温暖化の進行でさらなる“気候変動危機” ―IPCCからの警告

IPCC English2.jpg2018年10月1~6日、韓国・仁川でIPCC(気候変動に関する政府間パネル)総会が開かれ、8日、地球規模の1.5℃の気温上昇に関する特別報告書(SR15)と政策決定者むけのサマリー(SPM)が発表されました(*1)。

レポートは、世界の平均気温が工業化以前より1.5℃上昇した場合の影響を描き、2℃上昇した場合の影響と比較、また1.5℃までに抑えるためには、世界の全体の人為的なCO2排出量を、2030年までに約45%削減、2050年頃までには正味ゼロのする必要があることを示しました。

2015年に採択されたパリ協定では、気温上昇を2℃未満、できる限り1.5℃以下に抑えることを目指すとされましたが、今回の報告書では、2℃の気温上昇は1.5℃に比べて大きな影響・被害が予測されることが示され、気候変動対策がより差し迫ったものであることが警告されました。

一方、これまですでに産業革命期以降約1℃の平均気温上昇が見られ(日本では約1.2℃(*2))、それにより甚大な被害が出ています。気温が2℃上昇した場合にくらべ、1.5℃上昇程度に抑制することができた場合はそれでも、水不足に苦しむ人々の数や、気候変動の様々なリスクに直面する人々の数が半減することを示しています。例えば、極度の干ばつや森林火災などを含めた異常気象や食糧不足、熱波に起因する病気や死亡リスク、そして生物多様性や生態系の喪失といったリスクを抑制することができると考えられます。温暖化を1.5℃に止めた場合、2℃の気温上昇に比べ2050年までに世界で数億の人口が気候変動のリスクや貧困にさらされる影響を回避できるとしています。さらに、海面上昇による1,000万人規模の移住リスクも回避することができるかもしれないとしています。

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IPCCの特別報告書は、危険な気候変動の影響を1.5℃の気温上昇に食い止める可能性が十分あることを示していますが、そのためには各国がいますぐに行動することが必要です。パリ協定の下で約束されている温室効果ガス削減分を積み上げても、1.5℃目標にはほど遠いことはこれまでも明らかでした(現状の対策では、3℃以上の上昇が予測されています)。このことから、政策決定者向けサマリーの大きな焦点は、現在のパリ協定下での2030年までの各国の目標を大きく強化する必要性と、さらには今後20年ほどの間にかつてない規模でのシステムチェンジ(例として世界で今進んでいる自然エネルギーへの移行)、社会変革やライフスタイルの大きな変換を呼びかけています。

この報告書は12月の国連気候サミット(COP24)で議論され、2020年までに既存の各国2030年目標の引き上げを図る決定がなされる動きをつくることが想定されています。

しかし、留意すべきなのは、IPCCが提唱している気温上昇を1.5℃未満に抑えるための方策の中には、大きなリスクを孕んだ、検証の未だ十分でない技術も含まれているという点です。例えばBECCS(バイオマス炭素回収貯留)が挙げられます。BECCSは広大な土地で燃料とするための作物を育て、発生したに二酸化炭素は回収貯蔵するという技術です。最大でインド国土の倍の農地をバイオ燃料生産に振り向けることを予想するなど広大な土地を利用することから、土地収奪の可能性や、食糧生産への影響が懸念され、世界の最貧困層にとってさらなる問題を引き起こす可能性があります。火力発電所を石炭からバイオ燃料に置き換える動きはすでに国内外で始まっています。また、CCS(二酸化炭素回収貯留)を伴った化石燃料発電や、原子力発電も、シナリオの上では対策として含められています。

FoEグループはこのようなリスクを伴う技術に頼って、温度目標を達成することには反対しています。今回のIPCCの報告書では、こういったリスクを抱えた技術に頼らずとも、脱化石燃料の動きをさらに早め、省エネとライフスタイルの変革で全体のエネルギー需要を下げることで、気温上昇を1.5℃未満に抑えることが可能であるシナリオも示しています。またこれを世界で実現するためには、地球規模での化石燃料を中心とした社会からの移行や、それらを促進するための北側の先進国から南の途上国に向けた資金援助が必要不可欠です。

気候変動問題は、日本にとっても差し迫った問題です。近年の大型台風や集中豪雨、猛暑などの異常気象は、日本列島にも大きな爪痕を残しています。しかしながら、日本が現在示している気候変動目標は、十分なものではありません(2030年までに2013年比で温室効果ガス26%削減)。

国内では石炭火力発電所の建設計画が相次ぎ(*3)、石炭火力発電の輸出も推進(*4)しています。
FoE Japanは、今回のIPCCの警告を受け、消極的・後ろ向きな日本の気候変動・エネルギー政策の転換を改めて求めます。気候変動被害の拡大を少しでも抑えるために、一刻も早く化石燃料中心の社会からコミュニティや人権を尊重した再生可能エネルギー中心社会へと移行することが必要です。

(スタッフ:小野寺・深草・吉田、インターン:天野)

*1 IPCC:Special Report on Global Warming of 1.5 °C (SR15) ,  政策決定者向けサマリー, プレスリリースの和訳(環境省)
*2 気象庁「日本の年平均気温」
*3 日本の石炭火力問題
*4  No Coal, Go Green! JBICの石炭発電融資にNO!

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