広がる格差とClimate Justice

こんにちは。スタッフの深草です。昨年12月、気候変動の損失と被害の調査のためにフィリピンに行って来ました。今回はフィリピンで調査してきたことについて報告します。

フィリピンといえば、2013年のCOP19ワルシャワ会議でのフィリピン代表団サノ氏のスピーチがとても印象的でした。皆さんは覚えていらっしゃるでしょうか(注1)。2013年11月、スーパー台風と呼ばれる非常に勢力の強い台風ハイアンがフィリピンに上陸。フィリピンではハイアンにより6000人を越える方が亡くなりました。台風が襲来したちょうどその頃、COP19が開催されており、フィリピン代表団のサノ氏は「気候変動による狂気をとめよう」と呼びかけました。
それから2年、現在のフィリピンは台風被害から回復しているのだろうか?気候変動による狂気は止めることができているのだろうか?そういった疑問を持ちながら、台風ハイアンによる被害が最も大きかったレイテ島タクロバン市周辺の農村を訪れました。

IMG_3419.JPG(台風により壊れたままの教会)

台風ハイアンにより、多くの方が生計手段や家を失いました。例えば、ココナツ収穫はフィリピンの重要な生計手段の一つですが、強風の影響でココヤシが壊滅。現地団体東ビサヤ地域農村補助プログラム(EVRAP)の調査によるとハイアンの影響を受けた地域の90%近くのココナツが被害を受けています。訪れた村では、2年経った今でもココヤシの生産力は戻らず、収穫は減ったまま、もしくはゼロだそうです。
また、台風により約100万戸以上がダメージを受けました (注2)。フィリピン政府は住宅を失った人々のために公営住宅建設を急いでいますが、タクロバン市で計画されている1万3千戸のうち、2015年9月時点で300戸程の公営住宅の建設しか終了していません(注3)。一部の人々は未だに緊急支援物資として供給されたブルーシートに覆われた住まいで居住しています。

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(ブルーシートの壁で覆われた家と住人)

気候変動が広げる格差
気候変動によって海水温度が上昇すると台風の威力が増す(注4)とされています。異常気象による災害が原因で難民の発生率が高まる事 (注5)や、食糧安全保障への影響等、多岐に及ぶ被害が報告されています。近年の国際気候変動交渉では、気候変動への適応の限界を超え‘損失と被害(ロス&ダメージ)’が世界各地で起きていることが認識され、そういった被害にどの様に対応するか、支援していくかが課題となっています。

歴史的に見れば、日本やアメリカ、イギリス、フランス等の先進国が化石燃料を縦横無尽に消費して発展を遂げて来た事が、今の気候変動問題の原因となっていると言っても過言ではありません。ですが、フィリピンなどの途上国や、赤道に近い国々がより気候変動の影響を受けているという非対称性、不公平さが存在します。災害対策のインフラが未整備もしくは不十分であるために、災害に脆弱で異常気象に対処する能力が限られた途上国では、先進国との貧富の差、そして国内の貧困の連鎖がさらに広がっていきます。こういった観点から、気候の公平性、Climate Justiceを訴えていく必要があるのです。

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(フィリピンのアクションの写真、写真提供:People Surge)

パリ協定は気候と人々の生活を守れるのか?

フィリピンでは台風ハイアンの影響からの回復もままならない状況がありました。それだけでなく、近年カテゴリー4や5(カテゴリー5はスーパー台風ともいわれ、家屋の倒壊などが発生する一番強いレベルの台風)に分類される強い台風が何度も襲来しており、復興が遅れています(注6)。2015年12月にも台風メーローが上陸し、多くの被害を残しました。

貧困地域では、台風によりさらに貧困の度合いが強まります。私たちのインタビューに答えてくださった方の多くは、2年前から回復していない、状況は良くなっていないと話します。

公営住宅も見に行きましたが、農業に頼って暮らしている人々や漁業をしている人々が、コンクリートの小さな家に移住したら、それまでの生活を維持するのは難しくなっていくでしょう。もちろん、家をもらえて嬉しいという人もいました。ですが、どんな支援が適切なのかは、今後も考えていく必要があります。

また、フィリピン政府は高潮対策の為にタクロバン−パロ−タナウアンを結ぶ27kmに及ぶ巨大な堤防建設を推進しています(注7)が、現地のNGOや住民らは、依然として生活再建に苦しんでいる被災住民を立ち退かせるような巨大堤防の前に、生計手段回復のための支援を優先するよう求めています。

気候変動といえば、二酸化炭素を含む温室効果ガスの削減や数値目標ばかりが目に見えがちですが、実際に現実として被害が起きている事をもっと認識し、それを補償する資金の流れや気候変動の責任について、考えていく必要があります。

FoEグループは、気候変動問題における格差や不正義の問題を長年訴えつづけてきました。
気候変動の被害者を救済する資金的枠組みをはじめ、メカニズムを作っていく必要があります。

報告:緊急寄付に協力ありがとうございました!
今回私たちがフィリピン調査を行ったその2、3日後、フィリピンを非常に勢力の強い台風メーローが襲いました。そこで、フィリピン調査のときに現地でお世話になった団体が現地で緊急支援を行うための緊急寄付を呼びかけ、2月18日までに164,430円のご寄付を集める事が出来ました。
このお金は現地で緊急支援・災害人道支援を行っているTabangに送られます(一部既に送金しています)。

2月18日に『COP21報告会 Climate Justice Now!パリ合意は気候と人々の生活を守る事ができるか?』を東京で開催しました。

※このブログ記事は動く→動かすさんのブログに投稿した物を改変して再投稿しています。

参考文献
1.“「この気候変動は狂気だ」フィリピン政府代表がCOP19で涙の演説” 2013年11月12日、ハフィントンポスト、http://www.huffingtonpost.jp/2013/11/11/cop19-philippines_n_4256950.html
2. National Disaster Risk Reduction and Management Council, “Updates re the Effects of Typhoon “Yolanda” (Haiyan)”, 2014年4月17日
3. タクロバン市, “Tacloban City Housing Updates As of 18 September 2015”、 http://tacloban.gov.ph/shelter/
4. IPCC, 第五次報告、Chapter 14 “Climate Phenomena and their Relevance for Future Regional Climate Change” p1220
5. UNHCR, The Environment and Climate Change, 2015. P5
6. Chris Dolce, “2015 Sets a New Record for Category 4 and 5 Hurricanes and Typhoons”, 2015年10月18日、https://weather.com/storms/hurricane/news/record-most-category-4-or-5-hurricanes-typhoons
7. “P7.9-billion embankment to be built in Tacloban, nearby areas”, Philipino Star News, 2015年9月5日

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