ベトナム原発計画のゆくえ…「多くの国会議員が原発中止に賛成」

ベトナムが原発事業を白紙撤回する方針であることが報じられています。科学技術環境委員会の副委員長は、原発発電の単価が上昇していること、核廃棄物の解決、事故、債務問題などをあげ、「いまの時点でやめると判断するほうが、さらに投資を続けてからやめるよりもよい」と発言しています。ベトナム電力公社の社長すら「原発は経済面で競争力なし」と発言したそうです。VNEXPRESSが報じました。翻訳者の方のご厚意で転載させていただきます。

関連記事「ベトナム 原発計画を撤回!?-オールジャパンの売り込み攻勢の影で、翻弄される村人たちは」

多くの国会議員が原発計画中止に賛成

VnExpress logo VNEXPRESS 2016年11月10日(木) 11:18 GMT+7
科学技術環境委員会副主任は、現時点での原発計画中止の検討を「時機を得た必要なこと」と評した。
国会はニントゥアン原発計画を見直すことに。
ベトナム電力公社社長:「原発は経済面で競争力なし」

11月10日午後、国会は商工大臣チャン・トゥアン・アインとの特別会合を持ち、大臣はニントゥアン原発建設計画の中止に関する議案の説明を行った。それに続き、科学技術環境委員会主任ファン・スアン・ズンが、上述の議決草案の審査報告を行った。
国会の廊下でのマスコミ取材に対し、レ・ホン・ティン氏(科学技術環境委員会副主任)は、現時点での原発計画の見直しを「時機を得た必要なこと」と評した。

科学技術環境委員会副主任、レ・ホン・ティン氏。撮影:ヴォー・ハイ
ティン氏によると、原発計画の実現可能性は、現時点ですでにない。というのも、以前の建設計画では発電単価が約4.9セント/kWhとなっていたが、今ではこれが8セント/kWhにまで上昇している。計画の展開が遅れると資金も追加する必要がある。さらに重要なことに、計画を展開した後に出る核廃棄物の解決は議論が必要だ。特に、最近の環境事故の後ではその必要が高まっている。
わが国の債権はすでに許容範囲ぎりぎりに迫っている。さらに大きな計画に投資を続けるとなると、危険はさらに増す。この時点で中止することが、さらに展開を続けてからやめるよりもすぐれている。」 ティン氏はこのように見解を述べた。
計画準備のために派遣して養成した人材については、ティン氏は、高度人材はいつでも必要であるとする。「当面は発電総合会社や稼働中の発電所でこの人材を使用することができるだろうし、カネの無駄にはならない。」 ティン氏は、原発を始めようとして準備ができたところで中止した国々は南アフリカをはじめとして多いと言う。あるいは、ドイツのように、安全と使用済み核燃料の問題のため、多くの原発計画を撤回した国もあるとする。

ニントゥアン省副書記長グエン・バック・ヴィエット。撮影: Q.H
ニントゥアン省副書記長グエン・バック・ヴィエットは、もしも国会が原発計画の中止を議決するなら、ベトナム電力公社はすでに別の計画の実施を予定していて、それらは太陽光や風力発電の計画かもしれないと言う。省からはすでに中央に提案を出し、原発建設予定であった土地が「非常に美しい」ことを利用したいくつかの計画を考えている。そして、天災を避けるために新たな場所に定住した人々が、よりよい条件で暮らせるようにと考えている。

ヴィエット氏によると、原発計画の準備のため、国会と政府はすでにニントゥアン海岸道路に投資を決定している。さらにタンミー貯水池(貯水量2億立方メートル以上)の建設再開も決定した。「もし原発計画をやらないのなら、これらの計画がニントゥアンの発展につながるだろう。」とヴィエット氏は述べた。

原発技術を学びに派遣された留学生については、ヴィエット氏は、「彼らは勉学を終えれば、ベトナム電力公社の発電所、計画立案、プロジェクト管理などの職に配置する。学生らは安心して勉学を続ければよいのであって、先の心配はない。」

10月14日に閉会した党第12期中央委員会第4回総会において、中央委員会事務局はニントゥアン省の各原発の建設計画展開の実施方針にかかる問題に関し、技術面および全面での見直しを行った。政治部が国会党団に提出した意見書と完全に意見が一致し、政府の党職員が報告書を完成させ、国会がこれを検討して決定を行う手順になっている。

2009年11月25日に、382票の議員の賛成を得て(全議員の77.48%に相当)、国会はニントゥアン原発建設計画を議決した。計画では原発は2ヶ所、1ヶ所につき2基の原子炉が予定されていた。ニントゥアン第一原発はトゥアンナム県フォックジン郡に、ニントゥアン第二原発はニンハイ県ヴィンハイ郡に、それぞれ2,000MWの容量で建設が決まっていた。            ホアイ・トゥー、ヴォー・ハイ

Reference:
http://vnexpress.net/tin-tuc/thoi-su/nhieu-dai-bieu-quoc-hoi-ung-ho-dung-du-an-dien-hat-nhan-3496951.html
(10/11/2016)

