカニズムの利益の一部を原資としていたため、パリ協定下でどのように運営するのか、議論が決着していません。市場メカニズムの議論はCOP25まで先送りされたためです。

また、先進国は2020年までに年間1000億ドルの気候資金を拠出することになっていますが、その約束も2025年までで、それ以降の資金目標が決まっていません。今回のCOP24で、次なる資金目標の議論は2020年から始めることに決まりました。

気候変動の被害は加速する一方

2018年は、日本でも気候変動の被害がさらに拡大しました。猛暑や洪水、大雨などで亡くなる方や、家を失う方がたくさん発生しました。途上国でもその被害は特に甚大です。災害への備えが少なく、農業や漁業など第一次産業に従事する人口も多いため、より大きな気候変動被害を受けます。しかし、そういった人たちほどほとんど温室効果ガスを排出していません。

一方、先進国の政府や銀行、企業はいまだに化石燃料企業やプロジェクトに投資し続けています。間違った気候変動支援が、コミュニティや環境の破壊、そして人権侵害に繋がっています。

また、今回のCOP24では、市民社会の参加に対する抑圧が非常に顕著でした。気候変動の現場でたたかい、実際に化石燃料プロジェクトとたたかう市民社会の声が押さえつけられるようなことがあってはなりません。

公平性や途上国の視点からは、今回のCOP24の結果は非常に残念な結果だったと言わざるを得ません。

今後さらに重要になってくるのは、各国での取り組み、とくに先進国による国内での温室効果ガスの大幅な削減などの取り組みの強化と、途上国への支援強化です。また、化石燃料プロジェクトや間違った気候変動対策に対する草の根の取り組みもとても重要です。

FoE Japanは、これからも公平性の観点を重視した提言活動、実際に気候変動を加速させている化石燃料プロジェクトに対する草の根の取り組みに尽力していきます。

(小野寺ゆうり・深草亜悠美・高橋英恵)

日立の英ウィルヴァ原発、断念まであと一歩~署名にご協力を

※FoE JapanとPAWBは、日英両政府および日立に対して、ウィルヴァ原発の中止を求める国際署名を行っています(オンラインおよび)。
1月8日に第一次提出を行う予定です。

日立製作所が進めるイギリスでのウィルヴァ原発建設計画が岐路を迎えている。
12月10日のテレ朝の報道(注1)によれば、複数の関係者が「建設費のさらなる増大が見込まれる中、資金の調達先が決まらず計画を断念する方向で検討している」とのことだ。

この報道をうけ、日立の株価は上昇した。市場では「不採算事業への投資を見送り、利益下振れへの警戒感が和らぐ」と評価されたもようだ(注2)。

日立は12月12日に取締役会を開催。この問題について議論を行ったとみられる。
12月16日になって、共同通信が、日立がウィルヴァ原発の計画を「凍結する方向で調整している」「日立は事業継続の可能性を残すが、現状では事実上、撤退する公算が大きい」と報じた(注3)。翌日の17日、中西会長は、「(今の枠組みでは)もう限界だと英政府に伝えた」と発言(注4)。しかし、撤退に向けた最終決定ではなく、依然として継続の余地を残す。日立は2019年内にも最終投資判断をするとしていたが、年度内に早まる可能性がある(注1)。

ウィルヴァ原発は、日立の100%子会社のホライズン・ニュークリア・パワー社がイギリス・ウェールズ北部アングルシー島で進める。ABWR型の原発2基の建設を行うもの。
日立は以前より、ウィルヴァ原発事業を継続する条件として、自社の出資比率を50%以下に縮小するとしていたが、投資パートナーは見つかっていない。日立は東電や中部電、日本原電のほか、国際協力銀行(JBIC)や日本政策投資銀行(DBJ)などに出資を求めてきたが、十分な出資を得るのは難しい情勢となっている(注5)。

東芝も長らくイギリスにもつ原発会社ニュージェンの売却先を探していたが見つからず、今年11月7日にニュージェンの解散を決めた。原発という危険なビジネスに手を出す企業はなかなかいないということだ。

それはそうだ。イギリスでは電力需要は減少している上、風力発電などの再生可能エネルギーの価格がめざましく低下している。先行して計画が進むヒンクリーポイントC原発からの買取電力価格は、市場価格の倍で、その差額は国民負担となる。原発の建設費用は国際的に増加し、この事業でも3兆円にはねあがった。どうみても、原発建設が経済的に成り立つ環境にはない。

