山形県雇用促進住宅の8人の自主避難者が訴えられる!

山形県の雇用促進住宅の運営法人である高齢・障害・求職者雇用支援機構が、住宅の無償提供が終了した4月以降も住み続けている8人の区域外避難者(自主避難者)に対して、退去と家賃の支払いを求める訴えを起こしました(注1)。

「家賃を払わないのなら、退去するのが当たり前」--。そう思う人もいるかもしれません。しかし、ちょっと待ってください。8人の方々が、なぜ退去を拒まれているのか、その背景を知っていただきたいのです。

この背景には、原発事故による自主避難者が正当に扱われてこなかったこと、「子ども・被災者支援法」が制定されたのにもかかわらず、十分実施されてこなかったこと、結果として避難者の声が政策に反映されることなく、一方的に住宅提供が打ち切られ、避難者の窮乏を招いたことなどがあるのです。☞ 表 原発事故による区域外避難者をめぐる経緯

国と福島県は、今年3月に災害救助法に基づく住宅提供を終了。12,239世帯への住宅提供を打ち切りました(福島県資料による)。
代替として、福島県による家賃補助がはじまり、自治体によっては公営住宅への専用枠などを設定したところもありましたが、十分なものではなかった上に、対象が限定的で、多くの人たちがこうした支援からすらこぼれ落ちてしまいました。

多くの避難者は避難継続を選択し、多くの人たちが引っ越しを迫られました。
中には生活が立ちいかず、家賃負担が重くのしかかり、困窮してしまった避難者もいます。FoE Japanが事務局を務める「避難の協同センター」のもとには、いまもたくさんの方々から、多くの痛切なSOSがよせられています。

「原発事故子ども・被災者支援法」は2012年に制定されました。避難した人もとどまった人も帰還する人も、自らの意思で選択できるように、国が住宅の確保や生活再建も含めて、支援を行うように定めた法律です。被災者の意見を政策に取り入れることも定めています。

国と福島県が、この法律を適切に運用し、避難者や支援者の声に耳を傾け、避難者の生活再建のための具体的な施策を打ち出し、住宅提供を延長していれば、現在のような事態を回避できたはずです。

しかし、残念ながら、国は、帰還促進、復興の名のもとに、次々と避難指示を解除し、避難者への支援を打ち切りました。

福島県の発表によれば、県内外の避難者数は54,579人(今年9月時点)。しかし、引っ越しを機に自治体が把握をしなくなるケースも多く、この数に含まれていない人たちもたくさんいるとみられ、避難者の数すら把握できていない状況です。ましてや、避難者がおかれている状況については、定量的な把握ができていませんが、母子避難や高齢者の一人暮らし、生活困窮者などが少なからずいる模様です。

たとえば10月11日に公表された東京都のアンケート調査では、月収10万円未満の人が回答者の2割を占める、誰にも相談できない人が15%以上いるなど、深刻な状況をうかがわせます。

今年4月4日、「避難は自己責任」という趣旨の発言で問題となった、今村復興大臣(当時)は、4月14日の東日本大震災復興特別委員会において、山本太郎議員の質問に答え、「意に反する追い出しはさせない」と答弁しています。しかし、そうであるのであれば、国として避難者の現状把握と、追い出しを防ぐための具体的な措置を講ずるべきだったのではないでしょうか?

8人(世帯)の方々は、原発事故さえなければ、ふるさとを後にすることはありませんでした。ある方は「数万円の家賃負担が発生すれば、母子避難者の生活は成り立たない。経済的窮状は深刻だ」としています(注2)。この方々は、引っ越しをせざるをえなかった人々の分も含めて、理不尽な政策への抗議と自分たちの権利を主張し、避難者の置かれている深刻な現状を訴えるために退去をしなかったのではないでしょうか。なお、この8世帯には母子避難をしている方々も含まれています。(注3)。

私たちは、避難者のみなさまとともに、何度も、国や福島県に対して、「子ども・被災者支援法」に基づく抜本的な住宅保障や生活再建策を講じること、それまでは避難者に対する住宅提供を打ち切らないように求めてきました。また、住宅提供が打ち切られた後も、避難者の現状把握と対策を求めてきました。しかし、残念ながら、これらは実現されるには至りませんでした。

国は、原発事故子ども・被災者支援法に基づき、原発事故避難者の「住まい」「暮らし」を保障すること、またそのための現状把握と抜本的な法制度の整備を急ぐべきです。(満田夏花)

注1)自主避難8人の退去求める=住宅の運営法人が提訴-山形(時事通信 2017年10月25日)

注2)避難者住宅、退去拒否 山形の8世帯(毎日新聞)2017年6月3日

注3)同上

原発事故避難者の強制立ち退きに反対する署名サイトが立ち上がりました!