▼ニントゥアン第二原発の看板 (c)FoE Japan

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▼建設予定地の風景と人々のくらし (c)FoE Japan

 

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ベトナム 原発計画を撤回!?-オールジャパンの売り込み攻勢の影で

ベトナムにおけるニントゥアン原発建設計画の白紙撤回の方針が報道されています。今日から国会で審議されるとのこと(注1)。
FoE Japanは、2011年からベトナムに建設される原発について問題提起を行ってきました。その一環として、先月、ベトナムを訪問。福島原発事故の経験を伝えました。
オールジャパンが売り込み攻勢をかける中、ベトナムのリーダーたちは冷静で賢明な判断をしたと思います。一方、移転を迫られた現地の人たちは…。ブログ記事にまとめました。
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原発建設予定地のニントゥアン省タイアン村に建てられた看板は、年月を経て、はげかかっている…

共同通信の報道によれば、ベトナム政府は、日本などの受注が決まっていたニントゥアンの原発建設計画を白紙撤回すると明らかにしたそうです。今日、国会に上程され、決定されるとのこと(注1)。
理由としては、財政難であることが挙げられていますが、原発のリスクについても言及されていました。

実は、先月、国会議員などが参加する原発に関する国際ワークショップに招へいされ、ベトナムに行き、福島原発事故の被害について報告させていただきました。

多くの人たちがふるさとを失ったこと、「原発さえなければ」と書き残して自殺した酪農家、除染・賠償・廃炉の費用がどんどん膨れ上がり、13兆円を超えたこと、東電は払いきれず、納税者や次世代が払うことになることなどを写真をまじえて報告させてもらいました。

終了後、ワークショップの議長を務めた国会議員が、「報道されていない福島の痛ましい状況がよくわかった」と話しかけ、握手をしてくれました。

ニントゥアン省の原発予定地は、ハノイから飛行機で3時間、車で1時間ほどの静かで平和な村。美しい豊かな海とふしぎな形の石と乾燥地の特異な生態系に囲まれており、人々は農業と漁業、家畜などで生計をたてています。

近くには美しい海を活かした観光拠点も多い、本当に本当に美しい土地です。

事業により移転しなければならないとされたタイアン村の人たちは、「国家事業だからしかたない」といいますが、「せっかく耕した農地やいまの暮らしを失いたくない」「本当は移転したくない」というのが本音なのです。

しかし、中には、「宙ぶらりんの状況はもういやだ。将来設計もできない。移転をするのかしないのか、はっきりさせてほしい」という人もいました。もう10年も、原発建設の話があるそうです。

新たに入ってくる原発事業により、雇用の増大に期待を示す人もけっこうたくさんいるという調査もあります。しかし、原発のリスクについてはもちろん説明なし。

翻弄されるのはいつも地元の人たちなのです。

それでも、私自身は、ベトナムのリーダーたちの慎重で冷静な判断を歓迎したいと思います。

日本は、経済産業省の補助金(「低炭素発電産業国際展開調査事業」)や委託事業で、28億円を原電に流し込み、F/S(実施可能性調査)を実施しています。その中には、復興予算の流用も含まれていました。さらにそれ以前には、東電が、経産省の補助金をつかってカーボンオフセット・クレジットの可能性調査をしていました。
ニントゥアン原発は、日本側が官民で売り込み、税金を使い、トップセールスを繰り返し、おそらくこうした巨大事業によって利権をえる人たちにくいこんで、かちとったものなのです。

原発はある意味、抜け出せない麻薬のようなものです。一度、巨大な利権が形成されると、にっちもさっちもいかなくなるのは、日本の例をみても想像できます。
地方分散型のエネルギー供給の仕組みも阻害されてしまいます。
そんな、「シャブ漬けエネルギー・システム」を、相手の国に売り込む。そしてその過程で多くの税金が使われた、という意味では、私たちにも責任があるのです。

ちなみに、ベトナムへの原発輸出は、日本側が政府系資金を貸し付けることが前提となっていました。しかし、ベトナムの対外債務問題も深刻です。ベトナムにとって日本は長年、最大のODA供与国。その大部分は「円借款」。ただし、ODAは原発には直接は使えません。送電線や周辺のインフラ整備、揚水発電などには、使われる可能性は大いにあります。
現にJICAはニントゥアン省における揚水発電事業に対して、協力準備調査を実施中です。もちろん、私たちの税金を使って。
ODA以外の公的資金の貸し付けも半端ではないでしょう。このままニントゥアン原発建設が進んでいけば、さらに巨額の債務が上乗せされたでしょう。

報道によれば、今日以降、国会でニントゥアン原発事業について審議されるそうです。情勢を見守りたいと思います。

関連記事>ベトナム・原発からの「勇気ある撤退」の理由とは

(満田夏花)

注1)日本受注のベトナム原発計画白紙 財政難理由、政権輸出戦略に打撃
(共同通信 2016年11月9日)
http://this.kiji.is/168978958645937661