一方、日英両政府は、ウィルヴァ原発事業を進めるため、投融資や政府保証などの支援を行おうとしてきた。

ウェールズの住民団体PAWB(People against Wylfa B=ウィルヴァ原発に反対する人々)は、日立が取締役会を開催する前日の12月11日、日立宛てに手紙を送付し、改めて原発計画に反対した。手紙の中で、「イギリス政府によるウィルヴァ原発に対する補助は不公正であり、イギリスの消費者に大きな負担を押し付けることになる。日立にとっても評判を損ねることになる」「日立は、高価で時代遅れで危険で不必要な原発を推進するのではなく、未来のための投資してほしい」と訴えた。

アングルシー島は、美しい海岸線が有名な観光地で、EU保護種であるキョクアジサシも生息する。反対する住民は、原発事故の危険性、核廃棄物が将来にわたり残されること、事業によって自然のみならず、地元に残されているウェールズの文化が破壊されることを恐れている。

ウィルヴァ原発の建設が予定されているアングルシー島の風景(写真提供:PAWB)
事業地周辺にはEUの保護種であるキョクアジサシも生息する
(写真提供:PAWB)

日本政府は、原発輸出政策を国策として進めており、第二次安倍政権になってからはなりふり構わぬトップセールスを展開してきた。しかし、ベトナム、リトアニア、トルコなどで原発輸出が相次いで頓挫(下表)。

トルコ・シノップ原発については、事業費の倍増などから、三菱重工業なども含めた官民連合が撤退に向けた最終調整に入ったと報じられている。FoE Japanは2014年、現地訪問を行い、住民たちと交流。日本の「脱原発をめざす首長会議」から、シノップ周辺で反対の声を上げる首長たちへの応援レターを届けた。また、シノップ原発の地質調査に関して、経済産業省から日本原電の委託調査の不透明さについて、問題提起。日トルコ原子力協定に反対し、シノップの住民の手紙を日本の国会議員に届けたりなどの活動を行ってきた。

トルコ・シノップの美しい漁港(2014年撮影)

日本政府肝いりで進められた原発輸出政策。いまや残るはこのウィルヴァ原発のみだ。日立が国との関係で、ウィルヴァ原発を継続せざるをえないのではないかという懸念もきかれる。日立が現時点でこの事業を中止すれば最大約2700億円の損失が生じるとされているが、撤退判断が遅れればこの額はさらに膨らむだろう。日立には、日本政府に忖度することなく、正しい経営判断を行うことを望みたい。(満田夏花)

注1)日立が英原発建設計画「断念も視野」 建設費増大で(テレ朝、2018年12月10日)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000142690.html
注2)<東証>日立が上昇に転じる 「英原発建設、断念視野」と伝わる(日経、2018年12月10日)
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL10HJL_Q8A211C1000000/
注3)日立、英原発計画を凍結へ(共同、2018年12月16日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181216-00000040-kyodonews-bus_all
注4)日立の英原発計画「もう限界」採算見通し厳しく(共同、2018年12月17日)
https://this.kiji.is/447329326390936673?c=39550187727945729
注5)日立の英原発事業、電力大手との出資交渉難航(日経、2018年12月16日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39012980W8A211C1TJC000/

サヨナラCoal! – 気候変動に脅かされる途上国市民社会からの声

action 2昨年のCOP23の会場において、日本が市民社会からの厳しい批判を受けたことを皆さんは覚えているでしょうか。それから約1年、日本の化石燃料融資に対する批判の声が、再びCOPの会場内に響き渡りました。

会場内でのアクションでは、特定の国名や企業名は名指しできないという制約があるため、工夫を凝らしてのアクション。気候変動の脅かされる途上国市民社会からの声が叫ばれました。

インドネシアで鉱山開発問題などに取り組むJATAMのスタッフ、アルウィヤ・シャウバヌ氏は、“日本はインドネシア有数の石炭事業への融資国。日本の国際協力銀行は、北カリマンタンの鉱山開発、そして(他の州での)石炭火力発電所に融資している。これらの鉱山や石炭火力発電所の建設計画地近くでは人権侵害が横行し、環境が汚染され、(住民たちの)土地も奪われ、そして生計手段をも奪っている状況です。日本はいますぐ、この私たちの生活を奪う破壊的な事業をやめるべき。”とスピーチ。

action 4

FoE Japanの深草も、次のようにスピーチしました。

日本はG20の中で、化石燃料事業に対する最も高額な公的資金の融資国。世界の平均気温上昇を1.5℃に抑え、世界の温室効果ガス排出量を今世紀後半までにゼロにすることを目標に掲げたパリ協定の採択後も、日本の石炭火力発電の技術は高性能であると謳い、未だに融資を続けている。日本が融資している事業は、気候変動の影響を悪化させているだけなく、近隣住民への人権侵害、土地収奪、そして生計手段の喪失を引き起こしている。日本においても、今年の夏に度々見舞われた豪雨のように、気候変動の影響を無視できない状況になりつつある。今、日本に求められているのは、気候変動への影響に対する歴史的責任の下、途上国への削減支援する資金の拠出、そして、人々の命を中心に据えた気候変動への解決策であるべき”
action 5

action 1また、気候ネットワークインターンの塚本悠平さんからは、

“日本が今本当に必要としているものは石炭ではない。必要なのは、再生可能エネルギー100%の社会への移行だ。今、行動を起こさないと、気候変動はより悪化し、将来世代への影響が大きくなる。エネルギーの効率化や再生可能エネルギーの技術など、私たちはすでに解決策を持っている。政府の皆さん、今すぐ、方向転換を。”