強制立ち退き反対バナー2


<原発事故による区域外避難者をめぐる経緯>
住宅打ち切り_主な出来事

▼原発事故避難者への住宅提供の延長を求める避難当事者と支援者たち(2015年6月)

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福島県からの避難者に対するアンケート調査の結果について(東京都)

以下、概要版より。

東京都アンケート1

東京都アンケート2

東京都アンケート3

人々に権利を、ビジネスにルールを!

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大企業や国際的な金融機関が、大規模開発の推進により、土地収奪や人権侵害を起こしています。
ときに企業は規制の少ない国で法の抜け穴を利用したり、複数の国にまたがる関連企業やサプライチェーンのかげにかくれて、法的な責任から逃れています。

住民の声を無視した巨大ダム開発や発電所建設、プランテーションのための土地収奪などが各地で問題になっています。市民の主権を無視し、利益追求のために環境や民主主義を顧みない企業や銀行、権力者に対し、FoEメンバーグループはつねに働きかけてきました。
FoEグループはこれまで多国籍企業に対する法的拘束力ある条約づくりに積極的に取り組んできましたが、2014年、国連レベルでのビジネスに対するルールづくりの新しい政府間ワーキンググループが立ち上がりました。

10月23日から第三回目の議論が始まるのを前に、FoEインターナショナルが声明を発出しました。

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プレスリリース:
多国籍企業の人権侵害を抑制する法的拘束力ある条約の制定を!—Friends of the Earthインターナショナル(原文はこちら

2017年10月19日

アムステルダム:
2017年10月23日から27日までジュネーブで開催される「多国籍企業と人権に関する国連条約」に関する協議を前に、Friends of the Earthインターナショナルは、多国籍企業による人権侵害や環境破壊に対して責任を問う法的拘束力ある国連レベルの条約制定のために建設的な議論を始めるよう、各国に対し強く求めています。

FoEインターナショナルのルシア・オーティスは
「多国籍企業の利益を守るための法的拘束力ある条約はすでにいくつも存在する一方、企業による人権侵害の責任を問う条約はありません。企業による人権侵害や環境破壊を抑制する法的拘束力ある条約が必要です。議論を始めるための最低限の交渉の材料はすでに出揃っています。しかし、国連での交渉プロセスに巨大企業から過度な影響が及ばないよう、企業の参加による利益相反を防がなくてはいけません。」

FoEインターナショナルや世界中のFoEのメンバー団体は、多国籍企業が気候変動や食糧危機、金融危機、そして人道危機に加担しており、企業による環境軽視、そして、地域の環境保護活動家に対する強迫行為を阻止する必要があると指摘しています。

FoEアフリカのアポリン・コアニ・ズアペットは、「この条約ができれば、アフリカや様々なところで、企業により影響を受けている数千のコミュニティーや市民はは、国際法廷を通じ、司法へのアクセスが可能になるでしょう。そうした司法アクセスに、先住民族の“生存”がかかっている事例もあります。。」

FoEラテンアメリカ・カリブ(ATALC)のアルベルト・ヴィラリアルは、「多国籍企業は利益を拡大させるために私たちの土地を破壊しています。しかし、複数の国にまたがる関連企業やサプライチェーンのかげにかくれて、破壊行為による責任から逃れています。企業が被っているベールを取り払い、企業の意思決定者に説明責任を果たさせる必要があります。」

FoE アジア太平洋のカリサ・ハリッドは、「国際的な金融機関や多国籍企業は、法的責任の免責により守られている状態です。条約は、(企業による人権侵害や環境破壊の)影響を受ける人々が、国レベルおよび国際レベルの法廷の場で、企業に対し説明責任を求めることを可能にします。条約は、環境保護活動や、とくに企業の利益追求から土地を守る際に影響を受けやすい女性を守るものになるべきです。」

FoEヨーロッパのアン・ヴァン・シャイクは、
「欧州委員会(EC)は、この(条約制定)プロセスに参加することを躊躇しています。しかし、ヨーロッパの市民や欧州議会は条約を支持すると何度も表明しています。フランスはすでに2017年に多国籍企業の「ケアする義務(duty of care)」に関する法律を制定しました。欧州委員会は、この機会を生かし、市民に対して人権に配慮しているということを見せるべきです。」

今回の議論は、多国籍企業およびその他のビジネスと人権に関する第3回目の政府間ワーキンググループになる。条約のエレメント(要素)に関するドラフト文書に関する交渉が期待され、環境団体や影響を受けるコミュニティー、世界中の社会運動体が国連プロセスとその成果を見守っている。

FoEインターナショナルの代表団は、国連人権委員会における交渉セッションに参加する。代表団は、ブラジル、カメルーン、カナダ、コロンビア、エルサルバドル、フィンランド、フランス、ホンジュラス、ハンガリー、インドネシア、モザンビーク、オランダ、ナイジェリア、ロシア、スペイン、ロシア、スリランカ、スウェーデン、ウルグアイからの環境保護活動家、人権擁護、影響をうけているコミュニティの代表らから構成される。

蘇我にもう発電所はいらない—「公害」の歴史ある土地で進むあらたな建設計画

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Day of Action!

10月14日、FoE Japanは「蘇我⽯炭⽕⼒発電所計画を考える会」とともに、蘇我石炭火力発電所の建設予定地をめぐり、建設に反対をするアクションを行いました。
千葉市は川崎製鉄所(現JFEスチール)の工場が原因の大気汚染で健康被害に苦しみ、公害裁判がたたかわれた街でもあります。今でも工場から排出される排気ガスや煙が周辺の住民に影響を及ぼしており、そんな中での石炭火力発電所の新規建設は住民の反対や懸念を生んでいます。

また10月13,14日は、石炭火力や原発など環境や社会に大きな悪影響を及ぼすエネルギーに対してノーと言い、地方分散型でより持続可能なエネルギーを求める市民が世界中でアクションを起こす「Day of Action(デイ・オブ・アクション)」でもありました。
日本だけでなく、インドネシア、バングラデシュ、ネパール、オーストラリアなどでFoEの仲間や市民が声をあげました。

公害の歴史

千葉県千葉市の住民は1951年にできた川崎製鉄所(現JFEスチール)の工場からの煙による深刻な公害被害に苦しんできました。

1972年、公害対策を求める保護者、行政職員、学校の先生やお医者さんなど幅広い市民があつまり「千葉市から公害をなくす会」が結成されまました。千葉県千葉市の当時の市民の2割に当たる7万5千人もの人々が賛同し「公害防止基本条例制定」の直接請求がなされましたが、却下され、1975年「子どもたちに青空を」という願いのもと住民らが提訴。「あおぞら裁判」が始まりました。

1988年、千葉地裁は川崎製鉄の排出する大気汚染と住民らの健康被害との法的因果関係を明確に認め、川崎製鉄に対しては損害賠償を命じ、原告勝訴の判決を言い渡しました。大気汚染と公害患者の病気との法的因果関係が認められたこの裁判の結果は、後に続く各地の大気汚染公害裁判の励みとなりました(1)

そんな、公害とたたかってきた市民の歴史あるまちで、新たな石炭火力発電所の建設が進もうとしているのです。

あらたな石炭火力発電所計画

現在、千葉市中央区で設備容量107万kWの⽯炭⽕⼒発電設備の建設計画が進んでいます(「蘇我⽕⼒発電所(仮称)」)。同発電所計画は、JFEスチール(旧川崎製鉄)と中国電力が出資している千葉パワー株式会社が事業主体です。現在、環境影響評価法等に基づく環境アセスメントの⼿続きが進められています。

今でも、近隣住⺠はJFE スチール東⽇本製鉄所が原因と考えられる⼤気汚染に悩まされており、汚染物質の排出がさらに増えることに強い懸念を⽰しています。

「蘇我石炭火力発電所計画を考える会」の調査によると、現在も「網戸や物干し竿が、毎日ぞうきんでふいても真っ黒でベタベタしている」などといった黒い粉塵への苦情が役所に寄せられているとのこと。また同会が実施した市民アンケートでは、アンケートに回答した市民の9割が発電所建設に反対しているそうです(10月16日現在、1万枚配布中331名が回答)(2)

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ポートタワーからの景色。石炭やスラグが野積みになっている。

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コンビナートから約1キロのところにあるマンションの壁

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ベランダに一週間放置したシャーレにたまる粉塵

事業者に出資しているのは、これまで公害を引き起こしてきたJFEスチールと、地元からは遠く離れた中国電力で、発電所はJFEスチールの敷地を使います。住民らは、石炭やスラグが野ざらしになり、粉塵がまっている現状の改善をまず、と訴えています。
発電所の建設予定地の半径5km圏内には、学校やスポーツ場などの公共施設が立地しています。もし石炭火力発電所が建設され、稼働を始めたら、排出する大気汚染物質による地域住民への追加的な影響が懸念されます。建設予定地は公害裁判を経て、環境が改善されてきた地域です。新たな石炭火力発電所建設により、せっかく改善を試みられてきた土地が、再度汚染されてしまう可能性があります。

また、石炭火力発電は、いくら効率が良いといわれる技術を使ったとしても、化石燃料の中でも一番多くのCO2を排出し、その排出量はLNGの約2倍になります。地球温暖化の原因となり、異常気象や集中豪雨・干ばつなど気候変動を加速させます。