温室効果ガスを最も排出する電源である石炭火力からの脱却の流れが世界で加速している一方、日本はいまだに国内外で石炭火力を推進しています。昨年COP23期間中にも、日本の丸紅株式会社がベトナムで低効率の石炭火力発電所事業を進めていることが発覚し、大きな批判を呼びました。しかし、批判を浴びたにも関わらず、2018年4月に日本の公的金融機関である国際協力銀行は、同事業への融資を決定しています。

この一年間、気候変動の影響を受ける途上国の市民社会は期待をもって見守っていたはずです。しかし残念ながら、日本は世界の期待に応えるようには進んでいません。また、米国の環境団体によると、G20諸国の中で公的資金を使って化石燃料を支援している最大の国は日本であると報告されています (注1)。パリ協定の温度目標達成のためには今世紀後半の脱炭素化が必要であるため、石炭だけでなくその他の化石燃料からの脱却も加速する必要があります。今、方向転換できなければ、今後ますます孤立の道を歩むことになりかねません。

action 3

(高橋英恵・深草亜悠美)

(注1) http://priceofoil.org/content/uploads/2017/07/talk_is_cheap_G20_report_July2017.pdf

COP24 二週目突入 – 交渉の行方と抑圧される市民社会

32357960898_8865cf77f2_z.jpg
COP24も2週目に差し掛かりました。1週目は主にパリ協定のルールブックづくりの技術的な部分が話し合われました。技術的な交渉は8日土曜日に終結する見込みでしたが、今週11日火曜日まで延長されました。二週目は閣僚級が集まるハイレベル会合が開催されます。

この間、COPに参加する市民団体のメンバーらが国境で強制送還されたり、カトヴィチェのホテル滞在中に突然拘束され強制送還される事例が報告されています。確かな数はわかっていませんが、100名以上のNGO関係者らが入国拒否されているとの情報もあります。

強制送還や拘束の理由は不明です。入国拒否をされた人の中には、過去に何度もCOPに参加したことがあるNGOスタッフや、政府代表団の一員としてCOPに参加する予定だったNGOスタッフも入っているとのことです。

このような深刻な人権侵害の状況をうけて、FoEインターナショナルはじめとする市民団体は抗議声明を発表し、拘束・強制送還された仲間の状況を確認している状況です。12月10日にCOP24会場内で行われた記者会見では、少なくとも12名がポーランドから強制送還・拘置されている350.orgの東欧グループのメンバーから「基本的な人権を奪わないでほしい。拘束される理由もない。ポーランド政府による明らかな市民社会への弾圧だ。皆さんの助けが必要です」と発言がありました。

45317490615_0049f40c0e_z.jpg
COP会場では、石油会社や原発企業が、ガスや石炭(”クリーンコール”)推進、原発推進のサイドイベント開催を許される一方、市民団体への監視や締め付けが厳しくなっています。本来であれば、気候変動の影響を受ける人々の声ほど政策に反映されるべきです。気候変動の影響をより受けやすい脆弱なコミュニティや人々の人権が保護されること、資金にアクセスできること、その他必要な技術支援が受けられることが重要です。

交渉の中でも、COP決定(COP交渉の最後に採択される文章)におけるIPCCの1.5度レポートへの言及について強い対立があり、主にアメリカやアラブ諸国がIPCCへの言及に反対しています。気候変動の「損失と被害」に関する言及や扱いについても、温室効果ガス排出責任を問われることを取り分け恐れるアメリカが、非常に強く反対しており、他の先進国もそれを支持しています。

私たちにはあまり時間が残されていません。今までの1度の気温上昇でも、すでに被害が広がっています。

気候変動の背景には、化石燃料の開発・利用をいまだに止めようとしない企業、人権やコミュニティをないがしろにし、利益を優先して環境破壊・資源収奪・搾取を行うネオリベラリズム経済が存在します。そういった新経済主義を体現する企業が交渉に強く干渉し、また人々の声がないがしろにされることに非常に強い危機感を覚えます。

(深草亜悠美)