国際的な脱石炭が進み、日本国内の電力需要も今後減少していくとみられる中で、本当に石炭火力発電所が必要なのでしょうか。

蘇我火力発電の問題点がまとまったパンフレットはこちら

東京湾の会の蘇我に関するページ

【事業概要】
発電所名:(仮)蘇我火力発電所
事業者:千葉パワー株式会社(出資者:中国電力・JFEスチール)
住所:千葉県千葉市中央区 (JFEスチール東日本製鉄所 千葉地区東工場内)
設備容量(最大発電能力):107.0 万kW
建設開始予定:平成32年
運転開始予定:平成36年
発電技術:超々臨界 (USC)

参考
千葉市の意
経産省の意見
石炭発電所ウォッチ

拝見…各党の原発関連公約は? 再稼働は? 被害者対応は?

選挙の争点の一つが「原発」となっている。自民党以外の政党(公明、希望、維新、立憲民主、共産、社民)はのきなみ「原発ゼロ」「原発フェードアウト」を掲げているが、内容はどうなのか? 自民党も「原発依存度の低減」をかかげるが、現在の政策と矛盾しているのではないか。
各党の公約を、
再稼働への対応や原発ゼロへの道筋、および現在進行中の原発事故被害者への対応に注目しつつ、私見もまじえてまとめてみた。

各党の原発関連公約は?

希望の党は、「2030年までの原発ゼロ」をかかげている。再稼働は容認。原子力技術の保持も明記しているのが特徴。また「原発ゼロを憲法に書き込む」としているが、通常の法律で十分なのではないか。原発事故被害者への対応は触れていない。なお、原発ゼロを言うのであれば、小池代表が知事を務める東京都は、東電の主要株主でもあることから取り組めることはある。東電の責任を問うてほしい。また、東京都はもっとも多くの避難者が暮らしている。都知事として避難者への支援に真摯に取り組んでほしい。

日本維新の会は「既設原発は市場競争に敗れ、フェードアウトへ」とするが、原発再稼働には避難計画への国の関与や地元同意の法制化などの条件をつけつつも容認。核燃料サイクルは「破たんが明らか」とし「廃止」。事故被害者対応は見当たらない。

立憲民主党は、「原発ゼロ基本法」策定をかかげている。また、東京電力福島第一原発事故の被害者に責任ある対応」「自主避難者を含む避難者に対する生活支援を掲げている点、評価したい。(ちなみに、民主党は、2012年に原発に関する3つのシナリオを示し、国民的議論を徹底的に行った。こうした「公論形成のプロセス」はもっと評価されてしかるべきだった。現政府にも同様のプロセスを望みたい。)

共産党、社民党は、再稼働反対。
共産党は核のゴミ問題やプルトニウムの備蓄問題にも言及。核燃料サイクルからの撤退も明記している。また、「すべての被災者が生活と生業(なりわい)を再建できるまで、国と東京電力が責任を果たすこと」などとしている。

社民党の公約は、原発事故被害者への対応が充実している。「避難の権利」の尊重、住宅の無償提供、「原発事故・子ども被災者支援法」の理念を守ることなどを盛り込んでいる。。

自民党は、「原発依存度を可能な限り低減」としているが、現在の原発依存度は数%のはず。エネルギー長期需給見通しでは、2030年の発電電力量に占める原発の割合を20~22%としているが、これはすべての原発の運転再開と40年を超えての運転延長、新増設を前提としたものとなり、「原発依存度の低減」と矛盾する。公約は一方で「原子力は安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源との位置付けのもとに活用」としている。原発事故被害者に関しては、「復興」の項目に記述がある。「福島については、国が前面に立って・・・安心して帰還できるよう取り組む」「長期避難生活への対応」「コミュニティ再生」などの記述があるが、避難者一人一人の権利を守るというよりも、帰還促進、復興路線であることは否めない。

公明党は「原発依存脱却」「原発ゼロ」というが、そうであるのならば、与党として、上記の原発の40年超運転延長や新増設をしなければ可能でない「2030年原発20~22%目標」をどう考えているのか。それを明らかにするべきであろう。(満田夏花)

各党の公約/マニフェストは、以下から読めます。

自民党:https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/manifest/20171010_manifest.pdf

公明党:https://www.komei.or.jp/campaign/shuin2017/manifesto/manifesto2017.pdf

希望の党:https://kibounotou.jp/pdf/policy.pdf

日本共産党:http://www.jcp.or.jp/web_policy/2017senkyo-seisaku.html

社民党:http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/election/2017/commitment.htm

立憲民主党:https://cdp-japan.jp/yakusoku/

日本維新の会:https://o-ishin.jp/election/shuin2017/common/pdf/manifest.pdf